Arco Iris   作:パワー系ゴリラ

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Finem somnium

「なによそれ〜〜〜!!?」

「なんじゃありゃ〜〜〜!!?」

 

明日菜とハルナの声が響いた時、少し離れた場所にいるエヴァは現れた祐を口を開けて見ていた。対して後ろの超と聡美は大喜びである。

 

「やったー!使ってくれてますよ!」

 

「うむ!本人の判断に任せたが、使ってくれてほっとしたヨ!」

 

「ケケケ!随分ナカッコジャネェカ」

 

「な、何だあの格好は…お前達の仕業か!?」

 

エヴァが二人に詰め寄ると、超と聡美はどこか誇らしげに答える。

 

「その通り!私達から祐サンへの贈り物ヨ!」

 

「逢襍佗さんが今後活動しやすい様にと用意したんです!ヘルメット部分は時間が無くてまだ完成していませんが…」

 

「しかしこうやって見てみると、髪が見えるあの姿も悪くないネ」

 

エヴァは超達の言った事に反応する。

 

「活動しやすい様にだと?」

 

「祐サンはこれからその力で多くの者と戦い、それは結果的に沢山の人達を救う。でもそうすればする程、彼の平和な生活は消えていく。それも承知の上で彼は戦うのをやめないダロウ」

 

「あれは、そんな祐サンに贈る我々の気持ちネ」

 

エヴァが超の目を見つめる。それはそこにある真意を探ろうとしている様だった。

 

「例えあれがいずれ来る瞬間をほんの少し先延ばしにする事しか出来ない物であっても、贈るべきと思ったネ。私の気持ちまで伝わったかは定かではないガ」

 

「お前の気持ちときたか」

 

「私だって、彼には出来るだけ長くここに居てほしいと思っていると言う事ヨ」

 

「フン…まぁ、今はそういう事にしておいてやる」

 

「おや、信じていないネ?」

 

「どうだろうな」

 

言いながら振り返り、祐に視線を移す。超は変わらず、その表情は笑顔のままだった。

 

 

 

 

 

 

「ど、どうしたのよ二人して…?」

 

異様な程と言える驚きのリアクションをした明日菜とハルナに美砂が聞くと、二人はどこか慌てた様に反応する。

 

「えっ!?…だ、だって美砂も思わない!?なによそれって!」

 

「いやまぁ、思うけど…」

 

「何て言うかその…みんなの二倍驚く要素があったと言うか、そんな感じ?」

 

「いや私に聞かれても…」

 

明日菜とハルナのよくわからない返答に美砂は逆に困惑した。

 

「それにしても変わった格好ねぇ」

 

「よく知らないけど、なんかヒーローっぽい?」

 

「あ〜、わかる様な…」

 

(コスプレにしちゃ出来過ぎてるな)

 

いつの間にか調子を取り戻したハルナがノートを取り出し、祐の姿をスケッチしだした。

 

「白いロングコートと戦闘用スーツに所々は堅い様に見える装甲。顔を覆うマスクとツインアイ…」

 

「ハ、ハルナ?」

 

「全身に駆け巡るラインを伝う虹色の光!そしてあえて髪を出すこのデザイン…イカしてる!その姿をわかり易く例えるなら、そう!」

 

「ガンダムのカメラアイが付いて、マントの様なロングコートを身に着けた…ヘルメットをかぶってない実写版キャシャーン!!」

 

『……』

 

ハルナ以外の全員が黙り込む。それがわかっていないのか、それとも無視しているのかハルナは鼻息荒くガッツポーズをしている。

 

「わかんないの私だけ…?」

 

「たぶんみんなわかっとらんと思う。勿論ウチも」

 

(やべぇ…わかってんの私だけか…)

 

明日菜の疑問に木乃香が答える。ハルナの例えは千雨には伝わっていた。

 

「ねぇねぇ、さっきの虹色の光ってあの人が出したのかな?」

 

呆れた顔をしていた円に、横にいた桜子が聞いてくる。

 

「え?見た感じそうだと思うけど…」

 

瞬間桜子の目が輝き始めた。

 

「じゃあさ!あの人が今までの虹色の光の正体って事だよね!」

 

その発言に周りもハッとし始めた。

 

「確かに…ではアウトレットの爆発を止めたのも」

 

「怪獣を倒したのもあの人!?」

 

「裕奈のお母さんもあの人が呼んでくれたのかな?」

 

「確かに…最初に飛んでた時、光は虹色やったもんな…」

 

まき絵と亜子がそう言った事で、裕奈が意を決した様に前に出た。少し怯えながら男に話し掛ける。

 

「あの!えっと…貴方ですか?お母さんを呼んでくれたのは」

 

祐は振り返ると、マスクとツインアイで包まれた顔を裕奈に向ける。威圧感のあるその姿に、正体を知らぬ裕奈達は少し身体が震えた。

 

「呼んだのは君だ。俺は君と、君のお母さんに協力しただけだよ」

 

その声が男性のものと言う事以外は聞いていた裕奈達には何故か認識出来なかった。そして髪も何色で、髪型もどんな物かぼやけているが、それはこの装備の効果である。しかし、裕奈にはその声に聞き覚えがあった。

 

「さっき、聞こえた声だ…」

 

頭に響いた声と同じだとは理解できた。先程の虹色の光といい、彼がその正体で間違いないだろう。

 

「こうしちゃいられない!ちょっとインタビューを!」

 

「アホか!こんな時に何考えてんのよ!」

 

走り出そうとする和美を羽交い絞めにして止める明日菜。それを見ていた祐は振り返り背中を見せる。

 

その視線の先には魔の軍勢を従えたソニュームがいた。

 

「先程の攻撃で召喚していたのが大方やられましたよ。何とも恐ろしい人だ。召喚するのは無尽蔵とはいかないのですがね」

 

「あんた…まだ…」

 

「死にはしませんが痛覚はあるので周りを盾にしました。それでもかなりのダメージを受けましたがね」

 

ソニュームは祐をその目に収める。表情は窺い知る事は出来ないが、こちらを見ている事は感じられた。

 

「貴方、どこから来たのですか?貴方の様な存在はこちらの世界にはいなかったはずですが…」

 

「想いを道標にして、現実から来た」

 

その言葉にソニュームが目を見開く。次第にその顔を冷たさを感じる笑顔で染めた。

 

「素晴らしい…それが本当なら貴方はとんでもない逸材だ。是非とも研究したい」

 

そこで祐はザジを見る。視線を感じたザジが見つめ返すと、口を開く。

 

「ふむ、何とお呼びしましょうか。そうですね…」

 

考える仕草を取ったザジは、暫くして祐に視線を戻した。

 

「ここはお願いします。ヌンティウス・イリディス」

 

「お任せを」

 

祐はソニュームに向き直る。それと同時にザジが指を鳴らすと、周りのクラスメイト全員を自分も含めて転移させた。

 

 

 

 

 

 

明日菜達は気が付くと先程いた場所から離れた位置に移動している。突然の事に動揺していると、先程までは居なかった人物がそこにいた。

 

「エヴァちゃん?超さんにハカセも!あっ…チャチャゼロさん…」

 

「なんだ、こっちに来たのか」

 

「ヨウ」

 

「やぁ、諸君。大変だったみたいだネ」

 

「これでもラボから走ってきたので許してくださいね」

 

エヴァ達がここにいた事、そして人形が喋った事など色々とツッコミ所は多いが、既に感覚が麻痺しているのかその事については誰も触れなかった。

 

辺りを見渡していた裕奈が祐を見つけると僅かにそちらに近寄る。それに釣られる様に他のクラスメイトも移動した。

 

「あの人…大丈夫なのかな…」

 

心配そうに見つめる裕奈。真名は静かにクラスメイト達から少し距離を取って観察を始めた。

 

(さぁ、お手並み拝見だ。少しは手の内を明かしてもらうぞ)

 

裕奈達から少し後ろにいたネギにエヴァが近寄る。

 

「ぼーや。さっきの戦闘、見ていたぞ」

 

「えっ!?見てたんですか…」

 

「ああ。お前に多少なりとも根性があるとわかっただけでも、あのソニュームとか言う奴には感謝せねばな」

 

「エヴァンジェリンさん」

 

「これからは私の事を師匠(マスター)と呼べ。いいな?」

 

呼び方一つではあるが、どこかそれが少しだけエヴァに弟子である事を認めてもらった気がしてネギは嬉しかった。

 

「はい、マスター!」

 

エヴァは小さく笑うと顎に手を当てる。

 

「せっかくだ。祐は師匠(ししょう)と呼ぶが、今後は別の呼び方にさせるか」

 

「別の呼び方、ですか?」

 

「まぁ、そこは追々考えておくとして…願ってもない機会だ。ソニュームにはもう一つ感謝してもいい」

 

首を傾げるネギに、エヴァは祐の方を指さした。

 

「しっかり見ておけ、お前の兄弟子の戦いだ」

 

その言葉の意味を理解し、頷いた後ネギは表情を引き締めてそちらを見た。

 

「オイソコノデケェノ、頭ニ乗セロ。眺メガヨサソウダ」

 

チャチャゼロが浮いて楓の頭に乗る。

 

「飛べるならば、ここでなくともよいでござろう」

 

「コッチノ方ガ楽ナンダヨ」

 

「あ~!ずるいです!」

 

「楓姉の横取りだ!」

 

「ワリィナガキ共、早イモン勝チダゼ」

 

「やれやれ…態度の大きなご婦人でござる」

 

あやか・明日菜・木乃香・刹那の順で横に並び祐を見守る。力の事は知っていても、祐が戦う姿を見るのは初めてだ。気付けば幼馴染三人の手は緊張から少し震えていた。木乃香の手を刹那がそっと握る。

 

「せっちゃん」

 

「信じましょうお嬢様。世界の壁を突き破って来た人ですよ、きっと大丈夫です」

 

「うん」

 

頷き木乃香は反対の手で明日菜の手を握ると、素直に握り返してきた。明日菜が横目でちらちらとあやかを確認すると、あやかも同様にこちらをちらちらと見ていた。

 

「…なによ?」

 

「…そちらこそなにか?」

 

暫くジト目でお互いを見ている明日菜とあやか。埒が明かないと思ったのか双方乱暴に相手の手を握った。

 

「貸し1よ」

 

「こちらの台詞です」

 

 

 

 

 

 

全員が見守る中、ソニュームが動きを見せた。

 

「行ってください」

 

今までより遥かに多い数を召喚して向かわせる。雪崩れ込んでくる魔族に対して祐はその目を強く発光させると、全身に光を纏い走り出した。

 

「え?」

 

「はっや…」

 

誰が言ったか、その言葉通り一瞬で距離を詰めた。高く飛びあがると急降下して地面を殴りつける。するとその場にドーム状の衝撃波が生まれ、辺り一面を吹き飛ばした。

 

爆心地の近くにいた魔族は消し飛ばされる。休む事なくそこから飛び出して、目の前の一体をその勢いを載せた拳で打ち抜く。殴られた魔族が一直線に進み、その直線状にいた者も巻き込んで飛んでいった。

 

それに目もくれず周囲の敵に攻撃を加える。殴打と蹴りを叩きこみ、時には敵からの攻撃をいなし、次々に消滅させていく。

 

攻撃を避けられた魔族がよろめくと、後頭部を掴み地面に叩きつける。その勢いにバウンドした敵を飛び回し蹴りで距離のあるソニュームへと送り返す。周りにいる魔族達がそれの盾になる為正面に移動した。

 

周囲を掃討し、上げた両腕を空間を捻る様に回すとその場に円盤状の回転する光が生まれる。掌の上で回転し続けるそれを、空中で横回転を行い勢いをつけて投擲した。

 

投げつけられた円盤に敵が触れると、触れた部分をまるで紙の様に切り裂きながら突き進む。その先に何体居ようとも速度も切れ味も落とす事なく進み続け、それを見て防ごうとするのは悪手と考えたソニュームはその攻撃を間一髪で避ける。進み続けた円盤はやがて後ろの女子寮を切り裂いた。

 

「あ~~!!女子寮が~~!!」

 

「夢だから大丈夫…だよね…?」

 

「ど、どうやろ…」

 

まき絵の叫びに希望的観測を言うアキラと今一自信のない亜子。実際現実と密接に繋がっているのは意識を持ったものだけなので問題ないが、それを説明してくれる者はいない。

 

祐は身体からオーラを放出させ拳を握る。握った拳に光が集まると、両掌を前に突き出した。そこから光弾が連続で発射される。ガトリングかと思える程止め処なく放たれ続けるエネルギーは、大量に呼び寄せられた魔族達を一網打尽にしていく。

 

避けられぬ弾幕に障壁を張るも、耐えきれずソニュームも攻撃を受け始める。そして後ろの女子寮も攻撃を受ける。

 

「あ~~!!女子寮が~~!!」

 

「これはもうだめかも…」

 

「あ~ん!宿無しは嫌や~!」

 

「今日はキャンプだね!」

 

「楽しそうにすな!」

 

「なら、ベテラン経験者である拙者の出番でござるな」

 

「食材さえあるなら、食事は任せてください」

 

「今だけはこいつらの能天気さが羨ましい…」

 

「夏だしシャワーぐらいは浴びたいわねぇ」

 

「…そこ?」

 

A組はその光景に最早諦めを感じていた。そんな周りと違い、大興奮でカメラのシャッターを押す和美。

 

「こりゃ凄い!これぞ世紀の大スクープ!こんな特ダネを誰よりも早く掴めるなんて…あぁ!夢ならどうか覚めないで!」

 

「覚めねぇと困んだよ」

 

本末転倒な発言に、千雨は思わずそう言わずにいられなかった。

 

「怪獣の時も思ったけど…こんなの聞いてないわよ…」

 

「む、無茶苦茶だ…」

 

明日菜は呆れにも似た感情を、刹那は祐のあまりのアクセル全開っぷりに引いている。あやかと木乃香は心配のベクトルが変わりつつあった。因みに祐の破壊活動にチャチャゼロはご満悦である。

 

ネギだけはその真剣な表情を崩さず、拳を握り締めて目を離さないでいた。それを横目で確認しつつ、エヴァは微笑む。

 

攻撃がやむと、そこに存在しているのはソニュームただ一人。数えるのも億劫になる程存在していた魔族達は、今やその影すらなかった。ふらつく足で立ち上がると力のない笑みで祐を見る。

 

「驚きましたね、こんな存在がいたとは…姫様が言っていた事が今はわかる気がしますよ」

 

「しかし、残念ですが夢の世界で私を倒す事は出来ません。精神的に貴方の相手はしたくありませんが、貴方とて生物。その力も無限ではないのなら、いつかは決着がつくでしょう」

 

「決着なら今からつく」

 

佇んだ状態でソニュームを見る祐。感情が読み取れないのは彼が顔を隠しているからだろうか、どうもそれだけが理由ではない様な気がソニュームにはしていた。

 

「ほう、どう決着をつけるか聞いても?」

 

「この世界では倒せないとお前は言ったが、俺はそうは思ってない」

 

「…どういう事です?」

 

「お前をここで倒せないなら、俺の力がお前より下と言う事。この光の程度もわかる」

 

瞬間その身から放たれる圧が増したのを感じる。

 

「力比べだ」

 

指を折り曲げて開いた掌を胸の前で向き合わせた。するとその間に稲妻の様な光が発生する。次第にその大きさを増す光に手の間隔を広げると、宛ら雷となって無軌道に掌の間で暴れ回っていく。

 

大気を揺らして周囲に光が飛び散り、祐の周辺の景色が歪み始める。

 

「なにあれ…?周りがぐにゃぐにゃしてる?」

 

「アソコニ集マッテル光ニ空間ガ耐エラレナクナッテンダ、亜空間ニ近ヅイテンダナ」

 

「亜空間って…なんすか…?」

 

美空が呟いた事にチャチャゼロが状況を説明する。そこで出てきた何やら聞きなれない単語に嫌な予感がした。聞いていた聡美が解説に入る。

 

「簡単に言えばこの世の物理法則が通用しないと言われる空間です。SFなどで使われる、あくまで空想上の物ではありますが…」

 

「そりゃなんとも…」

 

なんとなく凄いぐらいにしか理解出来ていないが、それ以上深く考えたくないと美空は思考を放棄した。

 

(何でも知ればいいってもんじゃないよね…知らない方がいい事もあるってもんよ)

 

なるべく波風立てずに人生を過ごしたい美空からすれば、あの仮面の男は特級の危険物に見える。助けてくれるのは大変ありがたいが、お近づきにはなりたくはなかった。

 

「これはいけませんね…死なないとは言え、食らいたくはない」

 

両手を広げるソニューム。すると彼の周りの空間が歪み、そこには離れた場所でこちらを見ているA組の姿が映った。

 

「あれ私達!?どうなってんの!」

 

「大方あそことこちらの空間でも繋いだんダロウ、中々姑息な手を使う」

 

「空間を繋いだって…それってつまり…」

 

「私の予想では、普通に攻撃を放てばこちらに飛んでくるネ!」

 

「なんで笑顔なの!?」

 

「あんなの食らったら私達即死だよ!」

 

「と、取り敢えずこの場から離れてみよう!」

 

その場から走って移動するA組だが、ソニュームの前に映る映像は依然A組を映している。

 

「追っかけてきてるよ~!」

 

「ふざけんな~!許可なく撮るのは盗撮なんだからね!」

 

「聞いてるか朝倉!」

 

「うるせぇ!」

 

「てかあの虹の人撃つ気満々じゃない!?」

 

美砂の言う通り、祐の光は更に威力を増している。物言わず構えを取り続けるその姿に動揺は見られない。

 

「うお~い!見境なしか~!」

 

「大義の為の犠牲になれってか!?」

 

(喧しいなコイツら…)

 

エヴァは鬱陶しそうな目を向けるが、彼女達が騒ぐのも無理はない。周りが半ばパニックに陥る中、ネギが映像の全面に自分が映る位置に立って両手を広げた。

 

「ネギ君!?」

 

「何やってるの!?」

 

ネギは顔だけ振り向いて答える。

 

「あの人の正体は知りませんが、僕は何度かあの人に助けてもらった事があるんです!」

 

明日菜達がそれに声は出さずに反応した。ネギの発言に他のクラスメイトが驚く。

 

「そうなの!?」

 

「話した事もあります!あの人はとても優しい人です、皆さんを犠牲にする様な人じゃありません!」

 

「でも、だからって…」

 

「直ぐに信じる何て無理だと思います。だから!僕がそれを証明します!」

 

一層腕を広げて自分を映像に大きく映そうとするネギ。周りがそれに困惑しているとネギの横に何人かが集まって来た。

 

「明日菜!?木乃香達まで!」

 

「何考えてるですか!?」

 

明日菜・木乃香・あやか・刹那・さよ・ハルナがネギと同じ様に両腕を広げる。

 

「こいつ一人じゃ壁として小さいからね!私も付き合ってやるわよ!」

 

「ウチも!たまには身体張らんと!」

 

「お嬢様が行かれるなら、私が行かない訳にはいきません!」

 

「ネギ先生一人を危険な目に合わせるなど、この雪広あやか!看過出来ませんわ!」

 

「幽霊だから意味あるかわかりませんけど…私も!」

 

「女は度胸!一か八かは嫌いじゃないわ!」

 

するとザジもその中に加わる。

 

「ザジさん…」

 

「私が入らないのは筋が通りませんから」

 

それを見ていた裕奈は、強く拳を握ると走り出して腕を広げた。

 

「裕奈!?」

 

「危ないて裕奈!」

 

裕奈はそのままネギを見る。

 

「ネギ君、あの人の事…信じていいんだよね?」

 

「はい!絶対に!」

 

それに対して裕奈は頷き、祐の方を見た。その時、手を誰かに握られる。

 

「え…?」

 

「裕奈が信じるなら、私も信じるよ。私は裕奈を信じてるから」

 

「アキラ…」

 

「……私も!」

 

「こうなったら自棄です!」

 

「負けてられるか~!」

 

「ここで逃げたら女が腐るアル!」

 

「『廃る』ね!」

 

少しずつクラスメイトが集まり、隣と手を繋いでいく。ソニュームはそれに驚いた顔を向けた。

 

「いったい何を考えているんです…?得体の知れない人物に対して…」

 

「違いますよソニューム、彼女達は友を信じているんです」

 

ザジの声がソニュームに届き、彼は言葉が詰まる。

 

「ほら真名、そんな所にいないでこっちに来るでござるよ」

 

「私まで心中させるつもりか?」

 

「あの御仁は信じられなくとも、ここにいる誰か一人くらいは信じられるでござろう?」

 

真名は大きなため息をつくと、楓の隣についた。

 

「生きていたらこれは貸しにするからな」

 

「おや、それは困ったでござるな」

 

(お前もだぞ、逢襍佗)

 

「さて、私達も行くとしようかネ」

 

「わかりました!」

 

「おい放せ!なんで私までこんな恥ずかしい事に付き合わねばならんのだ!」

 

超と聡美にそれぞれ手を握られ、エヴァも連行される。超は途中で千雨も確保した。

 

「お、おい!」

 

「千雨サン、人柄など信じなくていい。私の頭脳を信じて欲しいネ。あれは間違いなく大丈夫ヨ」

 

「お前、なんでそこまで…」

 

「貴女も人が悪いネ千雨サン。本当はどこかで気づいてるんじゃないカナ?」

 

千雨は僅かに目を見開いた後、超から視線を逸らせた。

 

「何言ってるかわからねぇ」

 

「ふふ。因みに駄目でも大丈夫、あれだけのエネルギーならきっと痛みを感じる暇もないネ」

 

「お前なぁ…」

 

クラスメイト全員が手を繋ぎその場に立った。その表情は様々だが、皆一様に祐を見つめている。そこで祐の周囲に大きな光の稲妻が走る。それは攻撃開始の合図に見えた。

 

「本気で撃つおつもりですか?撃っても彼女達に当たり、どうにかして私に当たった所で倒せないと言うのに」

 

「やってみせる」

 

ツインアイが強く光を放つと、裕奈達が繋いだ手を強く握る。そして全員の頭の中に声が響いた。

 

(君達は絶対無事に現実に返す)

 

「今のって…」

 

「あの人の声?」

 

ソニュームは何故か自分が焦りを感じている事に気が付く。空間を繋ぎ、こちらに攻撃は届かない。仮に届いた所で自分が倒される事はない。それがわかっていながら、その焦りを消し去る事が出来なかった。

 

「夢から覚める程、キツイの行くぞ」

 

暴れる光の稲妻を振りかぶってソニュームに放つ。空気を切り裂き、音を置き去りにして一瞬で飛来する。A組が映る空間の目前に来ると、そのまま映像をすり抜けソニュームに直撃した。

 

「よしっ!」

 

「やった!!」

 

「助かった~!」

 

ソニュームの体中を稲妻が駆け巡り、全身が感電したかの様に震えだして思わず膝をつく。

 

「馬鹿なっ!?」

 

祐はそれを見ると遥上空へと垂直に飛んだ。最高地点に到達すると、右足を突き出しソニューム目掛けて突撃する。

 

右足に纏う光はどんどん膨れ上がり、やがて祐の身体全体を覆った。膝をついたソニュームは未だ動く事は出来ない。

 

「こんな力は…聞いた事もない!未知の力…!この力は!」

 

「いっけーーー!!」

 

「やったれ~~!!」

 

「ケケケ、終ワッタナ」

 

目の前に迫った虹色の光に目を剥く。その瞬間、ソニュームはこの夢の終わりを悟った。『クー・ド・レヴェイユ』が炸裂し、眩い光を発生させてその衝撃を伝えると強大なエネルギーに思わず意識を手放す。

 

纏った光を全て打ち付ける様に踏み込んで飛び退くと、空中できりもみ回転して着地する。そして光はソニュームを中心に収縮し、大爆発を起こした。

 

裕奈達がその眩しさに目を瞑る。広がる光は辺り一帯を飲み込んで、激しく照らした。

 

 

 

 

 

 

光が晴れると、全員が爆心地を見る。そこには倒れているソニュームとその前に立つ祐がいた。

 

「どうなったの…?」

 

「あいつは倒れてるみたいだけど…」

 

ザジはゆっくりとそちらに向かうと、祐の隣に立ってソニュームを見つめた。

 

「ギリギリ生きてますよ。彼は」

 

ザジが祐を見ると祐も顔の向きをザジに向けた。

 

「俺の役目はこの夢を終わらせる事。彼の処遇は貴女に任せます」

 

「寛大な心遣い、感謝します」

 

頭を下げるザジ。祐はそれに頷いて答えた。

 

「これ、終わったって事でいいのかな?」

 

「なんか起き上がらないし」

 

「あの人も、終わった感じ出してるよね」

 

二人の声は聞こえず状況がよくわからないまま会話を続けていると、周りの景色が砂のように消えていくのに気が付く。

 

「今度はなんか消えてきてるよ!?」

 

「まだ何かあるの!?」

 

「いや、夢の世界が消えるんだ」

 

声のした方を向くと祐がこちらに向かってきていた。

 

「虹の人…」

 

裕奈がそう呟く。そんな中、アキラやまき絵が急に目を閉じてゆっくりと地面に寝そべった。それに連なる様に周りも地面に横になる。

 

「みんな!?」

 

「大丈夫。夢が終わって、現実で目覚めるだけだ」

 

その声は何処か優しく感じる。気が付けば裕奈も少しずつ瞼が落ちてきていた。

 

「夢は必ず終わる。例えそれがどんな夢でも」

 

「夢が終われば、残る物もあれば消える物もある」

 

「でも…貴女が繋いだものは、貴女が消さない限り決して消えない」

 

裕奈は自分の胸にそっと手を当てた。そして両手を握る、その内にある物を抱きしめる様に。

 

「うん、大丈夫。ちゃんと持っていく。これからもずっと…」

 

彼は頷く。勿論目では見えないが、何故か裕奈には彼が笑っている様な気がした。そこで裕奈も地面に横たわる。

 

薄れゆく意識の中、裕奈が最後に見たのはこちらに小さく手を振る仮面の男の姿だった。

 

 

 

 

 

 

横たわった裕奈達も景色と同じ様に消えていく。その光景を見届けて、祐は振り返る。そこに立っていたのはザジだった。

 

祐はザジ以外が居ないのを確認し、バイザーとツインアイを収納した。

 

「ありがとうございます逢襍佗さん。大きな借りが出来ました」

 

少しずつ消えていくザジに祐は笑顔を向けた。

 

「どういたしまして。また現実で会いましょう、ザジさん」

 

「はい」

 

そう言って笑顔を浮かべたザジ。完全に夢の世界から消えると、祐は消えゆく女子寮の屋根を見た。何故かそこの一箇所にだけ花が咲き誇っており、違和感を醸し出している。

 

祐はその花を少し見つめて、視線を外した。

 

「はぁ、いい趣味してるよ…」

 

身体を光が包むと再び光の柱が現れ、祐は彼方へと消えていく。

 

全てのものが砂のように消え、女子寮と共に花も消える。そこには何もない真っ白な空間だけが残った。

 

夢が終わり、麻帆良の街に目覚めが訪れる。

一番好きな章は?

  • 序章・始まりの光
  • 幽霊と妖怪と幼馴染と
  • たとえ世界が変わっても
  • 消された一日
  • 悪魔よふたたび
  • 眠りの街
  • 旧友からの言葉
  • 漢の喧嘩
  • 生まれた繋がり
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