宇宙(そら)に掲ぐ旗の名は   作:c.m.

50 / 85
48 青は藍より出でて藍より青し

 ──人生は分からない。

 

 その一言が今日という日までの口癖となって久しいランバ・ラルだが、それでもムンゾ時代の、実の父親(ジンバ)が逆賊として粛清されるどうかと言う瀬戸際まで行っていた頃の自分に今の境遇を伝えれば、鼻で笑われたことは間違いない。

 若かりし頃からゲリラ屋として第一線で動いてきた現場上がりが、今や総帥府に執務室を構えたばかりか、連日戦果を重ねるグリフォンやサイクロプスのみならず、サザンクロス、マッドアングラー、闇夜のフェンリルといった特殊部隊を統括する、作戦群長の椅子まで与えられている。

 十字勲章組の列に加わり、将官としての地位と栄光と(ほしいまま)としただけでも望外の幸運だというのに、ゲリラ屋の頃に率いていたコズンら部下達も、今や自分の権限で出世させ、各々が小規模ながら部隊を率いるか、教官として特殊任務の専門知識と技能を新兵に叩き込んでいた。

 

 今の全てが、ランバにとって都合の良い夢幻に過ぎず、目覚めれば予備役送りか、軍籍を剥奪された上で、うらぶれた酒場の用心棒として食い繋ぎながら、安酒に耽っているのではないかと疑わずにいられない程の厚遇だ。

 

「お加減がすぐれない様ですが?」

「うむ、いや……マ・クベ将軍からの件でな」

 

 成程、と得心したように秘書官のクラウレ・ハモンは微笑んで見せていたが、上の空だったことは感付いた上で、そういう風に見せたのだろう。

 感情の機微への抜け目なさと、魅惑的でありながら男を立ててくれる清楚さを併せ持ったハモンだが、彼女の人生もランバに負け劣らず波乱に満ちている。

 小娘が年齢を詐称して酒場の歌姫になったかと思えば、ムンゾ時代は譲り受けた酒場の経営を営む傍ら情報収集を怠らず、防衛隊の士官として情報面からランバを補佐し、ランバが将官になると知れば、総帥府の試験を潜り抜けて直属の秘書官にまでなった身だ。

 立志伝の人というのであれば、女だてらにこういう人物を指すのだろうが、その努力の殆どが利己故のものでなく、ランバへの献身であったという事をランバ自身が悟ったのは、男としては不甲斐ない事に、ハモンが秘書官として、望んでランバの傍に身を置くようになってからだった。

 

“初めの頃は、男を誑かす魔性の女だと思っていたのだがな”

 

 いいや、違う。そんな女に焦がれることを良しとしていたランバは、ハモンをそんな女であって欲しいという思いを、心の何処かに抱いていた。

 たとえランバが突然消えたとしても。

 何処かの戦場で野垂れ死んだとしても。

 それをあっさり受け入れて、別の男の乗り換えてくれるような、軽い女であって欲しいと思っていた。単にランバの傍にいるのも、スリルを欲する若さ故であって欲しかった。そうでなければ……。

 

“自分は……、ハモンを独り残すことを、悔やみ続けただろう”

 

 だが、現実のクラウレ・ハモンは、そんな都合の良い身軽な女ではなかった。

 何処までも一途に見つめてきたからこそ、傍にいたいと願っていたからこそ、ハモンはランバの傍に居る道を選択した。

 気儘で豪奢な生活だけを求めて侍るなら、総帥府の門を叩いてまで傍に侍る必要はない。将官の愛人としてズム・シティに居を構え、そこで悠々自適な生活を送れば済む話なのだから。

 

“だというのに”

 

 曇った眼鏡を払い、クラウレ・ハモンという女をしっかりと見た今は、一層夢中になっていた。惚れられていたからではなく、惚れたことを強く実感してしまったからこそ、後ろめたい以上の喜びが込み上げて──

 

「ヨーク長官の護衛でしたら、既に十分な数が付いていますが」

 

 その上で、更に捻出しますか? というハモンの問いに、ランバは軽く咳を払って現実に思考を戻した。

 

「……マ・クベ将軍の危惧する所は尤もだ。長官への肩入れは抜きに、()が将軍の立場でも同じように進言しただろう」

 

 三五という齢でこのような一人称は如何なものかとはランバ自身感じていたが、それでも職責に相応しい貫録を持たせる上で、重みを持たせた口調と一人称を心がけていた。

 それはさておき、マ・クベから直々の電文は端的に言えばイワンだけは死なせるな、当人が首を横に振っても護衛を増やしてくれという切実なもので、ランバもそこは言われるまでもなく十二分に心得ていた。問題は、だ……。

 

「儂が手を打つ以上に、有効な手段を総帥府が用意してくれたということだ」

 

 これにはランバも苦笑したもので、誰もがイワンを安全な位置に留め置きたいという本心が透けていたが、気持ちは分かる。軍機構としては褒められたことではないが、イワンという男は組織という稠密な機械にあって交換不可能な歯車の一つであり、その替えが現れることは金輪際ないだろう。何より。

 

「『自らを囮として工作員を炙り出そう』などと口にせず、長官自らペズン行きを進言してくれたのは救いだった」

 

 保安隊時代からことあるごとに第一線に立とうとしてきたイワンであるし、自らを駒と定義してきていたが、流石に自分と言う駒の使い時は心得ているのだろう。

 総帥府が直々に命令を下すより一足早く、自分の意思でジオン本国から安全圏に離れる決断を下してくれたことは、誰にとっても胸を撫で下ろす結果になったことは間違いない。

 

 つまり、この件については片が付いていて、重要なのはその()に控える仕事の方だ。

 

「今後は親衛隊と共同戦線を張る事になる。暑苦しい連中だが、実力は本物だからな」

「デラーズ大佐殿は、大層奮起しておいででしたね」

 

 年甲斐もなくはしゃぐ男心をくすぐるように、微笑を浮かべるハモンは溜め息を吐きながらも内心は乗り気なランバの手を握った。どれだけ栄達を重ねても、自分の惚れた男は鉄風雷火の世界を好んでしまうのだという悪癖を見通してのこと。

 そして、そんなランバを日常の世界に強引に連れ戻すべく話題を変えることも忘れない。

 

「そちらも結構ですが、キシリア殿下から音楽家の卵を一時的に預かって欲しいという話が来ていましたわよ?」

「承知しているとも」

 

 忘れてはいないし、ランバ自身も乗り気だった。いずれはハモンと結婚し、子をもうけたい。人並みの家庭などという似合わぬ幸福を、徐々にハモンという女の本心に触れてから意識するようになってきていたが、戦時という状況下が最後の一歩を踏みこませることを躊躇させていた。

 だからこそだろう。一時の事に過ぎないとはいえ、オーレリア・ランシアの後見人になれることは、どれだけ多忙であったとしても、ランバにとって自分が家庭を築くことが出来るのかという自問自答への答えになるのではとも考えていたし、勿論その過程で、オーレリア自身を助けてやりたいという思いもある。

 

“本音を言えば、年端も行かぬ娘御と上手く向き合えるかは分からんが……”

 

 そうした不安を押し殺しながらも、襟を正し、向き合おうとするランバを可愛いものだと思いつつ、ハモンはオーレリアの為に用意する茶菓子を頭の中で準備していた。

 

 

     ◇

 

 

「この度はお招きに与り──」

「ああ、良いのよ。そんなの」

 

 堅苦しい挨拶は抜きにしましょうと微笑み、席を勧めるハモンに対し、オーレリアはキシリアと初めて会った時と同じか、それ以上に体を委縮させて近くに寄った。

 

“綺麗な女性(ひと)だなぁ……”

 

 月並みな感想だが、だからこそその思いに混じり気など微塵もない。

 線を引いたように整った細い(かんばせ)(おとがい)。貴金属で飾り付けたように輝く、艶やかな金髪と碧眼……。

 黙した姿を見れば、絵画を眺めているような感覚に囚われたが、同時に軍服の上からでも女を自己主張して憚らない艶めかしいラインが、どんな香水より蠱惑的に、同性であるオーレリアでさえ釘づけにしてしまう。

 

“私も──こんな風になれるかな?”

 

 そうしたら──あの人(マツナガさま)も、一人の女として私を見てくれるだろうか? と。

 そんな想いを見透かしてか、ハモンはクスリとからかい交じりに微笑んで見せた。

 

「恋してるのね」

 

 ずばりとした一言と共に、心の中に踏み込まれた羞恥で俯きかけたが、「それは良いことよ」とハモンは一層微笑を深くさせる。

 

「こんな時代ですもの。そんな風に思われてると知っているだけで、多くの男は浪漫に死ねなくなるものよ」

 

 だから、伝えられるなら早いうちになさいねとハモンは釘を刺す。こうも直截に告げることが出来るのは、この場に本来居るべきランバが居ない為で、ハモンは一足先にオーレリアを通していたからだ。

 

「ハモンさんも、伝えたんですか?」

 

 自分の愛を、想いを言葉(かたち)にしたのかという問いに対し、ハモンは困ったように肩を竦めた。

 

「いいえ。私は伝えられなかったわ」

 

 ランバが思い描くような魔性の女に。軽いからこそ背中を預けられる、戦友のような女を安易に選んでしまった。

 

「籍を入れて、尽くし支えて見せるような生き方が、一番確実で早いのにね」

 

 だから、その後悔を言葉以外の形で埋めている最中なのだ。自分は何処までも付いて行く。一途に貴方だけを見ていますと、そんな乙女の感情を行動に移すことで示しているし、自分のような女になってはいけないのだと諭す為に、こうして他の女に直接アドバイスを口にしていた。

 

性質(タイプ)こそ違うけど、同僚にも私と似た女は居たわ」

 

『公国の目』などと御大層な異名の、女らしい妖艶さと切れ者ぶった態度を表に出しながら、その実誰より根が乙女なノイス特務少佐を思い出しながら話す。

 

「嫌われても、受け入れて貰えなかったとしても、気付いてくれずに過ぎてしまう想いでも、あの人の為なら何でもできる──そんな風に、一途に処女を拗らせた女がね」

「えっと、その……」

 

 それは同意して良いのだろうか? それとも少女らしい一途さを称え、反駁すべきなのか悩んでいたオーレリアだったが、言葉に詰まっている間にハモンは続けた。

 

「だから、背中を蹴ってやったの。特務少佐殿は、意中の殿御を他の誰かに盗られることを想像しなかったの? ってね」

 

 一途に黙して尽くせるのは、自分以外居ないという女の傲慢でしかない。

 男というのは割と鈍い生き物なのだから、ふらふらと他所に目移りしてしまう前に、しっかり自分だけを見つめさせておくべきなのだ。

 

「後悔なんて、先に立たないものでしょう?」

 

 ただでさえ女という生き物の旬は短いのだから、やれる内に、やれることをしておくべきだ。

 

「だから、親御さんがジオンに移るまでの間は、貴女を預かりたいって思ったの」

 

 ランバに家庭というものを意識させる為とはいえ、戦時下という時勢や、各々の仕事もある。オーレリアと三人揃う機会は決して多いとは言えないだろう。

 何よりオーレリアはサイド5(ルウム)に母や親族を残している以上、ハモンとランバが後見人として預かるのは、単なる身元保証の一つという程度の付き合いに留まるものでしかない。

 それでも、そんな一時の関係性に過ぎなかったとしても、それが意中の男に家族という物や未来の展望を僅かにでも意識させることが出来たなら、それはハモンにとってもランバにとっても大きな一歩になるだろうから。

 

「短い間でしょうけれど、貴女さえ良ければ『家族ごっこ』に付き合って欲しい……これが、女としての私の打算」

 

 一方的であるし、身勝手でもある。けれど、口にさえしなければ良いことを敢えて正直に伝えたのは、そういう一面もあるのだということで……。

 

「そんな卑しい女(わたし)だけど、男を見る目は有るつもりなの」

 

 ランバは男として不器用な方だろう。実直である分、繊細さに欠けてしまうところは多いし、多感な時期の少女には、それはストレスになるかもしれないけれど。

 

「それでも、何かあった時には必ず護ってくれる、誠実な(ひと)よ」

 

 そこだけは確かなことだと──そんな惚気を自信たっぷりに聞かされて、オーレリアは一言。

 

「はい、()()()()()()()()()()

「──あら?」

 

 感謝の言葉に対し「気付いていたの?」とハモンは指して驚いた様子もなく返す。

 聡い子だとは振る舞いや視線で察していたし、キシリア自身からも耳にしていたが、ともあれそれなら話は早い。

 自分本位な悪い大人で、それでいて男を振り向かせたがる、芯の弱そうな女を演じて見せるのは中々に楽しかったが、見通されたなら切り替えていこう。

 

「そう。察しの通り、私達が預かるのは貴女自身の為」

 

 逆賊の汚名を雪ぎ、再びサイド3の忠臣としての地位を盤石としたラル家の後ろ盾は、相応の意味を持つ。

 

「キシリア殿下のお側に侍るということは、いざという時に弾除けや囮を買って出なくてはならないということでもあるわ」

 

 王室の寵愛を賜るということは、それに見合う忠義を示してこそ成立するし、少なくとも周囲はそれを当然として、女中にそうした在り方を意識の有無に拘わらず求めてくる。

 しかし、キシリアの肝入りでランバ・ラルの元に預けられた『芸術家の卵』という肩書は、オーレリアをそうした『捨て石』としてでなく、公国の国益と将来の為に、庇護すべき存在なのだと喧伝するには十分だ。

 

「そうすれば『万が一』や『いざという時』が起きたとしても、貴女だけは渦中から遠ざかることが出来る」

 

 お優しいお姫様の考えそうなことであるが、効果としてはまずまずだ。

 テロを画策する連邦にとっても、ラル家に預けられたとはいえ標的や人質にするには未来の芸術家など小物以下。最も意識せねばならないのは身内(ジオン)の見方で、自己犠牲を強いてくる教条主義的な愛国者ほど性質の悪い物はなかった。

 ハモンから言わせれば、女の気持ちを無視して愛に生きる男と同じぐらいの痛々しさで、おまけに傍迷惑極まりないのだから笑えない。

 

「そういう訳だから、多少の不自由は受け入れて頂戴ね」

「いえ、むしろ私こそ……」

 

 伏して請わねばならないのは、オーレリアの方だ。自分の夢のため。目標のための近道を用意して貰っただけでなく、この混迷を極める戦時にあって、将官の膝下(しっか)で身の安全を保障されるというのは千金にも勝る特権だ。

 

「良い子ね」

 

 下げようとした頭を、頬に手を当てることで遮る。

 

「でも、良いのよ。だって、私達は一緒に暮らすのだし、大人は子供を守るものでしょう?」

 

 そんなことが、特別有り難がられるような嫌な世の中だけど、それを特別にはしたくないとハモンは思う。

 親が我が子の、大人が悪意でなく善意から子供の手を引き、歩める時代を当然のものにして行きたい。何より自分が子の手を握る時には、危機感を抱いて日常に臨まなくてはならない時代であって欲しくないと思うから。

 

“だから私は”

 

 こんな間の悪い時代に生きてしまった、オーレリアを助けたいと思ったから。

 

「これから宜しくね」

「はい!」

 

 愛らしく頷くオーレリアの背を押して、ノックしてきたもう一人の家族を迎え入れる。

 クラウレ・ハモンの愛した、唯一人の男性(ひと)

 幼い頃から、この人と結婚したいと──そんな想いを抱いていた、たった一人の殿御(ランバ・ラル)を。

 

 

     ◇

 

 

「これで、君の希望に沿うことが出来そうかな? テム・レイ技術大佐殿?」

「申し分ない形です。閣下」

 

 今はまだ一方的に嬲られるだけの連邦軍だが、データは着実に積み上がっている。

 可能ならば現物(MS)も鹵獲して行きたいところだが、諸兵科との連携を密にして侵攻し、進駐しているジオンの現状から察するに、地上戦用のMSは生産数が限られていると見るべきだ。

 

“何しろあの巨体だ。写真と全高から割り出した限りでもパーツ数は数万点を下るまい……が、閣下が最も期待しているのはMSの鹵獲(そちら)でない”

 

 将来的にはMS(モビルスーツ)を鹵獲するだろう。アフリカ大陸の資源確保など本来は二の次で、大規模な海上輸送網を構築したのもその一点に尽き、欧州と北米に閉じ籠もる公国軍の耳目を外に向け、行動範囲を広げることで多少なりとも出血を狙う意図があった。

 既存兵器を駆逐することを念頭に置いたMS(モビルスーツ)と相対するには、同じMS(モビルスーツ)でなくてはならない。

 連邦の誇る工業力と頭脳を結集し、何としてでもジオン公国を上回る高性能なMS(モビルスーツ)をだ。

 

“その為に、余力を残す連邦海軍に犠牲を払って貰うのも必要経費だ”

 

 元より海軍など、殆どが宇宙戦では役に立たぬ存在であるし、戦前から相応の資源を備蓄している以上、今次大戦を乗り切るだけの物量は確保している。

 故に必要とされるのは現物(MS)であり、戦争である以上、どれだけ高性能な兵器であっても損耗は必ず互いに出る。

 たとえ今は勝ち目のない負け戦でも、犠牲の果てに戦い方を覚えていけば、連邦海軍もいつかは一矢報いるだろう。

 四肢の一本……可能なら機体そのものを鹵獲できれば言うことはないが、先にテム・レイが察したように、物事には順序というものがあって、MS(モビルスーツ)の確保は最優先事項ではないのだ。

 

「例の電子戦装備を無力化する、新粒子の進捗はどうかね?」

「ミノフスキー粒子の再現は順調です。何しろ戦端を開くごとに、ジオンは高濃度の粒子を散布していますので」

 

 海と言わず陸と言わず、ありとあらゆる戦場で撒き散らされていた上での進軍だ。公国側からすれば、そうしなくては巨大ロボット(モビルスーツ)など木偶(でく)(ぼう)と化してしまうのだから当然だが、気前よくカードを切ってしまえば、それだけ連邦はサンプルを回収できてしまうものだ。

 

「ミノフスキー粒子の最たる特徴は電波妨害ですが、それ以外にも様々な用途が見込めます」

 

 熱核反応炉の小型化から、粒子の『縮退現象』によって生じる『メガ粒子』を使用した粒子ビーム……ミノフスキーが学会を追放され、サイド3に実験結果ごと渡ってしまったが為に、連邦側が一歩も二歩も遅れた技術の数々を実現させる魔法の粉は、知れば知るほどにテム・レイが驚嘆の呻きを漏らさずにはいられないものだった。

 

“勝てぬ筈だ、至れぬ筈だ”

 

 ルウムでのかつてない大敗北も、むべなるかなと言うべきか。誘導ミサイルと実弾で構成された連邦艦隊に対し、公国艦隊は速度、射程、貫通・破砕能力の全てに上回るビーム砲で主力を構築していたのだ。

 ばかりか、直近で届いた水陸両用MS(モビルスーツ)には、戦艦に搭載すべきビーム砲の小型化まで実現させたという。未だ連邦側が、戦艦サイズですら満足に制御できていない兵器をだ。

 

“だが、この粒子の真価はそこまでのモノではない筈だ……”

 

 単純な戦争の道具ではなく、人類に革新をもたらすブレイクスルー足り得る、新法則の具現……その全てを明らかにしたいという欲求が鎌首をもたげていたが、戦時国家が求めているのが兵器運用を前提としたものである以上、それを果たせるのは『戦後』を迎えてからではならないというもどかしさ。

 そして、それ以上に忸怩たる思いを抱かずにいられないのは──

 

「──技術大佐殿。君は、(ミノフスキー)に勝てるかね?」

 

 その、悪魔(ゴップ)の挑発を買わずにいられないほどの妄執(もうしゅう)を、一日たりとて忘れたことはなかったから……!!

 

「勝てます、私なら勝てますとも……!!」

 

 俺はやれる、勝ってみせると気炎を吐く!

 あれが学会に媚びを売り、連邦の飼い犬に甘んじ、既存の枠組みでしか『モノ』を見れなかったミノフスキーの元弟子かと。

 偉大な師の下にありながら、何も学べなかった負け犬などというレッテルを貼られ続けることを、どうして一人の男として、技術屋として甘んじることが出来ようか!?

 

“やれるんだ、俺にだって……!!”

 

 たとえそれが、悪魔の契約であろうとも構わない。

 今は後塵を拝するだけだとて、全てを一手に担うことが出来たなら、何もかも、自分が叶う位置に有ったなら、敵が図る全ての予想を、想定を上回った上で実現させてみせる!

 

「必ずや、ジオンを超えるMS(モビルスーツ)を用意して御覧に入れます!!

 断じてっ、敗北など有り得ませんっ…………!!」

 

 ──この、テム・レイある限り!!

 




 テム博士、魔将ゴップ閣下のバックアップによってブースター入った模様。
 ガンダム? 当たり前だけどラスボスが乗るよ?(絶望)

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。