俺と春香 私とプロデューサーさん   作:ゆきますく

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「なあ、春香」
「なんですか、プロデューサーさん」

「あの、プロデューサーさん」
「ん? どうした春香」

もうすっかり時間が過ぎてしまったな。
俺も、前へ踏み出す時が来たのかもしれない。

今年もよろしくな、春香。

(この作品は、ISF13「キミがいて、春になる」に新作として掲載するとして製作しました)


三年過ぎた、二人の行方は

 

「あの、プロデューサーさん」

「ん? どうした春香」

桜吹雪が舞うだろうという予想に反して、桜は昨日の雨ですっかり散ってしまったらしい。まぁ春っていつもこうだよな、と期待していた自分を馬鹿にしたくなる四月頭。事務所に吹く風は少し生ぬるい。寒いより全然いいが。

「オフだって言ってませんでした?」

「ああ、そうだったんだけど、忘れ物取りに来たら、なんかやる気になっちゃって」

「なるほど。確かに事務所って謎のパワーありますよね」

「片づけとか始めちゃったら終わんなくてさ」

「こういう時ぐらいお仕事のこと忘れたらいいのに……」

「まぁ、もう生活の一部みたいになっちゃったからな」

「今月でプロデューサー歴二年ですもんね」

「そう、だから、ここに居たら来るだろうと思って」

「へ?」

「はい、誕生日おめでとう。もう春香も十八歳か」

「あっ、あ、ありがとうございます?」

「なんで疑問形なんだよ。ほら、プレゼント」

「……こんなのいつの間に買ってたんですか?」

「この前熱心そうに見てたから、トイレ行くついでに買った」

「この前? そんな時ありましたっけ」

「まぁ開けてみろよ」

「はい。……なんですかこれ」

「月刊大阪城の創刊号。この前デパートのイベントの時、ぼーっと見てただろ?」

「いや、見てたのはその奥にあるシルバニアファミリーだったんですけど……」

「え?」

「え?」

「……ま、まぁ、これを機に大阪城に興味を持ってくれたら嬉しい」

「本当は?」

「無駄にしてほしくない」

「……まぁ、プロデューサーさんですしね、こういうことぐらい想定済みです」

「本当は?」

「三年目なんだからもっとしっかりしてほしい」

「くぅー! 言いよる」

「そもそも、これ創刊号ってなってますけど」

「これを機に大阪城に興味を持ってくれたら……」

「プロデューサーさん、一週間掃除当番代わってもらいますからね」

「そんなぁ」

 

 

*

 

 

「なあ、春香」

「なんですか、プロデューサーさん」

GWでイベント三昧な五月頭。忙しいとは言いながらも、どこかその忙しさを楽しんでいる自分がいる。そんな忙しさの中にある昼休みも、また格別だ。

「今日、弁当だったよな」

「はい、お手製ですよ! お手製!」

「箸ある?」

「あ、スルーですか……割り箸ですがありますよ」

「今なら曲げられそうな気がするんだよ」

「曲げるならスプーンじゃないですか?」

「箸でいいんだ、貸してくれ」

「いいですけど……」

「んー…………!!」

「えーっと……折らないでくださいね?」

「んー!!!! ……曲がったか?」

「曲がってないですね」

「うーん……」

「……」

「んー……!!!!」

「お弁当食べたいんですけど」

「あっ」

「えっ」

「……すいません」

「先月の掃除当番でまだ懲りてないみたいですね?」

「小鳥さんに言うのだけは本当に勘弁してください。あれから蔑むような眼で見られるんです」

「あー、どこかに割り箸ないかなー」

「すぐコンビニ行ってくる!」

「……はぁ」

 

 

*

 

 

「あの、プロデューサーさん」

「ん? どうした春香」

気づけばもう年始から半年もたったのかと思わされる六月頭。やりたかったことがちゃんとできているのか不安になりながら向かうデスクは、少し暗い。

「性格診断テストをしましょう」

「性格診断テスト?」

「最近流行ってるんですよ、765プロで」

「そうなのか」

「じゃあまず……朝は弱い」

「弱いな」

「辛い物が好き」

「いいえ」

「狭いところにいると安心する」

「はい」

「一人が好き」

「はい」

「っていうか一人になっていることの方が多い」

「……どういう質問?」

「さあ? どっちです?」

「……まぁそうかもしれないな、はい」

「狭いところにいると安心する」

「それさっきもあったぞ」

「あるんですもん。で、どっちです?」

「はい」

「一人が好き」

「はい」

「っていうか一人になっていることの方が多い」

「はい」

「っていうかただのぼっちだ」

「……はい。なあこれ意味あるのか?」

「さぁ? 狭いところにいると安心する」

「しつこいな」

「で、どっちです?」

「……はい」

「出ました」

「何が!?」

「プロデューサーさんは短気で損をしがちです」

「そりゃ短気にもなるだろ!!」

 

 

*

 

 

「あの、プロデューサーさん」

「ん? どうした春香」

日が落ちるのも随分遅くなった七月頭。デスクに向かっていると、窓から日差しが背中をじりじりと焼いてきて、もうこの季節かと、汗を拭う。ついこの前まで寒かったのにな。

「あっち向いてもらっていいですか?」

「え、ああ」

「えーっと、だーれだ!」

「どういうことだ?」

「こほん…………だーれだ!」

「えっと、亜美?」

「うっふっふー! 違うんだなぁこれが!」

「じゃあ、雪歩?」

「違いますぅ!」

「なら、響か」

「ちーがーうーぞ!」

「じゃあ誰だよ」

「『ハ』?」

「『ハ』……?」

「『ハ』から始まる……?」

「ハ、ハ、ハ……」

「どきどき……」

「はるかさん?」

「はーるかっか!」

「なんで!?」

「困ったもんだ」

 

 

*

 

 

「あの、プロデューサーさん」

「ん? どうした春香」

帰省などもあって、事務所から人がいなくなる八月頭。暑いはずの事務所が少し涼しく感じるのは、いつもあるみんなの温かさがないからだろうか。今日みたいに、春香と俺しかいない夏の事務所も、もはやこの時期恒例のものになっている。

「目薬指す時って、口空いちゃいません?」

「んー……確かに」

「なんでなんでしょうね」

「さぁ? 閉じよう、って思うと目も口も意識しちゃう、とか」

「なるほど」

「そういや春香はウインク苦手だったな」

「昔のことじゃないですか」

「初めてのライブの時の春香、今でも覚えてるよ」

「早く忘れてもらっていいですか?」

「追いかけてっ、逃げるふりーをしてっ、そっと、もぐる、私?」

「マーメイッ!」

「おお! で、ウインクは?」

「もうできますよ!! ほら!!」

「口空いてるぞ」

「あっ」

 

 

*

 

「あの、プロデューサーさん」

「ん? どうした春香」

さっさと涼しくなってくれと思わんばかりの日差しが入ってくる九月頭。亜美と真美が宿題が終わらないと春香たちに泣きついていたのがやっと解放されたらしい。

「ピザって十回言ってください」

「ピザピザピザピザピザピザピザピザピザピザピザ」

「ここは?」

「えっと、二の腕?」

「あ、えっと、そこじゃなくて」

「ああ、肘ね」

「……」

「これって時間おいたら意味ないんじゃないか?」

「そうですね」

「で、ずっと指さしてるそこは二の腕」

「……そうですね」

「触れと?」

「セクハラですよ?」

 

 

*

 

 

「あの、プロデューサーさん」

「ん? どうした春香」

季節の巡りは早いもので、雨が一日降るだけでぐっと寒くなった十月頭。アイドルたちが学生だからか、季節感を学生の行事で捉えがちになってしまう。そうこうしているうちに、そろそろ文化祭でうちのアイドルたちがまた呼ばれる時期だ。早めに予定を開けておかないとな。

「今日の占い、ラッキーアイテムが紫の物なんですけど、なんかありません?」

「紫? 身に着けないし今はないな……基本白か黒だし」

「そうですよね……といっても、今日あずささんはお休みだし……」

「あ、茄子」

「茄子?」

「ほら、今日の弁当に茄子の漬物ついてたんだ」

「おお、こんなところに運気が」

「見直した?」

「じゃあからあげいただきます」

「おい」

「冗談です。付き合ってもらったお礼に卵焼きあげます」

「いいのか?」

「はい。自信作ですから」

「んむ……おいしい」

「でしょう?」

「いい出汁効いてる。茄子のおかげでもらえたんだから確かにラッキーアイテムだ」

「でしょう?」

「さすが春香だ」

「でしょう?」

「これはいいお嫁さんになる」

「……でしょう?」

「顔真っ赤だぞ」

「うるさいです、やっぱりからあげ没収します」

「ああ!!」

 

 

*

 

 

「あの、プロデューサーさん」

「ん? どうした春香」

学生諸君は度重なる行事で大忙しな十一月頭。うちのアイドル達もバタバタしながら、今度は試験勉強に明け暮れている。本業の方との両立は、目下の悩みの一つだ。親御さんとの関係のためにも、是非とも頑張ってもらいたいものだ。

「古典の助動詞なんですけど」

「ほう」

「『き』ってなんであんな覚えづらいんですか?」

「『せ』『〇』『き』『し』『しか』『〇』だっけ。全然違う変化だよな」

「今度のテストで一覧が出るらしいんですけど、全然覚えられなくて」

「表見て一番覚えやすそうなやつから覚えてみれば?」

「『な』『に』『ぬ』『ぬる』『ぬれ』『ね』」

「完了の『ぬ』か」

「『まじから』『まじかり』『まじ』『まじかる』『まじけれ』『まる』」

「打消推量の『まじ』だな。よく使う方か」

「へーんしん!!」

「それはまじかる違いだ」

「きゃぴぴーん!! まじかるはるかさん!!」

「可愛いな」

「……何やってんだろ、私」

「今度そういう仕事取ってきてやる」

「勘弁してください」

 

 

*

 

 

「なあ、春香」

「なんですか、プロデューサーさん」

意外と過ぎるのが早い十一月を駆け抜け、十二月頭。もう一年が終わるのか、と感慨深くなる余裕なんてなく、師走の文字の通り、各地をアイドル達と走る、走る。だからこそ、帰ってきてからくつろぐこの時間は大切にしたいものだ。

「じゃんけんって、グーが拳で、チョキが目つぶしで、パーが平手打ちだろ?」

「違うと思いますけど……」

「なんで拳が平手打ちに負けるんだ?」

「さぁ……受け止められるからですかね?」

「どうやって?」

「ほら、まず正面に立ちます」

「はい」

「手をゆっくりと相手の頬に寄せます」

「はい」

「そのままゆっくり当てます」

「はい」

「……はい」

「何これ?」

「ごめんなさい忘れてください」

「なるほど、殴る気は失せるな」

「……それでいいです」

「あったかいな、春香」

「……それはどうも」

「春香、ほっぺがちょっともっちりしたな」

「……」

「へぶっ!!!!」

「やっぱりグーが一番強いですね」

 

 

*

 

 

「なあ、春香」

「なんですか、プロデューサーさん」

新年、あけましておめでとう、と事務所のこたつに入りながら呟く一月頭。未成年組に配るお年玉を準備しながら、オーブンで餅が焼けるのを待つのも、また風流だと思う。

「砂糖醤油って砂糖と醤油を混ぜて作るじゃん」

「そうですね」

「あれってどっちが主役なんだ?」

「醤油に砂糖が溶けるので、醤油では?」

「じゃあ酢醤油は?」

「しょっぱさ重視な気がするので、醤油かと」

「醤油に塩を入れるとどうなるんだろうな」

「ただしょっぱい醤油が出来上がるんじゃないですか?」

「うーん、そうか」

「これ、何を比べてるんです?」

「強さだよ」

「強さ?」

「料理の『さしすせそ』って、醤油をチャンピオンにした四天王の集まりなのかなって」

「調味料をポケモンか何かと思ってます?」

「あ、でも味噌と醤油混ぜたら味噌が口に残るか」

「そもそも味噌と醤油は混ぜませんけどね」

「料理の『さしすせそ』は強さ順だったか……」

「なんでもいいですけど、楽しそうですね」

「ふふふ……砂糖? 奴は四天王の中でも最弱……」

「あ、これ、完全に自分の世界のやつだ」

 

 

*

 

 

「なあ、春香」

「なんですか、プロデューサーさん」

バレンタイン迫る二月頭。うちのアイドル達もチョコレートのCMに出るようになり、少しずつ成長を感じる今日この頃。高校生組はすっかり大人な雰囲気をまといつつある。

「これなんだけどさ、どっちがいい?」

「雑誌モデルの仕事ですか?」

「そうそう。アクセサリーの特集なんだけど、ネックレスがいいか、指輪がいいか迷ってたんだ。どっちやりたい?」

「そうですねぇ……やっぱり指輪には憧れがあるのでつけてみたいですね」

「普段はつけないんだ?」

「アクセサリーって、普段つけるってなるとちょっと面倒というか、なくしちゃいそうなんですよね」

「転んだ拍子に?」

「そうそう転んだ……って、さすがに今年入ってからはまだ十回もこけてませんよ!」

「普通年に一回あるかないかだが」

「……こほん。まぁ、それは置いといて、雑誌モデルなら是非憧れの指輪の方で」

「分かった。任せろ。あ、そうだ、あったかいお茶が給湯室にあるはずだから、取ってきてくれ」

「はーい。……世間は受験ムードなのに、こんな話題であったまれていいですね、私たち」

「春香ももう十八だからな、普通の高校生なら大学受験とかしてたんだろうな」

「そうですね……どこ行ってたかなぁ、やっぱり都立の女子大かなぁ」

「どうして?」

「お嬢様学校みたいなのにちょっと憧れがあった時期があって、調べてたんですよ」

「へぇ。それはまた」

「なんだか憧れません? キラキラした大学生! みたいな感じで」

「春香って憧れに対していつも真っすぐだよな」

「へ? まぁ、アイドルも憧れから始めましたからね」

「そういやそうだったな」

「憧れって理解からは最も遠い感情だよって言葉ありますけど、理解なんて後からでもいいんじゃないかなって思うこと、よくあるんですよね」

「憧れからアイドルになった人は違うな」

「まぁ、女子大の方は憧れるだけでは全然駄目で、テストはギリギリなんですけどね」

「先月末の期末テスト、大丈夫だったんだろうな?」

「大丈夫です、赤点は数学だけでしたから」

「駄目じゃん!!」

 

 

*

 

 

「あの、プロデューサーさん」

「ん? どうした春香」

まだ雪の残る三月頭。昼は少し暖かい風が吹くようになったが、夜はまだまだ冬のようで、手袋とコートはまだ手放せそうにない。

「前にもこんなのありましたよね」

「ん? どんなのだ?」

「ほら、事務所から出て、二人で歩く、みたいな」

「あったな、いつだっけ」

「忘れちゃいましたけど……確か、手が冷たくて」

「ああ、俺が春香の頬に手をくっつけたやつだ」

「そう! それです」

「今の俺の手も変わらず冷たいな」

「じゃああの時みたいにラーメン食べに行きます?」

「行った行った。駅前の屋台だったっけ。……行くか?」

「そうしましょう」

 

うっすら残る寒い空気に、俺と春香の吐息が重なる。かつかつと鳴る靴の音の中に、街路樹のイルミネーションがまだ光っている。ちらっと横を見ると、上機嫌で鼻歌でも歌いそうな春香の横顔。何がそんなに幸せなのか。こっちまで笑みがこぼれそうになる。

 

「えへへ」

「なんだよ、急に笑い出すと怖いだろ」

「あ、そうそう、月刊大阪城、真が喜んでやってくれてますよ」

「俺からのやつあげちゃったの?」

「そろそろ完成するみたいです」

「へぇ。あれってちゃんと完成するんだ」

「知らないで渡したんですか?」

「まぁ、でも喜んでもらえて何より。……真に、だけど」

「三年目のスタートはあれから始まったんですよね」

「そうだぞ。せっかく俺が選んだってのに」

「この一年も色々ありましたね……プロデューサーさんの当たりがきつくなった気がします」

「そんなことないぞ。ただ春香と話すのが自然体になってきただけで」

「そうなんですか?」

「だって一番事務所に居る時間長いだろ」

「まぁ、家より長いですね」

「そうなると、俺の中で一番よく話すのは、必然的に春香になる」

「寂しいですね……」

「憐れむなよ」

「私はプロデューサーさんといっぱいお話できて楽しかったですよ?」

「そりゃどうも。ありがとう」

「……全然思ってなさそうですけど」

「思ってるよ。ただ、そんなことを今言われると思ってなかったから、驚いてるだけ」

「そう、ですか」

 

気まずい沈黙が耳に残る。風が一度吹いて、二人のコートを靡かせる。指先が冷たくなって、咄嗟にポケットの中へ入れた。空を見ると、都会にしては珍しく星空がそこにある。

こんな日なら、いいのかもしれないな。

 

「春香」

「え? はい」

「ちょっと手出して」

「え? 寒いから嫌ですよ」

「いいから」

「えぇ……はい」

「右手じゃなくて左手」

「こっちですか?」

「いいから」

「は、はい」

「あ、目は閉じておいてくれ」

「なんですか、急に。そんな風に言われるとちょっと怖いですよ」

 

ポケットの中から取り出す。震える手で、それを左手へ。

 

「もういいぞ」

「……え?」

「ちょっと早いけど、プレゼントだ」

「これ……前に言ってた……指輪?」

「雑誌の編集長にかけあって先に一つ買わせてもらったんだ」

「か、買った!?」

「じゃないとプレゼントにならないだろ」

「いや、でも、えぇ!?」

 

喜んでいいのか、驚いていいのか、コロコロと変わる表情を見つめる。息を一度吸い込む。力が抜けて、薄ら白い息が細く漏れ出る。

 

 

「春香」

「は、はい」

「好きだ」

 

 

「……え?」

「聞こえなかったか?」

「いや、えっと、聞こえてはいるんですけど……ちょっと自分に都合よすぎかなって」

「そんなことないぞ、本心で言ってる」

「えっと……その」

「好きだ、春香。俺でよければ、高校卒業してからでいい、付き合ってくれないか」

「でも……私、アイドルですよ?」

「ああ、俺がプロデュースする自慢のアイドルだ」

「私、結構めんどくさいと思いますよ……?」

「それぐらいなんだって言うんだ。どんと来い」

「えぇ……」

「他に何かあるか?」

「えっと……その、いつから……?」

「そんなの最初からに決まってんだろ」

「え、でも、一年目の終わりの時は、はぐらかしたじゃないですか!」

「そりゃまだ十七歳なろうかという女の子にそんなの言えるわけないだろ」

「それを言えばまだ私高校生ですけど!?」

「だから言ってんだろ、卒業してからでいいって」

「いいって……いいって言われても……」

「で?」

「で……?」

「返事を待たされてる憐れな男がここにいるんだが」

「えっ、あっ、えーっと……」

 

「よろしくお願いします……?」

 

今日は三月三日。この気持ちを、ずっと抑えてきたことを、こうして伝えられた日。

笑顔が絶えない彼女との日々を、また紡いでいこう。

 

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