いつかの明日へ、【ヒーロー】は助け合いでしょ   作:しょくんだよ

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女子部屋と結果と切磋琢磨


No.101 部屋王は誰だ!そして…

 

「まじで全員やるの…?大丈夫?」

 

「大丈夫でしょ、多分」

 

「……ハズいんだけど」

 

男部屋で砂藤を最後に見学をし終えたA組クラスメイト達は続いて女子寮を見る為に反対側の3階フロアへと移動する。トップバッターは耳郎の部屋で乗り気ではない本人は嫌そうにしぶっているが、他の女子達に肩を押され、耳郎は覚悟を決めたのかその扉を開けた。

 

「思った以上にガッキガッキしてんな!」

 

部屋を見るなり上鳴が叫ぶ。その部屋は見渡す限りの楽器部屋で部屋のスペースにこれでもかと言うくらいの様々な楽器が置かれている。

 

「へぇ、耳郎さんって楽器弾けるんだ!」

 

「あ、あんま見ないでくれる火野…?超ハズい……」

 

目を輝かせる火野に対して耳郎は顔を染めらせながら呟くと、続けて葉隠と麗日が部屋を見るなり口を開いた。

 

「耳郎ちゃんはロッキンガールなんだねえ!!」

 

「これ全部弾けるの!?」

 

麗日の質問に自身のイヤホンジャックを擦り合わせながら「まァ一通りは…」と耳郎は応える。

 

「女っ気のねえ部屋だ」

 

「ノン淑女☆」

 

上鳴と青山がここぞとばかりにボヤくと、耳郎は何事も無かったかのように彼らの後頭部にイヤホンジャックを突き刺し、爆音を提供させていた。

 

「次行こ次!!」

 

「次は私、葉隠だ!」

 

ぴょんぴょんと飛び跳ねる葉隠は、耳郎とは打って変わって移動すると、自信気に自分の部屋の扉を開ける。その部屋はピンクを主張した可愛らしいぬいぐるみやクッションが沢山置かれている部屋だった。

 

「どーだ!?」

 

「お…オオ」

 

「フツーに女子っぽい!ドキドキすんな」

 

普通に女の子らしい部屋に尾白と上鳴が照れ臭そうに見渡していると、コソコソと峰田が部屋に入り、衣類がしまわれているであろうケース状のタンスの前に立つと、くんかくんかと鼻を嗅ぐわせていた。

 

「プルスウルトラ」

 

「正面突破かよ峰田君!!」

 

僅かな隙間から香る匂いと、その中に眠っている楽園のお宝を目当てに峰田の心は卑猥な好奇心でフルスロットルだった。だが流石にヤバいと感じたのか怒る葉隠に代わり、瀬呂は肘からテープを射出させ、峰田をぐるぐるのがんじがらめにさせていた。

 

 

続いて、4階へと上がり芦戸の部屋へと移動する。またしても女の子らしい部屋だったが、濃いピンクや紫を主張としたかなり奇抜な部屋だ。

 

「じゃーん!!かわいーでしょーが!!」

 

「おォ…」

 

「可愛いらしい部屋だね」

 

「奇抜な部屋だな…」

 

自慢する芦戸に男子達は見惚れる中、火野が呟くと轟は率直な感想を述べていた。

 

次に同じ4階の麗日の部屋。

中に入るとこれもまた同じく至って普通の女子部屋だった。

 

「味気の無い部屋でございます……」

 

「おぉ…!」

 

きな臭い様子で紹介する麗日に男子達は声を漏らす。変わった所と言えば、エアコンが設備されているのに扇風機が置かれていた。恐らく扇風機をサーキュレーター代わりに使っているのだろう。だとすれば節約家の人物だ。

 

「何かこう……あまりにもフツーにフツーの女子部屋見て回ってると、背徳感出てくるね…」

 

「禁断の花園…」

 

麗日の部屋を見終え、一同は5階へと移動する最中、尾白が常闇にそう声を掛けると、後ろめたい気持ちで罪悪感でも出ているのか常闇はそう応える。

 

「次は蛙吹さん…」

 

「って、そういや梅雨ちゃんいねーな」

 

5階に上がり、緑谷が言うと先程から姿の見えない蛙吹に気付き、瀬呂が辺りを見つめながらそう言うと、麗日が声を掛けていた。

 

「あ、梅雨ちゃんは気分が優れんみたい!」

 

「優れんのは仕方ないな。優れた時にまた見してもらおーぜ」

 

残念そうに上鳴が言い、一同は蛙吹の部屋を後にする。全員が移動した後、麗日は心配した様子で蛙吹の部屋を見つめていた。そして麗日も後を追うと、蛙吹の部屋のドアが開かれる。僅かな隙間から顔を覗かせた蛙吹は、皆の後ろ姿をどこか悲しそうな表情で見つめていたのだった。

 

「じゃ最後は八百万か!!」

 

蛙吹を飛ばして最後の八百万にが上鳴が言う。

すると、八百万は少し困った表情で口を開いた。

 

「それが…私、見当違いをしてしまいまして…。皆さんの創意溢れるお部屋と比べて…」

 

八百万は一旦区切り、その扉を開ける。

 

「少々手狭になってしまいましたの」

 

視界に入ったのはおとぎの国の城にありそうなお姫様ベッドが部屋の2分の1程の大きさで置かれていたのだ。

 

「でけえーー!!狭!!どうした八百万!」

 

「私の使っていた家具なのですが…、まさかお部屋の広さがこれだけとは思っておらず…」

 

「(((お嬢様なんだね)))」

 

困ったように言い訳をする八百万に全員は苦笑する。ふと、火野は疑問に思っていた。これだけの巨大なベッド、どうやって部屋に入れたのだろうと。

 

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★☆

 

各自の部屋を一通り見終えたA組一同は、1階の談話スペースへと集合する。今回の部屋王が誰か決める為だ。

 

「えー皆さん、投票お済みでしょうか!?自分への投票はなしですよ!?」

 

司会っぽく務める芦戸が聞くと、皆は黙って頷いた。

 

「それでは!爆豪と梅雨ちゃんを除いた…第一回部屋王暫定1位の発表です!!」

 

持っていた投票箱に手を突っ込み芦戸は集計を行う。そして、1番多く入れられていた票の名を発表した。

 

「得票数5票!!圧倒的独走単独首位を叩き出したその部屋は!

砂藤ーーーーー力道ーーーーー!!」

 

「はああ!!?」

 

まさかの自分が部屋王と認定され、驚きを隠せない砂藤。その理由を芦戸を筆頭に()()()()が、涎を垂らしながら応えた。

 

「ちなみに全て女子票!理由は『ケーキ美味しかった』だそうです」

 

「部屋は!!?」

 

まさかの食べ物に釣れられた事に驚く男子生徒。すると解せないと思ったのか、上鳴と峰田が砂藤に突っかかった。

 

「てめーヒーロー志望が贈賄してんじゃねー!!」

 

「エサ上げりゃ良いと思ってんのか!?」

 

「知らねーよ、何だよすげえ嬉しい!」

 

怒られる砂藤だが、部屋王になった事に変わりない為か、上機嫌な様子で戯れていた。

 

「終わったか?寝ていいか?」

 

「うむ!ケーキを食べたので歯磨きは忘れずにな!」

 

「終わるまで待ってたんだ」

 

「優しいね轟君」

 

そんな様子を見ていた飯田に轟は眠たそうに声を掛けると、飯田はそう返し、最後まで付き合ってくれていた轟に緑谷と火野は感心していた。

了承を得た轟はその場から立ち去ろうとすると、麗日が急に声を上げて呼び止めた。

 

「あっ、轟君!ちょ待って!デク君も飯田君も…。それに切島君、耳郎さん、八百万さん、ちょっといいかな」

 

呼び止められた6人。何故その6人なのか、火野を含めた他の全員は何となく察して麗日に連れて行かれる6人の後ろ姿を、心配そうに見つめていたのだった。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★☆

 

 

部屋に戻り、小1時間が経過した。

戻って来た火野は、ウヴァが見たいと言っていた天体望遠鏡を見る為、体を貸してつい先程まで夜の星を眺めていたようだ。

 

「あ〜今日は疲れたなぁ」

 

思えば登校してからずっと体を動かしている。時計をふと見ればもうすぐで日付が変わってしまう時刻になっていた。「ヤバっ」と火野は声を漏らし、明日の必要なものを鞄へと詰め込んでいたその時だった。

コンコンッとドアの向こうからノックする音が聞こえる。 

 

「……あ?何だ?」

 

「誰か来たみたい」

 

一足先に寝ていたアンクが腑抜けた様子で目を覚まして言う。こんな時間に誰だろうと火野は思いながら「はーいっ」とドアに近寄り、扉を開けた。

 

「お…おす……火野」

 

「え、耳郎さんっ?」

 

そこに立っていたのはなんと耳郎だった。

 

「どうしたのこんな時間に?」

 

火野は理由を聞くと、顔を赤く染めらせた耳郎は「ちょっと……」と言って軽く部屋の中を覗こうとしながら続けて口を開いた。

 

「火野、ちょっとだけ話があるんだ。ここは見つかったら面倒だから…その、1階まで来てくれる…?」

 

「あ、うん。それは全然構わないけど、耳郎さんこそ大丈夫?」

 

「ウチは平気……あと、…ウヴァはまだ起きてる…?」

 

「え?ああ、起きてるよ」

 

「えと…呼んで来てくれる…?」

 

何だろう?と思いながら火野は頷き、自分のソファーに寝そべっているウヴァに声を掛けた。

 

「ウヴァ、ちょっと来て」

 

「ム……何だ?」

 

火野の呼び掛けに反応し、ウヴァは立ち上がってこちらに向かって来る。

 

「誰だこいつは?」

 

「同じクラスの耳郎さんだよ。もお、一緒のクラスメイトなんだから名前と顔ぐらい覚えろよな」

 

「フン。…俺に何の用だ?」

 

どうでも良いと言わんばかりな傲慢な態度で耳郎に声を掛けるウヴァ。すると、気まずそうにしていた耳郎の顔は一変し、怒りを露わにするような目付きへと変わる。そして…。

 

いきなりイヤホンジャックを伸ばし、ウヴァの後頭部に刺したのだ。

 

 

BOOWッ!!

 

 

「ウバァッ!!?」

 

「!?何だ!?」

 

瞬間、ウヴァの体内に爆音が鳴り響き、内側から破裂しそうな勢いでウヴァは苦痛の声を張り上げる。同時に寝ていたアンクも飛び起き、何が起こったのか火野達の方へと振り返っていた。

 

「え!?ちょ、耳郎さん!?」

 

「うオォ……!?き、貴様!いきなり何しやがる!?」

 

いきなりの行動に驚く火野と、爆音を提供させられ悶絶するウヴァ。すると、耳郎は大きく鼻息を出して口を動かした。

 

「これでウチの気は晴れた。ウヴァ、あんたが火野にやらかした事は本当はこれだけじゃ済まされないから。今後はしっかり反省して、火野をフォローしなよ」

 

「ぐっ…!何を言い出すかと思えば…!こんな事して貴様こそただで済むと思うなよ!?」

 

「なら、もう一度味わう?」

 

「ちょ、ちょっと2人共落ち着いて!」

 

どうやら耳郎は林間合宿の件を根に持っていたようだ。歪み合う2人の間に火野は慌てて入り、落ち着かせようと宥める。

 

「と、とりあえず耳郎さんっ、俺に話があるんだろ?ウヴァも十分反省してるみたいだから一旦1階に降りよ?」

 

「……わかった」

 

「おい!話はまだ終わってないぞ!」

 

「ウヴァ!とりあえず今は落ち着けって!時間も時間だし、他の皆は寝てるから…!」

 

これ以上騒げば他の生徒達に迷惑が掛かってしまう。火野は不貞腐れる耳郎の両肩に手を置いて1階に連れて行こうとしながら、ウヴァにそう言ってその場を後にした。

 

「……〜〜〜ッッ…!!くそっ!」

 

「…ハッ、お前も随分と恨みを買われたもんだなぁ?」

 

「アンク、お前にだけは言われたくない!」

 

腑に落ちないウヴァは叫びそうになる声を押さえて悪態を吐く。その様子を、アンクは悪戯心を持った子供みたいに、ニヤニヤしながら見ていたのだった。

 

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

1階談話スペースにて。

 

「…ごめん火野。かなり図々しい事しちゃった……」

 

「だ、大丈夫だよ。…ちょっとびっくりしちゃったけど」

 

熱が冷めたのか、落ち着いた耳郎は申し訳なさそうに謝罪する。突然の出来事に火野も動揺しているが、耳郎が怒る理由も察した為か、深く息を吐いて口を動かした。

 

「…ありがとう耳郎さん。俺の為に怒ってくれたんだよね?」

 

「い、いや…!ウチは別にそんな……!ウチこそ…火野に…謝りたくて……」

 

「俺に?」

 

笑顔でお礼を言う火野に耳郎は耳を真っ赤にして慌ただしく言う。その言葉に火野はキョトンとすると、取り乱していた顔は直ぐに冷静さを取り戻したみたいなのか、耳郎は口を動かした。

 

「あの時…、ウチも心配で緑谷達と神野区に行ったんだけどあんな(ヴィラン)を前にして、恐くて…何も出来なかった。爆豪だけを選択したウチ…後悔して……」

 

「……耳郎さん。俺は大丈夫だよ」

 

「え?」

 

本来なら火野に合わせる顔が無い。申し訳無い気持ちで一杯になる耳郎だが、火野は平然とした表情で口を動かした。

 

「捕まったのは元々俺が不意を突かれたのが悪いし。それに、耳郎さん含めてあの街に行った皆は()()()()()()()だと思って決行した事でしょ?俺も何とかなったんだから、謝る必要なんてこれっぽっちも無いよ」

 

「火野……。ま、まァでも梅雨ちゃんには呆れられちゃったけどね」

 

「え?どういうこと?」

 

火野はそう聞くと、耳郎は先程麗日に呼び出された件を説明した。なんでも、蛙吹は思った事を直ぐ口に出す性格らしく、彼女曰わく「ルールを破ると言うのなら、その行為は(ヴィラン)のそれと同じなのよ」と緑谷達に言い付けた。が、緑谷達はそれを無視して救けに赴き、蛙吹は何て声を掛ければ良いのかわからなくなってしまい、部屋王決定戦の時は部屋に閉じこもってしまったらしい。

 

「麗日さんのフォローもあって、その場は和解出来たけど…」

 

「……そっか。皆、元の生活に戻そうと頑張ってくれたんだね」

 

耳郎の言葉に深く頷く火野。すると、「よしッ」と火野は決意して座っていたソファーから立ち上がる。

 

「ありがとう耳郎さん。俺も迷惑を掛けた分、今回の件は反省して明日からまた頑張るよっ。だから耳郎さんも()()()()また明日からよろしくね」

 

「火野……そだね」

 

「うん。じゃあもう今日は遅いから部屋に戻ろう。また明日ね、耳郎さん」

 

火野はそう言い残し、自分の部屋へと戻るべく歩き出した。耳郎も立ち上がって「また明日」と言い、その後ろ姿を見送る。

 

「……()()通り……って言う訳にはいかない…かな……」

 

耳郎はそっと自身の胸に手を置く。まるでその胸の高なる鼓動を押さえるかのように、彼女はそう呟いたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★☆★

 

 

翌日、夏休みも残り僅かとなった日にA組ヒーロー科一同は相澤に呼ばれて、特別授業の朝のHRが始まった。

 

「昨日話した通り、まずは〝仮免〟取得が当面の目標だ」

 

相澤の言葉に全員は元気良く「はい!」と返事すると、相澤は続けて内容を説明する。

 

「ヒーロー免許ってのは人命に直接関わる責任重大な資格だ。当然取得する為の試験はとても厳しい。仮免といえど、その合格率は例年5割を切る」

 

「仮免でそんなキツイのかよ…」

 

合格率は分かりやすく言えば半分以下。現実を押し付けられ弱音を吐く峰田。すると、相澤は教室の扉に視線を向けると、くいっと指先で手招きをしながら口を開いた。

 

「そこで君らには1人最低でも2つ……

〝必殺技〟を作ってもらう!!」

 

その声と同時に教室のドアが勢いよく開かれる。堂々と現れたのは教師のミッドナイト、エクトプラズム、セメントスの3人。

そして、先程相澤が言っていた言葉に生徒達は感極まって声を張り上げたのだった。

 

「「「「学校っぽくてそれでいて、ヒーローっぽいのキタアァ!!!」」」」

 

 




次回!第10章 〜仮免取得〜

No.102 編め必殺技

更に向こうへ!Plus Ultra!!


ウヴァ「クソ!俺様が何故人間如きに好き勝手されなきゃならないんだ…!」

火野「仕方ないだろ、お前のしでかした事はそれだけ駄目な事なんだって。そんな事より、今は仮免許に向けて頑張らないと!」

アンク「フン、ようやく公共の場でもオーズの力が使えるようになるか。これで少しはマシに行動出来る」

火野「そうは行かないって、仮の免許なんだから。…ところでアンク、さっきから考え事?」

アンク「あ?……フン、おかしいと思わないか?合宿の時に突然ウヴァがお前の中から姿を現した…」

火野「それが何か?」

アンク「この試験…紫のメダルの暴走もそうだが、妙な胸騒ぎがする。……他の奴らも出て来るんじゃないかってなぁ…」

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