いつかの明日へ、【ヒーロー】は助け合いでしょ   作:しょくんだよ

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終了と結果と不安


No.113 その結果は…

 

カザリを身体から分離させようと、決死の覚悟で火野はプトティラコンボへと姿を変えた。その作戦は成功し、オーズの身体からカザリが放り出されたのだが、それを観客席から見ていた相澤はオーズの姿を目視してバッと席から立ち上がった。

 

「どうしたイレイザー?」

 

「…マジで何やってんだあいつ…!?正気か…!?」

 

始めてプトティラを目にするその姿はとてもヒーローとは思えない凶悪感を示しており、低い姿勢でアンクとカザリを睨んでいる。相澤は血相を変えて捕縛布を手に取り、足を踏み出そうとした。

たが、ピタリとその場に立ち止まる。その瞬間相澤は、塚内警部と話していた会話を思い出していた。

 

それは、神野区の事件以降の出来事だった。

 

『相澤君、もし火野映司君が紫色の姿に変身して、見境無く暴れ出したら直ぐに止めてほしい』

 

『…?変身してしまった直後じゃないんですか?』

 

『僕も最初はそう考えていたんだけどね。でも、彼は約束し、アンク君もいざとなれば止めると宣言してくれたからね…』

 

『お言葉ですが塚内さん、そんな呑気に…』

 

『責任は、僕が全てとるよ。…だから、もし()()出来るのであれば、その時は教師として見守って置いてくれないか?』

 

 

 

「………」

 

思い返した相澤は、無言で捕縛布から手を退き、席へと座り込む。

 

「だ、大丈夫かイレイザー?」

 

「……今はな…」

 

突然の行動に驚くMs.ジョークは相澤に声を掛ける。相澤は静かにそう応え、目線の先にいるオーズから監視する様に見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

場所は変わり、プトティラへとその身を変えたオーズ。姿勢を低くして、今にも飛び掛かりそうな態勢を取るその姿に、アンクは息を呑みながら警戒していた。

 

「…相手が悪いね。僕は一旦身を退かせてもらうよ」

 

「!?カザリ!!」

 

アンクが目を離した隙に、カザリはその場から跳躍する。気付いた時にはもう遅く、カザリは途轍もないジャンプ力で瞬時にその場から離れ、会場の外へと逃げてしまっていた。

 

「ウゥッ…!!」

 

「っ!クソ!!こンの大馬鹿が…!!」

 

今すぐにでも追いかけたいアンクだが、目の前にいるオーズを放っては置けなかったのか、オーズを睨み付け悪態を吐き捨てる。その直後だった。

 

「オラァッ!!随分と派手な攻撃してくれたなァ!?」

 

「!?」

 

オーズの後方から怒りを上げる声が聞こえる。アンクはそちらを見遣ると、先程カザリに飛ばされたシシドが全速力でこちらへと向かって来ていた。

 

「チッ!おい!今こいつに近寄るなっ!!」

 

今のオーズでは例えプロだろうと無事では済まないだろう。ましてや理性を失っているとなれば、その身の安全は保障されない。それを知らずに駆けて来るシシドにアンクは止めようと声を荒げた。

だが、そんな悠長な時間など与えてくれる筈も無く、オーズは気配を感じたのか迫るシシドへと勢いよく振り返った。

 

「ハァッ!!」

 

「!!」

 

瞬間、オーズは 鼻から口にかけてを覆う強化外骨格(ノーズブロッカー)から冷気をシシドに目掛けて放つ。初見攻撃のせいか、シシドは腕を交差して防御を取るが、冷気は足元に当たり、一瞬にして下半身が地面事凍らされた。

 

「クソ、んだこりゃあ!?」

 

身動きが取れず苛付きが募り吠えるシシド。すると、オーズは息切れを起こしながらも咄嗟に()()を確認するように見つめる。それに気付いたアンクは駆け出した足を止め、オーズの方へと見遣った。

 

「映司…!?」

 

「ハァ……ハァ……アンク!大丈夫!!」

 

なんとオーズはアンクの方へと見つめ、自身が暴走していない事を言葉で伝えた。この一連の出来事でプトティラを制御出来たのだ。アンクは驚いた様子で目を見開くが、制御が出来たとわかった途端、オーズに向かって怒鳴り声を上げる。

 

「この馬鹿がっ!余計な心配と手間取らせやがって!」

 

「も、文句言うなよ!俺だって必死だったんだから…!」

 

「チッ!制御出来たならさっさとカザリを追うぞ!メダルをごっそり持ってかれた!」

 

「事情は何となくわかってたけど…やっぱりウヴァみたいにグリードが俺の中から出て来たのか…!?」

 

オーズは言うと、続けて「けど…」と口を開く。

 

「今は試験中だから、それが終わってからな!」

 

「あ、おいっ!!」

 

緊急事態と言えど、試験はまだ終わってはいない状況。カザリの復活により、かなり時間をとってしまったが、本来やるべき事の仮免許試験(そっち)を最優先にし、シシドを行動不能にしているのを確認したオーズは、ギャングオルカがいる場所へ向かおうとする。

紫色の翼竜を模した翼を出現させたその直後、ビーーッ!!とブザーが鳴るような音がけたたましく会場全体に鳴り響いた。

 

「うわっ!?えっ!?」

 

『えー、只今を持ちまして配置された全てのHUC(フック)が危険区域より救助されました。誠に勝手ではございますが、これにて仮免試験全行程終了となります!!!』

 

「!?」

 

突然のアナウンスで終了を知らされ、これから挽回しようとしていたオーズは驚いた様子であたふたしていた。プトティラの姿で戸惑っているのは異様な光景だが、それどころでは無いアンクはカザリが跳んで行った方角を見遣る。既にカザリの気配は感じ取る事が出来ず、かなり遠くに行ってしまった事にアンクは強く舌打ちをしていた。

 

『集計の後この場で合否の発表を行います。怪我をされた方は医務室へ…他の方々は着替えてしばし待機でお願いします』

 

目良はそう言ってアナウンスを切る。試験を受けた候補生達は緊張していた心と疲れた体で深い息を吐きながら指示通りに行動を開始する。そんな中、オーズに凍らされていた氷が綺麗に砕け散り、シシドは動ける様になっていた。すると、耳に着用していた通信機から連絡が入る。

 

『だいぶ苦戦していたようだな』

 

「あァ?……()()()()()()()()()()()()()()()()だけだ。それにこの〝プロテクター〟が邪魔になった」

 

シシドはそう言って自身に付けている〝拘束用〟プロテクターを見る。かなりの重量と強力なバネでも仕込んであるのか、反発して思うように動く事が出来なかった様で、シシドは文句を垂れ流しながら、通信機のギャングオルカに口を開いた。

 

「あいつ…オーズの〝個性〟を持った火野映司だっけか?一応上のもんに報告した方が良さそうだな」

 

『…ほぅ?貴様が認めるとはな』

 

「違うわ!様子がおかしかったんだよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

  

 

「「「制御出来たぁ!?(ですの!?)」」」

 

「う、うん……何とか出来たみたい…」

 

試験が終了し、制服へと着替えた候補生達は結果報告を聞く為再びフィールドへと足を運んでいた。その間、A組達の中で切島、耳郎、八百万はオーズがプトティラで自我を保つ事が出来たのを聞いて驚きの声を上げる。

 

(ヴィラン)感が凄かったあの姿をコントロール出来たって事?」

 

「すげェ!それならもう敵無しじゃねえか!」

 

「流石火野君だ!」

 

耳郎、切島、そして飯田が火野を評価し、褒め称えていた。彼等は神野区で一度その姿と暴走していたのを目の当たりにした為、余計に制御出来た事に驚いているのだろう。火野は「あはは…」と苦笑するが、浮かない顔をして歩いていた。

 

「火野君?」と、俯向く火野に緑谷が声を掛ける。

 

「え、あぁ…ごめんごめん。緑谷君もお疲れ様」

 

「あ、うんお疲れ様…。火野君も闘ってたんだね」

 

「うん、ちょっとだけね…」

 

()()()()?」

 

火野の言葉に疑問を抱いて尋ねると、火野は「いや、何でもない」と言って誤魔化しながら、耳郎達の方へと見遣った。

 

「どうかなァ…」

 

「やれる事はやったけど…どう見てたのかわかんないし…」

 

「こういう時間いっちばんヤダ」

 

「わかる」

「わかる」

 

「わかります。人事を尽くしたならきっと大丈夫ですわ」

 

試験を挑み、結果報告にそわそわしながら緊張を紛らわせようとA組達は話し合っていた。今ここでグリードが復活したと報告すれば返って心配や不安を思わせてしまうと考えた火野は、結果報告がわかるまで、その事件を胸にしまう事にした。第一カザリが介入した事により、アンクと対峙してしまった時間が恐らく審査の人達に見られてしまっている。二次選考が採点方式なら、火野が受かる可能性が極めて低い。火野は深い溜息を吐きながら、呆然とした様子で歩いていた。

そんな中、候補生達とは少し離れた場所で、アンクから事情を聞いたウヴァは驚いた様子でアンクに向かって口を開く。

 

「カザリの奴、やはり復活しやがったのか…」

 

「あぁ、おかげでメダルが殆ど持っていかれた…!」

 

「コアメダルが!?貴様何してやがった!」

 

「あ?お前こそ一体何処でサボってた?」

 

「お前等がいない間に俺は人間を救けていたんだぞ!」

 

「ほォ…?律儀にこの試験の為に精を尽くしていやがったのか?こっちは酷い目にあったってのに、お前はえらく呑気にほっつき歩いていたもんだなァ?」

 

「何だと…!?」

 

「フン!どのみち映司に取り憑いたカザリを止める所を審査している人間に見られた。この試験はもう落ちたも同然だろな」

 

アンクはそう吐き捨て、苛々が治らないのか地面にあった小石を思い切り蹴飛ばす。カザリが復活してしまったお陰で試験どころでは無かったのだろう。完全に落ちたと言わんばかりな顔をするアンクを見て、影で人間を救っていたウヴァは腑に落ちない表情をしながら「クソ!」と悪態を吐いていた。

 

 

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

『えー…皆さん、長いことお疲れ様でした。これより発表を行いますが…その前に一言』

 

モニター画面が後ろにある壇上の前に、目良が立ち、マイクに向かって集まっている100名の候補生達に喋り出す。いよいよ発表される結果発表に、候補生達は不安と緊張の空気が澱んでいる中、目良は続けて指を2本指し出しながら喋り出す。

 

『採点形式についてです。我々、ヒーロー公安委員会とHUCの皆さんによる、二重の減点方式であなた方を見させてもらいました。つまり危機的状況の中でどれだけ間違いのない行動を取れたか審査しています』

 

その言葉に、火野の表情は曇っていた。自身の行いでは無いとは言えど、要救助者を救ける有無関係無くトラブルを起こしてしまった。それがプロとなったとして、実際に今日みたいな出来事があれば決して許される事では無い。

 

『とりあえず合格点の方は五十音順で名前が載ってます。今の言葉を踏まえた上でご確認ください…』

 

目良はそう言って、モニター画面に手を向けると、そこには合格者の名前が画面一杯に並んで表示されていた。騒めく候補生達の中、自身の名前が表示されて喜ぶ生徒達の声が上がる。対して雄英のA組クラスでは、「み…み…み…」「みみみみみ!」と緑谷と峰田が必死に自分の名前を探していた。火野も受かってはいないだろうなと半分諦めた様子で、恐る恐るモニター画面の一覧に目を向けた。

 

「………え?」

 

思わず声に漏らしてキョトンとする。は行が終わった2列目の下に『火野映司』と名前が記載されていたのだ。

 

「あ…あった…!?」

 

「あ?何言ってやがる映司、欲に塗れて幻覚でも見えたのか?」

 

「違う!ほ、ほら!あそこ!見て!」

 

興味を無くしていたアンクに火野は懸命にそう伝え、アンクは面倒くさそうに見遣る。ウヴァもつられてモニター画面を見つめると、名前があったのを確認したのか目を見開いていた。

 

「お…オォ!やはり俺が人間を助けたからだろ!」

 

「……ハッ。何だ、案外チョロいもんなんだなこの試験」

 

「そんなわけ無いだろ…でも、よかったァ……」

 

トラブルを起こした筈なのに合格している事にホッと安堵する火野は、クラスメイト達の方を見つめる。まず先に見つけたのは緑谷で、声に出さずともわかりやすい表情で「!!!」と驚いていた。

 

「峰田実!あったぜ!」

 

「あったァ…」

 

「あるぞ!!」

 

「よし…」

 

「コエーーー…」

 

「麗日ァ!!」

 

「フッ」

 

「よかった…」

 

「メルスィ!」

 

「あったぜ!」

 

「わー!!」

 

「点滴穿石ですわ」

 

「ケロッ」

 

「やったー!」

 

「っしェーい!!」

 

「あった…けど」

 

「…ねえ!!」

 

次々とクラスメイト達は合格してあったのか喜びの声を上げていた。すると切島も見つけたようだが、心配そうに隣にいる爆豪を見遣る。爆豪はどうやら受かっていなかったらしく、名前が無い事に驚愕した様子で汗を流していた。

 

「……」

 

それは轟も同じで、名前が記載されていないモニター画面を黙って見つめていた。同時に気が付いた火野は、轟になんて声を掛ければいいのかわからず戸惑っていると、「轟!!」と人混みを掻い潜ってこちらに迫って来る男、夜嵐に目が行った。ズンズンと轟に近寄り、その身長相まって見下すように轟を見つめる。控え室でもいざこざがあったのを思い出していた火野はこれはヤバい雰囲気では無いかと心配そうに見つめていると、それを掻き消す様に「ごめん!!」と夜嵐は地面に頭を打ちつける程の深々の謝罪をした。

 

「あんたが合格逃したのは、俺のせいだ!!俺の心の狭さの!!ごめん!!」

 

突然の謝罪に轟は若干目を見開いて驚いていた。言っている事から察するに、夜嵐も試験に落ちてしまったのだろう。すると、夜嵐に向かって口を開く。

 

「元々、俺が蒔いた種だし…よせよ。お前が直球でぶつけてきて、気付けた事もあるから」

 

轟はそう言って謝罪を止めさせようとする。2人が何故落ちたのか、その原因が何なのかわからずにいた火野は、同じく心配そうに見つめていた緑谷へと尋ねる。

 

「轟君、士傑のあの子と何かあったの?」

 

「うん…試験中にちょっと喧嘩して……」

 

「大事な試験だと言うのに、揃いも揃って何してやがる」

 

「あぁ?…フン、調子に乗るな虫ケラが」

 

「んだと…!?」

 

「やめろ2人共」

 

事情を聞いた火野は驚いた様子で言葉が出せずにいると、ウヴァがアンクを見遣って嫌味ったらしく小さく呟くと、聞こえたのかアンクが睨み付けるように言う。喧嘩腰になる2人を火野が止めると、夜嵐と轟を見ていたクラスメイト達がぞろぞろと集まって来た。

 

「轟……落ちたの?」

 

「うちのスリートップ、2人も落ちんのかよ!」

 

芦戸と瀬呂が驚いた様子で声を掛けると、もう1人落ちた爆豪に上鳴が機嫌良く口を開く。

 

「暴言改めよ?言葉って大事よ。お肉先パイも言ってたしさ、原因明らか」

 

「黙ってろ殺すぞ…!」

 

明らかに掛ける言葉を間違えている上鳴に当然爆豪は本当に殺しかねない殺意を向けて言う。普段から言葉遣いが荒いのもあってか、爆豪が落ちた理由は聞かなくても見てわかる火野は密かに苦笑を浮かべていた。すると、自分が合格して調子に乗っているのか峰田が轟に声を掛けていた。

 

「両者ともトップクラスであるが故に、自分本位な部分が仇となったわけである。ヒエラルキー崩れたり!」

 

空気を読むもクソも無く、肩に手を置いて悠長に喋る峰田。まるでザマァと思っている様な腹が立つ顔。だが、それはいけないと思ったのか委員長の飯田は無言で峰田の首を半回転させて距離を取らせていた。

 

「火野は合格出来たんだな」

 

「真の強者…」

 

「いや…俺こそまぐれだよ」

 

ふと、障子と常闇が火野に声を掛けるが、火野はそう言って横流していると、目良が一通り確認出来た候補生達を見ながら口を開いた。

 

『えー、全員ご確認頂けたでしょうか?続きましてプリントをお配りします。採点内容が詳しく記載されてますので、しっかり目を通しておいて下さい』

 

そう言っている間に、黒服の公安委員会であろう人達からプリントが配られる。

 

「切島君」

 

「あざっス!」

 

「よこせや…!」

 

「そういうんじゃねぇからコレ…」

 

「上鳴君見してー」

 

「ちょ待て、まだ俺見てない」

 

『ボーダーラインは50点、減点方式で採点しております。どの行動が何点引かれたか等、下記にズラーっと並んでます』

 

名前を呼ばれてプリントを受け取る生徒達。その間に目良の説明が入る中、黒服の男が火野にもプリントを差し出す。火野は「はいっ」と返事をして受け取るとさっそくプリントへと目を通した。トラブルがあったのに何故受かったのかが気になって仕方がないのだろう。だが、先ず先に目に入ったのは点数だった。

 

「え、うわ…ギリギリ…」

 

「何点だ?見せろ」

 

「あっ、ちょ」

 

点数を見て驚く火野に、アンクが横からプリントを奪い取る。まだ目を通していない火野の催促を放って、アンクはプリントに目を移した。

 

「〝50〟点…ハッ、本当にギリギリだな」

 

点数はボーダーラインギリギリの50点。それを見て鼻で笑うアンクだが、下の文を見てその顔は徐々に曇らせていた。

 

「『二次試験の最中、人格を持った〝個性〟と喧嘩をしてしまった事について大幅減点。本番でそのような事態を起こすのは決して許され無いので、上手く連携を取って行動するように』…だと?フン!どんな状況だったかも知らないくせに上から目線でモノを言いやがって…!」

 

「おい、俺にも見せろ」

 

恐らく下の文に書いてある反省点を読んだのだろう。アンクは手を震わせ、公安委員会に睨み付けながら文句を言うと、今度はウヴァがプリントを奪って確認した。

 

「…ほう。『もう1人人格を持った〝個性〟が、仲間と連携を取り、不安がっている要救助者に耐えさず()()を振る舞い、迅速な救助活動を行っていた。』か。フン、やはり俺が活躍していたおかげだな、アンク?」

 

「あァ?黙れこの八方美人の虫が」

 

「何…!?この恩知らずが!」

 

「だからやめろってば!ウヴァ、俺もまだ見てないから返せよ!」

 

再び言い争いになるアンクとウヴァを止めながら、火野はウヴァの持っていたプリントをとって目を通す。一次試験についても高評価の方が多く、二次試験もざっくりに前半は良かった等と記載されていた。

 

「……でも、合格出来たのはウヴァのおかげだな。ありがとう、ウヴァ」

 

「ム……と、当然だ!それより映司、約束忘れるなよ?」

 

「わかってるって。帰ってからネットで注文しておくよ」

 

前半がどれだけ頑張っていようと、ウヴァがいなければ試験に合格する事が出来なかったであろう。火野は感謝すると、ウヴァは少し照れ臭そうにしながらもそう言ってそっぽを向いた。

一方でアンクの方を見遣ると、機嫌は損ねたまま腑に落ちない顔をしている。見兼ねた火野はアンクにもお礼を言った。

 

「アンクも、最初の試験の時フォローしてくれてサンキュー」

 

「…………フン、まァ…俺が居たから最初の試験を突破出来たのもあるからな。映司、お礼はとびきり美味いアイスだ」

 

「はいはい」

 

相変わらずの態度だが、内心は少し喜んでいるのだろうか口元が緩んだのを見逃さなかった火野は安堵した様子でそう応えた。

 

『合格された皆さんはこれから緊急時に限りヒーローと同等の権利を行使出来る立場となります。すなわち(ヴィラン)との戦闘・事件事故からの救助など…ヒーローの指示がなくとも君達の判断で動けるようになります。しかしそれは君達の行動一つ一つにより大きな社会的責任が生じるという事でもあります』

 

目良が再度アナウンスで喋り出す。

オールマイトという偉大なヒーローが役目を終え、その1人によって抑制されていた犯罪者が増えてしまっているこの世の中。心のブレーキが治らず、犯罪に手を出す人が増える状況。その崩れた均衡を変えるのがこれから社会に向けて顔を出す候補生の若い人達と言うのを伝えられた。試験中の怠そうにしていた目良とはまるで違うその説明に火野達は、合格したのも相まってか、その手はグッと握られていた。

 

『そして……えー、不合格となってしまった方々』

 

一回区切り、目良は再び声を出す。その声に反応した轟、爆豪、夜嵐を含めた一握りの不合格者が顔を上げた。

 

『点数が満たなかったからとしょげてる場合じゃありません。君達にもまだチャンスは残っています。3ヶ月の特別講習を受講の後、個別のテストで成績を出せば君達にも仮免許を発行するつもりです』

 

「「「!!?」」」

 

まさかの挽回させてくれるチャンスを与える目良。爆豪達3人は目を大きく見開くと続けて目良は説明する。

 

『今私が述べたこれからに対応するには、より質の高いヒーローがなるべく〝多く〟ほしい。一次はいわゆる〝おとす試験〟でしたが、選んだ100名はなるべく育てていきたいのです。そういうわけで全員を最後まで見ました。結果決して見込みがないわけではなく、むしろ至らぬ点を修正すれば合格者以上の実力者になる者ばかりです。学業との並行でかなり忙しくなるとは思います。次回4月の試験で再挑戦しても構いませんがーーー……』

 

「当然…!」

 

「お願いします!!」

 

応え方はそれぞれだが、その思いの先にある目標は同じ。再挑戦の言葉に頷く3人。

 

「やったね轟君!」

 

「やめとけよ、な?取らんでいいよ楽に行こ?」

 

「…すぐ、追いつく」

 

もう一度チャンスを与えてもらい、雄英生徒達はワッと集まる。轟を囲んでワイワイと話している中、火野はふとカザリが逃げた方角を見つめていた。

一時はどうなるかと思っていた仮免許取得試験。

突然目覚めたグリードのカザリ。その脅威は解き放たれ、消息がわからないまま、試験は終了となったのだった。

 





No.114 尋問

更に向こうへ!Plus Ultra!!
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