Arco Iris   作:パワー系ゴリラ

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消された一日
突然の交流会


薄暗い蔵の中、一人の少女が生気の感じられぬ顔で立ち尽くしていた。さらに異様なのはその少女が服を一枚も着ていない事と、少女の周辺に異様な姿をした蟲がいる事だ。

 

「魔術師である衛宮の小倅が何の知識も無いとは考えられん。それをお前には探って欲しいのだ」

 

その蔵に老人の声が響く。暗闇で姿はよく見えないが、その声は聞く者の心情を底冷えさせるような冷たさを有していた。

 

「大した才能は感じられんが、用心に越したことはない。なに、異常なまでに人が好いあの小僧の事だ。一人暮らしの手伝をしたい当言っておけば、無碍にはされんだろう。良いな?」

 

「はい、お爺様」

 

その表情に違わぬ感情の無い声で少女は静かに答えた。

 

「それと…もう一人。こちらはそこまで重要ではないが、少し気になる小僧がおる」

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「えっ?刹那さんってボーリングやった事ないの?」

 

「はい、お恥ずかしながらやってきた事と言えば剣術ぐらいのものでして」

 

A組の教室で明日菜と木乃香、そして刹那が会話をしていた。木乃香を通じて話す機会が増えた二人は、お互いを名前で呼び合うぐらいの仲になった。

 

「それだけやのうて、ゲームセンターとか遊園地とかも行ったことないんやて」

 

「なるほどねぇ。まぁ、刹那さんて真面目そうだしわからないでもないかも」

 

「せやからウチらでせっちゃんを遊びに連れてこうって話や」

 

「私は構わないけど、刹那さんはいいの?」

 

明日菜がそう聞くと刹那は照れたように笑った。

 

「お二人さえよければ、ぜひお願いします」

 

「オッケー。それじゃさっそく今日の放課後なんてどう?私もバイトないし、水曜だから部活もないでしょ」

 

「私は問題ありません」

 

「ウチも。や~ん、せっちゃんと遊びに行くなんて何年振りやろ」

 

嬉しそうに笑う木乃香を見て二人も笑った。

 

「じゃあ放課後そのままボーリングいこっか」

 

「…ちょっと、なんで美砂が行くことになってんの?」

 

いつの間にか横にいた美砂が当然のように話に入ってきた。

 

「堅い事言わないでよ明日菜」

 

「そ~そ~。私達の仲でしょ~」

 

これまたいつの間に来たのか円と桜子も参入してくる。桜子は明日菜にタコの様に巻き付いた。

 

「大人数になるから今から予約しておくわ」

 

「サンキューハルナ」

 

「ちょっとちょっと!なんか増えてるんだけど!」

 

「明日菜達だけずるいわよ?私達だって桜咲さんと仲良くなりたいんだから。てことでいいでしょ桜咲さん?」

 

「え、ええ…」

 

ハルナが刹那の肩に手を回してそう言うと、刹那は苦笑いしながら答えた。

 

「ええやんか明日菜。大勢の方が賑やかやろ?」

 

「木乃香が良いって言うんだから問題ないね!」

 

「はい、じゃあ集計とるよ~。今日放課後ボーリング行く人~!」

 

『はーい‼』

 

当人達を置いてきぼりにしてどんどん参加者が増えていく。A組は本日も通常運行である。

 

「なんかごめんね…?」

 

「いえ、賑やかなのがこのクラスの良い所ですから」

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「なぁ祐、今日暇か?」

 

「なんだ正吉、俺を狙ってるのか?」

 

「お前だけは死んでも嫌だ」

 

「それが親友に言う言葉かね」

 

休み時間。自分の席でぼーっとしていると、正吉が声を掛けてくる。いつもの調子で祐が発言すると、あんまりな返答が正吉から返ってきた。

 

「逆の立場なら何て言うよ」

 

「正吉に俺を狙ってるのかって聞かれたらって事?」

 

「そう」

 

「嫌って言うに決まってんだろ馬鹿かよ」

 

「なんだとテメェ!」

 

「やんのかこの野郎!」

 

二人は取っ組み合いを始めるが、祐が速攻で投げ飛ばされる。と言うより祐が自ら飛んでいった。

 

「こいつ、つえぇ…」

 

「あんたら何してんのよ…」

 

うつ伏せに倒れる祐の背中からしゃがんだ薫が聞いてきた。

 

「母さん…俺悔しいよ…」

 

「誰が母さんよ」

 

「棚町、息子の躾はちゃんとしてもらわないと困るぞ」

 

「こんな馬鹿な子知りません」

 

「君らさっきから酷くない?」

 

仮にB組にクラスカーストが存在するのなら、祐は間違いなく一番下だろう。

 

「んで、今日なんかあんの?俺は暇だ」

 

「それなんだけどさ、私らトゥテラリィだったっけ?そいつらが色々してた時期から全然遊べてなかったじゃない?だから久々に遊びに行こうってわけ」

 

「そう言う事。だから祐にも声を掛けたんだよ」

 

「なるほどね」

 

あの事件から早一ヶ月が経とうとしている。あれだけ騒がれていた彼らも今ではすっかり過去の存在となっていた。表情にこそ出さないが、祐としてはそれが悲しい事に思えた。

 

「わかった、俺も行かせてもらうよ。純一も来るとしてあとは誰が来るの?」

 

「僕それ今聞いたんだけど…」

 

自分の席から歩いてきた純一がそう言う。

 

「でも来るでしょ?」

 

「行きます」

 

祐がそう聞くと瞬時に答えた。

 

「せっかくだからクラスのみんなに片っ端から声掛けるつもり」

 

「思い切ったね薫」

 

「せっかくだから、ね。どうせ呼ぶだけタダよ」

 

「流石妖怪コミュ力女」

 

「それなんか嫌」

 

「よし、なら早速やっていくか。まずは天海さんに」

 

「あー、春香は来れないって。今日は事務所に行かなきゃならないから」

 

「じゃあ俺も帰るわ…」

 

「うわ露骨」

 

祐は仰向けになると手足を投げ出した。

 

「天海さんがいないB組の魅力って何だ?」

 

「「………」」

 

「そこで黙るなあんたら!」

 

祐の問いに純一と正吉は答える事が出来なかった。

 

「ほら、少なくともここに花がいるでしょ?」

 

「……そうだね!」

 

「何今の間?ムカつくんだけど」

 

「怒んないでよワカメ母さん」

 

「誰がワカメ母さんよ!」

 

「ぐへっ!」

 

怒った薫が祐にチョークスリーパーを掛ける。通常なら背の高さ的に厳しいのだが、祐が地面に寝そべっていた事が仇となった。

 

「まぁまぁ…それより、声掛けるなら早めのほうがいいんじゃないかな?」

 

「そうだな、んじゃ俺らは男連中に声掛けてくるわ」

 

「りょーかい」

 

「薫さん…そろそろ技解いて頂けませんか…」

 

腕をタップすると、薫が腕の力を緩めた。

 

「危ない…全部出でるとこだった」

 

「全部って何よ。アホな事言ってないでほら、手伝って」

 

「ふぇ〜い」

 

差し出された手を取り、祐が立ち上がる。

 

「まずどこから攻めようか?」

 

「私は楓達から攻めるわ」

 

「よし、じゃあ俺は遠坂さんを攻める」

 

薫が少し驚いた様な顔をする。

 

「マジ?いきなり最高難易度いくの?」

 

「え、何で?全員に声掛けるんでしょ?」

 

「いや逢襍佗、無駄だと思うぞ」

 

後ろから声を掛けてきたのは楓だった。横には由紀香と鐘もいる。

 

「何でや蒔寺氏」

 

「蒔寺氏?まぁ、いいや…遠坂は誰かと遊びに行くって事を滅多にしないんだよ。私は!遊んだ事あるけどな!」

 

どこか自慢げに語る楓を由紀香は苦笑いで見ていた。

 

「蒔寺さんが良いなら誰でも良さそうだけどなぁ」

 

「逢襍佗、表出ろ」

 

「それは置いておいて、実際遠坂嬢が難攻不落なのは有名な話だ」

 

「そうなんだ、燃えてきたな…」

 

「やっぱこいつ頭おかしいだろ」

 

「蒔ちゃん流石に失礼だよ…」

 

何故か闘志を燃やし始めた祐は、勇み足で綾子と話している凛の所へ向かった。それを見送り、薫が三人を見る。

 

「因みに三人は今日暇?良かったらパーっと遊ばない?」

 

「いいぞ」

 

「うん、私も」

 

「ふむ、たまには良いか」

 

「よーし、女子三人確保!」

 

薫による三人娘の勧誘はすんなり成功した。純一と正吉に遊びに誘われた男子達は、少なくとも女子が四人来る事が確定しガッツポーズをした。

 

「失礼御二方、今よろしいですか?」

 

「どうした逢襍佗?そっちから話し掛けて来るなんて珍しい」

 

綾子が反応すると、凛も祐を見る。その視線は僅かにだがこちらを警戒している様に感じた。

 

「なんか今日みんなで遊ぶって事になったんだけど、お二人もどうですか?宜しければぜひ」

 

「ふーん…まぁ、私は良いけど。遠坂はどうする?」

 

聞かれた凛は、振られた話題とは裏腹に真剣な表情で考え始める。それを見ていた祐はすげぇ悩んでんなぐらいに思っていた。

 

やがて視線を祐に向けると、にこやかに笑いかけた。

 

「皆さんさえ良ければ、ご一緒しようかしら」

 

「「マジっ⁉︎」」

 

後ろで一連の流れを見ていた薫と楓が声を揃えて叫んだ。男子は拳を天に掲げた。

 

「ほんと?やったー!勝ったぜ!イェェェェェイ‼︎」

 

そう言って祐は走って教室から出て行く。クラスメイト達は困惑した顔でその背中を見送った。彼は何に勝ったのだろうか。

 

「驚いた、遠坂が行くって言うなんて」

 

「私だってたまには良いかなって思う事ぐらいあるわよ」

 

綾子と凛が小声で話す。凛が誘いに乗った事に楓は何故か不満げだった。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

 

一年C組の教室でリトは机を挟んで友人の猿山と世間話をしていると、ドアから祐がこちらに走って向かってくるのが見えた。その姿を目で追っていると祐が目の前にくる。

 

「やったよリト、俺勝ったよ」

 

「いや何にだよ」

 

「世の中の風潮に?」

 

「何でお前が疑問系なんだよ…」

 

「おっ、猿山久し振りだね。元気?」

 

「お、おう…元気でやってるよ」

 

「そりゃ良かった。あっ、梨穂子。俺勝ったよ」

 

「あれ、祐?…何に?」

 

忙しなく今度は梨穂子に近寄った祐の背中を先ほどのB組と同じ困惑した目で見つめるリトと猿山。

 

「あいつ相変わらずだな…」

 

「ああ…」

 

気付けば先程の事は何処へやら、祐と梨穂子は既に別の話題で楽しそうに話している。それに対して近くにいた梨穂子の友人が呆れた顔をしていた。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

 

放課後、予定通りA組は学園都市内のボーリング場へと向かう。三人で話していた事が、最終的にはクラスの半数以上が参加する形となっていた。

 

「あれ?いいんちょネックレス着けてる。珍しいね」

 

「え、ええ。誕生日に頂いたものですわ。学園にいる際には着けていませんが、それ以外では着けてみようかと」

 

あやかの首元に掛けられていた物にまき絵が反応する。そこにはあやかの髪と同じ色をした花のネックレスが着けられていた。

 

「へぇ〜、かわいいねそれ。誰から貰ったの?」

 

「えっ⁉︎いやそれは…」

 

「あっ、いんちょそれ着けてるんか。良かったなぁあす」

 

「だあ〜〜‼︎ストップ!ストップ!」

 

横から顔を出した木乃香が何かを言いかけた瞬間、明日菜が素早く木乃香の口を手で塞いだ。

 

「ど、どうしたの明日菜…?」

 

「な、何でもないわよ?気にしないで!アハハハ!」

 

その光景にまき絵は首を傾げる。その後あやかの方を向くと、いつの間にか集団の先頭に出て早歩きで進んでいた。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「おっしゃ〜!今日は腕が千切れるまで投げまくるわよ!」

 

『おー!』 

 

「そこまで追い込むものなのですか?」

 

「刹那さん、基本的にうちのクラスの言う事は話半分に聞く方針でいこう?」

 

ボーリング場へと着いた一行は手続きを済ませ、エスカレーターで指定された階に向かう。

 

「あの…私はお金払わなくていいんでしょうか?」

 

「幽霊価格って事でいいんじゃないかな?」

 

「風香と史香は大丈夫?重いボール投げられる?」

 

「馬鹿にすんな!」

 

「パルは私達の事なんだと思ってるですか…」

 

「幼稚園児」

 

「「ひどい!?」」

 

風香と史香は中等部の時から多少背は伸びたが、未だに高校生はおろか中学生にも見えるか微妙なラインだった。本人達からすれば誠に遺憾である。

 

「ボールに振り回されて、自分ごとレーンに行かない様にね」

 

「美空まで!?」

 

「行くわけないだろ!」

 

そんな話をしながら目的地に着くと既に先客がボーリングを行なっていた。

 

「必殺!逢襍佗ボンバー‼︎」

 

「自分ごとレーンに突っ込んだぞ!?」

 

「何やってんのよ!あの馬鹿!」

 

「アイツやっぱり頭おかしいって!」

 

「お客様!困ります!」

 

A組の全員がその光景を黙って見つめていた。あやかに至っては頭を抱えている。

 

明日菜も呆れてその光景を見ていると、飲み物を取りに行っていたのか、コップを持ちこちらの近くで同じ様に呆れた視線で見ている凛と目があった。

 

「あら?貴女確かA組の…」

 

「あ、どうも」

 

「逢襍佗ボンバー!リターンズ!」

 

「お客様⁉︎」

 

気づくとあやかは猛スピードで祐に向けて走り出している。祐がシバかれるまで残り2秒の出来事だった。

 

 

 

 

 

 

あの後A組とB組が顔を合わせ、あれよあれよと言う間にクラス同士での交流会が行われる事となった。

 

何故そんなものを持っていたのかは分からないが、グループ分けアプリなるものをインストール済みだった桜子主導の元グループ分けが行われた。祐は隅でボロ雑巾の様に捨てられている。

 

祐と同じ班になった夏美が恐る恐る祐に近づき、同様に同じ班の美空も近寄る。

 

「あ、あの… 逢襍佗君、大丈夫?」

 

「うん大丈夫。村上さんと春日さんが同じグループか、よろしくね!」

 

「よ、よろしく」

 

「逞しいね逢襍佗君…」

 

しっかり話す事が初めてなのもあり、夏美は緊張した様子で美空はいつも通りであった。

 

 

 

 

 

 

「えっと、よろしくお願いします。神楽坂明日菜です」

 

「こちらこそよろしくね神楽坂さん。遠坂凛です」

 

凛・薫と同じグループになった明日菜が緊張気味に挨拶すると、凛がにこやかに返す。

 

「私は棚町薫、よろしくね!いきなりだけどさ、神楽坂さんて祐達の幼馴染の人?」

 

明日菜と凛達は体育の授業で一緒にはなるものの、話す機会も無かった為殆ど初対面と大差ない状態だった。

 

「あれ?何でそれを?」

 

「祐と純一がね、A組に何人か幼馴染がいるって言っててさ。一人はリボンと鈴が目印だって」

 

「なるほど…はい、幼馴染の一人です。純一は大丈夫だと思うけど、祐のやつはクラスで変な事してませんか?いやしてるか…」

 

そう聞く明日菜を見て薫は笑った。

 

「何言ってるかわからない事も多いし突拍子もない事よくやるけど、それでもいつも笑わせてもらってるわ」

 

「ねぇ、神楽坂さん。神楽坂さんから見て逢襍佗君ってどんな人?」

 

「私から…ですか?」 

 

凛からの質問に明日菜は呆けたような顔をする。

 

「ええ、逢襍佗君って結構謎な所が多いから。幼馴染の貴女から見た印象を知りたいなって」

 

「あ〜、それ私も気になるかも」

 

二人からの質問に明日菜は腕を組んで頭を捻る。

 

「見たまんまですよ。馬鹿な事やる時も多いですけど、決して悪いやつじゃないんで。まぁ、その…よければ見捨てないでやってください…」

 

「まさか、安心して。あんな面白いやつ見捨てたりしないわ」

 

「そう言って貰えると助かります」

 

「それと、私ら同い年なんだし敬語なんていらないって。私の事は好きに呼んで?」

 

明日菜は一瞬不思議そうに薫を見ると、やがて柔らかく笑った。

 

「うん、よろしくね薫。私は明日菜って呼んで」

 

「オッケー!よろしく明日菜!う~ん…な~んか明日菜からは苦労人の気配を感じるわ」

 

「そんな事は…どうだろう…」

 

ものの数分ですっかり打ち解けた二人。凛はそれをお淑やかに笑いながら見る傍ら、周りに悟られぬ様明日菜を注意深く観察していた。

 

 

 

 

 

 

「なんかごめんね逢襍佗君、せっかくの班分けの相手がA組の地味な子で」

 

「ちょっと待って、それって私も含まれてる?うちの濃いのに比べたら地味なの否定はしないけど」

 

瞬時に復活した祐は夏美・美空と席に着いてゲームのセッティングを行っていた。画面を操作していた祐が振り向いて夏美を見る。

 

「そんな寂しいこと言わないでよ村上さん。あんなに面白い話書けるんだからもっと自信持って」

 

「面白い話?」

 

「逢襍佗君、私村上〇樹じゃないよ…」

 

「凄いよ村上さん!欲しかった返しだよ!瞬時に持ってきてくれた村上さんから類稀なる才能を感じる。きっと貴女とはいい会話が出来る」

 

「あ、ありがとう?」

 

「じゃあ逢襍佗君、私は?」

 

「その髪型素敵。あと春日さんは健康的でセクシーだよね」

 

「お、おう…」

 

「ちょっとちょっとお兄さん、ウチのクラスメイトナンパするなら私を通してもらわないと」

 

「あらあら夏美ちゃん、妬けちゃうわね」

 

「逢襍佗はそういうタイプだったとは、少々意外だな」

 

「おいおい逢襍佗、あまり感心しないなぁ」

 

話を聞いていた隣のレーンから和美・千鶴・鐘・綾子が声を掛けてきた。

 

「ち、ちづ姉!揶揄わないでよ!」

 

「いかんな、このままでは軽薄な男と思われてしまう。ちゃんと責任感を持っている男だと証明する必要があるな…。という訳で、結婚しましょう那波さん」

 

「今千鶴は関係なかったでしょ!」

 

「困ったわ、あやかに何て言おうかしら?」

 

「乗るな乗るな!」

 

「那波嬢は意外と冗談を言うタイプか」

 

「うーん、氷室さん冷静!」

 

和美はツッコミに大忙しになった。

 

 

 

 

 

 

「あちゃ~、二本残ってもうた」

 

「気にしない気にしない!切り替えてこう!」

 

「力加減が難しいですね…」

 

「桜咲さんて結構力持ちなんだね」

 

「え、ええ。昔から剣道を嗜んでいましたので」

 

木乃香・刹那・楓・由紀香の四人は真っ当にボーリングを楽しんでいた。

 

「おっしゃー、近衛の仇を取ってやる!見といて!」

 

「蒔寺ちゃん頼むで~」

 

意気揚々とレーンに立つ楓。慣れた様子でボールを投げると、見事に全てのピンを倒す。

 

「へへ~ん!どうよ!」

 

「お~、ストライクや」

 

「お見事です」

 

満面の笑みで木乃香達とハイタッチをしていく楓。相当ご機嫌なようである。

 

「蒔ちゃん凄いね」

 

「なぁに、ようやく体が温まってきたところよ!なんせ私は『麻帆良の黒豹』だからね!」

 

「それ気に入ってるんだ…」

 

因みに麻帆良の黒豹は自称であり、まだ誰にも呼ばれてはいない。すると横の方から歓声が上がる。四人がそちらの方を向くと、歓声の元は明日菜達のレーンのようだった。

 

「すごっ!あの二人今のところ全部ストライクじゃん!」

 

「さっすが明日菜!運動神経だけは抜群だね」

 

「頑張れ明日菜ー!ここで負けたらなんも勝てないぞー!」

 

「せめて!せめてスポーツだけは!」

 

「うるさいわよ!」

 

「私こんな二人に挟まれてすっごくやりにくいんだけど…」

 

「ご、ごめんね薫…」

 

二人の異常なスコアに思わずそう言った薫に明日菜が苦笑交じりに声を掛けた。

 

「おっ、これは面白いものが見れるかも」

 

「美綴さん、どういう事?」

 

同じ様にその光景を見ていた綾子に和美が聞く。

 

「いやね、あの子に当てられて遠坂の目がマジになってるからさ」

 

そう言われて和美も凛を見る。確かにその顔は真剣そのものだった。

 

明日菜の番が終わり凛に回ってくる。ボールを取りに向かいながらふと明日菜と視線が合うと凛が口を開いた。

 

「本気でいきましょう。手加減は無しね」

 

一瞬キョトンとした明日菜だったが、すぐさまニッと笑う。

 

「もちろん!」

 

 

 

 

 

 

「はぁ、勝負事になるとすぐ熱くなるんですから」

 

「それは委員長も同じと思うネ」

 

「あら超さん、私はもう少し冷静でしてよ?」

 

「まぁ、そう言う事にしておくヨ」

 

飲み物を取る為、少し離れた場所からあやかが明日菜達を見ていると超が同じようにコップを持ってやって来る。

 

「それにしても、良いペンダントネ。素敵な誕生日プレゼントを貰ったようで羨ましいヨ」

 

「え、ええ。そうですわね…」

 

「明日菜サン達もいいセンスしてるネ」

 

「確かに少し意外で…超さん!?なぜそれを!?」

 

あやかが一瞬で顔を赤くする。

 

「なに、私の情報網を以てすれば大抵の事はお見通しネ。心配せずとも誰かにばらしたりはしないヨ」

 

「本当に侮れませんわね貴女は…」

 

超はにっこり笑うとペンダントを見る。

 

「その花はジャスミンカナ?委員長の髪と同じで黄色、黄色のジャスミンの花言葉は『優美』と『優雅』。そして委員長の名前…なるほどネ」

 

そう言ってあやかの顔を覗く。

 

「な、何ですか?」

 

「委員長、愛されてるネ」

 

「超さん!」

 

さらに赤みを増してあやかが叫ぶと超は愉快そうに笑った。

 

そんな中超がある方向に視線を向ける。釣られてあやかもそちらに視線を向けると、そこは祐達のレーンだった。

 

「周りが注目してない今こそ絶好のチャンスだよ村上さん!今ならばれないって!殻を破っていこう!」

 

「やっちゃえやっちゃえ夏美!」

 

「む、村上ボンバー!」

 

おかしな格好でボールを投げる夏美。祐と美空は大盛り上がりである。

 

「良い!良いよ村上さん!新しい村上さんの誕生だ!ハッピーバースデー村上さん!」

 

「アッハッハッハッ!夏美最高!」

 

あやかが急いで祐達の所に走っていく。

 

「祐さん!うちの夏美さんに変な事を教えないでください!」

 

「はっ!?ばれてる!」

 

焦る祐にあやかが掴みかかり拘束すると、そのまま流れるようにコブラツイストを決める。

 

「アーー‼」

 

「ギブ?逢襍佗君ギブ!?」

 

「しない!ノーギブ!いや!Never give up!」

 

レフェリーとなった美空に祐が首を横に振る。

 

「うむうむ、仲良き事は美しき哉。なんてネ」

 

因みに明日菜と凛の勝負は双方パーフェクトを達成し、引き分けとなった。

一番好きな章は?

  • 序章・始まりの光
  • 幽霊と妖怪と幼馴染と
  • たとえ世界が変わっても
  • 消された一日
  • 悪魔よふたたび
  • 眠りの街
  • 旧友からの言葉
  • 漢の喧嘩
  • 生まれた繋がり
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