いつかの明日へ、【ヒーロー】は助け合いでしょ   作:しょくんだよ

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第一次選考と技披露と分断


No.106 白熱!各々の実力!

 

仮免許取得試験〝第一次選考〟。

様々な要素を取り入れたフィールドで、ボールをぶつけぶつけられの勝ち抜きバトルが行われた。受験者は3つの『ターゲットマーク』を好きな箇所にセットし、そのターゲットに当てる『ボール』は6個所持出来る。自身に取り付けた3つのターゲットにボールを当てられてしまえばそこで脱落。そして2人脱落させた者、先着100名が試験を通過出来るのだ。

 

 

 

☆★☆

 

 

 

「やっぱり、狙って来た!」

 

変身したオーズの声に緑谷は「うん…!」と頷きながらも、〝フルカウル〟を解かずに常時体へと張り巡らせている。開始直後に狙って襲い来る傑物学園並びに、他の候補生達。しかし、これは一種の慣習でもあった。

それは『雄英潰し』。

メディアに取り上げられたヒーロー科1年A組は、体育祭で〝個性〟は全て情報を流されてしまった為に、それを研究・対策を考えて数々の雄英生徒達は脱落してしまった話がある。

この一次選考は、団結と連携、そして情報力が鍵となるだろう。

緑谷、火野並びにここに集まる雄英生徒達は敵意を向ける他の候補生達に背中を獲られないよう円陣を組んで身構える中、傑物学園の生徒である甲殻な男が、()()弾かれたボールを見て呟いた。

 

「ほぼ弾くかァーーー」

 

「ま、こんなものでは雄英の人はやられないよな」

 

「けどまァ…見えて来た」

 

〝硬質化〟ーーー…

 

一筋縄では行かないと身構える真堂に甲殻の男は持っていた4個のボールを両手で捏ねると、硬質なボールへと変化する。ソレを「任せた」

と言って岩場の下にいたロン毛の男に投げ渡すとロン毛の男も察したのか「任された」と言い受け取った。

 

「これうっかり僕が一抜けする事になるかもだけど、そこは敵が減るって事で大目に見てもらえるとありがたいかな」

 

そう言いながら、独特なポーズを構えるロン毛の男。まるで全身の力をボールに注ぎ込むような行動にオーズは警戒すると、ロン毛の男は大きく振りかぶった。

 

「ターゲットロックオン!シュアッ!」

 

〝ブーメラン 軌道弦月〟

 

振り上げると同時に放たれたボールは地面の中へと突き進んで、地中から緑谷達へと押し寄せる。

 

「ボールが地中に!?」

 

「皆下がって!ウチやる!」

 

地中からでは何処からボールが出て来るのか把握出来ない。焦る緑谷だが、耳郎がそう言って緑谷達の前へと出る。

 

「(〝音響増幅 アンプリファー・ジャック〟)」

 

耳郎はイヤホンジャックを伸ばし、両手の甲に取り付けてあるスピーカーのようなサポートアイテムへと差し込む。そしてソレを地面に当てると同時に、自身の心臓の音を最大限にサポートアイテムへと流し込んだ。

 

「〝ハートビートファズ〟!」

 

心音がサポートアイテムによって大爆音と鳴り、その地面は轟音と共に地響きを起こす。亀裂が前方へと走り、地面は勢いよく割れ崩れた。

 

「おォォ!抉りやがった!?」

 

抉れた地面でバランスを崩す候補生達。それを見ていたオーズは耳郎に声を掛けた。

 

「凄いよ耳郎さん!」

 

「あ…う、うん…!これがウチの編み出した技だよ…!」

 

褒められた耳郎は顔を赤く染めながら頷く。だが、先程ロン毛の男が飛ばしたボールは割れた地面の隙間から飛び出して来た。

 

「オイラに来てるう!!」

 

どうやら狙いは峰田のようで、驚く峰田に接近してくるボール。すると、一早くソレに気付いた芦戸が峰田へと駆け出した。

 

「粘度溶解度MAX!〝アシッドベール〟!」

 

振り上げた右腕に粘性の強い酸を纏い、ボール目掛けて振り下ろす。直撃したボールは跡形も無く溶けていった。

 

「た、助かった!いい技だな!」

 

「ドロっドロにして壁を張る防御技だよーー!」

 

芦戸の新技に救われた峰田は礼を言い、芦戸もそう応え、気合いを入れ直して身構える。

 

「皆んなカッコよく仕上がってる…!よォし、俺も負けてられない!」

 

新技を次々と披露するA組に、オーズは意気込みを入れると、両脚に力を溜める。すると、バッタレッグが能力解放状態となり、蝗のような脚へと形を変えると、その場を勢いよく上空へと跳躍した。

 

「はァア…!ハァッ!!」

 

跳躍したオーズは、そのまま候補生達付近の場所へと急降下し、地面を蹴るように脚を叩き込んだ。すると地面に地響きが走り、耳郎と同様に地面に再び亀裂が走り地割れが起きた。

 

「うォ!?また抉れた!!」

 

「アレがオーズか!?」

 

「なんつー脚力してんだ!?」

 

蹌踉めきながらも候補生達はオーズの存在に驚き、驚愕していた。

 

「うおっと…!どうだっ!」

 

「馬鹿!余所見すんな!」

 

「あ、ごめん!」

 

相手を怯ませて小さくガッツポーズを作るオーズだが、迫り上がっていた岩場に立っているアンクに指摘され、ハッとしたオーズは緑谷達の元へと跳躍して戻る。

 

「連携が崩されたな…これで隙が生じる!〝深淵闇躯(ブラックアンク)〟!」

 

「言いやすくカッコ良くなってる」

 

今度は常闇が先陣を切り、ダークシャドウを体に纏わせ鎧のように形状を変える。技名も変わっており、緑谷はボソッと言うと常闇はボールを持たせたダークシャドウの腕を伸ばした。

 

「〝宵闇よりし穿つ爪〟!!」

 

傑物のツインテールの候補生に攻撃を仕掛ける常闇だが、反応した女子生徒は「危な!」と言うと、その上半身が体に引っ込めるように消え、その攻撃を避けた。

 

「ふー…強い」

 

下半身からひょこっと顔だけを覗かせて息を吐く女子生徒。どうやら体を自在に引っ込めれる〝個性〟なのだろう。

 

「体育祭で見てたA組じゃないや。成長の幅が大きいんだね」

 

体育祭だけの実績を研究した真堂はその成長したA組達を見て笑顔でそう言うが、内心は焦っていた。それだけ苦難な訓練や経験を積み重ねた雄英生に度肝を抜かれているのだろう。攻防が続く中、突然アナウンスが聞こえた。

 

『えー、現在まだどこも膠着状態…。通過0人です…。あ、情報が入り次第私がこちらの放送席から逐一アナウンスさせられます』

 

始まってまだ数分しか経っていないが、今言われた通り通過はまだ0人。そう簡単に通れるような試験では無いのだろう。続けて迫り来る候補生達の攻撃を避けながら、オーズは考えていた。装着したターゲットは言わばその人の弱点。皆が皆、そこを狙うわけなので、例え運任せにボールを投げても当たる可能性は低いと見る。だが、先程の甲殻な男が「見えて来た」と言って仕掛けたのを確認するあたり、今の攻撃段階は様子見だと実感する。今はは相手の攻撃、行動、〝個性〟を予測している段階だとせれば、この戦いは加速すると踏まえていた。

 

「よォし」

 

その予測が当たるかのように、真堂は両手を擦り合わせ、意気込みを入れると同時にその両手を地面へと当てる。

 

「離れろ!彼ら防御は固そうだ!割る!!」

 

張り上げた声に傑物学園の生徒達は意思を読み取るように散らばって行く。雄英生徒達も何かを仕掛けて来ると身構えたその時だった。

 

 

「最大威力!〝震伝動地〟!!」

 

 

その瞬間、真堂を中心に地面は耳郎やオーズの比にならない程の地震が起き、地面は抉れ、破片が迫り上がった。

 

 

真堂揺

 

個性『揺らす』

触れたものを揺らす!ただし、揺れの大きさ・速度に応じた余震が体に来て動けなくなる!

 

 

 

「必殺技なら、当然こちらも編んでるよ!」

 

威力を最大限にした揺れは、真堂自身にも響いたのか余裕の台詞を吐くその額には大量の汗を流していた。そして、地震は止まる事無く、その一帯は災害が起きたかのように大きな地割れが起こっていた。

 

「うわぁっ!!?」

 

「チッ!あの馬鹿がっ!」

 

体制を崩して地割れに飲み込まれそうになるオーズ。アンクはオーズを見つけて不快そうに言いながら、オーズの元へと飛び出して行ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

『さて…そろそろ通過者が1人や2人、出てきてもいいんじゃないでしょうか…』

 

真堂が技を出した同時刻。目良がアナウンス越しに欠伸をしながらそう言っていると、場所は変わり、高層ビルが建て並ぶ街並みを模したエリアで、候補生の1人が微かに揺れた地響きを感知して口を開いた。

 

「地震…?〝個性〟か!?」

 

「目の前に集中しろォ!!」

 

「混戦で何がどうなってんのか……!」

 

「連携しろって!距離取って〝個性〟見ろ!」

 

ビルの下では他校の候補生達が一斉に〝個性〟を駆使してボールを投げ合っていた。その状況はまさに混乱戦。味方さえも巻き込んでしまいそうなボールの飛び交いに、もはや連携と呼べる状態では無かった。

ふと、1人の女子生徒がボールを投げようとしていたが、突然吹き荒ぶ〝風〟にハッとする。

 

「あ、ちょ、ボールが風でーーー…って、ええ!?」

 

かなりの強風なのか、候補生達のボールが次々と飛ばされている。

否、その強風で()()()()()が風に乗って飛ばされていったのだ。

 

「ボールだけが、巻き上げられてく!!」

 

「どーなってんだ!?」

 

混戦していた候補生達も、渦を巻く強風に驚愕し、その闘いはピタリと止んでいた。巻き上げられるボールを目で追っていくと、ビルの屋上でその〝風〟を片手で容易く扱っている夜嵐が立っていた。

 

「俺、ヒーローって!!熱血だと思うんです!!!皆さんの戦い!!熱いっス!!俺!熱いの好きっス!!」

 

各所に噴射口が装備されたボディに、防寒性コートのコスチュームを身に纏い、その右腕で暴風を操りながら夜嵐は淡々に、そして豪快に声を張り上げていた。

 

「士傑高校!!一人かよ!?」

 

「何言ってるんだ!?わかるけど…」

 

「待て、ボール取られたら俺達何も…」

 

「この熱い戦い!!俺も混ぜて下さい!!」

 

下にいる候補生達は驚きながら夜嵐を見上げていると、夜嵐はボールを集めた暴風に更に回転と威力を上げて大きく振りかぶった。

 

 

「よろしく!!〝お願いしまっス〟!!!」

 

 

お辞儀をするような勢いで、大量のボールを巻き上げた暴風をビルの下にいる候補生達へと叩き込む。風を纏ったボールは凄まじい速度で下の候補生に襲い掛かり、轟音と共に土煙がその一帯を覆った。

 

「…あ、ようやく1人目の通過が……」

 

一方、モニターに表示された通過者に目良が反応すると、その画面を見て『うおっ!?』と驚愕する。

 

『脱落者120名!!一人で120人脱落させて通過した!!』

 

「ハー、やったあ!!!勝てた!!」

 

その場にいたほぼ()()の候補生達のターゲットにボールを当て、脅威的な脱落者の人数を叩き出した夜嵐。流石の人数に目良も興奮気味にアナウンスし、本人の夜嵐も喜びながら拳を握る。

 

『えー…さて、ちょっとビックリして目が覚めて参りました。ここからドンドン来そうです!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★☆

 

 

夜嵐が通過した同時刻。

雄英と傑物が闘いを繰り広げていた岩場地帯。

真堂の技によって足場がとても儘ならないエリアと化しており、抉れた地面の隙間からオーズの顔がひょこっと覗かせていた。

 

「びっくりしたァ…。凄い〝個性〟を持ってるんだなぁ」

 

「グリードやオーズでは無く、ただの人間がここまでの力を身に付けるとはなァ…、だが好都合だ。映司、他の場所に行って連中共を潰すぞ」

 

「駄目に決まってるだろ、緑谷君や他の皆がどうなったのかわからないし」

 

「悠長な事ほざいてる場合か!」

 

「ちょ、ちょっと声大きいって…!…てか、お前随分と今回の試験は積極的だよな?」

 

「当然だ。免許が取れればオーズに変身しても騒ぎが起きない。学生が戦うなとか言う調子に乗っている連中もいなくなるってワケだ」

 

「…ひょっとして保須事件の根に持ってる?」

 

やけに協力的に提案するアンクだが、その狙いと軽く憎悪したような表情を見てオーズは顔を曇らせていた。

しかし、そんなやり取りをしている場合では無いとオーズはハッとし、状況を考える。

隙間から辺りを見渡してみるが、雄英生徒、他の候補生達の姿が見えない。オーズみたく、地面の隙間に警戒して隠れている可能性もある。それと先程真堂が行っていた『割る』と言う言葉。恐らく、この騒動で守りの固い雄英生徒を分断させる作戦での攻撃だったのだろう。

そしてオーズは仲間をどうやって探すべきかと考えていたその時だった。

 

「…火野……火野ッ……」

 

背後から呼ばれる声が聞こえ、オーズは振り返る。すると、地面の隙間から複製させた障子の口が見えた。

 

「障子君…!?」

 

オーズは反応し、目立たないようこっそりと障子の場所へ向かう。アンクも着いて行くと、そこには障子、八百万、蛙吹、耳郎の4人が隠れていた。

 

「皆、無事だったんだねっ」

 

「ウチらはなんとか…」

 

「火野さんもアンクさんもご無事で何よりですわ」

 

「あの傑物学園の子が地面を揺らした時、障子ちゃんが救けてくれたのよ」

 

耳郎、八百万が言い、3人を庇ってくれた障子に感謝しながら蛙吹がそう言うと、障子は辺りを警戒しながら口を開いた。

 

「どうやら他の皆は散り散りになった…。俺も辺りを詮索しているが、他校の奴らもこの辺りに潜んでいて中々見つけ出せない…」

 

「そこで、私考えたのですが無理に出て探すのでは無く他のエリアにこのメンバーで第一次選考を通過しようと思ってますの。ここで探していては、返って時間だけが過ぎて行くばかりですし、私達だけでも通過すれば後の皆さんの負担が減ると考えていますの」

 

「俺も八百万の意見に賛成だ。火野、お前はどうする?」

 

八百万の意見に賛同した耳郎と蛙吹は頷き、障子もそう言ってオーズとアンクを見遣る。確かに、先着100名と少ない中で、この場に残っている生徒でこのエリアで捜索しても、残っている相手は傑物学園の生徒が大勢居るだろう。またさっきの様に集まったとしても、真堂に地震を起こされてはいつまで経っても散り散りになる一方だ。考えこんだオーズは他の皆の心配をしながらも、それを同意した。

 

「…わかった、俺も一緒に行くよ。アンクも問題無いよな?」

 

「…まァ、少人数なら問題無いな。お前ら足を引っ張るなよ?」

 

「あぁ」

 

「任せてっ」

 

「ケロッ」

 

今は通過する事を優先したオーズは了承する。アンクも賛成し、障子、耳郎、蛙吹も頷き八百万はくるりと半回転して口を動かした。

 

「火野さんとアンクさんが居てくれるなら心強いですわ。では、先を急ぎましょう。隣の高層ビルのエリアなら、この人数でも何とか乗り切れますわ」

 

緑谷達なら上手く作戦を考えて動いてくれる筈だ。彼らを信じて、オーズ達はその場を見つからないように動き出し、後にしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★☆★

 

 

一方、その高層ビルエリア。

夜嵐によって120名を脱落させたそのエリアには先程までの混戦とは思えないくらいの不気味な静けさが漂っていた。

その高層ビルの屋上、フェンスの上に器用に立っている女子生徒がこちらに向かって来るオーズ達を見つめていた。

 

「…あ……来た…」

 

白色の制服、赤い蝶々ネクタイに、白色のベレー帽を模した帽子を被っており、いかにもお嬢様という肩書きを表した学生服に身を包んだ女性。髪もストレートの白の長髪で、風で靡かせながら女性は肉眼でオーズ達を確認しては、小さくそう呟いたのだった。

 





No.107 聖愛学院の策略

更に向こうへ!Plus Ultra!!
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