パジャマ 「グオオォォォ!!」バタン
ーーー
俺が倒れる数時間前…
アグネスタキオン『今日はこの薬を飲んでもらおう。筋肉が強化される薬だ。早く飲めスズカのためだ!』
ゴクン
アグネスタキオン『あ、ダメだ、失敗だ。すまない、顔が豚になってしまった。実験のやり直しだ…うまくいかないなぁ…』
そして俺は意識を失い倒れた。
ーーー
実況『サイレンススズカに故障発生です!
なんということでしょう!
これは大変なことになりました!』
パジャマ「ス、ズカ…ス、ス、スズ…カ。…知らない、天井がある?」
メジロマックイーン「いいえ、知っている天井です。」
パジャマ「マックイーン?俺は…どうなったんだ?」
メジロマックイーン「急にエヴァンゲリオンのような雄叫びをあげてぶっ倒れたのですわ。」
パジャマ「そうか…」
メジロマックイーン「そうかじゃありません!大変でしたのよ!倒れたあなたを見てスズカさんやスペさん、皆さんは慌てふためくし、ライスさんは死んじゃったと泣きわめくし、近くにいたゴルシなんか面白そうだからと言ってYou Tubeで配信する始末。もう手に負えないので、私1人であなたをここまで担いできたのですのよ。感謝してくださいませ、そして敬いなさい。」
パジャマ「最後の一言余計だけど…とにかくありがとう。」
メジロマックイーン「後、あなた何で顔が豚になっていますの?なんか変な薬でも飲んだんじゃありませんか?汚らわしい。」
パジャマ「…」
ーーー
アグネスタキオン『このことはあんまり人に話さないでほしい。スズカを助けるためとはいえ、訳の分からない薬を飲ませようとしているんだ。普通の奴なら止めるだろう。それに…こんなことを言っても誰も信じてくれないしな。』
ーーー
メジロマックイーン「事情を話しいただきますよ。」
パジャマ「…」
メジロマックイーン「どうしたんですか?言えないんですか?仕方ありませんわね、言えないなら…メジロ式の拷問をするしか…」
パジャマ「メジロ式の拷問!?」
メジロマックイーン「爪と指の間に少し大きな針を刺していくんです。めちゃめちゃ痛いので…」
パジャマ「言います!言います!痛いのは嫌です!」
俺は全てをゲロった。
………
メジロマックイーン「なるほど。スズカさんのために、無理をしたいたんですね。」
パジャマ「え?え?こんな浮世離れした話、信じてくれるの?」
メジロマックイーン「いいえ、信じていません。」
パジャマ「はぁ?」
メジロマックイーン「そのアグネス・チャンさんがおっしゃっていること…」
パジャマ「いや、アグネスタキオンだよ。」
メジロマックイーン「普通なら信じられませんとも。」
パジャマ「はぁ!?」
メジロマックイーン「私はあなたを信じているんですよ、トレーナー。」
パジャマ「はぁ?」
メジロマックイーン「チームシリウスが曲がりなりにもここまで大きくなれたのは…腹立ちますけど、あなたのおかげですから。」
パジャマ「お前一言多いなぁ~、嬉しいけど。でも、俺本当のトレーナーじゃねぇんだぞ?」
メジロマックイーン「本来来るはずだったトレーナーさんのことですか?そんなどこの馬の骨とも知らない人、私は興味ありません。いいですか!今、この時、この瞬間、チームシリウスのトレーナーは…あなたなんですよ!もう少し自信を持ってください。はしたない。」
パジャマ「俺のせいでスズカは死ぬかもしれないんだぞ…」
メジロマックイーン「おいポンコツトレーナー。いいですか、もう一度言います。今のチームシリウスのトレーナーはあなたなんですよ。どういう形であれ、あなたはトレーナーになった。そして私たちを指導し導いてきた。それは9割以上は私達の実力でやってきたつもりです…が、今の私や他のメンバーがいるのはこれまでがあったからです。パジャマトレーナー、あなたがトレーナーになったからです。だから反省はしても後悔はしないでくださいね。」
パジャマ「マックイーン…慰めてくれるのは嬉しいけど…」
メジロマックイーン「これ以上ガタガタ言うようでしたら、拷問いたします。吐くまで拷問いたしますわよ。」
パジャマ「もう全部吐いたよ!」
メジロマックイーン「とにかくもう少しシャキッとしてください。そんな豚みたいな顔して!」
パジャマ「いや、だからこれは実験で豚になっちまったんだよ。はぁ…シャキッとしろ、言うけど、これからどうすりゃいいんだよ?アグネスの実験は全然うまくいかねぇし…」
メジロマックイーン「天皇賞までまだ時間はあります。こういう時は常識を壊す、非常識な作戦に出るのも一つの手じゃありませんか?」
パジャマ「え?」
メジロマックイーン「非常識な方法はあなたの常套手段でしょう?」
パジャマ「え?俺、常識人じゃないの?」
メジロマックイーン「は?あなたに常識なんて無いでしょ。冗談は顔だけにしてくださいませ。そんな豚みたいな顔をして!」
パジャマ「…」
ーーー
そして豚みたいな顔と言われつつも俺は行動に移すことにした。
パジャマ「というわけで、次の天皇賞、お前は死ぬ!」
サイレンススズカ「は?え?何を言ってるでござる?」
パジャマ「お前に死んでもらっちゃ困るので、生きてもらう…生きろ!」
サイレンススズカ「い、意味が分からないでござる。」
パジャマ「定められた運命を変えるぞ!」
サイレンススズカ「…」
………
パジャマ「というわけでスズカには『お前死ぬから、気をつけて走れ』って言っておいた。」
アグネスタキオン「お前馬鹿なのか!本当に馬鹿なのか!もう1回言わせてくれ!馬鹿なのか!」
パジャマ「何でだよ。この方法が一番いいじゃねぇかよ!」
アグネスタキオン「そんなことでスズカの事故を防げるなら、私だってやってるわい!」
パジャマ「何でやらねぇんだよ?」
アグネスタキオン「やっても意味無いからよ!」
パジャマ「何だアグネス?今日はいつもよりテンション高いな?」
アグネスタキオン「うるさい!」
パジャマ「いいか、よく聞け。今までの世界線は全部事故を知らずにスズカ走っていたんだ。もし事故することを知っていたら、あいつは慎重に走ることが出来る。そしたら事故を起こさずに、死なずに済むじゃなぇか!こんな簡単な作戦ねぇだろ!」
アグネスタキオン「そんな単純な心理的な問題で解決できるようなことじゃないんだぞ!いいか?やり直しがきかないんだぞ?お前もしこれで作戦が失敗してスズカが死んでしまったら、もう引き返すことはできないんだぞ!後、何で他の人に言うんだよ…」
パジャマ「別に全員に伝えたわけじゃねぇ。現にゴルシには言ってないし。」
アグネスタキオン「何でゴルシには伝えないんだ?」
パジャマ「まぁ見てろ、まだ天皇賞まで時間があるし、それに作戦はこれだけじゃない。」
アグネスタキオン「何を考えているか知らないが…今のところ私の実験を全て失敗しているからな。正直もうお前に頼るしかないんだよな。あぁ…情けない。」
パジャマ「そうだな。今のところお前の成果と言えば、俺の顔を豚にしたぐらいだもんな。」
アグネスタキオン「黙れ豚。」
パジャマ「豚じゃねぇし、お前のせいでこうなったんだよ!」
そしてなんやかんやあり天皇賞当日に俺の顔は元に戻るのであった。
ーーー
ついに天皇賞(秋)の当日がきた。
スペシャルウィーク「今日のレース怖ぇよ~…スズカさん大丈夫かな?」
ゴールドシップ「は?何のこと?スズカなら問題ないでしょう?」
スペシャルウィーク「問題ないことないよ。昨日バックトゥーザフューチャー見てたんだけど、未来を変えるって大変なことなんだよ!」
メジロマックイーン「走る本人よりも緊張しているみたいですわね。まぁ、私もなんですが…パクパク。」
ゴールドシップ「は?何のこと?未来を変える?どういうこと?」
ウイニングチケット「個人的にはさ、スズカをレースに出させない。出走を取り消した方がさ、確実に運命を変えることができるんじゃないの?ダメ?これ?」
ライスシャワー「ダ~メ!」
ゴールドシップ「何でスズカのレースを取り消しにするんだよ?」
メジロマックイーン「今日までやれることはやりました。スズカさんを信じましょう!」
ゴールドシップ「だから何の話をしてるんだよ!お前たち私に隠し事してんじゃないよ!」
バキッボコッドカッ!
スペシャルウィーク「やめてよ…首絞めないで…」
パジャマ 「じゃあ行こうかスズカ。」
サイレンススズカ「御意。」
………
地下バ道にて…
サイレンスズカ「緊張してきたでござる。トレーナー殿の話を聞いてから、毎日なんだか体が重いでござる…!!エアグルーヴ殿、それに…福新漬け。」
マチカネフクキタル「フクキタルですよ!スズカさん、名前間違えんといてください!」
エアグルーヴ「少し顔色が悪いぞ?何かあったのか?いつものお前らしくないな。キスしてやろうか?」
マチカネフクキタル「ほんまエアグルーヴさんキツイわぁ。こんな所でキスされてスズカさんにゲロ吐かれても困りますやん。ちょっと自重して下さい。」
エアグルーヴ「私とキスしたぐらいでゲロなんか吐かない、むしろご褒美だ。だよなスズカ?」
サイレンススズカ「間違いなくゲロゲロでゲロ吐くでござる。」
エアグルーヴ「ほら、聞いたか?吐くってよ…え?私とキスしたらゲロ吐くの?」
サイレンススズカ「それは鼻から口からいっぱいゲロゲロでゲロ出すでござる。」
パジャマ「お前ら大事な試合の前に何ゲロの話ししてんだよ!おい!取り巻きの2人、どっか行け!おい、スズカ気持ちの準備は大丈夫か?」
サイレンススズカ「最後に一花咲かせてみせよう!拙者の生き様…見届けるが良い!」
パジャマ「いや、それ死ぬやつのセリフじゃねぇかよ!お前が死なないようにこっちは頑張ってんだから死なないように走れよ!…おい、聞いてる?」
サイレンススズカはそのままターフへと向かっていった。
ーーー
実況『スタンドを埋め尽くすファンの声援がここ東京レース場に響き渡ります!
圧倒的な支持を受けた"異次元の逃亡者"サイレンススズカは1枠1番!
果たしてどのような逃亡劇を見せてくれるのか。
多くの期待を背に天皇賞(秋)スタートです!』
サイレンススズカ「ー!」ダッ
実況『さあ、期待に応えてサイレンススズカが早くも先頭へ抜け出します!』
サイレンススズカ「(本来の拙者であれば、この天皇賞、気持ちよく走っていたのでござろうな。このような恐怖心を捨てきれずに走るレースは初めてでござる。)」
実況『なおもサイレンススズカはスピードを緩めません!
いや、さらに加速し、その差を広げていきます!』
サイレンススズカ「(…別の世界線とやらの拙者はケガをした時どんな気持ちがあったのであろうな。後悔したのか?反省したのか?己の人生を呪ったのか…)」
実況『先頭を走るサイレンススズカ!
今、大ケヤキに差し掛かります!』
ーーー
それは突然サイレンススズカへと襲いかかる。現実か?幻か?
サイレンススズカ「ーー!ダメでござる!飲まれるでござる!考えれば考えるほどにダメでござる!考えるな!考えるなでござる!走れ!走れ!走れ!走れ!」
サイレンススズカの足が捕らわれる。
サイレンススズカ「動かぬ!何故でござる!」
サイレンススズカは光へと手を伸ばす。
サイレンススズカ「動かぬ、拙者の足が動かない…拙者の足が…なぜ?動かない…前に進め!」
光が消え、サイレンススズカはもがく。
サイレンススズカ「動け!動け!動け!動け!」
サイレンススズカはさらにもがく。
サイレンススズカ「なぜ動かぬ…?拙者はここまで…ここまで…ここで死ぬのか…?」
サイレンススズカの目が閉じられた…
???『見に行かなくちゃ…、トレーナーさんが…みんなが待っている景色を!』
サイレンススズカ「何奴!?」
???『これからもずっと…』
サイレンススズカ「誰でござる!?」
???『見たことのない景色を…』
サイレンススズカ「誰でござる!?」
???『みんなと一緒に…』
サイレンススズカ「この声はもしかして…」
???『夢を掴んでみせます。もっとたくさんの景色を見るために走り続けます。』
サイレンススズカ「そうでござった!怯えている場合ではない!風になり、みんなに見たこともない景色を見せるのが拙者の役目!走れサイレンススズカ!」
謎の声により…闇が晴れた。
ーーー
サイレンススズカ「拙者は風になる!」
ダンッ
実況『スタンドは割れんばかりの大歓声!』
サイレンススズカ「…先頭の景色は…譲らない!!」
実況『ここでサイレンススズカもスパートに入る!
まさに"逃げて差す"!
誰にも真似できない走り!』
サイレンススズカ「はああぁぁぁ!!」
サイレンススズカ「(恐れずに走れ!トレーナー殿やチームの皆が信じているでござる、待っているでござる!拙者の帰りを!)」
実況『先頭はサイレンススズカ!
サイレンススズカだ!
多くの人達の期待を夢に背負い、サイレンススズカが先頭でゴール!
まさに夢のようなウマ娘!
サイレンススズカが天皇賞(秋)を見事に制しました!』
ーーー
レースが終わったスズカを全員で迎えた。
スペシャルウィーク「よかったよ~、スズカさん!もしスズカさんが死んだら私、自殺するつもりだったけど、死なずにすむ~!」
サイレンススズカ「さらっと怖いことを言うなでござる!自殺するつもりだったのか!?」
メジロマックイーン「ドーナツをパクパクしながら見ていましたけれども、見事な走りでした。運命を乗り越えましたね。あなたは未来を変えたんですよ!スズカさん!」
サイレンススズカ「お主、ドーナツを頬張りながら見ていたでござるか?」
メジロマックイーン「ご自身にかけられた呪いのような運命を変えるということは、とても素晴らしきことでございますわ。私、本当に涙が出そうに…」
サイレンススズカ「しかしドーナツを頬張っていたのでござろう?」
エアグルーヴ「これが愛の力ってやつか…私のラヴ&キッスがお前の心に届いたんだな。」
サイレンススズカ「届いてないでござる。」
マチカネフクキタル「スズカさん聞きましたで。死ぬスケジュールやったんやろ?そのスケジュールを見事に外して、すごいやんか!」
サイレンススズカ「スケジュールっていうのはやめてほしいでござる。」
アグネスタキオン「私もその死ぬスケジュールを回避した方法を教えて欲しいな。」
パジャマ「あ、タキオン博士じゃねぇか。」
アグネスタキオン「スズカに事前に死ぬことを報告したぐらいで、残酷な運命を回避したとは思ってない。そのカラクリを教えてくれ。」
サイレンススズカ「いや、それだけでござるよ。拙者は慎重に走ったから、怪我させずに済んだ…」
アグネスタキオン「生、言ってんじゃねぇぞ!私があれだけ実験をしてうまくいかなかったのに、そんな根拠もない適当なことであの事件から回避…」
パジャマ「俺が説明しよう。スズカ特製の蹄鉄、特製の衣装、斤量をあえて重くしたなど、何重にも対策を立てた。もちろん全てメジロ家に資金を提供してもらった。」
アグネスタキオン「なるほど。メジロ家に資金提供してもらったのか。金がないと出来ないことだな。だからみんなに言ったのか?」
パジャマ「1人や2人じゃ何もできないということに気付いたから、みんなに助けてもらったんだ!俺たちはチームだからな。」
アグネスタキオン「やめてくれ、いつも1人の私にそれはキツイ。」
パジャマ「いやいや、今回はお前も入っているからな。」
アグネスタキオン「え?ちょ、ちょっとやめろよ…照れるじゃないか…」
パジャマ「とはいえ、最後の最後はスズカ自身の問題だからな…。失敗するかもしれないと思ったよ。スズカ、お前やっぱりすげぇな。」
サイレンススズカ「何を言ってるでござる?お主やチームシリウス、後…サイレンススズカ殿のおかげでござる。スズカに背中を押してもらったでござる。」
パジャマ「スズカはお前じゃん?」
サイレンススズカ「そうでござるが…違うでござる。」
パジャマ「は?」
サイレンススズカ「フフフ…」
パジャマ「なんで笑ってるんだよ?」
サイレンススズカ「なんでもないで……ござる。」
こうしてサイレンスズカは経験することのなかった天皇賞のお立ち台、レース、走ることを経験することが叶い、日々を忙しく過ごしている。レース中にスズカが経験したことは一体何だったのか?未だにスズカは教えてくれない気になるところである。
ーーー
実況『さあ、最後の直線!
先頭は5、6馬身のリードでサイレンススズカ!
ここで後続がものすごい脚で追い上げてきた!
逃げ切れるかサイレンススズカ!
後ろとの差はもう僅かっ!
しかしサイレンススズカ、ここで加速!
"逃げて差す"走りで、後続との差を広げていく!』
実況『サイレンススズカ!
サイレンススズカだ!
サイレンススズカが先頭でゴール!
今回も"逃げて差す"サイレンススズカは健在!
圧倒的な期待に応え、見事に勝利を飾りました!』
サイレンススズカ「拙者は幸せでござるな。またこうやって、皆の前で走ることができるのでござるから。本当に……幸せでござる。」
第16話 及び『サイレンススズカ編』………完