いつかの明日へ、【ヒーロー】は助け合いでしょ   作:しょくんだよ

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疑惑と合流とその人物


No.114 尋問

 

仮免許取得試験が終了し、もうすぐ日が暮れそうな時間に差し掛かる頃、火野達は雄英に帰る為にバスへと向かう。合格したクラスメイト達のその手には発行されたばかりの仮免許が握られていた。

 

「デク君泣いとらん!?」

 

ハァ〜ッと自分の仮免許をマジマジと見つめて歓喜の涙を流す緑谷を見て、麗日は何事かと驚く。

 

「いや……なんかね、こうね。色んな人に迷惑かけてきたから…だから、何て言うんだろ…成長してるな!って証みたいで、なんか嬉しいんだ。お母さんとオールマイトに早く見せたい!」

 

〝無個性〟だった少年が、ヒーローを目指し、苦難を乗り越えて手に入れたヒーローの資格。それは仮の免許だが、彼にとってはヒーローを志す者として大きな第一歩だった。そしてそれを何より応援してくれていた母親と、師であるオールマイトに一刻も早く見せたいのだろうか、スマホで仮免許を撮影しまくっているのを見て、麗日は微笑ましそうに「うん、そだね」と笑った。

 

その中、火野は見終えた仮免許をポケットにしまい、クラスメイト達を見渡す。試験を終えて、完全に緊張が解れていた生徒達の顔は感動と高揚感に満ち溢れていた。そんな雰囲気を出来るなら壊したくない。でも、今日起きた出来事は言わなければならないと、葛藤する火野に、相澤は彼に近寄った。

 

「火野」

 

声を掛けて火野は振り返ったその時、相澤は突然捕縛布で火野の体に巻き付け、グイッと引き寄せた。

 

「!?」

 

「せ、先生!?」

 

その様子に耳郎は気付いて声を上げる。他のクラスメイト達も異変に気付いて注目を浴びる中、相澤は火野に向かって突きつけるように言い放った。

 

「何だあの二次試験の有様は?〝個性〟有りきで合格出来たからってそれは実際の現場じゃ何の結果も出せない、寧ろヒーローの名に泥を塗る好意だ」

 

「す…すびば…せん……」

 

自身の生徒がした失態を兼ねて苛立つ相澤の表情と声に火野は何も言えず、口元に絡む捕縛布を咥えながらそう謝っていると、アンクが相澤に声を掛ける。

 

「おい相澤。あの時はこいつの体の中からーー」

 

「知ってるよ、出たんだろ?お前らと同じグリード」

 

 

「「「「!!?」」」」

 

グリードと言うワードに、クラスメイト達の形相が変わり、その場の雰囲気は緊迫とした空気に包まれる。

 

「あの時目覚めて、何がどうなって喧嘩になったのか知らないが、それでもあの場が試験中だった事を忘れて喧嘩した事は雄英生徒として非合理的な事態だ」

 

「先生…喧嘩なら、俺もしてしまいました…」

 

静かに声を荒げる相澤に、轟がフォローするように口を挟むが、相澤は続けて口を開く。

 

「それで落ちた。当たり前だ。だが火野(こいつ)は自分の力じゃなく、ウヴァ(個性)のお陰で合格する事がかろうじて出来ただけだ」

 

「!」

 

相澤の突きつける言葉に火野は大きく目を見開く。自分の力では無く、ウヴァが努力してくれたからこそ、仮免許を合格した。先程まで浮かれていた気持ちに申し訳なくなったのか俯く火野を見て、アンクはキレ気味に相澤に向かって声を上げる。

 

「だからそれはカザリが復活したからだ!」

 

「アンク。塚内さんから事情は色々と聞かせてもらったが、そのコアメダルから生まれたお前とウヴァ、それと今言ったカザリだったか?その復活する前から面識はあったのか?」

 

「…………多少な……!」

 

相澤の質問に、目を泳がせながらアンクは誤魔化す。前世の事、並びにコアメダルの真実は火野から固く口止められていた。事実を言ってしまえば困惑してしまうし、それを信じてもらえるかもわからない。そう応えるアンクに相澤は続けて質問を問う。

 

「なら、残りのメダルにもそのグリードってのがいるのか?」

 

「……あぁ、あと2体いる」

 

「そいつらは火野に協力してくれるのか?」

 

「……さァな」

 

確証は持てず、アンクはそう応えると、ウヴァが近寄りながら相澤に向かって口を開く。

 

「俺がこいつらと手を結び、加わったんだ。他の奴らも説得すればどうとでもーー」

 

「なら聞くが、あの時火野の体から出て来たカザリは何処に行った?ウヴァの様に(ヴィラン)に肩入れでもする為に行ったのか?」

 

間を入れず相澤の質問に、アンク、ウヴァ、そして火野は何も応えれずに黙り込む。ウヴァと同様に人間を物として扱っていたカザリは、その狡賢さと慎重な性格故に、こちら側についてくれる等考えれないからだ。アンクは息を吐いて「無理だな」と応える。すると相澤は深く息を吐き、火野を拘束していた捕縛布を解いた。

 

「お前の〝個性〟といい、自我の芽生えるグリードって〝個性〟……火野、お前は一体何者なんだ?」

 

「……」

 

その質問に火野は黙り込む。確かに他の人達からすれば、火野のオーズは稀にも見る事が無い〝個性〟。特別な〝個性〟と今まで思って来たのだろうが、今回の事件でその問題はその言葉だけで納まる事態じゃなくなってきている。クラスメイト達も唖然と見守る中、火野は正直に言うしかないと思ったのか「俺は…」と口を開いたその時だった。

 

「相澤君」

 

その声に反応し、振り向くとそこには警部の塚内が手を振りながらこちらに近寄る。

 

「塚内さん……」

 

「やあ火野君、ちょっと前振りだね。試験は受かったかい?」

 

「………えと、はい…一応」

 

塚内の言葉に、火野は相澤から言われた言葉を思い出し、自信を持てずにしどろもどろに応える。場の雰囲気を見て何となく察したのか塚内は「そうか」と頷き、相澤に声を掛ける。

 

「事情は聞いたよ。火野君はちょっと預からせてもらっても良いかい?」

 

「問題ありません」

 

「ありがとう。終わったら雄英まで送り届けるよ。じゃあ火野君、アンク君、ウヴァ君。試験終わって早々に悪いけど、署まで御足労願えるかい?」

 

塚内の言葉に、クラスメイト達は只事では無い事態になった思ったのかと騒めく。アンクとウヴァはこの空気から抜け出したいのか早々に塚内に着いて行き、火野もかなり落ち込んだ様子でその後をゆっくり歩いて追いかける。それを見た相澤は、再び深い息を吐いて「おい火野」と呼び止めた。

 

「何を隠しているのかはあまり詮索しない。この試験の出来事も教師として言う事を言ったまでだ。だが、信用は損なわれた」

 

「……」

 

「…だが、()()の活躍でそれを取り戻せるよう努力し勤めろ。俺はお前を除籍するつもりはまだ無い」

 

「……!……はい!」

 

フォローをしてくれるその言葉に火野は目を見開き、それに応えようと大きく頷く。火野達はそのまま塚内の後を追い、その場から居なくなると、相澤は重い空気を漂わせる生徒達を見ながら口を開いた。

 

「…とりあえず試験合格した奴らはおめでとう。落ちた者は反省して次の試験を死ぬ気で頑張れ。……よし、じゃあバスは向かうぞ。元気出して行こう」

 

 

「((((いや、ちょっと、無理ある…!))))」

 

 

くるりと半回転し、バスへ向かおうとする相澤。いつも通りの雰囲気を見せる教師だが、雄英生徒達は急に気持ちは切り替えせずに全員はそう思っていた。

 

「おーーい!!」

 

「あら、士傑の人」

 

すると、その空気を打ち壊すかの様に夜嵐が士傑生の団体から抜け出し、全力でこちらに向かって来る。蛙吹は気付いて言うと、夜嵐は元気良く声を出した。

 

「轟!!また講習で会うな!!けどな!正直まだ好かん!!先に謝っとく!!ごめん!!」

 

「どんな気遣いだよ」

 

躊躇なくツッコみを入れる切島。「そんだけーっ!!」と本当にそれだけを伝えたかったのか夜嵐は手を振りながら団体へと戻って行く。それを聞いた轟は「善処する」と小さく呟いていた。

 

「………」

 

「大丈夫、耳郎ちゃん?」

 

一方、火野が行ってしまった方角を心配そうにずっと見つめる耳郎に葉隠が声を掛ける。耳郎は「うん…」と小さく頷くが、その顔は曇ったままだ。

 

「火野君の事が心配で心配で仕方がないんだね!」

 

「んぁっ!?ちがっ!?」

 

少し悪戯心があるような葉隠の言葉に耳郎は耳を赤くしながら手や首を横に振って全力否定する。

 

「まァ火野なら大丈夫っしょ!」

 

「そだな、逆にあれだけスゲー事を物にしちまうんだからよ!」

 

偏差値が低い上鳴と切島の馬鹿コンビがポジティブに捉えてそう言う。だが彼らの言葉相まってか、沈んでいた空気は徐々に晴れていき、その顔に安堵の笑顔を見せ始める。火野なら大丈夫だろうと、そう信じる目を各々は見せていた。緑谷も釣られて頬を少し上げていると、何か思い出したのか「あ!」と声を漏らし、士傑生の元へと全力で走って行く。

 

「すみません!あ、あの…」

 

声を掛けた相手はリーダー的存在の毛むくじゃらの男だった。男は振り返ると、緑谷はポケットからメモ帳とボールペンを取り出す。

 

「気配消す訓練ってどんなことされてるんですか!!?」

 

「………?そんな訓練していないが……」

 

「?でも、あの唇がプルっとした人が…それに、もっと話したそうにしてたのでお話できればと思ってたんですけど…どこへ…」

 

「ケミィか?彼女は調子が悪いと先にタクシーで駅へ向かってしまったよ」

 

「えー…そっか…悪いことしたな…」

 

事情を聞いて申し訳なさそうに俯く緑谷。すると、毛むくじゃらの男はふと、思い出したかのように口を開く。

 

「そういえばあいつ、ここ3日ぐらい変だったな…なんか普段と違うというか……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★☆

 

 

同時刻、会場から離れた街の路地裏にて。

ケミィと呼ばれる士傑の女の子は、着信音が鳴るスマホに気付き、彼女は耳元に当てる。

 

『やっと繋がった!』

 

電話越しからは焦ったように男性の声が聞こえる。その瞬間、彼女の体から張り付いていた粘土のような物がボト…ボト…と剥がれ落ちるように落ちていく。綺麗な髪色も、プルっとした唇も、その身体も()()()()()()()()()()物が落ちていくように、その姿を徐々に変えていった。

 

『どこで何してる!?トガ!!』

 

不気味に笑って見せるその顔は、(ヴィラン)連合の1人、トガヒミコだった。

 

「素敵な遊びをしていました」

 

『定期連絡を怠るなよ!1人捕まれば全員が危ないんだ…って、ちょ!?何すんーー』

 

声を荒げる声の主は同じく(ヴィラン)連合の1人、Mr.コンプレスだった。すると、電話越しからガサガサと物音が聞こえる。数秒静かになると思いきや、電話の主が変わり、今度は女性らしき声が聞こえてくる。

 

『もしもしトガちゃん?』

 

「ああっ、その声は優無ちゃんですね!?」

 

変わったのは(ヴィラン)連合の脇真音優無だ。好いているのかトガの声は嬉しそうに跳ね上がると、優無は苦笑しながら口を動かした。

 

『ねえねえ、()()そっちに来てない?』

 

「弟君?()()来てないみたいです」

 

トガは笑いながらも疑問を抱くような素振りを見せ応える。すると、トガの背後から足音が聞こえる。

 

「あれ?」

 

トガは気配を感じて振り返る。だが、そこに立っていたのは脇真音槍無ではなかった。風に靡かせる白い長髪。服装もお嬢様の肩書きを模様する制服。

 

その()()は、〝聖愛学院2年〟突島だった。

 

「遅くなりました…トガさん」

 

「あ…あ〜!そうでしたそうですね!その()()で試験に受けてたのですね!」

 

突島の姿を見て、思い出したのか目を見開いて言うと、突島の体は徐々に()()()()()が覆い始める。それと同時に、トガの持っていたスマホからMr.コンプレスと優無の声が聞こえて来た。

 

『ちょ、はァ!?優無ちゃん、槍無ってこの所体調が優れないからって別の場所で休んでんじゃないのか!?』

 

『あ〜それ嘘だよ。いやァ、火野映司君との闘いで力…〝個性〟が使えなくなった時は肝を冷やしたよ〜。でも、それは〝一時的な封じ〟だったみたいだから、今回の()()()()()は肩慣らしと、ちょっとした実験がてらみたいな…かな』

 

優無がそう言い終わると同時に、完全にセルメダルで覆われた突島の体は徐々に姿を現す。

若干小柄にして、姉の優無に似た顔付き。白と黒のアッシュが掛かった髪色の、脇真音槍無が化けの皮を剥いだかのように立っていたのだった。

 

「……ふぅ……」

 

『あ、トガちゃんっ、音をスピーカーにしてくれる?』

 

神経を使ったのか、息を吐く槍無。そんな中、スマホ越しの優無はトガにそう言うと、「はーい」と彼女はスピーカーにさせる。

 

『お疲れ様弟君、どうだった?』

 

「疲れたし…大変…それに、()()出せずに闘うの、凄い……怠い」

 

『怠いて!反抗期の一歩手前かな!?毎回可愛いんだからもォ!…まあでも、何事も無い感じ、その実験は成功したみたいだね。セルメダルで体を変えさせて、しかもバレずにアンク達と対面した…うんうん!凄い進歩!』

 

「……うん、それも…トガさんが、色々教えてくれたおかげ……」

 

槍無はそう応え、トガの方へと見遣る。だがトガは少し不機嫌そうな顔をして口を開いた。

 

「ンー、でもなんか不公平です!私の〝個性〟と被ってますし、私のより凄い〝個性〟!ちょっと妬くよ」

 

 

 

 

渡我被身子(とが ひみこ)

 

個性『変身』

 

他者の血を摂取することで、他者に変身出来る!

 

 

 

 

「どうせなら、一緒に行動したかった!」

 

続けて文句を言うトガ。だがそれを聞いた優無は電話越しに口を開いた。

 

『トガちゃん、試験前にも言ったよー?〝個性〟の関係で士傑の生徒は弟君の〝個性〟に似たような〝個性〟を持ってる人いないって』

 

「どうでしょう?」

 

少し呆れた様子でトガに伝えるが、白を切るような顔をして彼女は首を傾げる。すると、何か思い出したのか「あ」と言って口を開いた。

 

「有益な時間のおかげで、いい物手に入りました。弔君、喜ぶよ」

 

そう言って、ポケットに手を入れて取り出したのは小さい小瓶だった。中には、ごく僅かな数滴の赤い液体が入っている。

 

「出久君の血を手に入れました」

 

 

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★☆★

 

 

日が完全に落ち、夜の暗闇が空を覆う時間。

警察署に足を運んだ火野とアンク、ウヴァは個室にて待たされていた。そして、ノックの音が聞こえると共に、ドアが開かれ塚内が顔を出す。

 

「ごめんよ、待たせたね」

 

「待たせ過ぎだ!」

 

「全くだ、長い話なら御免だぞ人間!」

 

「ちょ!なんてこと言うんだ!す、すみません塚内さん!」

 

「あはは、試験終わりなのに元気だねアンク君もウヴァ君も」

 

早速怒号をぶつける2人に火野は慌てて宥め、塚内に頭を下げる。塚内は笑いながらそう言い、置いていたパイプ椅子に近寄る。

 

「さて、今回の件は粗方目良さんに報告を貰ったよ」

 

椅子に腰掛けようと手を伸ばすが、塚内はチラリとドアを見ながら火野達に口を動かした。

 

「本題に入る前だけど……ちょっと君達に()()したい人がいるんだ」

 

「紹介?」

 

火野はキョトンとする。すると、入り口の扉から1人、男性が入って来る。

 

「え!?」

 

「あ…!?」

 

「こいつは…!?」

 

その男性を見た火野達は驚愕した顔をする。それもその筈だ。

 

 

 

「久しぶり、映司君。それと、初めましてだな、アンク君と〜…ウヴァ君」

 

 

「信吾さん!!」

 

 

その男は、泉比奈の兄で捜査一課に所属している泉信吾だったのだ。

 





No.115 意思は揺るがない

更に向こうへ!Plus Ultra!!
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