「お~、結構いるねぇ」
「流行り物に集りやがって!恥ずかしいと思わないのか!」
「祐君、私達何しに来たか覚えてる?」
最寄りの駅から歩くこと十数分、祐達は博物館へと到着した。閉館時間まであと二時間程にも関わらず、人の量は多く見えた。
「あっ、そうだ。みんなに写真送っとこ」
「いいでしょう」
ハルナがスマホを構えると祐を手招きした。
「せっかくだからツーショットにしようよ」
祐は素直にハルナの横に来ると構えられた画面を見た。
「これが噂の自撮りってやつか…。初めて見た」
「んな事ないでしょ…。てか祐君屈んで!顔入ってないから!」
「こっちの方が新しくない?」
「今新しさはいらないかなぁ」
「ハルナさんもう少し胴体伸ばして」
「出来るか!」
少しの会話の後、祐がしゃがんでハルナと高さを合わせた。するとハルナが祐と腕を組んで身を寄せる。
「めっちゃ近いけど大丈夫?」
「こっちの方が映えるでしょ!ほら笑って笑って!」
そういうものかと祐は深く考えず、言われた通り笑顔で画面を見つめた。
ーーーーーーーーーーーー
「む、ハルナからです」
「もう着いたのかな?」
寮の部屋で寛いでいた夕映とのどかのスマホにハルナからのラインが届く。夕映がそれを見ると、のどかも何故か夕映の画面を覗いた。自分のスマホを見ればいいのではないだろうかと思いつつ、そのままラインを開く。
「はわ~、二人とも楽しそうだね」
「少々近すぎる気もしますが」
画面には博物館をバックに、お互い満面の笑みを見せる祐とハルナが映っていた。
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博物館に入った祐達は周りを散策しながら最奥にあるカプセルへと進む。
「恐竜の化石とかちっちゃい頃に見てた時は、こんなのが動いて回ってたなんて想像出来なかったけど、今はもっと変な生き物がいるし人生わかんないもんねぇ」
「だね。それこそ恐竜とかまだ生きてても驚かない自身あるよ」
「なんせ怪獣はいるからね」
「ウルトラマンとかもいてくれたらなぁ」
「どっちも好きだけど、私は等身大の方が好みかな。仮面ライダーとか」
「そうなの?因みに一番好きなライダー何?」
「う~ん…ゼクロスかなぁ」
「渋っ」
展示物を見ながらそう話す二人。するとカプセルに続く列が見えてきた。
「まさに長蛇の列って感じね」
「ここをどれだけ楽しめるかで真価が決まると言ってもいいかもしれない」
「どゆこと?」
「待ち時間をどれだけ退屈せずに過ごせるか。それこそ腕の見せ所だと思うんだ」
「なるほどね」
ハルナが納得したように頷く。確か付き合う事になったらまず混んでいる場所か、旅行に行った方が良いと何かの雑誌で見た気がする。そこで色々見えてくるものがあるとかないとか。
「ハルナさん、今スマホの充電どのくらい?」
「へ?充電?…こんなもんだけど」
ハルナは自分が見た後祐に画面を見せる。バッテリー残量は96%と出ていた。
「よし!その充電の数値をなるべく落とさない様、ハルナさんを楽しませて見せましょう。帰りの充電の数値が楽しんだ数値とかってしゃらくせぇ事聞いた気がするから」
一瞬ハルナはぽかんとするが、すぐに笑った。
「そりゃ楽しみね、お手並み拝見と行こうじゃないの!」
「任せろ!まず上腕三頭筋の長頭って部分があるんだけどね」
「早くも数値落ちそうだけど大丈夫?」
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教会の礼拝堂にいつもの様に佇む綺礼。そんな時、礼拝堂の扉が開いた。
「いた!ちょっと!何で電話に出ないのよ!」
来て早々怒りをぶつけてくる凛に、フッと笑った後振り向いた。
「私とて、用事で電話に出られぬ時もある。それぐらいは許して貰いたいものだがな」
「用事って…ったく」
納得していない顔で凛は歩みを進める。近くに来ると凛と綺礼は向かい合った。
「例のはぐれ魔術師の事だけど、あいつは最近発掘されたカプセルを狙ってる可能性が高いわ」
凛の言葉に思うところがあったのか、悟られぬように綺礼は心の中でほくそ笑んだ。
「話を聞こう」
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「えっ!?プロテインて筋肉増強剤じゃなかったの!?」
「なんて事だ…日本のボディメイク知識はここまで…」
思いの外話が弾んでいた二人は、気が付くとカプセルの展示場所まで間もなくと言ったところだった。
「いよいよご対面ね」
「見てやろうじゃないかこの野郎」
列が進み、祐達がその流れに乗るとカプセルがその視界に映った。少し距離は離れているものの、その姿はしっかりと確認できた。
「銀一色って感じね。錆びてもいないし、これが四万年前の物なんだ。なんかロマンを感じるわ」
ハルナは興味深そうに写真を撮り始めた。様々なアングルから撮ろうと場所を移動する。一方祐は黙ってカプセルを見つめると、誰にも聞こえない程小さい声でぼそっと呟いた。
「これはダメだな」
「それはどうして?」
祐は左を向くと、一人の女性が笑ってこちらを見ていた。
「あ、失礼しました。声大きかったですかね?」
「いいえ、そんな事なかったわ。こちらこそ急にごめんね」
人が好さそうな笑顔だった。よく相手を見るとくすんだ赤色の髪をポニーテールで纏め、眼鏡をかけたスーツ姿の美女だ。
「それで、さっきの続きだけど…どうしてこれはダメなのかな?」
楽しそうに女性が聞いてくる。如何にも興味津々といった具合で。祐は少しの間女性を見るとカプセルに視線を移した。
「この中にはよくないものが入ってます。少なくともこれは、大勢の人の目に触れるべき物じゃない」
「そう思った理由、聞いてもいい?」
祐は改めて女性を見た。
「勘です」
女性は暫く祐を見つめると再び笑顔を見せた。
「そっか、じゃあきっとそうね」
その笑顔に祐も笑って返す。女性は暫しカプセルを見ると祐に手を振ってその場を離れた。去っていく女性の背中を見つめていると、離れていたハルナが戻って来る。
「いやぁごめんごめん、写真撮るのに夢中になってた。…祐君?どうかした?」
「いや、なんでもない。それよりどう?いい資料は撮れた?」
「うん!もうばっちり!おかげで創作意欲がどんどん湧いてくるわ!」
「そりゃ良かった。来た甲斐があったね」
間もなく閉館時間となる博物館から出ると、二人は少しして駅前へと着く。
「いや~お目当てのカプセルも見れたし、それ以外も結構面白かったわ」
「博物館てのも中々いいもんだね」
「でもまだ夜は始まったばかり!一応麻帆良には戻るけど、この後どう?明日は休みだし、とことん遊んじゃおうよ!」
「あ~、それなんだけどハルナさん…俺この後ここの近くで用事があるんだよね…」
申し訳なさそうに言う祐に、ハルナが驚きの声を上げる。
「え~!まさかの現地解散!?ギャルゲじゃないんだから!」
「いやごめん、俺としてもぜひハルナさんと遊びたいんだけど…なんせここの近くに住んでる友達と会う事になっててさ」
「そんなぁ…せっかく良さそうなとこピックアップしてたのに…」
視線を落として残念そうにするハルナに祐は優しく笑ってから、屈んでハルナの目線に高さを合わせた。
「ごめんね、先に伝えておくべきだった。もし嫌じゃなければまた二人でどっか行こうよ。そのピックアップしてくれた所、俺気になるからさ」
ハルナは落とした視線を上げて、上目遣いで祐を見た。
「ほんと?」
「勿論!埋め合わせって訳じゃなく、ハルナさんさえ良ければ喜んでご一緒させてもらうよ!」
そう言う祐を見てハルナは笑うと小指を出す。
「わかった、それじゃ今度付き合ってもらうからね?はい、約束」
「承りました」
ハルナと小指を絡め、指切りをする。
「約束破ったら祐君とネギ君で同人誌書くわよ?」
「なんだそれは…恐ろしい…」
指を離すとハルナは手を後ろに組んだ。
「駅はもうそこだし、お見送りはここまででいいよ」
「いや、せめて改札まで」
「大丈夫!ほら、お友達待ってるんでしょ?行ってあげて」
祐は少しハルナを見つめ、すぐに明るい表情を浮かべた。
「わかった。それじゃハルナさん、帰りは気を付けてね」
「うん。祐君も」
するとお互い相手を見て動かない。先に痺れを切らした祐が声を掛けた。
「あれ?行かないの?」
「祐君こそ」
「いや、改札行くまでまで見とこうかなって」
「いや!ここは私に見送らせて!そっちの方が良い女っぽいから!」
「えぇ…」
祐としては気乗りしなかったが、ここで押し問答をしても仕方ないと先に折れる事にした。
「じゃあ行くけど…いいの?」
「いいのいいの。ほら、私に良い女やらせて!」
祐は困った顔をすると頭を掻いて歩き出した。
「それじゃ、また」
「は~い、そんじゃまたね!」
背を向け離れていく祐を見つめるハルナ。暫くそうしてから改札に向かう為、後ろを向くと正面に人が立っていた。
「なにさパル、そんないじらしいとこもあんのね」
「は?あっ、朝倉!?あんたなんでグムッ!」
「はいはい、大きな声出さない」
突然目の前に現れた和美に驚いたハルナの口を素早く手で塞ぐ。
「取り敢えず落ち着いた?」
ハルナが頷くとそっと手を離す。
「んじゃ早速行きますか」
「行くってどこに?」
ハルナは様々な感情の籠った視線を向けると、和美は笑って答えた。
「決まってんでしょ?逢襍佗君の後をつけによ」
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留置所で源八はエクレル星人から話の続きを聞くところだった。
「じゃあ聞かせて貰おうか、あのカプセルにはなんて書いてあったんだ?」
「いいだろう、あのカプセルにはこう書かれていた」
ーーーーーーーーーーーー
閉館時間を迎え、明かりの落とされた博物館にどこからともなくローブを着た男が現れる。そのすぐ近くの地面には巡回中だった警備員が倒れていた。
男はフードの部分を下げると、現れた顔は傷だらけだった。カプセルに近づき、男はその表情を凶器の笑みで染める。
「やはり運はこちらの味方だったようだな。この巡り会わせはそうとしか言えない」
男はカプセルの表面に刻まれている古代文字に視線を向けて、その文字を読み始めた。
「我々は多くの犠牲を払いながら、遂にこの悪魔を封印する事に成功した」
この悪魔の怪獣『グルードン』により、我々の国は壊滅に追い込まれた。最後の生き残りである我々もそう長くはないだろう
我々は持てる魔力の全てを使い、グルードンを液体に変えこの檻へと封じた
奴は何度死のうとも蘇った。最後まで我々には奴の息の根を止める事は叶わなかった
未来を生きる者達よ、どうか我々を許してほしい
負の遺産を未来へと残してしまう我々を
そして、決してこの檻を開ける事なかれ
開ければ最後、この悪魔は暴れだし、再び多くの犠牲を払う事になるだろう
ーーーーーーーーーーーー
「以上が、カプセルに書かれていた事だ」
源八は冷や汗を流しながら眉間に皺を寄せる。
「本当なのか、それは…」
「先ほども言ったが、その判断は君達に委ねる。だが言わせてもらうなら、その怪獣が目覚めるのは私とて望むところではない。そんなものと事を構えるのは御免蒙る」
源八は椅子から立ち上がると電話をかける。
「くそっ!知ってたんならもっと早く教えろよ!」
「これでも最善を尽くしたと思うがね」
ーーーーーーーーーーーー
異変に気が付いた警備員達が集まってくると、ガラスを突き破りカプセルに触れている傷だらけの男が見えた。
「お前!何をしてる!それから離れろ!」
走って向かってくる警備員達。すると男がかざした手から紫色の光線の様な物が発射され、警備員の一人を貫いた。口から血を吐き倒れる警備員。
「何も恐れず、ただただ生を貪る愚か者どもが…遂に、遂に時は来たぞ!」
男は笑いながら、光線を乱射する。武器も持たぬ警備員達は近寄る事も出来ず、物陰に隠れるしかなかった。
「ようやく我らの悲願、達成の時だ。これまでの同志の犠牲が無駄ではなかった証明の為に!この星のバランスを保つ為に!」
男の体が光りだす。ローブを脱ぎ捨てると、身に着けていた衣類に無数の宝石が張り付けられていた。その一つ一つが輝きを放つ。
「人類が作り出したこの秩序を破壊する為!来たれ混沌!悪魔よ…再びこの大地に甦れ!!」
ーーーーーーーーーーーー
「ちょっと朝倉、なんで祐君の後つけるのよ」
「だって気になるじゃん?逢襍佗君の事。それにパルだってちゃっかりついて来てるじゃない」
そういう二人は祐から離れた場所で身を隠しながら後を追っていた。
「これは違うから、朝倉を監視してるだけだから。言っとくけど祐君はこれから友達に会うってだけよ?」
「それ、本気でそう思ってる?」
和美にそう返され、ハルナは訝しげな顔をする。
「どう言う意味?」
「多分だけど、それ嘘よ」
「なんでわかるのよ?」
「そうねぇ…強いて言うなら記者の勘ってやつかな」
得意げに答える和美に反して、ハルナは冷めた目で返した。
「信用できねぇ〜」
「何よ!これでも勘には自信があるんだから!」
「そうは言っても所詮朝倉でしょ?」
「失礼ね!あんただってパルの分際で今日は色気付いちゃって!乙女なのは苗字だけにしときなって!」
「私は元から乙女だわい!」
「よく言うわ!」
二人はヒートアップしつつも小声で言い合いをするという器用な事をしていた。
「とにかく!逢襍佗君が友達に会うってのはきっと嘘!それと私達に何かを隠してる!重大な事をね!」
「何よ重大な事って?」
「それを解き明かす為にこうやって…あっ、見失った…」
二人はその場で立ち尽くすと、ハルナが和美の肩を掴んで揺らした。
「何やってんのよ!このへっぽこパパラッチ!」
「うるせー!あんたが余計なこと言うからでしょうが!エロ同人作家!」
「エロだけじゃないです〜!全年齢対象も書いてます〜!」
「どっちにしろ書いてるなら変わんないわよ!」
二人から少し離れた場所で祐は今後の事を考えていた。
(取り敢えず学園長に電話か)
そうしてスマホに手を伸ばし画面を開こうとした瞬間、祐は博物館の方向に勢いよく視線を向けた。
「遅かった」
走り出す祐。少し遅れて大きな音が夜の街に響いた。
十数年間魔力を貯め続けた大量の宝石を触媒として起こされた解放の魔術に耐え切れず、身体がバラバラとなった男は、薄れゆく意識の中で形を変えたカプセルを見た。
(これで…世界は…)
この先の世界に真の秩序がもたらされる事を疑いもせず、男はその生涯の幕を閉じた。
カプセルが変形した事により外へと飛び出した液体はとてつもなく黒く、暗闇を連想させた。
やがて液体に稲妻の様なものが走ると爆発が起きる。大規模な爆発が建物を破壊すると、辺りに煙が立ち込めた。
爆発が起きた事で近くにいた人々は博物館から距離を取りつつ、スマホを構えている。巨大な煙が次第に晴れてくると、人々は己の目を疑った。そこには身長凡そ40メートル程の漆黒の怪獣、グルードンが立っていたからである。
二足歩行ではある様だが姿勢はやや前傾であり、太く長い尻尾があるという何処となくティラノサウルスを思わせる容姿をしていた。大きく異なる点は体の大きさと、額から生える角の存在であろうか。夜の暗闇の中、赤く光る目を動かし辺りを見渡している様だった。
その姿に呆然としつつもスマホでグルードンを撮り続ける人々。するとグルードンが口を大きく開ける。そこに赤い光が収縮していくと巨大な光弾を作った。そしてグルードンは光弾を口から向かいのビルへと発射する。
爆発を起こし、崩れ落ちるビル。そこでやっと人々は悲鳴を上げながら逃げ出し始めた。
「ちょっと、嘘でしょ…あれって怪獣⁉︎」
「スクープは望んでたけど、これはちょっとノーサンキューかな!」
グルードンの巨大さ故、離れた場所にいた二人もその存在を確認出来た。どうやらグルードンは周りを破壊しながら暴れ回っている様だ。
「これはやばいって!パル!もう少し離れるわよ!」
「わ、わかった!」
和美に続いて走り出そうとしたハルナが足を止める。和美は振り返ってハルナの肩を揺らした。
「何止まってんの⁉︎」
「その〜…祐君てあっちの方向に行かなかった…?」
冷や汗を流しながらグルードンのいる方向を指差し呟いたハルナを見て、和美も同様の表情になるがすぐに頭を振る。
「今は走る!まずはそれから!」
「だぁ〜!仕方ない!」
目を合わせてそう言うと、ハルナは頭を抱えてから覚悟を決めたのか頷く。和美も頷き返すと二人で走り出した。
暫く走っているとハルナのスマホが鳴る。走りつつも画面を見ると祐からの連絡だった。急いで通話のボタンを押す。
「祐君⁉︎」
『ハルナさん、良かった…怪我してない?』
「私は大丈夫!祐君は今どこ⁉︎」
『落ち着いてハルナさん、俺も大丈夫。あのデカいのから離れた所にいるし、怪我もないよ』
「そっか、良かったぁ」
立ち止まり、膝に手をつくと呼吸を整える。声が聞けた事で少し不安は解消された。ハルナの言葉から察したのか和美も遠くに見えるグルードンに気を向けつつ立ち止まって呼吸を整えた。
『ハルナさんは今どこに?』
「駅の正面から向かって左側に走って離れてるところ。だいぶ怪獣から距離は取れたと思う」
『わかった。俺は逆方向に向かって離れてたからすぐに合流は難しいけど、取り敢えずそのままお互いあれから離れよう』
「うん、こっちには朝倉もいるから。私の事は心配しないで」
『え?朝倉さんいんの?なんで?』
返答に困っていると和美がスマホのスピーカーのマークをタッチする。
「やっほー逢襍佗君、ちょっと野暮用で駅にいたらたまたまパルと会ったの。逢襍佗君も無事なんだよね?」
『おお、朝倉さん。うん、俺は大丈夫だよ。ごめん、一旦切るけどさっきも言った通りあいつからなるべく離れて。また連絡する』
「わかった、また後で」
『二人も気をつけてね』
通話を切ると二人は目を合わせる。
「取り敢えず、もうひとっ走り行きますか…」
「こんな真夏に…ついてないわ…」
ーーーーーーーーーーーー
通話が切れたことを確認した祐はグルードンに向けて再び走り出した。グルードンから離れる為走っていく人々の間をすり抜けつつ、逃げ遅れた人がいないか確認する。
すると瓦礫と化した建物の周りに数人の人がいるのが見えた。迷わずそちらに向かう。
「どうかしましたか?」
「瓦礫に足が挟まって動けない人がいる!」
「持ち上げようとしたんだけど重たくて無理なんだ!」
続けてそう叫ぶ人達から視線を移すと、倒れている男性を見つけた。祐はその瓦礫を掴む。
「お、おい君…」
瞬間祐は自分の倍以上ある瓦礫を持ち上げた。唖然とする人達に祐は声を掛ける。
「その人を動かしてもらっていいですか?」
「あ、ああ!」
周りの男達が急いで倒れていた男性を安全な場所へと運ぶ。それを確認すると祐は静かに瓦礫を下ろして男性の元へ向かい、彼に触れる。
「気は失ってますが息はあります。奇跡的に擦り傷程度で済んでいますから、このまま皆さんで運んであげてください」
そう言うと祐は再び走り出す。男達は慌てて祐に声を掛ける。
「君!そっちは危険だぞ!」
「ご心配なく!こう見えてこう言った有事には慣れてますので!皆さんは気にせず行ってください!」
それを最後に振り返ることなく祐は走る。あっという間にその姿は見えなくなった。
ーーーーーーーーーーーー
目に見える建物を破壊し続けるグルードン。そこに知性はなく、あるのはただ破壊衝動のみであった。
周りに人の姿は無いが、そんな事は関係なく破壊を行う。新たに建物を破壊する為尻尾を振り回そうとするが、どういう訳か何かに尻尾が掴まれ動かすことが出来なかった。
後ろを振り向くグルードン。そこにいたのはグルードンからすればとてつもなく小さな生物、人間であった。
尻尾を掴んでいるのは紛れもなくその人間、逢襍佗祐である。祐は掴んだ尻尾を使い、なんとグルードンを振り回し始めた。
対応出来ずにそのまま振り回され続けるグルードン。祐は回したまま跳躍すると、グルードンを地面に叩きつけた。
40メートル程の巨体が勢いよく叩きつけられ、地震と見紛う程の揺れが起こる。グルードンは叩きつけられた事と振り回された影響で上手く起き上がれずにいた。
祐は歩いてグルードンに近づく。グルードンの視界に映っているのは己より遥かに弱い生物であり、脅威の対象などでは無い筈だった。しかし生物としての本能がそうさせるのか、近寄ってくる生物に脅威を覚えてしまった。
近づく祐の姿が視覚からの情報と反して大きく感じる。
その己を貫く鋭い視線が、悪魔の怪獣に恐怖という感情を自覚させていた。
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