時刻は22時。家々の明かりも消え始めた時間に仕事帰りの男性が自宅へと向かっていた。
普段通りの帰り道を歩いていると、ふと夜空を見上げる。そこには星の光に紛れて移動する赤い光が見えた。飛行機か何かだと思いつつ、歩きながら見つめていると少しづつその光が近づいてきている事に気が付く。
足を止めてその光を注意深く見つめると全貌が見える。それは正にUFOと呼んで差し支えない物であった。唖然としていると男性は眩い光に包まれた。
ふと気が付くと男性は自宅の部屋に立っていた。先ほど何かを見ていた気がするがよく思い出せない。辺りを見渡しながら、疲れているのかと目を擦っているとスマホが着信を知らせる。画面を覗くと同僚からの連絡だった。不思議に思いつつ電話に出る。
「もしもし?」
『やっと出たか!お前今日何してたんだよ!ちょっとした騒ぎだったぞ!』
男性は同僚の言ってる事がわからず首を傾げる。
「何言ってんだ?さっきまで一緒に仕事してたろ」
『はぁ!?今日はお前会社来なかっただろ!朝から電話したのに出なくて何かあったと思ったぞ!』
益々同僚の言っている事が理解できない男性。しかしこの同僚はこんな嘘を言うタイプの人間ではない。それに雰囲気からして冗談を言っているようにも聞こえない。男性は恐る恐る聞いた。
「…なぁ、今日って何日だ…?」
『7月7日だけど…お前大丈夫なのか?』
男性は画面を切り替える。そこには覚えのない大量の着信履歴と未読の文章が表示された。男性は腰を抜かし尻もちをつく。
『おい、もしもし?もしもし!?』
男性は冷や汗を流す。そもそも自分の勘違いでなければ、今日は間違いなく7月6日のはずだ。会社の同僚達と明日は七夕だと話していた。しかし表示は7月7日と出ており、無かったはずの連絡も確認できた。だとすると自分は7月7日に一体どこで何をしていたのだろうか。男性は暫く放心状態となっていた。
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「何か最近怪しい話が出始めてますよね?」
「ん?怪しい話って?」
「それってあれですか?一日だけ行方不明になるって言う」
麻帆良学園高等部の職員室。小萌の言った事に麻耶が聞き返すと、同じく聞いていたしずなが小萌に聞く。
「そうです!ここの所頻発していて、行方不明になった全員が同じ事を言ってるというものです!」
「同じ事?」
「はい。一人で夜道を歩いていて、気が付いたら24時間経っていたと言う証言をしているんです」
「つまり一日ぼーっとしてたって事?」
「それが、その日一日行方不明になった人物を目撃した人がいないそうなんです。しかも本人は一日経っていた事に自分では気づいていないので、原因は未だ不明なんです」
それを聞いて麻耶は疑うような顔をした。
「それってただ嘘をついていたって事はないの?」
「まぁ、その可能性はありますね」
小萌の言葉にしずなは苦笑いしながら自分の意見を言う。
「でも場所や人も一貫性が無いらしいので、何とも言えませんね」
麻耶はため息をつくと、疲れた顔で眉間を揉み始めた。
「十数年前なら何言ってるので済ませたけど、今の世の中の事考えるとそうも言えないのが面倒ね…」
「怪獣が出たとか、怪人を見たとか言っても嘘と断言出来ないですからね。どちらも実際いますし」
「逆にそれをいい事に嘘をつく輩も出るし、難しい問題じゃん?」
麻耶の背中を優しく摩りながら黄泉川愛穂が話に入ってきた。
「愛穂先生はどう思われます?この話」
しずなにそう聞かれた愛穂は腕を組んで視線を上に向けた。
「宇宙人の仕業、だったりして」
「可能性はあるからリアクションに困りますよ…」
麻耶はより疲れた顔をした。
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「一日行方不明?」
「そう、今ネットを中心に話題になってるの。その感じだと逢襍佗君はよく知らないみたいね」
昼休みに外のテラスで昼食を取っていた祐。するとやって来た和美が向かいに座り、挨拶もそこそこに先程の話をした。祐の反応を見て、和美は更に詳しくその内容を語る。
「つまり一日だけ行方不明になって、その後本人は何事もなく帰ってくると」
「それだけでもおかしな話なんだけど、何より一番気になるのは本人がその行方不明中の事を何も覚えてないって事なのよ」
「なるほど…」
食事を終え、手を合わせると祐は腕を組んで少し考え始めた。
「確かに不思議で興味深い話ではあるけど、どうして朝倉さんはこの話を俺に?」
そう言われた和美は笑って祐を見る。
「もしかしたら逢襍佗君、この事件に関わるかもしれないからさ」
「何でよ…起きてるのは学園外での話でしょ?もしかして片っ端から事件に首突っ込んでると思われてる俺?」
「首を突っ込んでるのか巻き込まれてるのか、もしくはその両方かって考えてるけど、どう?」
試す様な視線を受けて祐は頭を掻いた。
「いやどうって言われても、普通に暮らしてるだけだよ俺は」
「ふ〜ん」
「おうおう、信じてないのが伝わってくるよ朝倉さん」
和美は改めて笑うと席を立つ。
「まっ、この場はそれで収めてあげる。またね逢襍佗君」
「あ〜い」
背中を向けて歩き出す和美。祐がその背中を見ていると立ち止まり、こちらに振り向いた。
「そうそう、行方不明者は場所も性別も年齢もバラバラだけど唯一の共通点があるの」
祐は視線で続きを促した。それを和美が受け取り、続きを話す。
「行方不明者は全員一人暮らし。これがどう意味があるのかはわからないけど、何の関係もないとは思えないわ。じゃあね」
小さく手を振り、今度こそ和美は教室へと戻って行った。祐は少しの間遠くをぼんやり眺めると、荷物を持って席を立った。
祐も教室へと戻っていると見知った顔を見つける。
「やぁやぁ、慎二君じゃないか」
「げっ、逢襍佗…」
呼ばれた少年『間桐慎二』は祐の顔を見て面倒臭そうな顔をした。
「げっ、とは何だね慎二君。君と僕の仲じゃないか」
「自然と肩を組むな!」
スッと肩を組むと、瞬時に払い除けられてしまう。
「相変わらず尖ってんねぇ、そんなとこも嫌いじゃないぞ」
「お前、少し見ない間に厄介度が増してないか…」
「俺も日々進化しているんだよ慎二。いずれ第二形態に移行する予定だよ」
「頼むから第一形態のまま消滅してくれ」
「そうなったらお前を巻き込んで自爆してやるからな!」
「傍迷惑すぎるなお前!」
少々乱暴に頭を掻くと慎二は祐を見た。
「逢襍佗、僕はこれでも忙しいんだ。何せうちのDクラスはA組に勝るとも劣らない問題児だらけだからな。僕がしっかり纏めないと成り立たないんだよ」
「問題児?ああ、当麻とかだろ?困ったもんだね」
「そうだけどお前が言うな問題児」
「何言ってるかわかんないわ」
祐は首を傾げる。慎二の言ったことを理解出来ないといった顔で、慎二はこめかみに青筋を立てた。
「自覚が無いところが更に厄介だな!」
「愛してるぞ慎二!」
「うるさい馬鹿!」
慎二は祐に背を向けると歩き出す。
「あれ?もう行くのか?」
「言ったろ、僕は忙しいんだ。それにお前に関わってると碌な目に合わない」
「そんな事ないだろ、中一の時の山登りの遠足とか最高だったじゃん」
「それが最たる例だろ!あれのせいで僕の人生観は変わったんだからな⁉︎」
思わず振り返り、祐を指差した。怒り心頭といった具合である。
「どんな風に変わったのよ?」
慎二はどこか遠い目をして語り出した。
「僕が一番に求める物が平穏になったんだよ。劇的な事なんて起こらなくていい、ただ静穏に暮らせていればそれで十分と思える様になったんだ」
「ジジイみたいだな」
「誰のせいだ!誰の!」
大きくため息をつくと、再度祐を指差した。
「言っておくけど逢襍佗、僕はもうあんな大怪獣バトルに巻き込まれるのはごめんだからな!頼むから僕に面倒事を持ってくるなよ!」
「わかったよ慎二。ところで最近起こってる行方不明の事件なんだけど」
慎二は脇目も振らず全力疾走で祐から離れていく。それを見た祐は楽しそうな笑顔を浮かべた。
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19時を過ぎた頃、本日の仕事を終えた愛穂としずなが教員室から出てくる。
「は〜、今日も一日終わった終わった」
「新学期が始まってもう三ヶ月ですね。早かった様な長かった様な…」
「私はあっという間だったかな。色々と騒がしかったからね」
「ええ、本当…この三ヶ月だけでも色々ありましたからねぇ」
疲れた様に言うしずなに愛穂は笑うと、やがてその表情をつまらなそうに変えた。
「でもうちのクラス、良い子ちゃんばっかりで張り合いがないんだ。若いんだからもっとやらかしてくれてもいいじゃん?」
愛穂が担当する2年E組は他の濃いクラスに比べれば確かに地味かもしれないが、至って普通のクラスである。
「良い子なのが一番だと思いますが…」
「え〜、そうかぁ?」
苦笑いで返すしずなと変わらずつまらなそうな愛穂。
「その点一年のA組とD組は面白いじゃん、高畑先生とネギ先生、小萌先生が羨ましいじゃんよ」
「まぁ、賑やかな子達ですからね」
「あとB組!女子も男子もなかなか面白い連中じゃん?特に、逢襍佗には結構期待してるじゃん」
「ああ、逢襍佗君ですか。確かに何かと話題に事欠かない子ですね」
「除霊されそうになってる幽霊の女の子を助ける為に朝のホームルームを欠席するとか流石に笑ったじゃん」
「あれは私も驚きましたよ。実際幽霊を初めて見ましたし」
しずなも祐の話はよく聞く。主な情報源は担任の麻耶で特にA組所属の幽霊少女、つまりさよの一件が起こった当初などは職員室もそれで話題が持ちきりだっだ。
そんな話をしながら、二人はそれぞれの帰路に別れる。
「それでは愛穂先生、明日もよろしくお願いします」
「おーう、お疲れじゃんしずな先生。帰り道気をつけてな」
「はい、愛穂先生も」
「私は心配ご無用じゃん」
「ふふ、そうかもしれませんね」
しずなは笑うと会釈をして帰っていった。暫くその背中を見送り、愛穂も歩き出す。
車で通勤をしている愛穂はマンションの駐車場に車を停め、自宅へと向かう。その途中空を見上げると赤く点滅する光が遠くに見えた。その光が地上に近づいているように見えた愛穂は妙な胸騒ぎを感じ、駆け足で光を追いかけた。
段々と近づく赤い光、その正体が飛行物体であると確認できる距離まで近づいた。走るスピードを上げつつ見失わない様視線は逸らさない。すると少し先に、一人の女性が光を見て立ち止まっているのが見えた。
愛穂が女性に声を掛けようとしたその瞬間、飛行物体から光が放たれ女性を包む。すると女性が光を渡って飛行物体へと吸い込まれていく。
「おいおい…ちょっと待つじゃん!」
走って何とか女性を掴もうとするも距離がありすぎた。女性は完全に姿を消し、
「まさか、電波障害か…!」
悔しさからUFOを睨みつける。それを嘲笑うかのようにUFOは夜空へと消えていった。
拳を握り締めるとスマホが機能を取り戻す。愛穂は無駄かもしれないとは思いながらも、警察へと連絡した。
ーーーーーーーーーーーー
翌朝。何時ものように学園へと登校中の祐の耳に周りの会話が入ってくる。
「ねぇねぇ見た?今朝のニュース」
「見た見た!また行方不明者が出たんでしょ」
「しかも今回はここからそんな遠くない所だし」
「マジやばいよね」
自宅にテレビを置いていない事と、スマホを必要な時以外あまり触らない祐にとってその話は初耳であった。これからはもう少し情報にアンテナを張るべきかと考えていると別の方からも同じ話題が聞こえてくる。
「なんか今回は目撃者がいたんだろ?」
「らしいね、でもUFOが来て人をさらって行ったって話でしょ?」
「どこまで信じていいかわかんないよなぁ」
「同感、あり得る話だけど証拠がないとね」
そんな会話をする生徒達を横目で見つつ、祐は教室へと向かった。
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職員室にて自分の席に座りながら、眠そう且つ不機嫌そうな愛穂が腕を組んで机の上のノートパソコンを睨みつけていた。
「よ、黄泉川先生…機嫌が悪そうです…」
「まぁ、しゃあないわ。なんせ証言したのに反応が悪かったんやろ?」
「彼女の人となりを知ってるなら疑わないでしょうけど、なんせUFOですからね」
少し離れた場所で小萌・ななこ・瀬流彦が小声で話す。
昨夜警察に連絡した愛穂はそのまま事情聴取を受けた。彼女が教員である事、そして超能力者事件などを管轄する政府公認の組織である
存在は確認されているものの、宇宙人が表立ってこの地球で事件を起こした事は今のところ無かった故の反応だったのかもしれない。もし愛穂の言う事が本当なら、この事件は超常犯罪対策部が担当する事になるだろうと言われ、一先ず自宅へと帰された。
同じ体育担当な事から仲のいい二ノ宮が愛穂の肩に手を置く。
「愛穂、あんまり寝れてないんでしょ?無理しないでよ?」
「大丈夫じゃん、と言うかイライラして寝れなかった…」
「どうどう」
そう言って背中を摩る。二ノ宮としては愛穂を信じてはいるが、懐疑的な態度だった警官達の気持ちもわからないでもなかった。
「ネギ先生はどう思います?UFOの話」
それを少し心配そうに見るネギ、すると横から声を掛けられる。養護教員の一人である御門涼子だった。
「御門先生、そうですね…僕は信じます黄泉川先生の事」
「それは何でか聞いても?」
「まず大前提に黄泉川先生は噓をつく人じゃありませんから。それについ最近幽霊も妖怪もこの目で見ましたし、UFOが何かしていてもおかしくないですよ」
「あら、意外と経験豊富なのねネギ先生」
そう言って笑い掛ける涼子。本人にそのつもりはないのだが、それでも溢れ出る大人の女性の魅力にネギは顔を赤くした。離れた場所から見ていた他の男性教員も顔を赤くした。
「ところでネギ先生、その肩に乗っているオコジョは何なのかしら?」
「えっ?ああ!この子は僕のペットのカモミールって言うんです!カモ君って読んであげてください!」
焦ったように早口で説明するネギ。涼子は突然のネギのテンションに困惑する。
「普段は寮にいるんですけど、今日は何でか付いて来ちゃって!一応学園長の許可は頂いていますし、普段はとってもいい子なんですけどねぇ!あははは!」
「そ、そう…」
涼子はカモに視線を向ける。何故かはわからないがカモから熱い視線が返ってきた気がした。
「もし体調が優れないようでしたら保健室に来てくださいね」
「ありがとうじゃん天原先生」
「そりゃいい。黄泉川先生が来てくれたら、ふゆきや御門先生目当てで保健室に来る輩が減るかもな」
「もう、桜庭先生はまたそんな事を言って」
もう一人の養護教員である天原ふゆきが愛穂に声を掛けると、同僚でありふゆきとは学生時代からの付き合いである生物担当の桜庭ひかるが気だるげに言った。
その後教員達に学園長から余計な混乱は避ける為、愛穂が事件の目撃者である事は伏せる様にとの通達があった。
ーーーーーーーーーーーー
「すぐそこに…すぐそこにスクープがあるのに…自らの目で確かめられないのがもどかしい…!」
「か、和美さん…元気出してください」
連日の怪事件を前に、何もできない事の悔しさから和美が机に伏せる。隣の席のさよは何とか元気づけようと声を掛けた。
「まったく相変わらずね…」
「如何にも和美ちゃんって感じやな」
明日菜と木乃香の二人は苦笑いで見ていた。
「でも行方不明がUFOの仕業やなんて、えらいSFやねぇ」
「まだ決まった訳じゃないけどね。でも最近の傾向からUFOなんじゃないかって私も思ってるわ…」
やれやれといった様子の明日菜に木乃香が小声で耳打ちをする。
「この事、祐君はどう思っとるんやろ?」
「どうって…あ~、どうなんだろ…。取り合えず後で連絡でも何でもして聞いてみましょ」
「そやね」
「そうですわね、それが一番でしょう」
「委員長何時からいたのよ…」
いつの間にか二人の後ろに立っていたあやかが顔を近づけ小声で話し掛けた。
「何をおっしゃいます明日菜さん、私達は祐さんの秘密を知る数少ないメンバー。情報の共有はするべきでしてよ」
「はいはい…」
「なんや秘密の会みたいでワクワクするなぁ」
「能天気なんだからあんたは…」
ーーーーーーーーーーーー
昼休みの時間帯、祐がトイレを済ませて歩いているとスマホに連絡が入る。メッセージを確認すると祐はある場所へと向かった。
目的地は生物工学研究会の部室。ノックをすると返事が返ってきた為部室へと入る。
「お早い到着ネ、待ってたヨ祐サン」
「どうも超さん、何かこうやって話すのも久し振りだね」
「何せ祐サンがここのところ引っ張りだこだったからネ」
「ほんと、忙しかったよ…」
ここ一カ月の出来事を思い出し、疲れたように言う。超はそれを笑うと、自分が座っている隣の椅子をトントンと叩いた。それを見てその椅子に腰かけると向かい合う。
「このタイミングで呼び出しが掛かるって事は、例の行方不明事件だよね?」
「うむ、その通りネ。と言っても犯人が何者なのかといった話では無いヨ」
「そうなの?」
「何せこの件はノーマークだったのと、時間もそう経っていない。故に私も犯人の目星は付いていないネ」
「なるほど、となると話って言うのは」
「祐サンは今回の件、UFOの仕業だと思うカ?」
「十分あると思ってるよ。むしろ、そっちの方が色々と納得できる」
それに頷くと、超は身を乗り出し祐に顔を近づける。それを祐が不思議そうに見ていると口を開いた。
「その事件の、UFOの唯一の目撃者は…他でもない黄泉川先生ネ」
「どこでそれをって聞くのは、無しだったね」
超はにっこりと笑う。それが肯定を意味している事は祐もわかった。
「先ほど言った通り、黄泉川先生が唯一の目撃者となる。ここが重要ネ」
「犯人が何者であれ、目撃者を放置しておきたくないのは誰でも同じはず。それが人間でも、宇宙人でも…ネ」
「黄泉川先生が狙われる可能性が高い」
「そうなるネ」
祐は視線を落とし、何かを考えると超に視線を戻した。
「ありがとう超さん、お陰でやる事が決まったよ」
「なによりネ、今回も期待してるヨ」
「期待?何を?」
「決まってるネ、貴方の活躍をヨ」
一瞬祐は真顔で固まると、徐々に困惑した表情になった。
「期待して貰えるほど良いもんじゃないよ?」
「私はそうは思ってないネ」
「お〜、信頼が重い」
話が終わると二人は部室を出て廊下を並んで歩く。
「毎回助かるよ。超さんには足向けて寝られないね」
「気にする事ないヨ、私と祐サンの仲ではないカ」
「それでもさ、超さんの情報には助けられてばかりだから…たまには何か返せればいいんだけど」
すると超は祐の腕に自分の腕を絡ませる。
「祐サンは私を都合のいい女とでも思ってくれれば良いネ。それに、お返しなら貰っているヨ」
「超さん…その言い方は危険過ぎる!危うく失神しかけた…」
「ほほう、これは思ったより効果がある様だネ」
したり顔で超は祐の顔を覗き込む。
「おのれ…弄びおって…。なら俺は超さんの都合のいい男になる」
「言ったネ祐サン?取り消しは出来ないヨ?」
「命だけは勘弁して下さい…」
「私を何だと思ってるネ…」
二人以外誰もいない廊下を、超は暫く腕を組んだまま歩く。しかし、そんな二人を背後から見つめる一つの影があった。
「気分転換に適当に歩いてたら、とんでもない現場を目撃してしまったわ…」
影の正体、和美は柱から僅かに顔を出しながら二人の背中を観察する。距離の関係で何を話しているのかまで聞く事は出来なかったが、少なくともあの姿はただの知り合い程度の仲と言う事はないだろう。
「遠くのスクープに囚われ過ぎて、近くのスクープに気付けていなかったとは…私もまだまだね。灯台下暗しってやつ?」
二人の姿をちゃっかり写真に収めると、その瞳がやる気で満ちる。
「逢襍佗祐…彼という存在の解明に、これは大きな一歩だわ!」
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