「それではここで私達とゲームをしましょう!」
『やりまーす!』
春香が会場に呼びかけるとレスポンスが子供向けショーかと思うほど元気よく返ってくる。違いは返事をした者が幼児ではないことくらいだろう。
「今から皆さんにはあずささんとじゃんけんをしてもらいます!」
春香の横に立つあずさが手を上げると、それだけで男性は盛り上がる。
「最後まで勝った人は、私達の誰か一人と写真撮影が出来ますよ!」
言い終わる前に男性陣は拳を突き上げていた。既にじゃんけんの準備は万端である。
「みなさ~ん、ズルは無しですからね~」
『しませーん!』
あずさの言葉にも即座に返す。本人達は楽しくてしょうがないが、傍から見れば何とも異様な光景であった。
「それじゃあ、いきますよ~?最初はぐー!じゃんけん」
「あの光に関して知ってること?」
「うん、パルは前にも何回かあの光見た事あるでしょ?ネギ君にも聞いてみたけど、正体は知らないって言ってたから」
女子寮のロビーにて裕奈にそう聞かれたハルナは頭を掻いて困った顔をする。
「そうは言ってもねぇ…確かに見た回数は多いけど、遠目から光を見ただけだし…姿を見たのは私も夢の中が初めてだから」
嘘は言っていないが、正直に言えば正体も知っている。しかし祐は基本的には正体を隠していると見ていいだろう。だからこそ本当のことは伝えられないが、裕奈が単に興味本位で聞いてきているわけではないこともわかっていた。
「会いたいの?あの人に」
「まぁね。なんせちゃんとお礼も言えなかったから」
これは困った。ただ何となく聞いてきたぐらいであれば知りませんでいいが、こうも純粋な思いを見せられては適当に煙に巻くのは良心が痛む。かといって正体は逢襍佗祐君ですなどと言うわけにもいかない。
「んぐあ~~、何とかしてあげたいけど…」
「凄い声出たけど大丈夫?」
どうしたものかと考えるハルナを見て、裕奈は笑った。
「ごめんごめん、困らせちゃって。そりゃパルもわからないよね」
「あ~うん、そう言ってもらえると助かるわ」
「じゃあさ!パルはあの人はどんな人だと思う?」
空気を変える為か、明るくそう聞いてくる裕奈。その質問にハルナは困惑した。
「どゆこと?」
「そのまんまだよ。私はね、冷静な人だと思うな。戦ってる時とか正にそんな感じだったし!」
「は〜い、負けちゃった人とあいこの人は座ってくださいね〜」
「んおおお!負けたぁーーー‼︎」
「なんてこった…一発目だったのに半分が消えたぞ!」
「生き残ってるのは…祐と純一か…」
「土御門も残ってるぞ!」
元春はサングラスで隠れているものの、その目つきを鋭くしている。対して祐は不敵な笑みを浮かべていた。
「大丈夫があいつ⁉︎笑ってるぞ!」
「この状況に頭やられちまったのか⁉︎」
「元からだろ」
楓の辛辣な発言も意に返さず祐は笑う。
「おい祐!落ち着け!冷静になるんだ!負けちまうぞ!」
「これが落ち着いてられるか!勝負にじゃんけんを選んだ時点で俺の勝ちは決まったんだよ…もう誰にも俺を止められねぇぞ!愛も止まらねぇぞ!」
「こいつ…勝ちを確信してやがる…!」
「あ〜…まぁ、戦ってる時ほぼ喋ってなかったしねぇ」
「でしょ?たぶんどんな時も落ち着いて対処する人なんだよ!」
確かにあの時の祐は別人かと思う程、無口で感情を表に出していなかった。仮面で顔を隠していたのもあるだろうが、それでも先に祐の力のことを確信していなければあれが祐とは到底思えない。
「やっほーお二人さん。何の話してるの?」
ロビーにふらっとやってきた桜子が二人に話し掛けてきた。
「この前の虹の人、どんな人なのかなって話!」
「お〜!なんか面白そう!う〜ん、私はねぇ…」
腕を組んで頭を捻る桜子。少しして自分の予想が出たようで、自信ありげに答えた。
「優しい人だと思うな!なんたって夢の時とかみんなを助けてくれたんだから!」
「純一も負けた!」
「抜け殻みたいになってるぞ⁉︎」
「燃えたよ…燃え尽きた…真っ白にな…」
「ジョー⁉︎」
二回戦目も勝ち残った祐の肩をクラスメイトが掴んだ。
「頼む祐!譲ってくれ!お前はいつも天海さんの隣に座れて、可愛い幼馴染もいるだろ!」
「アホ言ってんじゃねぇ間抜けが!負け犬は座ってろ!」
「あぁ!祐くん無慈悲!」
「私はクールな人って感じたかな。感情は隠して、目的を達成する…仕事人ってやつ?」
「寡黙な感じだよね、必要以上のことは喋らないっていうか」
いつの間にやらロビーに集まってきたA組の面々が自分の想像する仮面の男の話をする。
「武術の達人なのは間違いないアル!あの身のこなしは簡単に出来るものではないアルヨ!」
「きっといつもキリッとしてるんだよ!でもたまに優しくフッて笑ったりして!」
「ギャップにやられちゃうやつね!」
「あはは…」
ほぼ願望発言大会になっている現状を見ながら、ハルナは苦笑いを浮かべるしかなかった。
いよいよ残った者は片手で数えるほどになったジャンケン大会。相変わらず生き残っている祐は、信じて疑わない勝利が近づいていることに興奮を隠さず両手をひたすら縦向きに叩いている。
「チンパンジーみたいになってる…」
「野生に帰ったのかな?」
そんな祐の横に立つ生き残りの一人、元春はニヤリと笑ってみせた。
「おそらく次で勝負が決まるぜい?アマやん、どっちが勝っても恨みっこなしだ」
祐は両手を叩きながら何度も頷く。
「ついに言葉も失ったか…」
「ねぇねぇ!明日菜はどんな人だと思う?」
少し遅れてやってきた明日菜と木乃香がその輪に入ってみると、話しているのは何ともリアクションのし辛い話題だった。
「どんな人、どんな人って…ねぇ?」
横の木乃香を見ると、何故かニコニコと笑っている。明日菜が何と言うのか期待しているのだろう。それに変なプレッシャーを感じながら、当たり障りのないように答えることにした。
「まぁ、その…なに?いい人だったら、いいわよね…」
「つまんない、30点」
「何でよ⁉︎別に悪くないでしょ!」
美砂の辛口評価に食ってかかるが、そんな明日菜の背中を美空が優しく叩いた。
「やったじゃん明日菜!普段のテストよりよっぽど点数高いよ!」
「余計なお世話よ!」
「見事勝ち残ったのは〜…そこの兄ちゃんだ!」
「おめでとうラッキーボーイ!」
亜美と真美が本当に勝ち残った祐を指さす。周りから拍手が起こり、本人は相変わらず手を叩いてチンパンジーのままだ。
「では舞台にどうぞなの」
美希に手招きされると、一瞬で凛とした佇まいになって舞台に上がる。負けた元春を始め、同級生の男子達は血涙を流していた。
「お名前をお伺いしてよろしいでしょうか?」
「逢襍佗祐と申します。高校一年生の16歳であります」
貴音からの質問に堅苦しく答える。薫達は祐が何か馬鹿なことを言わないか内心ハラハラしていた。
「それではアマタ殿、共に写真を撮影する私達のどなたか一人を選んでください」
「天海春香さんで」
「うえっ!私⁉︎」
完全に気を抜いていた春香は、即答で答えた祐のまさかの回答に驚いてしまう。それを周りが不思議がっているのに気が付き、愛想笑いで誤魔化しながら祐の隣に来る。
「あ、逢襍佗君…私でいいの?学校で毎日会ってるのに」
「何を仰る天海さん、アイドルの天海さんと俺は初対面だから。是非とも記念に一枚お願いします」
小声で話し掛けると、これまた予想外の答えが返ってきた。その言葉に目を丸くすると、暫くして春香は優しく笑った。
「うん、私でよければぜひ!」
ここからでは何を話しているのかわからないが、春香が嬉しそうな顔をしているので問題ないだろう。おかしなことを仕出かさなかった祐に一安心していた薫は、前の席の元春が何やらぶつぶつと呟いていることに気がついた。
「土御門?何ぶつぶつ言ってんのよ」
「いや、ちょっとアマやんに呪いをかけてやろうと」
「あんた恨みっこなしって言ってなかったっけ…?」
一連の流れを見ていた千雨は呆れながらも、祐の異様なジャンケンの強さに疑問を持っていた。
「逢襍佗の奴、異様にジャンケン強くないか?博物館の時も勝ってたろ」
「相手が手を出す際の動きを見て判断してから、素早く勝つ択を出してるのでしょう。普通の人ではまず勝てませんね」
「…いや、そんなことできるもんなのか?」
「実際彼はやってますから」
舞台上で楽しそうに春香と写真を撮っている祐を見て、千雨は眉間に皺を寄せた。
「あ〜、生きててよかった…新しい写真立て買わなきゃ」
ミニライブが終わり、全員が帰り支度をし始めた頃。尿意が迫っていた為に向かったデパートのトイレから祐が出てくる。
「逢襍佗さん」
名前を呼ばれ、振り返ると立っていたのはザジだった。祐は少し驚いた顔をする。
「ザジさん?奇遇だね、こんな所で」
「私も、彼女に少し興味があったもので」
「彼女…天海さんに?」
頷くと祐との距離を少し縮めた。
「改めてお礼を言わせてください。先日はありがとうございました」
「いえいえ、俺としてもみんなには起きてもらわないと寂しいからね」
笑って答える祐を見つめ、少し間を開けてザジが話し始める。
「受けた恩は返すのが筋というもの。逢襍佗さん、何か私にしてほしいことはありませんか?」
「してほしいこと?う〜ん、そう言われても…」
「私にできることなら何でも構いませんよ。身体がお望みでもお応えしましょう」
瞬間、祐の顔つきが変わった。
「……マジっすか…?」
「ええ。私の身体でよければ、ですが」
すると何やら祐は全身に力を入れて激しく力んでいる。恐らく己の煩悩と戦っているのだろう。小刻みに全身が震える状態が暫く続くと全身を脱力させ、大きく息を吐いた。
そうしてザジに一歩近づくと両肩に手を置いて目を合わせる。
「ザジさん、貴女の提案は魅力的だ…そりゃもうヤバイくらい。でも、俺は一つ決めていることがある」
「俺は、相手もノリノリじゃない限り手は出さない」
祐を見つめ返しながら、ザジは首を傾げた。
「私は嫌ではありませんが?」
「いや、そうじゃないんだ。ザジさんはあくまでお礼として、してもいいって言ってくれたんだよね?」
ザジがそれに頷くことで答えると、祐はザジから視線を外して納得したように小さく何度か頷いた。
「なんて言うか、その…お礼とかそういったのは抜きにして、単純に俺としたいって思ってくれたらその時にまた声をかけて。全力でお相手させていただきます」
「あ〜…でも勿体ねぇなぁ…!絶対後悔するなぁこれ!」
頭を抱えて悶える祐をザジは不思議そうに見ていた。そんな時、同様にトイレに向かっていた千雨が出てくる。
「悪いザジ、待たせた…って、逢襍佗…」
「あれ、長谷川さんまで。もしかして二人できたの?」
悶えた姿勢のまま聞くと、ザジが頷く。祐の奇妙な体勢に困惑しながらも、千雨は気まずそうな顔をした。
「長谷川さんも天海さんを見にきた、ってことでいいのかな?」
「えっ、あっと…ま、まぁな。なんせ私のファンだった奴が離れていったくらいだ。どれほどのもんか見ておこうと思ってな」
気まずさもそうだが、今の千雨の感情は自分でもよく分からないものだった。
久し振りに祐と面と向かって会ったからか、春香に浮かれている姿を見たからか、それとも祐があの仮面の正体だと何処かで疑っているからなのか。
考えられる要素はいくつもあって、それでいて何故こんなに自分がモヤモヤとしているのかは当たりが付けられなかった。
だからだろうか、何となく言葉に棘のようなものが生まれてしまったのは。しかしそれと同時に八つ当たりのような感情を抱いている自分に対してあまり良い印象は持てなかった。
千雨の言ったことに祐は首を傾げる。
「ファンが離れたってのは…どういうこと?」
「なっ!お前だよお前!最近はめっきりコメントもしなくなって!完全にあいつを推すことにしたんだろ!」
まるで分かっていない様子の祐に少しカチンときたのか、言葉の勢いが強くなった。恥ずかしさもあって顔を赤くしながら祐を指さす。
「……あー!そういうことか!」
ようやく何のことを言っているのか分かった祐は苦笑いを浮かべた。
「ハンドルネーム変えたんだよね、あの怪獣の件から虹の光ってちょっと騒がれたでしょ?だからそれになぞったミーハーって思われるの癪だから、まったく関係のない名前にしようと思って」
「は?じゃあ今のネームって…」
「どうも、永劫のとっちゃん坊やです」
「お前かい‼︎」
てっきり変わるように入ってきた新参だと思ったら最古参だった。まさに擬態の新人である。
「やめるわけないじゃない、これでもそれなりにファンだよ俺。一昨日のスク水は良かったね!靴下を履いてるところが最高でした」
「直接伝えんなバカ!」
先程よりも赤みを増した顔になる千雨。画面越しならまだしも、直接あの姿を褒められるのは祐にその気はなくてもこちらからすればとんだ罰ゲームだ。
「なんだよ、たく…私が馬鹿みたいじゃないか…」
「コメントで伝えるのはどんだけ周知してほしいんだよこいつって気がしたからさ。直接言うタイミングもなくてすっかり忘れてた」
一度祐の顔を見て、千雨は大きくため息をついた。
「そんで、どっちが好きなんだよ…」
「え?」
「天海春香とちう。どっちが好きなんだよ」
そう聞かれた祐はこの世の終わりのような顔する。
「どうしても、決めなければいけませんか…?」
その顔を見ていると自分が意地悪をしている気がして、千雨は手を軽く振った。
「あ〜やめやめ…悪い、アホなこと聞いた。一番を決めろとか、そこはお前の自由だよな」
「すみませんが、そうしてください…」
綺麗な姿勢で頭を下げる祐を見て、千雨は頭を掻いた。それと同時に、自分の中にあることが浮かんでくる。それは他でもない、あの虹の光の事だ。
聞くべきではないと思っていた、だがはっきり言って気になってしょうがない。しかし仮に祐がそれを認めた場合、自分はどうすればいいのだろう。はい、そうですかで終わっていい問題ではないような気がする。
悩みながら表情を険しくする。だが少しずつその口は開いていった。
「なぁ、逢襍佗…お前さ…」
その声に下げていた頭を上げて千雨を見ると、千雨からは強い緊張を感じる。
「その…なんだ、もしかしてなんだけど…」
思うように言葉が出ずに視線を祐から逸らして横を見ると、千雨を凝視しているザジと目が合う。その瞬間千雨は一瞬で体の熱が冷めたのを感じた。
彼女が居たことをすっかり忘れていた。ましてやここは多くの人で賑わうデパートだ、いくらなんでもこんな所で聞く話ではない。
そもそも祐との会話をザジに聞かれたことも、よく考えればとんでもなく恥ずかしいことではないだろうか。冷めていた体が再び熱を持つと、ザジの手を掴んで祐に背を向けた。
「やっぱなんでもねぇ!忘れてくれ!じゃあな!」
早歩きでその場から離れる千雨だが、途中で振り返り祐に指をさす。
「あ、あと!感想を直接言うのは金輪際禁止だ!分かったな!」
「えっ…あ、うん」
祐の返事もそこそこにスピードを上げて去っていく千雨。ザジは無表情で手を引かれていった。
呆気に取られた顔で二人の背中を見送り、少しして祐は困ったように笑う。
「どんだけ長いトイレかと思ってきてみれば、少し見ないうちに悪い男になっちまったか?」
「さっき言ってた色男って話、あながち冗談じゃないかもって思ったんじゃない?」
「それはどうだかにゃ〜」
後ろから祐の隣にきた元春。会話をするが二人とも視線は前を歩く千雨とザジに向けられていた。
「アマやん、これからどうするつもりだ?」
先程とは打って変わって、元春の表情は真剣そのものだった。
「お前が一番分かってるだろうが、このまま行けば今以上に忙しくなるぞ。奇跡的に保たれてた世界だってぐらつき始めてる」
「だろうね」
祐は腕を組む。その視線は千雨達に向いているようで、別の何かを見ているようにも見えた。大きく息を吸って、ゆっくりと吐き出す。
「生きていくよ」
「なに?」
思わず元春は祐を見る。相変わらず祐は遠くを見たままだ。
「生きていく、これからも。それが俺の一番やらなきゃいけないことだから」
そう言って笑いながら元春と視線を合わせる。暫くお互いを見つめ合う時間が続いて、先に視線を外したのは元春だった。
「答えになってないぜよ」
「あれ、ダメだった?結構決まったと思ったんだけどな」
「何が言いたいのかさっぱりだ。意味深なこと言いたがりかアマやん?」
「そういうお年頃ですから」
「抜かせ」
弱めに背中を叩かれ、それに対して祐は軽く笑った。
「まぁ、いいさ。友人として温かい目で見てやろう。でもカッコつけも程々にしといたほうがいいぞ?」
「妬くなよ、俺がかっこいいからって…」
今度は割と強めに背中を叩かれた。先程と違い、祐は叩かれた部分を摩る。
「今のは愛がない」
「はじめっからねぇよそんなもん」
「は〜、冷たい奴。夏なのに凍えるわ」
そこで祐のスマホが振動する。確認すると薫からのラインで、『はよ』と短く送られてきた。
「いかんいかん、これ以上ゆっくりしてたら薫にしぼられる」
「そりゃまずいぜよ、さっさと戻るか」
二人は少し早歩きで薫達の元へ向かう。道の途中、表情には出さなかったが元春は先程祐が言ったことの意味を何となく考え始める。
ただそれが祐の意味深な発言にまんまと嵌ったようで、少し負けた気がした。
地球から遥か彼方の宇宙に浮かぶ惑星。そこにこれでもかと存在感を示す巨大な城があった。その内部の長い廊下を、騎士のような鎧と長いマントを身につけた薄い黄緑色の髪を持つ男性が歩いている。
身体に一切の乱れがなく、本人の雰囲気もあってただ歩く姿でさえ凛々しく見えた。しかしそんな一枚絵のようなその光景に似つかわしくない、慌てた様子のスーツにサングラスをかけた男性二人が走って向かってくる。
「ザスティン隊長!」
「大変ですザスティン隊長!」
「何だ騒々しい、取り敢えず落ち着いて話せ」
焦りを隠そうともしない部下の『ブワッツ』『マウル』に諭すように言う『ザスティン』。しかし二人は落ち着く様子もない。
「それが!とんでもないことになりました!」
「どうか落ち着いて聞いてください!」
「お前達が落ち着かんか…」
呆れた視線を向けるザスティンに、二人が詰め寄って言った。
「ララ様が!家出なされました!」
「はぁ、またか…。それで?今度はどの辺りに行ったのだ?」
「今回はただの家出ではないのです!たった今、この星から一隻の宇宙船が飛び立ちました!予定にないフライトのものです!」
なんてことなさそうに答えていたザスティンの表情がそこで固まる。その顔は少しずつ血の気が引いているようだった。
「……まさか…」
「その宇宙船に乗っているのはララ様です!」
「ついにララ様が!この星から出て行ってしまわれたのです!」
腹の中の息を全て吐き出したのではないかと思うほど声を出したブワッツとマウル。対してザスティンからは一切の反応がなかった。
「た、隊長…?」
「…き、気絶してる…」
一番好きな章は?
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