いつかの明日へ、【ヒーロー】は助け合いでしょ   作:しょくんだよ

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意図と通過と打倒の巻き返し


No.109 雄英LUSH!

 

突島と戦い、見事ターゲットを当てて勝利を掴んだオーズ。アンクの勝手な手助けもあってノルマは達成し、通過者となったオーズは八百万達が居るビル内へと足を運んだ。

 

「皆!」

 

「火野さんっ」

 

「火野、無事だったか」

 

そこには八百万、障子、耳郎、蛙吹が立っており全員は一斉に振り返ってオーズの安否を確認する。彼等のターゲットは全部青に発光しているのを見て全員は一次選考を無事に通過していた。

そして、八百万達の奥の方にはウヴァと横たわっている才がおり、ウヴァはオーズとアンクを見るなり「フン」と鼻を鳴らした。

 

「面倒な事をやらせてくれたな」

 

「まァ、そう言わずに。お陰で何とかなったみたいだしさ」

 

面倒臭そうに文句を垂れるウヴァを宥めながら、オーズはドライバーからコアメダルを抜き取り変身を解く。すると、横たわっていた才が火野に声を掛けた。

 

「この御方も…、貴方の〝個性〟でして?」

 

「うん、少し前に仲間になったんだ」

 

「……そうですのね。計画の〝第三段階〟までは順調でしたのに…いきなり溶接で加工した扉を()()()来るのは予想外でしてよ…。私の方程式がこうも簡単に覆されるなんて本当、想定外……」

 

才の計画はこうだ。先ず、1番の実力者を突島に陽動させてオーズをメンバーから外し、残りのメンバーがこのビル内に入り込んだと同時に索敵能力が高い耳郎と障子の〝個性〟を封じた。その後、八百万達の居る部屋を防壁シャッターで閉じ込め、唯一出られる扉は溶接で封じ、更には冷房に冷気をふんだんに送り付けて部屋の温度を下げる。これは『蛙』の〝個性〟である蛙吹の動きを封じる為だった。メンバーの殆どの〝個性〟を封じて、残された八百万が〝個性〟を使わせると言う計画だったらしい。

 

その場面で、何故ウヴァが八百万達と一緒に居たのか。それは火野がこのビルに入る前に八百万達に1つ提案を申し出たからだった。

 

 

 

☆★☆

 

 

『あのビルに入る前に、誰かの体にウヴァを付けて欲しいんだ』

 

『ウヴァさんを?』

 

『そう言えば、予選が開始してからウヴァの姿が見えないな』

 

『うん、始まる前に、俺達結構他校の人達に絡まられてたでしょ?有名人になったって事は、俺達の〝個性〟が多分把握されてると思って……ちょっと考えたんだけど、ウヴァは神野区から正式に仲間に加わったから、他校の人達はウヴァの存在を恐らく知らないと思ったんだ』

 

『成る程…ウヴァさんの存在を知られてない以上、敵にとってウヴァさんは予想外の存在ですわね』

 

『考えたわね、火野ちゃん』

 

『そういうこと。だから、あのビルに向かう前に、誰かにウヴァを憑依させたいんだ。良いかな?』

 

 

 

 

 

 

☆★☆

 

 

「…で、()()()()()の結果()()の中にウヴァを忍ばせたってワケ……ハァ」

 

「おい爆音女。何故溜息を吐く?」

 

「ウチの名前は耳郎!嫌に決まってんでしょ、お前みたいな奴を体に入れるなんて。本当にウチの体の中、何もしてないよね?」

 

「するか!」

 

ウヴァを憑依させた耳郎は嫌そうな表情で言い、もう一度深い溜息を吐いていた。その意図を聞いた才は、悔しそうに俯くが納得したのか口を開いた。

 

「裏の裏を読まれたわけですね…。認めましょう、私達の負けでしてよ……」

 

現実を受け入れ完敗した聖愛学院。火野達は勝利を掴み取り、メンバー達でハイタッチをその場で交わしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★☆

 

 

通過した火野達は、控え室へと赴いた。そこには先に通過した候補生達が待機しており、火野達も疲れた様子で中へ入ると、先に突破した轟が火野達を見かけて声を掛けた。

 

「火野、来たか」

 

「あ、轟君!通過したんだね」

 

「フン、先に通過したのか。映司、お前も1人で行動すれば手こずる必要なんか無かっただろ」

 

「無事に通過したんだから良いだろ別に」

 

「馬鹿が、俺が手伝ってやったからクリア出来たんだろ。…まァ、丁度いい憂さ晴らしが出来たから俺は満足してるがなァ」

 

「おまっ、ちゃんと手加減したんだよなッ?」

 

アンクのその言い方に火野はゾッとして確かめる為に聞くが、アンクは「さぁな」と言ってそっぽを向く。火野は深く溜息を吐いていると、八百万が轟に声を掛けた。

 

「轟さんも無事に通過出来て何よりですわ」

 

「あぁ、何とかなった…」

 

「流石轟ちゃんね」

 

轟はそう応え、蛙吹もそう言うと、後ろに居た障子が耳郎に向かって口を開く。

 

「他校の生徒達も侮れなかったな」

 

「確かにね……」

 

「…ム、何見ている?」

 

耳郎は頷きながら、ジト目でウヴァを見遣る。ウヴァも視線を感じてそう言っていると、轟は「とりあえず…」と口を動かした。

 

「他の奴らが来るまで休んでろよ…。あそこにターゲットを外す鍵があるから、そこで外してボールバックと一緒に返却棚に戻せば良いらしい」

 

轟が奥の方へ指を指しながら言う。指す方向を見ると、他の候補生が使われたボールを入れるバックとターゲットが置かれているのが見える。更に、控え室の各席のテーブルには軽い食べ物と飲み物が置かれていた。有難いと思った火野達は、早速ターゲットを外す為に奥の部屋へと行ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

『さて、立て続けに3名通過。現在83名となり残席はあと17名ー!』

 

休憩を程無くして約数分が経過した頃、試験会場に慣れて来たのか通過者が続々と増え出し、あっという間に残り20名を切っていた。そしてアナウンスが流れた時、身知れた顔馴染みが控え室へとやって来る。

 

「お!?お前等先に来てたんだなッ!」

 

火野達に声を掛けてきたのは切島で、その後ろからは爆豪、上鳴、更には緑谷、麗日、瀬呂の計6人の雄英生がゾロゾロとこちらに歩み寄って来る。

 

「皆さんよくご無事で!心配していましたわ」

 

「ヤオモモー!ゴブジよゴブジ!つーか早くね皆!?」

 

「俺達もついさっきだ。火野の提案で何とか通過出来た」

 

「轟君が1番早かったよ」

 

ホッと安堵する八百万に上鳴が驚いた様子で尋ねると、障子と火野がそう応える。すると、耳郎が納得した表情で上鳴に言った。

 

「爆豪も絶対もういると思ってたけど、なる程!上鳴が一緒だったからか」

 

「はァ!?おまえちょっと、そこなおれ!」

 

ちょっかい出す耳郎に上鳴はカチンと来たのか耳郎に怒鳴る。火野も轟と爆豪は先に来ているだろうと予想していたのだが、この順位で通過して来たとなると、余程相手が強かったのだろうと察する。

 

「お疲れ様皆、ターゲットを外すキーが奥にあるわ。ボールバッグと一緒に返却棚に戻せって」

 

やって来た6人に蛙吹が後始末の説明をして、上鳴達は早速ターゲットを外しに奥の部屋へと向かうが、「火野君」と緑谷は火野に声を掛ける。

 

「お疲れ様、通過出来たんだね」

 

「うん、八百万さん達と一緒にね。緑谷君もお疲れ様」

 

お互いの苦労を労っていると、轟もこちらに近寄って口を開く。

 

「A組はこれで12人か…」

 

「あと8人…」

 

「アナウンスでは現在通過82名……枠は後18人……飯田さん大丈夫かしら…」

 

雄英生の残り人数をボソッと呟く火野に続いて、八百万が残り枠と未だ通過していない飯田の事を気に掛ける。それに緑谷は反応し「飯田君…?」と心配していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

『ハイ、えーーー、ここで一気に8名通過来ましたーー!残席は残り10名です』

 

暫くしてアナウンスが鳴り、火野達はピクリと反応する。その8名に雄英生徒が入っているのかとソワソワして控え室の入り口の方へと見遣る。だが、入って来たのは傑物学園の候補生、真堂達であった。

 

「A組は…」

 

「あと8人…これ…全員はもうムリかなぁ…」

 

残り10名の人数に絞られた現状、8人も雄英生がまだ通過していないとなると、突破する希望が薄れていく。耳郎が弱音を吐く中火野は心配そうな表情を浮かべるが、グッと拳に力を入れる。数々の苦難を共にして来たクラスメイトがこんな所で落ちる訳が無い。微かな希望を信じて今は待つ事だけを考えていた。

 

その一方、八百万達が心配していた飯田は、偶然にも合流した青山と行動していた。

だが、彼等が居る場所は早く通過しようと焦る候補生達が集う激戦区のど真ん中。飛び交うボールや〝個性〟の攻撃を2人でフォローし合い避けるので精一杯だ。

 

「クソ!このままでは…!」

 

焦る気持ちが募り、飯田の思考は冷静では無い。その中、青山は「フフ…」と不敵に笑みを浮かべると、その場で立ちブリッジをし、天高くネビルレーザーを射出した。

 

「青山君!?何をしている!?待って…本当に何している!?」

 

突然血迷った行動をする青山に飯田は驚きながら尋ねると青山はプルプル震えながら言った。

 

「目立ってる☆」

 

「とってもな!違う!そうじゃなく!!」

 

天高く射出されるネビルレーザーに、候補生達も思わず手を止めて見つめて居るが、返って注目が集まってしまっている。急いで止めようとする飯田だが、青山は続けて口を動かした。

 

「僕を庇っていると共倒れ☆目立ってる僕は、もう()()()もターゲットをやられてる。あと一ヶ所で僕アウト。君に、譲っちゃう☆」

 

「!!」

 

「目立ってる僕を取りに来る人達の裏を取るんだよ。君のスピードなら…君1人なら、可能だろ?☆」

 

「なーにを急に言ってるんだ!!」

 

「急に聞こえるだろうけどね。僕はずっと、対等になりたかったのさ☆」

 

ネビルレーザーを出し続け、青山のお腹から下す生々しい音が聴こえる。どうやら言っている事は本当らしく、お腹を壊しても出し続けるつもりだろう。だが、飯田はそれを認めなかった。仲間を犠牲にしてまで勝ち上がるのは、自分の信念に反するからだ。そして、隙あらばと迫り来る他校の候補生達。この窮地をどう打開するか考えたその時だった。

 

 

「行っくよーーー!!〝集光屈折 ハイチーズ〟!!」

 

 

突如、上空から青山のネビルレーザーに引けを取らない程の眩い光が放たれる。

 

「った、まぶしっ!?」

 

「何も見えねー!!何だ!?」

 

「ッ!葉隠君!!」

 

候補生達は目をやられて怯んでいる中、飯田は頭上から着地したその正体、葉隠に気付き声を上げる。

 

「おまたせー!敵の視界封じたよ!常闇君!」

 

「御意、〝深淵闇躯(ブラックアンク)〟」

 

飯田にピースを見せながら、葉隠は叫ぶと同時に光は消える。すると、岩陰に潜んでいた常闇が姿を現し、ダークシャドウを覆うと目の前に居る敵目掛けてダークシャドウの両腕を放った。

 

「〝黒き(かいな)の暗々裏〟!」

 

「ぐあっ!?」

 

放たれた両腕は候補生達を薙ぎ払う。体制を崩し、立て直そうとする候補生達だが、違和感を感じて何故か足が動けなかった。

 

「なに!?なんだコレ…!」

 

「ハァッ!!」

 

「うがっ!?」

 

足元には紫のボールが付着しており、ソレに気を取られた候補生達の隙を突き、尾白が尻尾で迎撃していく。そして、紫のボールは血塗れになった頭部から投げまくっていた峰田の〝もぎもぎ〟だった。

 

「オラオラオラオラ取れる奴から取ってけぇ!!!」

 

「他に取られる前に!!」

 

「おおっ、皆ァ!!!!」

 

「雄英だ!!いつの間に!?」

 

尾白達の登場により、歓喜する飯田。候補生達も続々と集合する雄英生徒に驚きながらも、体制を立て直した奴らから反撃しようと攻撃を仕掛ける。

 

「もう一度行くよ!〝集光屈折 ハイチーズ〟!」

 

「ぎゃあ!?」

 

「また目が!?」

 

だが、攻撃をさせまいと葉隠が再び光を放ち、視界を奪われる候補生達。その隙に尾白と葉隠はボールを取り出して怯む候補生達のターゲットに当てた。

 

「お先ねー!!」

 

「俺も!」

 

『2名通過!!残りは8名!!』

 

ノルマを達成し、直ぐにアナウンスが流れる。雄英生登場によって場がどんでん返しとなった戦況を見て、青山は「ねえ」と顔を強張せながら言うと、それに割入って到着した芦戸が口を開いた。

 

「みーんな焦って大雑把んなってきて、敵も味方もぐっちゃぐちゃで周り全然見えなかったんだよー!」

 

「マジでヤバかった!」

 

喋る芦戸の背後からボールが飛んでくるが、岩の瓦礫を持ち上げて砂藤がそう言いながらガードする。そして、芦戸は飯田と青山へと振り返りサムズアップを見せながら言った。

 

「青山のおへそレーザーが見えたから!また集まれたねえ!」

 

「!」

 

まさか捨て身の策で放ったネビルレーザーが散り散りになったクラスメイトを集まるきっかけを作るとは思わなかった青山。目立って散ろうと覚悟していた青山は、釈然としない気持ちだが、集まってくれた事に実際は少しホッとしていた。

 

「もーらい!」

 

「うらァッ!」

 

「御免…!」

 

「や…やったァ…!」

 

『7名……5名!』

 

隙を突いて、芦戸、砂藤、別の場所では常闇、フラフラになった峰田がボールをターゲットに当てて通過する。

 

『続々と!この最終盤で一丸となった雄英が!コンボを決めて通っていく!』

 

アナウンスを送る目良が興奮気味に解説している中、観客席に座っていた相澤が、終盤まで残っていた雄英生徒達に呆れた様子で見守っていた。そして、『残り!2名!!』と続けて誰かが通過している中、飯田と青山もまたその波に乗ろうとボールを握り締めて駆け出す。

 

「青山君!何をもって対等なのか…、物差しが違う故わからんが!そして…!」

 

目の前から向かって来る候補生達に、飯田はそう言いながら、青山と同時にボールを振り翳す。

 

「君のおかけだ、ありがとう!」

 

敬意を評して、飯田はそう言いながら、ボールを敵のターゲットに当てる。同時に青山も当て、目良は感極まった様子で声を上げた。

 

『0名!100人!!今埋まり!!終了!です!

ッハーーー!!…これより残念ながら脱落してしまった皆さんの撤収に移ります』

 

「…ま☆僕のキラメキは止まらないってことだよね…☆」

 

「ああ!多分!わからんが!!」

 

自分の思考を貫く青山に対して飯田は受け流し気味にそう応えたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

その頃控え室で、目良の興奮熱狂のアナウンスを聞いた雄英生徒達は、残っていたクラスメイト達が無事に通過した事を知らされる。それを聞いた瞬間、「おぉおお〜〜〜…っ」と上鳴が腰を低くして、その溜めた声を張り上げて出した。

 

「しゃああああ!!!」

 

「スゲェ!!こんなんスゲェよ!」

 

「雄英全員一次通っちゃったあ!!!」

 

瀬呂と麗日も大喜びで叫び、雄英生徒達の場に歓喜の声が響き渡る。

 

「やったッ!本当、本当凄いよ皆!!」

 

「フン、ボールを当てるだけの試験に落ちる方がおかしいだろ」

 

「人間のやる事はおかしな事ばかりだ」

 

火野も喜んでいるその隣で、アンクは見下すようにボヤき、ウヴァも疑問を抱きながら、歓喜するA組生徒達の様子を眺めていたのだった。

 





No.110 救助演習

更に向こうへ!Plus Ultra!!
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