ウマ娘妄想詰め合わせ   作:甲乙千夜

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どうも、お久しぶりです。
今回はナイスネイチャのトレーナー視点で書いてみました。
前回のお話を書いてからだいぶ日が経ってしまいました。
リアルが忙しいのが悪いです。
※ここで、このお話の注意点、というかお詫びです。
『有馬記念』についてですが、特殊なウマの漢字に変換が出来なかったので、
『有マ記念』と表記しております。ご了承ください。


ぶらり商店街 ~ナイスネイチャへの誓い~

 あの子は、ある意味竹を割ったような性格だと思っていた。

 他のウマ娘と比べても、現状を受け入れる力が強く、同年代と比較してどこか大人びていた。

 だからこそだろう。俺は、あの子の本質を見ていなかった。

 否、彼女がウマ娘であることをどこか失念していた。

 それに気が付いたのは、担当になって最初の有マ記念。

 結果は、三着。

「まぁ、アタシらしいそこそこの結果ですかね。善戦も出来ましたし、割といい感じだと思いますよ」

 レースが終わり、あっけらかんとした表情でそう言い残した。

 ライブでも堂々としたダンスを披露し、多くの歓声を浴びていた。

 最初の担当ということもあり、勝負服でウイニングライブを踊る場面を見た時は、それを誉であると考えていた。

 どうかしていた。

 あの()を見ているようで、見ていなかった。

 今でも忘れられない……ライブを終えた後、人気のない木陰から聞こえたあの子のすすり泣く声は、今でも耳に残っている。

 

 

 

 一口にレースと言えど、競技や種目によって結果の味方は様々だ。

 俺もウマ娘のトレーナーになるまでは、金・銀・銅メダルのイメージが強く、表彰台に乗ることができるだけで凄いと考えていた。

 だがウマ娘のレースは違っていた。

 彼女たちにとって『勝ち』とは『一着』以外の何物でもない。

 どれだけ善戦し三位以内に入ろうとも、一着を取れなければ勝ったことにはならない。

 戦慄に近い衝撃を受けた。

 では、そのウマ娘を勝たせるために存在するトレーナーの責務と言ったら、重要この上ない。

「トレーナーさん?」

 やはり、俺のような新人でいいのだろうか。

「トレーナーさーん」

 彼女を勝たせることが出来るのは、もっと良識のある中堅以上のトレーナーかもしれない。

「トレーナーさん! おいコラ、担当の子の呼びかけを無視するじゃないよ!」

「うおお! ネイチャ……ごめん、気が付かなかった」

「なに、考え事ですか? アタシの声を聞いてずっと俯いていたから何事かと思ったよ」

「あはは、すまないすまない」

 俺の担当――ナイスネイチャが、ツインテールの片方を指先で弄りながらジーっと見つめてくる。

「どうかした?」

「んー……トレーナーさん、美味しいもの食べに行かない?」

「美味しいもの? 突然どうしたんだ? お腹空いたのか?」

「コラコラ、アタシが食い意地張ってるような言い方じゃない。そうじゃなくて……トレーナーさんが少しお疲れ気味かと思いまして、まぁ日頃お世話になっていますし、お礼も兼ねて美味しいお店を紹介しようかと思いまして……商店街限定にはなりますけども」

「むしろネイチャの紹介ならどこも良さそうだ」

「あはは、期待してくれているところ悪いけど、本当に庶民派のお食事になっちゃいますよ?」

「俺も庶民派だから気が合いそうだ」

「それじゃあ、明日の午前十一時頃、学園前で集合でよろしいですか?」

「オッケー!」

 その後、スケジュール表に明日の予定を書き込み、その日のミーティングは全て終了した。

 

 

 

 そして当日。

「トレーナーさんどうも」

「……どうも」

「あの、どうかされましたか?」

「……今何時だっけ?」

「えーと、十時ですね」

「…………はやくない?」

「うぇ!? べ、べつに、そんなことないですよ? そんなこと言ったら、トレーナーさんだって一時間も前に来てるじゃないですか!」

「まぁ、早めに来るのは礼儀みたいなものだし、それに俺が待つぐらいの方が丁度いいと思って。というか、そんな一時間前に集合した俺よりも早く来ていたネイチャって……どんくらい待ったんだ?」

「そんなことより、小腹空きません? いい喫茶店知ってますよ」

「あ、誤魔化した」

 この来た待ったの水掛け論は誰も得しないので、ネイチャにこのまま誤魔化されることにした。

 

 

 

 昨今、少子高齢化や過疎化によってシャッター街へと変貌する商店街があると耳にしたことがある。かく言う俺もそんな光景へと移り変わる様を見てきた。そこは誰も手が付けられず、行政も手放す始末であったと聞いた。都会の商店街はどうなのだろうかと伺ったが、やはりトレセン付近は都会ということもあり活気があって楽しかった。

 商店街が一つの家族のように一丸となってイベントを催す姿は、新しい街並みにどこか懐かしさを感じる。

 ナイスネイチャが商店街で育ったウマ娘だと聞いたのは、担当になってからひと月ほど経った後だった。

「……トレーナーさん?」

 喫茶店の一角。ナイスネイチャが机を挟んで身を乗り出して呼び掛けていた。飲みかけのコーヒーと軽食のハムエッグとトーストに手を付けていないことを訝しむ顔で見ていた。

「おお、どうした?」

「いや、またボーッとしてたから何か考え事してたかなぁって思って」

「確かに考え事してたが、特別難しい事柄でもないよ」

「と、言いますと?」

「地元の商店街のことを思い出してた」

「あぁ~トレーナーさんのご実家も商店街が近かったんでしたっけ」

「ああ。そこまで大きくないけど、結構いろんな人が出入りしてて面白かった」

「アタシの地元にある商店街の写真を見た時に、『懐かしい』って言ってたね」

「もう無くなっちゃったのは残念だけど、これも時代の流れってやつかな」

「まぁ、どうしようもないというか、悲しい現実かな。うちの商店街もそんな風に……」

 シャッターが増え、活気が無くなり、そして商店街の生涯が終わることは昨今珍しいことではない。

 都会と言えど、店舗の後継者がいなければ店をたたむことになる。

 古き良きレトロも、一部の現代人にとっては古臭いの一言で片づけられてしまうものだ。

 でも、

「商店街は、俺の故郷みたいにならないと思うよ」

「そうですか?」

「ああ。話を聞く限り、ネイチャの地元は活気があるし、子供からお年寄りまでみんなが利用する憩いの場のように感じたからな」

「はぁ、なるほど」

「それに、なによりネイチャがいるから、かな」

 その言葉を口にした瞬間、話を聞いていたネイチャはツインテールで顔を隠した。照れているな。

「うぇ!? ちょ! あぅ、と、トレーナーさん。それは買いかぶり過ぎですよ」

「いやいや、思ったことを素直に言ったまでだよ」

「す、素直すぎ! まったく、いきなり言われてビックリしたじゃないですか」

 プンスカ! と、あからさまに頬を膨らませて怒ったふりをしているが、後ろの尻尾が八の字を描いていることから、満更でもない様子だ。

 だが、特別ネイチャを照れさせたいから言ったわけではないのは本当だ。

 もしナイスネイチャが、あのトレセン学園で名をはせるウマ娘になったとしたら……。

 いや、もしもの話にはしていられないな。

 担当トレーナーの俺がさせてあげなければならない。

「……えい!」

「うぇぅ! な、なにするんだよ!」

 いろいろと考えていると、ネイチャがぬるくなったおしぼりを顔面に押し付けてきた。

「……また考え事してる」

「あ、ああ、ごめん」

 歯に物が挟まったような顔をしたネイチャが一度視線を逸らした後、

「…………あんまり楽しくない、かな?」

「え?」

 暗い表情で言った。

「いや、ほら、さっきみたいなこと言われても、アタシってばうまい具合に話を返せなくて、洒落の一つや二つも言えれば会話に花が咲いて、トレーナーさんを困らせるようなことにはならないかなぁ……なんて」

「ネイチャ、それは勘違いだよ」

「いいんですよ、お世辞は。アタシってほら、他の子よりも平凡というか、無個性というか、何か尖がったウマ娘じゃないですし。その上……あんまり強くな――」

「ナイスネイチャ」

「うぅ」

「あまり悲観するのは良くないよ。ネイチャは無個性なウマ娘じゃない。一緒にいて楽しいし、話を聞いても面白いし、それに……実力のあるウマ娘だよ」

「そんな――」

「変に誤解させてしまったところは謝らないといけない。ごめん。ネイチャが気を遣って誘ってくれたのに、ネイチャのレースとか未来のことばかり考えて、目の前の本物にちゃんと目を向けていなかった」

「トレーナーさん――」

「でも一つ言えることがあるとすれば、俺たちトレーナーは考えることが仕事なんだ。担当をより強くさせたい、もっとレースで勝たせてあげたい。そんな風に、頭の中が担当のウマ娘でいっぱいになるんだ」

「あの――」

「だからナイスネイチャのことで悩んでいたい。君のことだけを考えていたい。だから、もっと俺を困らせて、考えさせてくれないか!」

「トレーナーさんストオオオオップ!」

「うぇ!?」

「ま・わ・り! まわり見て!」

 ネイチャの言うように店内を見回すと、他のお客さんや店員さんたちの視線が俺とネイチャのテーブルに集中していた。

 そして、俺と視線があったと思うと、各々がすぐに目線を逸らし、片手でサムズアップを見せた。

 中には、

『あのお二人、朝から熱々ね』

 とか、

『若いっていいわね』

 といったマダムたちの呟きも聞こえてくる。

「うがああああ! トレーナーさん、お店出るよ!」

 突然立ち上がって絶叫したかと思えば、ネイチャは俺の腕を掴んで出口へと引っ張っていった。

「ちょっと! お会計!」

「また今度! マスター、ツケておいて!」

 お店を去る俺たちに向かって「わかったよ~頑張ってね~」とマスターの優しい声が飛んできた。

 

 

 

「はぁ、恥ずか死ぬかと思ったぁ」

 喫茶店から暫く歩いたところで俺の腕を引っ張っていたネイチャの歩みが止まった。

「とはいえ、ここまで離れる必要あったか?」

 現在地は詳しくわからないが、八百屋や魚屋などが連なる場所へとやってきていた。

「どれだけ離れていても後で情報が拡散するのは防ぎきれないか」

「まぁご近所付き合いのある商店街では情報を遮るなんて不可能だからな」

「トレーナーさんは暢気すぎ!」

 ビシッ! と人差し指をこちらへ向けてむくれているネイチャ。

 少し怒っているようだ。

「ごめんごめん、話すことに夢中になってて、周りのこと気にしてなかった」

「ほんとに、そういうところですよトレーナーさん。あれじゃあまるで公開こ……く…………」

「こく?」

「な、なんでもない、です」

 今度は途中で顔を紅潮させて止まってしまった。

「と、とにかく! 今後トレーナーとしての話をする時は二人きり限定!」

「お、おう。二人きりならいいんだな?」

「う、ふたり、うぅ、ガアアアア!」

 またネイチャがバグった。

「もうもうもうもうもう!」

 かと思えば、俺の肩を両手で小突き始めた。い、痛い痛い。さすがにウマ娘の力で殴られたら痛い。

「ごめんってば」

「本当にわかったの? これじゃあネイチャさん、いずれ表を歩けなくなっちゃいそうですよ」

「ネイチャのトレーナーが変な人だって噂が立つと危ないからな。俺も自重する」

「若干伝わったニュアンス違うけど、まぁわかればよろしい!」

 子供のイタズラをしつける母親のようなことを言い出した。

 元々母性のある子だから、レース以外のところで心配する必要はないと改めて感じた。

「それはそうと……さっきから八百屋のおじさんの目線が刺さるのですが」

「うぇ……? しまった! ここもほぼ知り合いしかいない!」

 またもや頭を抱えるネイチャだったが、こちらの事情も知らずに八百屋のおじさんが近寄って来た。

「……あんた、もしかしてネイちゃんのトレーナーさんかい?」

 近づくや否や、俺の足先から頭頂部までなめるように見つめてくる。

「はい、その通りです。初めまして、ネイチャがお世話になっております」

「ほおぉ~この人がねぇ。割と細くて身長もある。……いま彼女さんとかはいるのかい?」

 初対面になんて質問を! だが、何故か俺も律儀に答えなければならない気がして、

「い、いえ、いませんけど……それがなにか?」

 と、答えてしまった。すると、

「ほぉほぉほぉ、彼女さんはおらんのか……ネイちゃんのトレーナーさん、今日の夜はお暇かね?」

 満面の笑みで聞いてきた。

「特に用事はないですよ」

「用事は無い。それなら……今夜居酒屋にお呼ばれされるつもりはないかな?」

「お、お呼ばれ?」

「実は時折商店街のみんなで集まってご飯を食べるのさ。ネイちゃんのトレーナーってなら、部外者ってこともないでしょう。だから、寄っていくつもりはないかな?」

「ネイチャとのお出掛けの後でなら、ぜひ」

「はっはっはっ! 決まりだね。お二人で楽しんできた後に来ればいいさ」

 そう言うと、八百屋のおじさんは笑いながらお店に戻っていった。

「……なんかごめんね?」

 一部始終を見ていたネイチャが申し訳なさそうに謝って来た。

「いやいや、むしろ商店街の人達の集まりに呼ばれて光栄だよ」

「…………あの、非常に言いにくいことなのですが」

「なんでしょう?」

「本当は今日、そんな集まりないんですよ」

「え!?」

 じゃあ、あのおじさんはなぜ誘ってきたのか。

「これは推測だけど、たぶんアタシのトレーナーがどんな人か知りたいんじゃないの?」

 要するに、商店街のアイドル的存在のウマ娘であるナイスネイチャを担当するトレーナーの目利きというわけか。

「…………俺、殺されない?」

「そんなことはしないよ! 発想が飛躍し過ぎ!」

 ヤ○ザの前で腹を切れと強要されたような緊迫感。

 前回のレースの結果も含めて、尋問……いや、拷問をされる未来が待っている気がする。

「俺は、もっと、生きていたい」

「大丈夫だって! 商店街のおっちゃんたちもアタシが悲しむようなことはしないから!」

「それならいいんだけど」

 胃がキリキリと音を立てて萎縮している気がする。ごはん前の胃薬だけでお腹いっぱいになりそう。

「何かあったら弁明するから……できる範囲で」

「お願いね、ナイスネイチャ」

 その後のネイチャとの商店街ツアーはどこか上の空になってしまった。

 ソフトクリームを食べてる時もうっかり落としそうになったり、肉屋さんからもらったコロッケで少し舌を火傷したり、ラムネを飲んで気管支に入ってむせたり……なんか食って飲んでばかりだな。

 とにかく、変に空回りすることが増えた。

 終いにはネイチャに「マチタンに頼んでフク先輩から開運グッズをもらってこようか?」と言われてしまった。

 

 

 

 ゆったりとした時間をネイチャと過ごした後、午後六時、例の集まりが行われるとされる居酒屋に辿り着いた。

「よし、胃薬飲んできたし大丈夫だ!」

「本当に飲んだのかい」

 ネイチャにツッコまれながら、いざ出陣!

「お! ネイちゃんのトレーナーさんが来たぞ!」

 店内に響く大声を出して俺たちの登場を報告したのは、昼間に出会った八百屋のおじさんだった。

 その声を皮切りに、店内にいた人物たちが一斉に動き始め、俺たちを座席へと誘導。加えて、お冷とおしぼりと飲み物まで用意されてしまった。もう逃げられないぞという合図だろうか。

 ネイチャはオレンジジュース、俺は生ビールを片手に持ち、その他の面々も次第に着席する。

「みんな! 飲み物は持ったかい? それじゃあ、カンパーイ!」

 誰かの掛け声で食事会、というか宴が始まった。

 居酒屋なだけあって、おつまみが美味しい。ビールと合う。

「トレーナーさん、ジョッキが空になったら言ってくださいな!」

「あ、ありがとうございます。でもお酒弱いのでほどほどで」

 気前のいいおっちゃんたちがどんどんアルコールを頼んでいるが、俺はそこまで飲める人間ではない。下戸ではないが、悪酔いは出来ない体質なので自制をしなければ。

 それに酔った勢いで何を喋らされるかわかったものじゃない。

「ネイちゃんのトレーナーさん、ここらで一つお聞きしてもいいかい?」

 そう聞いてきたのは、この居酒屋の店主だと思われる男性。

 ちょっといかつい格好と声から若干オドオドしてしまう。

「この前の有マ記念、見てたよ」

「そうですか、ありがとうございます」

「まぁ、惜しいところまで行ったけど、結果は三着だった」

「はい」

「それで、だ。トレーナーさんとしてはこの結果をどう捉えているのか聞きたい」

 どう捉えているか、ね。

「トレーナーさんトレーナーさん、答えにくかったらアタシが」

 耳打ちして気を遣ってくれたネイチャだが……これはいい機会だ。

「大丈夫だ、ネイチャ。むしろ、君にも聞いて欲しい」

「えっ」

 ポケットに入っていたスマホを取り出すと、録音アプリを起動する。

 これで準備完了。

「これから話すのは、ナイスネイチャのトレーナーとしてどうあるべきかを考えて考えて、考え抜いた末の結論です」

 一呼吸おく。みんなの視線が自分に集まるのを感じる。

「前回の有マ記念の結果は重く受け止めています。トレーナーとしては良いレースだと思いました。でも、俺としては悔しい結果だと感じました」

「トレーナーさん……」

 あの日見たネイチャの涙……俺は一生忘れることはないだろう。

「だからこそ! 俺はナイスネイチャのトレーナーとして、彼女をG1レースで勝てるようなウマ娘へと育てることを誓います!」

「トレーナーさん!」

「おおおお! よく言ったネイちゃんのトレーナーさん! じゃあ、もしネイちゃんが不甲斐ない結果に終わったらどう責任取ってくれるんだい?」

「その時は! ナイスネイチャを! 一生支えていくことを誓います!」

「トレーナーさん!?」

「おおおおおおおおお!!!」

 居酒屋は大盛り上がりを見せた。

 途中でわけわかんないことまで口走ったかもしれない。

「というわけで、これからもよろしく、ナイスネイチャ!」

「ああ! もう! こうなったらヤケクソだぁ! よろしくお願いしますトレーナーさん!」

 その日の宴は商店街の人達を巻き込んだ大宴会にまで発展し、気が付けば夜中まで飲んでいた。

 途中で意識が朦朧としていたが、夜風が気持ち良かったことと、ネイチャが介抱してくれたことは覚えている。帰り道にお水をくれたこともお礼を言わなきゃいけないな。

 

 

『まったくもおー、トレーナーさんってば………………言質、取ってありますからね』

 

 

 その一言だけは、酩酊状態でもしっかり聞き取れていた。

 

 

 

 翌々日、今日も普段通りネイチャのトレーニングを指導していく。

「ふぅ……それじゃあ、よろしくお願いしますねトレーナーさん」

「ネイチャ、いつになく気合が入っているな」

「え? えぇ、まぁ、そうですね。誰かさんのせいでこの世界で名をあげるようなウマ娘にならなくちゃいけなくなりましたから」

「あはは、なんかごめん」

「いいんですよ。こんなアタシをスカウトしてくれたトレーナーさんですから、ちょっとでも期待に応えてあげたいなぁ~なんて。柄でもないのに思っちゃってるんで」

「そうか。じゃあ、あっと驚くようなレースを見せて、商店街の人達に勇姿を届けてあげようじゃないか!」

「うっわ、いきなりハードル超上がってんですけど!? それをネイチャさんに跳べって言う気ですか?」

「大丈夫、俺たち二人ならできるさ!」

「……二人、ね。まぁ、騙されたと思ってやってやりますよ」

 卑屈気味に、そして照れ気味に、ネイチャはトレーニングを始めた。

 ナイスネイチャがどれだけ輝けるか、それは担当である自分の手腕にかかっている。

 絶対に勝たせてあげる。それが使命なのはこれからも変わらない。

 でも、次にあの子に流してもらうとすれば――それは、嬉し涙かな。

「おーいトレーナーさーん! 早くご指導お願いしまーす!」

「ああ、ビシバシいくからな」

 いつか本物の一着を手にして、ナイスネイチャに「頑張ってよかった」と言わせてあげるために。




次は何を書こうか迷っています。
今のところ、
マチカネフクキタル、サイレンススズカ、メジロドーベルの三人の雑談を、
三人称視点で書いていく予定です。←ここ重要。
気分によっては変わるかもしれません。
あと全然関係ない話ですが、
ゴールデンウィークに博物館に行ったところ、「マチカネワニ」という生物が古代の地球上にいたことがわかり、個人的に興奮しております。
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