Arco Iris   作:パワー系ゴリラ

9 / 131
同じ気持ちで

明日菜と木乃香について行くことになった祐は、二人に行き先を尋ねる。

 

「それで、今から行くとこはどんなとこなの?」

 

一歩前を歩く木乃香が祐の方を向いて答える。

 

「オリジナルのペンダントを作ってくれるとこやえ。自分で好きな色の石を選んで、そこから形を選べるんやて」

 

「はへ〜、でもそれすぐ出来るもん?」

 

「確か二十分から三十分くらいで出来上がるらしいえ」

 

「そりゃ凄い。最近の技術は大したもんだな」

 

現代の技術に祐は感心した。そしてその流れで一番気になっていたことを明日菜に聞く。

 

「あやかの誕生日プレゼントだろ?」

 

「…やっぱわかってたか」

 

明日菜はチラッと祐を見た後、再び視線を前に戻しながら言った。

 

「祐君も聞いとったん?」

 

「いや、この間あやかの誕生日について明日菜と話したからさ。たぶんそうかなって」

 

少し前に祐と明日菜が話している時、あやかの誕生日についての話になった。たまにはプレゼントでも送ってみるのはどうかと言う祐に、その時は考えておくぐらいに言っていた明日菜だったが、木乃香にも相談してたまにはいいかとプレゼントを贈ることにしたのだ。

 

「まぁ、あんなんだけど一応付き合いも長いしね。一回ぐらいはいいかなって思っただけ」

 

「変なとこで明日菜は素直やないなぁ」

 

「…そんな事ないわよ」

 

そう言う明日菜の顔は照れくささからか少し赤かった。

 

「きっとあやか喜ぶよ。なんせ明日菜から貰えるんだから」

 

「だといいけど」

 

少し早歩きになった明日菜を見て、祐と木乃香は顔を見合わせて笑った。

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

目的の店に着いた明日菜達は早速カウンターに向かった。

 

「お洒落な店やな〜」

 

「一人だったら絶対入らないわこんな感じの店」

 

「こう言っちゃなんだけど、めちゃくちゃ浮いてるわねあんた」

 

「失礼な。自分で言うのはいいが、人から言われるのは気に食わんぞ」

 

「めんどくさっ」

 

そんな話をしていると受付の店員から声をかけられる。三人は店の説明を受け、店員の案内のもと早速石の色を選び始めた。

 

「まずは色からね」

 

「何色がええかな〜」

 

カタログを見ながら各々あやかに合う色を考える。

 

「あっ、これいい気がする。あやかの髪の色に似てる」

 

そう言って祐が差した色は、確かにあやかの美しい髪の色に似ていた。

 

「お〜、ピッタリやない?」

 

「そうね、色はこれが良いかな」

 

意見を出し合いながらペンダントを決めていく三人。勝手知ったる関係ということもあってか、あやかに送るプレゼントが完成するのはそう時間がかからなかった。

 

 

 

 

「ありがとうございました」

 

上品な店員の挨拶を送られ、店を出る三人。明日菜の手には綺麗に梱包された小さな箱があった。

 

「思ってたよりもスッと決まったわね」

 

「俺達の中でのあやかのイメージが似てたんだろうな」

 

「せやね。さっ、後は当日に渡すだけやな」

 

「気持ちを伝える時くらいは変な意地張んないようにな」

 

「う、うるさいわね。わかってるわよ」

 

「なんか心配だなぁ」

 

実際に渡すときのことを考えながら三人は歩いて行く。明日菜と木乃香が隣り合って歩き、その二人の真ん中の一歩後ろを祐が歩く。初等部の時は手を繋ぎ、横に並んで歩いていたが、大きくなってからは今の形に落ち着いた。高学年になった際に祐がこの方が色々と都合がいいと言ったからだ。

 

「集合の時間までまだ少しあるんやし、あそこで何か食べて行かへん?」

 

そう言いながら木乃香が指差したのは二階建てのフードコートだった。一階には様々な飲食店と食事用の席、二階は軽食や飲み物の店と席がありバルコニーもついている仕様のようだ。

 

「そうね、私も少しお腹空いたわ」

 

「よし。吐くほど食ってやるぜ」

 

「やめなさい」

 

三人はそこで食べ物などを注文し、どうせなら二階に行きたいと祐が言ったので二階で食事をとった。今日は風が少し強いので食事は室内で取ることにした。二階は全面ガラス張りで、室内からでも外の風景を楽しめるように作られている。

 

「うおっ、シェイクであの値段とかふざけてんのか」

 

食事が終わりのんびりしていると、ふと視線に入った店の商品の値段を見て祐が言った。

 

「こういうとこ来てそういうこと言わないの。気持ちはわかるけど」

 

「観光地価格って言うんやったっけ?」

 

「なめやがって…買ってくるわ」

 

「買うんかい」

 

思わず明日菜がツッコんだ。

 

「だって気になるし。二人もいる?買ってくるよ」

 

「へっ?いや悪いわよ」

 

祐の申し出に明日菜は遠慮する。祐は普段生活必需品や食費以外で金を使う事があまりないが、誰かと遊びに出かける時などは羽振りが良くなるタイプだった。

 

「金ならあるから心配ない。それに今更遠慮なんかするなって。一緒に風呂入った仲じゃないか」

 

「ふ、風呂って!あんたバカじゃないの⁉︎」

 

「まぁまぁ明日菜」

 

思わず恥ずかしさから大きな声を出してしまう明日菜。幸い周りもそれなりに賑やかだったのでさほど目立つことはなかった。ちなみに言っておくと当然三人が一緒に風呂に入ったのは初等部の時である。

 

「まぁ、冗談は置いておいて。今回誘ってくれたお礼だと思ってくれれば。やっぱりみんなとどこかに行くの、俺楽しくて好きだ」

 

そう言われるとなんとも言えない気持ちになり、明日菜は頭をかいた。木乃香はニコニコしている。

 

「わかった…じゃあお言葉に甘えるわ」

 

「ウチも〜!おおきにな祐君」

 

「おばんどす〜」

 

「それ『どういたしまして』やのうて『こんばんわ』って意味やえ」

 

木乃香は苦笑いを浮かべて祐にそう教える。

 

「あっ、間違えた。んじゃ行ってくる。チョイスは任せろ」

 

「変なのは無しだからね?」

 

「おばんどす〜」

 

「あんたわざとやってんでしょ」

 

 

 

 

祐は明日菜達に背を向けて、お目当てのものを買いに向かった。明日菜はその後ろ姿を頬杖をついて眺めている。

 

「まったく…身体はでっかくなったくせに、こういうところは変わらないんだから」

 

「そこがええんやないの。ウチは祐君のああいうとこ好きやえ」

 

「木乃香も変わってないけどね」

 

そういえば変わらないことでいったら、今目の前にいる幼馴染も同類だったと明日菜は少し笑いながら言った。

 

「それを言うなら、明日菜だって変わってへんよ?」

 

「私が?」

 

「せや。頑固で意地っ張りなとことか」

 

「悪かったわね…頑固で意地っ張りで…」

 

明日菜は木乃香をジト目で見た。

 

「んふふ、それと実は友達思いで面倒見が良くて優しいとこもな」

 

そう言われて一瞬惚けた顔をするが、言われたことを理解して顔が見る見る赤くなる。

 

「ちょっと、何よ急に」

 

「ウチな、明日菜と祐君には感謝してるんよ。麻帆良に来て友達もまだ誰もおらんかった時、一番最初に声かけてくれたやろ?」

 

昔を懐かしむように木乃香は言う。

 

「じいちゃんがおるっていっても、やっぱり寂しかったんよ。せやから友達になろうって言ってくれてほんま嬉しかった。それからいろんなとこ連れて行ってくれて、今もこうして一緒にいてくれる」

 

「ウチ、明日菜や祐君とずっと一緒にいたい。それが叶うかどうかはわからんけど、そうなったらええなって本気で思っとるんよ」

 

やはり明日菜は自分の幼馴染二人が羨ましいと思った。自分の本心を、恥ずかしがらずまっすぐ相手に伝える事ができる幼馴染が。自分ももう少し素直に気持ちを伝えられたら…

 

『気持ちを伝える時くらいは変な意地張んないようにな』

 

その時、ふと先ほど言われた言葉を思い出す。あの幼馴染の言葉に教わるのは癪だが、今がその時かもしれない。そう思った明日菜は口を開いた。視線は明後日の方向に向けた状態でだが。

 

「…私も」

 

「え?」

 

「私も…木乃香達と一緒にいられたら良いなって…思ってる…」

 

顔が熱い、今はまともに木乃香の顔が見れない。きっと今自分はひどい顔をしているはずだ。こんなにも恥ずかしいなら言わなければよかった。そう思っていると木乃香の座っていた椅子から音がした。そちらに顔は向かられないが、どうやら木乃香が立ち上がったようだ。

 

「明日菜…」

 

突如木乃香に名前を呼ばれる。何事かと思い恥ずかしさはまだあるが恐る恐る木乃香を見る。

 

「げっ!」

 

そこにはかつて無いほどだらしなく頬を緩ませた木乃香がいた。先ほどの言葉が嬉しくて仕方がないようだ。そのまま感極まったのか、木乃香は明日菜の首に手を回し抱きつく。

 

「明日菜ーー!ウチほんま嬉しいっ‼︎」

 

「ちょっ、ちょっと木乃香⁉︎苦しいって!」

 

明日菜は持ち前の身体能力を発揮し、抱きつかれた衝撃で倒れそうになるのをなんとか持ち堪えた。

 

「明日菜もおんなじように思っとってくれたんやね!よう絶対離したれへんからな〜!」

 

「わかったから少し落ち着いて!流石に目立つって!」

 

先程はそうでもなかったが、今はチラホラと明日菜達に視線が集まり始めていた。そんな中買い物を終えた祐が戻ってくる。

 

「祐!木乃香何とかして!」

 

「なんだこの状況は…俺は仲間はずれか⁉︎」

 

「こっちもダメだった!」

 

そんなに期待はしていなかったが、やっぱりこっちの幼馴染もダメだった。

 

「祐君!ウチら相思相愛なんよ!明日菜もウチや祐君とずっと一緒にいたいねんて!」

 

抱きついた姿勢のままで顔だけ祐に向けて話す木乃香。それを聞いた祐は。

 

「まさか俺本人がいない時に俺への愛の告白をするとは…新しいとは思うけど、告白ならちゃんと本人がいる時に言った方がいいぞ」

 

「だー!もう!落ち着けバカ二人!」

 

思わず以前あやかに言われたようなことを明日菜が言う。周りの客は三人を興味深げに眺めていた。

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

「もう、そこまでの距離じゃないのに何でここまで時間かかるのよ」

 

「ごめんごめん、色々目移りしちゃって」

 

「ほんと桜子って気まぐれよね。猫みたい」

 

「いや〜、照れますなぁ」

 

「別に褒めてないっての…」

 

「円、桜子にとって猫みたいは褒め言葉よ」

 

異世界生物博物館を目指していたチア部の三人は、主に桜子が目に入った気になるもの全てに反応したため、当初の予定より大幅に遅れて移動していた。

 

「あっ、あれじゃない?結構人いるみたいだね」

 

円がイベント会場らしきものを発見する。それと同時にハルナ・のどか・夕映を見つけた。

 

「あれ、図書館探検部もいるじゃん」

 

「みんなも見に来たのかな?」

 

「かもね、おーい」

 

他の二人もハルナ達を見つけ、美砂が声をかけた。

 

「ん?あぁ、美砂か。みんなもこっちに来てたんだ」

 

「ハルナ達も博物館見に来たの?」

 

声をかけられたハルナ達が美砂達に近寄り六人が集まる。

 

「うん、さっきチラシを見てね。でもなんか変にザワザワしてるんだよねこの辺」

 

ハルナがそう言うので美砂は少し離れたイベント会場方面を見てみると、確かに何やら様子がおかしい。

 

「とても楽しそうな雰囲気には見えないけど、何かあったのかな?」

 

「私たちもさっき来たばかりだから、なんにもわからないのよね」

 

どこか不穏な空気にのどかは心配そうな顔で周りを見ている。

 

「大丈夫かな?中で誰か怪我したのかも」

 

「博物館の中で怪我をするとなると何をしたんでしょうか?」

 

のどかと夕映が話していると周りが騒がしくなり始めた。

 

「ちょっと、今度は何?」

 

ハルナが騒がしくなった方を見てみると、イベント会場の出入り口から、中を観覧していたであろう人たちが必死の形相で我先にと走り出してきていた。それはまるで何かから逃げているように見えた。

 

「うわ、何あれ」

 

「う〜ん、なんかいやな感じ」

 

同じように見ていた円と桜子もその様子によくない何かを感じていた。

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

「まったく酷い目にあったわよ」

 

「かんにんや明日菜〜。ウチが悪かったって」

 

あの後明日菜からデコピンを受けた木乃香は少し赤くなったおでこをさすりながら祐が買ってきたシェイクを飲んでいる。

 

「まさか木乃香って暴走するとあんなになるなんて知らなかったわ」

 

「新しい一面が知れてよかったな明日菜」

 

「うっさい」

 

横で何事もなかったようにシェイクを飲んでいる祐の肩を軽くはたく。当の木乃香は恥ずかしそうに頭をかいている。

 

「なんや明日菜からそういうこと言ってくたん初めてやったからうれしゅうて、つい…」

 

自分が言ったことを思い出し明日菜の頬がほんのり赤くなる。その事を忘れるため強めに頭を振る。

 

「あーはいはい、この話はもうやめ。なんか変な空気になるわ」

 

その場の空気を払うように両手を交差して振る。

 

「そこまでとは行かないまでも、普段からもう少し素直に気持ちを伝えられたら明日菜はもっと伸びると思うぞ」

 

「伸びるってなにがよ?」

 

「えっ?女子力?」

 

「何で疑問系なのよ…」

 

話しているうちにシェイクを飲み終え、改めて2人は祐にお礼を言った。今回はどういたしまして、と答えた祐。その後三人は席を立ち、空き容器を指定のゴミ箱へと入れる。

 

「なかなか美味かった。いかにも体に悪そうな感じがしたし」

 

「その感想はどうなの?」

 

「身体に悪いものって大概美味いからさ。逆に言うと身体に悪いってのは美味い証拠って言える気がしない?」

 

「う〜ん、ウチもそれ、わからんでもないかも」

 

「で、とりあえずこの後どうする?」

 

「集合時間まで後少しだったよな?」

 

「あと三十分くらいやね」

 

スマホの画面を見ながら木乃香が答える。

 

「じゃあそんな遠くにも行けないし、集合場所に向かいながら周り見ていきましょ」

 

「さんせ〜い」

 

「右に同じ」

 

明日菜の提案に二人が同意し三人で歩き始める。

 

「あっ、忘れてた」

 

「何忘れたのよ?」

 

「ストロー二つ挿して、二人で飲むやつやりたかった」

 

「やんないわよ!」

 

「えぇ…冷たい…木乃香は頼めばやってくれた?」

 

「ウチ?全然ええよ?」

 

「あ~やらかした。逢襍佗祐、一生の不覚」

 

「大袈裟すぎでしょ…」

 

「また機会あるて」

 

そんな話をしていると、祐が突然立ち止まる。前を歩いていた二人はそれに気がつき振り返る。

 

「どうしたのよ?」

 

「祐君?どないしたん?」

 

二人が祐を見ると、その顔は普段の表情からは想像できない鋭い顔つきだった。しばらくして鋭い視線を右に左に這わせ始める。何かを探しているのだろうか。何となくだが二人には祐が何かを感じ取ろうとしているように見えた。急な彼の変化に声をかけられずにいると、祐が勢いよく後ろに振り向いた。

 

それとわずかに遅れたタイミングで耳を劈く爆音が響き、強い揺れが明日菜達を襲った。

 

「きゃっ!」

 

「な、なに!」

 

突然のことに明日菜と木乃香含めた周囲の人々は驚きの声をあげる。木乃香は急な揺れに対応できず、そのままお尻から倒れてしまう。それを見て明日菜は慌てて駆け寄り、膝をついてこのかの肩を支える。

 

「木乃香!大丈夫⁉︎」

 

「う、うん。平気やえ。尻もちついてもうただけやから」

 

揺れはほんの一瞬だった。周囲が落ち着きを取り戻し始めた頃、誰かが口にした。

 

「おい…あれ見ろよ」

 

その声につられた人々がガラスの窓から外を見る。そこには外の建物が崩れ、崩れた場所から炎と煙が巻き上がる光景が広がっていた。その光景に再び不安を掻き立てられた人々はざわめき始め、さまざまな声が上がっていく。

 

「なぁ、これって…」

 

「爆破テロ…だよな…」

 

「嘘でしょ…」

 

「こんな場所で…」

 

「何でよりによって今日起こるんだよ!」

 

すると至る所に設置されているスピーカーからアナウンス音が流れ始める。

 

[只今、当施設内で事故が発生いたしました。お客様の皆様は慌てず、係員の指示に従って速やかに避難してください。繰り返しお知らせいたします。只今、当施設内で]

 

それからしばらくして係員の誘導のもと、一般客の避難が開始される。気づけば明日菜と木乃香はお互いの手を握っていた。未だ状況をよく飲み込めておらず放心状態に近かい二人。そんな中、明日菜がふと周りを見る。

 

「…祐?」

 

明日菜がいくら周囲を見渡しても、そこに幼馴染の少年の姿はなかった。

一番好きな章は?

  • 序章・始まりの光
  • 幽霊と妖怪と幼馴染と
  • たとえ世界が変わっても
  • 消された一日
  • 悪魔よふたたび
  • 眠りの街
  • 旧友からの言葉
  • 漢の喧嘩
  • 生まれた繋がり
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。