いつかの明日へ、【ヒーロー】は助け合いでしょ   作:しょくんだよ

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帰宅と続・尋問と真実


No.115 意思は揺るがない

 

仮免許取得試験が終わり、バスで雄英の寮へと帰って来たA組生徒一向は食事を終えて談話スペースでわいわいとくっちゃべっていた。

 

「明日からフツーの授業だねぇ!」

 

「色々ありすぎたな!」

 

「ねえねえチョコチョーダイ」

 

「一生忘れられない夏休みだった…」

 

気が抜けていつも通りの日常に戻った様な雰囲気の中、切島はずっとスマホを眺めている緑谷に声をかける。

 

「メール?」

 

「うん!」

 

コクリと頷く緑谷。今回の仮免許を写真で撮影し、オールマイトに送ったのだが中々返信が返ってこないのでずっと眺めているのだろう。すると、突然爆豪が緑谷に「おい!」と声を掛けられ、緑谷はビクッと肩を震わす。

 

「後で表出ろ。てめェの〝個性〟の話だ」

 

すれ違い側に放った一言。その言葉の意味に緑谷は固まり呆然としていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★☆

 

 

その一方で、警察署に事情聴取として連れて来られた火野達は、塚内と共に個室に入って来た刑事の泉信吾と対面し、火野は嬉しそうに声を掛ける。

 

「お、お久しぶりです信吾さん!」

 

「久しぶりだな。暫く見ない間に随分と逞しくなったんじゃないか?」

 

「そんな事無いですよ…俺はまだまだ未熟者です…」

 

「そこまで謙遜しなくても良い。雄英に入ってから本当に見違える様な感じになってるじゃないか」

 

「あ、ありがとうございます…」

 

両親が海外出張の為、泉家に引き取られた火野は比奈と生活しているが、その仕送りは殆ど兄の信吾が提供してくれている。偶に家に帰って来るのだが、殆どは刑事の仕事で署に寝泊まりしている事が多い。仕事人間過ぎだと妹の比奈に怒られる事もしばしばあるくらいだ。そして信吾と会ったのは雄英に入る春頃以来なので、火野は改まった様な挨拶をしつつ会話している中、その信吾を見たウヴァは隣に居るアンクの顔を何度も物珍しそうに見比べ、驚いていた。

 

「…アンク、アイツは親戚か何かか?」

 

「どうやったらその思考になるんだ?アレは俺が体を借りていた時の人間だ。…まァ、大方この世界にも居るだろうと察してはいたがなァ」

 

人間の体に憑依したグリードは素体はそのままで目立った変化と言えばそのグリード特有の色をした髪になるのが特徴的。そして憑依しなくても、その人間のベースを頭で記憶していれば、他人の姿にも変化出来る。実際にウヴァがそうだ。

考えのレベルが低すぎるウヴァに呆れた様子でアンクは言うと、塚内は火野達の方へと声を掛ける。

 

「僕も泉君と初めて会った時は驚いたよ。アンク君と顔がそっくりだったからさ」

 

「それを言ってしまえば僕の方こそ、比奈…いや、妹から事前に聞いて…今日アンク君と初めて会いましたが、正直驚きました。いやァ、世の中は狭いものですね」

 

互いがアンクの顔をジロジロ見るなりそう言いながら静かに笑う。ふと、火野は疑問に思ったのか信吾に尋ねた。

 

「そう言えば信吾さん。どうしてここに居るんですか?他県の方に転職した筈じゃ…?」

 

「あぁ、上の命令でこっちに転職したんだ。(ヴィラン)連合が活発になって来たからって言われてね。全く、人使いが荒いもんだ…」

 

少し愚痴が溢れながら応える信吾に、塚内は続けて信吾の肩に手を置き、口を動かした。

 

「で、泉君は僕と同じ部署に配属されたってわけ」

 

「なるほど!」と納得する火野。

 

「フン!どうでもいいから話を進めろ。こっちも試験に疲れて早く休みたいんだ」

 

無駄話をしに来た訳では無いと言わんばかりにアンクは催促すると塚内は「そうだね」と頷き、信吾と共にパイプ椅子へと腰掛ける。

火野も用意されていた椅子に座ると、早速塚内は内容を説明した。

 

「さて、じゃあ本題に入ろうか。火野君、試験中にウヴァ君とは別の異様な見た目をした人が、君の中から出て来たのを公安委員会の人が目撃した……それは、アンク等と同様にグリードと見て間違いないかい?」

 

「はい、そうです」

 

「そうか、そのグリードとは、アンク君達の仲が悪いのか?」

 

「ハッ…、悪い以前の問題だがな」

 

塚内の質問に、アンクは嫌悪した表情で言うと、塚内は「どう言う事だ?」と疑問を抱く。すると、アンクは突然火野に近寄ると、火野の体の中へと入っていった。

 

「うわっ!?えっ、ちょ!」

 

『映司、聞け』

 

どうやら憑依では無く、精神の中へと入っただけの様子だが話の途中に入られ火野は困惑していると、アンクは精神の中から語りかけてくる。

 

『今回の件、これ以上誤魔化しは通用出来ないぞ。警察の連中はやたらと質問攻めしてきやがる…周りくどい説明を考えるのも、もうウンザリなんだよ。素直に吐いたらどうだ?』

 

アンクの提案に火野は目線を下に向けて黙り込む。確かにウヴァの件でもそうだが、何とか思いついた言い訳をしたのだが塚内達は納得の行かない表情を見せていた。それに、大勢の人達が居た試験でのカザリが復活してしまった事。相澤も何か隠してあると揺さ振りを掛けてきたくらいだ。アンクの言う通り、もう誤魔化しは通用しないのかもしれない。

必死に考え、決断した火野は小さく「わかった」と頷くと、アンクは火野の中から出て来て無言のまま腕組みをする。

 

「……塚内さん、信吾さん。ちょっと話があるんですけど、良いですか?」

 

「…?あぁ、構わないよ」

 

意を決した火野の表情に、塚内と信吾は何か大事な話をするのだろうと頷く。ウヴァも何となく察したのかその様子を見つめている。

そして、火野は真実を説明し始めた。

自身がこの世界に転生して来た事、グリードの存在、オーズの力。転生した前の記憶は火野には無いが、そこをアンクとウヴァが補って説明する。

 

 

「……と、言う訳なんですけど…」

 

とりあえず重要な部分だけを話終え、一区切り付けた火野。『転生』と言う言葉に最初は信じてくれない様な顔をしていた塚内と信吾だが、その真実とグリードの現在の行動と火野のオーズの力の真意を知ったのか徐々にその表情は真剣な顔となっていた。

 

「……ふぅ……いや失礼……。あまりの衝撃的な事実にちょっと頭がまだ追い付いていないみたいで……参ったな…」

 

衝撃の事実を受け止め、深く息を吐いた塚内はそう言って頭に手を置く。いきなり転生しただの、オーズの力は錬金術師が作った能力だの、そんな話をすれば誰だって困惑する。それは信吾も同様だった。

 

「えっと…つまり、前世の世界に居た火野君達と、僕と()()()()もその世界に居たって事?」

 

「あぁ、随分とそいつの体には世話になったからなァ…。この顔もその時の馴染みだ、一番しっくりくる」

 

信吾を含めて、妹の比奈、鴻上ファウンデーションの人達は火野と同様に転生して来たのかはわからない。瓜二つであってこの世界の住人では無いかと思った火野は、ひとまず同一人物と説明した。

 

「その、錬金術師によって作られたのがコアメダルと欲望を元に作られたグリード……」

 

「まァ、辻褄が合うっちゃ合う話になるね……俄かに信じ難い話だけど…」

 

「突拍子も無い話をしてすみません…俺も最初は信じられなかったんですけど、アンクやウヴァが言ってる事が嘘には思えないので」

 

伝えられた真実をボソボソと呟く様に口に出す信吾と塚内。火野がそう言うと、塚内は()()に思っていた内容を口にする。

 

「アンク君、ウヴァ君。その前世の記憶に、脇真音姉弟は存在しなかったのは本当なのかい?」

 

「あぁ、姉弟揃ってオーズと同じ力を持ってたら忘れる訳が無い。おいウヴァ、連合にいた時に何か聞かされてないのか?」

 

「悪いが、お前等が出会した時と同じ理由しかアイツ等は喋らなかった。一点張りだったぞ、『ずっと見てきた』とな」

 

「彼女も…、その『転生』した人間…か」

 

火野達もその素性を知らない(ヴィラン)連合の脇真音姉弟。彼女達が何故オーズと同じ能力を持っているのかは不明で、今まではオール・フォー・ワンが〝個性〟を奪って提供したのだと推測していたのだが、それがもし本当だとすれば、今の火野はオーズの力を使える事が出来ない。

すると、信吾は何か思い当たる節があるのか口を開いた。

 

「ちょっと思ったんですけど…もし彼女達も『転生』したと言うのでしたら…火野君のオーズの〝個性〟は何かしら〝付与〟されたんじゃないでしょうか?」

 

「付与?」

 

「実は僕…小説とか読むの結構好きな方で、転生した主人公が別の世界に行く話とかも結構読むんです。あぁでも、もし仮にと言う話なので、そんな深くは思わないで下さい」

 

首を傾げる塚内に信吾はそう言って蔑ろにする。だがその話は火野が『転生』したと言う事実が本当だとすれば、それは有り得る話だと塚内は息を呑む。オーズの力を使いこなしていると言うこと、見てきたというワード、つまりは何かしらの接点があったと言うことになる。

 

「…ハッ、そんな妄想世界の話なんざ信じられるか」

 

「でも、現に君達も同じ道理だろ?」

 

「ッ……」

 

嘘だと思い込むアンクだが、先程説明したのと同じ様に火野達も転生してここにいる。そう解釈して塚内が喋ると、アンクは何も言い返さずに不快な顔をして黙り込むと、塚内は再び深い息を吐いた。

 

「何にせよ、脇真音姉弟は捕えないと情報が聞き出せないな……因みに火野君。この事は他の誰かにも言ったのかい?」

 

「いえ…今喋ったお二人が初めてです。正直に話しても多分びっくりさせちゃうだろうし…、そう簡単には信じて貰えないと……ていうか、塚内さんも信吾さんも、今の話信じて貰えるんですか?」

 

「まァ、それが本当なら色々と合点が行くからね。内心は凄い驚いてるつもりだよ?」

 

塚内がそう言うと、信吾も「そうですね」と頷き、事情聴取の為に用意していたメモ帳とボールペンを手に取ると続けて口を開いた。

 

「…さて、どうしますか塚内さん。この件は上に報告しても多分信じてくれませんよ?」

 

「そうだなァ……偽の報告書を出して言い訳作っとくしかないだろね」

 

頭を掻いて困り果てた顔をする塚内。信吾も苦悩する様な表情で考え込み、「わかりました。後で考えておきます」と頷くと、塚内は「助かるよ」とお礼を言い、火野達に目を向ける。

 

「ありがとう、3人共。正直に話してくれて。この件は僕と泉君で調査として把握しておくよ。他人事みたいな言い方だけど、君達も相当苦労してきたんだね…特に火野君」

 

「えと…そうですね…俺自身も記憶無いんで苦労して来たかどうかわかりませんけど…」

 

「馬鹿が、俺達よりよっぽど苦労したんだお前は」

 

目の前の小さな命を救ける為、死に際に願ったアンクというグリードを蘇らせた記憶、それ等の出来事は今の火野の頭には存在されていない。そんな事実をはぐらかす様な笑みをする火野だが、それを沢山見てきたアンクがフォローを入れて、塚内は静かに「あはは」と笑うと、続けて口を動かした。

 

「君達の話は僕と泉君と…そうだね、()()出来る人達の秘密にしておこう。もし、他に話したい人が居るなら、それは直接君の口から話すと良い」

 

「はい、そうします」

 

「うん…。さて、じゃあ今回の大元の件についてだけど、そのカザリと言うグリードは、欲望の為に人々を襲うのも時間の問題だよね。そうなってしまう前に我々警察も動かなくてはいけなくなる」

 

市民を脅かす(ヴィラン)を取り締まるのが警察の勤めなのだが、やけに遠回しをする様な言い方をする塚内にアンクは疑問を抱いていた。

すると、塚内の視線は火野だけに向き、彼に向かって問い掛けた。

 

「火野君は、そのカザリ君とも行動を()にしたいかい?」

 

「「!?」」

 

まさかの発言にアンクとウヴァは目を見開く。その問いに火野が何か応えようと口を開いた瞬間、ウヴァが割入って塚内に向かって声を荒げる。

 

「おい、何の冗談だ?貴様さっきの説明聞いてただろ!?」

 

「ただでさえウヴァ(こいつ)と一緒に居る事さえ不愉快なんだぞ!それに加えてカザリが仲間?フン!絶対が付くほど有り得ない話だな」

 

「何だとアンク!俺があれだけ貢献して来たのにか!?」

 

「あぁ、不愉快も不満も大有りだ」

 

「ッ!貴様ァ!」

 

「ちょお、喧嘩するなってッもォ!」

 

今にも胸ぐらを掴み掛かろうとするウヴァに、火野は席から立ち上がって間に入る。アンクとウヴァは互いに鼻を鳴らしてそっぽを向いていると塚内は少し困った様な顔をして口を動かした。

 

「相当仲が悪い様だね」

 

「本当…毎日大変なんです…」  

 

「あはは、まァ何だかんだで一緒に居れるって事は火野君自身がそうやって間に入ってくれているのもあるんだろ?僕はその優しさを見込んでの質問をしてるんだ」

 

「フン!お人好しの間違いだろ」

 

塚内の言葉にボソッとアンクが悪態を垂れる。

 

「そうかな?実際今一緒にウヴァ君と居るだろ?(ヴィラン)連合と手を組んで一度は悪の道を歩もうとしたのに、それを改心させたのは火野君の行いがあってこそじゃないか?」

 

その言葉にアンクとウヴァはピクリと眉を上げて反応する。人間の欲望を利用して己の叶えられない欲を満たそうとしていたグリードだが、アンクも、ウヴァも火野と行動している内に悪事からは身を引いている。火野の人間の体を貸してもらい、叶えられなかった欲が満たされているのが要因だろう。そしてオーズとしての才能もそうだがそのお人好しと言う性格も、ある意味才能かもしれない。

 

「……チッ、だが…仲間どうこうの話より、相手はカザリだ。簡単に行く筈がない」

 

「…まあ確かにそうだな。奴は自分が()()()()()場所を好む。その上、グリードの中でも一番警戒心が強いからな。こっちに加わるなんて到底無理な願いだぞ、映司」

 

グリードの中でも一番食えない奴らしく、常に先の先を読んで行動するグリード。こちらに敵意が無く、仮に仲間にしようとしても、はい喜んで…などとあっさり承諾するわけが無いとアンクとウヴァは考えていた。

だが、火野は慎重になるアンク達の顔を見つめながらその口を開いた。

 

「…でも、塚内さんも言ってたけど、ウヴァだってこうして仲間になっているわけだから…カザリも、そうなってくれるんじゃないかなって俺は思う」

 

ここまで冷静に状況を考えているのにも関わらず、相変わらずの『お人好し』を露わにする火野。幾ら前世の記憶が無いからとは言え、その考えにアンクは静かに怒りを覚えていた。

あぁ、つくづくこいつのくだらない考えをどうにかできないのか、いっそここでこの男を締め殺してしまえば楽になるのかと。

だが、その怒りは通り越して呆れる様に息を吐く。

 

「……ったく、つくづく大馬鹿だ。いいか?お前がどんだけ花咲かせてる脳内思考だろうと、カザリだけは絶対俺達の味方になってくれるのは絶対に有り得ない話だ」

 

「じゃあそれでも仲間になったら?」

 

「フン!文句を言わずにお前の言う事何でも従ってやる」

 

「言ったな!?絶対だぞ!?」

 

アンクの交換条件に火野は声を捲し立てる様に約束させる。普段から言う事を素直に聞いてくれなかった火野にとってはこれ以上のない申し出なのだろう。すると、黙って見つめていた塚内と信吾は互いを見て頷くと火野に声を掛けた。

 

「…どうやら決まったみたいだね。僕達としても、ウヴァ君みたいに火野君の元で更生してくれた方が助かる。カザリの捜索に当たり、見つけ次第君に連絡をさせてもらうよ」

 

「ありがとうございます」

 

塚内の言葉に礼をする火野。それを見ていたウヴァは皮肉そうに呟いた。

 

「フン、カザリを仲間にするなど出来るわけがない」

 

「あぁ、だが…奴は馬鹿が付く程お人好しだ…俺等の言う事を無視して…やりかねないな」

 

火野がどんな男なのかは、近くで見て来たウヴァも重々承知しているだろう。そう言ってアンクは、呆れるように火野を見つめていたのだった。

 




次回!第11章 〜インターン〜

No.115 後期始業式

更に向こうへ!Plus Ultra!!


アンク「全く、何度も警察署に足を運ぶのは面倒過ぎる」

火野「文句言うなって…でも、続けてまたグリードが俺の中から出て来るなんて…前の世界もそうだったのか?」

アンク「なわけあるか。この世界に来てから何もかもがおかしい……他のグリードも復活するのも時間の問題だなァ」

火野「う〜ん…先が思いやられるなぁ…まぁとにかく、今はカザリの事を考えないと。あ、その前に学校だ」

ウヴァ「フン、こんな状況でよく学校なんぞに通えるもんだ」

火野「そりゃヒーロー目指す為に必要だからね。また職場体験みたいな事をやるみたいだし」

アンク「職場体験か…なら、行く場所はもう決まっているな。そろそろアレも出来ているだろ」

ウヴァ「職場体験?何処へ行くんだ?」

アンク「鴻上ファウンデーションだ」

ウヴァ「ム!?」

火野「ウヴァ、どうかした?」

ウヴァ「い、いや…何でも無いッ」
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