宇宙(そら)に掲ぐ旗の名は   作:c.m.

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【お詫びとお知らせ】
 読者様の感想返信で、初期プロットではヒュー大佐がイワン君とは保安隊時代からの付き合いで~と書いていましたが、『ジョニー・ライデンの帰還:25巻』でヒューがジョニーとは士官学校からの親友だったと明かされたのを単行本で今月知ったので、軌道変更することと致しました。

 ていうか一年戦争当時のジョニー、二二歳ぞ……? ヒュー大佐、あの顔で二十代前半とかマ!?
 ……まあそれ言ったらランバ・ラル三五歳とか、シャリア・ブル二八歳はどうなるんだよって話なんですが……
 よもや外伝作品で、ここまでの老け顔キャラを見るとは夢にも思わなんだ……w

※2023/8/30誤字修正。
 三六号さま、ご報告ありがとうございます!


51 仮想敵国

 ペズンとは、L4のハロ軌道上に存在する小惑星である。

 公称としては資源採掘基地と銘打たれていたが*1、あくまで表向きのことで、正史にあってペズンはキシリア・ザビ少将指揮の下、極秘兵器開発計画を推進したジオン公国軍の有する秘密基地の一つであった。

 イワンもまた正史のキシリアに倣い、この小惑星で数々の極秘実験を計画し、幾つかは既に稼働し成果も上げていたが、彼の場合は兵器開発のみならず、公国暗部のありとあらゆる情報・研究を保管・管理した上で活用する宝物庫……或いはパンドラの箱としてここで行われる全てを『ペズン計画』と括り、その統括を担っていた。

 

 故に、ここペズンの帷幕(いばく)に参加する者は誰もが一角の人物として確かな実績を誇っているか、或いは若くして類稀なる才幹を見込まれ、招聘された新星であることは言うまでもない。

 先の模擬戦闘で大敗を喫したマレット・サンギーヌ中尉とてそこは例外でなく、二四という若輩ながら戦前は教導隊に属してS評価を得、ルウム戦役では共同戦果とはいえ二隻の巡洋艦を屠り、その戦功でもって一階級昇進とMSパイロット徽章を賜った勇士の一人である。

 

 しかし、マレットにしてみれば十字勲章にも届かなかった過去の戦績や昇進など、指して威張れるようなものではない。

 MSパイロット徽章など──少年兵のような例外を除けば──ここに集うMS(モビルスーツ)操縦士(パイロット)の通常礼装も同然の代物であるし、第一にして他者と戦功を比較して悦に浸るような悪趣味もなければ、()()もマレットにはないのだ。

 

“またしても……!”

 

 胸を穿つのは、無様な敗北を喫したという結果。為す術どころか、何が起こったかを判断する暇もなく初弾で撃墜された初戦と比すれば大いに前進していると余人は評することだろうが、マレットが求めているのは『勝利』である。

 どれだけ余人が『お前には無理だ』と肩を竦めるような相手であろうと。

 どれだけ余人が『あれは特別なんだ』と諭すような例外であろうとも。

 マレット・サンギーヌにとって、イワン・ヨークとは乗り越えねばならない存在なのだ。でなければ──

 

“──俺は、あの方にどう顔向けすればいいっ!”

 

 今となっては、思わず赤面してしまいそうな幼い日の自分。セピア色に色褪せそうなほど遠く、しかし今も色鮮やかな世界となって瞼の裏に映るかつての思い出は、変わらずマレットの胸の奥底の宝石となって輝いている。

 だからこそ心の神殿に住まう女性のため、マレットは全てを擲つことを惜しまなかった。

 ペズン(ここ)は『勝利』に必要な全てが揃い、将兵の全ては許可さえ下りればありとあらゆる行為と特権が許される。

 対ニュータイプを想定した戦術と装備開発の実証もまたその一つであり、マレットもまたその範疇において、望む全てを得ることが叶う。

 本来エースにしか許されぬ専用機の受領。投薬や手術といった肉体改造まで、公国最高の技術全てが集積され、それを形にすることが許された伏魔殿こそがペズンなのだ。

 ……とはいえ、許可が下りればという前提がある通り、無秩序に投薬をはじめとした人体実験が行われる訳ではない。

 大前提として被験者の同意が必要であるし、生命機能を著しく損なうか、短命を余儀なくされるような施術も厳に戒められているが、当然と言えば当然だ。

 祖国に対し献身的に義務を果たした者が、余命幾許もない消耗品として使い捨てられたなど外聞が悪いにも程がある。

 選ばれた者。成果を出した者はそれに相応しい栄達と、何より『未来』を保証してこそ、こうした暗部から産み落とされる成果というものは長く続き、やがてはそれが誰にも享受し得る恩恵……『外科医療』と遜色のない『当たり前』に感覚が麻痺され、置換されるもの。

 

 ……何より、そうした建前以上に、軍というものは将兵という人的資源を極力長く有効活用したいという本音がある。

 

 唯でさえ適性という篩にかけられる、希少なMS(モビルスーツ)操縦士(パイロット)をモルモットのように使い潰せる筈ほどの余裕は公国軍に存在していないし、そうでなくともペズンに集うのは最高峰の人材なのだから、施術一つでも入念な検査がかけられる。

 投薬や心肺機能を初めとした各種臓器を強化する上での、再生医療による拒否反応の有無。施術後の運動機能にどれだけの期間支障が出るのかといったシミュレートなど、それこそ挙げれば切りがないものの、そうした安全策を取って尚、得られる恩恵はマレットにも、他のパイロットにとっても絶大なものだったのは間違いない。

 

“このガキも、初めは世界が変わったように見えただろうな”

 

 宇宙移民(スペースノイド)独立という悲願。隷属の鎖を断ち切る為の聖戦の時代に生まれながら、幼い我が身に焦燥感を抱き、強化体となることを()()した少年──ユーマ・ライトニングを横目に、マレットも深く息を吐く。

 齢としては十代半ばか前半……MS(モビルスーツ)に搭乗するには、耐Gを始めとした適性基準から弾かれるのは当然だが、それを公国が誇る最高の医療技術が強引に押し上げた。

 筋力や臓器のみならず骨格や関節、神経強度の底上げ。

 脳の高感覚化による反射の増強を行ったが、それによる精神の変調抑制と安定性を向上させる為の投薬は可能な限り控え、あくまで当人の精神を自立し、自己管理下でコントロールできるよう、マインドトレーニングを重点的にカリキュラムに取り入れているし、カウンセリングも欠かさず行う。

 だが、何処まで丹念かつ十全な育成計画だとしても、それを受けるのは少年で、だからこそマレットは微かに視線を投げてしまうし、ユーマもそれに気づいてしまう。

 

「……何だよ?」

 

 齢相応といえばそうで、しかし年長に対する敬意に欠けたクソガキ(ユーマ)に対し、思わず睨みつけて鼻を鳴らしてやりたくなったものの、寸でのところでマレットは呑み込み──

 

「──……お前は、偉いな」

 

 思わず、らしくない本音を、敬意という純粋な気持ちを顕わにした。

 

「な、なんだよ急に」

 

 冷笑的な癇性持ちで、傲慢を絵に描いたような男だと言うことを初対面で嫌という程理解したユーマは、「うわ、気持ち(わり)ぃ」という感情を露骨に顕わにすれば、マレットも殴ってやろうかと反射的に拳を固めたが、それより自己鍛錬の方に重きを置いて、ランニングマシーンを止めることなく続けた。

 

「貴様が俺をどう思っているかはよく分かったがな……俺は認めるべき点は認める男だ」

 

 ただ、それを敢えて口に出す機会を見出せないし、その必要性も感じられないから口にしないというだけだと……そう言えば聞こえはいいが、実際は馴れ合いを好まぬ余計なプライドの高さ故に過ぎないのは誰の目にも明らかで、敢えて口にさせたのは、つまりはユーマにそれだけの価値を認めたという裏返しでもある。

 

「精々、俺の評価が覆らぬよう励み続けることだ」

「その上から目線止めろ。そんなだから碌な友達(ダチ)が居ねぇんだよ」

 

 一言も二言も多いクソガキ(ユーマ)の正論に、模擬戦闘で覚えていろとマレットは吐き捨てるに留まった。感情の激するところ甚だしいクソガキだが、罵倒したところでユーマが改める訳でもなければ、己の立場が改善される訳でもないのだということはマレットも十二分に承知していたためだ。

 

「──随分と打ち解けたようだな」

 

 結構なことだと頷きつつトレーニングルームに入室したのは、長髪に小振りな丸形のサングラスと、特徴だけを捉えれば一見軽々とした人物とされそうな──しかし、その奥にある鋭い眼光と、鬣のように癖のある、燃えるような赤髪が全く軽薄な印象を抱かせない佐官……ペズン計画統括代理、ヒュー・マルキン・ケルビン大佐であった。

 

「ユーマ、体調に障りないか?」

「はい! ヒュー大佐!」

 

 マレットに見せたのとは真逆の、溌溂として敬慕に満ちた返しで応えるユーマに分かり易さを覚えつつ、微かに口元を緩めたヒューは次いでマレットに──より正確には、マレットの叩き出した数値に──視線を投げた。

 

「順調だな。二人とも、ここで切り上げろ」

 

 

     ◇

 

 

 ヒューに侍る形で、ユーマとマレットは基地内を練り歩く。ここペズンは秘密基地である以上、巧妙なカムフラージュと監視網が敷かれていたが、軍事要塞としても問題なく機能し、ジオン本国とグラナダからの増援が到達するまで、長期間の籠城に耐え得るよう設計されていた。

 攻撃・防御の面は言うに及ばず、補給、休養、整備、医療、通信管制から慰安の為の娯楽施設まで備え、兵器廠とそれを運用する要員まで配されている。

 最悪の場合は一切を自爆させることを視野に入れていながら、同時に最高の環境を将兵に提供する理想的な戦術拠点でもあった。

 

「着任して、ひと月は経つが、慣れたか?」

 

 そう切り出すヒューは、今でこそイワンが全権を引き継いだ為に統括代理という肩書であるものの、ここペズンの建設から人事に至るまでの大半を計画当初から受け持っており、基地司令官の権限も有した、実質的なペズン計画の責任者である。

 風月を偲ばせるような相貌と、五体から滲み出る刀剣のような風格は、正しくその職責に相応しい壮年の佐官だと余人は受け止めることだろう。

 しかしながら事実とは小説より奇なもので、ヒューは実力主義故に少壮揃いの公国軍にあってひと際若く、あのジョニー・ライデンとは士官学校時代からの親友であったと知れば、誰もが驚きに目を見張ることは間違いない。

 イワンがそうであったように、他者より能力と才幹が秀でてしまったが故に、ヒューは齢相応の溌剌さというものを若くして手放してしまったのだろう。

 

 それほどまでに多忙な身故、本来はこのような無駄口などできる筈もないのだが、供をするユーマとマレットを名目上は護衛として侍らせながら、基地内を練り歩くことはヒューの日課となっていた。

 無論、その間仕事の手を止めることはなく、各方面から回された書類に目を通し、必要とあらば各所に設置された有線通信で直に指示を飛ばすことも多いが、ヒュー自身は時間が許す限り、二人を連れ歩くことを止めようとはしなかった。

 

「はい。ジョニー達は良くしてくれていますし。ヒュー大佐と一緒に動けて、色々なことを知ることが出来ました」

 

 気を遣ってのことでなく、純粋な思いをそのまま伝えるユーマにヒューは──その鉄面皮からでは伝わり難いが──満足気に頷いた。

 そうでなければ、貴重な時間を割いて供をさせた甲斐がない。何より、これはヒューが敬するイワンたっての願いでもあった以上、成果が見えたのは報告する上でも喜ばしい。

 操縦士(パイロット)という戦力単位、強化人間という実験体……公国最大の弱点である人的資源を可能な限り穴埋めするための戦力増強という『短期目標』でなく、人として、将来は将校として有すべき視座を養うための『教育』こそ、イワンがヒューに求めたものだった。

 

「ここで学ぶべきこと、学べることは多い」

 

 ここに集う者は、皆等しく英才か奇才……しかし、それ故に巨大な指針あってこそ初めて纏まり得る者たちだ。

 

「……宇宙移民(スペースノイド)独立という大義を?」

 

 フッ、と。ヒューは軽んじるのでなく、未熟ながらも懸命に知恵を絞っての回答と、若さ故の純粋さに思わず笑みを零した。

 

「それもある。……が、それは既に確定した未来だ」

 

 ジオン公国は地球連邦に勝利する。国力差や人的資源の問題など、それこそ容易く覆せてしまうのだから。

 

「既に我々(ジオン)は制宙権を手中に収めて久しい。いざ不利となろうと、その時は毒を以て制すれば全てが一朝の内に覆る」

 

 南極条約を一方的に破り、コロニーのような大規模質量物質を投下するもよし。毒ガスを始めとした化学兵器を世界中に撒き散らすもよし。

 手段を選び、正義の味方として綺麗な戦いという『贅沢』をやれてしまえるのは、それだけの余力があってこそなのだ。

 

「我々がここに集い、ヨーク長官が見据えているのは『戦後』だ」

 

 ジオン公国は勝利し、宇宙移民(スペースノイド)の独立は実現するだろう。

 しかし、その後はどうなるか? 悪を成敗し、めでたしめでたしで終わるのは、ピリオドを用意された物語の中だけのこと。人の営みが続く以上、本を閉じるように全てが終わることは決してないのだ。

 

「各サイドは『植民地』から『国家』となり、各々の構想で独立独歩する時代が来る」

 

『国家』とは人という種が築く最大規模の協同体であり、同時に一つの『企業』でもある。

 国民という社員を養い、他の『企業(くに)』と協力して発展することもあれば、時として他の『企業(くに)』を蹴り落とし、破産(ほうかい)させることもある。

 

“我々への恩を忘れて、か”

 

 ヒューの手前、吐き捨てることはしなかったマレットだが、それでも愁眉を寄せるには十分だった。

 国家予算を投じ、戦時経済に舵を切り、公国国民が血を流し続ける中、然程の労苦もないまま利益のみを得て繁栄を得る手合いに、好感を抱くことは誰だとて難しいものである。

 加え、そうした惨禍を被って血路を開いた自分達がいざ窮すれば、知らぬ存ぜぬを突き通すだろう未来の各サイドを想像するだけで腸が灼ける心地であったが、そうした事態を想定すれば、予想の範疇に留まったのもまた事実。

 政治において重要なのは、長期的な利益を自国民に約束することにあり、それが為し得てこそ優れた政治家と称される。

 たとえ過去の恩があろうと「そんなことも過去にあったな」と思い返し、表面上は腰を折りながら陰では知ったことかと吐き捨てるような、私人としては決して友誼を育めないであろう人種であっても、公人としては理想とされるのが政界という魔窟である。

 我が身の安全を最優先として他国を矢面に立たせながら自分達は暖衣飽食しようとするのも、政治というゲームにおいては決して間違った行動ではない。しかしだ。

 

「……敢えてそれを示した以上、そうさせる気は毛頭ないのでは?」

「無論だ」

 

 戦後を見据えていると口にした通り、イワンもヒューも労せず益を得ようとする各サイドには相応の対価を払って貰うつもりでいた。

 

「血を流すのは我々だけの役目ではない」

 

 この戦いは、かかる大義は宇宙移民(スペースノイド)の独立にこそある以上、負債を抱えるべきは各サイドも同様のものであるべきだ。

 戦争準備など全く行っていない、経済的にも物質的にも足を引く各サイドであるが、それでもジオン公国が最も欲して止まない、人的資源を彼らは既に有している。

 

「促成栽培だが、歩兵は相応の数を徴募で賄うことが出来た」

 

 既にして欧州と北米は安定の兆しを見せていたものの、それでも勢力圏の境で小競り合いやゲリラ戦が続いている。いざ大規模な侵攻を行えば技術的優位によって勝ちこそ動かないが、膠着状態のまま兵が磨り減るような事態は、戦後の若年層の不足を憂慮するには十分過ぎた。

 

「行く行くは地球侵攻軍の大多数を、他サイドの人員で回す」

 

 勿論やりすぎれば反発が生まれるのは必至である以上、相応の義務は公国軍も果たさねばならないし、明け透けに他サイド出身者ばかりを激戦区に投じる訳にも行かないが、そこは装備や補給を等しく分配しつつ、巧妙に配置を整えればどうとでもなる。

 流れる血が等しくなれば、公国以外で突出したサイド国家が誕生する可能性は極端に低くなるだろう。何しろ公国の出血が少なければ少ないほど、軍事的・経済的に一歩も二歩も進んだ公国が戦後も力を備え続けることが出来るのだから。

 

「でもヒュー大佐、それでも中立のサイド6(リーア)は無傷で戦後を迎えます」

 

 どれだけジオン公国の出血を減らせても全くの無傷で、しかも中立国として経済的にも潤ったサイド6(リーア)が公国の下に着くことを良しとするのかという疑問。

 幼いながらそこを突くことが出来たユーマを勉強熱心な生徒を見るように見つめるヒューだが、敢えてすぐに答えさせず、その疑問に対する解を出しているであろうマレットに視線を投げれば、神妙に頷いてから講釈して見せた。

 

「悪くない着眼点だ。ジオンとサイド6(リーア)だけが戦後生き残ることが出来たなら、間違いなく連中は脅威だっただろうよ」

 

 中立国としての立場を維持しつつ、今後も連邦と公国双方の取引相手として中立を維持し続けるのであれば、サイド6(リーア)は莫大な富を武器に相応の地位を得ることが出来ただろう。

 

「問題は、だ。当然他のサイドも、お前の危惧するところと同じ懸念を抱いているということだ」

 

 宇宙移民(スペースノイド)の生存と独立を賭けた聖戦にあって、必要とされたからこその中立表明だったとはいえ、それでも汗の一つもかかず富を独占するサイド6(リーア)を、戦後の各サイドはどのような目で見るかは想像に容易い。

 

「『血を流したのは俺たちだ。お前たちは何をしたんだ』と。ジオンのことは棚に上げて、連中はサイド6(リーア)に『お前達は独立を勝ち取ったのでなく、盗んだのだ』と厚顔無恥に主張するだろうよ」

 

 独占した富の何割かは、間違いなく戦後復興の名目で各サイドは──勿論その中には、功一等のジオン公国も含まれる──回収するだろう。

 加え、これからも中立維持し続けようとするサイド6(リーア)を各サイドはどのように追い込むか?

 

サイド6(リーア)は今後も中立国として平和を有する。いや、強制的に中立国にさせられるのさ」

 

 その代償に、軍事力という牙を徹底的に引き抜かれ、新たに生やすことさえ出来なくされた上でである。

 中立国の特権としての経済的繁栄……それを守る上で、各サイドは自分達がサイド6(リーア)の盾となり、剣になってやろうと声高に主張するだろう。

 この独立戦争で既にその構図が出来上がってしまっている以上、サイド6(リーア)はどれだけ歯痒くとも、それを拒絶することなど決してできない。

 

「元来、名実双方を備えた中立というものは、それを推し通せるだけの武力ありきだ」

 

 力を持たない者が声高に叫ぶ平和など、悪意を有する強者の前には何の価値もないのと同様で、サイド6(リーア)に関しては今後、サイド国家は決して武力を、牙を持つことを認めない。

 どれだけの富を築き、国家としての基盤を盤石のものとしていても、今後各サイドが手を取り合い、同盟関係を構築するとしてもサイド6(リーア)の『発言権』は常に下に置かれるだろう。

 繁栄も蓄財も大いに結構。是非経済大国として発展し、自分達の為に役立ってくれと手を叩く一方で、ジオン公国を含む全てのサイドは、次のように突きつけるのだ。

 

「『お前が我々の飼い犬に甘んじる限りは、その繁栄を約束してやろう』とな」

「……じゃあ、このままならジオンが戦後も他を引っ張れるのか?」

 

 サイド国家同盟の盟主たる地位。全ての宇宙移民(スペースノイド)の、否、人類の導き手として羊飼いの杖をその手に握る日が来るのかという問いに、ヒューもマレットも僅かに空気を硬く、張り詰めたものした。

 

「そのつもりではある……が、唯一それを阻めるだろう能力を備えた勢力も存在する」

 

 それは? と。視線と共に問いを投げるより早く、マレットが解を示す。

 

「──サイド4(ムーア)

 

*1
 これは採掘基地が精錬工場を兼ねることが殊更珍しい事でなく、それによって規模の拡張や人員の出入りも容易となるためである。




 DQNマレット様と、意図的に空気読まねークソガキユーマ君の相性、試しでやってみたら凄く書き易かった件w
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