第一印象は『変なやつ』だった。
何考えてるか分からないし、よく分からないことも言う。
ぼーっとしているような時もあれば、一生懸命な時もある。
何でもないことで笑って、何でもないことで悲しんで。
気づいたら一緒にいる事が増えた。
きっかけは正直覚えてない。
委員長と喧嘩をしている時に間に入ってきた時だった気もするし、そうじゃ無かったような気もする。
ただ一緒にいて楽しかった。
その後に木乃香が来て、私達は3人一緒の時間が増えた。
そこにたまに委員長もいて、4人で遊ぶことも少なくなかった。
私達が8歳の時、あいつは家族で旅行に出かけた。
そこで事件に巻き込まれた。
それを聞いた時は不安で仕方がなかった。もしかしたら死んじゃったんじゃないかと思うと体が震えた。
木乃香も委員長も同じだった。でも、その時の担任の先生や高畑先生からあいつが無事だって聞いた。
私達は安心して喜んだ。これでまた皆んなと一緒に遊べる、一緒にいられると思ったから。
でも事件から一週間経ってもあいつには会えなかった。
どうして学校に来ないのか先生に聞いても、もう少ししたら会えるよとしか教えてくれなかった。
事件から二週間後、あいつが学校に来た。
久しぶりに会えたあいつは
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女子寮の入り口のすぐ近くの広場に、明日菜、木乃香、あやかが向かい合って立っている。
あやかが部屋にやってきたあの後、少し三人で話をしたいとあやかは明日菜達二人を連れて外に来ていた。あまり周りには聞かれたくない話だったからだ。
「さて、この辺りでいいでしょう。あまり皆さんに聞かせる話でもありませんから」
「そうやね」
「さっきの動画の…静岡の事件のことよね?」
明日菜があやかに聞くと、あやかは静かに頷いた。
「ええ、その通りです。まさかこんな形でまたあの事件に触れる事になるとは思ってもみませんでした」
「私達もよ。ほんと…よりにもよってね」
「爆破事件を起こした人達が、祐君とおんなじ境遇の人達やったなんてな…」
2014年10月。日本に二つの別次元の生命体が飛来し、戦闘を行なった結果、多くの犠牲者が出た痛ましい事件。その場に祐はいた。家族旅行で静岡県伊豆市に出かけていた祐は、何の不幸かその戦闘に巻き込まれてしまった。祐は命に別状はなく、奇跡的に軽傷で助かった。
家族を失って。
その後の祐がどうなったか、三人はよく知っている。忘れることもできない。祐は、必死で無理をしていた。友人達に声をかけられ、心配していたと伝えられた時にごめん、ありがとうと笑っていた。ただその笑顔は本物ではなかった。
無理矢理笑顔を作っているのが明日菜達はすぐにわかった。辛くて悲しくて堪らないのを必死に笑顔で覆い隠している彼の顔は、今でも脳裏に焼き付いている。その頃から祐の口癖は「大丈夫」になった。三人はそれを見て、自分達に出来ることを必死で探してそれをしようとした。何かしてほしいことはないかと聞けば返ってきたのは、今までみたいに一緒にいてくれればいいというものだった。
三人はそれを実行した。どんな時も祐から離れず、彼に寂しい思いをさせまいと常に祐のそばにいた。彼女達以外の祐の幼馴染も友達も、祐のそばに居続けた。
11月半ばごろから祐は変わり始めた。どこか今までずっと続けていた無理を、少しずつしなくなっていったのだ。これには明日菜達三人をはじめ、友人や周りの大人達も安心した。祐はみんなのおかげと言っていた。
祐の言っていることはもちろん嘘ではなく本心だということはわかっている。しかし、祐が憑き物が落ちた様になったのは、自分達以外の何かが一番の要因だと三人は感じた。確証は勿論無かったが、確信はあった。そしてそれは明日菜達はまだ知り得ていないが、実際その通りであった。恐ろしきは女の勘であろうか。祐が元気になりはじめたことは純粋に喜びつつ、一番の要因が自分達でなかったことはなんだか悔しく感じた。
「あれから八年経ったとはいえ、このことを聞けば嫌でも祐さんはあの時のことを思い出すはずです。おそらくこれだけの騒ぎであれば、祐さんの耳にも間違いなく入るでしょう。いえ、もう入っているのかもしれません」
あやかの言葉に明日菜と木乃香は祐のことを思い、表情を暗くする。しかし、明日菜は何かを決めたのか顔を上げた。
「祐がこのことを聞いて、あの時のことを思い出してまた辛い気持ちになってるなら、それで誰かにそばにいてほしいって思ってくれるなら、私は前と同じようにする」
そう言った明日菜を見て、木乃香は笑顔を見せて明日菜に続いた。
「そや、前みたいに…ううん、前以上に祐君のそばにずっとおる。そんで寂しいなんて思わんくてええぐらい、いっぱいお話するえ」
あやかは二人の発言に若干驚いた顔を見せた。だがすぐに優しい笑みへと変わる。
「あなた方二人がどうしようか迷っている様なら、背中を叩いて差し上げようと思っていましたが…どうやらその必要はなさそうですわね」
そう言うあやかはどこか嬉しそうだった。
「そう言うあんたこそ、私達に背中押して欲しかったんじゃないの?」
明日菜が少しにやけながらあやかを疑う。
「明日菜も委員長も素直やないからなぁ」
「「一緒にすな‼︎」」
「ほらそっくり」
木乃香はクスクスと笑い出した。それを見て明日菜とあやかは罰の悪そうな顔をする。何とか流れを変えようとあやかは咳払いをした。
「んんっ!とにかく今後の方針が決まったところで今祐さんがどうしているのか確認しませんと」
「そうやな、明日菜も言わなあかんこともあるし」
「さすがにこの状況で渋るつもりは無いわ」
「うん、それがええって」
二人の会話がわからずあやかは疑問を浮かべた。
「じゃあとりあえず祐君に連絡を…」
「呼んだ?」
「「「うひゃあ⁉︎」」」
突然声をかけられ驚く三人。思わず三人で抱き合った姿勢になってしまった。その姿勢のまま声のした方を向くと、そこには件の祐が立っていた。
「ゆ、祐さん⁉︎貴方何故こちらに⁉︎」
「さっきまで学園長室で話してたんだ。そっから帰ってたら遠くから三人が見えたんで声かけようと思って。にしても君ら仲良いな」
そう言われて今の姿勢を確認した三人。明日菜とあやかが急いでその姿勢を解いた。間に挟まれていた木乃香は特に変化なしである。
「祐君、実はさっきな…」
「犯人の仲間の動画のことでしょ?」
木乃香が恐る恐ると言った感じで口を開くと、話題を見越していたのか祐がそう言った。
「もう知ってたのね…」
「うん、むしろすぐ見たよ。たまたまね」
それを聞いた三人は心配そうな顔になる。それを見て祐は困った顔をした。
「あ〜、さっきまで他の人らからも連絡が来てたからもしかしたらって思ってたけど、まさかここまで心配してくれてたとは。その割に本人がこんなんで逆に申し訳ないな」
「祐君無理しとらん?」
心配した表情のまま木乃香が聞いてくる。祐は頭を掻いた後、木乃香達を見た。
「勿論思うところがないわけじゃ無いよ。実際あのことを思い出したし、俺も一歩間違えてたらああなってたのかなとも思った」
心配そうな顔がさらに強くなる。祐はそれを見た後しっかり三人を見つめて言った。
「だからこそ自分がどれだけ恵まれているか再認識したよ。それに俺の中ではとっくに決着ついてる話だ」
「これは強がりで言ってるんじゃなくて本当にそう思ってる」
三人はその表情に嘘は見えなかった気がした。少しずつ三人の表情も明るくなる。
「と、まぁそんなことはいいんだ」
「いやそんなことって…」
本当になんともなさそうな祐を見て若干明日菜達は拍子抜けした。そこまで落ち込んでないのならそれに越したことは無いが。
「明日菜、昨日のことだけど」
「ちょっと待って!ストップ!」
祐が言おうとしたのを明日菜は急いで止めた。それに祐は驚いた顔をしている。
「もうあんたは謝ったでしょ?だから今度は私の番」
目を閉じ、自分の胸に手を置いて深呼吸をした明日菜は祐の目に視線をしっかりと向けた。
「昨日はごめん。私言い過ぎた」
祐も木乃香達も明日菜の話を黙って聞くことにしたようだ。
「あんなことがあって、不安になってた。あんたがまた何か危ない目に合ったんじゃないかって」
「でもそれだけじゃない。私、祐が直ぐに別の人たちを助けに行ったことに寂しくなってた」
「祐があの状況で、危ない目に合ってる人を見捨てられないのはわかってたはずなのに…」
「だからごめん!祐に私ひどいこと言っちゃった!」
そう言って頭を下げる明日菜。その姿勢のまま固まっている為祐の表情は見えない。
「明日菜」
名前を呼ばれゆっくりと頭を上げて祐を見る。その表情は優しいものだった。
「明日菜は何にも悪くないよ。不安になって、寂しくなって当然。明日菜が思ったことは何にも間違ってない」
「祐…」
「むしろあの時俺が…いや、もうやめよっか。お互いいつまでも謝り続けそうだし」
祐は苦笑いをしながらそう言った。
「だから、はい!俺もごめんなさい!仲直りしてください!それと良かったら、これからも俺の幼馴染でいて下さい!」
祐は明日菜に右手を差し出す。それを見て明日菜は少し目に涙をためながら笑った。
「やめようたってやめられないでしょ?幼馴染って」
明日菜が祐の手を取る。お互い優しく、かつ力ずよく手を握った。
「やめるつもりもないけどね。まぁ、一応これからもよろしく」
お互いの顔を見て笑う二人。それを見ていた木乃香も少し涙目だ。
「良かった~二人が仲直り出来て~。明日菜、仲直りの印にギュってしてあげたらええんとちゃうかな」
木乃香の発言に勢いよく明日菜が振り返る。
「なんでよ!?この握手がその印でしょ!」
祐はすっと明日菜の手を放す。
「さぁ、明日菜!来い!!」
「行かないわよ!」
全くこの二人は、集まるとたまにこうやって悪ノリをするんだからと少し呆れていると木乃香が後ろから走って来る。
「そんなこと言わんと。ウチも手伝ったるから。ほ~ら、ギュ~!」
背中から木乃香に抱き着かれ、そのまま祐のところまで押される。抵抗しようとするが無理やり振りほどく訳にもいかず、ズルズルと押され続ける。
「ならば…こちらからも!」
両手を広げ待っていた祐も動き出し、明日菜を木乃香と挟み撃ちにする。やがて距離が近づき、明日菜は祐と木乃香にサンドイッチにされた。
「あーもう!ほんと何なのよあんたら!」
「ええやん明日菜!仲直りのギュ~!」
「あれ明日菜、少し背伸びた?大きくなったんだなぁ…」
「あんたの方がでかくなってんでしょ!」
今までずっと黙っていたあやかは、しばらくぼーっとその光景を眺めていたが、はっとして祐達に詰め寄る。
「ちょ、ちょっと皆さん何をしているのですか!と言うかさっきから何の話をしてますの!?」
「なんや、いんちょも混ざりたかったんやな」
「そうならそうと言ってくれればよかったのに。ほら」
「何を言って…!ちょっと祐さん!?」
祐は右手であやかを掴み明日菜の隣に寄せた。突然のことに反応できず、すっとそこに収まってしまう。
「なんであんたまで来んのよ!」
「私の意志ではありませんわ!それに誰が好き好んで貴女の隣になんか!」
「なんですって!」
「こら二人とも~、今日ぐらい喧嘩せんと仲良うせな」
「「誰のせいだ!!」」
「ちょっと待って二人とも、俺方面に向いてる腕だけ暴れさせないで…さっきから肘がボディに入ってるから!」
昨日のことが嘘のように騒ぐ四人。そこには小学生のころから変わらない、幼馴染達の姿があった。
「なにあれ…」
「離れてたから会話は良く聞こえなかったけど、無事仲直り出来たんじゃない?」
「仲良しなのが一番だよね!」
四人から少し離れた物陰。そこから先ほど明日菜達の部屋にいた面々が覗いている。あやかが二人を連れだしたあたりからこっそりと後をつけて来ていた。距離が多少あったため会話の内容まではわからなかったが、なんだか丸く収まったようだ。
「み、みなさ~ん。やっぱりのぞき見は良くないですよ」
「何言ってんのネギ君、ネギ君だってずっとここから覗いてたじゃない」
「そ、それは…」
美砂の言葉にネギがたじろぐ。いけない事とはわかってはいたが、三人が心配なためその気持ちが勝ってしまった。
「雨降って地固まる、というやつですね」
「明日菜さんも木乃香さんも楽しそう。逢襍佗さんといいんちょさんも」
四人の姿を見て夕映とのどかは笑っている。昨日の二人の落ち込み具合を見ているからこそ安心したのだろう。
「な、なんて香ばしい…こんなことが現実にあっていいの…?」
「ちょっと早乙女、何ぶつぶつ言ってんの?」
「あんなもの見せつけられて、黙っていられないでしょクギミン!」
「クギミン言うな」
ハルナの呼び方に円が釘をさす。ハルナは俯いてわなわなと震えると、我慢の限界だったのか勢いよく物陰から飛び出した。
「くぉら~!真昼間っから見せつけてくれちゃって!私も混ぜろ~!!」
「ハルナさん!?貴方ついて来てたんですの!?」
「問答無用!」
あやかの質問に答えずハルナはそのまま混ざり始めた。
「なんか楽しそう!私もい~れ~て~!」
「ちょっと桜子!?」
「これは私達も乗るしかないか!」
「うえええ!なんで僕まで引っ張るんですか!?」
「み、みなさ~ん!みんな行っちゃった…」
「アホばっかです」
騒ぎは広がり、他の女子寮の生徒も窓からその姿を眺め始めていた。
「随分と楽しそうじゃないか、今混ざってくればお姫様と触れ合えるんじゃないか?」
「ふん」
窓からその様子を眺めていた真名が横にいる刹那にそう言うと、刹那は鼻を鳴らしてそっぽを向いた。
「やれやれ」
真名がそれを見て肩をすくめる。刹那は楽しそうにはしゃぐ木乃香を見た後、同じように楽しそうにしている祐に視線を向けた。
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話し合いが終わり、近右衛門のみが残っている学園長室に足音が近づいてくる。その人物は扉の前に着くとノックもせずに扉を開けた。
「なんじゃエヴァンジェリン、ノックもせんで。囲碁でもしに来たのかの?」
扉を開けたエヴァはいかにも不機嫌といった様子であった。
「今日の要件はそれではない。ジジイ、祐から何か話は聞いていないか?」
「祐君から?というと爆破事件の?」
「こいつには話していたのか…」
近右衛門の発言を聞いてエヴァはより機嫌が悪くなったようだ。
「なんじゃ、お主は聞いておらんかったのか」
「聞いてないどころか連絡の一つも寄こさん!にもかかわらず、お前には話しているとはあいつは何を考えている!」
「これこれ、わしに当たるでない。とりあえず落ち着いたらどうじゃ」
「ふんっ」
不機嫌なことを隠そうともせずエヴァはソファにドカッと座った。やれやれと近右衛門は思ったが、可愛い孫のような存在である祐の為に一肌脱ごうと向かいのソファに腰かけた。
「あの子にも何か考えがあるんじゃろう。前にも言ったが、祐君はエヴァに頼ってばかりではいられんと思っとるんじゃよ」
「確かに私をすぐに頼るなとは教えた。だが連絡もするなとは言っていない」
「心配ならばお主から連絡すればよいじゃろ」
「私から連絡したらこちらだけが心配しているようで負けた気がするだろうが!普通こういう時はあいつから私に連絡するものだ!」
(な、なんと面倒な…)
思わずそう口に出かかったが、近右衛門は何とか心の中に留めた。
「それにしてもエヴァンジェリン。お主も変わったのう」
「なんだ藪から棒に」
エヴァは訝しげな顔をした。
「10年ほど前はナギ君にぞっこんだったというに。今では祐君が心配でしょうがないとは」
「細切れにされたいのかジジイ!」
エヴァが立ち上がり、爪を伸ばして威嚇すると近右衛門は両手を上げる。
「フォフォフォ、老い先短い老人にそんなもの向けるもんではないぞ」
「よく言う、この妖怪ジジイめ」
爪をしまい再びソファに座るエヴァ。
「あいつには三年前に約束は果たさせた。今更未練も何もない。そもそも私は妻子持ちに手を出すほど落ちぶれてはおらん」
「そうじゃったな。晴れてお主は今や高校生となったわけじゃ」
「15年も中学生をさせられたがな!」
忌々しそうにエヴァは言った。彼女はとある理由からネギの実の父であるナギに、『登校地獄』なる呪いを掛けられ、長い間中学生として生活を続けてきた。それが三年前学園にナギが訪れたことにより、(でたらめな詠唱のせいで一週間ほどの時間を要したものの)呪いが解かれ無事に中学を卒業。今年から高等部へと進学した。
「エヴァ、わしはお主と祐君が出会ったのは運命だと思っておる」
「急にロマンチストでも気取りだしたか?」
「茶化すでない。お主ら二人には、お主らであったからこそ解決できた問題があった。違うか?」
エヴァはその質問には答えなかったが、否定もしなかった。
「あとわしは生まれながらのロマンチストじゃ」
「やかましい」
近右衛門は一息つくとエヴァを見て話し始めた。
「お主には感謝しておる。この学園に残ってくれた事、そして何より彼を気にかけてくれたこと。きっと真の意味で彼に手を差し伸べられたのはお主だけじゃ」
「祐君はお主の事を間違いなく大切に思っておる。だからこそお主の手をなるべく借りずに事態を収めたいと思っておるんじゃろうて」
エヴァは横目で近右衛門を見た後、大きくため息をついた。
「普段は寂しがり屋の甘えん坊のくせに、こういう時だけ格好つけおって…」
「フォフォフォ、家族は似るもんじゃな」
「……」
「すまんて…」
エヴァの鋭い視線を受け、近右衛門は即座に謝罪した。それを冷めた目で見つつエヴァはソファから立ち上がった。
「もうよいのか?」
「聞きたいことは聞けた。それにどうやら忙しいようだしな」
「それなりにの」
そう答えた後、近右衛門は改めてエヴァに声をかける。
「エヴァンジェリン、おそらく彼はこれから」
エヴァが手で制し、近右衛門に待ったをかけた。
「あいつ自身が決めたことなのだろう?なら私から言うことは無い」
「あいつはまだ子供とはいえ16歳だ。そろそろ自分の事は自分で決め始めてもいいだろう。必要以上に縛るつもりはない」
近右衛門は真剣な表情でエヴァを見つめる。
「全力で事に当たればいい。そうする為にあいつにはいろいろと教えた。まだまだ未熟だがな」
「手厳しいのう」
「当然のことだ。あいつはこれから幾多の事を選択し、幾多の事を間違うだろう。だがそれでいい。そうやって強くなる。そうしなければ祐は生きていけない」
エヴァはニッと笑った。
「どうしようもない壁にぶち当たった時は、私がほんの少しだけ助けてやるさ」
「それは何とも、頼もしい事じゃ」
「当然だ」
エヴァは笑顔で背を向け扉を開ける。そのまま歩みを進めるが、立ち止まって近右衛門に振り向き指をさす。
「言っておくが、私がお前に祐の事を聞きに来たと本人に言うなよ。言ったら本当に細切れにするからな」
「心得ておるよ」
それを聞くとエヴァは今度こそ学園長室を後にした。近右衛門は自分の机の椅子に座り、大きく息を吐いた。
「ふぅ、頼もしいが気難しい姉を持ったのう祐君」
「事件が終わっても、また別の問題で振り回される事になりそうじゃぞ」
そう言った近右衛門はどこか楽しそうであった。
一番好きな章は?
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序章・始まりの光
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幽霊と妖怪と幼馴染と
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たとえ世界が変わっても
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消された一日
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悪魔よふたたび
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眠りの街
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旧友からの言葉
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漢の喧嘩
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生まれた繋がり