ウマ娘(男)   作:アマノジャック

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第9話 『私のダービーとトレーナー』

ウイニングチケット『おい、じじい!トレーナー辞めるってなんだよ?お前が辞めたら私は一体どうすればいいんだよ?年取ったからって別にそんなの気にしなくてもいいじゃん!まだまだ元気じゃん、じじい!』

 

先代トレーナー『いや、俺はもう限界だよ。最後の意地で今日まで頑張ってきたがこれで完全にガス穴が。だから…お前に託す!』

 

ウイニングチケット『託すってなんだよ!?おい、ダービーはどうすんだよ?それに私だけじゃなくて、タイシンとかハヤヒデもいるんだぞ!』

 

先代トレーナー『…お前たちの活躍を期待しているぞ。』スタスタ

 

ウイニングチケット『おい待てよ!おい、じじい!おい、待てって…』ダッダッダ

 

バキッ

 

ウイニングチケット『痛ッ…おい、じじい、殴るなよ。』

 

ーーー

 

クラシック第1戦、『皐月賞』でウイニングチケットは敗戦に終わった。

 

ウイニングチケット「ふぅ、ふぅ…何だよ?何か言いたそうな顔だな、殴ってやろうか?」

 

パジャマ「昨日レースしたばっかりなんだから今日くらいは休めよ。」

 

ウイニングチケット「負けた奴が休んでたら、また負けるじゃねぇかよ!そんなに私に負けてほしいのか?よし喧嘩してやろう、おい来いや。ボクシングだ。ボクシングで決着つけてやるよ。」

 

パジャマ「なんでそうなるんだよ!いや、次勝って欲しいから休めって言ってるんだよ。」

 

ウイニングチケット「嫌だって言ってるんだよ!じっとなんかしていられるか!邪魔すんなよ!」

 

ゴールドシップ「皐月賞でボロ負けしたことが相当堪えてるみたいだね。…止め刺してやるか。」

 

メジロマックイーン「おやめなさい。ってか止め刺すって何ですか?」

 

ゴールドシップ「あいつが泣くまで負けたレースのことをイジりまくってやる。」

 

メジロマックイーン「やめなさい。あなた本当に性格悪いですわね。よくチームメイトにそんなことできますわね。常軌を逸してますわ。」

 

ゴールドシップ「冗談だよ。私が本当にそんなことする奴だと思ってるの?」

 

メジロマックイーン「思ってますわよ。」

 

ゴールドシップ「思ってるんかーい!」

 

パジャマ「俺も思ってる。」

 

ゴールドシップ「お前も思ってるんかーい!…え、ヤバくない?私の好感度ってどれぐらいヤバいの?ねぇ、教えて?ねぇ、教えて?無視するなよ、おい?」

 

メジロマックイーン「トレーナーさん、チケットさんのことをしっかり見ていてあげてくださいませ。」

 

パジャマ「いや、でもあいつ俺のこと聞かねえからさぁ…」

 

メジロマックイーン「トレーナー 、チケットさんのこと、しっかり見ていてあげてくださいませ!」

 

パジャマ「いや、だから…あいつ俺のことトレーナーだと思って…」

 

メジロマックイーン「トレーナーさん!チケットさんのこと!しっかりと見ていてあげてくださいませ!!」

 

パジャマ「……」

 

メジロマックイーン「もういいですわ。こういう時は、チームメイトとして支えてあげなくてはいけません。いいですかゴルシ?何気ない会話であの子をフォローして差し上げましょう。」

 

ゴールドシップ「レースのことは言わずに?あぁ、日常会話であえてメンタルを癒してあげるってこと?もうしょうがないな、分かったよ。」

 

ウイニングチケットの励まし作戦を開始した。

 

………

 

ウイニングチケット「うぅ、うぅ…」

 

ゴールドシップ「いやー、今日も暑いねチケゾー?ところでお前レースボロ負けしたは。」

 

メジロマックイーン「あなた何を考えてますの!ド直球じゃありませんか!さっきの話あなた聞いていました?」

 

ウイニングチケット「…」

 

ゴールドシップ「でもさぁ、皐月賞で1着にはなれなかったけど、日本ダービーには出れることになったんだろう?なんでそんなヘコんでんだよ?次勝てばいいじゃん。」

 

メジロマックイーン「チケットさんにとってはそんな単純なことではないのですよ。そんなことよりも、今日はダービーの公開トレーニング。たくさんのカメラマンの前でしっかりとした動きを見せないといけませんわよ。」

 

ウイニングチケット「あ、しょっか、今日だったんだ。やべぇ、めっちゃ出たくない…」

 

ゴールドシップ「なんなら私がお前の代わりに出てやろうか?私モノマネ得意だからね~。めめめめめめメロンパフェもお忘れれなく~」

 

メジロマックイーン「もしかしてそれ私の真似です?私メロンパフェなんて1回も言ったことありません。」

 

ゴールドシップ「嘘つけいお前!何回も言ってるじゃんお前!」

 

ウイニングチケット「私の代わりか…」

 

パジャマ「公開トレーニングだけはしっかり出てくるような、チケゾー。」

 

………

 

そしてダービー出走者が集められて公開トレーニングが始まった。

 

記者A「注目は"BNW"の3人だな。特に『皐月賞』を勝ったナリタタイシンには期待だよ。」

 

記者B「ビワハヤヒデだって、負けてなかったぞ。ここでさらに調子を上げてくるだろうな。」

 

記者A「さあ、次はウイニングチケットだ。」

 

進行『大きな期待を寄せられた"BNW"の1人、ウイニングチケットの入場で…す?』

 

パジャマ「!?」

 

ライスシャワー「ど、ど、どうも。ウウウ…ウイニングチケットですっ!」

 

ナリタタイシン「なんか今日のチケットおかしくない?小柄な感じがして。」

 

パジャマ「お前はあれがチケゾーに見えるのか?」

 

ナリタタイシン「何言ってるのよ?どっからどう見てもチケットに…」

 

ビワハヤヒデ「見えないわよ!ごめんなさい、タイシンたまにおかしなこと言うの。」

 

パジャマ「そ、そうか。それよりチケゾーはどこに行ったんだよ?」

 

ビワハヤヒデ「知らないわよ。探してくる、行くわよタイシン!」

 

………

 

とりあえずライスシャワーから事情を聞くことにした。

 

パジャマ「おいライス、お前何やってんだよ?チケゾーはどうした?」

 

ライスシャワー「ライスね、頼まれたんだよ。『どうしても私の代わりに出てくれて』って。見事な変装だっただろう?みんな騙されてやんの。」

 

パジャマ「いや騙されてねぇよ。みんな絶句してたわ。」

 

ライスシャワー「おいマジかよ。通りでみんな、鳩が豆鉄砲を食ったような顔してると思ったよ。変装がバレたか…」

 

パジャマ「変装してねぇじゃねぇかよ!変装するならもっと少しちゃんとやれよ。」

 

ライスシャワー「え?」ガーン

 

………

 

同時刻のタイシンたちは…

 

ナリタタイシン「ここにいたのかチケット!影武者には驚いたよ…でも私は騙されない。」

 

ビワハヤヒデ「いや、がっつり騙されていたじゃない!ってかあんた以外みんな気づいてたわよ。」

 

ウイニングチケット「今の私じゃ…ダービーに出る資格なんかねぇよ。この前の試合走って分かったんだよ…私クソ弱ぇって…」

 

ビワハヤヒデ「そうねクソ弱かったわ。走り方が昔と変わってないもの。」

 

ナリタタイシン「ちょっとハヤヒデ黙ってて。あんた正直すぎる。」

 

ウイニングチケット「こんな私がダービーに出たって恥かくだけ…」

 

ビワハヤヒデ「そうね、恥かく前に、ここから去りなさい。」

 

ナリタタイシン「ちょっとハヤヒデ黙ってて!」

 

ウイニングチケット「私にはダービーには出ない。」

 

ナリタタイシン「先代トレーナーとの約束はどうするのよ!私たち3人一緒にダービーに出ないと約束を守ったことにはならないわよ!あんたもそのために今まで走ってきたんでしょうが!」

 

ウイニングチケット「ただ出たって意味ねぇよ!今の私じゃ1着はなれないよ。なれないなら出たって意味ねぇよ。だから私は出ない!逃げる!!」

 

ナリタタイシン「あんたがそんな奴だとは思わなかったわ!もう、がっかり!クソ野郎!グジグジグジグジ言いがって…掃きだめみたいな場所でずっと泣いていればいいわよ。もうばか!馬鹿!バーカ!あと最後に言っとくけど…じじいが1番期待したのは…悔しいけどチケット!あんただったんだぞ!今のそんなヘタレた姿見たら、じじいはどう思うだろうな?」

 

タッタッタッ

 

ビワハヤヒデ「…ドサクサに紛れて、タイシンもじじいって言いやがった。本当にもう…。あ、そうそう。私からも一言…どうして私たちに勝てないか教えてあげるわ。チケゾーが弱くなったんじゃない、私たちが強くなったのよ。…じゃあね。」スタスタ

 

ウイニングチケット「くそ、あいつら言いたい放題言いやがって…私だって強くなりたいよ。…でも、もうじじいはいないんだよ、私1人じゃ…限界なんだよ…」

 

ーーー

 

夜になり、ひとりトレーナー室でウイニングチケットのことを考える。思い出すのは前にマックイーンに言われた台詞…

 

メジロマックイーン『トレーナーさん、チケットさんの事をしっかり見てあげてくださいませ。』

 

 

パジャマ「…。何とかしないとダメだよなぁ…このままじゃ…」

 

………

 

その後もチケゾーはダービーに出るか悩み苦しんでいた。

 

ウイニングチケット「いやぁ~、もうダメだね。ダービーに出たって勝てないよ。やっぱりもう諦め…」

 

パジャマ「勝てる。俺が何とかしてやる…お前のトレーナーだからな。」

 

ウイニングチケット「ふざけんな!お前はトレーナーじゃねぇ言ってるだろうが!私のトレーナーはじじいだけなんだよ!でもそのじじいが死んで、私は…」

 

パジャマ「お前が思ってなくても、俺はお前のトレーナーなんだよ!」

 

ウイニングチケット「そんなの知ってるわい!でもな…形だけ作ったって私の心は騙されないぞ!」

 

パジャマ「一回騙されたと思って俺の指導を受けてくれよ!別にトレーナーだと思わなくてもいいから!じゃないとお前このままじゃ本当に負けるぞ。最低最悪のダービー走りてぇのかよ?」

 

ウイニングチケット「うるさい、私はじじいのおかげで強くなれたんだよ!じじいの教えてここまでやってこれたんだ。私の調子が悪い時は、いつも教えてくれた。どこが悪いのか、何がいけないのか、いつもいつもいつもいつも………真っ先に教えてくれた!教えてくれたんだよ!!」

 

パジャマ「でもそのトレーナーは…もういないじゃないか。」

 

ウイニングチケット「………。そうだよ…いないよ…。いないから…どうしていいか分かんないんだよ!」

 

パジャマ「お前は先代トレーナーとの夢のために走ってるんだろう?夢を実現させるために、俺の言うことを聞いてくれ。………頼む。」

 

ウイニングチケット「頭まで下げて…何でお前そこまでするんだよ?お前には関係…ないだろ?」

 

パジャマ「関係あるよ…俺はお前の…トレーナーなんだから。」

 

ウイニングチケット「…分かったよ!じゃあ約束しろ!もしダービーで1着取れなかったら…じじいの墓の前でお前切腹して死ねよな!だったら良いよ~!」

 

パジャマ「え?」

 

たづな「何言ってるんですか?パジャマさんは借金があるんですよ? 全額返していただかないと…今死なれては困ります!」

 

パジャマ「たづなさん?いつからいたんですか?」

 

たづな「私はいつもいますよ。だって私は監視役ですから。」

 

パジャマ「は?え?怖っ!」

 

ーーー

 

1週間後、ウイニングチケットのダービー当日となった。

 

メジロマックイーン「この1週間頑張りましたね。もし負けてしまったらパジャマトレーナーさんのことを殺してしまっても構わないので、全力で走ってくださいね。」

 

ゴールドシップ「パジャマはすげぇよな。負けたら切腹するんでしょ?いやー、私一度でいいから人が死ぬとこ見てみたいからさ…チケットをお願い、わざと負けて。」

 

パジャマ「おい、ゴールドシップ余計なこと言うな!」

 

ライスシャワー「あ、あの…ライスはウイニングチケットの代わりに走らせていただけないのでしょうか?」

 

メジロマックイーン「ライスさん、影武者の下りも終わりました。 あなたは観客席で見てください。」

 

ウイニングチケット「あぁ、もう!うるせぇよお前ら!緊張感ねぇな!これからダービーなんだぞ!おーやばい、蕁麻疹が出てきた!やばい滑舌が悪くなる…」

 

ゴールドシップ「お前滑舌ずっと悪いじゃねぇか!お前が良くなった事一度もねぇよ!」

 

メジロマックイーン「さあ、早く行ってらっしゃい。ダービーはあなたの夢舞台でしょう。」

 

ウイニングチケット「おぅ!じゃ行ってくるにゃ!」

 

そう言うとチケゾーは地下バ道を通り、ターフへと向かった。

 

ーーー

 

実況『それぞれの思いを胸に、優駿たちがダービーに挑みます。

歴史に刻むのはどのウマ娘(男)か?

全員がゲートに収まりました。

東京優駿・日本ダービー今……スタートです!』

 

………

 

実況『さあ、早くも先頭が第3コーナーへと差し切りかかった!

注目の"BNW"はこの後どのようなレースを繰り広げるのでしょうか?』

 

ウイニングチケット「(ちっちゃい頃から夢見て、ハヤヒデとタイシンと仲間になって、じじいに出会って…そして今、私はダービーを走ってる!じじい見てる?私ダービー走ってるよ!3人ともここにいるよ!一緒に走ってるよ!)」

 

ーーー

 

先代トレーナー『やっぱりレースに携わる者として勝ちたかったですよ。最高の栄誉と言われるダービーで…』

 

先代トレーナー『いや俺はもう限界だよ。最後の意地で今日まで頑張ってきたが…これで完全にガス欠だ。…お前たちの活躍を期待しているぞ!』

 

ーーー

 

ウイニングチケット「(勝ちたい…一生に一度しか走れないダービーで!ずっと憧れてきたダービーで!!私達のダービーでっ!!)」

 

ウイニングチケット「もってよ、私の脚ぃぃ!!」

 

ダンッ

 

実況『なんと直線手前でウイニングチケットが仕掛けたっ!!

インコースをついて、一気に前へ出た!』

 

ビワハヤヒデ「はぁぁぁ!」

 

ナリタタイシン「負けて…たまるかぁぁ!」

 

実況『ビワハヤヒデ、ナリタタイシンも一気に差を詰める!

やはりこの3人だ、"BNW"の3人!

レースを制するのは誰だ!?』

 

BNW『やぁぁぁ(はぁぁぁ)(うおぉぉぉ)!!!』

 

ウイニングチケット「ダービーで勝つのは…この私だ!」

 

実況『抜けた抜けた!

先頭はウイニングチケット!

ウイニングチケット!

ウイニングチケットが先頭で、今ゴール!

ダービーを制したのはウイニングチケットだ!』

 

ウイニングチケット「はぁ…はぁ…はぁ…ん?」

 

ナリタタイシン「…」くいっくいっ

 

ウイニングチケット「?」くるっ

 

観客『チケゾー!チケゾー!チケゾー!』

 

ウイニングチケット「ー!」ぱあっ

 

ーーー

 

ウイニングチケット「うううぅ……ダービー…私……ダービーを…ダービーを…うううぅ…」

 

ナリタタイシン「はぁ…あんた強くなりすぎでしょ…」

 

ビワハヤヒデ「ドーピングよドーピング!不正よ!もう一度やり直しましょう、このレースは無効…」

 

ウイニングチケット「うぅ…私…ダービー…うううぅ…」

 

ビワハヤヒデ「ダメだ、全然聞いてないわ。」

 

ウイニングチケット「2人とも応援してくれてありがとう!最高のレースだったよ、最高のダービーだったよ!」

 

ナリタタイシン「応援なんかしてないわよ、私たちはあんたの敵だったのよ?って今のあんたに言っても無駄何だろうね。」

 

ウイニングチケット「もちろん!」

 

ナリタタイシン「もちろんじゃないわよ!言ってることわかってるじゃん!」

 

ウイニングチケット「これからも3人で走り続けるような!ヨーシ!目指せ、ダービーのその先ぃ…ってその先ってあるの?」

 

ビワハヤヒデ「あるわよ、何言ってるのよ!」

 

ナリタタイシン「ダービーが最後のレースじゃないんだから。その先もずっとレースはあるから、気を引き締めなさいよ!」

 

ウイニングチケット「おぉ、そうか!よし、じゃあ私インタビュー行ってくるね!じゃあね♪」

 

観客『ワァァァーッ!』

 

インタビュアー『それでは、見事ダービーを制しました、ウイニングチケットさんです!』

 

ウイニングチケット「ぐへへへ…、民衆は喜んどるな!おぅ、ありがとなありがとな!ぐへへ…」

 

インタビュアー『"BNW"と言われるライバルとの戦いで、勝利をものにしたカギは何だったのでしょうか?』

 

ウイニングチケット「えーとね、ダービーに対する思いと友達と書いてライバルとの約束に最高の形で答えたいって想い、それから…私をずっと支えてくれたトレーナーさん…2人のトレーナーさんのおかげです! じじい見てる?私ダービーで優勝したよ!新しいトレーナーのお陰で………私、ダービーで1着取れたよ!」

 

観客『ワアアアァァァァ!!』

 

ゴールドシップ「おい、パジャマ言われてるぞ!」

 

パジャマ「…」

 

ゴールドシップ「ってお前泣いてんじゃねぇよ!気持ち悪いな!何だよお前早く切腹しろよ、約束通り!」

 

メジロマックイーン「優勝したんですから切腹する必要はありませんわよ!パジャマトレーナーも泣いてる場合ではございませんよ。ほら、ちゃんと見てあげて下さいませ。担当した子の…晴れ舞台なんですから!」

 

観客『チケゾー!チケゾー!』

 

インタビュアー『それでは最後にダービーを勝利したお気持ちを一言。』

 

ウイニングチケット「私がこの最高のダービーを勝利した…ウイニングチケットです!」

 

パチパチパチパチ

 

 

9話 及び『ウイニングチケット編』………完

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