いつかの明日へ、【ヒーロー】は助け合いでしょ   作:しょくんだよ

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休息と嫌悪と第二次開始


No.110 救助演習

 

『えー、100人の皆さんこれ、ご覧下さい』

 

第一次選考を通過した候補生100人は、アナウンスの目良の声を聞いて映し出されたモニターへと注目する。

 

「フィールドだ」

 

「なんだろうね……」

 

緑谷、麗日が言う通り、映っているのは先程の試験会場だ。火野も何だろう?と思いながらその光景を見ていた次の瞬間。先程火野達が滞在していた高層ビルのエリアで小規模な爆発が起こる。その爆発は連鎖していき、次々と他のエリアも爆発が発生する。それは瞬く間に、試験会場全てが爆発によって崩れさった。

 

「((((ーーーー何故!!))))」

 

一瞬にして荒れ果てたフィールドと化した試験会場に雄英生徒達は驚愕した表情で思っていた。

 

「うわあ、もったいなァ…」

 

これだけの設備を完成させるのにかなりの資金が注ぎ込まれたと思うと、火野は少々乱暴に扱い過ぎでは無いかと思いながら声を漏らす。すると、アナウンス越しで目良が口を開いた。

 

『次の試験でラストになります!皆さんにはこれからこの被災現場でバイスタンダーとして()()()()を行ってもらいます』

 

「救助…!?」

 

目良の言葉に火野はハッとする。第一次選考は互いにボールをターゲットに当てる試験。それを例えるならば、(ヴィラン)との戦闘に対しての〝個性〟を使った戦い方。相手が未知数の敵だからこそ、どうやって攻略するかが試される試験。

そして、次に行われるのは救助活動。

災害や崩れた場所から人々を救け出すその活動は、ヒーローにとっての必要不可欠の内容だ。

 

「「パイスライダー?」」

 

「バイスタンダー!現場に居合わせた人の事だよ。授業でやったでしょ」

 

「一般市民を指す意味でも使われたりしますが…」

 

『ここでは一般市民としてではなく仮免許を取得した者としてーーー……どれだけ適切な救助を行えるか試させて頂きます』

 

一部理解に苦しむ者がいるが、葉隠と八百万が納得させ、目良がざっくりとした説明をアナウンス越しで言う。すると、荒れ果てたフィールドが徐々に拡大されて行き、何か見えたのか障子が「む…」と異変に気付く。

 

「人がいる…」

 

「え…あァ!?老人に子供!?危ねえ、何やってんだ!?」

 

砂藤が声を上げるそのモニターの先には、無人だった筈のフィールドに年齢差が大きく別れた人影が映っていた。瓦礫で碌に足場も無く、今にも崩れそうなエリアに躊躇無く足を運ぶ人々を見て、控え室は騒めきに包まれる。

 

『彼らはあらゆる訓練において今引っ張りダコの()救助者のプロ!!』

 

「要救助者のプロ!?」

 

HELP(ヘルプ) US(アス) COMPANY(カンパニー)』、略して『 HUC(フック)』の皆さんです』

 

「色んなお仕事あるんだな…!」

 

「ヒーロー人気のこの現代に則した仕事だ」

 

目良の説明を聞き、候補生達は HUC(フック)の人達を見て感心しながら驚く。

 

『傷病者に扮した HUC(フック)がフィールド全域にスタンバイ中。皆さんにはこれから彼らの救出を行ってもらいます。

尚、今回は皆さんの救出活動をポイントで採点していき、演習終了時に基準値を超えていれば合格とします。10分後にスタートしますので、それまでにトイレとか済ましといてくださいねー…』

 

「採点形式なのか…」

 

段々と声の音が小さくなり、フェードアウトするアナウンス。次の試験の内容を頭に入れて息を吐く火野に、ふと飯田が声を掛ける。

 

「緑谷君、火野君」

 

「ん?」

 

「この試験、()()()()か?」

 

「似てる…」

 

飯田の言葉に火野は数秒考え込むと理解したのかハッとする。緑谷は既にわかってたのか「うん…」と頷き応えた。

 

「神野区を模してるのかな……」

 

「俺達とアンク君やウヴァ君は爆豪君達を(ヴィラン)から遠ざけ…プロの邪魔をしない事に徹した…。その中で死傷者も多くいた…」

 

「ーー頑張ろう」

 

「…うん、今度は()()()で救ける番だ」

 

プロや(ヴィラン)の抗争に入り込み、自分達の事で手一杯だった彼等は、その巻き添えを食らった市民達を救ける余裕が無かった。だが今回の仮免試験に合格すれば、仮とは言え、

救けを求める人々に手を差し伸べる事が出来る。緑谷と火野はそのチャンスを絶対に掴もうと、決意を露わにしていたのだった。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆

 

 

「…フン。黙って説明を聞いてみれば、今度は演技地味た連中を救助……馬鹿がやる事だな」

 

「あぁ、くだらん。瓦礫の山くらい自分で這い上がって助かれば良いものを…」

 

「ちょ、駄目駄目!ヒーローになる為に救助活動は当たり前で必要不可欠だぞ。それに、普通の一杯市民が怪我してたら自力で助かるなんて難しいに決まってるでしょ、お前達グリードとは違うんだから」

 

10分の休息が入り、アナウンスを聞いていたアンクは面倒臭そうに言い、同意見なのかウヴァもそう言って頷く。()人間を利用して襲っていた彼等にとっては他人の命などどうでも良いのだろうが、火野は全力で否定してヒーローのやるべき事を伝える。

 

「チッ、…まァ、免許は必要だからなァ。映司、協力してやるが、アイスで手を打ってやる」

 

「ム、なら俺も何処か良い景色を眺める場所を教えろ。それなら手助けも考えてやらん事は無い」

 

「あぁもォわかったわかった!無事に合格出来たらな」

 

2人の要求に呆れながらも火野は了承すると、そそくさにその場から離れようとする。

 

「どこ行くんだ?」

 

「ト、トイレ!緊張解けたら一気にきちゃって!」

 

そう言い終わると余程我慢してたのか火野は早歩きでその場から離れて行く。アンクはその様子を見て深く息を吐いてその場に残っていた。

 

 

 

 

 

☆★☆★

 

 

「あ〜ぶなかったぁ…」

 

用を足してスッキリした表情で火野は男子トイレから出て来る。残り5分弱となった時間を見て、火野は控え室の広場へと向かおうとすると、目の前から士傑高校の金髪の女子生徒が歩いて来る。火野は軽く会釈をしてそのまま通り過ぎようとすると、女子生徒はすれ違い側に口を開いた。

 

「君、メダルを使ってる雄英の生徒だよね?」

 

「え…あ、はいそうですけど」

 

急に声を掛けられ、戸惑いながらも火野は応えると女子生徒は振り返り、ジロジロと火野を見つめながら口を動かす。

 

「色んな種類あるんだってね?どのくらいそのメダルを持って使ってるの?()()()以外は興味無いんだけど、私の()()()が気にしていたから君は特別。教えてほしいな…ねぇ、教えてよヒノエイジ君。君のこと」

 

「えっ…ま、まァ色々ある…けど…、ちょっ、近いっ…!」

 

ズイズイと詰め寄られ、体が密着するかしないかの瀬戸際で顔を覗かせて来る女子生徒。逆に気味が悪いくらいの笑顔と距離を気にしない彼女に、色々引っ掛かる発言があったが火野は焦って少し引き気味になる。

 

「ごめん!この試験が終わってからでも良いかなッ?俺ちょっと今急いでるから、じゃあね!」

 

「あ…」

 

慌てて火野は彼女から離れ、手を合わせて謝るとそそくさにその場から駆け出す。呼び止めようとする彼女の視線を感じながらも、火野はその場から立ち去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

試験の緊張とそれを解す為に控え室は会話で賑わっている中、瀬呂は上鳴と峰田に声を掛ける。

 

「なァなァすげー事あってさァ、聞いてくれよ」

 

「Rは?」

 

「18」

 

「聞こう!」

 

18と言うワードにピクリと反応した峰田は興味津々に応え、瀬呂は続けて士傑高校の女子生徒に指を指しながら口を動かした。

 

「士傑のボディスーツいるじゃん?あの女の人」

 

「いる」

 

「『良い』…という話なら甘い。オイラはもうさっきからずっと彼女を視…」

 

「素っ裸のまま緑谷と岩陰にいたんだよ!!」

「「緑谷ァ!!!」」

 

瀬呂の言葉を聞いた途端、峰田と上鳴は形相を鬼のように変えて緑谷へと詰め寄る。

 

「何してんだてめェはァ!?俺たちが大変な時にてめェはァ!?」

 

「試験中だぞ!ナメてんのか人生を!!」

 

「わ、痛いやめて、何!?」

 

今にも襲い掛かりそうな勢いで来る2人に訳もわからず戸惑う緑谷。

 

「とぼけんじゃねえ、あの人と!お前は!何をして…」

 

峰田はビッと士傑の女子生徒に指を指す。すると、騒動に気付いたのか、女子生徒もこちらを見つめており、その場に居た3人と目が合う。その瞬間彼女はニコッと微笑み、緑谷に向かって軽く手を振ったのだった。

 

「良い仲に進展した後男女がコッソリ交わす挨拶のヤツをやってんじゃねーか!!」

 

「見損なったぜナンパテンパヤローー!!!」

 

「あ…ああ成る程、瀬呂君か!違うよ、そういうんじゃないってば!〝個性〟の関係だよ!ていうか、わけわかんなくてめちゃ怖かったんだよ」

 

血走った目付きで怒りをぶつける峰田と上鳴の言動に緑谷は気付いて言い訳をすると、ジッと緑谷を見つめる麗日の隣に居た火野が声を掛けた。

 

「緑谷君あの子と相手してたの?俺さっきすれ違った時に声掛けられたんだけど…ちょっと近寄り難いって言うか、怖かった感じだったなぁ」

 

「え、火野君喋り掛けて来たんだ」

「「あァ!?」」

 

士傑の女子生徒を見ながら苦笑いして火野は言う。緑谷がそう応えると、その矛先は火野へと変わった。

 

「おまっ!!火野ォ!!何でテメーが声を掛けられてんだよ!!」

 

「イケメンか!?轟に次いでのイケメンだからか!?変身する高性能な上の!その上から発言かゴラァ!!」

 

「ちょ、まっ!?何だよ急に!?」

 

殴られそうになるのを必死に腕を交差して防御していると、上鳴と峰田の後頭部に耳郎のイヤホンジャックが突き刺さり、2人の体は内側から弾けた。

 

BOOW!!

 

「「ギャア!!?」」

 

目が飛び出そうな程の顔で2人は断末魔をあげ、その場に倒れ込む。耳郎は「うっさいアホ共」と悪態を気絶している2人に吐き捨てる。

 

「あ、ありがとう耳郎さん」

 

「…別に」

 

礼を言う火野だが、何故か不満気な態度で彼女はそっぽを向いて歩き出す。その行動に火野はハテナマークを浮かべながら首を傾げていた。

 

「…ん?おい、士傑がこっち来てんぞ」

 

ふと、通過者用の支給された食べ物を摘んでいた切島が雄英生徒に声を掛ける。その目の先には士傑の生徒達がぞろぞろとこちらにやって来る。

 

「爆豪君よ」

 

「あ?」

 

全身体毛で覆われた士傑の(恐らく男子)生徒が爆豪に声を掛けた。

 

「肉倉…糸目の男が君のとこに来なかったか?」

 

「ああ…ノした」

 

言われて思い浮かんだ爆豪はそう応えると体毛の男は「やはり…!」と頷き、口を動かす。

 

「色々と無礼を働いたと思う。気を悪くしたろう。あれは自分の価値基準を押しつける節があってね、何かと君を見て暴走してしまった。雄英とは良い関係築き上げていきたい。すまなかったね」

 

「良い関係…!?」

 

「良い関係…とてもそんな感じではなかった…」

 

律儀に謝罪をする体毛の男。今は敵同士の関係でもあるのにも関わらず、こうしてわざわざ謝りに来る素行を見る限り、この男は士傑のリーダー的存在なのだろう。そして良い関係というワードに、いつの間にか起き上がっていた峰田が血走った目付きで緑谷と火野を睨み付け、方や緑谷は戸惑いの目でそう呟く。

 

「それでは…」

 

「おい、坊主の奴」

 

言う事を伝えて士傑の生徒達はその場を立ち去ろうとすると、突然轟が夜嵐に声を掛け呼び止めた。

 

「俺、なんかしたか?」

 

「……ほホゥ」

 

振り返った夜嵐は敵意、或いは憎悪に満ちた目で轟に睨み付ける。試験始まる前の風格とはまるで違うその表情に、何かあったのだろうかと周りの生徒達は思っていた中、夜嵐は一歩前に出た。

 

「いやァ、申し訳ないっスけど…エンデヴァーの息子さん。俺は()()()()が嫌いだ。あの時よりいくらか雰囲気は変わったみたいスけど、あんたの目は…エンデヴァーと同じっス」

 

エンデヴァー。轟にとってそれは聴きたく無い言葉だろう。それに加えられハッキリと申し上げられる拒絶の意志に、轟は目を見開いた。

 

「夜嵐、どうした」

 

「何でもないっス!!」

 

体毛の男に呼ばれて夜嵐は直ぐにその場を後にする。異様な緊迫感に包まれた雰囲気は解け、緑谷は心配そうに「轟君…」と声を掛けようとするが、轟の険しい表情を見てそれは踏み止まっていた。

 

「轟君、気にしなくて良いから」

 

「火野…」

 

そんな彼に近付いたのは火野だ。肩にそっと手を置いて話しかける彼に、轟の表情は少しだけ穏やかになる。

 

「事情は詳しくはわからないけど、轟君は体育祭の時よりも随分と表情がわかりやすくなったって言うか、打ち解けてくれたって感じがする。上手くは言えないけど、轟君が困ってたら俺…俺()がついているかさ」

 

「………ああ、ありがとう」

 

励ましの言葉を入れる火野。轟は礼を言って頷くが、その顔はまだ拭い切れない表情だった。

火野はその様子を見て無言で轟の肩をポンポンと叩き、轟から離れようとすると、小さな声で呟いた。

 

「…メンドくさいな、さっさと潰しちゃおうか」

 

 

「?…何か言ったか?」

 

「…あれ、え?…ごめん、何か言った轟君?」

 

「いや、お前が………いや、何でもねぇ」

 

上手く聞き取れなかった轟は聞き返そうと声を掛けるが、火野も聞き取れなかったような顔で轟に応える。噛み合ってない会話に轟は首を振ってその場を終わらせようとするが、「あ…」と火野は何処か解せない様子で轟の背中を見つめていた。

そして、その会話を全く聞いていない部外者が1人反応していた。

 

「(何だ…?今、微かに……)」

 

「やけに険しい顔だなアンク」

 

辺りをキョロキョロと警戒するように見回していると、ウヴァが気になったのか声を掛ける。

 

「おいウヴァ、お前感じなかったのか?」

 

「…?何がだ、相変わらず喧しい人間の声とその人間の視線ならさっきからずっと感じているが?」

 

同じグリードのウヴァにそう聞くが、ウヴァは控え室にいる候補生達を見ては嫌気をさしていた。火野の体から離れてグリードの体として行動しているが、それは五感が無い状態を意味する為、人の会話はノイズが走る雑音にしか聞こえない。

 

「……あぁ、確かに五月蝿い部屋だここは」

 

ウヴァが全く反応しなかった、同じグリードである故にだ。それが気の緩みとなってしまったのか、アンクは気のせいと感じてウヴァの発言に同意していた。

その時。

 

火災報知器みたいな警報が大音量で響き渡り、候補生達はビクッと肩を上げ驚く。

 

 

(ヴィラン)による大規模事故(テロ)が発生!』

 

「演習の想定内容(シナリオ)ね」

 

「え!?じゃあ…」

 

『規模は◯◯市全域、建物倒壊により傷病者多数!』

 

「始まりね」

 

何も説明無しに始まる試験。本番のような想定内容に火野は強張りながらも説明に耳を傾ける。

 

『道路の損壊が激しく救急先着隊の到着に著しい遅れ!到着するまでの救助活動はその場にいるヒーロー達が指揮を執り行う。1人でも多くの命を救い出す事!!! START!!』

 

一次選考同様に控え室の天井や壁が展開され、中に居た候補生達は合図と同時に一斉に飛び出す。

 

「何だ、いきなりだな」

 

「映司、始まってるぞ!」

 

「わ、分かってる!」

 

雄英と同様にいきなりスタートする試験。アンクとウヴァは火野に合流し、声を掛けると火野は反応が出遅れしまいながらも、オーズドライバーにタトバのメダルを装填し、オースキャナーでドライバーをスキャンした。

 

 

「変身ッ!」

 

 

 

タカ!

 

トラ!

 

バッタ!

 

 

 

 

 

再び火野はオーズ、タトバコンボへと姿を変えバッタレッグの脚力でその場を蹴って跳躍する。アンクとウヴァも遅れまいと後を追いかけた。

次の試験は救出活動の採点方式と目良が説明していたが、その基準は一切明かされていない。

 

「分からない以上、とにかく目の前の人を救ける…!」

 

今分かるのは基準値を規定範囲内に達した時クリアと見做される事。二次選考は非常事態のシナリオにどれだけクラスメイトや他の人と協力して救け出すかの課題になるだろう。雄英で培った訓練授業を意識して、オーズは駆け出して行く。

 

「あ、火野!」

 

声がする方向をオーズは見遣ると、そこには耳郎、尾白、葉隠らしき人物が走っていた。

 

「火野、一緒に行動しよう!この試験、頼れる奴が居た方が動きやすいと思うんだ!」

 

「わかった!」

 

尾白の言葉にオーズは同意し、ここから見える高層ビルがあったエリアへと移動した。

一足先に到着したオーズは、その目〝タカアイ〟を目視して周囲の様子を伺うと、何かを発見したのかビルの瓦礫に囲まれた所へと移動する。

 

「い、いでぇえエ…!足がァ…挟まって…!動けねぇッ…た、助けてくれぇ…!!」

 

「大丈夫ですか!?」

 

そこには頭から血を流し、苦痛と共に助けを求める御老人の人が瓦礫に埋もれていた。この人が目良の言っていた HUC(フック)の人なのだろう。

オーズは駆け寄ると、合流した耳郎達が老人を発見すると、慌てて駆け寄って来た。

 

「大変!瓦礫に埋もれてる!?」

 

「直ぐ救けないとーー」

 

葉隠が驚き、耳郎がそう言って飛び出そうとした瞬間、オーズが「耳郎さん待った!」とそれを止める。直ぐにオーズは老人が埋もれた瓦礫の周りを確認すると、耳郎達に声を掛けた。

 

「この人足が痛いって言ってたんだ。今無理に引っ張り出せば、怪我が悪化するだけだと思うし何より力ずくで瓦礫から退かせば振動で崩れるかもしれないから。先ずはゆっくりと瓦礫を退かせよう!アンク、ウヴァ!」

 

「あ?何で俺が…」

 

「アイス!」

 

「チッ…」

 

状況を把握し説明を終えたオーズは、後ろに居たグリードの2人に声を掛ける。ウヴァは無言を貫くが、こちらに近寄って来る辺り了承したのだろう。だがアンクは面倒臭い態度をとってるが、オーズの交換条件に舌打ちしながらもしぶしぶこちらに近寄る。

 

「今瓦礫を退かしますから、もう少しだけ耐えて下さいっ」

 

「うう…!痛ぇッ…!」

 

老人に声をかけてながら、オーズは崩れないように慎重に瓦礫を退かし始める。ウヴァとアンクも手伝うが、老人の態度とわざとらしい発言を聞いたアンクは不服そうに舌打ちした。

 

「…チッ、演ーー」

「アンクッ!」

 

『演技』と言うワードを言い掛けたが、オーズの叱りつけるような一声に黙り込む。

 

「火野、俺も手伝うよ!」

 

「ありがとう尾白君」

 

「わ、私も!」

「ウチも…!」

 

率先して動いたオーズ達に、気を取られた尾白はハッとして瓦礫を持ち上げる。葉隠と耳郎も手伝おうとするが、オーズはそれを止めた。

 

「ここは俺達で大丈夫!耳郎さん、〝個性〟で辺りの状況を確認して欲しいんだ。まだ他の場所にも怪我してる人が残されてるかも、葉隠さんもそっちに周ってくれると助かるんだけど…」

 

「わ、わかったよ!」

 

オーズの指示に葉隠は了承する。瓦礫を退かすのは女性の力では無理だと遠回しに言われているがそれが現実だ。

そして、耳郎は「う、うん」と頷きオーズを見遣る。慎重に救助活動を行いながらも、オーズは常に被害者の老人に声を掛け続けていた。

そんな彼の姿を見つめていると、やはり面倒臭くなったのか、瓦礫を捨てながら耳郎に声を掛けた。

 

「全くお人好しな奴だ…」

 

「え?」

 

「あの馬鹿は自分を犠牲にして他人ばかりを気にする…。()()()で…」

 

「それって…」

 

アンクの発言に耳郎は尋ねると、自分の発言を気にしてアンクは目を泳がせながら、オーズを見つめて言った。

 

「あいつはオーズとしての素質も実力もある。…だが、目の前にいる人間を救ける為ならそれ以上の実力を持ってる。どんな奴でも手を伸ばす……それが映司だ」

 





No.111 その者は飾られる

更に向こうへ!Plus Ultra!!
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