いつかの明日へ、【ヒーロー】は助け合いでしょ 作:しょくんだよ
お待たせしましたー!!
到着と手違いと内容宣告
電車に揺られて数時間、三鷹市へと到着した火野と耳郎は、インターン先へと向かう為に足を運ぶ。物珍しそうに辺りを見渡していた耳郎がふと、火野に声を掛けた。
「休日なのになんか新鮮だね」
「確かに…職場体験以来だよな、制服来たままこうやって街中歩くの」
「だよね。…それにしても、何でウチも面識がないあの会社に呼ばれたんだろ?」
「ん〜、俺も分からないなぁ。あそこの会長、結構個性的な人だから」
「ふぅん。…火野、鴻上ファウンデーションの人達ってどんなヒーローが居るの?」
たわいも無い会話から始まって、耳郎の質問に火野は「んー」と少し考え込み、口を開いた。
「後藤さんと同じバースの力を持ってる伊達さんがメインだとして…あとは秘書の里中さんとか……俺が知ってるのはそれくらいかな」
火野が言うと、耳郎は「へぇ…」と頷く。あの会社には他にもプロヒーローを雇っている様だが、何せ会社が大きいだけあってすれ違った事ですら無い。主にバースが鴻上ファウンデーションの専属プロヒーローなので、インターンでもお世話になるのは間違いないだろう。
暫く、淡々と終わる様な会話をしながら歩いていると、いつの間にか鴻上ファウンデーションの大きな出入り口へと辿り着く。耳郎は聳え立つ会社を「うわぁ…」と圧巻した様子で見上げている中、同時に火野も見上げていた。相変わらずの巨大なビルには彼も驚かされていた。
「…やっと着いたか」
「……ここがあの会社か」
すると、目的地に到着したのを察したのか火野の身体の中からアンクとウヴァが人間態となって現れる。
軽く首を鳴らしているアンクはさておき、火野は小声でウヴァに声を掛けた。
「ウヴァ、一応言っとくけど…中の人達とは初めての感じで接してよ?」
「ム?……あぁ、そうだったな……。だが面倒だ、ここの奴らにも正直に言ったらどうなんだ?」
「あ〜…う〜ん……そうだよなァ」
アンクに一押しされて塚内や信吾に事実を伝えたが、今から向かう鴻上ファウンデーションの面々は前世の主要メンバーと言っても過言ではない。事実を伝えるべきであろうが、無関係の耳郎が隣に居るのもそうだろうし、いきなり伝えた所で塚内達みたく困惑してしまうだろう。ウヴァの問いかけに火野は小声で項垂れながら首を傾げると、「火野?」と耳郎が声を掛けてくる。火野はハッとし、「何でもない、行こう」と言って、足を踏み出して会社の中へと入って行った。
「………今回は出待ちしてないな」
「え?あ、あぁそうだったな…。流石に何度もしないでしょ」
やたら辺りを警戒するアンクがそう呟く。職場体験は入った瞬間に鴻上が出迎えてくれていたが、正直心臓に悪い。火野もホッとしながらホールの方へと向かおうとすると、目の前の壁に大きなモニター画面が取り付けられているのに目が入る。以前は無かった様な気がした火野はマジマジとそのモニター画面を見つめていたその時だった。
『ハッピーバースデェエ!!!』
「「!?」」
デン!!とサプライズを思わせる様な効果音と共に、ドアップ顔の鴻上が映し出される。思わずビクッと肩を上げて驚く火野と耳郎。だがグリードの2人はそこまで驚かず、アンクは鼻を鳴らしてモニター越しに鴻上に声を掛けた。
「何だ、今回は出迎えは無いのか?」
『ハッハッハ!!単純な話さ…下まで降りるのが面倒だからだよ☆』
相変わらずのテンションにアンクは不機嫌な顔を浮かべ、ウヴァは、何だこいつは?と言わんばかりの表情を浮かべる。それは耳郎も同様で眉を寄せている中、火野は苦笑しながらも口を開いた。
「お、お久しぶりです鴻上さん」
『暫く振りだ!我が社へよく来てくれたね火野映司君!!アンク君!そして新しいグリードのウヴァ君!』
元気よく挨拶する鴻上。『それと…』と耳郎の方へと目線を送り、間が空くその空気に耳郎は背筋を真っ直ぐにして緊張していた次の瞬間だった。
『誰かね君は!?』
「……え?」
鴻上が発した言葉。それを脳内が理解出来て無いのか耳郎はキョトンと立ち尽くし、再度「え……?」と声を漏らす。火野も目を見開きながら、慌てて耳郎の紹介をする。
「こ、鴻上さん?ほら、俺と一緒に推薦してくれた雄英高の耳郎さんですよッ?」
呆然とする耳郎に手を向けて伝える。だが、鴻上は眉を寄せて口を開いた。
『私は火野君
「「!?」」
キッパリと告げられたその言葉に、火野と耳郎は驚愕の表情を浮かべる。耳郎の顔は徐々に困惑と焦りを募らせて冷や汗を流し、火野は再び口を動かした。
「そんな筈無いですよ!受け入れの申し出の用紙にもちゃんと俺と耳郎さんの名前が記載されてあります!だろ、アンク、ウヴァ?」
「悪いが俺はみていない」
「俺もだ」
「おい!」
証言を聞こうとグリードの2人に言うが、アンクとウヴァは知らん顔をし、火野は少しキレ気味に吠えると鴻上は『ふぅん…』と息を吐く。
『すまないが、私は火野君しか呼んだ覚えが無いのでね。……君には帰ってーーー』
「鴻上さん!!」
今言ってはならない言葉を口にしようとした瞬間、火野は声を荒げてそれを制した。すると、耳郎が「火野!」と割入り、火野へと声を掛ける。
「た、多分手違いなんだよ。よくよく考えたらウチが呼ばれる事無かったんだからさ……」
「何言ってるんだ耳郎さん!用紙にも君の名前がちゃんと書いてあっただろ!?
とにかく!ちゃんと用紙見せるんで上へ行かせて貰いますよ!」
徐々に声が震え始める耳郎。肩も震わせてしまっている彼女を見て、火野は鴻上にそう伝えて「行こう!」と耳郎の手を無理矢理引っ張って歩き始める。
「ちょ、火野…!」
「おかしいだろ、相澤先生が直々に言ってくれたのに呼んでないって。他の人…秘書の里中さんなら知ってるかもしれないし、このまま帰させる訳に行かないッ。絶対に呼ばれてる筈だ」
気性が少し荒くなり気味になる火野。自分よりも誰かの為に優先的に考え、他人事にこうも真剣に考えてくれているのだなと、耳郎は手を引っ張られながらも思い、困惑していた感情は徐々に落ち着きを取り戻している。後から続いて火野達の後ろを歩くアンクに、隣のウヴァが声をかけた。
「あの爺いはいつもあんな感じなのか?」
「あ?馬鹿言え、アレはまだマシな方だ」
ウヴァの質問にそう応え、アンクはエレベーターに乗り込む火野達の後を追った。
☆★☆★☆★☆
「いやァ、よく来た……よく来てくれたな火野クン、耳郎サン!」
鴻上ファウンデーションの最上階、会長室に到着した火野達は、鴻上と一緒にその部屋に居合わせていた伊達とも合流する。本当に火野しか呼ばれてないのか、伊達も耳郎が居る事に驚いたており、ぎこちない挨拶をする。
だが、火野の不貞腐れた顔は変わらずに「こんにちは伊達さん」とだけ言って彼を素通りし、鴻上が座っている机へ申請された用紙を叩きつける様に見せる。
「鴻上さん、よく見て下さい」
「………確かに、これは私が申請届けに出した用紙で間違い無い!」
「でしたら何でーー」
「さっきも言ったが、私が申請したのは君だけだよ火野君!耳郎君の名がここに記載されているのは私自身も!!……予想外の出来事だ!」
「……!」
言い切った鴻上は椅子に背もたれし、深く息を吐く。納得しない火野の表情を見て、伊達は「まぁまあまあ!」と宥める様にフォローに入る。
「こっちとしては火野の事以外何も聞かされてないんだけど良いじゃないですか、1人増えるくらい俺は構いませんから」
そう言って伊達はチラリと耳郎を見つめる。ここに居てはいけないと言わんばかりに落ち込んでいる彼女の顔に伊達もオロオロと目を泳がせている中、火野は用紙を手に取って伊達へと見せる。
「鴻上さんが知らないのでしたら別の人が書いたんですか?」
「ん〜…ちょっと今肝心の里中ちゃんが席外しているから何とも言えないんだよね。まあとにかく!火野も彼女も俺が見るからさ、よろしくね耳郎ちゃん!」
「………」
秘書である里中なら何か知っている筈なのだが彼女は業務でここに居合わせておらず、伊達は受け入れるつもりで耳郎に声を掛けるが耳郎は俯いたままだった。
「じゃあ誰が耳郎さんを指名したんですか…」と火野は問い掛けたその時、この室内の空気が重いのにも関わらず、ソファーで寛いでいるアンクとウヴァが何かを反応したのか顔を上げると同時に、会長室の出入り口の扉が開かれた。
「私が彼女を
「「!」」
声と同時に入って来た人物に火野と耳郎は振り返る。その人物を見たウヴァは血相を変えてソファーから立ち上がり数歩後ろへと下がっていた。右肩に不気味な人形を座らせて凛とした表情で喋る人物は、鴻上ファウンデーションの開発部部長であるDr.真木だった。
「真木さん!?」
「……っ!貴様ァ…!」
驚く一同の中、ウヴァは警戒態勢で真木を睨みつける。するとアンクはそれを見て滑稽に思ったのか「フッ」と鼻を鳴らし口を開いた。
「やめとけ。奴はお前の知ってるあの真木じゃない」
「ッ!………あぁ、そうだったな」
アンクに言われてウヴァはハッとし、気持ちを落ち着かせようと息を整える。だが面影も見た目も前世の真木そのものなので、ウヴァの警戒は消える事は無かった。
「……Dr.真木、私は知らされてないのだが?」
「申し訳ありません会長。申請を提出する日に私が里中さんにお願いしたのです。私の用意した電磁防壁バリアを破壊した彼女の〝個性〟に興味がありましてね」
鴻上の言葉に真木はそう言って説明する。雄英のA組で行われた期末実施試験に火野と耳郎ペアの相手をした真木。火野達を止める為に用意されたバリアを壊した耳郎を賞賛したのだろう。火野と耳郎は目を見開いて驚いている中、伊達は軽く息を吐くと真木に早歩きで近寄り、彼の頬を勢いよくガシッと掴んだ。
「えっ!?」
「伊達さん!?」
突然の暴行かと耳郎と火野は声を上げる。伊達に頬を掴まれている真木だが、人形から目を逸らさずにギチギチと引っ張られる力に負けずと抵抗する真木に伊達は怒りながらも優しく話しかけた。
「ハナシテクハハイ」
「ドクター、こういう話はこっち見て言おうよ、ネ?そんな人形ばっかり見つめないでさ。それに勝手な事しないでくれる?会長も俺も知らされてないんだけど、会社として報連相は大事なんだよドクター?」
「それについヘは申し訳あイません。ハナシテクハハイ」
「そもそもこんな人形があるからそう言う事出来ないんだよ。ほら貸しなさい!」
「!!ヤーーーメーーローー!!ハナーーセーー!!!」
「没収だ没収!」
「ヤーメーロー!!」
人形を取り上げ、必死に取り返そうと声を荒げる真木。そんな2人のやり取りを見て、落ち込んでいた耳郎の顔は徐々に緩み始め、最終的には真木の豹変した姿を見て思わず「ブフッッ!」と吹き出していた。
「と、とりあえず…これで疑問は晴れた……のかな?」
「ハッ、別にどうでも良い」
重い空気は伊達と真木のやり取りで緩和され、火野も安堵した様子で呟くと、アンクはめんどくさそうにそう言う。
そして伊達から人形を死の物狂いで取り返した真木は慌てて定位置の肩へと人形を戻すと、スンと真顔になってアンクへと声をかけた。
「アンク君、君の要望していた物は
「やっとか……ならさっさとよこせ」
「完成?何だよそれ?」
真木の言葉に疑問を抱いて火野はアンクに尋ねると、話を逸らされた伊達が真木に向かって口を開いた。
「ドクター、耳郎ちゃんはあんたが見るのか?」
「いえ、私は観察したいので君が指導して下さい。それに先程自分が見ると仰ってましたよね?」
「えぇ…言ったけど……ドクター地獄耳持ちですか」
頭を掻いて伊達は息を吐く。すると、伊達は鴻上に声を掛けた。
「会長、とりあえず火野は元々
「ふむ、確かに会社として報連相が出来ていなかった私達の責任もあるようだね……よろしぃい!!では火野君、並びに耳郎君!!」
「は、はい!」
「っ、はい!」
急に声を上げる鴻上に火野と耳郎は肩を上げて返事をする。
「少しトラブルが起きてしまったが!改めて歓迎しよう!!インターン活動を開始するこの1週間!!君達には!!特別に!!!
私の〝権限〟によって、
「「え?」」
No.122 バイクは自販機!?
更に向こうへ!Plus Ultra!!