宇宙(そら)に掲ぐ旗の名は   作:c.m.

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※2022/12/13誤字修正。
 カド=フックベルグさま、ブドウ糖さま、ご報告ありがとうございます!


34 ザクⅡ、北米に立つ

 ジオン公国軍の月面からの戦略爆撃(マスドライバーによる岩塊の射出)は、南極条約締結直後こそ突撃機動軍の降下地点を特定させない──更に言えば連邦地上軍の戦力集中を嫌った公国軍が、敵兵力を分散ないしは()()させる目的があった──ために、散発的かつ広範囲なものであった。

 しかし、いざ降下作戦が実施されるとなれば、何としてでも制さねばならないのは制空権の確保と、それに伴う敵航空兵力の無力化だ。

 田を耕すが如く北米の地上基地は降下予定地点周辺を入念に小隕石群が爆撃し、航空防衛網を沈黙。

 欧州での第一次降下作戦とほぼ同時期、北米の地へと降り立った突撃機動軍は無傷と言って差し支えない状態であり、圧制からの解放と独立の志高い意気軒高の公国将兵は祖国への献身を証明すべく奮起し、自らの勲を汚すまいと全霊を以て連邦地上軍と矛を交えた。

 

 だが、その中でも異様な士気の高さを誇るMS(モビルスーツ)隊の活躍は、純粋な正義感からだけではなかった。

 一週間戦争で宇宙軍が各ラグランジュ・ポイントで、或いはルウムやルナツーで赫々たる戦果を挙げる中、宇宙軍MS(モビルスーツ)隊に続く形で連邦駐屯軍の制圧に駆り出され、一定の成果を挙げた地上軍諸兵科と異なり、地上軍のMS(モビルスーツ)隊は檜舞台に立つことを許されなかったのだ。

 

 作戦に参加した地上軍は語る。連邦駐屯軍は精鋭などとは程遠い二線級の部隊……自警団と無辜の民を制圧するには十分であっても、対等な戦いには足りぬ装備と物資であったと。

 宇宙軍MS(モビルスーツ)隊のみの投入で十分であり、敢えて中長期戦への備えとして、重力下での戦闘を想定した訓練に専念していた地上軍MS(モビルスーツ)隊を温存した上層部の判断は、決して間違いではなかったのだと。

 

 ……確かに、その理屈は地上軍MS(モビルスーツ)隊も理解している。

 

 部隊長や将官こそ戦勝祝賀会への参加を許されたものの、地上軍で十字勲章組に加わった者はランバ・ラルのようなゲリラ屋……要は特殊部隊員か、作戦指導に当たった参謀を除けば皆無と言って良い。

 駐屯軍との開戦の熱は、敵兵の呆気ない降伏の前に冷や水を浴びせられ、地上軍の大多数が勲功を得る機会を失ってしまったのだから当然だろうし、軍人としては味方に被害がなかったことを素直に喜ぶべきなのだ。

 

 自分達の栄光でなく、無辜の民の為に戦うべきだと。

 血肉湧き踊る闘争でなく、職業軍人らしい合理性でもって職務をこなすべきだと。

 

 理性でそうした理屈を理解していても、理屈はあくまでも理屈に過ぎず、感情ばかりはどうにもならない。

 軍人として培った自制心と国家への忠誠が感情を曝け出すことを抑えつつも、公国─連邦間の講和交渉が成立すれば、地上軍MS(モビルスーツ)隊が檜舞台に立つことはないと誰もが理解し、忸怩たる思いを抱いていた。

 

 勿論、だからといって地上軍MS(モビルスーツ)隊も本気で継戦を望んでいた訳ではなかった。

 

 機会がなかったことを惜しむ気持ちはあったとしても。

 たとえ本当にあるのかも分からない、地球侵攻を想定した『来るべき日』まで続けてきた地獄のような訓練と流した血の汗が無駄になるのだとしても。

 無二の平和を得られるのなら、彼らはそれを享受し、同志戦友と肩を叩き、暴虐と圧政の鎖から解き放たれたことを受け入れ、歓喜の涙を流しただろう。

 自分達は殺し屋でも殺戮機械でもない。国家の防人として、乱世に備えるべき平時の準備物として、誇りを抱いて次の世代へのバトンを繋いだことだろう。

 

 だが──そうはならなかった。

 

“皮肉だな──ああ、本当に皮肉な話だ”

 

 戦争など起きるべきでないと、継戦などという未来は訪れるべきでなかったと理解しながら、同時に晴れ舞台の到来と武人の高揚を、イアン・グレーデン中尉は抑えきれない。

 重力下戦闘を想定したMS開発を協議し続けた日々……。来る日も来る日も操縦桿を握り締め、グレーデンは訓練教官として教え子達と切磋琢磨してきた。

 そして今、鬱屈と気概の双方を抱えながら進んできた努力が日の目を見ようとしている。

 

“本物の空の下、本物の陽を浴び、本物の重力というものを総身に感じ取っている!”

 

 コロニー内の重力は軸を中心にして回転し、発生させた遠心力によって疑似的に再現する構造上の制約から、1Gよりゼロコンマ低く設定されている。知識でしか知らなかった、その僅かな差が肉体に与える倦怠感すら今のグレーデンには心地良い。

 本物の大気と重力の葛藤は、疑似再現されたコロニーとは勝手が違う。今日という日まで入念に調整を重ねた陸戦仕様ザクⅡが大地に着地した瞬間、衝撃を逃がす挙動一つで手応えの違和感を実感し、一拍遅れてシートベルトが深く食い込んだ。

 

“これが……この食い違いこそが!”

 

 何もかも、どれだけ少ない誤差であったとしても、そこに訓練と実戦の違いを覚え、無尽蔵にアドレナリンが吹き出してくる。

 だが、誤差に反応した肉体に染み込ませた動作に乱れも遅れもない。ばかりか、かつてない程淀みなくグレーデンは機体を操り、戦闘態勢へと移行していた。

 

 ザクⅡ──北米に立つ。

 

 遠き者は音に聞け、近き者は寄って見よとばかり、陽光に反射した緑灰色の機体が存在を示しつつも、次の瞬間にはザクマシンガンが火を噴き、連邦軍の主力戦車たる六一式を玩具のように吹き飛ばす。

 集束率の低いマシンガンでありながら、単射で遠距離の目標を屠るその技量はグレーデンの突出した力量を物語っていたが、当然これは始まりに過ぎない。

 開幕の号砲──景気づけとしても、部下らに発破をかける意味でも上々の仕上がりだと満足しつつ、ザクⅡがその巨体に似合わぬ機敏かつ目を見張るような速度で大地を駆ける。

 

「『各機! ソンネン教官殿の薫陶を忘れてないな!?』」

 

 二機以上が同時に、三秒以上足を止めてはならないという対戦車戦闘の大原則。模擬弾のペイントに塗れ、啜った泥の味を思い出せと叫ぶグレーデンに呼応するように全員のフットペダルが踏み込まれ、MS(モビルスーツ)は縦横無尽に大地を蹴った。

 

 

     ◇

 

 

「宇宙人共が、いい気になりやがって!!」

 

 宇宙移民(スペースノイド)を指す差別語と呪詛は、今口にした男だけでなく最前線で火線を交える連邦地上軍戦車兵と歩兵の総意だったことだろう。

 元は同じ母なる地球を故郷とし、一方的に宇宙へと追い立てておきながら、まるで未知の領域から踏み込んできた侵略者(エイリアン)の如く扱うことを非難する者や、同情を寄せる連邦軍人は今や希少種と言っていい。

 そうした連中の殆どが、先の『捕虜交換』で連邦を離れたのだから当然だ。

 今や連邦軍に留まっている大多数は特権意識を有し、それを当然と思い込む地球居住者(アースノイド)が過半数を占めており、彼らにしてみれば敵は()()()()星を簒奪しにやってきた侵略者に他ならないし、そうした身勝手な理屈を疑いもしていない。

 

 何故なら、ほら見てみるが良い。あの異様なロボットを。

 生命体が身を包んだような流線型のフォルムと言い、悪鬼を思わせる一つ目と言い、同じ人間のセンスとは到底思えない。たとえ姿かたちが同じでも、脳味噌のつくりは間違いなく別だろうと偏見と差別に満ちた感想を抱くが、余人からすればそれらは全て負け犬の遠吠えと映るだろう。

 

 レーダーが使い物にならないことは知っていた。目視で捉え、戦う有視界戦闘を強いてくることを弁え、前時代的なカモフラージュで対抗してもいた。だというのに! どうしてこうも一方的な結果が残る!? 

 

“目が良いだけじゃねぇ……間違いなく宇宙人共はレーダーとは『別の目』を持ってやがる!”

 

 男の予測は正しく、降下したザクⅡは熱源探知(サーマルセンサー)音響解析(パッシブソナー)と言った各種探知・照合機器を装備した装甲車と連携し、敵座標を正しく認識した上で連邦軍機甲部隊の掃討を遂行していた。

 ミノフスキー粒子の影響が何処までの物か、そもそもどういった理屈かさえ現段階では未知数の連邦軍にしてみれば、反則以外の何物でもないだろう。

 

 そう──現段階、現時点において最前線に送られた連邦軍将兵は、公国軍の持つ手札(カード)を暴く為の捨て札であり『出来る限り粘って死ね』と言外に告げられ、配置された雑兵に過ぎない。

 しかし、前線で戦う将兵にそんな上層部の理屈は関係なかった。

 宇宙というゴミ箱に棄てた劣等(スペースノイド)が、自分達(アースノイド)を追い込むなど有ってはならない。奴隷(ゴミ)奴隷(ゴミ)らしく、死ぬまで自分達に搾り取られて死ねばいい。それが植民地(コロニー)本土(ちきゅう)の差であり、ルールであった筈だろうと……。

 その傲慢を今日という日まで抱き続けてきた搾取者(アースノイド)が、逆襲の牙にかかって喰い千切られる。

 

“認めたくねぇが、こいつら勉強してやがる……俺らはあのロボットの装甲の厚さも、弱点も知らねえってのに!”

 

 準備の差は如何ともし難い結果として表れる。如何に連邦軍が誇る傑作機にして主力戦車と言えど、六一式戦車はあくまで『既存』の兵器であり、開戦前から各サイドにも少数ながら配備されていた為に、六一式のどの射角、どの距離がザクⅡの有効打になり得るかをMS(モビルスーツ)隊は熟知していた。

 万が一命中するとしても、決して有効射足り得ない位置に調整し、砲弾を逸らす術さえ熟練パイロットは心得ていたが、その上で彼らMS(モビルスーツ)隊は連邦の機甲部隊に全く油断していない。

 何故なら彼らは、今日という日まで幾度も()()()()()

 

 ──信じられない。馬鹿な、有り得ないという思いを、幾度となく捩じ伏せられた。

 

 一週間戦争で証明したように、MS(モビルスーツ)とはミノフスキー粒子によって有視界戦闘を敵に強いた上で『既存兵器』を駆逐する為に生み出された『新兵器』である。

 宇宙艦艇を、戦闘機を、そして当然ながら戦車さえ……ありとあらゆる兵器を一方的に破壊する為に生み出された筈だ。

 宇宙戦闘は言うまでもなく、地上戦でもそのコンセプトは変わらない。

 人間の徒歩に相当するレベルでも時速八〇キロ。不整地でさえ六〇キロ以上を確保する走破性に加え、最高で一八〇キロもの疾走を可能とする脚力。

 小型化熱核反応炉を動力として駆動する以上、燃料切れなど期待するだけ無駄であり、足を止めるとすれば脚部パーツの損耗による交換を待つか、当たり前だが破壊するしか手段はない。

 加え、その装甲は堅牢という言葉ですら過少であり、仮に連邦軍に航空戦を許したとしても、戦闘機の機銃による破壊は不可能。

 レーダーを封殺している以上、有効打を与え得るミサイルを高速移動するMS(モビルスーツ)に命中させることは至難の技であったし、爆撃による面制圧に関しても事前に制空権を取ることで無効化している。

 

 故に、攻撃力、防御力、速度……あらゆる面で突出したこの兵器を前に六一式など玩具も同然。

 有効射程、貫通能力、発射速度、六一式の性能は全て数値化され、割り出されており、それを踏まえた上で設計されたMS(モビルスーツ)を相手取るなど不可能だろうと……その伸び切った天狗の鼻は、同胞(はらから)たる筈の公国機甲部隊に……否、一人の男によってへし折られた。

 

 その男こそ、突撃機動軍少佐兼戦技教官──デメジエール・ソンネン。

 

 MS(モビルスーツ)操縦士(パイロット)の適性を有さなかった為に戦車という既存兵器に取り残され、多くの戦車乗りがMS(モビルスーツ)操縦士(パイロット)に転向していく中、しかしソンネンはその傑出した戦車兵としての技量を買われ、対MS(モビルスーツ)戦の研究をイワンから直々に命じられ、これを受けた経緯を持つ。

 

 有視界戦特有の地形を遮蔽物とした隠蔽技術。静止したMS(モビルスーツ)など固定砲台に過ぎぬと見切り、これを各個撃破すべくザクⅡの弱点たるバックパック(ランドセル)を射抜く最短時間をソンネンは割り出した。

 

 二機以上が三秒以上足を止めてはならないという対戦車戦の原則は、ソンネンとの模擬戦闘訓練によってMS(モビルスーツ)操縦士(パイロット)の胸に刻まれたが、それを経て尚、ソンネンの駆る戦車は幾度となく地上軍MS(モビルスーツ)隊に土をつけ、その自尊心を砕いてきた。

 

 だからこそMS(モビルスーツ)という新兵器を駆る者達は戦車を、戦車兵を侮らない。今の自分達が連邦軍にとって未知の敵で居られたとしても、いつかその手札は暴かれる。

 その時こそ、ソンネンという男と同じ壁が自分達の前に立ちはだかるだろうと弁えるが故に、ここで経験を積む重要性を理解していた。

 

 そして、この北米のみならず、地球に降り立つ地上軍MS(モビルスーツ)隊は常にソンネンへの敬意を忘れず、終戦後も常に彼を師と仰ぐことを止めなかった。

 

 我らが教官殿──この独立戦争を生き残った地上軍将兵は、最上の敬意を込めてデメジエール・ソンネンをこのように呼び慕い、階級が上であっても敬礼を先に捧げ続けた。

 公国軍地上戦の軍事教本にソンネンの名が消えることはなく、この独立戦争にあって唯一、終戦まで前線勤務を経験することのないまま『軍事的貢献大なり』と認められ、十字勲章組の列に加わった彼は、永久に戦車戦の父として語り継がれることになる。

 

 ──そして、今まさに『ソンネンの弟子』達は磨かれた牙を振るい、この北米の大地から機甲部隊を一掃していく。

 その中には、正史では連邦軍将校として、連邦の象徴たるMS(モビルスーツ)──〈ガンダム〉パイロットの一人となる筈であった、シロー・アマダの姿も見られた。

 

『もう四輌か! アマダ少尉! あと一輌で〈三級〉は確実だが、そう急くな! 君なら戦争が終わるまでに、首にも勲章がぶら下がるだろう!』

「『はい! 終戦までお供させていただきます!』」

 

 第二次降下作戦における主力部隊、第二地上機動師団の中でもグレーデンが直接率いる最精鋭に喰らいくばかりか、将来的には己と伍するだろうと目をかけた新品少尉、シロー・アマダの若さ溢れる力強い返しを気に入り、グレーデンは頼もしい限りだと思いつつも、この分ではシローが自ら隊を率いるのはすぐだろうと、手元から離れることを惜しく感じた。

 

 余談だが、三級というのはジオン十字勲章の等級区分で、一から三級まで存在する。

 本来十字勲章は、公国軍の中でも特に抜きん出た戦功章であり、等級は存在していなかった。しかし、連邦との継戦によって中長期化が決定した為、余りに他の勲章と隔たりが大きく、授与条件の厳しい十字勲章の叙勲規定を変更して等級化し、勲章自体のデザインも簡略化したものに変更された。

 従来(旧式)の十字勲章は二級に位置していたが、特に戦功著しい軍人には一級が自動追贈され、最多撃沈王(トップ・シップエース)たるイワンも一級を取得している。

 グレーデンが口にした三級は最も下位の等級でこそあったが、それでも共同戦果でなく単独での戦車五輌撃破というエース級の働きで『確実』と評する辺り、たとえ三級であってもこの勲章を得ることが大変な栄誉であることが窺い知れよう。

 また『首からぶら下げる』というのは、一級ジオン十字勲章を指しており、こちらは胸に佩用するのでなく、首から下げる中綬式のものであるからだ。

 

 グレーデンがどれだけシローに期待しているかは、シロー自身にも深く伝わり、今日という日まで自らを鍛えてくれた教官からの信頼に応えようと、一層奮起して操縦桿を握る手に力を込めた。

 

“……もし、ジオンが非道であったなら、連邦と逆でなかったら、俺はここに居なかっただろうな”

 

 もしもジオンが今の地球居住者(アースノイド)がそうしているように、スペースノイドこそ選ばれた民だと叫ぶような、特権階級を振りかざすような国家だったなら。

 自分達の利益の、権益の為だけに他を害し、虐げることを良しとするような国家方針を取っていたなら、きっと自分は連邦の側に立っていただろうと……。

 そんな『妄想』を馬鹿馬鹿しいと笑いながら、シローは過去を振り返るだけの余裕を、この戦いで見せていた。

 

『流石はガルマ殿下と轡を並べた〈暁の英雄〉様なだけのことはあるな! 俺らのケツも守ってくれよ!』

「『誰も死なせないさ! 絶対に!』」

 

 短距離での指向性通信に勢い良く返し、シローは任官前から御大層な経歴が出来てしまった我が身の過去を苦笑する。

 ガルマとの接点こそほぼなかったものの、齢は二三と同年齢の同期であったシローは、入校時点で地上軍の道を志望していたこともあり、『暁の蜂起』でも数少ない戦車を率いて連邦軍駐屯部隊と砲火を交え、共同戦果とはいえ二輌の敵戦車を撃破した経験を有している。

 北米に大規模展開した地上軍の多くが今日を初陣で飾る中、戦意旺盛ながらも腰の据わった声音や、周囲を見渡せるだけの視野の広さを暁の蜂起での実戦経験の中で培われており、そうした部分が一歩抜きんでた戦果(スコア)を生んでいた。

 

“そうさ、もう誰も、俺の前で死なすもんか!”

 

 暁の蜂起で散っていった戦友達の為にも、必ず一人でも多く生きて故郷に返す。あの日、あの夜の経験を、失った戦友達の分得た生存の原則をシローは決して忘れない。

 

“慌てるな、出過ぎるな、仲間の分も周りを見て、敵の動きを見極めろ!”

 

 強く機体を前に進めながらも、シロー・アマダはその生存術に反することをしなかった。

 

 だからこそ、その生存術が──否、生存本能が鳴らす警鐘に最も敏感に反応するのも当然だった。

 

「────!?」

 

 

     ◇

 

 

“終わるのか、ここで!? こんな様で!?”

 

 地球を信仰するなら存分に聖地の土の味を舐めていろと捩じ伏せるつもりであった相手に、一矢報いることも出来ないまま自分達が泥の棺桶に沈む……。

 既に逝った多くの戦友らと同じように、自分もまた戦車という鋼鉄の棺の中で引き裂かれ、焼かれるのかと死神の陰に背筋を凍らせていたが……。

 

「来てくれたか……!!」

 

 遅ぇぞ! と普段なら叩く憎まれ口さえ今この時は出てこない。口から零れた生涯でも数少ない純粋な感謝と歓喜に奮い立ったのは、口にした連邦の戦車兵だけでなく、絶望の中に活路を見出した全ての連邦軍人たちだったことだろう。

 

 遥か彼方からやってきたのは、二足歩行のロボットすら霞んで見える圧倒的な武威の象徴。それは正しく連邦軍の誇る陸の要塞であり、戦艦であり、空母でもある大地の支配者。

 連邦地上軍の金食い虫と揶揄されながら、同時にその絶大な武力で以って統一政権誕生以降、数多の反連邦組織に引導を渡してきた陸戦艇。その名を──

 

 

     ◇

 

 

「──〈ビッグトレー〉か!?」

 

 陸の王者の称号を欲しい侭にし、連邦地上軍の武威の象徴として君臨し続けた戦略兵器。

 それは、それだけは駐留軍との戦いでも、いいや、今日という日まで誰も相手にしたことはない。『元』連邦軍人であった公国軍将兵でさえ、味方であったことは有っても敵であったことはない。

 だからこそその巨体、その威容を目の当たりにした時の衝撃は二足歩行のロボットが迫るという現実離れした光景に度肝を抜かれた連邦将兵以上だろう。

 全長二一五メートル、全高に至っては八五メートルという異常極まる巨体は『移動要塞』と称すべきものであり、事実その呼称は間違っていない。

 宇宙戦艦にも匹敵する圧倒的防御力を有したこの兵器は、司令部としての機能を有するばかりか、その上部には小型ながらも飛行甲板を備え、連絡機(ドラゴン・フライ)や武装ヘリ、垂直離着陸(VTOL)機までも搭載している。

 過去、連邦の腐敗と圧政から数多くの反政府勢力が蜂起したものの、連邦軍はその圧倒的武力で以って制空権を掌握し続け、地に縫い留めた敵勢力を徹底的に駆逐すべく生み出されたのが、このビッグトレーだ。

 ジオン側はマスドライバーによって空こそ塞いだが、地下に格納された兵器に関しては叩き切れる筈もなし。頃合いを見て這い出したのであろうビッグトレーは、この戦場に辿り着くまでに既に搭載した航空兵力を発進させており、ザクⅡを捕捉し迫っていた。

 ミサイルをはじめとした誘導兵器は直接標的を叩けずとも、足を止めさせることさえできれば十分。

 最大戦力たるビッグトレーがその主兵装である連装砲でMS(モビルスーツ)を排除する一助を担うことこそ、航空兵力の役割だったがMS(モビルスーツ)隊とてそこは理解していた。

 しかし、理解と現実的な対処は異なる。誰もが僅かに意識を、思考を、未知の強敵の前に鈍らせかけたその時──

 

『見上げるのが苦手でしたら、こっちが()()()()に上がれば良いだけってもんでしょう!』

 

 MS(モビルスーツ)に追随する、公国軍主力戦車〈マゼラ・アタック〉から届く指向性通信。それと同時、履帯から分離し、宙を舞う戦車の()()を目にした瞬間、連邦将兵はその姿を確認したビッグトレーの乗員さえ自身の目と『常識』を疑った。

 

「宇宙人共、頭沸いてんじゃねえのか……!?」

 

 叫んだ連邦将兵に応えられる者が居たならば、誰もが同意しただろう。

 戦車にしては、車高の高い奇抜な設計だとは思っていた。しかしそれは、地上戦に不慣れなスペースノイド故の無知がそうさせたに過ぎないと軽んじてもいたのだ。

 

 まさか、自分達が相手にしていた戦車が、履帯の付いた垂直離着陸(VTOL)機だったなどと、一体誰が想像できる!?

 

 こんなふざけ切った機構(ギミック)を搭載するぐらいなら、素直に戦車と垂直離着陸(VTOL)機を製造した方が良い。

 一体何の為に、こんな馬鹿げた設計を行う必要があったのかという話だが、ジオン側としてもこれには切実な問題があり、一つは人的資源の問題が挙げられる。

 ジオン側は当然ながら総人口が他コロニーより圧倒的に少なく、専門知識を有する装甲兵員の生存率向上に努めたかったということ。もう一つは──

 

“ああ、糞! そういうことか!!”

 

 戦車兵は気付く。自分達がビッグトレーの航空兵力を当てにしたように、ジオン側も航空兵力を可能な限り早急に展開したかったのだと。

 しかし、地球の大地に基地を有さない彼らには、マスドライバー攻撃という『大雑把』な手段以外、緒戦で打つ手はない。

 地上に降下すると同時、MS(モビルスーツ)と連携しつつ三次元的な戦闘を行うべく用意された兵器。大地に荒っぽく降ろされながらも衝撃をものともせず、即時展開可能な航空兵力を求めたが故の、履帯付き垂直離着陸(VTOL)機という回答だったのだ。

 

“冗談じゃねぇぞ!?”

 

 そして、その効果とコンセプトは忌々しいまでに絶大だ。

 何しろ一七五ミリ無反動砲という、戦車の主砲を搭載した航空機が、真上から叩きに来るのである。制空権を確保した上での運用を前提としたビッグトレーにしてみれば、MS(モビルスーツ)以上に悪夢めいた存在だった。

 

『各機! なんとしてでも近づけさせるなァ!!』

 

 司令部からの怒号を聴くまでもなく、連邦側の航空機も目標をマゼラ・アタックから分離した〈マゼラ・トップ〉に切り替えている。戦車としても運用できると言えば聞こえはいいが、多機能故に必ず何処かを削る必要はある。

 事実、マゼラ・トップは速度や旋回性能と言った航空機としての長所を活かし切ることは設計上出来ていない。戦車の主砲という超高火力を有するが故にウェイトが嵩んだことと、対戦車戦闘を想定しての分厚い装甲が、軽量高速という航空戦等の理念と真っ向から対立したが故の必然だったが……。

 

『──それを、想定していないとでも?』

 

 無反動砲から放たれたのは、通常の砲弾に非ず。ルウム戦役でイワンをはじめ、数多のシップ・エースが使用した対艦用炸裂弾であり、それは鳥撃ち用の散弾の如く弾けて散り、展開していた航空兵力を千々に裂いて撃墜し、空に蔓延る邪魔者を排除したマゼラ・トップ隊。

 斯様なに呆気ない結果に、航空兵力そのものに期待を抱いていたビッグトレーの乗員をはじめとした連邦地上軍将兵は絶望の色に顔を染めたが、これは必然でもあった。

 何しろ、航空機同士が有視界で鎬を削る格闘戦(ドッグファイト)などレーダー全盛期の宇宙世紀にあっては廃れて久しかったのだ。

 かつてイワンが黒い三連星相手に模擬戦を行った時ですら、オルテガがイワンを薬物中毒者扱いしたことからも、その技巧は訓練で最低限備えるものであったとしても、決して実践的とは言い難い。

 この時代の航空機戦は、如何に相手の誘導兵器を無効化しつつ、自身の誘導兵器を中てるかという点にシフトしていた。

 だからこそ、この蹂躙劇は先に語った通り『必然』である。

 目視での戦闘を想定し、互いに標的を捕捉し合う『至近距離』というマゼラ・トップの『散弾』が最大級の効果を発揮し得る土俵に誘い込まれた時点で、連邦の航空兵力は敗北という結末を強いられていたのだから。

 

 そして、外敵を排除したマゼラ・トップ隊は、その『主砲』をビッグトレーへと向けた。

 宇宙戦艦さえ引き裂ける、対艦用の弾頭を備えて。

 

「こんな馬鹿な、馬鹿な話があるかアァァァァァァぁっ…………!?」

 

 悪運凄まじく、航空兵力の全てが、そしてビッグトレーさえ沈んだ中にあってさえ生き残り続けた戦車兵が理不尽を前にして上げた絶叫。

 それもまた、名も知れぬMS(モビルスーツ)隊の一人によって、戦死という終止符を打たれて終わった。

 

 

     ◇

 

 

 何事も勝っている時は上手く進むが、負ける時には乱れるのが勝負ごとの常だとガルシアは理解していた。それは過去に力に酔い痴れ、一方的に銃剣を突きつけてきながら、今や蜘蛛の子を散らすように逃げ惑う羽目に陥った、連邦軍の姿からも明らかだろう。

 

“勢いはある。流れも出来ている。この分ならまず負けん”

 

 だが、負けないことと勝ち続けることは違うのだ。特に、見る者が見ている前だからこそ一切下手は打てない。

 

「閣下のご采配、副官として敬服の念に堪えません」

「ガルマ殿下からそれほどまでのお言葉を賜れましたこと、非才の身ながら嬉しくありますが、全ては我が方の技術的優位と事前準備あってのことに過ぎません」

 

 只の謙遜で済ませず、むしろこの勝ちを今後どう活かすか。これからどのように勝利を土台にして戦勝までの流れを組み立てて行くかが肝要なのだと、らしくもないことを承知してガルシアは嫌味にならないよう気を回しつつご高説をガルマに垂れる。

 ガルマの安全を確保する上で、北米侵攻軍の総指揮を執るガルシアの副官に宛がうのは自然な流れであったし、これが最も堅実だとは理解していた。

 だからこそ、この好機を逃す馬鹿はしない。ガルシア・ロメオという将軍がザビ家にとって将来も覚え愛でたい存在で居続ける為にも、労力を惜しむ訳には行かなかった。

 

“このお坊ちゃま殿下へのアピールは、戦後を考えればこれ以上ない投資だからな”

 

 しかし、下手な胡麻摺りなんぞして将官としてのガルシアが軽んじられるなど論外と言っていい。年季の入った将として、相手を口説くにもそれ相応の口説き文句というものがある。

 

「何よりもニューヤークの無血開城は、サスロ殿下の政治的手腕あってのもの。正面からの都市攻略を行っては、我が方にも相応の被害が出たばかりか民間人の血も多く流れたことでしょう」

 

 これはおべっかでなく事実である。サスロ機関の工作活動は戦前から入念に行われており、連邦政府にあって未だ引き籠もらず現地で活動を続ける文官らは郷土愛を培った骨太な連中か、主流に乗れず燻っている手合いのどちらかだ。

 そんな彼らに対して宇宙植民地(スペースコロニー)という商売相手を戦中も維持し続け、生命と財産を保証し、『戦勝後は』と頭に付いても、政治家としての社会的地位も確保し続けるとなれば、相手が断る理由は何処にもない。

 

“まあ、飴と鞭も全開だったがな”

 

 サスロが不敵な笑みで「あの美しい北米の景観が瓦礫の山となるのは忍びない……」などと勿体ぶって語った日には誰もが一瞬とはいえ息を詰まらせたし、後に一連の流れを知ったガルシアとて哀れを誘うものだったが、元より敵対関係にあるのだから交渉としては当然の内容でもある。

 だが、それを深くは語らずに「私は既定路線に従ったまでに過ぎないのだ」と肩を竦め、それ故に将官として出来る仕事を果たしつつ、教師役としてのアピールも欠かさない。

 

「北米は遠からず陥ちましょう。であれば、次に我々はどうすべきと心得ますかな?」

「そうですね……やはり兼ねてより研究していた海軍戦力の投入と拡充を重視すべきかと。この技術的優位と勝利を一過性にせず長期の安定を図るなら、敵の輸送網に少しでも打撃を与えつつ、経戦能力を削ぐのはどうでしょうか?」

「ほう? であれば、技術的に不足している我が方の海軍戦力が課題となりますな?」

「閣下もお人が悪い。その為に、敢えてマスドライバー攻撃を駆使して可能な限り鹵獲できる連邦海軍の兵力を北米に誘引させたのでありましょう?」

 

“満点だよ、賢しいガキめ”

 

 七〇か八〇点ぐらいに留まってくれれば、褒めそやしつつ上から物を言えたというのに、これでは台無しではないかと内心愚痴をこぼしながら、本心をおくびにも出さず満面の笑みで頷いて見せた。

 

「然り。見事な慧眼でございます」

「そう煽てないで下さい。小官の言は前もって海洋を疑似再現したリゾートコロニーで水陸両用MS(モビルスーツ)の研究を進めていることを聞き齧っていたからです。マスドライバー攻撃の誘引も、ヨーク長官のお話しを伺ったからに過ぎません」

 

 要はカンニングのようなものでしかないと正直にガルマが告白すれば、ガルシアは「それでも目の付け所は違いますよ」と今度はいじましい作り笑いでない、本心からの笑みを作ってみせた。

 小物らしいことであるが、己というものを弁えて相手を立てる若造なら、傍に置くのも悪い気はしないものだ。

 

“こいつらの存在さえなければな”

 

 ガルシア共々、万全の身辺警護を確約する為と派遣された親衛隊員に内心辟易しながらも、それを表情には出すまいと意識の外に切り離す。

 

“確かに優秀な護衛だとは認めるが、副官だろうが階級差があろうが、公王家の人間を僅かにでも軽んじるような真似をすれば、銃口を突きつけかねないのがこいつらだ”

 

 ザビ家に対する狂信的な忠誠心は、一歩間違えれば将官だろうとガルシアを敵と見做しかねない危うさがある。

 

“大して役にも立たぬ癖、他人様の芝生を土足で荒らしおってからに……”

 

 鼻持ちならないエリート連中はあくまでガルマの護衛と部隊の監督に努めており、第一線で活躍する機会は殆どない。中には職務熱心にローテーションを回し、MS(モビルスーツ)隊として轡を並べる親衛隊員もいたが、身辺警護を担う連中に関しては代り映えもしないから一層苛立つ。その上、いざ身を挺して護る場面が来たとしても、親衛隊はガルシアでなくガルマを優先するだろう。

 肉の盾にもなるか怪しい癖、でかい顔でしゃしゃり出てきた親衛隊は、ガルシアにとって敵も同然の存在だったが、彼らを意識から切り離そうとすればするほど、原因たるガルマの子守りが熱心になるのは皮肉な話でもあった。

 

“だがまぁ目障りなだけというだけな分、こいつらはマシ……ともかく問題は屍食鬼(グール)隊の連中よ”

 

 綱紀粛正のみを目的として設立された、公国軍唯一の督戦部隊。

 自軍の脱走兵や命令違反者の粛清を主任務としており、その設立理由も含め、公国軍内では上から下まで同胞喰らいや腐肉漁りと唾棄し、蛇蠍の如く嫌われている存在だ。

 その上、同じ総帥府の組織系統にありながら上位組織たる筈の親衛隊も含め、如何なる指揮下にも加わらないという絵に描いたような汚れ仕事部隊であった。

 

親衛隊の親玉(エギーユ・デラーズ)すら、公国軍の名誉を汚す不届きな連中だと公然と罵ったと聞くが、こればかりは同感だな”

 

 突撃機動軍の行儀の良さに関しては、平素では不品行を体現しているようなガルシアですら太鼓判を押せるほどで『こんな連中が居ては士気が下がる』とどの部隊からも北米侵攻軍総司令官たるガルシアに陳情が届いたほどだが、彼らは全地上軍に一定数配置するよう総帥府から通達があった以上、ガルシアにはどうしようもない。

 

“まあ、上が何を考えているかは理解できる”

 

 サイド3(ジオン)出身の将兵はともかく、先の一週間戦争を機に公国軍の旗下に加わった他サイド出身者が、訓練期間を終えて前線に加わった後に備えてのことに違いあるまい。

 

“『捕虜交換』で引き抜いた連中は、かつての敵とはいえ連邦軍で正規の訓練と教育を受けた一級品……サイド4(ムーア)出身者も自警団の質は旧ムンゾ防衛隊に比する練度ではあったからまだ使えるが……それ以外は民兵に毛が生えた程度のカスだ”

 

 当たり前だが、如何に戦いの基本が数だとしても、頭数だけ揃えたところで戦争に勝てる訳ではない。優れた装備とそれを扱えるだけの訓練をこなし、同志戦友との紐帯精神を備えつつ、窮地にあっても命令を遂行できるだけの胆力と忠誠心を備えることで、初めて最小の戦力単位たる『兵士』となる。

 ムンゾ防衛隊時代から公国軍人は常に対地球連邦を想定し、独立を勝ち取るのだという気概を負い、身命を賭してこの使命を達成すべく邁進してきた。

 ジオン主義(ジオニズム)などという宗教にかぶれずとも、職業軍人として最低限の自負を有するガルシアもまたその例に漏れず、今日まで『勝つ』つもりでここに立っていたという意味では、軍人として恥じるところは微塵もない。

 

“だが、一週間戦争の報に舞い上がって志願してきた連中は違う”

 

 勝利の熱に浮かされ、楽観し、安易に栄光の果実を貪れると信じて疑わない馬鹿共。

 一度の戦いも経験せず、まるで自分が主人公であるかのように血で血を洗う世界に飛び込み、活躍することを信じて疑わないような、頭の御目出度い連中だ。

 

“柄ではないが、潤沢な装備と最高の兵を率いることのできた俺は幸運だと自覚しているよ”

 

 ミノフスキー粒子の活躍によってレーダーをはじめとした各種最新鋭兵器から逆行し、二〇世紀後半の戦いを強いられたが為に、再訓練を要した地上軍の時間……ガルシアをはじめ、諸兵科将校らとミノフスキー粒子とMS(モビルスーツ)の最大効率運用を模索した日々。

 それらを考えれば、決して一朝一夕に兵を揃えることなど出来ないのは馬鹿でも分かる。

 十字勲章組を筆頭とした熟練のMS(モビルスーツ)操縦士(パイロット)達が戦技教官として引き抜かれ、優秀な将校も各サイドの軍事教練に振り分けられてしまった現状……。

 一週間戦争で完全勝利を掴みながら、正史のそれ以上にジオン公国軍は人的・物的資源の乏しい状況に置かれてしまったし、当面は見えざる苦境が続くのは明らかだ。

 

“戦線を安定させ、各コロニーから排出される人的資源が最低限使えるまでは、何としても持ち堪えにゃならん”

 

 その為には突撃機動軍の優位を約束させる、技術的アドバンテージを不動のものとせねばならない。連邦軍がMS(モビルスーツ)を鹵獲するのを防ぐのは大前提として、現状戦力として行使できる人員は、断じて無駄死させる訳には行かない。

 

“一兵卒とて無駄にできんという、ヨーク長官の言が分かったわ”

 

 やはり奴は真正の怪物だと認めつつ、同時に“俺はその怪物に認められたがな”という高慢な自負心を抱きながら、将としてガルシアは悩み、進み続ける。

 

「殿下、今は我が方の優位なれどもこれは一過性のもの。努々敵を侮って下さいますな」

 

 そう戒めた言葉は、ガルシアが己自身に向けたものでもあった。

 




 マゼラ・アタック&トップをどう活躍させるか悩みまくった回でござった……あとソンネンさんの扱いもw

 原作の屍食鬼(グール)隊はキシリア様直属で色々とアカン奴らですが、彼らのお役目は原作と似てるようでかなーり違うので、今後の出番にご期待くださいませ(なお見せ場があってもチョイ役の予定の模様)
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