Arco Iris   作:パワー系ゴリラ

14 / 131
同じ始まり

超包子を後にした祐はタカミチからの連絡を受け、学園長室に向かっていた。すれ違う人々も先ほどの映像を見たのだろう。どこかその表情には不安や困惑が見える。都市全体がざわめいているのを感じながら、祐は目的地へと急いだ。

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

学園長室に着いた祐はドアをノックする。すぐに返事が返ってきた為、祐はドアを開けた。

 

「失礼します」

 

「二日続けて呼び出してすまんな祐君」

 

「気にしないでください、こんな状況なんですし」

 

そう返し部屋を少し見渡すと、そこには学園長、タカミチ、そしてスーツを着た知らない男性がソファに座っていた。

年齢は40代前半ぐらいだろうか、どこか貫禄を感じさせる男性だ。

 

「祐君、紹介するよ。彼は太田源八さん。今回の爆破事件を担当している刑事さんだ」

 

タカミチが紹介してくれた男性がこちらを見て会釈をした。それに初めましてと返す祐。源八は何で今ここに学生がといった顔をしていた。

 

「太田さん、彼は逢襍佗祐君。麻帆良学園の高校一年生です」

 

「ああどうも、太田源八と申します。えーと、高畑先生?なぜ今学生さんを?」

 

そう言われたタカミチは祐を自分の横に座らせて、祐の肩に手を置いた。

 

「彼は学生ではありますが、裏の世界にも深く関わっている子です。今後顔を合わせる機会も増えるかも知れないので、ご紹介をと思いまして」

 

「と言うと魔法使いさんで?」

 

「いいえ。厳密には違いますが、彼は超能力者という事になっています」

 

二人の話を黙って聞いていた祐は頃合いを見計らって声をかける。

 

「タカミチ先生、太田さんは魔法関係者の方なんですか?」

 

「いや、彼は一般の方だよ。ただ警察と我々(魔法使い)の橋渡しをしてくれているんだ」

 

「俺としちゃあ魔法とか超能力とかってのはからっきしなんだが、何の縁かそういうポジションになってる」

 

タカミチの紹介に源八は頭を掻いた。それを聞いて祐は納得する。前にタカミチが所属している魔法使いの団体『悠久の風』と警察が協力して事件の解決に当たったという話は何度か聞いた事がある。おそらくその時からの縁なのだろう。

 

「えっと、そちらのアマタ君だっけ?この子はどんな魔法…では無かったか。どんな力を使うのか聞いても?」

 

「そうですね。祐君、良いかい?」

 

タカミチに「はい」と答えた祐は源八の方を見て口を開いた。

 

「虹を出せます」

 

「「「………」」」

 

学園長室に沈黙が訪れた。呆れた顔をしていた源八だが、その表情がだんだん変化していく。

 

「いや待て、虹って言ったか…虹…まさか君が」

 

「太田君、あの日犯人達を捕らえ、爆発を抑え込んだのは他でもない彼じゃよ」

 

虹という単語に心当たりがあった源八がまさかと声をあげると、近右衛門が詳しく説明した。源八は額に手を当てる。

 

「はぁ〜、噂の虹の正体がまさかこの子だったとは…」

 

「どうもその節はお騒がせしまして」

 

頭を下げる祐に源八は顔の前で手を振った。

 

「いや良いんだ。確かに騒ぎにはなったが、君があの爆発を何とかしてくれたんだろ?てことはフードコートのあれも…」

 

「はい、何とか間に合ったんで僕が抑えました」

 

「やっぱりか…でもどうやったんだ?同じ爆弾ならなかなかの威力だったはずだが」

 

「こう、丸めてギュッとしました」

 

「そ、そうか…」

 

抽象的すぎる言い方に源八はまたも呆れ顔であった。

 

「アバウトな説明で申し訳ないんですけど、如何せん僕自身もこの力が何なのかわかってない事の方が多いもんで」

 

「わかってない?」

 

「彼の力は今までに前例的なものが無いんです。虹色の光が出せる事、その光を様々な形に変換して物体にもエネルギーにも出来る事以外は、我々も把握していない状態です」

 

タカミチが話の補足に入る。

祐の力、虹色の光はこの世界の長い歴史の中でも前例が無い。未だ解明には至っておらず、魔法でもない事から括り的には一応超能力という事になっている。

 

「そりゃなんとも…まぁ、色々出来るってことで間違ってないか?」

 

「その認識で問題無いでしょう」

 

「さて、顔合わせも済んだところで本題に移ろうかの」

 

源八の質問にタカミチが答え、一段落したところで近右衛門が声を掛けた。

 

「本題ですか?」

 

「うむ。今日は今後の事を話し合うため太田君に来てもらったんじゃが、先ほどの動画のことで話が大きく動くことになっての」

 

先ほどの動画とは間違いなくアップされた犯人たちの犯行声明の事だろう。

 

「あやつらの目的が判明した今、無視できない問題が間近に迫っておる」

 

「今日から四日後の六月九日、東京都内でこちらの世界と別次元の政府間での会合が行われる予定なんだ」

 

近右衛門の話をタカミチが継いで話す。

 

頻繁に別次元と繋がるようになり、優れた文明を持つ次元であれば次元の行き来すら可能となった今の世界では、時折こうした別次元同士での会合などが行われる。それが運悪く四日後に迫っているというのだ。

 

「そんなの間違いなくあいつらは仕掛けて来ますよ?」

 

「だからこちらとしては中止なり延期なりしてほしいんだが、上の連中ってのはどうも能天気でな…」

 

祐が当然のことのように言うと源八は苦い表情を作って言う。

 

「もしかするとテロリスト風情には屈さないだとか余計な対抗意識を燃やして強行しかねねぇ」

 

「僕たちも掛け合ってみるつもりだけど、どうなるかは正直分からない状況なんだ」

 

「なんでそこで変な意地張るかなぁ…」

 

源八とタカミチがそう答えると、祐は呆れたように言った。

 

「実際に戦闘を体験していないからこその楽観主義というべきか…なんとも情けない話じゃ」

 

近右衛門はこの状況に頭を悩ませる。戦争終結後、大きな事件が起こっていなかったことも今回の件に悪い意味で影響を及ぼしているのは間違いなかった。

 

「学園長、タカミチ先生、太田さん。あいつら…確かトゥテラリィでしたっけ?それに関してなんですが」

 

「もともと顔合わせとして祐君を呼ぶつもりではあったが、呼び出したのはそちらの要件もある。いや、出来たというべきか。どうやら奴らは次元漂流物で超人的な身体能力を身に付けておるそうじゃ」

 

源八はまだその話を聞いていなかったのか驚いた顔をする。祐としてはすでに知っている話ではあるが、知っていたらおかしな事になるので少し驚いた表情を作った。

 

「例の匿名からの情報だよ。ご丁寧に彼らの会話を盗聴した音声まで送ってきた。この匿名の人物に思うところはあるけど、今はこの情報を使わせてもらうしかない。今までの事からも情報が信用に値するとは思うからね」

 

話を聞いていて何のことか分からないといった顔の源八に、近右衛門とタカミチが件の匿名で情報を送ってくる人物についての説明を始める。

 

匿名の人物、祐は知っている。その人物『超鈴音』は今までもその能力をいかんなく発揮し、麻帆良学園に所属する魔法使いたちを陰ながら支援してきた。勿論はじめのうちは信用されていなかったが、今ではその正確性、スピードが確かなものであるという実績が数多くある為、無視できないものとなっている。未だその実態を掴めていないので危険視自体はされているが。毎回この話題が出て来る度に祐は内心穏やかとはいかないので何とかならないものかと思っている。

 

「なるほど、今までの事からもその情報は信用に値すると?」

 

「実際何度かこの人物の情報に助けられたのは事実です。情けない話ですが」

 

タカミチ達の話を聞き、一応の納得を見せる源八。仮にそれが本当だとするならばいよいよ彼ら(魔法使い)の力を借りる必要がある。

 

「奴らの件、あの動画を見たのならば祐君にとっては何より無視できない事もあったじゃろう」

 

「はい、まさかこんな事であの件に触れる事になるとは思ってもいませんでしたよ」

 

「無視できない事?」

 

源八がそう聞くと、近右衛門もタカミチも暗い表情をしていた。祐は少し考えるそぶりをしてから源八の方を向いた。

 

「あいつらは静岡県で起きた事件の生き残りだと言っていました」

 

「ああ、確かにそう言ってた」

 

「僕は生まれも育ちもここ埼玉県麻帆良市です。でも僕も、あの事件に関しては他人事ではないんです」

 

「それは、つまり…」

 

その話の続きを予想して、源八の表情も曇りを見せる。

 

「ここにいる皆さんに、一つお願いがあるんです」

 

三人を見つめ、決意したような表情で祐は切り出した。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

「なぁ、明日菜~。まだ終わらんの?」

 

「ちょっと待ってよ、もう少しだから」

 

女子寮、明日菜達の部屋。明日菜は自分の机で一心不乱に紙に文章を書いており、木乃香はそんな明日菜を見て呆れ顔だった。ネギはそんな二人を苦笑いを浮かべながら見ている。

 

「特別なことは言わんでええって言うたやん」

 

「そうだけど…いざって時に何言うか忘れちゃったら困るでしょ!」

 

「ごめんって言うだけやんか」

 

「わ、分かってるわよ…これは、そう!その後の会話のデッキを作ってるのよ!」

 

「初対面やないんやから…」

 

あれから気を持ち直した明日菜は祐に謝罪をするべく祐に会いに行くと思いきや、準備が必要だと昼食を食べ終えてから机に向かい、文章を書き始めた。かれこれ二時間ほど経過しており、さすがに木乃香も痺れを切らせ始めた。

 

ネギとしては朝に明日菜から昨日は祐と喧嘩をしてしまって落ち込んでいたと聞かされたため、どういう状況なのか分かってはいる。しかし明日菜が机に向かってからてんで動かない為、苦笑いといった状態だ。

 

「もう、勇気がいるのはわかるけど、先送りにしとったらもっと言いづらくなるえ」

 

「明日菜さん頑張ってください!勇気を出すときですよ!」

 

木乃香からは正論を、ネギからは励ましを受けた明日菜はペンを置いて深呼吸する。

 

「わかった、よし!今から祐に謝りに行く!」

 

「その意気やで明日菜!」

 

「応援してます!」

 

こぶしを握り気合を入れる明日菜。それを見た二人も何故かこぶしを握って気合を入れる。

 

「じゃあちょっとお手洗いに…」

 

そそくさとトイレに向かおうとした明日菜に二人はずっこけた。

 

「明日菜~!往生際が悪いわ!」

 

「絶対今行くところだったじゃないですか!」

 

「なによ!ちょっとお手洗いに行こうとしただけでしょ!」

 

騒ぐ三人の部屋にこれまた騒がしい足音が近づいて来る。その足音は明日菜たちの部屋の前で止まると激しくドアをノックした。

 

「たく、なによ騒がしいわね」

 

そういって明日菜がドアスコープから外を覗くとそこにいたのは昨日一緒に出掛けた六人だった。ただしその表情は焦っているように見える。さすがに不思議に思いドアを開けると、六人が部屋に流れ込んでくる。下敷きになったハルナが「ぐえっ‼」と声を出した。

 

「うわっ!」

 

「え~!なんや!?」

 

「皆さんどうしたんですか!?」

 

驚いた明日菜達が声を掛けると比較的上の方にいた美砂が声を上げる。

 

「明日菜木乃香!あんた達動画見た!?」

 

「動画?何の話よ?」

 

「今すぐ見て!昨日の爆発の犯人の仲間が動画アップしたの!」

 

円の言葉に明日菜達は、部屋に六人がなだれ込んできた時以上に驚いた顔をした。

 

 

 

 

「我々は『トゥテラリィ』真の平和を望む者」

 

ハルナのスマホで動画を視聴し終えた明日菜達。皆一様に表情は暗いが、特に明日菜と木乃香の表情は暗かった。

 

「彼らの目的は別次元に関係していたんですね…」

 

「だからそれに関するものを展示していた博物館やイベント会場を爆破したようです」

 

「でも、あそこにいた人たちは何の関係もないのに…」

 

ネギのこぼした言葉に夕映が答える。のどかはただその場にいただけで何の罪もない人達が傷ついたことに心を痛めているようだった。そんな中黙ったままの二人にハルナが声を掛ける。

 

「二人とも?大丈夫?」

 

「そんな…あの事件の生き残りって…」

 

明日菜は放心状態の様に小さくつぶやいた。周りもそれに気づき二人を心配する。

 

「ちょっと二人とも、どうしたのよ?」

 

「おんなじや…祐君と…」

 

「え?」

 

木乃香の言葉に美砂が反応すると、再び足音が近づいてきた。それに全員が気付くと、程なくしてドアが勢いよく開かれる。

 

「明日菜さん!木乃香さん!」

 

「あ、いいんちょだ」

 

桜子が何とも気の抜けた声でそう言う。そこにいたのはあやかだった。ずいぶん急いできたのだろう。息を切らし、額には汗がにじんでいる。すると明日菜があやかの方を向く。

 

「委員長…」

 

「その様子ですと、例の動画はもう見たようですわね」

 

あやかの表情も明日菜と木乃香同様、ひどく暗いものだった。

一番好きな章は?

  • 序章・始まりの光
  • 幽霊と妖怪と幼馴染と
  • たとえ世界が変わっても
  • 消された一日
  • 悪魔よふたたび
  • 眠りの街
  • 旧友からの言葉
  • 漢の喧嘩
  • 生まれた繋がり
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。