キミと僕の最後の戦場、あるいは至高の世界が始まる聖戦 作:大海空青
その後、皇庁では、アリスが女王に報告していた
「ーーーーということがあったんです」
「そうですか、それは大変でしたね。まさかサリンジャーと同じように皇庁に仇なす星霊使いがいるとは。具体的な目的はよくわかりませんが、皇庁の威信にかけて捕らえなければなりません。しかしあなたたち二人が無事に戻ってこれたことは嬉しいことです。これからも皇庁を守るため頑張ってください。期待していますよ」
「ありがとうございます。必ずこの国を守ります。」
「私からもお願いします。アリス様はこの国の希望なのです。どうかよろしくお願いいたします」
「もちろんよ。私は今度こそ絶対に負けないわ」
「頼もしい限りですね。さあ今日はもう疲れているでしょうから休みなさい。明日また来てくれれば良いですから。」
「はい、失礼いたします女王陛下」
「アリス様、お部屋に戻りましょう」
「ええ、そうね。今日はゆっくり休むことにするわ」
アリスたちは自室に戻った
「ふう、やっと休めるわね。でも結局『至高』の魔人は捕まえられなかったわね」
「仕方ありません。あの魔人は強すぎました。でもいつかきっと私たちで倒しましょう。アリス様は私が守ります」
「うん!ありがとね。でも私だって強くなってみせるわ。次はもっと上手くやるんだから」
「アリス様ならできますよ。でもあまり無理はしないでくださいね。」
「わかってるわよ。あの魔人が 『至高』なんて絶対認めないんだから!
それより早く寝ましょ」
「はい、そうですね。それじゃあおやすみなさいませ、アリス様」
「ええ、燐おやすみなさい」
こうして二人は眠りについた
次の日の朝、アリスが目を覚ますといつものように燐がいた
「おはようございます、アリス様」
「んー、朝ごはんは何かしら」
「はい、新鮮な高級フルーツを添えたパンケーキですよ。どうぞ召し上がってください」
「あら美味しそうじゃない。いただきます。………….」(モグモグ)
「アリス様?お口に合いませんでしたか?」
「いえ、とってもおいしいわよ。ただちょっと気になることがあって」
「気になられることが?」
「昨日の『至高』の魔人についてなんだけど、あれから色々考えてみたのよね。」
「はい、確かに気になりますね。それでなにか分かったことはありますか?」
「まず『至高』の魔人だけど、多分光に関する星霊を宿していると思うの」「光の星霊ですか…….なるほど確かに『至高』の魔人が纏っていたのは光のオーラのようなものでしたし、可能性は高いかもしれません。」
「そして次に『至高』の魔人の目的なんだけど、これは推測でしかないけど、おそらく皇庁への復讐だと思うの。」
「復讐ですか。確かに『至高』の魔人は皇庁を狙っているようですが、しかしそれならばなぜ帝国とも敵対するのでしょうか?」
「それはわからないわ。帝国への恨みもあるのか、一人で渡り合えると思っているのか。だからこそこれからも調査していく必要があるの」
「はい、私もそのつもりです。アリス様には指一本触れさせません!」
「頼りにしてるわよ、燐」
「はい、任せてください。それではそろそろ行きましょうか」
「ええ、そうしましょ」
そして二人は朝食を食べ終わり、女王に挨拶をしてから城を出た
「さてと、本日は女王様の雑務のお手伝いとなっております」
「そうね。早速向かったほうが良さそうね」
「では参りましょう」
「えぇ」
アリスたちは、図書室に向かった
「じゃあ始めましょうか」
「はい、アリス様」
「私はこっち側から調べていくわね」
「わかりました。私は反対側から見ていきます」
こうして二人は別々に調べ始めた 数時間後、燐が調べ物を終えてアリスの方を見てみると、そこには大量の資料に埋もれながら必死にペンを走らせている姿があった
「アリス様!大丈夫ですか!?︎」
「えっ、あっ、燐。ごめんなさい全然気付かなかったわ。少し休憩するわね」
「はい、わかりました。紅茶を用意しますね」
「ありがとう。いただくわ」
「ふぅ、やっぱりこの仕事は大変ね」
「お疲れ様です。ところでアリス様、今日の作業はもうこれくらいで良いんじゃないでしょうか」
「うーん、そうねぇ、今日はこの辺にしときましょうか。燐のおかげでだいぶ捗ったわ。ありがとね」
「いえ、お役に立ててよかったです」
帝国の意志決定機関である帝国議会においていくつかの議題が最高幹部である八大使徒の間で話された
その姿はないがモニターからおぼろげな顔の輪郭がみえる
「さて、今回集まってもらったのは先日に現れた純血種の魔女と謎の『至高』の魔人についてだ。ユベル北方前線にて純血種の魔女が一人で突破し、最新兵器を使うも無傷、さらには戦場が氷で覆われたそうだ。幸いにも『至高』の魔人が乱入したことで兵器を奪われることは無かったようだが、もしそうでなければ大変なことになっていただろう。よって我々は直ちに対策を考える必要がある」
「魔女が現れたときは使徒聖をぶつけてみるとしても、『至高』の魔人はこちら側に引き込めないものか。皇庁に反逆する魔人などサリンジャー以来なのだから。そうすれば貴重な星霊のサンプルが手に入る」
「確かにそれもいい案だが、問題はどうやって引き込むかということだ。『至高』の魔人の実力は未知数なうえに我々に敵対している。そうなると我々の手に負えるものではない。『黒鋼の後継』を釈放して捕らえさせてしまえばいいのではないか」
「しかし彼は魔女を脱獄させた大罪人だ。そう簡単に解放するわけにはいかない」
「とりあえず様子を見てみるとしよう。ところで純血種の魔女はなんと呼べばいい。」
「『氷禍』の魔女」でいいだろう」「『氷禍』か。ならばそれでいこう。では次だが『至高』の魔人とは何者なんだ?」
「ああ、それはまだわかっていないが、皇庁の記録によると『至高』の魔人は光に関する星霊を宿しているようだ。しかし純血種を軽く一蹴するほどの実力者でありながらそれ以外何一つ分からない。そんな謎に包まれた人物だよ。」
「ふむ、ならその辺の調査もしていかなければならないな。」
「ああ、その通りだ。
『至高』の魔人も『至光』と呼ぶこととする。あの魔人について早急に調べていくとしよう。
それでは閉廷」
こうして会議は終了した
「と言ったふうに様子見していたようなんだが、どうやら八大使徒も相当手を焼いているらしい。なにせ星霊使いを逃がしたイスカをわざわざ牢獄から出したくらいだからな」
というのは第907部隊の狙撃手ジンだった。
彼の言う通りイスカは史上最年少で使徒聖に登り詰めそれから数ヶ月後に牢獄から星霊使いを幼いという理由で脱獄させ今度は自らが投獄されたという異例の元使徒聖である。
八大使徒の指定する星霊使いを捕らえることを条件に解放され現在部隊はネウルカの森に向かっている
「ところでイスカくん、肝心の星霊使いは一体誰なの?」
「それが『氷禍』の魔女と『至光』の魔人という純血種らしくて」
「『氷禍』の魔女と『至光』の魔人!?」
イスカの答えに驚く隊長ミスミス
「イスカくんそれ、八大使徒にはめられたんだよ」
「それほど強いんですか?」
「そっか、氷禍の魔女達が現れたのはイスカくんが投獄されてからだから知らないよね。まず、彼女が最初に現れたのはユベル北方前線だったかな。あの前線を一人で突破していて、その強さは帝都を滅ぼした始祖の血を引く純血種の中でも最上位と言われる存在で、使徒聖を追い返すのには成功するくらい。次に『至光の魔人』だけど、これはね、その一切が不明でその実力は未知数。しかも『氷禍』の魔女よりも強いと言われているの。あとは本当に記録に残っているのは自ら名乗った異名だけ。それ以外は何もかもが不明なの。」
「待ってください。普通は戦場に出たら戦闘記録に残りますよね。まして最強と呼ばれた魔人がですよ?なにも残されないとかそんなことが有り得る筈が」
「それは至光の魔人と交戦したとしても、一瞬で全部隊をことごとく気絶させられて帝国の国境付近に放り出されていたそうだ。その後すぐさま戦場に向かうと既に姿はなく、基地が更地になっていたそうだ」
その疑問に対してジンが答えた。
「なるほど。確かにおかしいですね」
「そうでしょ。だから私達はこうやって調査をしているのよ」
「まあ、この情報は皇庁側の資料からのものだから、あまり信用は出来ないけどな」
「でも、少なくとも『氷禍』の魔女は『至光』の魔人に敵わないのは事実だと思うよ。」
「じゃあ、僕達がやるしかないのか」
「ああ。俺たちならきっとできるさ!」
「えぇ!がんばりましょう!」
「おうっ!!」
こうして彼らは森の中へと足を踏み入れた。
車はネウルカの森の前線へと向かう。
そんな時だった。
目の前に全身黒装束の人影が現れ、車は止まった。
「あれ?ここは一般人は立ち入り禁止のはずだけど。貴方は誰なの?」
ミスミスは黒装束の人物に問う。
「名乗るにふさわしい名はあいにく持ち合わせていないが、君たちには『至高の魔人』と言えば分かるかな。」
『至高の魔人』は機械的な声で答えた。
「なに!?」
「至光の魔人ですって……」
「どうしてここにいるんだ!!お前は皇庁にいるんじゃないのか!!!」
ミスミスたちは驚愕し、叫んだ。
「ふむ、少し勘違いしているようだね。僕は皇庁の人間じゃないし帝国の味方でもない。私は私の願いを叶える。それだけだよ。それに今回は帝国から星霊使いを逃がした使徒聖の顔を拝みに来ただけ。まさかそれが黒鋼の後継とは思わなかったけれど。」
「そんなことの為に僕らの前に姿を現したというのですか。ならば今ここで貴方を捕らえます。」
イスカは静かに言った。
「いや、今日は戦うつもりはないよ。ただ顔を見に来ただけだからね。でもいいのかい?こちらに皇庁の星霊使いが攻めてきているのに、放置しておいて。まあ、いずれ君達は戦争のさらなる渦中に身を投じ運命の歯車は加速するだろう。ではまたいつの日か。」
至高の魔人はそう言って姿を消した。
そして森には静寂が訪れた。
「まずいな。早く行かないと間に合わないかもしれない。」
「急ぎましょう。」
車は再び走り出した。
これが第907部隊と『至高の魔人』との初めての邂逅であった。
この後イスカとアリスは互いの運命の好敵手として相見えることとなる。
しかしこの時の彼らは知る由もなかった。
この戦争の真実へと足を踏み入れることになることを。
そして彼らがその真実を知ったとき、物語は動き出す。
樹の上でただ一人魔人は不敵な笑みを浮かべて。
「さぁ、賽は投げられた。運命に抗ってみせよう。そのための力であり、彼女の願いなのだから」