周囲を包み込んだ青白い光が晴れたその場に、ソニュームが仰向けに倒れている。全員がその光景を放心した様に見つめていると、我に返った明日菜がネギへと駆け寄った。
「ネギ!」
よろめきながらもなんとか立っているネギを急いで支える。
「よくやった兄貴!惚れ直したぜ!」
「やるじゃない!あんた勝ったのよ!」
「あ、頭がグラグラします…」
気の抜けたネギの返答に明日菜とカモは笑顔を見せた。
「あれって倒したんだよね?」
「そうじゃないかな?」
「ネギ君大勝利だ~!」
見ていた桜子達もネギへと向けて走っていく。ネギは直ぐに周りを囲まれた。
「凄いよネギ君!」
「そもそもさっきのバリバリ何なの!?」
「えっ!?いやそれは…」
「み、みんな自覚ないかもしれないけどここ夢の中だから!そんな事も出来るわよ!だって夢だし!私も、ほら見て!」
そう言ってハマノツルギを出したり消したりする明日菜。それを見ていたクラスメイトは目を輝かせた。
「すごっ!私もやりたい!」
「うお~!光出ろ~!」
(これで納得するのか…)
(やっぱこいつらダメだ…)
こちらとしてはありがたいが、それでいいのかと思わずにはいられないカモと、やはりこのクラスはまともでない事を改めて実感した千雨だった。
「ほんとに光出た~!」
「マジ!?」
夢の世界の影響で掌から光を出す風香。ただし本当にただの光が出ただけである。
「やるでござるなネギ坊主、驚いたでござるよ」
「何とも将来有望だな」
「ああ、これから先が楽しみだ」
桜子達と共に走り出した古菲を除いて、見ていた場所に留まっていた楓達もネギの活躍に笑顔を向けた。
ネギ達から少し離れた場所。日傘をさし、白いゴスロリの服装をしたエヴァとチャチャゼロがその姿を観察していた。
「オウオウ、押シ切リヤガッタゼ」
「負けでもしたらどうしてやろうかと思ったが…まぁ、及第点だな」
すると後ろから超と聡美が走ってくる。超の方はまだ余裕がありそうだが、聡美は息も絶え絶えの状態だった。
「やぁやぁエヴァにゃん、チャチャゼロさん。こんな所で会うとは珍しい」
「ハァハァ…おえっ」
「超鈴音か。ハカセは大丈夫か…」
「走ってきたものだから息切れしてるだけネ」
聡美は芝生へ項垂れた様に座り込み、エヴァ達にサムズアップを向けた。
「事が終わる前にと急いで来たガ、もう終わってしまったカナ?」
「お前、夢の世界だと自覚があるのか?」
エヴァが少し意外そうに超を見ると、それに超は笑顔を向けた。
「そうネ、自覚はあるヨ。寝る直前まで祐サンがいたのが関係しているかもネ」
「…そうか」
エヴァはネギ達に視線を戻すと超もそちらを見た。
「ネギ坊主がやったとは、成長している様だネ」
「まだまだひよっこが少しマシになった程度だ」
「これは手厳しい」
笑う超にエヴァはフンと鼻を鳴らした。そんな時、倒れていたソニュームを見ていたチャチャゼロが笑いだす。
「ケケケ。ナンダアリャ、セコイ奴ダナ」
刹那がソニュームに視線を向けると、彼の身体が黒い影に包まれていた。同様に見ていた真名と楓と共に急いで駆け出す。
「皆さん!下がって!」
クラスメイトとソニュームの間に入る刹那達。影がソニュームの全身を包むと、その中から無傷のソニュームが姿を現した。
「あんた…やられたんじゃ!?」
「ええ、間違いなくやられました。見事でしたよ少年。ですが、ここは夢の中なのでね」
驚愕の表情を浮かべる明日菜に、にこやかに返すソニューム。周りは不安そうにそれを見る。
「この夢は現実と密接に繋がってんじゃねぇのかよ!」
「一つ説明が漏れていましたね。私に関しては例外でして、夢の世界で私は倒せません」
カモの質問に答える。オコジョが喋っている事に数名が驚くが、夢だからしょうがないと今は流した。
「なによそれ!インチキじゃない!」
「それを言われると返す言葉もございませんね、しかしこれが私の能力ですから。夢の世界に入った時点で、あなた方は既に手詰まりだったと言う事で」
「そんな…」
表情を暗くする裕奈を視界に収めると、ソニュームは左手をゆっくりと振った。
「なので諦めてこの世界で夢を見続けて下さい。彼女と共に」
影が現れると人の形になっていく。先程の魔族とは違い、しっかりと人間の姿に。その姿が完全に浮かび上がると、裕奈は思わず声を漏らした。
「お母さん…」
ソニュームの横に立つのは、間違いなく夕子だった。
「貴様…ふざけた真似を…!」
刹那が夕凪を向ける。それと同時に真名・楓・古菲が構えを取った。
「戦うのは自由ですが、無駄な事ですよ?諦めて夢の世界で生きた方がいいと思いますが」
「裕奈、お母さんとは一緒に居たくないの?」
夕子から発せられた一言に、裕奈の頭は殴りつけられた様な衝撃を受けた。思わず耳を塞いで俯く。
「違う、違う…私は…」
「裕奈!しっかりして!」
「あれは夢やろ!本物ちゃうで!」
近くにいたまき絵達が裕奈に必死で呼び掛ける。アキラはソニュームを睨んだ。
「ひどい…なんでこんな事!」
「現実では二度と会えない相手に会えるのがですか?私はあなた達が一番見たいと望んでいる夢を見せているだけですよ」
「それは…余計なお世話なんです…」
身体を明日菜に支えられたネギが声を出す。身体は疲弊しているものの、その目には未だ力を宿していた。
「夢を否定するつもりはありません。でも!ゆーなさんも皆さんも今を歩いているんです!前に進もうと頑張ってるんです!」
「貴方のやっている事は、前に進もうとしている人の邪魔をしてる…。それをやめるつもりがないのなら、僕は絶対に貴方を止めます!」
ネギを支えていた明日菜がハマノツルギを取り出し、ソニュームに向けた。
「何回でも蘇るって言うんなら、上等よ!何回だって倒してやるんだから!諦めてあんたの言いなりになるなんてまっぴらごめんよ!」
「残念だったな赤いの、うちのクラスは一筋縄ではいかないぞ?」
「左様、ネギ坊主と明日菜殿にこうまで啖呵を切られては、拙者も黙っていられないでござる」
「貴様の気が済むまで刀の錆にしてやろう」
「難しい事はわからないアルが、取り合えずゆーなを泣かした事は後悔させるアルヨ」
前に立つ刹那達からも諦めは見て取れない。桜子達も裕奈を庇う様に前に出る。
「私達は戦えないけど、みんなの事いっぱい応援するんだから!」
「こんな事して女の子泣かせるとか最低!」
「ちょっと顔がいいからって!どうせあんたも二股とかしてるんでしょ!」
「美砂…締まんないんだけど…」
少し考えた後ソニュームが答える。
「我々の種族はあなた達の言う一夫一妻制ではないので。私の考えとしても、生物として子孫を残すだけでそこに愛はありませんね」
『サイテー!!!!』
(団結するタイミングここかよ…)
(何とも言えませんね…)
ほぼ全員が裕奈の前に出る。タイミング事態に思う所はあったが、目の前の男に腹を立てているのは千雨と夕映も同じだった。
「みんな…」
「大丈夫だよ裕奈!」
「大して力になれへんけど、ウチらも一緒や!」
「裕奈にひどい事する人なんて、絶対に許さないから」
自分を庇う様に立つクラスメイト、そしてまき絵・亜子・アキラからの言葉を受け、裕奈の目から涙が溢れる。
「ネギせんせー、みんながゆーなを泣かせてまーす」
「ええ!?皆さん駄目ですよ!」
「そうじゃないでしょうが!」
ふざけて言った風香の言葉を信じてしまったネギを明日菜が叩いた。クラスメイト達に笑いが起きる。
「まったく、締まりのない…」
「それでこそA組でござるよ」
呆れた様子の真名と楽しそうに笑う楓。すると立っていた夕子が一歩前に出てくる。
「裕奈」
それに思わず目を逸らしそうになる裕奈。そんな時、裕奈の頭の中に声が響いてきた。
(大丈夫、目の前に居るのは本物じゃない。感じてみて、貴女のお母さんとの本当の繋がりを)
(えっ?)
男性の声だという事はわかるが、思考に靄の様なものが掛かり、正確に認識が出来ない。しかしその声はどこか裕奈を安心させた。
(目で見ようとせず、貴女の心で感じればいい。そうすれば、きっと直ぐにわかる)
(心で、感じる…)
裕奈は一度深呼吸をすると、目を閉じて右手を胸の前で強く握る。
「裕奈?」
その姿にアキラが声を掛けるが、裕奈は目を閉じたまま深く呼吸を繰り返していた。そうしていると何かを感じる。
心臓でも脳でもなく、何処で感じたのかはわからないが、確かに内から温かなものを感じられた。やがて裕奈がゆっくりと目を開けると一歩前に出る。
「ゆーなさん…」
「心配しないで!わかったんだ、お母さんの居場所」
心配そうなネギに笑顔を見せる裕奈。その表情は無理に作られたものでは決してなかった。
「裕奈、お母さんと一緒に帰りましょう」
腕を広げ裕奈を待つ夕子に対して首を横に振った。そしてその目でしっかりと見つめ返す。
「違う、お母さんはそこにはいない」
「確かにこれは夢ですが、現実にも彼女はいませんよ」
横やりを入れて来るソニュームに対しても、怯む事なく裕奈はその目を向けた。
「夢とか現実とか関係ない。だって、いつも繋がってるから」
「うっかりしてた。こんなに近くに感じられるなんて…私、気付けなかった」
そう言って裕奈は自分の胸に手を置く。
「お母さんは…ここにいる」
すると次の瞬間、裕奈の胸に虹色の光が灯る。その光は裕奈から離れ、夢の存在である夕子に当たるとそれを霧の様に消し去った。
「なに!?」
「あの光は…」
流石のソニュームもその光景に驚きを隠せない。飛び出した虹色の光に見覚えのあるネギ達も呆然と見つめていると、光がやがて人型になる。
そのシルエットから女性である事が見て取れた。光はソニュームに近づくと、彼に右手で強烈な平手打ちを見舞った。
「グフッ!」
突然の攻撃を受け後ろに倒れこむソニューム。光は地面に着地すると、身に纏っていた光を晴らして姿を現す。その後ろ姿をみて誰もが口を開ける。それは裕奈であっても同じだった。
「お母さん…?」
「よっ!久し振り!」
振り向いて笑顔を向ける夕子。一同その光景に驚きを隠せない。
『ええ~~~!!!!!』
「どういう事!?」
「さっき消えたよね!?」
「訳わからん!」
「お、落ち着こうみんな!まず素数を数えよう!1!」
「いきなり素数じゃない!?」
てんやわんやのA組。裕奈は恐る恐る夕子に近づく。
「お母さん…なの…?」
「まぁ、さっきまでの事考えれば当然よねぇ…」
困った様に笑みを浮かべた夕子は裕奈にゆっくりと歩み寄る。
「なんて言ったらいいかなぁ…私もまさかの経験だからさ」
「簡単に言うと、さっきの光が手伝ってくれたの。私一人じゃ夢の中とは言え、直接干渉は出来ないからね」
さっきの光とは自身の胸に灯った虹色の光の事だろう。母は心の中にいる。そう言ったのは自分だが、まさか物理的にそこから出てくるとは思ってもみなかった。
二人は向かい合うと、夕子が力強く裕奈の両肩に手を置いた。
「とはいえあんまり時間ないから!パパっと伝えるわよ!」
「急すぎるって…」
何とも押しの強い夕子に困惑しつつも、同時に裕奈は確信した。この人は間違いなく、本物の母だ。根拠も何も無い、しかし確かにそうと感じる何かがあった。
「一時はどうなる事かと思ったけど、よく頑張った!さっすが私の娘!やっぱり裕奈は強い子ね!」
掛けられる言葉、向けられる表情、その全てが裕奈を優しく包み込んでいく。そして笑顔から一転、夕子はその表情を申し訳なさそうにした。
「それと、ごめんね…いきなり居なくなっちゃって。裕奈には沢山寂しい思いさせちゃったよね?」
そう言いながら優しく裕奈を抱きしめる。裕奈は心の奥底に仕舞い込んでいた感情が溢れ出しそうになるのを感じた。
「もっと傍に居てあげたかった。裕奈の成長する姿、ちゃんと隣で見てなきゃいけなかったのに…本当にごめん」
母と会えなくなってから、この想いには蓋をして生きていくつもりだった。でないといつまでも先に進む事が出来ない様な気がしたから。いつまでも沈んでいたら父も、そして天国の母もきっと安心出来ない。
成長した自分を見せて少しでも両親に安心してほしかった。大丈夫だと感じてほしかった。そうすればきっと、自分も周りも笑っていられるから。
自分には大切な人達が大勢いる。だから寂しさなど感じる必要なんかないんだと言い聞かせてきた。
しかし今、11年振りに感じるその温もりに耐え切れず、想いは蓋を吹き飛ばした。もはやその想いを堰き止める物はない。長く抑えつけてきた感情は、大粒の涙となって流れ出した。
「お母さん…お母さん!会いたかった!ずっとずっと!ずっと会いたかった!」
「うん…私も会いたかった」
「寂しかった!お母さんがいなくなって!もう会えないと思うと凄く寂しかった!」
「うん…」
泣きながら思いの丈をぶつける裕奈。夕子はただ静かに頷きながら抱きしめる。
「いつまでも泣いてちゃダメだって、しっかりしなきゃって思ってたのに…お父さんと天国のお母さんを安心させなきゃって思ってたのに!本当は結局落ち込んだままで!少しも前に進めてなくて!ごめんお母さん!」
縋り付き、謝るその姿は胸を締めつけられる光景だった。アキラを始め、クラスのほとんども涙を流している。
裕奈からの想いを感じ、夕子は抱きしめる力を強めた。
「謝らないで裕奈、心配するのは親の大事な役目だもの。それに裕奈はなんにも悪くない、むしろ凄いわよ。逆の立場だったら…私はきっと耐えられなかった」
「裕奈が生まれた時、この子を失う事になったらなんて考えるだけでも凄く怖かったのに。こんな気持ちを私は裕奈にさせちゃって…ごめんね裕奈」
顔を夕子の胸に埋めたまま裕奈は首を横に振る。健気な姿を見せる娘の頭を撫でた。
「私、今日改めて裕奈を見て安心した」
裕奈は埋めていたその顔を上げる。その目元は既に涙の影響で腫れていた。夕子は涙で濡れた裕奈の顔を優しく拭って頬に触れる。
「大事な友達に囲まれてる。あなたは周りを愛して、そして周りはあなたを愛してる。それは何よりも素敵な事だってお母さん思うの」
A組の面々を見渡す夕子。その表情は裕奈に向けているもの同様、慈愛に満ちていた。
「裕奈、泣いたっていい。落ち込んだって塞ぎ込んだっていいの。最後に笑えたら、それでいいんだから!」
「あなたが持ってる前に進もうとする気持ち。それさえあればきっと大丈夫」
拭いきれない涙をそのままに頷く裕奈。そしてそこで気付く、夕子の身体がだんだんと光の粒子になって消え始めている事に。
「あちゃ〜…そろそろ時間かな。いや、寧ろ長すぎるくらい保たせてくれたわ」
「お母さん…」
夕子は笑い掛けると、再びA組に視線を向けた。
「みんな、裕奈をよろしくね。今日のを見たら大丈夫だとは思うけど、これからも仲良くしてあげて」
「任せてください!」
「ウチらずっと裕奈の親友です!」
「私も、ずっとずっと親友でいたいって思ってます!」
まき絵・亜子・アキラを筆頭に涙ながらに返事をする。笑って頷くと、裕奈の瞳を見つめた。
「裕奈、落ち込むのも悲しむのも悪い事なんかじゃないわ。元気でいる、元気になる為にはきっとその反対の感情もないといけない。辛いと感じる、悲しいと感じる。どんな物事にも何かを感じるから。感じる気持ちを、その心を止めないでね」
「思いっきり泣いてすっきりしたら、その後に裕奈の中にある元気を思い出してあげて。覚えてる?私が前に言ってた事」
未だ涙は止まらないが、裕奈は笑顔で頷いた。
「それじゃ、確認。元気は?」
「最強!」
笑い合う二人、夕子の想いは確かに裕奈へと受け継がれた。
「私は遠い所で待ってるけど…なるべくゆっくり来なさい」
「うん、待ってて。ビックリするぐらい沢山の思い出作って持ってくから」
「楽しみにしてる。それと、お父さん以外の好きな人ちゃんと作りなさいよ?裕奈はもう高校生なんだから」
「最後にそれ言う⁉︎」
少し怒った様に言う裕奈を見て、夕子は声を出して笑った。
「いい子なら近くにいるじゃない。裕奈達の為にこんなにがんば…おっと、これは言ったらダメなんだったわね」
裕奈はその言葉に首を傾げる。夕子は裕奈の胸にそっと触れた。
「忘れないで裕奈。いつだって、繋がってるからね」
「忘れないよ、絶対に」
満足そうに頷く夕子。例えこの別れが二回目のものでも、お互い悲しくない筈がない。それでも、心に生まれた感情は悲しみだけではなかった。
「元気でね。裕奈」
最後に一番の笑顔を見せると、夕子は光になって消えていく。
「さよなら、お母さん」
両手を胸に当て笑顔で見送る裕奈。その瞳から静かに涙が流れる。アキラ達が裕奈に近寄りその身体を抱き締め、裕奈はそっと体重をアキラ達に預けた。
「泣いてるのカナ?」
「泣いとらんわ、おかしな事を言うな」
「こりゃまた失敬」
エヴァ達もその光景をしっかりと見つめていた。
「あいつめ、手の込んだ事を…」
「霊体に力を与えるのはさよサンにもやっていたガ、こんな事も出来るとはネ」
「はぁ…今起きた出来事、私は何一つ説明出来ません…」
「落ち込む事はないよハカセ、あれは誰にもわからないネ」
「シンミリシテンノハ別ニイイガ、アノヤロウガ動キダシタゾ」
「問題ない。もう来てるんだからな」
「ケケケ、ソウダッタナ」
エヴァは顔を上げると、晴れ渡る青空に向かって微笑み掛ける。
「さぁ、久し振りに見せてくれ。あんなものを見せられたら、お前も大暴れしたいだろう?」
その後ろに立つ超は、一人静かに笑みを浮かべていた。
「なんと素晴らしい、流石に驚きを隠せません」
起き上がったソニュームが裕奈達に近寄る。直ぐさま刹那達が前に出て、クラスメイトも裕奈の前に出た。
「この説明不可能な現象、心と関係あるに違いない…益々あなた達を見過ごせなくなった」
「せっかくいい感じだったのに邪魔すんじゃないわよ!」
「そーだ!そーだ!」
「空気読めてないぞ!」
明日菜達が怒りを露わにするが、ソニュームはどこ吹く風だった。
「心苦しくはありますが、私も命を懸けていますのでね」
言いながら先程よりも多くの魔族を召喚する。刹那達が構え、ネギも杖を構える。
「ネギ、あんたいけるの?」
「まだちょっとフラフラしますけど、やらない訳にはいきません」
「あれを見たら、そりゃそうなるわよね!」
明日菜も気合を入れ直す。ここにいる全員の想いは一つである。そんなA組の頭上の少し先に魔法陣が現れると、ザジと屋上組がそこから降りてくる。ザジ以外は着地に失敗して尻餅をついた。
「あだっ!」
「また尻餅ついてもうた…」
「うう、私幽霊なのに…」
「ザジさん!もう少し丁寧に運んでください!」
「おっと、失礼しました」
その光景にクラスが反応する。
「空から出てきた⁉︎」
「というか今ザジさん普通に喋ってなかった?」
「大丈夫ハルナ?」
「こんな時に何やってたのですか?」
「えっ?あ〜…光にお祈り?」
「「えぇ…」」
ハルナ達が手をとって起き上がらせて貰う。するとあやかは裕奈に近づいて両手を握った。
「裕奈さん!先程の事、私も屋上で見ていました…美しき親子の愛!感激致しましたわ!」
「ど、どうも…」
圧に押される裕奈。明日菜が二人の間に割って入る。
「はいはい、それはいいから。そっちはちゃんと何とかなったんでしょうね?」
「愚問ですわ明日菜さん。私を誰だと思っておりますの?」
「聞く相手を間違えたわ…」
そこでザジが一歩前に出た。
「ソニューム、貴方はもう負けました。潔く敗北を認めなさい」
「何を仰るかと思えば…姫様、ここは夢の世界。私が負ける事はないと姫様もご存知でしょう?」
「ここにいるクラスメイトの方達は、どうなっても貴方の思い通りにはなりませんよ」
(((((めっちゃ普通に喋ってる…)))))
今まで見た事がない程話すザジに、叫びはしないが魔族と夕子を見た時と負けず劣らずのレベルでクラスメイト達は驚いていた。
「ならばそちらが折れるまで、永遠に繰り返すだけです」
「そうですか、話し合いで解決は出来ない様ですね」
「皆さんが素直に眠りについて頂けないのなら、そうなりますね」
魔族達が蠢きだすと、明日菜達も戦闘態勢を取る。ザジは一度目を閉じてから、ゆっくりと目を開いた。
「貴方にとっては残念でしょうが、もう時間切れです」
「なんの話ですか?」
思わず怪訝な表情を浮かべるソニュームに、ザジはその瞳を向ける。
「貴方も見たでしょう?先程の光を」
彼に見せる様にザジは空を指さす。
「イリスの光は、既に貴方を捉えています」
「…いったい何を」
ザジの指に沿って視線を上げると、遥か上空から虹色の光弾が飛来していた。目を見開き、急いで障壁を張る。しかし光弾は容易く障壁を打ち破り、周りの魔族ごとソニュームを後方に吹き飛ばした。
「ま、また何か来た⁉︎」
「夢ってこんな無法地帯だったっけ…」
「熱出した時の夢の方がまだマシだぞ…」
ざわめき始めるクラスメイト達を他所に、明日菜達は笑顔を見せた。
「来た…!」
続いて空から光が強烈な勢いで降り注ぐ。光の柱に見えるそれは地上に衝突すると爆風を巻き起こした。
「本当に届いたよ…」
「なぁ〜、ちゃんと見つけてくれたやろ?」
「大成功!ですね!」
「まったく…少し遅いのではなくて?」
眩い光に思わず目を瞑る。少しずつ光が晴れる事により、全員がその光景を視界に収めた。
「これってもしかして…」
「虹色の…光?」
光の柱が弾け飛ぶ。より一層強い風を発生させ、一人の人物が姿を現した。
そこに立つのは体格から背の高い男性だろう。
目に映るのは風にたなびく印象的な襟の高い白のロングコート。その下には白のインナースーツを着用し、コートとインナースーツ共に全身に行き渡る様に施されたラインには虹の光が通っている。
胸部を始め、腕や足・肘や膝には装甲を纏っている。ヘルメットの様な装甲はなく髪が見えており、顔面と前頭部・頭頂部以外に装着された装甲より顎から下瞼までを覆うマスクを展開、更にそこから展開しているツインアイが光を発していた。
「な…」
「なっ!…」
「なによそれ〜〜〜!!?」
「なんじゃありゃ〜〜〜!!?」
現れた待ち人の想像もしていなかった姿に対して、明日菜とハルナの叫びが響き渡る。声こそ出していないが、あやか達もその姿に驚いていた。
イリスの光が呼び起こす、目覚めの時はもう近い。
一番好きな章は?
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序章・始まりの光
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幽霊と妖怪と幼馴染と
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たとえ世界が変わっても
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消された一日
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悪魔よふたたび
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眠りの街
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旧友からの言葉
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漢の喧嘩
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生まれた繋がり