八月も半分以上を過ぎた頃。都内のビルに小さな事務所があり、現在そこには10人以上の若い女性が集まっている。
全員がホワイトボードの前に待機している中、そのボードに予定を書いていた女性の一人が振り返った。
「これでよし。みんな!改めて明日の予定を確認するわよ!」
声を掛けたのはこの一室に事務所を構えるアイドルプロダクション『765プロ』のアイドルの一人、『秋月律子』である。
アイドルではあるものの、人手不足なこの事務所において彼女はアイドル兼事務員の様な立ち位置にいた。何せ彼女を含めて所属しているアイドルは13人、それ以外は事務員一名・プロデューサー一名・社長一名というよく言えば少数精鋭の事務所だからだ。
「いよいよ明日かぁ…ちょっと緊張してきた…」
この事務所の所属アイドルの一人である春香は、明日に迫った初めての事務所全体の仕事に少し浮足立っていた。
「わ、私も…男の人も居るだろうし…大丈夫かな…」
春香の横にいた『萩原雪歩』は誰が見てもわかる程不安な表情を浮かべていた。そんな雪歩の肩に『菊地真』が手を乗せる。
「大丈夫だって雪歩!あれだけみんなで練習したんだから!それに、お客さんとはそれなりに距離があるみたいだしね」
「真ちゃん…うん、そうだよね。あれだけやったんだから、頑張らないと!」
「うむうむ、ゆきぴょんも日々成長してるんだなぁ」
「真美達の男性克服作戦は役に立った様だぜ」
「あれは余計酷くしただけな気がするぞ…」
気合を入れる雪歩を見て、双子のアイドル『双海亜美』『双海真美』が腕を組んで決め顔をしている。雪歩は極度の男性恐怖症の為、それの改善を狙って二人が作戦を実行したのだが、穴のあり過ぎる作戦だったので実際は成功とはいかなかった。
しかし当事者二人はそう思ってない様なので、聞いていた『我那覇響』が遠回しに伝えた。
「はいはい!おしゃべりは一旦終了!今から明日の流れを再確認するから、よく聞いときなさい!」
『はい!』
全員が返事をすると、律子は頷いてから明日のデパートで行われるミニライブについて、同様にホワイトボードにスケジュールを書き込んでいた正規の事務員である『音無小鳥』と共に話し始めた。
「ではまず、明日の集合時間だけど」
律子と小鳥の話を聞きながら、春香はその表情を引き締めた。
その日の夕方。エヴァの自宅のリビングでノートパソコンを使い、祐がにやけながら何かを見ている。向かいに座っていたエヴァはそれに冷めた目を向けていた。
「にやけるな気色悪い」
「あ、すんません。何せ明日が楽しみで」
口では謝っているが、その表情は改善の兆しが無かった。
「もう待ちきれないっすよ、楽しみ過ぎて夜も眠れん!元から眠れなかったわ!ハハハハハ!」
「喧しいわ!」
絵に描いたような上機嫌を見せる祐。楽しみにしていた明日の春香のライブに向けて、逸る気持ちを抑えきれていなかった。
「まったく…」
「オマエノオ気ニ入リハドイツナンダ?」
祐の膝の上に座って画面を見ていたチャチャゼロが聞く。祐は765プロの公式ホームページを閲覧していた。
「この人だよ、天海春香さん。何を隠そう俺の隣の席の方です!俺、麻帆良学園の学生でよかった…」
「ナンカ普通ダナ」
「そこがいいんだよ!そこが!いいんだよ!」
「二回言うな」
春香に関しては前々から祐の口から何度も出てきていたのでエヴァも存在は知っている。詳しく調べようとまでは思わなかったが。
「コイツナンテ面白ソウジャネェカ?普通ジャナサソウダ」
そう言ってチャチャゼロが指さしたのは銀髪の髪が印象的な女性だった。
「なになに?四条貴音…凄いな、銀髪だよ。地毛かな?」
すると料理の準備がひと段落した茶々丸が横に来たので、祐は茶々丸に画面を見せた。
「茶々丸、どう?この中だと第一印象でどの人がお気に入り?」
祐の横から画面に顔を近づける茶々丸。暫く所属アイドル一覧を見つめてから指をさした。
「この方、でしょうか」
「え〜っと高槻やよい、なんか以外だな。どこら辺が茶々丸のセンサーに引っかかったの?」
「何と言いますか、愛らしく守ってあげたくなる様な気がして」
「もしかしてカテゴリー近所の猫と一緒か?」
思いの外盛り上がる三人。何となく気になったのでエヴァも祐の隣に来る。
「ささ、師匠の推しは誰ですか?」
「そんなものはない」
エヴァが画面を覗く。意外とその表情は真剣に見える。
(真剣だな)
(真剣ですね)
(ツカナゲェナ)
やがて画面から顔を離すと指をさした。
「強いて言うならこいつだな」
指した人物は如月千早と書かれた少女。エヴァ以外の三人は顔を見合わせてからエヴァを見た。
「その心は?」
「幸薄そうだからだ」
「なんだその選び方…」
一番好きだと言われてもそんな理由では喜べないだろうと祐は思っていると、エヴァが隣に座りながら聞いてくる。
「お前、この小娘どもに詳しいわけでは無いのか?」
「天海さん経由でチラッと調べた事ありますけど、正直ちゃんとは知らなかったんで。明日の為にもこれを機にしっかり知っておこうかなと思った次第です」
「ご苦労な事だ」
呆れが混じった言葉を掛けた後、エヴァはある事を思い出した。
「そうだ祐、ぼーやには私をマスターと呼ぶ事を許可した」
「おー、いいですね。これで本格的にネギも弟子入りってわけだ」
嬉しそうな表情を浮かべる祐。それを横目で確認しながらエヴァはニヤリとした。
「そこでだ、お前は私の事を師匠と呼ぶが…これだと少々紛らわしいとは思わんか?」
「いや、特には」
エヴァは椅子から転げ落ちそうになるが、何とか持ち堪えて体制を立て直すと祐に詰め寄った。
「ええい!変なところで鈍い奴め!お前に特別な名前で呼ぶ事を許可してやろうと言っているのだ!」
「あ〜なんだそういう事ですか、そうならそうって言ってくれないと。俺エスパーじゃないんですから」
「よく言うわ、この不可思議生命体が」
「なんて事言うんですかロリバ…いやなんでもないっす」
「途中で止めただけ良しとしてやる。但し次はない」
「暴力的だなぁ、DVは良くないですよ」
「今ニ始マッタ事デモネェダロ」
腕を組んで椅子にもたれ掛かると鼻を鳴らす。
「それで、お前は私をなんと呼ぶんだ?」
「え?俺が考えるんですか?」
「当たり前だろうが」
そう言われて祐は頭を捻る。
「なんかないんですか?こう呼ばれたいとか」
「…どうせなら、他の奴とは違う呼び方が望ましいな」
「じゃあエヴァちんは駄目か」
「お前がそう呼ぶと気持ち悪いな…」
「…そもそも師匠とかエヴァ姉さんじゃ駄目なんですか?」
「駄目ではないが今一面白みがない」
「文句ばっか言うじゃんこの人!もういいよエ婆さんで!」
「誰が婆さんだ!」
祐は無言でエヴァを指さすと、無言の拳が飛んできた。
同時刻。千雨が寮のポストに入っていたチラシを流し見していると、一つのチラシが目に留まる。それはデパートで行われるイベントについて書かれていた。
「あん?こいつって確か…」
そこには項目の一つであるミニライブに出演するアイドル達の顔写真が載っている。その一人は自分の思い違いでなければ、隣のクラスの少女だった筈だ。
「ミニライブ…ミニライブねぇ」
一人そう呟くと気配を感じて横を見る、予想はしていたが立っていたのはザジである。千雨は大きくため息をついた。
「あのなぁ…物音立てずに横に立つな、心臓に悪い」
「失礼、癖なもので」
「暗殺者かお前は」
あの夢の世界での一件から以前より少し口数が多くなった気がするザジに思うところはあるが、厄介な匂いを感じてそこには触れずにいた。そんなザジはチラシを見つめている。
「もしかして、興味あるのか?」
それに無言で頷く。ここのところどうも意外な一面ばかり見ている気がする。とはいえ彼女に対して何一つ分からないところは変わりないが。
「この人、逢襍佗さんが気に入ってる人」
「ああ、そうだったな」
ザジが指さしたのはチラシに載っている春香の写真で、千雨もなんとなくその写真を見た。
「明日、行く」
「行くって…これ見にか?」
再び無言で頷くと、千雨と目を合わせる。千雨としては人と目を合わせるのはあまり得意ではないので居心地が悪い。
「千雨さんも一緒」
「は?なんで私が…」
「気になってる、この人の事。千雨さんも」
正直な話、確かに気になっている。言ってしまえば自分の古参を一人掻っ攫った相手だ、どんなものかと見てみるのも無駄ではないよう気がする。しかしわざわざ人の集まる所に行きたくもないというのも、また事実であった。
「それじゃ決まり」
「あっ、おい!」
そう言ってその場から去っていくザジ。千雨は後に続く言葉を発せず、その背中を見送った。
「強引なやつ…」
しかしこうでもしないと中々踏ん切りがつかなかっただろう。どうせ予定があるわけでもない、明日は駆け出しアイドルの姿でも拝んでやろうと思う事にした千雨だった。
翌日。いよいよミニライブ本番当日となり、何の意味があるのかは分からないが、祐は精神統一を行ってから自宅を出る。賑わう駅前に着くと後ろから声を掛けられた。
「お~うアマやん!久しぶりだにゃ~」
「ん?おお元春!なんか懐かしいな!」
声の正体は『土御門元春』。1年D組に所属する祐の同級生にして、中学からの知り合いでもある。逆立った金髪にサングラス、アロハシャツを着用する何とも派手な容姿の人物だ。
「まったくぜよ、高等部に上がった途端会う機会が減っちまった。俺達に飽きたのかアマやん?」
「何言ってんだよ、そんな訳ないだろ?ただちょっと可愛い女の子と会う機会が増えただけだよ」
「凄いな、この僅かな間に俺の怒りのボルテージは急上昇だぜい」
気心が知れたように軽口をたたき合う二人。こうして顔を合わせるのは久々でも、お互いに変わりはなかった。
「それで色男、これからどこに行くんだ?」
「実はこれから色男である僕はイベントを見に行くんだ」
「本気になるなよアマやん、恥ずかしいぞ」
「あ!?」
「悪かった悪かった。それで?何なんだそのイベントってのは?」
急にキレだした祐の肩を笑いながら叩くと、話を元に戻す。祐は楽しそうに質問に答えた。
「それがさ、我がクラスのアイドル天海春香さんのミニライブがあるんだよ。是非ともその姿を拝見しようと思ってね」
「天海春香…ああ、あのアイドルやってるっていう」
「デパートでやるんだけど、俺達のクラスで応援しに行くことになっててさ。まぁ?俺は直接天海さんに誘われたけども?」
「お手本のような得意げな顔だ、腹立ってしょうがないぜよ」
腕を組んで何かを考え始めた元春。やがて笑顔を見せて祐に言った。
「面白そうだ、俺も行っていいか?」
「勿論、観客は多いに越したことないよ。天海さんの晴れ舞台を一緒に盛り上げようじゃないか!盛り上がらなかったらぶっ飛ばすからな」
「お前さては厄介勢だな?」
そうして目的地に向かう事にした二人。B組のほとんどが見に来ることになっており、デパートのロビーで待ち合わせる予定である。
二人が到着すると、そこには既に薫の姿があった。
「えっ、もう居る…お~い薫」
「おっす祐!一番乗りは頂いたわ!」
「負けたわ…絶対俺が一番だと思ってたのに…」
「へへ~ん。あんたいつも早いから、たまには私の方が先に来てやろうと思ってね」
ショックを受けたような顔をする祐を見て満足げに笑うと、隣にいる元春に気が付いた。
「あれ?土御門じゃない、どうしたのよ」
「ようよう棚町、実は駅前でアマやんに会ってな。面白そうなんで俺も付いてきた」
同様の中学だった為、元春と薫も顔なじみである。
「なるほどね、そういう事ならあんたも春香の晴れ舞台を盛り上げてよ?盛り上がらなかったらぶっ飛ばすからね」
「このクラスは厄介勢しかいないのか…」
過激な思考を持つ人物達の集まりの可能性があるB組に、元春は戦慄した。
暫くすると次々にB組が集まってくる。本日集まれた人数が全員来たことを確認すると、会場へと進み始めた。
会場の舞台裏からこそこそと客席を覗く亜美と真美。会場は駆け出しのアイドルとしてはかなり多くの人で溢れていた。
「ありゃ~、思った以上にいるね~」
「こいつは下手なこと出来ませんな~」
この声に他のメンバーも集まってくる。
「この伊織ちゃんのライブとしては物足りないけど、あまり贅沢は言ってられないわね」
「あらあら、伊織ちゃん自信満々ね」
「ふふ。その姿勢、誠頼もしいですね」
強気な『水瀬伊織』の発言に、メンバーの中では年が上である『三浦あずさ』と『四条貴音』が優しい目を向ける。
「あそこの方、若い人達が結構いますね」
「そうね、高校生くらいかしら?」
ある場所を指す『高槻やよい』に、そこを見ながら『如月千早』が頷く。ショッピングモールということもあり家族連れが大半だが、ステージから向かって右側の最前列付近は高校生ぐらいと思われる男女が固まっていた。
「あ、あの男の人…凄い目力でステージ見てるよ…」
「え、どれ?ほんとだ…」
雪歩と真が見たのは腕を組み、睨みつけるようにステージを凝視する男。そう、逢襍佗祐である。
「すっごく怖い顔してるの。お腹空いてるのかな?」
「怒ってる感じじゃなさそうだけど、誰かの知り合いか?」
どこかずれている予想を立てた『星井美希』。響は周りに聞くが全員が首を横に振った。そんな中、遅れてその輪に加わった春香が嬉しそうに言う。
「あっ!逢襍佗君だ!みんなもちゃんと来てくれてる!」
「何よ春香、あの背が高いの春香の知り合い?」
「うん、あそこにいる人達私のクラスメイト!あの男の人は逢襍佗君だよ!ほら、前に話した隣の席の」
「ああ…あの変人ね…」
春香の返答に伊織が納得したような顔をする。想像していた見た目と違っていたが、何度か聞いていた話からあれがその変人というのは不思議と腑に落ちた。
「も~伊織、またそんなこと言って。逢襍佗君は変人じゃないよ?ちょっとユニークなだけ」
「あんたのしてた話が本当なら充分変人でしょ」
「ほらほらあんた達、そろそろ準備しなさい」
一歩引いていた律子からの声に全員が返事をすると、その場から離れていく。春香は今一度祐達の場所に目を向けてから、両手を握り気合を入れた。
「逢襍佗、お前でかいんだから後ろの方行ったらどうだ?」
「そんな不条理があってたまるか!屈むから許してくださいマキジさん!それとも抱っこしてほしいのか!」
「マキジって言うんじゃねぇ!あと絶対抱っこすんなよ!」
「二人とも落ち着いて…」
「あまり騒ぐと警備員に締め出されてしまうぞ」
来る途中で祐達を見つけ、バレない様に距離を取っていた千雨は、ここからでもわかる祐の相変わらずさに呆れている。横にいるザジは無表情でステージを見つめていた。
麻帆良学園の学園長室にて、近右衛門とタカミチが話し合っている。今話題に上がっているのはネギがエヴァの正式な弟子となった件だ。
「ふぉふぉふぉ、ネギ君もエヴァンジェリンの弟子となったか。これも色々と祐君の影響かのう」
「それだけが理由ではないとはいえ、割合の大半は占めているでしょうね」
「気難しい所はあるが、実力は間違いない。きっとネギ君を導いてくれるじゃろうて」
満足そうに髭を撫でる近右衛門。タカミチも笑顔を浮かべると、机の上に山積みになっている書類が目に留まった。
「学園長、その書類は?」
「おお、これか。学園交流の資料じゃよ」
「今回は実施されるんですね」
「これから何事も無ければの」
都市内に幾つもの学校を有する麻帆良学園都市では、一年に一度他校間での交流が行われている。去年・一昨年は諸事情により実施されなかったが、今年度は三年ぶりに実施される方向で話が進んでいた。
「もう相手は決まっているんですか?」
「いやぁ、時期も含めてまだまだじゃよ。候補は何校か挙がっとるが」
そう言って候補となる学園の名前が記載された書類をタカミチに渡す。それに目を通していると意外そうな顔をした。
「リリアン女学院ですか?何と言うか…意外なところが来ましたね」
「何でも向こうがうちを希望校の一つに挙げたらしい。厳格な校風で有名なとこじゃが、だからこそうちを選んだのかもしれんな」
「というと?」
「どうせ交流するならまったく違う雰囲気のところの方が面白いじゃろ」
「は、はぁ…」
確かに麻帆良学園とリリアン女学院の雰囲気はまったく違うだろう。あそこは上流階級という言葉がぴったり当てはまる生徒達で構成されていると言ってもいい。
仮にうちと交流することになったとして、綺麗に纏まる光景がタカミチにはまったくと言っていいほど浮かばなかった。
「とはいえそれより先に幾つか行事もある。特に10月には学園祭が控えておるし、まずはそちらを無事に終えてからじゃな」
「確かに、仰る通りですね」
二学期が始まれば、様々な行事が待っている。間違いなく色んな意味で多忙になるであろうことを予想し、思わず二人は同時にため息をついてしまった。
場所は戻ってデパートとのイベント会場。765プロのアイドル達が簡単な自己紹介を終えた後に一曲を披露すると、辺りは主に男連中の歓声で揺れていた。
「天海さ~ん!もう君しか見えな~い!!」
「感謝するぜアマやん、今日俺を三人の天使とめぐり合わせてくれたことに…」
「梅原…女神っているんだな…。しかも名前はあずささんって言うんだ…」
「橘、俺は確信したぜ…俺が生まれてきたのは!四条貴音さんと出逢う為だったんだ!」
「美希ちゃ~ん!好きだーーーー!!」
「律子さんと愛し合いたい」
「今からでも菊地真さんと幼馴染になれませんか?」
「雪歩ちゃんは僕が守る!」
「セイレーンだ…セイレーンは実在したんだ!」
「水瀬伊織様は女王様ですね、間違いない」
「僕は沖縄に移住して、響さんのご家族に挨拶に行ってきます」
元春が言う天使三人とはやよい・亜美・真美である。何を隠そう、元春はロリコンであった。因みに他の男子が言ったセイレーンは千早のことだ。
「馬鹿じゃないのこいつら」
「うちの男子って揃いも揃ってアレだったんだな」
薫と楓が祐達を冷めた目で見る。通常であれば凍えるような冷たさだが、今の祐達の放つ熱には効果を示さなかった。会場全体で盛り上がってはいるものの、ここだけ異様に温度が急上昇している。
「でも、菊地真さんってかっこいいかも…」
「由紀香が既に惚の字だぞ」
「三枝って意外と面食いなのか?」
「えっ!?そ、そんなことないと思うけど…」
綾子の質問に由紀香は焦ったように答えた。
「今俺のこと見たぞ!」
「ちげーよバカ!俺だろ!」
「俺なんだよなぁ」
「ミキ達はちゃんとみんな見てるよ。だから喧嘩はめっ!なの」
「「「あぁ〜…」」」
会場の男性達に美希が声を掛けると、その者達は一瞬で鎮まった。中には拝みだした者もいる。
「…アホ」
後ろの席で呟いた千雨にザジが無言で頷いた。
一番好きな章は?
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序章・始まりの光
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幽霊と妖怪と幼馴染と
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たとえ世界が変わっても
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消された一日
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悪魔よふたたび
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眠りの街
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旧友からの言葉
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漢の喧嘩
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生まれた繋がり