SIGSEGVさま、ご報告ありがとうございます!
瞬かない星々。暗く冷たい
南極条約に則り、コロニーへの被害を出さぬよう細心の注意を払って位置取りをした順法精神は尊ぶべきものだが、それ故に法の隙間を縫う悪辣さには対応しきれなかったのだろう。
「勇戦と潔癖さは評価するが、撃沈判定は覆せん」
パシン! と教鞭を叩くドズルは撃沈したムサイ級の艦長に、識別用の信号燈を灯火して待機するよう命じた。
動力を完全に停止した方がより実戦的だが、万一にも秘密基地から這い出してきた連邦軍が奇襲を仕掛ける可能性を考慮するならば、ただ軍事演習だけに没頭する訳にも行かなかったからだ。
“考え過ぎだとは思うがな”
仮に一部の連邦宇宙軍──或いは連邦軍特殊部隊──がルウムでの自軍の壊滅を横目に秘密基地に籠もり続け、雌伏の時を過ごし続けているのだとしても。
突撃機動軍が地球から撤退し、再び宇宙が主戦場になるのだとしても。
公国軍は制宙権を手中に収めて久しく、その間もこうして宇宙という広大なフィールドを贅沢に使用しての軍事演習を──それも、
連邦軍が独自の
“加え、連邦宇宙軍は一線級の人員が悉く一週間戦争で戦死している”
どれだけの国力差があろうと、どれだけの資源があろうとも、純軍事的な面で連邦が逆転を狙うには
戦場の霧は何処までも濃く、予期せぬ逆転劇というものは往々にして起こり得る。
先の一週間戦争での連邦の大敗がそうであったように、相手の思惑を飛び越えてこそ勝利は生まれるもので、連邦軍に隠し玉がないことなど誰が保証してくれるのかという話だ。
「双方の残存艦隊は……やはり残る奴が残るか」
戦力を拮抗させるにせよ、ある程度の優位不利を決めるにせよ、どれだけ互いが削られても、最後の最後まで残り続けるしぶとい連中……十字勲章組の
“とはいえ、毎回同じ奴が残るのもな”
流れ弾然り誘爆然り、不予の事態というものは往々にして有るだろうし、当然負傷判定もその都度出ているのだが、どういう訳か毎度生き残る手合いは一定数存在する。
ドズルとしても、そうした突出した連中が潰れた後の艦隊運用がどの程度できるかを知っておきたかっただけに、その都度悪辣な仕掛けや意地の悪い『宿題』を出してやっているのだが、与えた障害や状況など何するものぞとばかりに乗り越えてくるのだから始末が悪い。
「……コンスコンめ、出来過ぎだ」
綺羅星の如き
◇
とはいえコンスコン自身の状況はドズルが思うほど余裕綽々とは程遠い。
現実の泥臭さの中で這い回っての戦果であり生存だったし、状況をコントロールこそしていても、相手側とてそれを読んで動いてくるのだ。
我が物顔で仁王に立ち、戦場を意のままに操るような、そんな戦いでは断じてない。
「毎度毎度と厭らしい動きをしよる!」
卑怯ではない。姑息でもない。むしろ雌雄を決す堂々たる艦隊戦であり、艦隊運用だ。
旗艦の動き一つとっても歴史に残すべき名操艦と言っていいが、それだけに相対するヤロスラフ少将に対して、コンスコンは不可視の火花を散らしていた。
“開戦前は中佐だった男が、これ程のものとは……!”
断じて侮っていた訳ではない。ムンゾ時代から現在に至るまで、こと艦隊戦でヤロスラフに教えを乞わなかった艦乗りは一人としていなかった。誰もがヤロスラフこそを最優の、星屑の海を渡る生粋の海の男だと讃えてもいた。
──しかし、コンスコンにも提督としての自負がある。
中将位を賜るだけの華々しい武勲。宇宙攻撃軍においてドズルに次ぐ権限を有するだけの実力を備えていると自他共に認めてもいた。だというのに……。
「楽々勝たせてくれねェってか? そりゃそうだろ。誰が好き好んで負けたがるかよ」
ゆったりと艦長の席に腰かけ、パイプを咥えながら嗜虐的な笑みを浮かべるヤロスラフだが、言葉ほど天秤はヤロスラフの側に傾いていなかった。
コンスコンの包囲には穴を開けた。岩石を模した機雷型のダミーバルーンも悉く見破って無力化してやったし、逆に掃宙したもの利用・誘爆させて敵MSに撃破判定を下しても見せた。
決定的な失敗は何一つとして犯していない。にも拘らず、ヤロスラフ陣営は優勢とは言い難い。
「ああクッソ。相変わらず手札の切り方が良いこったな、オイ!?」
良く攻め、引く時は引き、然して臆病とは程遠い。紛うことなき名将だ。
「出来りゃあ艦隊戦で決着着けたかったんだがなぁ……! つか、そうしてくれよ! お前だってやりたい筈だろうが!」
声など届く筈もないというのに、ヤロスラフは腹の底でうねる熱を吐き出すかのように一層激しくがなり立てた。
何時でも何処でも
自分たち公国軍が従来の戦いを終わらせた側とはいえ、これでは余りに風情がない。
しかし、コンスコンとて言い分はある。彼とて開戦前からの将官で、むしろ艦隊戦への愛着はヤロスラフ以上と言って良い古強者だ。
だが、同時にコンスコンは軍人なのだ。機を見るに敏であり、戦争の流行り廃りが残酷だということも、使える手段は最高の場面で使うべきなのだということも心得ていた。
「何より、手札を切らねば勝てん相手だからな。貴様は」
堂々と海の男として勝ちたかった。勝負したかったという思いはコンスコンにもあった。
だが勝てない。戦い方に拘泥して負けるぐらいならば、美しくなくとも勝ってやるという意気込みで臨まねばならなかった。
嗚呼糞、何故開戦前まで中佐だったのだ貴様! と、知らぬ仲であったなら叫ぶこともできただろう。
さっさと将官になれただろうに。一艦長でなく、ともすれば自分より早く提督の地位に就けただろうに、何故ルウム戦役までその地位に居たのだと。
“……分かっているとも、その位置が心地良かったんだろう?”
佐官時代のヤロスラフは平素から「俺に艦隊指揮をやらせてくれりゃあ……」とボヤいていたものだが、実のところ身に着けた力を若者達に教えることが楽しかった筈だ。
“師として部下を、未来の艦長や提督を勝たせてやりたったのだろう?
……ああ、それは何一つ間違っていなかったとも”
だからこそ、数多くの将兵が一週間戦争で死なずに済んだ。艦を棺にして散華するのでなく、生きて喝采と勲章を賜る事が出来た。
“だが、運が無かったな”
陰に徹し続けていた筈だった。ルウム戦役でさえ堅実に徹して日陰に居た筈だ。目立たぬよう、これまで通り教え子を受け持てるよう手を尽くしていた筈だ。だというのに。
「ドズル将軍の目に留まったのが、運の尽きだ」
日陰に籠もるな。前に出ろ。この戦いこそ我らの命運を分かつ天王山であり、次など存在しないのだと力説したドズルを前にしては我を通すことなど無理な話で、実際提督の地位に相応しい卓絶した指揮官であったのは、コンスコンの目にも明らかだった。
「だが、やりたいことだけやろうとした貴様の落ち度でもあるのだぞ?」
だから同情はしない。だから貴様が嫌がる事をしてやると、機先を制すべく虎の子の
“右も左も上も下も、巨大ロボットの威光に目が眩んだ。連邦に見られた大艦巨砲主義や艦隊同士の真っ向勝負なんぞ、もはや時代遅れの徒花だ”
戦場の主役たる
艦隊同士がすれ違う近接戦闘になって、ようやく艦砲射撃が意味を成すのがこの時代の艦隊戦だ。
だから、敢えてそうした
周到かつ生物のように流れ、形状を変える布陣の前に
我ら
喰われるばかりの獲物に非ずと吠え叫び、若造共の鼻を
“……やはり、艦隊だけで勝ち切る事は出来んな”
そうでなければ、ルウム戦役での連邦宇宙軍がああも大敗を喫する訳もなし。
この軍事演習とて万全の準備を行い、無数の『殺し間』を用意してお膳立てを欠かさなかったにもかかわらず、要所では
「──互い、見栄を張り通す時間は過ぎたよな」
先程まで、殺してやりたいと思っていたほどの険しい顔が今は僅かに哀愁を帯び、自嘲めいた想いで唇が歪む。
コンスコンもヤロスラフも、時代の波というものを痛感した。
だからこそ敢えてコンスコンは先に手札を切って、譲ってやった。
我を通したのは貴様で、先に折れたのはこちらだと。
戦争形態の転換期という数奇な時代を共有した同胞に対し「貴様は俺以上の海の男だったよ」と認め、花を持たせてやったのだ。
「だから、勝利という花は私が受け取っても良かろう?」
獰猛に。凶悪に。勝つのは己だという笑みを浮かべて、コンスコンは叩き潰してやるという思いを指揮と共にぶつけた。
◇
「そこは譲ってくれよ! 敬老精神ってのが足りねぇなぁオイ!」
齢はどちらも左程変わらんでしょうに、という副艦長の視線を無視してヤロスラフはガリガリと頭を掻く。
「糞! 『出番だ大佐! 兎どころかライオン相手だが、獲物としちゃあ極上だろう!?』」
◇
『出番だ大佐! 兎どころかライオン相手だが、獲物としちゃあ極上だろう!?』
「『最善を尽くします、提督』」
自他を安堵させるような涼し気な声音によって応えたのは、宇宙攻撃軍特殊部隊『狩人部隊』隊長たる、ウォルフガング・シュタイナー大佐だ。
突撃機動軍程でないにせよ、宇宙攻撃軍も特殊部隊を揃えている*1。
宇宙での彼らの任務はサスロ機関と連携してのスパイ船の拿捕や、宙域内に存在するであろう連邦軍秘密基地の発見。
そして現状最重要任務たる『V作戦』と呼称される、連邦軍の極秘計画の全容を掴むことなどだ。
特殊部隊はその性質上、本来ならば軍事演習に参加できるような位置にないのだが、『狩人部隊』は定期報告と本国への帰投に合わせ、特例での演習参加と相成った訳である。
「艦のことは任せたぞ」
「はっ!」
副隊長たるオーランド中佐は折り目正しく敬礼したが、心中は真逆であった。
ウォルフガングは特殊部隊の創設・編制にあって艦一つ与えられ、大佐にまで昇進したのだ。いい加減現場に拘らず、艦長用のシートに腰かけて趨勢を見据える側に居て欲しいと、本来なら副艦長たる地位に就く上で大尉から中佐にまで昇進した筈のオーランドは表情に出して憚らない。
一体何の為にニムバス・シュターゼンの様な、エース級の将校が回されてと思っているのか。指揮官先頭の心得も結構だが、婚約者も本国で待っているのだから落ち着いてくれという思いを呑み込んでの敬礼であったし、そこはウォルフガングも心得ていた。
それを心得ていながら、敢えて副艦長に任じられる筈だったオーランドを艦長に据え、自身は隊長としての自由裁量を下せる位置に固執しているのがウォルフガングだった。
「言いたい事は分かるが、シュターゼン大尉は意欲旺盛に過ぎてな」
技量は確かだ。部下を引き付けるカリスマもある。しかし、ニムバスは過剰な戦意と愛国心が視野を狭めている。
ウォルフガングの元に来るまでに多少なりとも矯正したようだが、誰もがニムバス程に動ける訳でないということを覚えて貰う上でも、ウォルフガングは先頭に立って教えることで、ニムバスの解毒剤になる必要があることを自覚していたからだ。
装着したヘルメットの具合を確かめつつ
それでいい。それで正しい。演習と言えども実戦に即して動く以上、無用な形式は省かねばならない。
身を翻して手早く
『大佐殿、何時でも出撃可能です』
「声が固いな。何かあったか?」
ウォルフガングが問えば、敵いませんな、言った風にニムバスが肩を竦める。私語など本来は慎むべきだが、緊張を解す為なら多少は気を利かせるものだ。特に、鋭気で張り詰めた気を解したい場合には。
『……パッカード大佐殿に、吉報を届けたかったもので』
「成程」
気持ちは分かる。ムンゾ時代からの最古参パイロットであり、教官でもあったノリス・パッカード大佐にはウォルフガングも世話になった。何であれば、自分の部隊に来て欲しいとさえ思ったこともある。
『パッカード大佐からは、近々サハリン家の護衛として北米行きになると伝えられました』
だからこそ、この演習でどれだけ成長したのかを伝えたいのだろう。フラナガン機関から出た後、再訓練の為に本国でノリスにしごかれたことはニムバス本人の口から何度も誇らしげに聞かされたものだ。
あの忠誠心、あの生き方こそ、正しくジオンの騎士そのものだと。
自分も彼のような騎士になりたいのだと瞳を輝かせていたニムバスにとって、この演習は譲れないのだろう。
顎を引き、姿勢を正す姿にもニムバスの意気込みがどれ程のものか伝わってくる。
“そうした敬服できる上官に出会えたことも、ニムバスの意識を変える奇貨足り得たのだろうな”
良いことだとは思う。人の縁とは数奇なものであると同時、人生の明暗を分かつもので、特に軍隊のような環境では、上官が与える影響というものは計り知れない。
清廉潔白な兵卒が歪むのも、燻っていた悪たれが改心する様もウォルフガングは等しく見てきたし、だからこそ自分は部下を守り、支えてやれる上司になりたいと意識してきた。
『人を尊敬する』という意識には、個々人の
「ならば唯勝利を目指すのでなく、将校として率いることも学ぶといい」
これは演習。勝ち負けでなく、より高みを目指すために動くべきだという言葉に、ニムバスは数度目を瞬かせた。
『……我が身の浅慮を恥じるばかりです』
軽く目を伏せたニムバスに、ウォルフガングは笑みを溢す。
やはり悪くない。意識が前に出過ぎる嫌いはあれど、自分を見つめ直す機会さえ与えてやればその都度成長できるのがニムバスという男なのだ。
「戦場の把握は私が務める。貴官は僚機の面倒を見てやるといい」
まずは足元。次は部下。将校としての視野を広げ、行く行くは大成して欲しいという思いを込めてウォルフガングは合図を送ると、ヘルメットのサンバイザーを下ろした。
準備は整い、出番が来た。ならば後は、期待に応えて動くだけだ。
◇
『白狼とガトー以外にも動ける奴が居やがったか』
白狼の異名を冠するシン・マツナガや、専用機を有するアナベル・ガトーとは幾度も矛を交えたものだが、今回は初めてだとオルテガは舌なめずる。
『兎を咥えた狼のパーソナル・エンブレム……〈狩人部隊〉だな』
「『ほぉ……、特殊部隊のお出ましか。マッシュ、オルテガ! 少し揉んでやれ! マルコシアスのひよっこ共は下がって包囲だ! 連携が乱れたら、そこから食い破られるぞ!!』」
隊長機たるガイアの指示に、『了解!』と明らかに若い声が弾みの良い返事を返す。
マルコシアス隊──正史においては技量確かながら、政治的問題から敬遠された人員を寄せ集めた部隊であったが、このジオン公国では事情が異なる。
この世界でのマルコシアス隊は
彼らマルコシアス隊を指導・指揮するのは黒い三連星であり、特に成績優秀な隊員は三連星と同じ黒の
黒の
『切磋琢磨と言やぁ聞こえはいいが……六番機! 獲物欲しさに出るんじゃねぇ! 喰われるぞ! 他の奴らもしっかり見てやれ! お前らはチームだってことを忘れるんじゃねぇぞ!』
部隊連動を取ろうとせず、抜け駆けじみた真似をしようとした馬鹿に、オルテガが叱責を飛ばす。個の武勇を競うのも結構だが、最も重要視すべきは互いを補い合うチームプレイだ。
ミノフスキー粒子が実戦を想定しているほどの濃度でないために出来た警告だが、これが実戦なら間違いなく突出した六番機が即座に撃墜されて、そこから包囲環を崩されたことだろう。
『教官が板についたな、オルテガ』
「『マッシュ、お前も脇見ばかりするな。その専用機は中々に手強いぞ』」
澄み渡るような蒼いボディ。ランバ・ラルの機体色と同系色であるが、こちらはやや色が濃い。
『兎狩りばかりが能じゃないようだ』
短い賛辞だが、口にしたマッシュを含め三連星は決してリップサービスなど口にしない。生死を分かつ世界に身を置く以上、上下の別なく正しく実力を認める事こそを誠意と心得ているし、だからこそ彼らはイワンを認めたのだから。
尤も、認めることと後塵を拝することは別なのだが。
『一対一に持ち込みたかったか?』
甘ぇよ、と投擲したオルテガのヒートホークが吸い込まれるように乱数回避機動を駆使しつつ、有効射を加えんとしたニムバス機の脚部に刺さる。
誰の目にも明らかなクリーンヒット。実戦であれば膝下から切り落とされていた筈で、当然それは乱戦にあって致命的な一撃だった。
“あのタイミングで!?”
ニムバスの見間違いではない。ウォルフガングはオルテガに対して攻勢に出ていた。はっきりと、オルテガに防御をさせていたと確信したからこそ、より優位なポジションに立つべく動いていたのに。
『誘われたな』
ニムバスは当然として、歯痒いが口にしたウォルフガングも認めざるを得なかった。意識の空隙など存在せず、視野が狭窄だった訳でもない。
何処までもシンプルな、経験値と実力差がこの結果を生んだのだ。
『悪かなかったぜ? 特に蒼いのは僚機を庇っての負傷だからな』
事実である。仮にニムバスが本能に任せ、スラスターを機敏に切って紙一重で回避していたなら、投擲したヒートホークの射線上に居た部下がコクピットを潰されて撃墜判定を出していた。
『それを計算に入れての動きでしょうに』
『これが出来なきゃエースじゃねぇ』
ウォルフガングの憎まれ口に返されたのは、それが全てだというマッシュの本音。
並のパイロットの中では優秀だろうと、真の
「『まぁ、生き残れなければ並もエースも変わらんがな』」
『『…………!!』』
マルコシアス隊総隊長兼教導試験官として全体の統率に務め、後方で構えるばかりであったガイアが動く。それは包囲環が完成された為か? いや、違う。
『やりましたガイア中佐! 敵艦は海兵隊が制圧しました!』
黒い三連星とマルコシアス隊にとっては最高の朗報が、しかし、ウォルフガングとニムバスらにとっては最悪の報せが同時に届いた。
“一体誰が想像できた!?”
よりによって宇宙世紀の時代に敵艦が接舷し、母艦を制圧する帆船時代の戦いなど、ウォルフガングをしても型破りどころの話ではない。
「『勉強になったなぁ、狩人諸君。なぁに。俺らも似たような経験があってな。何時の時代になっても使える、有効な手ってのはあるもんだ』」
レーダー全盛期の航空戦で、
『全てが、見せ札だったか』
堂々たる空戦を披露する黒い三連星も、動きに拙さが見えたマルコシアス隊も、全てが海兵隊の動きを誤魔化す欺瞞にして陽動。彼らの狙いは端から狩人部隊の母艦にあったのだ。
「『采配ってのを間違えましたなぁ、シュタイナー大佐殿。あんたは大人しく艦長のシートに腰かけとくべきだったんだ』」
なまじ特殊部隊を率いるだけの、最高峰と言って差し支えないエースで、現場が長かったからこその弊害だろう。
相手が黒い三連星でなくとも、或いはそれ以上のエース部隊だったとしても、戦場全体を俯瞰する位置に留まっていたなら、避けることも可能だったやも知れぬと言うのに。
『いいや、それをすれば貴官らが狩人達を各個撃破しただろう』
そうして引くに引けなくなった状況下で、ウォルフガングが兜を脱いでから出陣する。どのみち負けるなら、盛大に散ってやろうと考えて。
『それを思えば、貴官らのような男達と正面からぶつかる方が、まだマシだ』
何しろ──
『──生き残れなければ、並もエースも変わらんのだろう!?』
「『言うねぇ!!』」
気に入ったぁ! と豪快に膝を打ち、ガイアが、マッシュが、オルテガが動きを変える。先程までのような育成部隊の手本としての
正しく三位一体と称すべき、唯一無二にして究極の小隊としての
「『
──互いの
今日は狩人が狩られる日か。
流星が獣に貪られる日か。
勝敗の行方は、双方が思う以上に早いものだった。
公国軍の特殊部隊は総帥府の直轄であり、彼らは本国の参謀本部より直接命令を下された上で任務を遂行している。