いつかの明日へ、【ヒーロー】は助け合いでしょ 作:しょくんだよ
救出演習と襲撃と出てくる者
仮免許取得試験〝第二次選考〟。
一次選考で使われた様々な要素を取り入れたフィールドは、
「救護所は控え室で!」
「だいぶ広いぞ!一時救出場を設定しよう!」
「トリアージはとりあえず私やります!」
状況を把握した他の候補生達は連携を取り合い、重症の負傷者を匿える安全な場所を作り始める。そしてトリアージとは、負傷者の重症度に応じて治療の優先度を決める係でもあり、その準備は着々と行われていた。
「もう大丈夫です!今、安全な所へ運びますね!」
「あァ…、すまないな…」
救助者を瓦礫から救い出したオーズは、老人を慎重に抱き抱えながら声を掛ける。老人は礼を言って頷き、オーズの対応を観察して無言でコクコクと再び頷いていた。
「火野、向こうにも人が居るよ!数は…2人!」
「わかった、葉隠さん、尾白君、ウヴァ、アンク!俺はこの人を安全地帯に運ぶから、耳郎さんに従って救助者を見つけてくれるッ?」
「まっかせてー!」
「わかった!」
「ああ…」
「チッ、まだいんのか…」
イヤホンジャックで位置を把握した耳郎の知らせにオーズは頷き、その場に居た4人に任せてオーズは救助者を抱えてその場を後にする。
瓦礫と化したビルから出ると、他の候補生達が連携を取って救出場を作っていた。1人の候補生がオーズの存在に気付くと、声を掛けてくる。
「君!その人は…!?」
「あ、はい!要救助者です、足を負傷していますけど意識は正常で会話もしっかり出来ています!」
「わかった、とりあえず俺達がその人を引き受ける」
「助かります!じゃあ俺は他に取り残された救助者を見つけますので!」
「ああ、頼む!」
救助者を引き渡したオーズは礼を言って尾白達がいる場所へ戻ろうと振り返る。すると、こちらに向かって子供を抱えた緑谷が走って来ていた。
「あ、火野君っ!」
「緑谷君!その子は?」
「近辺の瓦礫の側で見つけたんだっ。今から安全な場所へ送り届けるところ!」
緑谷に抱えられた子供は頭から出血しており「うう…ひぐっ」と泣いて怯えていた。すると、1人の女子生徒が近付き、「見せて!」と声を掛ける。
「頭から出血してるわね…重症度が酷い救助者は控え室があった場所に連れて行かなきゃ!」
「じゃあ僕がこのまま運びます!」
指示を受けた緑谷はそのまま抱えて目的地へと駆け出す。オーズは何か言いたげに手を伸ばそうとするが、今はやるべき事が残っていると我に返り、緑谷に背を向ける。
「(緑谷君…)」
「(火野君…)」
「((お互い頑張ろう!))」
声に出さず、互いは背を向け合ってそう思い、やるべき事を成す為に駆け出した。仮免許取得の為、そして多くの市民達を救い出す為に、その足を、手を少しでも伸ばそうと前へと進んだ。
☆★☆★☆★☆
「もうすぐ安全なところだからね」
「ううっ…えぐ……」
指示を受けた場所へと走って向かう緑谷は、控え室だった場所へと到着する。そこには、既に他校の候補生達が救出場として使われており、要救助者が大勢運ばれていた。
「もうこんなに…!?」
「!君!その坊や見せて!」
「あっハイ!」
先に来ていた候補生がトリアージをしていたのか、緑谷に声を掛ける。緑谷はゆっくりと子供を下ろしながら容態を説明した。
「頭怪我してます、出血多いけどそんなに深くないです!受け答えはハッキリしてます!」
「………うん!じゃあ右のスペースに運んで!」
子供の容態を確認した候補生はそう応え、緑谷は「はい」と頷いた。
☆★☆
「怪我人のふるい分けに応急処置…。救急隊が来るまでの僅かな時間、その代わりをヒーローが勤め…そして円滑な橋渡しをできるようにしておく……」
候補生達が試験に全身全霊で務めている中、薄暗い空間で、一際体の大きな男が独り言のように喋る。
そして視点は変わり、フィールド全体を見渡してモニターをチェックしている目良にその男の通信が入った。
『調子は?』
「初動はまァ…至らない者も多いですが…それでも
『フン!最近の
目良が報告した直後、通信を入れた男とはまた
『相変わらずうるさい奴だ、このご時世
『あァ!?』
「あの〜すみません。喧嘩なら他所でお願いしますか。
通話越しで揉め事になる男達に目良は面倒くさそうに言ってフォローする。2人の男は沈黙してしまうが、それは了承したと捉え、目良は続けてモニター画面をチェックし、口を開いた。
『じゃァ、合図したら
☆★☆★☆★
「…よし、耳郎さん他に救助者は!?」
「……大丈夫、今のところこれで全員!」
要救助者を救け出したオーズは、他にいないかと耳郎に尋ねると、イヤホンジャックで探っていた耳郎はそう言って地面からプラグを抜いて立ち上がる。
「ここら一帯は全員救け出せたみたいだね」
「火野君凄いね!あんなに正確な指示出せるなんてビックリ!」
尾白も一息を入れ、葉隠は的確に動いていたオーズを褒めると、オーズは口を開いた。
「ありがとう。なんか、自然と頭と体が動いちゃって…。それより、他の区域も調べてみよう。まだ取り残されてる人が残ってーーー」
BOOM…!BOOOOM……!!
瞬間、何処かで爆発が起きたのか
「うわっ!」
「何だ!?爆発!?」
「しかも連続…!?」
爆発に驚く尾白達。瓦礫の高い場所にいたアンクはその方角を見ており、気付いたオーズが声を掛ける。
「アンク、何か見える!?」
「さっきの待機してた場所の近くで2箇所爆発が起きてるな…。……ほおォ…どうやらこの試験、ただ人間を助けるだけじゃなさそうだぞ」
「え、どういうことだよ…っ」
何か理解した様子でオーズに伝えるアンク。オーズはその言葉の意味に疑問を抱くが、同時に試験が始まった時の目良の説明が頭を過る。
「これも演習の
『
オーズがそう言った直後にアナウンスが流れる。想定内容通りの演習なら、大規模破壊の発端となる
「火野、あんたは追撃に行って!」
「え…、いやでもっ、他の市民が」
耳郎の言葉に反応するオーズ。取り残された
「ここは私達で何とかするよ!」
「そうだな。オーズの〝個性〟のお前なら
「皆……」
背中を押されるような発見にオーズは受け入れ「うん!」と強く頷く。すると、ウヴァに向かってオーズは口を開いた。
「ウヴァ!耳郎さん達と一緒に救助にまわってほしい!」
「は?何言ってやがる。敵が出たなら俺も行くぞ、暴れれる絶好の機会だ!」
「
「断ると言ってるだろが!」
本心をぶつけるようにオーズに叫ぶウヴァ。無言で救助を手伝ってはくれたのだろうが、内心は嫌々で仕方なく、だったのだろう。だが時間は待ってくれない。言う事を聞かないウヴァにオーズは唸り声を上げて人差し指を突き出した。
「ウヴァ、家庭用のプラネタリウムって知ってる?」
「ム……家庭用…?」とウヴァは耳を傾ける。
「あぁ、自宅の中で…そりゃもう堪らないくらい最ッ高の絶景が見れる物があるんだ。ソレ、欲しくない?」
興味が有るその素振りにオーズは続けて交渉すると、ウヴァは一度辺りを見渡しながら興奮していた気持ちを整える為にゆっくりと息を吐く。
「……忘れんじゃねえぞ?」
「決まり!行こうアンク!」
「フン…」
承諾したウヴァを見てオーズは直ぐにアンクに声を掛けてその場を跳躍する。ウヴァを見ながら鼻を鳴らしたアンクは、
2人の背中を見送る耳郎達。すると、ウヴァは耳郎に声を掛ける。
「耳女、埋まってる人間共はどこだ。直ぐに教えろ」
「耳郎!!言っとくけど、火野がいないからってサボるのはナシだから」
「わかっている。…ククク、〝ぷらねたりうむ〟が、俺を待っているからな…さっさと案内しろ!」
えらくやる気に満ち溢れているウヴァ。アンクのアイスの件と言い、こうも単純な生き物なのかと耳郎、尾白、葉隠はウヴァを見つめてそう思っていた。
☆★☆★☆★☆
「ハッ!人間をちまちま救けるより潰しがいがある
「お前爆豪君みたいだな…」
「あんな奴と一緒にするな!で、
「右の方!飛ばすよアンク!」
「フン、誰にモノを言ってる!」
脚部に力を入れて強く踏み出し速度を上げるオーズ。アンクもそれに負けずと後を追いかける。そして、目的の場所へと到着すると、会場の壁が抉れており、土煙の中から人影が動いているのを確認してオーズは身構えた。
「…フン!随分とヒーローらしい格好の奴が来たな?俺の相手をするのはお前かァ!?」
「…あ!貴方は、プロヒーローの〝シシド〟!?」
土煙から晴れ、
ライオンヒーロー シシド。
『ライオン』の〝個性〟文字通りライオンっぽい事は何でも出来る〝個性〟。その見た目も似せているのか哺乳類の牙を模したマスクや首飾り、毛皮のような分厚いマフラーを着込んでいる。小柄にして威厳を放っている風格で、彼はヒーロービルボードチャートJP第二次15位の上位に匹敵する野生溢れるヒーローだ。
「凄いッ本物…確か『
「詳しいな!だが今は
近頃ニュースで見た記憶を辿ってオーズは呟くと、シシドは声を張り上げ思い切り地面を踏む。同時に後ろに大きく振り上げる右腕にオーズは感付き、横へとジャンプして避ける。
「うわっととッ!?」
振り翳した拳はブォン!と空気を押し除ける音がしていた。シシドはオーズを睨み付けており、それは獲物を見つけて機を伺うライオンそのものの眼をしている。プロの威厳か、本気で食い殺そうとしている獣の殺意か、目の前の
「フン、随分とライオン染みた見た目をしてやがるな」
「そりゃ、プロだからな…〝個性〟もライオンでカッコいいし…」
「ライオン…百獣の王の名を持つ動物…か。なら、こっちもその名に相応しい…いや、それ以上のメダルで格の差ってヤツを見せつけてやるか。映司、このコンボで行け!」
シシドを観察し、アンクはオーズに2枚のメダルを投げ渡した。
「おっと!よぉ……し……」
受け取ったオーズは意気込みを入れてそのコアメダルを確認する。
「………」
「……おい、どうした?」
だが、オーズは何故かメダルを取り替えずにジッとコアメダルを見つめていた。アンクは気になって声を掛けるが、同時にシシドも何もしてこないオーズに声を掛ける。
「どうしたァ!?何もしてこねえならこっちからやんぞ!!」
「なっ!?おい映司!」
両腕を後ろに振り上げながら飛び出すシシド。立ち尽くして何もしないオーズにアンクは急いで駆け出した。
瞬間、オーズはシシドに向かって顔を上げる。そして、同時にアンクは異様な気配を感じ取った。
「!?」
「さっきからうるさいよ。そこの
直後、オーズは呟くように言った瞬間、シシドに向かって駆け出し、シシドよりも低い体勢にしゃがみ込むと拳をシシドの懐に向かって叩き込んだ。
「ぐおっ!?」
持ち上げられた体は宙に浮き、そのまま勢いよく上空へと飛んでいき離れた場所へと落下する。オーズは殴った拳を痛かったのか振るい、首を傾けてゴキゴキと音を鳴らし始める。
「ま、まさか……!?」
アンクはその
「…やァ、久しぶり…アンク。相変わらず変わらないね君は…」
「ッ!?その喋り方…、お前…『カザリ』だな…!?」
独特な喋り方に指先を擦るような仕草をするオーズ。直ぐにそれが同じ
「それより感謝するよアンク。わざわざ僕のコアメダルを渡してくれるなんて…どうやって奪い取ろうか考えてたんだけど、お陰で手間が省けた」
メダルを見つめて不気味に笑っているように見えてしまうその仕草。情報量が多過ぎなのかアンクは強く舌打ちをして睨み付けていた。
なんでカザリが?
何故このタイミングで出て来た?
ウヴァと同様にまたしても火野の中から突然現れた?
奪い取ると言うことは前から存在していたのか?
「…クソッ!最悪だ。こんな大事な時に…
「君にだけは言われたくないね、アンク」
一旦考える事を吐き捨てるように悪態吐くアンク。だが気分はドン底に突き落とされるみたく落ちる一方だった。
No.112 一か八か最後の手段
更に向こうへ!Plus Ultra!!