Arco Iris   作:パワー系ゴリラ

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たとえ世界が変わっても

時は遡り、二週間前。

 

祐と士郎が川掃除を行った前日の夕方。あやかは自室で一人考え事をしていた。

 

あやかの住む場所は明日菜達と同じ寮だが、ポケットマネーでリフォームを行い個別に部屋がついている。同室は千鶴と夏美である。

 

あやかは思っていた。最近どうも自分の幼馴染達が変だと。

 

祐は元から変だがそう言った事ではなく、特に明日菜と木乃香は何かが変わった。その何かの正体はわからないが、心境の変化の様なものがあったのは間違いないと思っている。

 

それともう一つ確信している事がある。それは恐らく祐絡みだと言う事だ。

 

特に確証がある訳では無いが、あの二人からほぼ同時期に変化を感じた事、三週間ほど前の女子寮前でのやり取りから察してそうだろうと踏んでいた。

 

「明日菜さんも木乃香さんも、どうも妙です。何か、こう…余裕が生まれた様な…一つ大人になった様な…」

 

そこまで考えて頭を振った。

 

「わかりませんわ…。木乃香さんならまだしも、明日菜さんがどこか成長した様に見えるなんて…。祐さんが関係しているのは間違いないとは思いますが、一体何を…」

 

あやかがある予想に辿り着き、机を叩いて勢いよく立ち上がる。

 

「まっ、まさか…祐さんと明日菜さんと木乃香さんが⁉︎いえ、でも三人ですし…そのまさかの三人でお付き合いを⁉︎」

 

何を馬鹿な事をと思ったが可能性はゼロではない。何せあの三人は小さい頃から取り分け一緒に過ごす時間が長かった。今でこそそんな事はもうしないが、一緒にいれば必ずあの三人は手を繋いでいたくらいだ。

 

「そ、そんな…私の知らぬ間にそこまで進展していたなんて…」

 

頭を抱えて項垂れた様に机に伏す。しかし次第に全身をワナワナと振るわせ始めた。

 

「納得いきませんわ!仮にそういう関係になるのなら、なるかもしれない時点でまず私に話を通すのが筋と言うもの!そもそも祐さん達にそう言った事は早過ぎます!」

 

誰に説明しているのか、あやかは部屋を忙しなく歩き回りながら言った。

 

「特に祐さんは小さい頃から何一つ変わっていないのですから、恋愛と言うものをよくわかっていない可能性があります!そんな状態でお付き合いなどよろしくありません!」

 

「ここは幼馴染代表として、祐さんにはしっかり恋愛とは何であるかを」

 

一人力説をしている時、あやかのスマホが着信を知らせる。画面を覗くと祐からの連絡だった。

 

思わず声が出そうになるが何とか抑え、一度深呼吸をすると通話ボタンを押した。

 

「も、もしもし?」

 

『こんばんは、俺は逢襍佗祐って言います』

 

「知ってます…。何か御用ですか?」

 

相変わらず過ぎる祐に呆れる事で、あやかは少し冷静になった。

 

『来週か…まぁ、再来週でもいつでも良いんだけど、あやかの暇な日を教えて欲しいんだ』 

 

「私の?何かなさるのですか?」

 

珍しい事もあるものだと思った。祐の方から自分の予定を聞かれるなど、初めの事かもしれない。

 

『あやかに話したい事があるんだ。暇な日があるなら、俺に付き合ってほしい』

 

「⁉︎」

 

間違いない。これは先程自分が考えていた事を報告しようとしている。

 

(やはり三人は付き合っている⁉︎まだ決まった訳ではありませんが、このタイミングとなると疑わざるを得ません…。はっ!)

 

そこであやかは祐の目的を予想して一つの答えに辿り着く。そう…これは自分に明日菜と木乃香の二人と付き合っている事を明かし、自分もその中に入る様言うつもりではないのかと。

 

自分とて祐の幼馴染、彼にとって一番身近な異性の一人だ。自慢ではないが容姿端麗、成績優秀、品行方正を地で行く自分を祐がそういう目で見たとて何らおかしな話ではない。と思いつつ、正直言って彼がそういう目で人を見ているのは想像できないが、それは今は置いておく事にした。

 

(明日菜さんと木乃香さんだけでは飽き足らず、この雪広あやかまでモノにするおつもりですか⁉︎なんて事…貴方はいつの間にそんなケダモノになってしまわれたのです!)

 

当たり前だがここまで全てあやかの想像であり、実際祐はそんな事は微塵も思っていない。

 

(しかし何とお答えすれば……って!何を考えているんですあやか!私にはネギ先生という心に決めたお相手がいるではありませんか!キッパリ断る以外あり得ませんわ!それを何故祐さんの様な方に)

 

そこであやかの目に、机に飾ってある写真が映る。それは祐の家にもあった幼い日に幼馴染達で撮った写真である。そこに映る彼の笑顔は今になっても変わらないもの。あやかは祐の笑った顔が嫌いではなかった。

 

『おーいあやか?どうした、死んだのか?』

 

「縁起でも無い事仰らないで頂けますか⁉︎少しぼーっとしていただけです!」

 

「ぼーっとしてる時間長くね?そんなに俺の話はつまらねぇってか!?」

 

「い、いえ…そう言う訳では…」

 

『まぁ、無事ならいいや。んで、暇な日ってある?』

 

「そうですね、少々お待ちください」

 

通話しながら卓上に置いてある愛用の手帳を開く。

 

「来週の日曜日でしたら。いかがですか?」

 

『おし、じゃあその日で。場所はそうだな…麻帆良湖に行きたい』

 

祐の好きな場所、学園都市と外を繋ぐ大橋・展望台・そして今回の湖。あやかも他の幼馴染の例に漏れず、よく祐に付き合わされた場所だ。

 

それを聞いて、気付けばあやかは笑っていた。

 

「相変わらずですね。図書館島ではなく、その湖に行きたがるのは貴方ぐらいですわ」

 

『そうか?あそこいいとこだろ、水も綺麗だし。都会と違って水が死んでない』

 

「死んでない…仰りたい事はわかりますけど…」

 

『ではそういう事で、来週の日曜日な。女子寮の近くの公園で待ち合わせって事で。時間は10時でどうっすか?』

 

「ええ、かしこまりました」

 

『よし、首洗って待っとく』

 

「物騒ですわね」

 

『なんせ相手があやかだからなぁ』

 

「おかしな事が聞こえた様な気がしましたが、聞き間違いでしょうか?」

 

『あっ、バイトの時間だ。失礼』

 

そう言ってこちらの返事を待たず通話を切った。まったくもって勝手な人だと思う。そもそもバイトなんてしていないだろうに。

 

「ふふっ」

 

良くも悪くも変わらない祐にあやかは笑った。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

 

そして約束の日当日。いつもより少し早めに起きたあやかは支度を始めた。

 

「あら?どうしたのあやか、いつもより早いわね」

 

「おはようございます千鶴さん。本日は少し用事がございまして」

 

部屋から出てきた千鶴と挨拶を交わす。夏美はまだ夢の中である。

 

「そうなの。誰かと出かけるのかしら」

 

「ええ、まぁ…」

 

「彼氏、だったりして」

 

勢いよく立ち上がり、千鶴と向き合う。

 

「そんな訳ありませんわ!た・だ・の!お友達です!」

 

「あらあら、ごめんなさい?一緒に行くのは逢襍佗君なのね」

 

「な、何故それを…」

 

千鶴は両手を合わせ、にっこりと笑った。

 

「さっきの反応からもしかしたらと思ったけど、やっぱり逢襍佗君だったのね」

 

「千鶴さん!嵌めましたね!?」

 

「隠さなくてもいいじゃないあやか。幼馴染なんですもの、楽しんでらっしゃいな」

 

「ぐっ…」

 

出会った時からそうだったが、千鶴にはまだまだ敵わなそうだと改めて思ったあやかだった。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

 

集合時間より少し早めに公園に着いたあやかは、既に到着している祐の背中を見つけた。近寄ると声を掛ける。

 

「祐さん、お待たせしました」

 

「おっすあやか。早いね」

 

「貴方は少なくとも集合時間の10分前には来ますから。何故かそこだけはしっかりしてますものね」

 

「何を言うか、他もそれなりにしっかりしてるよ」

 

「もう少し客観的な視野を持った方がよろしいかと…」

 

「あやか、何時からそんなブーメラン投げるの上手くなったの?」

 

「どういう意味ですか!」

 

「あっ、もしかして今かぶってる白い帽子は投擲武器か!?お前スピードワゴンだったのか!?」

 

「そんな訳ないでしょう!」

 

スピードワゴンが何なのかはわからなかったが、この帽子は投擲武器ではないので否定しておいた。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

 

それから二人は麻帆良湖を目指し、途中で昼食を取りながらゆっくりと進む。

 

「あやかも明後日には誕生日か、今年の誕生日は楽しみにしといて損はないと思うよ」

 

「気になる言い方ですわ…変な事企んでいるのではないでしょうね?」

 

「大丈夫大丈夫!たぶん驚くけど、きっと良い事があるはずだから」

 

そう笑う祐からそれが本心だという事が分かった。あやかは少し恥ずかしくなり、それをごまかす様に言葉を並べた。

 

「だといいのですけど。くれぐれも私の誕生日におかしな事はしないで頂きたいですわ」

 

「わかった、取り敢えずA組の教室を前日の夜から風船で埋め尽くしておくよ」

 

「やったら張っ倒しますからね」

 

「バイオレンスだよこの人…そう思いませんか?」

 

「えっ?」

 

「人を巻き込むのはおやめなさい!」

 

たまたま隣を歩いていた男性に話しかける祐。当然男性は困惑し、あやかがそれを叱る。さながら親子の様だった。

 

その後もとりとめのない話をしながら歩く二人。どちらも意識する事なく待ち合わせ場所からここまで会話が止まずにいるのは、やはり二人が気心の知れた仲だからに他ならないのだろう。

 

それなりの距離があったものの、気づけば目的地が見えてきた。

 

「お、見えてきた見えてきた。相変わらずでけぇな図書館島」

 

目的地である麻帆良湖の中心には『図書館島』と呼ばれる図書館が存在する。その名の通り浮かんでいる島全体が図書館であり、その大きさは図書館としては世界最大級を誇る。

 

また蔵書の増加に伴った増改築が地下に向かって繰り返された結果、最早その全貌を知る者はいないとさえ言われている。その為図書館島を探索する図書館探検部と言う部活が存在する程である。

 

二人は砂浜に向かうと祐がどこからかレジャーシートを取り出した。

 

「どうぞお嬢さん」

 

「今どこから取り出したんですか…?」

 

「そこからは企業秘密となります」

 

「はぁ…取り敢えずありがとうございます」

 

呆れながらシートに座って帽子をとり、自分の左側に置く。それを見から祐は右隣に座り、暫く二人は湖を眺めた。

 

「変わりませんわね、ここは」

 

「うん。好きな場所だから、ここはあまり変わってほしくないなぁ」

 

どこか遠くを見てそう言った祐をあやかは横眼で見た。

 

「そんじゃ、あやか。本題に入るとするよ」

 

正直言うと、あやかはすっかりその事を忘れていた。久し振りに二人で出かけるという事が先行し過ぎて本来の目的はどこかへ行ってしまっていたのだ。

 

そうだ、自分は爛れた関係となっている幼馴染達を何とかしなければならない。あやかは祐が何か言う前に祐の方を向き、両手をついて前のめりになった。

 

「祐さん!」

 

「えっ、なに?」

 

驚いた顔であやかを見る。まさか今このタイミングで声を掛けられるとは思っていなかった。

 

「人様の恋愛事情にとやかく言うのは褒められた事ではないかもしれませんが、あなた方は私の幼馴染!浅からぬ関係だと自負しております!」

 

「お、おう…そうだね…」

 

「だからこそ言わせて頂きます!祐さん!流石にいきなり二人同時にお付き合いを始めるのはやり過ぎです!」

 

「………ん!?」

 

祐は困惑の表情をより強くした。しかしあやかは止まらない。

 

「確かに、貴方にとって明日菜さんと木乃香さんは比べる事が出来ないほど大切な存在なのかもしれません…。しかしだからと言って一遍になんて!あまつさえその…わ、私まで手に入れようなどと!破廉恥ですわ‼」

 

「お前何言ってんの!?」

 

普段よく言われるこの台詞を、まさかあやかに言う時が来るとは祐は思いもしなかった。

 

 

 

 

 

 

「そ、そうですか。祐さん達は付き合ってるわけではなかったのですね…」

 

その後何とかあやかを落ち着かせ、三人が付き合っているという誤解を解く事には成功した。

 

「逆に何でそう思ったんだよ…」

 

「それは、その…。何やら最近お二人の様子が変わったように思えて」

 

「明日菜と木乃香がか?」

 

「はい、どこか…ほんの少しだけ大人びた様に見えたんです」

 

「なるほどな…」

 

祐はそれを聞いて納得したような顔をした。あやかはその顔を見て確信する。

 

「やはり、貴方は何か知っているんですね」

 

「うん、たぶんあやかに話そうと思ってた事も関係がある」

 

祐はあやかを見る。その表情は真剣で、滅多に見ない表情にあやかは緊張した。

 

「まず、あやかやみんなに隠してた事がある。俺の事だ」

 

「8歳の時、あの事件に巻き込まれた時に…俺は変な力が使えるようになった」

 

右手をかざし、湖へと向ける。掌に虹色の光が集まると、それは光弾となり湖へと飛んでいく。水面を突き抜け大きな水しぶきを上げた。その光景をあやかは黙って見つめている。

 

「これが何かは未だにわかってない。この力でどんなことが出来るのかも手探り状態だ。色んな事が出来るって事はなんとなくわかってるけどね」

 

「これが俺の隠してた事。あやかに話したかったのはこれだ」

 

そこで祐は湖に向けていた視線をあやかに向けると、呆気にとられた顔をした。あやかがこちらを感極まった様な眼差しで見つめていたからだ。

 

「あやか?」

 

思わず祐が名を呼ぶとあやかの右手が祐の頬に触れた。

 

「やっと…やっと話してくださいましたね」

 

あやかは優しく微笑む。頬に触れたその手から温もりを感じる。

 

「貴方が、祐さんが私達に何かを隠している事は…いいえ、何か問題を抱え込んでいる事はわかっていました」

 

次に祐の表情は困惑に染まった。これでも隠す事は、悟られない事にはそれなりに自信があったからだ。

 

「私から聞こうとしなかったのは…きっと、きっと祐さんが私達に話さないのには理由があると思ったからです。本当はすぐにでも聞きたかった。貴方が抱えている物を、少しでも一緒に抱えてあげたかった」

 

「でも、待つ事にしました。いつか時が来たら、私がそれを聞くに値する人物と思って頂けたなら…貴方から聞かせてくれる筈だと」

 

「やっと、そう思って頂けたのですね」

 

祐は表情を暗くした。彼女にこんな風に思わせていた自分の不甲斐なさに耐えられなかったからである。

 

「ごめん、ごめんあやか…。俺が悪いんだ、俺が弱かったからみんなに話せなかった。話すのが怖かった。それ以外の理由もある。でもきっと一番の理由はそれなんだ」

 

不意に今度は身体に温もりを感じる。それはあやかが自分を抱きしめたからだと気付くには、少し時間が掛かった。大分思考が遅れているなと祐は他人事のように思った。

 

「いいえ、貴方は弱くなんかありません。これを伝えるのが簡単な事ではないというくらいは、私にもわかります。それを伝えてくれた貴方は決して弱くありません」

 

僅かにあやかの抱きしめる力が強くなる。その力以上の強い思いをあやかから感じた。自分の身では有り余ると思うほどの強い思いだった。

 

いつだって自分が敏感に感じ取れるのは、基本的に悪意と違和感と自分に害をなす危機感の様な物だけだ。それ以外の物は意識を集中させなければなかなか感じ取れない。

 

それが今、触れ合っているからとはいえ集中せずともこんなに温かい思いを感じる事が出来る。きっと自分がもう少しでも心がまともだったのなら涙を流す事が出来ただろう。

 

涙で心情を現す事が出来ない歯痒さを押しつぶし、あやかを抱きしめ返した。

 

「大丈夫です。祐さんの気持ちは、しっかり私に届いていますよ」

 

祐は今日ほど涙を流せなくなった事を悔やんだ日は無い。どういった意図であやかがそう言ったのかはわからない。それでも、そのあやかの言葉に祐は確かに救われた。

 

「ありがとう、あやか」

 

「今更ですわ」

 

お互いもう一度力を強めると、相手に回していた腕を離して距離を開ける。

 

「なるほど。明日菜さん達に変化があったのは、この事を伝えたからなのですね」

 

「だと思う。これ以外にもあるし、俺の考えが自惚じゃなければ、だけど」

 

「自惚れの心配はないでしょう。それにしても、私があのお二人より後なのは些か納得出来ませんわね」

 

祐が顔を顰めて頭を搔く。

 

「それに関しては申し訳ない…。言い訳に聞こえるだろうけど、本当に順番に意図は無いんだ。ここの所色々と立て込んでて、そのタイミングでこうなったと言うか」

 

「まさか、爆破テロや河童の件ですか?」

 

「ご名答」

 

あやかは片手で頭を抱えた。

 

「はぁ…厄介事に縁のある方だとは思っていましたが、まさかそこまでとは…。そちらの事は話して頂けるのですか?」

 

「聞きたいならいくらでも。…あやか、俺は」

 

「これからも厄介な事に関わる、ですか?」

 

祐は堪らず苦笑いを浮かべた。

 

「参ったな…あやかには俺の事何でもお見通しか」

 

「もう10年ほどの付き合いになります。それに、祐さんはわかりやすいですからね」

 

「こりゃ敵わんわ」

 

「あら、それこそ今更ですわ」

 

祐の手に自分の手を重ねると、その瞳を覗き込む。

 

「何をしても、どこへ行っても、最後には必ず戻って来てくださいますね?」

 

「戻るよ、必ず。絶対に」

 

少しの間見つめ合うとあやかが微笑んだ。

 

「そこまで言うのなら、貴方を信じますわ祐さん。決してそれだけは破らないでくださいね」

 

「約束する。比喩でも何でもなく、命を懸けて」

 

祐はしっかりと頷いた。それを見てあやかも満足げに頷く。

 

すると突然強めの風が吹き、あやかの横に置いていた帽子が湖へと飛んでいく。

 

「まぁ⁉︎帽子が!」

 

「ワイに任しぃ!あやか!これ持っといて!」

 

そう言って祐は肩がけカバンやスマホをあやかに渡すと、湖へと走り出した。

 

「ダァー‼︎」

 

「祐さん⁉︎」

 

上着を脱ぎ、ウルトラマンが飛びかかる時の様な声を出して湖へとダイブする祐。泳ぎ始めると、まだそう遠くへは行っていない帽子を目指した。

 

あやかは驚きつつも、先程の虹色の光を使って何とか出来ないものなのかとどこか冷静に思っていた。

 

一心不乱に帽子を追う祐は遂に帽子を掴んだ。

 

「おっしゃ!獲ったぞあやか!あやか見てるか⁉︎」

 

こちらに向かって大きく手を振る祐。あやかはそれに対して思わず笑ってしまった。

 

(本当、おばかな人)

 

手を振り返し、あやかも湖に近づく。

 

(祐さん。きっとこれから貴方や私の周りで、この世界で沢山の事が起きて、色々な事が変わっていくのでしょうね)

 

 

 

それは人であったり、世の中だったり、世界そのものだったりするのかもしれません

 

変化とは悪い事ばかりではありません。でも、変わらないで欲しいものもあります

 

きっと、誰にでもあるはずです。勿論、私にもあります

 

祐さん、一つだけ…もう一つだけ貴方にお願いがあります

 

たとえ世の中が変わろうとも…たとえ、世界が変わっても

 

どうか貴方だけは、変わらないでいて下さいね

 

 

 

砂浜まで戻ってきた祐は帽子に光を纏わせ一振りすると、あやかに手渡した。

 

「乾いてる…?今のは?」

 

「水分だけ飛ばした。便利だねこれ」

 

「本当ですわね。早くご自分も乾かした方がいいのでは?」

 

「ダァー‼︎」

 

あやかにそう言われた祐は何故かそのまま湖に走って行き、再び湖に飛び込む。

 

「何をしてらっしゃるんですか!?」

 

暫く泳いで満足したのか、陸に上がると光で水分を飛ばして笑顔であやかの元へと帰ってくる。その時だけあやかは祐が大型犬か何かに見えた。

 

「どうしようもない人ですね貴方は…」

 

「それこそ今更、でしょ?」

 

「ええ、まったくもってその通りですわね」

 

きっと彼は変わらない。だからこそ信じられる。

 

決して短くない年月彼を近くで見てきた。だからこそ、あやかは自分のその考えに確かな自信があった。

 

彼はこれからも、自分にとって大切な人だ。そんな事、絶対に本人には言わないが。

一番好きな章は?

  • 序章・始まりの光
  • 幽霊と妖怪と幼馴染と
  • たとえ世界が変わっても
  • 消された一日
  • 悪魔よふたたび
  • 眠りの街
  • 旧友からの言葉
  • 漢の喧嘩
  • 生まれた繋がり
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