昼前の晴天が広がる日。八月も終わりが近づいたものの気温はまだ高く、蝉の声も聞こえている。ここは静岡県伊豆市、6月にも来た慰霊碑が立っている場所だ。
再びここに来た祐は慰霊碑の前で手を合わせている。すると同様に慰霊碑の前にやってきた男性が祐の横で手を合わせた後、話し掛けてきた。
「失礼、この辺りの方でしょうか?」
年齢としては60代だろうか、白髪の物腰柔らかな男性だった。
「いえ、生まれも育ちも埼玉です。ただ、家族がここで亡くなったものですから」
「あぁ、それはお気の毒に…」
聞いてきた男性は痛ましい顔をした。心底そう思っているのだろう。
「私はここ出身の者ですが、娘を亡くしましてね」
「まだ20歳でした。彼氏もいたようです、父親としては何とも言えない気持ちでしたが」
そう言って笑う男性を見て、祐も少し笑った。今も彼の中に娘を大事に思う気持ちが見えたからだ。
「最近…例の事件があってから、ここに来る人の数は減ったように思います」
例の事件とは間違いなくトゥテラリィの事だろう。確かに以前来た時より、人の数は少ないと感じた。あの時も大勢という事はなかったが、それでも今よりは間違いなく居たはずだ。
「何せ犯人がこの事件の被害者達だ。そういった意味で、ここが近寄りがたくなったのかもしれません」
「悲しいですね、それは」
「まったくです。世間には、別に同情してほしいわけじゃない。ただ…ここで起きた事を忘れて欲しくないですね」
二人は視線を石碑に移す。その石碑を見ていると何故かあの時の光景が浮かんでくる気が祐にはしていた。それはもしかすると隣の男性も同じなのかもしれない。
「こんなことを言うべきではないんでしょうが…私はね、彼らが絶対的に間違っているとは思えないんです」
男性は暗い表情でそう言った。祐の表情は変わらず、石碑を見たままだ。
「やったことは過激でしょう。関係ない人を巻き込んで、あまつさえ死人も出してしまった」
「それでも彼らの気持ちを分かってしまうんです。別次元の存在がすぐそばにいるこの状況に恐怖を感じてしまって、それに対抗しようとする気持ちが。他人事のようにしている世間に憤る気持ちが」
大切なものを奪った者達がいるのなら、黙っていられないのは当然だ。誰よりもその気持ちはわかる、その者達と事を構えようとするのもまた当然だと。何せ自分は実際に行動に移したのだから。
「彼らが目指した事、それ自体が悪だとは僕も思いません」
男性が祐を見る。祐の表情は真剣なのは間違いないが、その奥の何かは感じ取ることが出来なかった。
「きっとやり方が悪すぎたんですよ。だから、止めようとする人が沢山居て…そして止められた」
「…かもしれませんね」
苦虫を嚙み潰したような表情を男性は浮かべた。頭では分かっていてもやりきれない事もあるとは正にこの事だろう。
「彼らは誰よりもこの世界を憂いていて、変わらない世の中へと攻撃を仕掛けてしまった」
「彼らがいたこと、しようとしたことは…少なくとも僕は絶対に忘れません」
祐がそこで男性を見る。
「忘れようと思っても忘れられませんけどね。ここで起きた事と、同じですよ」
続けてこの街を見渡した。広がるのは完全とはいかないまでも、復興を果たした街の姿だ。
「忘れるつもりもありませんけど」
「はい、というわけで本日はお集まりいただき誠にありがとうございます」
「ここ私達の部屋だけどね」
現在女子寮の明日菜達の部屋には明日菜と木乃香、そしてあやか・さよ・ハルナが机を囲んで座っていた。このメンバーを招集したのはハルナである。
通信機器を持っていないさよは偶然ハルナが部屋を出ているのを見つけて連れてきた。因みにネギは学園長に呼ばれてこの場には居ない。
「集まってもらったのは他でもないわ。議題は祐君の正体についてよ」
「祐さんの…ですか?」
「そう。明日菜と木乃香は知ってるだろうけど、この間ロビーで某虹の人がどんな人かって話で盛り上がってたでしょ?」
それに対して二人は頷く。その話を知らなかったあやかとさよは首を傾げた。
「まぁ、そこに関しては別にいいの。ただその前にね、裕奈に聞かれたのよ。何か知ってる事ないかって」
ハルナ以外のメンバーが顔を見合わせる。全員を代表してさよが聞いた。
「えっと、それがどうかしたんですか?」
「裕奈は例のあの人にちゃんとお礼を言えてないから、会ってお礼を言いたいらしいの」
「「「「あ~…」」」」
言いたいことが何となく分かった四人は同時に声を出した。
「まぁ、流石に正体知ってますなんて言えないから特に何も知らないとは言ったんだけど…何とかしてあげたいなぁとも思ってさ」
「とは言っても、私達がしてあげられる事って何かある?」
「それを考える為にみんなを呼んだんでしょうが」
「あ、そっか」
明日菜の疑問に尤もな返しをするハルナ。あやかは小さくため息をついた。
「しかし困りましたわね…裕奈さんの気持ちはよく分かりますが、祐さんの正体を私達がお伝えするわけにもいきませんし」
そこでさよが遠慮気味に挙手をした。そんなさよを指さすハルナ。
「はい、さよちゃん」
「あの〜、そもそも逢襍佗さんはなんで力の事を隠しているんですか?」
「なんでってそりゃあ…なんで?」
ハルナから説明を求められた明日菜達三人はガクッと体勢を崩した。
「二人も見たでしょ?あの力。あんな力持ってますって大々的に言えるわけないじゃない」
「ウチに教えてくれた時も、凄く緊張しとった。あんな祐君初めて見たわ」
「祐さんはあの力を伝える事で、私達に避けられる覚悟もしていたと仰ってました。本人からすれば自分の力を伝えるのはとても勇気のいる事だったのでしょう」
「う~む、なるほどねぇ…」
「避けられるって…逢襍佗さんは優しい人なのに、なんで避けられる事になっちゃうんでしょう」
純粋な疑問なのだろう。心底不思議そうなさよを見てあやかは少し悲しそうに笑った。
「全員がさよさんのようにその人の本質を見てくれる方ならその心配はないのでしょうが、残念ながらそうともいきませんからね」
「力を持っていることをみんながみんな好意的に受け取ってくれるわけじゃないか…仕方ない、のかなぁ…」
その言葉に全員が暗い顔をする。自分達は祐という人物がどんな人なのか良く知っている。だからこそあの力を見ても変わらず接するのは当然だったが、よく知らない相手があの力の持ち主だとして同じように出来ていたかと聞かれれば、自信を持って答えることは出来ないかもしれない。
「あの光、祐自身も何なのか分からないんだって」
「えっ、そうなの?あれって魔法とか超能力じゃなくて?」
「括り的には超能力って事になってるけど、結局何かは誰にも分かってないらしいわ」
「は~、まさに未知の力ってやつか」
感心したようにハルナが腕を組むと、木乃香が恐る恐る口を開く。
「なぁなぁ、もしかしてやけど…祐君あの光のこと怖いんかな?」
全員が一瞬固まる。どういう事かと理解するのに少し時間が掛かったからだ。
「何なのか誰にも分からんもんが自分の中にあるって気持ち、ウチには分からんけど…全然気にならんってことないやろうし」
言われてみて初めて気が付いた。祐が自分の力をどう思っているのか知らない事を。木乃香が言ったことは充分考えられる。仮に祐自身があの光を怖いと思っているのなら、それを支えてあげたいと思えるのが彼女達という人間だった。
「ねぇ、今から会いに行かない?」
「祐さんにですか?」
明日菜が呟くように言った言葉にあやかが反応する。明日菜はゆっくり頷いた。
「あいつの事だもん、直接行って直接聞こう?これからどうすればいいか、みんなで考えようよ」
木乃香は優しく笑うと頷き返す。
「そやね、ちゃんと顔見て話さな。あとなんやろ、なんや祐君に会いたくなったわ」
「はい!私も逢襍佗さんに会いたいです!夢の時もちゃんとお話しできませんでしたから!」
木乃香とさよを何とも言えない顔で見る明日菜とあやか。ハルナは二人の肩に後ろから手を乗せた。
「純情少女達はいいわよねぇ…まっすぐ気持ちが言えて。私達も見習うべきかもね?」
「…なにが?」
「よく分かりませんわね…」
「ベタに恍けちゃってまぁ」
電話を掛けたが祐はどうやら現在留守番電話にしているようで、出鼻をくじかれた明日菜達。
その際祐が一人暮らしをしていると木乃香が言ったのをきっかけに、行動あるのみと言ったハルナ主体の元、祐の自宅に向かう事になった。今は五人で寮から祐の自宅へと歩いている。
「ところでさ、祐君のこと知ってる人って私達以外に誰がいるの?あの時確か桜咲さんと龍宮さんも居たわよね?あとザジさんもか」
「えっと…私達以外の幼馴染も知ってて、あと…」
「あと?」
思い出しながら話す明日菜がそこで言い淀んだ。ハルナが目を向けると明日菜は少し不満そうな表情を浮かべている。
「…エヴァちゃん」
それを聞いてハルナ・あやか・さよが驚きの声を上げる。何せ祐とエヴァの二人にこれといった接点が感じられなかったからだ。
「まさかのエヴァちん!?」
「私も初耳ですわよ!」
「あのお二人って仲良かったんですか!?」
「そりゃびっくりするよなぁ、ウチも聞いた時びっくりしたもん」
納涼会の日にその事を聞いていた木乃香は苦笑いを浮かべる。ハルナ達は明日菜と木乃香に詰め寄った。
「なんでエヴァちんなの!?」
「お二人はいったいどういった関係なんですか!?」
「私も気になります!」
「あ~、えっと…話すと長くなるんだけど…」
「簡単に言うと、エヴァちゃんは祐君のお師匠さんなんやて」
「「「お師匠さん!?」」」
なんだかややこしくなってきた気がする明日菜。そんな時、気が付けば祐の家の前に着いていた。
「さっきも言ったけど長くなるから、今はいったん置いておいていい?」
「まぁ、仕方ない…」
「あとでちゃんと説明してもらいますわよ?」
「それは祐に任せるわ…」
色々と祐に丸投げしつつ、明日菜はチャイムを鳴らした。四人は少し後ろで待機している。
「一軒家に住んでたんだ、知らなかったわ」
「高等部から一人暮らし始めたんよ」
「ほ~、こりゃ入り浸るのもありかも」
「ハルナさん!?そんなことは許しませんわよ!」
「え~なんでよ?別に家に入るぐらいよくない?まったくこのドスケベ委員長は…」
「誰がドスケベですか!」
暫く待っても反応が無い。もう一度チャイムを押そうとしたところで後ろから声が掛かる。
「あれ?みんなして何やってんの?」
全員が振り向くと、そこには新聞を持った和美がいた。
「いや、朝倉こそ何してんのよ?」
「私?私はこれをお届けに来たの」
そう言って手元の新聞を見せる和美。その新聞は主に地域の情報を伝える麻帆良新聞であった。
「新聞?和美さん新聞配達なんてしてましたっけ?」
「してるって言えばしてるかな、逢襍佗君限定でね」
「どういうこと?」
和美は祐の家のポストに新聞を入れながら話す。
「逢襍佗君って新聞取ってないみたいだったからね、こうして麻帆良新聞の記者でもある私が届けてあげてるのよ」
「意外ですわね、祐さんがそんなお願いをするなんて」
「いんや、私が勝手に黙ってポストに入れてるだけ」
「なんだそりゃ…」
ハルナがそう言うと和美は笑った。
「何をするにも情報は多い方がいいでしょ?これも逢襍佗君の為を思っての事よ」
和美以外の全員が頭にはてなマークを浮かべる。
「彼ってたぶんトラブル体質だと思うの。だから、情報はあった方がいいってね」
ポストに肘を置き、和美は明日菜達を見回した。
「さ、私のことは話したわよ。次はそっちの番、みんなで何しに来たの?」
明日菜達は顔を見合わせる。すると木乃香が笑顔を浮かべた。
「みんなで話してたら祐君に会いたくなってな?だからみんなで会いに来たんよ」
「わお、すっごいストレート」
少し驚いた顔をする和美。明日菜とあやかは顔を赤くしている。
「くそっ!出遅れた!私だって会いたいから会いに来たんですけど!」
「よく分かんないけどパルは何で張り合ってんの…?」
困惑した後頬を掻いて気を取り直すと、和美は祐の家に視線を向けた。
「そんで、件の逢襍佗君は不在と」
「まぁ、そうみたいね」
明日菜が玄関から離れて腕を組み、あやかは顎に手を当てて考え始める。
「電話にも出ず、家にも不在となると…一旦寮に戻った方が良さそうですわね」
「そうですねぇ、何処にいるかも検討が付きませんし」
そこで何か思いついたのかハルナが手を叩く。
「そんじゃあさ、エヴァちんの所行ってみない?」
「エヴァちゃんの?…なんで?」
「フッフッフッ、朝倉遅れてるねぇ?祐君とエヴァちんはかなりの仲良しらしいよ」
得意げに話すハルナを明日菜とあやかが急いで引き寄せ、和美に聞こえないよう声の大きさは下げつつも焦りながら言う。
「アホか!何で言っちゃうのよ!」
「朝倉さんは祐さんの事を知らないんですのよ!」
「……ハッ!!」
自分が仕出かしたことに気が付き白目をむくハルナ。さよと木乃香は苦笑いである。
「ほほぉ、そりゃまたいい事聞いたわ。んじゃ早速行きますか」
「あっ!ちょっと朝倉!」
夢の世界でとはいえ一度行ったことがあるからか、迷いなくエヴァの家を目指して進み始める和美。一人で向かわせるわけにも行かないので明日菜達も後を追う。
「たく…終わったら憶えときなさいよ」
「お仕置きが必要ですわ」
「うぅ、ごめんなさい…あんまり痛くしないで…」
「な、なんだか不憫です…」
「まぁまぁ、ウチらとエヴァちゃんが祐君の事言わなければいいだけやから」
まっすぐにエヴァの家へと辿り着いた一行は、家の周りを掃き掃除している茶々丸と出会した。
「あれ、茶々丸?こんなとこで掃き掃除なんかしてどうしたの?」
「朝倉さん、それに皆さんも」
茶々丸は会釈をすると、質問に答える。
「私はここでエヴァンジェリン様と一緒に暮らしていますので。身の回りのお世話は私の役目です」
「そういえば茶々丸って寮で暮らしてなかったわね」
胸元から取り出したメモ帳に何かを描き始める和美。恐らく新しい情報を書き込んでいるのだろう。
「てか今エヴァンジェリン様って言ってなかった?」
「エヴァンジェリンさんって実は身分の高い方なんでしょうか?」
ハルナとさよが小声で話していると、今度は茶々丸が聞いてくる。
「皆さんは何か御用がおありですか?」
「それなんだけどね、エヴァちゃんて居る?実は逢襍佗君に関して幾つか聞きたいことがあってね」
「祐さんに関してですか」
茶々丸は視線を落とし、何かを考え始める。和美を含め、全員が黙ってそれを見ていると暫くして視線を和美に戻した。
「少々お待ちください、只今許可を取ってまいります」
頭を下げ、家の中へと入っていった茶々丸。和美はそれを見て笑みを浮かべた。
「ふ〜ん、こりゃ確かに訳ありそうだわ」
明日菜としてはあのエヴァが下手なことを言うとは思っていないが、それでもなんとも言えぬ不安のようなものが払えずにいた。
それは少し前に発覚したネギが実は祐に仮契約を申し込んでいたといった事から始まる、祐に関して自分が知らないことがまた出てくるのではないかという予感がしたからだ。
するとドアが開いて茶々丸が出てくる。
「お待たせしました。どうぞ、中へお入りください」
「どもども、お邪魔しま〜す」
楽しそうに家の中に入る和美を先頭に、明日菜達も続く。明日菜以外は初めて入るエヴァの家に興味津々といった具合である。
「なかなかお洒落なログハウスですわね」
「ひゃ〜、お人形さんがいっぱいや」
「コレクターなのかね?」
「可愛らしい内装です〜」
茶々丸に案内され、ソファへと腰掛ける一同。そのソファの感触を味わっていると、階段からエヴァが降りてきた。
「こんちはエヴァちゃん、お邪魔してます」
エヴァは座っている全員を見回すと、鼻を鳴らしてから向かいのソファに座った。
「なんでも私に聞きたいことがあるそうだな?質問があるのはどいつだ?」
「はいはい、私です」
手を上げた後、すぐさまペンと手帳を取り出す。
「実はエヴァちゃんと逢襍佗君が仲がいいとの噂を聞きつけましてね?是非ともそのことに関してお話を伺えればなと」
「ほう」
エヴァは和美以外の顔を見る。あやか・さよ・木乃香はいかにも自分も知りたいですといった顔で、明日菜とハルナは気まずそうな顔をしており、そこで大体の予想ができた。
「範囲が狭いと行き渡るのも早いというやつか、まぁいいだろう」
足を組むと体重をソファに預ける。そして笑顔を浮かべると口を開いた。
「祐と仲がいいか…だったな?無論仲はいいさ。何せ少し前まで一緒に暮らしていたからな」
エヴァはなんてこともなさそうに出してきた話だったが、聞いていた者たちの度肝を抜くには充分過ぎる話だった。全員が口を開けて固まっている。
唖然としていた和美だったが、頭を振ると前のめりになった。
「一緒に暮らしてた⁉︎…っていうと、どのくらい?」
「出会ったのは確か祐が8歳の11月、暮らし始めたのは12月ごろだったはずだ。それから高等部に上がるまで、大体7年と少しか」
「ちょ、ちょっと!そんな話聞いてないんだけど⁉︎私達が聞いた時は親戚の世話になってるって!」
「私から周りには黙っておくように言っていた。そちらの方が都合がいいからな」
明日菜にだいぶ温度差のある態度で返答をする。明日菜の嫌な予感が的中した形である。とんだ爆弾を隠し持たれていた。
「逢襍佗君と親戚…てなわけじゃないよね?」
「ないな」
「じゃあ何でまた…」
「私からは巡り合わせとだけ言っておこう。そこのあたりをどうしても聞きたいのなら祐に直接聞け。何せあいつの身の上話に繋がるからな」
そこで引っ掛かりを覚えたのは祐の家族のことを知る明日菜達だ。8歳の時に何があったのか、そこで祐の家族がどうなったか。
ある時を境に憑き物が落ちたようになった祐、あれは確か冬の時期だった。様々な要素が一気に噛み合ったような気がした。
「貴女だったんですね…祐さんの支えになっていたのは…」
「どうだろうな?ただ、勘のいい奴は嫌いじゃないぞ。雪広あやか」
二人の視線が交差する。あやかはエヴァに品定めをされているように感じていた。
「ただ、私一人で何とかしてやったなどと自惚れるつもりはない。お前達の存在も重要だったさ、私からも礼を言うよ」
どこか含みのある笑みを向けられ、あやかは少し表情を険しくする。事情を知らないハルナ達は置いてきぼり状態だ。
「エヴァちゃんて、そんな時から祐君と知り合いやったんやね」
「それなりの年月を過ごしてきた自負はある」
そこでエヴァは視線を和美に戻す。
「さて…お前の質問が祐個人に関する事なら、私から多くを語るつもりはない。先程も言ったようにそれは祐に聞くんだな」
教室では見たことのない彼女の鋭い視線に晒され、和美は唾を飲み込んだ。
「とはいえ、何も質問するなと言うわけでもない。するならその辺りよく考えてしてみろ。ものによっては答えてやらんでもない」
これは試されているのか、それとも挑発されているのか。どちらにせよ、和美的には今後の記者人生の為にもこの挑戦を受けて立つ他ない。
「オッケー…望むところよ」
こちらを見るエヴァに対して何故か冷や汗が流れる。理由の分からない緊張感に包まれながら、ここで臆するものかと自身に気合を入れた。
「じゃあまず、一つ目の質問」
悟られぬよう深めの呼吸をして焦りを消そうとする。完璧とは言えないが、少しはマシになった気がした。
「エヴァちゃん、貴女…何者?」
明日菜達はいきなりぶっ込んできたなと思った。確かにこの質問は祐のことではないが、それにしたって一発目に持ってくるのは飛ばし過ぎだろうと。
「クッ、ククク…まぁいい。見所もないつまらん奴というわけでもないか」
堪えるように笑いながらそう呟くエヴァを見て、よく分からないがハズレの選択を引いたわけでもなさそうだと和美は感じていた。
「別に義理もないが、一応4年間同じクラスの好だ。それくらいは答えてやろう」
「よく聞け小娘ども。特別に、改めて自己紹介してやる」
腕を組み、笑みを浮かべながら答えて見せるその姿は見た目とは裏腹に、和美達の目には大きく映ったような気がした。
「我が名はエヴァンジェリン・A・K・マクダウェル。600年を生きる真祖の吸血鬼にして、闇の魔法使いだ」
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