放課後となった麻帆良学園では、部活に向かう生徒と帰宅する生徒に分かれていく。部活に所属していない祐と純一、そしてすっかり幽霊部員が板についた正吉が教室を出ようとする。その時机に忘れ物をしたことを思い出した純一と正吉。仲良く自分の席に戻る二人より一足早く廊下に出ると、丁度教室から出てきた木乃香と鉢合わせた。
「あっ、祐君」
「おう木乃香。これから部活?」
「うん、今日は図書館探検部や」
「なるほど、気をつけてね」
長いこと引き止めても悪いだろうと短く済ませたが、木乃香は黙ってじっとこちらを見ていた。
「どうかした?」
「へ?…ううん、なんも。ちょっとぼーっとしとった」
「おいおい大丈夫か?探索中に転んだりしないでよ」
「あはは、シャキっとせんとな。ほなまた〜」
「はいよ」
手を振って去っていく木乃香に手を振りかえす。その背中を見送っていると純一達が出てきた。
「おまたせ…どうした祐?」
「いや、なんでも。木乃香がいたから少し話してた」
「なに?くそっ!チャンスを逃した!せっかく話せる機会だったってのに!」
露骨に悔しがる正吉に二人はなんとも言えない顔をする。
「隣のクラスなんだから、話そうと思えばいつでも話せるだろ」
「お前らは幼馴染だからいいかもしれないけどな、他のクラスの女子に話しかけるってのはそれなりにハードルが高いんだよ」
「まぁ、それはそうだね」
「すまん正吉…また意図せずお前にマウントを取ってしまった…」
「その発言が一番腹立つぞ」
「ただいま」
「おかえりリト」
学園から帰宅したリトがリビングへとやってくる。家の前に着いた時から香りで分かっていたが、キッチンでは既に美柑が夕飯の支度を始めていた。火にかけた鍋から視線をリトに移す。
「祐さんは今日来てた?」
「ああ、いつも通りだったよ。電話の時も言ってたけど、もう落ち着いたってさ」
「そっか」
麻帆良学園初等部である美柑も麻帆良祭に参加していた。とは言え出し物を行うのは中等部からなので、初等部は祭りを見て回るだけである。今の質問をしたのはリトから祐が親戚の事情でいないと聞いていた為だ。
「残念だったね、せっかく久し振りに参加できるって言ってたのに」
「そうだな…ただ本人は少なくともあと二年はあるから、そこで巻き返すって言ってたよ」
「巻き返すって…何を?」
「俺に聞かれても…」
「なんというか、祐さんらしいね」
そう言って美柑は少し笑った。昔から祐は周りに弱音を吐かない人だ。本当のところどう思っていたとしても、気にしていないと言うだろうなとは思っていた。
「ねぇ、リト」
「ん?」
呼ばれたことで美柑に目を向ける。美柑は手元の野菜を切りながら、視線はそこに固定されていた。
「ごめん、やっぱなんでもないや」
「なんだそりゃ」
「それより、後でお風呂よろしくね」
「おっと、今日は俺だったな」
両親が滅多に帰ってこない結城家において料理に関しては基本美柑が担当しているが、それ以外の家事はリトと美柑の二人で分担されている。荷物を片付ける為にリトが自室へと向かう。閉まったドアをなんとなく見つめ、そのまま棚に飾られている写真に目線が移動する。家族との写真が飾られている中に、幼馴染達が集まっている写真もあった。それは祐を始め、明日菜達も部屋に飾っている物だ。
麻帆良祭で久し振りに明日菜達にも会うことができた。最近では会う機会も極端に少なくなってしまったが、それでも以前と変わらず温かく迎えてくれたことは素直に嬉しかった。久々の再開に抱えていた緊張を吹き飛ばされる程熱烈な歓迎で、順番に抱きつかれた時は久方振りとはいえそこまでかとは思ったものの悪い気はしない。この写真を改めて見ると、当たり前だが皆成長したと実感する。最年少の自分が何を言っているのかと心の中で笑ったその時、写真の祐が目に留まる。
「大丈夫だよね、何も変わってなかったんだから」
高層ビルが立ち並ぶ夜の街。その中でも一際高いビルの屋上にララはいた。しかしその場にいるのは一人だけではない。
「ようやく見つけましたよ姫様」
「もう充分旅行は楽しまれたでしょう?そろそろ帰る時です」
黒いスーツにサングラスを掛けた屈強な男二人がララの前に立つ。ララは拳を握り締めた。
「流石に拙いかも…」
珍しく焦った表情を浮かべるララ。彼らの身体能力はよく知っている。このままただ逃走しても捕まるのは時間の問題だろう。
「なら、試すには丁度いいよね」
「ララ様…それはお勧めできませんよ…」
これから何をするつもりなのか察したペケも焦り始める。この状況を打破する行動とはなるだろうが、事態が好転するかは別問題だ。
「大丈夫!なんとかなる!」
そう言うララの左手首に着けられているブレスレットが光り出す。一瞬で辺りは強い光に包まれた。
夕食を終えたリトは部屋で漫画を読んでいるとスマホが振動したので画面を確認する。ラインの通知だったのだが、相手はなんとも珍しい相手からだった。
「明日菜?珍しいな」
勿論明日菜から連絡がくるのは初めてというわけではない、しかしそう頻繁というわけでもないのでリトは不思議に思った。今時間があるかといった文章が送られてきたので、大丈夫と返せばそのままの流れで通話をすることになる。
『おっす、夜にごめんね』
「いや、それは別にいいんだけど…なんかあったのか?」
『う~ん、別になにがあったってわけじゃないんだけど…』
今一はっきりしない物言いの明日菜に首を傾げる。言ってしまえば普段の彼女らしくない。
『リトはさ、最近祐と話した?』
「祐と?えっと…まぁ、それなりに」
『例えばどんな?』
いよいよリトは困惑してきた。明日菜が何を聞きたがっているのかまるで分らない。取り敢えず祐に関する事だとは思うのだが、予想できるのはそこまでだ。
「どんなって言われても…最近のことだったりどうってことない話だったり、そんな感じ」
『なるほどね』
いったい何がなるほどなのだろうか。また祐が何か仕出かしたのかという考えが頭を過る。
「なぁ、言い難いことだったら無理にとは言わないけど…どうしてそんなこと聞いたんだ?」
『ほら、あいつって私達には言ってなくてもリト達には話してることがあるでしょ?同性だからってところが大きいんだろうけどさ』
「まぁ、そうだな」
明日菜達が知る以前からリトと純一は祐の力のことを知っていた。その事も踏まえて明日菜が言ったことを否定はできない。
『最近の話とか、もしかしたら私達が知らないこと聞いてたりしないかなって』
「ああ、そういうことか。それなら、俺もこういうことがあったって聞いただけだ。たぶん明日菜達が聞いた話と同じだと思う」
『そっか、リトが言うんならそうなんでしょうね』
「それって純一にも聞いたか?」
『ううん、聞いてないわよ』
そこでリトに気になる部分が出てくる。予想はついたが外れていることを祈って質問してみた。
「一応なんで俺に聞いたか教えてほしんだけど」
『だってあんた嘘つけないでしょ?純一も得意な方じゃないけど、リトが一番分かり易いから』
「なんて奴だ…」
見事予想的中である、ただしまったく嬉しくない。
『ごめんごめん…でもさ、心配なのよ。あいつって自分のことは黙ってるから』
それはリトもよく理解している。余計なことはよく言って攻撃を受けている祐だが、自分のこととなるとあまり話さない。言えば心配を掛けると思っているからだろう。それでも以前よりは大分マシになっているとは思う。
「前に比べたらちゃんと話すようになったと思うぞ。ちょっと前までは何があったかすら言わないことも多かったし、その時と比べるのはどうなんだってのは置いておいてだけど…」
『それは間違いないわね。はぁ…約束したのに私が祐のこと信じられてない。なんか今になって罪悪感が…』
約束とは祐が明日菜達に自分の力を明かした時にしたと言っていたもののことだろう。リトもどういった約束をしたのかは聞いている。
「いや、明日菜の気持ちは俺もよく分かるよ。なんせ今までが今までだったんだ、そりゃ心配になるさ」
『…うん』
「そんな気にするなって。心配なのは俺も…みんなも同じだからさ。これからもしっかり見といてやろう、じゃないと碌に安心できないからな」
『ふふ、そうね』
それから少し話した後で通話を終了した。リトはスマホを置いてベットに仰向けに寝転ぶ。そのまま天井を見つめていると足音に続いてノックする音が聞こえた。
「リト、そろそろお風呂入っちゃって」
「おう」
ドア越しの美柑に返事をして、起き上がって着替えを手に取っていく。ドアを開けると美柑が立っていた。
「電話してた?」
「ああ、明日菜から連絡あってさ」
「なんか珍しいね」
「俺もそう思った」
会話をしながら階段を下りてリビングに着く。風呂上がりの美柑はテレビを見ており、リトは入る前に水でも飲もうかとキッチンに向かったところで電気が走るような音に振り返った。すると少し先の空間に小さい稲妻のような物が見える。その光景に目を奪われていると、美柑も稲妻に気が付いた。
「え?なにこれ…」
少しずつ大きくなっていく稲妻に美柑は少し怯えてリトの服を掴んだ。リトは動揺しながらも美柑を自分の背中に隠して距離を取る。やがて光が収束していき、眩い光が室内を照らしだした。
「きゃっ!」
「なんなんだいったい!?」
次第に光が晴れていく。眩しさに目を覆った腕を下ろし、ゆっくりと瞼を開ける。
「やった~!脱出大成功!」
「「は?」」
目の前には何故か全裸の少女が立っていた。リトと美柑は自分の目と頭を疑う。しかしこれは紛れもない現実である。
「ん?あ、どうも~!えっと、なんて言うんだっけ?今は夜だから…こんばんは!」
「なっ、なんだお前!?」
「その前に服!服着てください!」
取り合えず急いで持ってきた服を着てもらい、現在はテーブルを挟んで座っている。美柑の服ではサイズが合わない為、リトのジャージを着用したようだ。リトの隣に美柑が座り、二人の向かいに座る少女は珍しいものを見るように視線が様々な所に飛んでいた。
「まず聞きたいんだけど、お前なんなんだ?」
「私?私はララ!『ララ・サタリン・デビルーク』!宇宙から来ました!」
警戒したまま質問するとそう返ってきた。リト達と違い、こちらをまったく警戒していない姿に少し気が抜ける。だがそれよりも無視できない単語が聞こえた。
「今、宇宙から来たって言ったか?」
「うん!デビルーク星から来たの!私の故郷の名前だよ」
「ということは…宇宙人?」
「あなた達から見たらそういうことになるね」
「マジかよ…」
宇宙人の存在は世間一般的にも広まっており、何より最近宇宙人がらみの事件が発生していたことは記憶に新しい。出てきた時にも気になっていた部分、仙骨の辺りから伸びている尻尾と思われるものが今も揺れている。作り物というわけでもなさそうで、それと先程の現象がララの話に信憑性を持たせていた。褒められたことではないかもしれないが、それでも宇宙人と聞いて警戒心が強くなるのは仕方がないことだ。
「えっと…突然出てきましたけど、いったいどうやって?」
「それはね、これを使ったの」
それからララにぴょんぴょんワープくんの説明を受ける。ワープ装置などSFもいいところだが、実際にこの目で見たとなれば納得するしかない。
「どうやって来たのかは分かりました。それで、これが一番気になってるんですけど…」
「なになに?なんでも聞いて!」
眩しい笑顔を向けてくるララに苦笑いを浮かべる美柑。悪人には見えないが、そう簡単に油断するわけにもいかない。
「ララさん…ですよね?その、この地球にはなんの目的で来たのかなって…」
二人は緊張からか表情が硬い。反してララは相変わらずにこやかだった。
「家出だよ」
「「いえで?」」
思わず声が揃ってしまった。そんな気の抜けるような理由とは思っていなかったのだ。
「いえでって…家から出るあの家出ですか?」
「うん」
「地球人を攫おうとかそんなんじゃないのか?」
「えぇ!?そんなことしないよ!」
「な、なんかすまん…」
リトの言葉に可愛らしく頬を膨らませるララ。よく分からないがリトは申し訳なくなった。
「でもどうしてまた家出なんて」
「パパが悪いんだよ!毎日毎日お見合いばっかり!私はまだ結婚なんてしたくないのに!」
両手を握って腕を振り、自身の怒りを表現している。リトと美柑は呆れた目でその姿を見てしまった。
「だから自分の星を飛び出して地球に来たってことだよね…」
(しょ、しょうもねぇ…)
勿論お見合いなどしたことがないリトにララの気持ちを理解することはできない。それを踏まえて悪いとは思いつつ、そう感じずにはいられなかった。口には出していないので許してほしい。
「家出でこの星に来たとして、何かこれからの当てはあるのか?行くところとか」
「なんの当てもないけど、それはこれからなんとかしていく。大丈夫!元気があれば大抵のことはなんとかなるよ!」
あくまで明るく話すララに二人は顔を見合わせた。そうですか、ではさようならとは言えない。結城兄妹は優しいのだ。
「どうする?」
「どうするったって…」
小声で話しているとリトの頭に祐の顔が浮かぶ。常日頃から祐は何か困ったことがあれば必ず言えとリト達に言っていた。どの口が言っているんだと幼馴染組は言い返したが、この状況はその時なのかもしれない。寧ろ後からこんなことがあったと話した日には、祐がそのことを出しにして黙って無茶をする免罪符に使う可能性がある。それは出来る限り阻止したい。本人が聞けば信用のなさに落ち込むだろう。
「祐に相談しよう」
「祐さんに?なんで?」
力のことを知らない美柑は首を傾げた。リトは一瞬固まるも、頭をフル回転させて機転を利かせる。
「祐は生粋のトラブル体質だから、こういう状況に慣れてるんだ。それに前に宇宙人にも知り合いがいるって言ってた」
「それほんと?」
頷いてみせるリト。今言ったことは全て事実である。嘗て祐にどこの誰とまでは聞いていないが、宇宙人にも知り合いがいるとは確かに聞いていた。嘘も隠し事も苦手なリトだが、祐の秘密を知ってからこれでも今までなんとかやってきたのだ。喜んでいいのかどうなのか、本人としては悩ましいところである。
「ああ、間違いなく言ってた」
美柑は不安そうな表情を浮かべる。それ自体は分かっても、その意味までリトには察せられなかった。
自宅で横になっていた祐は着信音を聞いてスマホを手に取る。画面を確認し、通話を始めた。
「もしもし」
『悪い祐、少し相談に乗ってほしいんだけど』
「どうした急に?」
『えっと、それが…単刀直入に言うとお見合いが嫌になって家出してきた宇宙人が目の前にいるんだ』
「なんだって?」
通話の内容に耳を疑うが、リトは冗談でこういったことを言うタイプではない。祐は起き上がって真剣な表情になった。
「お前は無事なのか」
『俺達は大丈夫、こいつもなんというか…悪い奴じゃなさそうだ。見た目は地球人と見分けつかない。尻尾は付いてるけど』
その一言に眉を顰める。聞きたいことは幾らでもあるが、まずはその場に向かうべきだろう。
「今どこにいるんだ?」
『俺の家、美柑も一緒だ。今は…』
振り返って後ろを見るリト。そこにはテレビから見えるものにあれはなんだと質問しているララと、丁寧に答える美柑の姿があった。
「その宇宙人とテレビを見てる。一緒に」
『仲良しか』
頭を掻いた祐は取り合えず立ち上がり、靴を履いて外に出た。
「因みにその宇宙人の名前は?種族とかは聞いたか?」
『ああ、名前はララ。ララ…なんてったっけ?』
するとリトや美柑とは別の声が微かに聞こえてきた。声から相手は少女のようだ。
『悪い、ララ・サタリン・デビルークだって。種族はデビルーク人ってのらしい』
「…今デビルークって言ったか?」
『そうだけど…』
祐は表情を引き締めると一気に走り出した。胸に焦りが生まれるが、これをリトに伝えるのは得策ではない。あくまで冷静を保って話す。
「今から行く。大丈夫だとは思うけど、俺が着くまでリトも美柑ちゃんも…そのララって子も外に出るなよ」
『ああ、分かった』
「それじゃ、また後で」
通話を切ると祐はさらに加速する。ただのデビルーク人であるのならばまだいい。しかし名前にデビルークが付いていること・この時期に家出をしてきたこと・そしてその理由、全てが重なって嫌な予感を駆りたてる。悲しいことに嫌な予感は外れた例がない。ともすればこれはとんでもないトラブルへと発展しかねない問題だ。
「冗談じゃないぞ…」
この先に起きるかもしれないことを想像し、祐は一人げんなりとした。
「祐さんなんだって?」
「今から行くって。一応家からは出ないでくれとも言ってた」
「今から?大丈夫なのかな」
スマホを置いて美柑達の傍に座った。ララは置かれたスマホを見つめている。
「これが地球の通信端末?面白い形してるね」
「そういうもんなのか?」
リト達から見ればなんの変哲もないスマホだが、住む星が違えば色々と違いはあるものなのだろう。先程から見るもの全てに興味を持っている。
「通信してたのはリトの友達なんだよね?」
電話を掛けると話してから、リトと美柑は自己紹介済みだ。不用心な行動かもしれないとは思った。だがララを見ているとどうしても悪い宇宙人には見えない。好奇心が非常に旺盛で、小さなことにでも目を輝かせる姿は正直言って魅力的だった。
「ああ、俺の幼馴染の親友だ。変わってるけど信頼できる奴だから安心してくれ」
「ほんとに変わり者だけどね」
美柑が笑みを浮かべながらそう言う。リトも釣られて笑っており、どうやら二人にとって大切な人のようだとララは思った。
「ユウか〜、そういえばザスティンが話してくれた人の名前もユウだったなぁ」
「ザスティンって誰?」
「デビルーク星王室親衛隊の隊長!私がちっちゃい頃から近くに居た人でね、色々昔の話とか聞かせてくれたんだ」
王室親衛隊隊長という聞き慣れない単語が気に掛かった。王室といいお見合いといい、もしかするとララはかなり高貴な生まれだったりするのではないだろうか。
「そっちの星にもユウって名前の人いるんだね」
「ううん、デビルーク人じゃないよ。別の星の人。アマタユウっていうんだったかな?」
出てきた名前に二人は顔を見合わせた。考えていることは同じだ、リトが代表して聞く。
「なぁ、そのアマタユウって…どんな人って言ってた?」
「えっとね、ザスティンが多次元侵略戦争の」
話の途中で窓に何かが当たった音がした。三人がそちらを見ると、リトと美柑は驚く。謎の白い人型の物体が窓に張り付いていたのだ。
「なにあれ⁉︎」
「大福のお化けか⁉︎」
「ペケ!」
ララが笑顔を見せて駆け寄る。窓を開けると大福お化けがララに抱きついた。ララもしっかりと抱きとめる。
「ララ様!よくぞご無事で!」
「よかった!ペケも無事だったんだね!」
「喋ってるぞ…」
「知り合いみたいだね…」
見たところ感動の再会的な雰囲気を醸し出している。暫くするとペケがララ越しにリト達に目を向けた。
「ララ様、この地球人達は?」
「リトと美柑だよ!私に服を貸してくれたの!」
「それはそれは、ララ様がお世話になりました」
「「いえ、とんでもない」」
頭を下げるペケにこちらも下げ返す。見かけによらず礼儀作法がしっかりしている。
「紹介するね、この子はペケ!私の友達で、色々できるロボットなの」
「初めまして、ペケと申します」
「次から次へと忙しいな…」
ララがワープしてきてからの怒涛の展開に若干疲れ気味のリト。美柑もついていくのに必死である。
「でもペケ、どうして私の居場所が分かったの?」
「ララ様が身に着けているぴょんぴょんワープくんに私のデータを連動させていました。それを辿ってここまで」
「そっか〜。ねぇペケ、大丈夫だとは思うけどつけられたりなんて」
「姫さま、そろそろ鬼ごっこも終わりにしましょう」
新たな声に視線を向けると、そこには先程ララを追っていた二人の男が立っていた。ララはペケに非難するような目を向ける。
「ペケ〜」
「も、申し訳ございませんララ様!まさかつけられていたとは!」
「まもなくザスティン隊長も参られます。我々と帰りましょう」
二人の男がゆっくりとララに近寄る。リトは冷や汗を流しながらララに聞いた。
「お、おい…今度は誰なんだよ?」
「ブワッツとマウル…デビルーク王室親衛隊の二人」
「夜分にすまないな地球人」
「如何せん緊急事態なのだ、許してくれ」
軽く頭を下げたブワッツとマウルはそのままララの腕を掴んだ。
「いや!離して!」
「そうはいきません、流石に今回はおいたがすぎます」
「御自身の立場をご理解ください姫様!」
「「…姫様?」」
間違いなくララに対して姫様と言っており、これはいよいよララの正体がただの宇宙人ではないのは間違いなくなった。ララを連れていこうとするブワッツとマウル、ララは必死に暴れて逃れようとしている。どうするべきか悩ましい状況であるが、ここはひとまず両者冷静になってもらいたい。
「ちょ、ちょっと待ってくれ!そんな無理矢理やらなくても、一旦落ち着いて話してくれないか?」
「あの、あと土足は遠慮してもらえると…」
リトと美柑の言葉に三人の動きが止まる。気まずい空気が流れる中、ララが隙を突いて外に飛び出した。
「姫様!」
「マウル!もう手加減はなしだ!」
「あっ、おい!」
急いで後を追う二人。伸ばしたリトの手は誰にも届くことはなく宙に浮いた。
「リト…」
「……だぁ〜!なんなんだよ!」
リトは乱暴に頭を掻くと玄関へと向かう。
「あいつら見てくる!祐が来たら連絡してくれって伝えといてくれ!」
「う、うん…気をつけてね」
「ああ!」
走って三人を追う。ララ達は途轍もない速さだが、その姿は飛んだり跳ねたりで非常に目立つので見失うことはなさそうだ。遠ざかるリトの背中を美柑は見送るしかなかった。
「ララ様!来ます!」
走り続けるララの上空から巨大な岩が落下してくると、その退路が断たれた。少し前方に着地したブワッツとマウルをキッと睨みつける。そんな時、息を切らせたリトが三人に追いついた。
「はぁはぁ…お前ら速すぎだろ…」
肩で息をしながら間に入る。膝が笑っているが気にしている余裕はない。
「下がれ地球人、これは我々の問題だ」
「その通りだけど、ここまできて見ないふりはできねぇよ」
リトはまた何処か行かないようにとララの手をしっかりと掴んだ。
「お前ももう逃げんな!これでいいだろ、しっかり話し合えって」
「リト…」
渋々頷くララの姿を見て顔を見合わせる。この後どう話をしようかと悩んでいる最中に、空から何者かが地上に着地した。大きな地響きを起こし、砂塵が吹き荒れる。
「今度はなんだよ⁉︎」
少しして視界が晴れるとそこには一人の男が立っていた。
「ザスティン…」
ララの呟きが聞こえていたリトは現れた男の顔を見る。こちらを射抜くような鋭い視線に唾を飲み込んだ。
「隊長…」
「少し下がっていろ」
静かに告げたザスティンはゆっくりと歩き始める。その姿を見つめていると、ザスティンはその手に刀身が緑色に光る剣を出現させた。
「おいおい…」
思わず後退するリト、しかしララの手は離さなかった。ララが前に出ようとしたその時、二人との距離を縮めるザスティンの視線がリト達から外れる。すると次の瞬間、リトとララを虹の光が包み込んだ。
「なっ⁉︎」
「ララ様!」
マウルとブワッツが駆け出す。ザスティンは虹の光に目を見開いていた。
「あれは…いや、あんな色ではなかった筈だ…」
(そもそも彼は)
光は上空に向かうと、ザスティン達から少し離れた場所に着地する。尻もちをついたリトとララは驚愕の表情を浮かべていた。二人の一歩先に立つ背中が見える。光が消え、姿を現した祐の目はまっすぐザスティンに向けられていた。
「……祐なのか?」
「お久し振りです、ザスティンさん」
一番好きな章は?
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序章・始まりの光
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幽霊と妖怪と幼馴染と
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たとえ世界が変わっても
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消された一日
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悪魔よふたたび
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眠りの街
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旧友からの言葉
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漢の喧嘩
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生まれた繋がり