その日サイレンススズカは重賞レースに出走していた。
実況『中京メインレース金鯱賞G2!
菊花賞ウマ娘のマチカネフクキタルを筆頭に…』
マチカネフクキタル「速いわ~、速いわ~、スズカさん速いわ~、あの人なんで速いねん!ちょっと止まってくれたらいいのに…速いわ~」
サイレンススズカ「風のように早く、拙者は風になりたい!」
ダンッ
サイレンススズカ「スズカ!風に!なりまーーーーす!」
マチカネフクキタル「はやややや?正気ですか?スズカさん?」
実況『サイレンススズカ!
後続を10馬身以上離して今、ゴールイン!』
サイレンススズカ「心頭滅却すれば、風すらなれる!今の拙者は、誰にも負ける気がせぬ。あ~、せぬ!」
ーーー
数日後の図書室…
サイレンススズカ「ふむふむなるほど。時代劇もいいでござるが三国志も面白いでござるな。まさに世は乱世でござる。いや~乱世乱世…」ペラペラッ
エアグルーヴ「本を読んでいるお前を見て分かったことがある。」
サイレンススズカ「その分かったことがあるというのはお主の口癖か?人に出会った時にいちいち分かったことがあるというのはやめてほしいでござる。気持ちが悪い。」
エアグルーヴ「おぉ、いいね♪朝から罵詈雑言とは…何だお前、興奮しているのか?」
サイレンススズカ「興奮してるのはお主でござろうが!欲求不満か?それとも病気か?」
エアグルーヴ「病気だ。」
サイレンススズカ「ならしょうがない。それよりこの漫画なかなか面白いでござるよ。キングダムという三国志の話でござる。」
エアグルーヴ「スズカ、キングダムは三国志の話ではない。」
サイレンススズカ「え?じゃあ何国志でござるか?六国志とか十国志とか?」
エアグルーヴ「そんなものはない。」
サイレンススズカ「え?ないの?」
マチカネフクキタル「…」ダッダッダッ
サイレンススズカ「え?…な、何事でござる!?何か面妖なやつがこちらに向かってくるでござる。お主、何者でござる?」
マチカネフクキタル「なんで私のこと忘れておりますの!スズカさんこの前戦ったじゃありませんか?マチカネフクキタルいうもんです!」
エアグルーヴ「名前なんてどうだっていい。そんなことより1つ分からないことがある…お前何で水着なんだ?」
マチカネフクキタル「よう聞いてくれはりました、代謝上げるトレーニングしてますね。薄着やったら代謝上がるってネットの記事に書いてあったからな、薄着言うたら水着やないかい!だから水着着てますの、分かります?は?」
サイレンススズカ「薄着=水着とはお主の考えは浅はかでござる…馬鹿者!」
マチカネフクキタル「酷いわ~酷いわ~!そんな馬鹿呼ばわりせんでもええがな。それにしてもここ寒ない?なんかガタガタするんやけど…」ブルブル
サイレンススズカ「水着だからでござろうが、この馬鹿者!」
マチカネフクキタル「そんなことよりこの前ね、スズカさんを私占ってあげたんですわ。私は占いが好きでね…毎日占いやってますねん。まぁ、ほとんど外れるんやけど…」
エアグルーヴ「外れるんかい!意味ねーじゃん!」
マチカネフクキタル「スズカさん、このまま走ったら大変な目にあいますよ!具体的にどういう大変な目というのはよう分からへんのやけど、とにかくなんか死相と言うか死念と言うか…危ない感じの気が撒き散らされてるんや。だからあんまりレースに出んほうがいいかもしれん。ちょっとトレーニング落ち着かせてどっか北海道か どっか行ってゆっくり休んだ方がいいかもしれん。隠居した方がいいかもしれませんよ。」
サイレンススズカ「お主の言っていることは支離滅裂すぎて理解が出来ぬ。」
エアグルーヴ「しなくていいよ。隠居なんかする必要はない。今スズカは誰よりも速い。その調子でバンバン走れ。そして私に負けろ。」
サイレンススズカ「ちょっと待たれよ!最後のセリフ聞き捨てならぬ!なぜお主に拙者が負けねばならぬ!」
エアグルーヴ「最終的に私に負けるって言うのがドラマ的にカッコいいと…」
サイレンススズカ「カッコよくないでござる!お主が拙者に負けよ、馬鹿者!」
マチカネフクキタル「ちょっと聞いています?私の話聞いてます?私の占いはよく外れるんですよ。だいたい99.9%…ただ今回の占いはだいたい当たる気がしてしゃーないんです!」
エアグルーヴ「おい、お前さっきからうるさいぞ。だいたい水着着てるんだから、とっととプールに入って泳いでこいよ!この淫乱女が!」
………
自室にて…
スペシャルウィーク「スズカさん知ってる?さっき学園で水着で走り回ってる頭のおかしい奴がいるって聞いたよ、見たことある?」
サイレンススズカ「見たことも何も、さっきそいつに絡まれていたでござる。殺してやろうかと思ったわ!」
スペシャルウィーク「殺すのはダメだよ。過激なこと言うな~。そんなことより今日スズカさん足パンパンだね。すごくパンパンだね。練習で疲れてるでしょ?私が揉んであげるよ。」
もみもみもみ
サイレンススズカ「最近すごく調子がいいでござる。速すぎて、速すぎて、もしかしたら拙者はそのうち風になってしまうのかもしれぬでござる。なーんて…」
スペシャルウィーク「私たち馬だから風にはなれないよ?」
サイレンススズカ「いや分かっているでござる。そんな真面目に言われても…ここは突っ込んで欲しいでござる。」
スペシャルウィーク「いや、だから風にはなれないよ。」
サイレンススズカ「だから分かっているでござる!」
スペシャルウィーク「そういえばパジャマトレーナーどこ行ったの?最近見ないけど…あ!もしかして、とうとうくたばったかな?アイツなんか不摂生な生活を送ってるもんね。とうとうくたばったかな?」
サイレンススズカ「ご冗談を。仮にも拙者やお主のトレーナーでござるよ。そういう不吉なことは言うなでござる。そんなことより足を揉んでほしいでござる。」
スペシャルウィーク「あ、そうだねごめんごめん。じゃあパンパンな足揉むね!覚悟してね?パンパンな足揉むから!」
もみもみもみ
スペシャルウィーク「硬いなぁ…やはりスズカさんの足硬いよ。」
サイレンススズカ「スペ殿!…そこは拙者の胸でござる。」
スペシャルウィーク「あ、ごめん。足だと思った。まな板みたいだね。」
サイレンスズカ「うるさい、殺すぞ!」
スペシャルウィーク「あ、ごめん。コンプレックスなんだ(笑)!」
ーーー
それは数日前の昼間…
バサッ
パジャマ「ー!」
バキボコッ、バキッドカッ!
俺は突然何者かにテープで口を塞がれ、暴行を受けた。
アグネスタキオン「ようこそ哀れなトレーナー…心から歓迎しよう。」
パジャマ「んんん!(なんだ、貴様は!俺を拉致してどうする気だ!クソが!)
アグネスタキオン「私の名はアグネスタキオン。君と話がしたくて、こうやってきてもらった。」
パジャマ「んんん!(うるせぇ!俺を解放しろ!)
アグネスタキオン「実はね…君が抱えているサイレンスズカ…あの子、このまま入ったらヤバいよ?」
パジャマ「んんん!(ヤベェのはてめぇの方じゃねえかよ!)」
アグネスタキオン「彼女の走りは仕上がりすぎている。このまま行けば…次の秋の天皇賞で粉砕骨折を起こし、死んでしまうだろう。」
パジャマ「ん?んんん!(何?死んでしまう?お前何言ってんだよ!頭おかしいんじゃねぇか!」
アグネスタキオン「そうだろうな、そうだろうな、信じられないだろうな。私がこんなこと言っても…まぁいい。順序立てて説明してあげよう。複雑な話になるからその空っぽな脳みそをフル回転させて考えてくれよ。実はな多元宇宙論の研究を私は行っている。何故そんなことをしているのか…それは私には別世界の記録が断片的に脳に記憶されている!それを解明するために、今日まで狂ったように実験に勤しんできた!多元宇宙論は最近だとマルチバースやパラレルワールド、並行世界とも呼ばれているな。」
ーーー
ゴールドシップ「はい、どうも!最近めっきり出演が減っしましたゴルシちゃんでございますよ。私が説明してあげましょう!マルチバース、多元宇宙論、パラレルワールド、いろんな言葉があるけど、どういう意味か簡単に説明すると…いろんな世界があってですね、例えばウマ娘(男)になったこのゴルシちゃんがいたりとか、ウマ娘(男)にならなかったゴルシちゃんがいたりとか、ウマ娘のゴルシちゃんがいたりとか、馬じゃなくて違うゴルシちゃんがいたりとかですね…そんな色んな世界が並行的に存在している…それをマルチバースとかパラレルワールドとかいろんな言葉で言われているね。で、そんな色んな世界の記憶を何故かこの…コイツ何て言うんだっけ?えーと、アグネスタキオンだっけ?コイツが持っているということを、このアグネスタキオンは言いたいってことだね。まぁ分かんなかったら何か参考書とか買えや…以上!」
ーーー
アグネスタキオン「なぜ私が色んな世界の記憶を断片的に持っているか、それはまだ分からないし、正直この世界はまだ未知数な部分がある。ウマ娘(男)がどういう風に生まれ、私たちウマ娘(男)はどういう存在なのか。まぁ、そんな話をし始めたらきりがないからな。サイレンススズカの話に戻ろう。私の記憶とそして計算したところによると天皇賞でサイレンススズカはケガをする、あるいは骨折をしてそのまま安楽死、このどちらの事故しか私の記憶には残ってない。そして、それはサイレンススズカの仕上がりによって起こる可能性が出てくる。そしてこの世界のサイレンススズカの仕上がりは……完璧な状態だ!!つまり、この完璧な状態のまま天皇賞を迎えてしまうとどうなるか…サイレンススズカは自分の走りに体が追いつかなくなり、そのまま事故起こし、粉砕骨折をして、間違いなく死ぬだろう。可能性的に99%だ。」
パジャマ「んー!んー!んんん!んー!(うるせぇ!そんな訳ないだろう!適当なことぬかしてんじゃねぇぞ!俺を騙そうたってそうはいかねぇ!スズカがケガをして死ぬなんて誰が信じるか!この詐欺師め!)」
アグネスタキオン「分かった分かった。私を信頼できないのは分かった。じゃあ、証拠を見せてやろう。明日のサイレンススズカとエアグルーヴが走るはずだ。どっちが勝つか教えてやろう…間違いなくサイレンススズカがぶっちぎりで勝つ。それだけじゃない。1着から12着、誰が勝つか教えてやろう!」
ーーー
そして次の日…
実況『外からエアグルーヴ!
エアグルーヴが差を詰めてきた!
ここで先頭入れ替わるか?
だが先頭を譲らない!
サイレンススズカ、サイレンススズカだ!
直線に入っても脚色は衰えない!
サイレンススズカ、今ゴールイン!
"逃げて差す"走りで、見事グランプリの座を手にしました!』
こうしてアグネスタキオンの予言は的中した。
………
アグネスタキオン「な?言った通りだろ?…まだ信用していないのか?じゃあもう1つ教えてやろう。今日のレースウイニングチケットが負けたと思うが…おそらく明日ウイニングチケットはサイレンススズカにその鬱憤をぶちまける。」
ーーー
次の日…
ウイニングチケット「何で後輩のスズカが勝って私が負けんだよ、うぅー!クソったれ!何だスズカ?調子乗ってんじゃねーぞ!ちょっとばかし、私より速いからって…なめんなよクソ!誰がにロケット花火を打ち込んでやろう!…イライラするわ!!」
サイレンススズカ「…」
ーーー
パジャマ「んんん。(少しだけ信じてやるよ。全部じゃないけど…それより何でいつも俺はお前と会う時、縄で拘束され口を塞がれているんだ?)」
アグネスタキオン「おしゃべりな奴は私は苦手なんだ。だからちょっとガムテープしといてくれ。」
パジャマ「んんん!(なんだその理屈?ってか縄で縛る理由がねぇじゃねーか!ほどけよ!)」
アグネスタキオン「ちなみに私以外にも別世界の記憶を持っているウマ娘(男)がいるかもしれないぞ?確認はしたことないが…覚えはないか?」
パジャマ「………(そういえば、前にライスが妙なことを言っていたっけ…?)」
ーーー
ライスシャワー『レース中に骨折してそのまま二度と走れなくなる夢。もしかしたら…それを私は、一度経験しているのかもしれない。』
ーーー
パジャマ「………(変な夢見るなー、ぐらいにしか思わなかったけど…)」
アグネスタキオン「さて、ここから大事な話だ。本題に入るぞ。まず何故サイレンススズカがここまで…、ここまで仕上がってしまっているのか?原因はおそらくお前だろう…哀れのトレーナーよ。」
パジャマ「んんん!(何で俺なんだよ!俺は単なる一般人だぞ!…借金してるけど。)」
アグネスタキオン「それはお前が異物だからだ。ハッキリ言って私の記憶の中にはお前は一切出てこない…。そう、本来お前はこの学園に来る者ではなかった。本来別のトレーナーがこの学園に来るはずだった。しかし、なぜか、どうしてか、どういうことが起きたのか、お前がチームシリウスのトレーナーになってしまった…!全ての発端はそれだ。そのせいで…今までの世界にないくらい歯車が狂ってしまったんだよ。本来来るはずだったトレーナーが来ていればサイレンススズカはここまで仕上げることはなかっただろう。よって、天皇賞はケガすることはあっても、死ぬことはなかったはずだ…。なのに、お前のせいで!スズカはおかしくなってしまった。分かるか?哀れなトレーナー、お前は異物なんだよ。」
パジャマ「んんん!(ふざけるな!俺は無理やりこの学園に連行されただけだ!関係ない!関係ない!)」
アグネスタキオン「暴れるな、気持ち悪い。…本当に気持ちが悪い。でも安心したまえ、私の実験に付き合ってくれればスズカは骨折をして死ぬことはない。」
パジャマ「ん?んんん!んん…(は?お前の話からすると運命を変えるって事だろう?そんな簡単なことじゃないんじゃ…」
アグネスタキオン「あぁ、私に考えがある。ちなみに本来来るはずだったトレーナーは今は北海道で酪農家として毎日牛の世話をしている。幸せそうな顔をしているが…スズカにとっては不幸だ。」
ーーー
数日後…
パジャマ「グオオォォォ!」
スペシャルウィーク「ななな、何だべさ!?ついに頭おかしくなったのか?」
パジャマ「オカシクナッテナイヨ。」
ーーー
アグネスタキオン『さぁ、今日はこの薬を飲んでもらおう。少し筋肉が強化される薬だ。早く飲め!』
ゴクン
アグネスタキオン『あ、失敗だ。副作用で顔が馬面になってしまったな。』
ーーー
アグネスタキオン『今日はこの薬を飲んでもらおう。何を嫌がっているんだ?スズカのためだ!飲め!』
ゴクン
アグネスタキオン『あ、失敗だ。すまない、鼻毛が異常に伸びてしまった。』
ーーー
パジャマ「チョット色々実験ニ付キ合ッテイルンダ。」
サイレンススズカ「ふぅ…疲れたでござる。タイムはどうでござる、スペ殿?」
スペシャルウィーク「あ、ごめんスズカさん、ストップウォッチ押すの忘れてた。もう1回走ってきて。」
サイレンススズカ「お主…殺す!」
スペシャルウィーク「冗談だよ。大丈夫…タイムは多分50秒ぐらいだと思うよ。」
サイレンススズカ「多分とは何でござるか!ちゃんとストップウォッチを押したでござるよね?」
スペシャルウィーク「押したことがあるかもしれないけど、今日は押してない。」
サイレンススズカ「それ押していないのでござろう!」
スペシャルウィーク「押してないね、ごめんね。」
パジャマ「グオオオォォォ!」バタン
そして俺は倒れた。
第15話………完