「まき絵〜そろそろ起きぃな」
「まだ寝るぅ」
時刻は8時。夏休みには入ったが、亜子は生活サイクルを変えず規則正しい生活を送っていた。しかし同室のまき絵はそうはいかず、部活動がある時以外は自堕落な生活を満喫している。
「もう、夏休みやからってだらけ過ぎてたらあかんよ?」
「私は今しか出来ない事をしてるんだよ。そうだよ、私は何も間違ってないよ」
「あかんわこれ…」
再びベットに体を預け、至福の表情を浮かべる。この顔を見ていると甘やかしてやりたい気持ちになるが、甘やかすだけが愛ではない。とは言え武力で訴え掛けるのは亜子が最も苦手とする事だ。従ってエサで釣る事にした。
「なぁまき絵、今日は予定ないやろ?ちょっと外に遊びに行かへん?」
「いく!」
「ほんなら起きて朝ごはん食べなあかんな」
「は〜い!」
素早く体を起こすとベットから出て洗面台へと向かう。その背中を眺めつつ、亜子は少し親友の今後が心配になった。
朝食を食べ終え、支度を済ませた二人は街へと繰り出す。特に予定は決めておらず、取り敢えず外に出た形であった。
「裕奈もアキラも部活なの残念だね〜」
「まぁ、しゃあないよ。突発やったし」
会話をしながら歩く二人は、通りがかった公園に人だかりができているのを見る。
「人多いな、なんやろ?」
「行ってみようよ」
人だかりに少し近づくとそこには掲示板があり、周りにいる人達は貼ってあるポスターを見ている様だった。その少し先にテントがあり、何やら受付をしている。ポスターを詳しく見ようと歩みを進めると、周りから頭ひとつ抜けて背の高い知り合いを見つけた。
「あっ、逢襍佗君だ」
「ほんまや」
まき絵は後ろから駆け寄ると、少し背伸びをして祐の肩をトントンと叩いた。
「やっほ〜逢襍佗君」
「ん?おお、佐々木さん。和泉さんもどうも」
「こんちわ逢襍佗君。何見とったん?」
聞かれた祐は貼ってあるポスターより少し小さなチラシを二人に見せた。
「「タライ流し祭り?」」
「うん、なんか今から大きなタライに乗ってそこの川を下るんだって。レースらしくてさ、一位になったら麻帆良市で使える商品券が貰えるとの事です」
チラシを見ながら祐から説明を受ける二人。亜子がまき絵を見ると、その目は輝いていた。
「面白そう!私やりたい!」
「やっぱり…」
思った通りの反応だった。そして次の流れも大方予想できる。
「亜子もやろう!」
ここまで全て予想通りだ。こんな話を聞いたらまき絵なら食いつくに決まっている。そして自分が巻き込まれる事も。
「う、ウチはええよ…」
「え〜、そんな事言わずにやろうよ〜」
「あっ、ほら!参加人数は三人て書いとるし」
「お願いね逢襍佗君!」
「当たり前だよなぁ!」
「……」
亜子はそこで色々と諦めた。
テントで参加手続きを終えた祐達は参加者達が集まる広場に来た。
「只今より開会式を始めますので参加者の方は集まってくださーい」
係員の声に多くの人が集まってくる。想像よりもその数は多かった。
「結構参加する人いるんだね」
「賞品あるからやろか?」
「それに加えてみんなイベント事好きだからね」
三人が話しているとレースの説明が行われる。内容は至ってシンプルであり、川を下りゴールを目指すと言うもの。参加者同士の妨害行為は禁止だが運営側が用意したトラップや障害はある為、それらをくぐり抜けながらのレースとなるそうだ。落ちても復帰は可能で、三人一緒でなければゴール扱いにはならない。
「トラップ…なんか嫌な予感…」
「お祭りなんだから大丈夫だって!」
「なんかあっても安心して!死ぬ時は一緒だ!」
「そこは嘘でも守るって言って欲しかったわ」
「それでは続きまして、タライ流し祭り会長にして前回優勝者の多良井紀夫からのご挨拶です」
その紹介と共に一人の中年男性が舞台に上がった。
「え~先程ご紹介に預かりました、
(たらいのりおって…)
(まんまやん…)
(名前に人生縛られてそうだな)
名前を聞いた全員が同じ様な事を思っていた。話に耳を傾けつつ名前負けをしない為に努力を続けたであろう彼の心情を想像し、祐は少し切なくなった。
「それと私事でございますが今年ヘルニアを患いまして、レースに参加は出来ませんが皆さんの熱いレースを期待しております」
(切実や…)
開会式が終わると荷物などを係員達に預け、参加者達が川に浮かべられた木製のたらいへと向かう。
「おっきいね」
「三人乗りやからなぁ」
「アアッ!」
「「なんで⁉︎」」
たらいに乗ろうとした祐が足を踏み外して川へと飛び込んだ。川に落下した速さは間違いなく一位である。
「早速トラップかよ…こんなのってないよ!」
「ちゃうやろ…」
「も〜何やってるの逢襍佗君」
手を差し伸べるまき絵。しかし足を滑らせ祐に飛び掛かる形で川へと向かった。
「や〜ん!」
「ぐわぁぁ!」
まき絵を受け止めはしたものの、背中から倒れて二人仲良く水没する。
「なんて大胆なんだ佐々木さん!公共の場で押し倒すなんて!受けて立つぞ!」
「違うよ!そんなつもりじゃないもん!」
「弄ばれた…許せねぇな」
「えぇ…」
そんな事を言いつつ抱き合ったまま川に浮かぶ二人に亜子は白い目を向けていた。
「もう嫌やこのチーム」
多少のアクシデントはあったが、何とかタライに乗りスタート地点に着いた。
「もうずぶ濡れだし、怖いもの無しだよ!」
「この時点で濡れてるの二人だけやもんな」
「和泉さんなんで濡れてねぇの?」
「それが普通なんよ」
少し先の橋の上から係員が合図用のスターターピストルを掲げた。
「いよいよだね」
「見てやがれ…どんな卑怯な手を使ってでも、俺一人だけでもゴールしてやる…」
「逢襍佗君、説明聞いとった?」
係員が引き金を引き、乾いた音が響き渡る。それを合図に一斉にタライが進み始めた。
「うわっ!みんな速い!」
「結構マジやな…」
参加者達は懸命に櫂でタライを漕いでいる。数名は既にだいぶ先へと進んでいた。
「道中にはトラップもあるんだし、まずは俺達のペースで行こう」
「オッケー!」
祐達は周りに流される事なく、堅実に進む事にした。すると先頭を進んでいたタライが下から噴き上がる水に押されてひっくり返った。
「「「オアーー‼︎」」」
屈強な男達が断末魔を上げながら川へと落ちていく。対して観客は歓声を上げた。
「なんやあれ⁉︎」
「トラップってあんなのもあるの⁉︎」
「手が込んでんなぁ」
前を進んでいた者達が軒並み転覆していくのを尻目に、後ろから来た参加者達は噴出した場所を冷静に見極めて進んでいく。すると第一のトラップから少し先で、大砲の様な物がその発射口を川へと向けていた。
「えらい物騒なのが見えるんやけど…」
亜子がそう呟いた瞬間、大砲からバレーボールが発射される。無差別に発射されたバレーボールは一直線に飛び、水飛沫を上げる物もあれば参加者に直接襲いかかる物もあった。
「ギエー!」
「アーー‼︎」
レース場は一瞬にして死屍累々たる様へと変化し、観客達は盛り上がっている。見る方はいいが当事者からすれば堪ったものではない。
「やり過ぎだよ!」
「まともにゴールさせる気ないやん!」
「落ち着いて二人とも、確かに威力はそれなりだけど当たらなければどうって事ないよ!ブエアッ!」
「きゃー!」
「逢襍佗君⁉︎」
祐を先頭とした三角の形でタライに乗っていた結果、祐の顔面にバレーボールが直撃し再び川へと落ちた。二人はタライから身を乗り出して祐の安否を確認しようとする。
「逢襍佗君大丈夫⁉︎」
「どうって事ないぜ」
「逞しいな逢襍佗君…」
なんて事もなさそうに即座に水面から顔を出した祐。見渡すと周りも転落の連続で思う様に先に進めないでいた。
「仕方ない…ここは俺が囮になる。俺に構わず二人は先へ行ってくれ!」
「だから三人じゃないとゴール扱いにならないんだってば!」
「折角だから言ってみたかった」
「ええからはよ上がっといで」
「へーい」
タライの縁に手を掛けて乗り上がろうとすると、その勢いに負けてタライが傾き、乗っていた二人が川へと投げ出された。和泉亜子、遂に本日初めての着水である。
「あっ、やべ…」
二人は勢いよく立ち上がると頭を振って水を飛ばした。
「なにしとんねん!」
「いやごめん…まさか二人乗っててひっくり返るとは…」
「あんな勢いよくしたらひっくり返るよ!」
「ごめんやねんやで」
「逢襍佗君馬鹿にしとるやろ」
もう一度丁寧に謝り直し、祐が断りを入れてから一人ずつ両腕に抱えてタライに乗せる。乗せ終わると今度は全身を這わせてタライに乗った。その効果音をつけるなら『ぬるっ』といった感じである。
「なんかその乗り方気持ち悪い…」
「文句ばっか言ってこの子は!そんな事言ってるとバカピンクって呼ばれちゃうぞ!」
「もう呼ばれとるよ」
「亜子⁉︎」
タライに乗り直し、先へと進む。飛んでくるバレーボールは祐が壁になることでやけくそ気味に突破した。
「狂祭やこんなん…」
「これ考えた奴一発ぶん殴ってもいいと思うんだ」
「見て!あれゴールじゃない!?」
まき絵の言う通り、少し先にゴールテープが見える。現在祐達が先頭であり優勝の可能性は充分にある。
「これはもらいましたな」
「ガンガン行っちゃおう!」
「やっと終わりや…」
勢いづく祐達。そんな時、コースの中央に人二人が乗れるほどの台が迫り上がってくる。
「また何か出てきたよ!」
「今度は何でしょな」
台が完全に上がりきると、どこからか二つの影が飛来する。台の上に立ったのは二人の少女だった。
「くーちゃんに楓!?」
「なんで二人が!?」
「何でチャイナドレスなんだ?てか役員の方、もっと下から風吹いてもらえませんか?」
後ろの二人から視線を感じるが、祐は一切そちらを見ない様にした。
「にょほほ!私達が最後の刺客アルヨ!」
「ここから先は簡単には通れないでござるよ」
このレース最後の難関、チャイナドレスに身を包んだ古菲と楓が立ちはだかる。観客の興奮は最高潮に達していた。
「早速いくアル!」
古菲が水面を殴りつけると、火のついた導火線の様に波が一直線に向かってきた。
「あ~…これ避けた方がいいかも」
「左!左に避けるで!」
「がってん!」
三人は急いで左に逸れる事で間一髪波を避ける。後ろから向かってきていた別のタライに接触すると波が高く舞い上がって転覆させた。
「波紋の使い手かな?」
「あんなの反則だよ!」
その隙をついてゴールへと進もうとする参加者の前に楓が現れる。
「然うは問屋が卸さない、でござる」
クナイを取り出し水面へと投げる。その場所から水が勢いよく噴き出してタライはバランスを崩した。
「何でクナイであんな事できるの~!」
「てか楓水面に立っとるやん!」
「汚ねぇぞ忍者!」
「はて、何の話でござるかな?」
仕組みはわからないが手元に戻って来るクナイを掴みながら口笛を吹いて恍ける楓。本人的に忍者である事は秘密にしているようである。秘密に出来てはいないが。
「ホラホラ!よそ見してると危ないアルヨ!」
「あぶねぇ!?」
再び飛んでく波を避ける。いつの間にやら三人はタライを使いこなしていた。レースは先程以上に混沌を極めている。最早タライ流し祭りとは何なのか。
「なんてこった、あの二人が出てくるとは…」
「ど、どうしよう…」
「普通に進もうとしても駄目だろうね」
「なんかないやろか…」
祐達は少し爆心地から距離を置いて作戦を立てる事にした。参加者たちは次々に敗れ去っている。
「もうこれしかない。俺が何とかあの二人を抑えるから、その隙に二人で進んでくれ」
「でもそれじゃ…」
「ゴール手前になったら急いでそっちに行く。そこで合流して三人でゴールだ」
「大丈夫なん逢襍佗君?」
「やるしかない。俺は勝つまで負けない!」
「…どういう意味?」
「取り敢えず負けないって事ちゃう…?」
「そんな感じ!いざっ!」
話を終えると祐が川に飛び込み、潜って台へと接近する。まき絵と亜子はそれを見守った。
古菲が気配を感じて振り返ると、台に祐が上がってきた。相対する二人、お互い目には相手しか映っていなかった。
「祐、私と勝負する気アルか?」
「その通りさクーさん。貴女達は俺が引き受ける」
「その意気や良し!楽しませてほしいアル!」
「上等だ!」
「フンッ」
「ぐわぁぁぁぁ!」
「「負けたーー!?」」
向かってきた祐に対して右手を突き出しその身体に触れると一瞬で吹き飛ばす。しかしすぐに復帰すると同じ様に向かって行き、同じ様に吹き飛ばされる。
まき絵と亜子がその姿を見ていると、祐が親指を立てて進めと合図しているのに気が付く。二人は顔を見合わせて頷くとタライを前に進ませた。
「む?まき絵達が動いたか、行かせないアルヨ」
阻止しようとする古菲の前に祐が水面から飛び出してくる。
「言ったじゃないっすか、引き受けるって」
「なかなかのしぶとさアルネ」
「頑丈さが売りです」
古菲を祐が抑える事で僅かに隙が出来た。この瞬間を逃すまいと参加者達が一斉に前に出る。楓はそれを確認するとため息をついた。
「やれやれ…古め、拙者にその他大勢を押し付ける気でござるな。仕方あるまい」
楓は一度呼吸を整えると、その姿を十人に増やした。詰まる所分身である。
観客達が歓声を上げ、参加者達は悲鳴を上げた。楓達は跳躍するとその物量で進もうとしているタライを制圧し始める。レースは再び戦場と化した。
「ひえ~ん!楓ちんマジだよ~!」
「せっかく逢襍佗君がくーちゃんを抑えてくれてるんや!ウチらは進むしかあらへん!」
猛攻を掻い潜り、前進し続けるまき絵と亜子。周りの空気に当てられたのか、亜子もすっかりノリノリである。
「ぐわぁぁぁぁ!」
何度目かわからない落下をして祐が古菲の視界から消えた。しかし数秒後にはまた目の前に現れる。
「お、恐ろしい程の耐久力アル…」
「勝つまで負けないのさ俺は。それに、何度でも這い上がる価値がある」
「価値?」
古菲が首を傾げると祐は静かに笑った。
「そうさクーさん、その服装が仇になったね。おかげでさっきから何度も拝ませて貰ってるよ」
「おがむ?いったい何を…」
訝しげな目を向けると、ある答えが浮かび上がり古菲の顔が少し赤くなった。
「今だぁ!」
その瞬間を見逃さず、祐は古菲に飛びかかると自分ごと川へと落下した。空中で向きを変えて自分が下敷きになる様に着水するとすぐさま古菲を離し、泳いで自分のタライへ向かう。
「やられた!逃がさないアル!」
急いで体勢を立て直し祐を追うが、泳ぐスピードは祐の方が上の様で思うように追い付けずにいた。
「亜子!逢襍佗君が来たよ!」
「ホンマ!?逢襍佗君!」
驚異の速さでこちらに向かってくる祐と追う古菲。祐は泳ぎながら器用にハンドサインで前に進むよう合図を送った。それを読み取りまき絵と亜子もタライを進めると、楓がそれに気付きこちらに向かってくる。祐はタライに追いつき、先程の様に乗り込んだ。
「お待たせ」
「ナイスファイト!」
「逢襍佗君!楓ちんもこっちに来てる!」
後ろを確認すると水面を走ってくる楓が見える。
「楓さんも来たか。しかし!こっちにはさっき見つけた秘策がある!風は完全にこっちに吹いてるぞ!」
「何かあるの!?」
「うん、とっておきがね。ただ、一発勝負だ。タライは任せた!」
タライの上で片膝立ちになり、楓を見据える祐。
「祐殿、悪いがここで止まってもらうでござるよ」
「そいつは出来ない相談だよ楓さん」
まき絵達がタライを懸命に漕ぐが水面を走る楓には敵わない。祐は心を落ち着かせ、勝負の時を待った。
「追いつかれる~!」
「逢襍佗君!まだ!?」
「もう少し!」
やがて目と鼻の先となった楓がクナイを構えた。それを見て祐が服の中に手を入れると、その瞬間「ゲコ」という声が聞こえる。楓がその声に反応すると、祐は笑みを浮かべた。
「頼むぞ!さっき拾った蛙!」
取り出した蛙を優しく楓の肩に乗せると、一気に顔を青くした楓が水面に倒れる様に沈んでいく。泳いでこちらに来ていた古菲もそれに巻き込まれ、止まらざるを得なかった。
「何してるアル楓!しっかりするアルヨ!」
「蛙は…拙者蛙だけは駄目でござる!」
その場で止まる二人を確認し祐はどこかやり遂げた顔をする。
「やはりこの手に限る」
「せ、せこい…」
「まぁまぁ!これで後はゴールするだけだよ!」
しかし障害が無くなった事で後続も追いすがって来る。油断を許さない状況であった。
「ここで負けられるか!エンジン全開!」
「よーし!任せて!」
「こんだけやったら狙うは優勝や!」
力を振り絞り、三人は全力でラストスパートをかける。白熱する会場、そして遂に祐達がゴールテープを切った。ゴールを知らせる空砲が鳴り響き、今日一の歓声と共に拍手が巻き起こる。
「見たか!これが俺達の実力だ!」
「やった~!優勝だよ!」
「ウチらの勝ちや~!」
感極まって祐の背中に飛びつく二人。予想もしていなかったので祐は体勢を崩し、三人はタライから落ちた。会場からは笑いが起きつつも、三人に惜しみない拍手を送る。最初は乗る気でなかった事などすっかり忘れて、亜子も二人と同じ様に水面から顔を出すと心から笑っていた。
部活を終え、裕奈とアキラは寮のロビーにあるソファに座っていた。
「まき絵と亜子、今頃何してるかな?」
「まだ遊んでるようならこれから合流してみる?」
「いいね!んじゃ早速連絡を」
裕奈が連絡を取ろうとするとロビーに入って来る二人が見えた。
「ありゃ、帰ってきた」
「みたいだね。ん?」
「どしたのアキラ?って…」
何やら色々と手に抱えて楽しそうに帰って来る二人。しかしどういう訳か頭から足の先まで全身びしょ濡れであった。裕奈とアキラは急いで二人に近寄る。
「あっ、二人とも部活終わったんか」
「お疲れ様~」
「そんな事よりどうしたのそのかっこ!?」
「何かあったの?」
聞かれた二人は目を合わせると、どちらともなく笑い出す。裕奈とアキラは益々疑問が浮かんだ。
「ウチら優勝したんよ!」
「じゃ~ん!見て見て!優勝トロフィーと賞品だよ!」
「ゆ、優勝…?」
「事故とかじゃないみたいだけど、取り敢えずお風呂入って着替えた方が良いんじゃないかな?」
「まき絵~、まだ寝とるんか?」
「うへへ…優勝だ~…」
「見事に寝ぼけとるな…」
昨日のタライ流し祭りから夜が明けて翌日、相変わらずまき絵はだらけている。亜子は腰に手を当て、ため息をついた。そこでふとまき絵の机を見ると昨日の優勝トロフィーが大事そうに飾ってある。そしてもう一つ増えた物があった。それは自分の机の上にも、加えて祐の家にも同様の物がある。
そこには大会優勝のトロフィーを掲げ満面の笑みを浮かべる亜子とまき絵、そして祐の写真が飾られていた。
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