いつかの明日へ、【ヒーロー】は助け合いでしょ 作:しょくんだよ
100話達成!今後ともよろしくお願いしますです!
出来立てホヤホヤのハイツアライアンスに越して数時間後、一通り自室の片付けを終えた火野はアンクとウヴァを部屋に残して1階の共有スペースへと降りた。持参した飲み物を片手にゴクっと飲み、「ふぅ…」と一息を吐きながら晴天が差し込む窓の外を眺める。ふと、玄関先からゴトゴトと物音が聞こえた。何だろう?と火野は玄関先へと足を運ぶと、そこには大荷物をよいしょよいしょと運んでいた轟がいる。
「轟君」
「火野…、もう終わったのか?」
「うん、あまり持って来てなかったからね。結構早く終わったんだ。ところで、それどうしたの?」
轟が持って来た荷物に軽く目を見開きながら問い掛ける。何枚かの大きな畳、障子戸、四角い木枠の照明が置かれていた。見る限り何れもまだ新そうな物ばかりのようだ。
「粗大ゴミ置き場から持ってきた…。…まぁ色々あってよ、リカバリーガールに教えてくれて貰ったんだ」
「これ全部タダでくれたの?凄っ…本当雄英って何でもアリだな」
深くは詮索せずに改めて雄英の凄さに感服した火野。轟の性格の事だ。何か良いことをしたお礼にって感じなのだろう。
「あ、轟君手伝うよ。これ1人でやるのは大変でしょ?」
「…良いのか?」
「困ってる時はお互い様、俺はもう終わったし……それに、救けてくれたあの時のお礼も兼ねてね」
火野の言葉に、轟は首を傾げる。
「…俺はなにもしちゃいねぇ。あの時は、緑谷の判断で爆豪だけを救けた…その事に関しては、俺はお前に謝らなきゃーー」
「そうじゃなくても、あの場に救けに来てくれた事に変わりない…だろ?ありがとう轟君」
「…………あぁ」
このまま否定を続けたところで火野はそれを拒み続けるだろう。そう思った轟は素直にその礼を受け止め、強く頷いた。
「よし、じゃあ運ぼっか。…轟君の家って和風建築なの?」
「俺の実家日本家屋なんだ…。フローリングの部屋はしっくりこねぇ…」
「なるほどね、それで畳か」
「とりあえず火野、エレベーター使って持って行こう」
「そうだね、じゃあせーので行くよ?」
火野の言葉に轟は「あぁ」と頷き、畳をぶつけないよう、エレベーターの方へと移動したのだった。
☆★☆★☆★☆
時刻は過ぎ、
「はー、疲れたぁ…」
「切島、荷解き終わったのか?」
「ようやくな!」
「お疲れ様」
「経緯はアレだが、共同生活ってワクワクすんな!」
「だね」
「共同生活…これも協調性や規律を育む為の訓練…!」
「キバるなぁ委員長」
荷造りを終え、夕飯も切島の奢りで焼肉を食べて、どっと疲れが出たのか共同スペースで男子達はくっちゃべりながら寛いでいた。
「男子ー、部屋できたー?」
すると、蛙吹を除いた女性組をゾロゾロと引き連れた芦戸が声を掛けてくる。
「うん、今寛ぎ中」
上鳴が応えると、「あのね!今女子で話ててね!」と葉隠が言い出し、その続きを芦戸が応えた。
「提案なんだけど、お部屋披露大会しませんか!?」
「「へ?」」
急に提案された内容に近くに座っていた峰田と緑谷は目を見開きキョトンとする。同時に座っていた常闇も口には出さなかったがその目は驚愕したような目付きで芦戸達を見遣った。
☆★☆★☆★☆★
場所は変わり、男子寮2階。
「わああああっっ!!!ダメダメダメちょちょょちょっ待っ待っ待ぁあああ!!!」
必死に死物狂いな形相で止めようとする緑谷だが、問答無用でその扉は開かれる。その部屋の中はどこもかしこも、見渡す限り一面のオールマイトグッズで埋め尽くされていた。言わずもがな、オールマイト一色のオタク部屋である。初めてクラスメイトの男子部屋を見るのか、女子達は「「おおお〜っ」」と歓喜した声を上げていた。
「オールマイトだらけだ!オタク部屋だ!!」
「あ…憧れなんで…………恥ずかしいィ…」
麗日は好評みたいだが、本人の緑谷は自分の机に両手を置いて顔を真っ赤にする。火野もその部屋を見て「おお」と声は漏らしてはいるが、緑谷が大のオールマイト好きは火野を含めてクラスメイト達は把握しているのか、予想通りと言わんばかりの表情だった。
「やべぇ、何か始まりやがった…!」
「でもちょっと楽しいぞコレ…」
ワイワイと騒ぐ女子生徒の背後で上鳴と瀬呂が騒つき唾を呑む。同じクラスメイトととして部屋と言うのはその人の性格そのものを表すので、どんな部屋なのか気になるのも仕方がない。
「フン、下らん…」
ふと、隣の自分の部屋のドアにもたれ掛かっている常闇が呟く。その一言に間が空いたが、芦戸と葉隠は無言でドアの横へ押し出し、強引に扉を開けた。その瞬間目の前が真っ暗になるような現象が視界に入る。
「「黒!!怖!」」
それもその筈、ライトの光と言う概念など無く、薄暗い灯りが灯され、辺り一帯は黒を貴重とした家具やカーテンで囲まれた真っ黒い部屋だった。その小さな明かりに人や鹿の頭蓋骨が浮かんで見える。慌てて常闇も中へと入るが、時は既に遅く、ゾロゾロと見学するクラスメイトに怒りと羞恥心で「貴様ら…」と体を震わせていた。
「このキーホルダー、俺中学ん時買ってたわあ」
「男子ってこういうの好きなんね」
「出ていけ…」
「ハッ…剣だ…カッコイイ…」
「スッゴい、盾もある…」
「出ていけ!!」
常闇の私物を見てはワイワイと騒つくクラスメイト。玄関先に置かれていた模造品の剣と盾に緑谷と火野は感動していると、常闇は珍しく大声で怒鳴り声を上げる。余程部屋の中を覗かれたくなかったのだろう。生徒達はこれ以上怒らせるのはまずいと思ったのか、そそくさにその場を後にした。
その隣、今度は青山の部屋へとお邪魔する。
「「「まぶしい!!」」」
「アハハハハ!」
常闇とは打って変わってすんなりと中へ入れてくれたが、その部屋はミラーボールに大量の鏡、目移りが悪くなる程の眩しい部屋だった。
「ノンノン、まぶしいじゃなくて、ま・ば・ゆ・い!」
「思ってた通りだ」
「想定の範疇を出ない」
見学者の発言を言い直そうとするが、芦戸と葉隠を筆頭にクラスメイトはそそくさにそう言って退場していく。完全に想定内なのと、単純に彼のその性格がちょっと絡み辛いのだろう。
「なんか楽しくなってきたぞ!あと2階の人は…」
麗日はそう言って、他の生徒達は残りの部屋がないかと見回す。すると緑谷の隣、峰田の部屋から本人の峰田が半開きのドアからこちらの様子を伺っていた。
「入れよ…。すげえの見せてやんよ…」
「凄いのって?」
「気にすんな火野、見たら後悔するぞ」
「3階行こ」
「入れよ…なァ…」
物凄い形相と荒い息遣いの峰田が指先で手招きするが、どうせ碌なものではないと皆は3階へと移動して行った。
3階へと移動し、先ず最初は尾白の部屋へと入る一同。女子を先頭にドアを開けると、必要最低限の家具だけが揃われ目立った物は見当たらない普通の部屋を目の当たりにする。
「ワァー普通だァ!!」
「普通だァ!すごい!!」
「これが普通という事なんだね…!」
シンプル・イズ・ベスト。そう言っても過言では無い部屋に女子達は普通と言う言葉を連呼するが、尾白本人は「言う事無いならいいんだよ…?」と気を使った様子で言っていた。
続いて隣の飯田の部屋は、ベッドの横の本棚や、至る所に分厚い本が並ぶ部屋となっていた。
「難しそうな本がズラッと…さすが委員長!」
「おかしなものなどないぞ」
自身気に紹介する飯田だが、壁に取り付けられている棚に大量の眼鏡が置いてあることに麗日は気付き、ボッと吹き出しながら言った。
「メガネクソある!」
「何が可笑しい!!激しい訓練での破損を想定してだな…」
「なるほど、それならストックが必要だね」
「うむ、理解してくれて何よりだ火野君!」
「だとしても多すぎ」
飯田の言い分に納得する火野だが、それでも本に負けない程の量の眼鏡に耳郎はボソッとツッコんでいた。
続いては一部屋を飛ばして火野の部屋。ドアの目の前に来た一同は騒つき始める。
「火野君の部屋ってどんな感じだろー?」
「実力はA組随一!」
「きっとお部屋もA組随一!」
「意外と普通かもよ?」
「あはは…何も変わった事は無いよ。あまり期待されると返って困るから……」
A組屈指の実力者である火野に期待に胸を膨らますクラスメイトだが、火野は困った様子で苦笑しながら、その扉を開けた。そして一同はその部屋の光景に驚愕する。
「「「思ってたのを遥かに上回った!!」」」
「赤色と緑色にわかれとる!!」
「何だこの部屋!?」
視界に入ったのは赤色のデカいシーツと緑色のシーツが半分ずつ分かれた部屋の色合いに驚く一同。赤色の方にはロフトタイプの木製ベッドが置かれており、その上からも赤いシーツを掛けていた。対して緑色のスペースには、これまた緑色のシーツを被せたソファーが置かれている。部屋の奥、ベランダ付近にはロフトタイプのベッドが置いてあり、その下は勉強机と液晶テレビがポツンと卓上の上に置いてあるのが見える。恐らく火野のスペースはそこだけなのだろう。
すると、大勢で押しかけたのに驚いたのか、赤色のベッドからアンクが起き上がり、皆を見渡すと同時に不機嫌な様子で火野に声を掛けた。
「おい映司、何だこの集まりは…!?」
「部屋を紹介してほしいから見せてるだけだ」
「紹介?下らん、さっさと出ていけ」
「そう言うなって」
宥めようとする火野だが、アンクは鼻を鳴らして再びベッドの上に寝転がり、メダルが重なるような音が聞こえてくる。大方ベッドの上でコアメダルとセルメダルを眺めているのだろう。
「アンク君とウヴァ君に部屋乗っ取られとる…!」
「火野のスペースあそこだけ?」
「お前主人みたいなもんだろ?良いのか?」
「まぁ、俺そんなに物欲無いからさ…休める所さえあれば別に問題は無いよ」
麗日が驚き、奥にある2段ベッドのスペースを見つけて芦戸と砂藤が声をかけるが、火野はあっけからんとした様子で応える。
「そう言えばウヴァさんはどちらにいらっしゃるのですか?」
ふと、八百万が見当たらないウヴァの事が気になったのか火野に尋ねると、「えっと」と火野は部屋の中に入り、鍵の開いたベランダを開ける。
「ム、遅いぞ映司……って何だこの集まりは!?」
ベランダに居たウヴァは火野の存在に気付き、振り返るが、大勢のクラスメイトの人数に驚き声を上げる。
「部屋を紹介してるんだ」
「あーウヴァ君!」
「そんなとこで何してるのー?」
「ウヴァくん…!?何だその呼び名は…っ」
火野は単調に説明すると、ウヴァを見かけた芦戸と葉隠が声を掛けるが、君付けされるのを慣れていないウヴァはあたふたと動揺している。ふと、ウヴァの隣に置いてある物に興味を持ったのか、緑谷は火野に声を掛けた。
「火野君、これは?」
「望遠鏡。ウヴァは景色や風景見るのが好きみたいで、引越しの手伝いとこれから一緒に戦うお祝いで買ってあげたんだ。一通り部屋紹介済んだ後で俺の体使って見せてあげる予定なんだよ」
「火野お前優しいな」
「フン!俺にはプレゼントは無いくせにな」
「うるさい」
ベランダに置かれているのは高そうな天体望遠鏡。ウヴァの前祝いとしてあげた物らしく、グリードのウヴァはそのまま見ても燻んだ光景しか見えないが、火野の体を借りればそれは一転。待ちきれないのかベランダで待機していたのだろう。感動する切島だが、聞こえていたのか文句を垂れるアンクに火野はそう返していた。
「うわっ!冷蔵庫アイスばっかり!」
「おい!触んな!食ったらぶっ飛ばすぞ!」
「やめろってアンクっ」
「映司、こいつら目障りだ!とっとと放り出せ!」
「やなこった」
「…っ!ちっ、まだ実家の方が断然マシだったなァ…!」
一方で芦戸は冷凍庫の中身を拝見したのか、ビッシリ敷き詰められているアイスキャンディーを見て驚いていると、いち早く反応したアンクが殺意を向けた目付きで怒鳴っていた。ギャーギャーと騒いでいるそんな中、耳郎は落ち着かない様子で火野のスペースの箇所をチラチラと見つめていたのだった。
☆★☆★☆★☆
火野の部屋を最後に3階男子の部屋を一通り見終えた後、急に尾白が不満気な顔で呟いた。
「なんて言うか…俺釈然としないんだ」
「そうだな」
「僕も☆」
便乗して常闇と青山も納得行かない様子で深く頷く。特に気にして無い火野と飯田、緑谷はけろっとした顔だが、女子に言われ放題でプライドを傷つけられた3人はこの有様だ。すると、それに同意したのか峰田がズカズカと女子達に向かって歩み出しながら口を開いた。
「男子だけが言われっぱなしってのはぁ変だよなぁ?
瞬間、ミステリアスドラマの如く雷がズガーン!と付近に落ちる(ような気がした)。女子による容赦無い舌剣が、峰田を筆頭に男子の闘争心に火をつけたのだ。
「いいじゃん!」
峰田の提案に乗り気になる芦戸。その横では嫌そうに耳郎が「え」と低い声を漏らす。同時にそれは宣戦布告のように緊張感が巻き起こる。全く興味の無い者達を含めて、〝第1回A組ベストセンス決定戦〟が今、始まろうとしていた。
いいのか?はたして…いいのか!!?
「どうしたの緑谷君」
「ひぇ!?な、ナニヒノクン!?」
「いや、なんか凄い形相だったから」
火野の声に思わず飛び退くように驚き、裏返る声の緑谷は「な、なんでもないよ!?」と慌ただしく応えていると、芦戸はノリノリな様子で口を動かしていた。
「えっとじゃあ、誰がクラス1番のインテリアセンスか、部屋王を決めるって事で!!」
「部屋王?」
「別に決めなくても良いけどさ…」
分かりやすいルールの内容を決める芦戸。それに戸惑う耳郎と尾白。だが、その話を待ってましたと言わんばかりに、峰田の卑猥な目は輝いていた。
「(フフフ予定通り…!オイラだけが主張していても足蹴にされてただろう。
だが!少なからず自尊心を傷つけられたこいつらの意思に乗じる事で、オイラの主張は〝民意〟という皮を被るのさ!!これにより、実に自然な流れで女子部屋を物色出来る!ひょー!)」
その脳内、その意気込み、その表情。全てが妄想と卑猥な考えと言うパラダイスに包まれていく峰田。彼の野心を誰も知らずに、一同は4階へと移動したのだった。
「えっと4階は…爆豪君、切島君、障子君、上鳴君だね」
4階の廊下を歩きながら麗日は再度部屋の主人の確認を取ると、飯田はふと尋ねる。
「爆豪君は?」
「〝くだらねえ、先に寝る〟ってよ。俺も眠い…」
「普段ならもう寝る時間だもんね」
何となく爆豪がこの場にいない事から事情は察していた火野は「ふぁ…」と欠伸をする。何人かも眠たそうな表情を浮かべている中、芦戸と葉隠は容赦無いハイテンションで口を開いた。
「じゃあ先ず切島部屋!!」
「ガンガン行こうぜ!!」
「どーでもいいけど、多分女子にはわかんねぇぞ」
切島はそう言ってドアを開けると、奥にあるサンドバッグ、床に置いてあるダンベルに、『必勝』、『大漁』と書かれた張り紙など、如何にも漢気溢れた熱苦しい部屋だった。
「この男らしさは!!」
グッと拳に力を入れて言う切島だが、芦戸はブレない表情で「うん」と頷くだけだった。それに続き、葉隠と麗日が口を開く。
「彼氏にやってほしくない部屋ランキング2位くらいにありそう」
「アツいね、アツクルシい!!」
葉隠はともかく、麗日は頑張ってフォローをしているつもりだろうが、予想通りの反応なのかあまりよろしくない評価を聞かされ、切島は涙目になりながら「ホラな」と応えた。
切島の部屋も見終えた一同は障子の部屋の前へと移動する。
「次!障子!!」
「何も面白い物は無いぞ」
芦戸の掛け声に障子は無愛想に応え、ドアを開けた。そこには、小さな机1つ、座布団1つ、布団一式が置いてあるだけだった。
「面白いどころか!!」
間抜けの殻状態の部屋に芦戸は声を上げてツッコむ。あまりの殺風景な部屋にクラスメイトは評価し辛いのだろうか困惑している中、轟と火野は障子に声をかけた。
「ミニマリストだったのか?」
「まァ幼い頃からあまり物欲が無かったからな」
「でも逆に考えれば部屋全体を広々と使えるからね」
「こういうのに限って実はドスケベなんだぜ」
3人の会話にボソッと呟く峰田。
特にこれと言って評価し難い部屋だったのか、A組は直ぐに障子の部屋を後にし、上鳴の部屋へと移動した。
ドアを開けると、靴を並べたショーケースにスケートボードが立て掛けており、壁にはダーツ、床にはバスケットボールが転がっていた。
「チャラい!!」
「手当たり次第って感じだナー」
流行に乗りたい性格なのか纏まりが無く、女子の評価もいまいちな様子に、上鳴は「うぇー!?良くね!?」とショックを受けていた。
「うぐ…釈然としねぇ……」
「だろ?」
「同士…」
落ち込む上鳴に、尾白と常闇が隣に立ってフォローする。火野も苦笑する中、生徒達は5階フロアへと移動した。
「次は1階上がって5階男子!」
「瀬呂からだ!」
「マジで全員やんのか…?」
あまり乗り気では無さそうに言う瀬呂だが、その部屋を開けると全員は驚いた様子で口を開いた。
「おお!!!」
「エイジアン!!」
「ステキー」
その部屋はアジアンテイストを用いた部屋で、大きな絨毯に加え、ベッドの隣にはハンモックが置かれている。これだけ揃えられた部屋に女子達は興奮していると、火野も同様だったのか瀬呂に声をかける。
「へー、凄いね瀬呂君!俺アジアンテイスト結構好きなんだよー」
「へっへっへ、ギャップの男瀬呂君だよ!」
先程のテンションとは裏腹に自身気に言う瀬呂。今のところ男子の中では瀬呂が断トツだろうと火野は思っている中、生徒達は瀬呂の部屋を後にし、次の部屋へと移動する。
「次次ー!」
「轟さんですわね」
クラス屈指のイケメンボーイ。きっとその部屋も貴族のような部屋で彩られているのだろうと、女子達は楽しそうに騒ついていた。
「さっさと済ましてくれ、ねみい」
1番眠たそうにしていた轟はそう言って何事も無くドアを開ける。そして部屋の中を見た瞬間、火野を除いたクラスメイトが一斉に驚愕した。
「「「和室だ!!」」」
「造りが違くね!?」
最早テイストなどとは呼べない程の部屋。フローリングは畳で窓は障子戸、木で造られたタンスに盆栽らしき植物までもが置かれている。
「実家が日本家屋だからよ。フローリングは落ち着かねえ」
「理由はいいわ!」
「当日即リフォームってどうやったんだお前!」
ポツポツと喋る轟に上鳴と峰田がツッコむ。すると、轟は火野の方へ目線を向きながら応えた。
「火野と一緒に……頑張った…」
「え!火野お前知ってたの!?」
「だとしても2人で出来るってレベルじゃねえ!」
「ぐ、偶然だよっ。運ぶのは大変だったけど、2人でやれば半日で何とかなったよ」
「「何だよコイツら!!」」
少し自慢気に応える火野だが、轟を含め2人のあっけからんとした表情に上鳴と峰田は逆ギレし、声を張り上げていた。
「大物になりそー」
「うちのエース達のやる事は違えな」
葉隠が言い、度肝を抜かれた砂藤は後頭部を手で押さえながらいち早く轟の部屋を出る。すると、芦戸も満足したのか部屋から出て声を上げた。
「じゃ次!最後は!」
芦戸の言葉に砂藤が「俺」とげんなりした様子で反応する。あれだけ驚きな部屋を見せられてしまったのだ。落ち込むのも無理はない。
「まーつまんねー部屋だよ」
そう言って砂藤はドアを開けると、そこは至って普通の部屋だった。
「轟の後は誰でも同じだぜ」
「ていうか、良い匂いするのコレ何?」
切島が宥めていると、尾白が鼻を嗅ぎながら言う。火野も吸い込んでみると、何かを熱で焼いたような甘い香りが漂っていた。その瞬間、部屋の本人の砂藤が「あー!!」と声を張り上げた。
「ああイケね!!忘れてた!!だいぶ早く片付いたんでよ、シフォンケーキ焼いてたんだ!!皆食うかなと思ってよォ…」
慌てて壁付近の台に置いてあるオーブンレンジから、見事にふっくらと焼き上がった1ホールのシフォンケーキを取り出す砂藤。
「ホイップあるともっと美味いんだが………食う?」
「「「KUU〜!!」」」
「「模範的意外な一面かよ!!」」
振り返る砂藤はそう聞くと、待ってましたと言わんばかりに女子達は飛び出していた。意外にもお菓子作りが得意な一面を持つクラスメイトに上鳴と峰田は皮肉そうにツッコむ。
「あんまぁい!フワッフワ!」
「瀬呂のギャップを軽く凌駕した」
「素敵なご趣味をお持ちですのね砂藤さん!今度私の紅茶と合わせてみません!?」
「オォ、こんな反応されるとは…まァ〝個性〟の訓練がてら作ったりすんだよ」
砂藤のシフォンケーキは均等に切り分けられ、その場に居た生徒達は試食する形で分け与えられた。味は勿論、女子が満開の笑顔になるほどの美味しさで、砂藤もこんなに好評とは思いもしなかったのか顔を真っ赤にして照れていた。
「ちっきしょー、さすがシュガーマンを名乗るだけうまっ!」
「ここぞとばかりに出してくるな……うまっ…」
餌で釣るやり方に納得が行かないようだが、その味は本物で、悔しがりながらもケーキを口に運ぶ事を止めない瀬呂と切島。
一先ずは一通り男子の部屋を見終えたA組生徒達。続いて女子の部屋を見る為に、シフォンケーキを「うまっ」と食べながら生徒達は一度1階フロアへと降りて行ったのだった。
No.101 部屋王は誰だ!そして…
更に向こうへ!Plus Ultra!!