三山畝傍さま、テクノクラート社員さま、ご報告ありがとうございます!
「クリーネ少佐。手筈通り、私はペズンに拠点を移す。本国での対応は貴官に一任するが、手に負えぬ場合は私を通せ」
必要最低限の荷を纏めた将官用
「委細承知しております。キシリア殿下は避難させますか?」
「いや、私の婚約者には公王家という価値しかない。護衛は必要だが、当初の予定通り各サイドに派遣した公国官吏の近辺を重点的に固めておけ」
国家を機能不全に追い込むのであれば、看板でなく土台たる実務家こそ第一の標的となるのは明白であるし、そこはクリーネも弁えていた。
公私を決して混同しない期待通りの回答に、「は!」と溌溂と敬礼することでクリーネが心中を表せば、イワンもまた答礼で応え、本国の執務室を後にする。
護衛に負け劣らぬ、一八〇を超す長身とそれに相応しい厚みを持つイワンの体躯は堂々たるもので、それを目で追うクリーネは仕えるべき主が一歩ごとに遠のくと共に圧し掛かる重責を双肩に感じつつも、眼鏡の奥にある瞳の輝きが曇ることはない。
“必ずや、ご期待に応えて御覧に入れます”
これから始まるであろう、策謀と流血の暗闘。
それを乗り越え、勝利を献上して見せると、柄にもなくクリーネは意気込んで見せた。
◇
最新鋭兵器の数々を無効化した、ミノフスキー粒子の時代であったのか?
今次大戦を皮切りに、主力兵器としての地位を席巻し続けることとなった、
それらは一面としては正しく、しかし、今次大戦を深く経験した者達は一様に語る。
この戦争は──人の時代であったのだと。
煌びやかな新技術や兵器でなく……、血で血を洗う人同士のぶつかり合いであったのだと。
◇
気象、風向き、日照量……人工物であるが故に、あらゆる自然現象が人間の管理下に置かれたコロニー内は、職業柄弾道計算を絶え間なく行わなくてはならない狙撃手にとって、これ以上ないほど良好な環境だった。
引き金に僅かな力を込めた数秒後、脳裏に描いた通り頭蓋を吹き飛ばす光景。それ自体は地球に居た頃から予知の如く変化することはなかったが、
腕時計の時刻と合わせ、風速を確認。どれだけ計算され尽くした人工の世界であっても、管理するのは人間だ。
気象官の単純なミスや、ランダムなパターンが稀に発生する以上、絶対の二文字は存在しない。
“……四五秒後、雨”
心中で秒数を刻むと共に、パラパラと雫が全身にかかるが、男は微動だにしない。重要なのは雨量と気象変動による変化だが、全てが事前に予期していたか、修正範囲内のものであることを確信し、今一度腕時計を確認した。
“予定時間まで五分”
それを短いと捉えるか、長いと捉えるかは個人差があるが、男にとっては前者だ。市街地ならばともかく、旧途上国でテロ組織の頭目を撃ち殺した時は、三日三晩ズボンの中を糞尿で汚しながらも微動だにせず、最後の日にヘルメットに命中させた衝撃で、標的の脛骨をへし折ってやったものである。
その活躍が歴史に記されることはなく、叙勲や昇進の機会さえ消失してきたが、今でもその時の手応えと達成感は、男の中に確かな感覚として残っていた。
「……、……」
無言。心拍数に合わせ、呼吸をコントロールする。
静寂の中にあって己の血が昂らぬよう、木石のそれと同じく、自らを銃の固定台として照準を定めた。
標的たる公国事務次官の
セミオートマチックによる立て続けの二連射は、見事前輪と後輪に命中。アクション映画さながらのスリップと共に、
「
──その呟きは、遥か遠くから同時に。引き金を絞り切り、着弾を確認したその瞬間。スコープ越しに弾丸を受け、眼球を潰して脳髄が弾け飛んだ狙撃手は、自らの成果を無線で告げると共に絶命した。
◇
『
けたたましい音を立てて横転する
傍に控える隊員もまた援護の為にカービンを構え、射手が
宙を舞った警護車を脇目に、バズーカの引き金を絞──
「撤退だ……!」
バズーカを構えていた曹長が、対物ライフルで上体ごと吹き飛んだのと同時、隊長は迅速に判断を下す。
「少尉は私に続け! 副長、殿を頼むぞ!」
最も年若い少尉を挟み、守る配置にしつつ動く。戦死した曹長含め、都合四人からなる小隊。標的に対し、余りに少ない戦力だと思われるだろうが、彼らは皆一流の狩人だ。
迅速に。そして徹底的に。ひとたび命令が下れば、キリングマシーンとして情け容赦なく死を撒き散らす彼らは大戦前から各サイドに潜伏し続けてきたものの、その活動と規模は極めて限定的だった。
レビルやティアンムと言った将星が健在であり、純粋かつ圧倒的な暴力で外敵を捻じ伏せることが可能であった時期にあって、彼らのような汚れ仕事部隊は、本来平時か冷戦期にこそ最も活躍を期待できると見込まれていた為である。
だが、一週間戦争における地球連邦の大敗北は全てを覆した。
日陰に住まう工作員達の予算は大々的に拡充され、地上・宇宙軍を問わず、あらゆる方面の特殊部隊から選抜された最高の人材が加わったことで、彼らの戦力・規模は従来のそれとは比較にならないまでに膨れ上がったが、それでも予てより潜伏し続けてきた古参は、新たに加わった最強の新兵達をも凌ぐ実力を有している。
ゴップの肝入りでジオン公国を筆頭とした各サイドを機能不全に追い込むべく、古参工作員を主軸として結成された彼らは、
この独立戦争にあって、最も公国軍を苦悩させた特殊部隊であり、非正規戦闘のエキスパート部隊である。
しかし、あろうことかその
警護車も標的の
“人体の体温を模倣できる点からも相当に高価な代物だろうが、それだけ公国側も人的資源の損耗に神経を張っていたというところか”
壁越しに逃げ込もうにも、対物ライフルは遮蔽物ごとECOASを葬ることだろうが……。
“この程度の窮地、いつものことだ!”
鉄面皮の奥で己を奮い立たせつつ、この失敗から学び取った情報を持ち帰るべく、隊長たる男は少尉と共に疾駆した。自分達のような荒事専門の人間ばかりなく、痕跡の一切を消した上で他サイドに移す『逃がし屋』もジオンには複数潜伏している。
問題は彼らと合流できるかどうかだが、誰もが捨て石となる覚悟で任務に臨んだ以上、一人でも逃げ遂せればECOASの勝ちだ。
だからこそ、彼らは視界の隅で、背後で仲間が斃れようと気にも留めない。
彼らは義務を果たした。惜別の涙を零すことも、振り向くことさえもせず、国家の捨て石として誇らしくそれを受け止め、屍を乗り越えて進むことこそ自分達の本懐だと心得ている。現に、壁越しに射抜かれてバラバラになった副長の血を浴びても、隊長は一切動じなかった。
“遮蔽物は壁としての役目を果たせずとも、射手の視界から消えることはできる”
装甲車のエンジンさえ貫通する大口径弾を死角に飛び込むと同時に伏せて躱し、待ち伏せて殺しにかかる敵兵を素早く応射し無力化した。
可能ならば殺し切ることが理想だが、公国軍は精鋭を投入したのだろう。並の特殊部隊員でさえ反応しきれず絶命する一射も、彼らは致命傷を避けてくる。
最低でも機動力を奪うべく足を撃ち抜いて止めたが、逆に言えば最精鋭たるECOASの小隊長でさえそこが限度だったということだ。
“この動き、親衛隊か!”
ジオン公国にあって国家でなく、ギレン・ザビ個人に忠誠を宣誓した、忠誠無比の最精鋭。
こいつらが出張ってきたということは、それだけで自分達の脅威度を示すものだったが、他部隊と合同で任に当たるならばいざ知らず、よもや総がかりで挑んで来るとは思いもよらなかった。
“ぐっ……”
苦痛を漏らす時でさえ心中のみで。対物ライフルに膝を射抜かれ、骨を覗かせながら千切れ飛んだ足が視界の端で肉片と血を散らせて転がったが、即座に隊長は背後を振り向いて追っ手を見定め……。
“……遠い、か”
この距離で
眉間に弾丸を受け、絶命するその瞬間まで、隊長は己が責務に忠実で在り続けた。
◇
心臓が早鐘を打ったことはあるか?
死を間近に感じ取った時、視界が揺れたことはあるか?
女や身内の名を、思わず口に漏らしたことは?
親しい者の死に、心が揺れたことは?
そんな経験は、どれも一度としてなかった。
死に瀕するような過酷な訓練も。
己を偽り、機械に徹しなければ正気を保てないような冷酷無比な任務も。
その過程でどれだけ多くのものを失うことがあったとしても、この若き少尉──ダグザ・マックールを乱すことはなかった。
自らを連邦という巨大な組織の歯車と、部品と見做し、常に最高の結果をもたらしてきた男。二一という若輩でありながらECOASに抜擢されるまでに至った俊英は、しかし連邦が彼にかける期待や信任とは裏腹に、その心を満たすものに一度として出会うことなくここまで来た。
いや……それは逆か。
余分なものに心を奪われなかったから。何事にも乱されることを知らず来たからこそ、最良の歯車として、部品としてダグザは在り続けることができたのだろう。
逃走用の車両に仕掛けられた爆弾で同僚が吹き飛んだ時も、素性が割れて任務に臨む前に絶命していた仲間のことを知った時も。そして、つい先程己の為に時間を稼いでくれた隊長の死を確信しても、ダグザは眉一つ動かさず、息一つ乱さない。
頭がおかしかったのか。それとも心が壊れているのか。いや、精神鑑定も至って正常であるし、そうでなければ特殊部隊などなれる筈もないのだから当然だ。
詰まる所、ダグザ・マックールとは生来からそういう男だったというだけなのだろう。どのような過酷な環境にも耐え抜けるだけの能力と順応性を併せ持ち、それでいて不動の心を宿した、完璧な部品として在れる、軍人として天賦の才を備えていたというだけの話。
その事実、その現実に気付いたところで、ダグサ本人が何か感じた訳でもない。
事実を事実として、自分という人間を客観視した上で、そんな人間もいるだろうと受け入れ、部品として求められた機能と価値を示せるように、訓練と任務に励むだけ。
たとえダグザを除いた小隊員全員が死亡しようと、擦過した銃弾が皮膚を啄もうと、ダグサは自分という部品のポテンシャルを決して落とさない。
駆け、飛び越え、振り向き、殺す。
周囲を警戒する視界は可能な限り死角を殺し、追走する親衛隊の出現位置を察知しては先んじて迎撃し、安全なルートを構築しながら、目標到達に最善を尽くす。
……だが、どれだけ最良の選択をしようとも。
ダグザがどれだけ最良の軍人であり、部品であったとしても、単騎でできることなど高が知れている。
確実に息の根を止める。ここで殺し切るのだという追っ手の殺意は完璧な計算の下に包囲輪を形成し、群れなす猟犬が獲物を疲弊させ、追い詰めるように、詰みに向かって追い込んで行く。
腕を、足を……致命傷を避けるダグザも徐々に徐々に出血の度合いが大きくなり、否応なく酸素を求めて呼吸が大きくなっていく。
狙撃手の大口径だけは何としてでも回避したが、その結果、回避運動に移ったダグザを親衛隊は狙い撃っていた。
本来ならば、その時点で勝負は決し、血飛沫を床に撒いて死ぬべきダグザだったが、しかし彼はまだ生きている。
弾丸を受けるにしても、己の性能を極限まで落とさぬよう計算しての被弾だったのだろう。傷つき、転がり、血達磨になりながらも細い通路に進んだダグザだったが、失血と負傷から、とうとう限界が見えた。
ずり、ずり……。
もつれた足は、もう碌に動かない。
ずり、ずり……。
どのような訓練でさえ揺れなかった瞳が、微かにぼやけてきた。
どさ、と。
自分自身が倒れた音を、まるで見知らぬ誰かの音のように聞いて──
「──敵ながら、天晴な男よ」
そこで、本来聞ける筈のない声を聞いた。
決して、目に出来る筈のない男を見た。
厚みのある体躯。荒鷲のように鋭い眼光と、見事な剃髪。親衛隊の長、エギーユ・デラーズが目の前にいるという常軌を逸した現実に、忙しなくダグザの眼球が動く。
動揺からではない。現場に投入されたECOASは一人残らず指向性爆薬を防弾ベストの内側に取り付けてあり、有効判定内の人間を確実に殺傷できるよう備えてある。
満身創痍のダグザといえど、速射で劣るとは考えていないが、万一正確に即死させられてしまった場合を考えれば、自爆こそ最も確実だが……それは無理だと早々に諦めた。
デラーズが立つのは左右を壁に挟まれたT字路の入り口であり、自爆しようにも遮蔽物に即座に飛び込める位置取りで足を止めている。
それは、これまでECOASが自爆によって相応の戦果を挙げてきたことの裏打ちであり、だからこそ念入りな対策が為された上で、親衛隊が動いていたということの証左でもあった。
「……何故、親衛隊長直々に?」
だからだろう。口数の多くないダグザが、柄にもなく敵に問いを投げた。無意味な会話など、それも不倶戴天の敵に対し求めるのはどうかしていたが、隙を作る為と思えば理に適う。
……たとえそれが、その理屈を後から付け足しただけの、咄嗟のものに過ぎなかったとしても。
「お前達には、多くの同志戦友を奪われたのでな。総帥より祖国防衛を任された手前、どのような敵か目にしたかった」
“それはまた”
なんともセンチメンタルに過ぎた回答だと、ダグザは思う。所詮殺し殺されの間柄であり、人的資源の損耗など戦争の常に過ぎない。
年若い兵卒ならばいざ知らず、そんなことは士官であれば誰もが備えておかねばならない冷淡さであろうに……。
「貴公の目を見れば、言わんとすることは察せられる。確かに儂は愚劣に映るのであろう。だがな、全ての将帥が兵の死を悼まずして、一体誰が指導者の足跡に続く?」
その犠牲に、挺身に意味はあったのだと。勝利という光輝の玉座に主君が坐した時、そこに至る道筋の過程で閉ざされた数多の未来を、弔文として読み上げ痛む時、どうして仮初の涙と思いで報いたと胸を張れようか?
「我らは若人の血潮を我が血として進む身よ……故にこそ、討つべき敵を知らねばならなかった」
たとえそれが無意味な感傷に過ぎぬと、愚かなロマンチズムに過ぎぬと鼻で嗤われようとも。エギーユ・デラーズは今、この場に立たねばならなかった。
「だが……唯一意外ではあったのは貴公よ」
直接目にしたことで、憎悪を燃やせたならば良かった。武人でなく、戦う術を持たぬお多くに死をもたらした悪鬼を罵れたなら良かった。しかし、いざ討つべき敵を目にした時、デラーズが心に抱いたのは、あろうことか憐憫だった。
戦いに臨む気概と義務感。いざともなれば死を受け入れる兵としての覚悟。
それらを有していながら、しかしダグザの瞳から見えるものは何もなかったから。
「貴公の目には、何も宿っておらぬ」
このような人間は、ジオン公国には将帥から末端まで、誰一人としていなかった。
誰もが
「それで良いのか?」
今死ねば、この年若い兵は何の感情も抱けぬまま、しかしそれを納得した上で眠るだろう。
連邦の部品として、歯車の一つとして、何の疑念も感慨もなく受け入れ、果てて打ち捨てられるだけの死が待っている。
矛を交えたデラーズだからこそ、ダグザが積み上げた絶え間ない研鑽も、磨き上げた頭脳も、全てが非凡な物だったと理解せざるを得ない。
そして、だからこそ問うのだ。お前の死は、お前の人生はこのような幕引きで良いのかと。
統一政権への信奉。地球連邦への忠義。或いは地球に残る家族のため……そうした余人が耳にした時、命を擲てることに納得できるものは本当にないのか。
狂気でも構わない。確かな熱情を抱いたことは、今までになかったのか……?
「……ないのだな。何も」
なんと空虚なことか。
なんと哀れなことか。
胸打つものを何一つ見出せぬまま死地に臨んだ敵に、デラーズは問う。
「死を選ぶか?」
答えは言葉として返らず、しかしバネ仕掛けの如くダグザの右腕が跳ねた。カービンでなく腰のM-71自動拳銃は既に抜かれ、その照星は正確にデラーズの眉間を捉え──
「──腕だけは、認めよう」
それを超える速度で以て、デラーズの抜き撃ちがダグザの拳銃を撥ね、のみならず人差し指も持って行った。数瞬、離れた拳銃と指を目で追い、視線を標的たるデラーズから放したことは、あるまじき失態だったことだろう。
「それほど意外であったか?」
全盛から遠ざかった佐官が土をつけたことが。
「……いや」
意外であったことは一つ。やろうと思えば、ダグザの眉間に穴をあけられるだけの技量を持ち得ながら、何故戦闘不能に止めたのかという点だけで……。
「貴公は死ぬべきでない」
多くの部下を、戦う術を持たぬ者同胞達の命を奪ってきた、怨敵だとは承知している。その上でこそ、デラーズは部下にする様に、威厳を持って命じた。
「虜囚の身に堕ちれど、耐え、生きよ。──貴公が命を賭すに足るだけのものを、いつか示すのだ。その命、それまで儂が預かっておく」
有無は言わせんと切って捨てたデラーズに、ダグザは呆けた様な表情で口を僅かに開く。
何もかもが理解の外だ。非正規戦闘を行った工作員など、ひとたび虜囚となれば拷問の果ての死が待つしかない。そのような敵に情けをかけ、ばかりか人生を示せと宣う大馬鹿が自分たちの敵だと分かって、一体どのような顔をすればいいのかと僅かに悩み……。
「悪いが、それは出来ん相談だ」
敢えて口にしたその言葉こそ、ダグザにとっての迂遠な礼だったのかもしれない。
どのような言葉をかけられ、温情を賜る機会を得たとて、兵にはそれを
「──がっ……!?」
口腔を鉛玉が抉った。自爆用のスイッチと、自決用のカプセルを仕込んでいた右奥歯が予期せぬ角度で顎と一緒に吹き飛び、口元をずたずたに引き裂いている。
「有無は言わせぬと言った筈」
最期まで義務を果たすべく、兵としての責務を貫いたその姿勢には敬意を払おう。しかし、それを許して自分の言葉を曲げるほど、デラーズは物分かりのいい人間ではない。
「ではな。傷が癒え、時間が答えを用意した暁には、是非貴公の答えを教えてくれ」
あわよくば捕虜を得んと初めから画策していた為の準備だったのだろう。念を置いて両膝を拳銃で射貫き、完全に生殺与奪を握った上で暴徒鎮圧用のテーザー銃に撃たれたダグザは、全身に感じる痺れと口腔の激痛を感じたが、それも長くは続かず、意識を手放した。
◇
「皆、礼を言わせてくれ。よくぞ儂の我儘に付き合ってくれた」
『いえ、と申し上げたいところですが……肝が冷えました……』
流石にこれっきりにして欲しいと遠慮なしに述べた部下に、自覚のあったデラーズも「無論だ」と返す。
“ただ非道に走る敵を殺めるだけの戦いであれば、楽であったものを”
そのような思いを心中に抱えながら、捕虜として運ばれていくダグザにデラーズは背を向けた。
「全く……因果な世だ」
武人として、軍人としての天賦の才を持ち得、それを十全に振るえるだけの乱世に生まれながら、その魂を染め上げ、胸を熱くさせるものに出会う事のなかった不幸。
決して同情などすべきでない不倶戴天の敵を前にしておきながら、デラーズは今日という日まで魂を満たし続けてくれた
もしもダグザが公国にさえ生まれてさえいれば、総帥の威光がその心を埋めたことだろう。忠義を、死を超えて尚直向きで在れる人生を掴めた筈だろう。
ただ、生まれた場所一つの違いで人生の全てが色褪せていた男に、デラーズは息を吐く。もしデラーズが連邦に生まれていれば、自分もまたダグザと同じ結末を辿ったのかもしれなかったから。
“心洗われたなら、儂の膝元に置いてやるのも一興か”
容易く節を曲げる手合いではないだろう。それでも心を止めた男が今日という出会いを、敗北を糧として生まれ変われたならば、その上で軍門に下るというのであれば、直々にその魂を導くのも諭した者の務めかと思い馳せながら、デラーズは次の戦いへと臨んで行った。
ロマンチストハゲの趣味に振り回された親衛隊の皆さんは割とガチで泣いて良いし、なんなら殴って良い(マジレス)
……出したいキャラ多すぎて、イワン君が主人公なのにガチ空気化してんね。
だけどようやく次回からイワン君のパート……だと思ったか!
イワン君は出るし活躍するけど、次回からは遂にキシリア様ガチ勢(公式)にして作者のお気に入りDQN、マレット様のエントリーだ!!