いつかの明日へ、【ヒーロー】は助け合いでしょ   作:しょくんだよ

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どうも皆様、お久しぶりです。しょくんだよです。
長い期間お休みしてしまい申し訳ありません。リアルの仕事だの家事だのが忙しい上に嫁さんがなんと妊娠してしまってもう大忙し(^_^;)
中々手がつけられずに時が経ってしまいました…。
少しでも話を進めようと空いた時間で書きました。これからも投稿頻度が遅くなるかもですが、皆さんよろしくお願いします。


No.122 バイクは自販機!?

 

「あのっ、伊達さん…バイク乗るって…一体どういう事ですか?」

 

「ん?あ〜……そこのアンコちゃんがちょっと前くらいに提案して来たのよ」

 

「あんこ…?」

 

「アンクだ!」

 

開発部署へと移動の最中、先程鴻上に言われた発言が気になった火野は先頭を歩く伊達に尋ねる。アンクの呼び名のワードに耳郎は首を傾げると後ろにいたアンクが吠え、呆れながらも続けて口を開いた。

 

「人間の技術は俺達よりも遥に進歩していやがるからなァ。()の出来事を考えてあの鴻上に教えてやったら機嫌良く受け入れてくれたぞ。…まァ、()()()()も付けてもらったがな」

 

「交換条件?」

 

アンクの言葉に疑問を抱く火野。すると、いつの間にか到着したのか、伊達は「着いたぞ」と言って目の前にあった自動ドアが開かれる。

開発部署本部の作業場が視界に広がり、初めて見る耳郎は「わぁ…」と声を漏らして見渡していた。ウヴァも同様で無言だが辺りを物珍しそうに見つめている。すると、試作品なのかガラスケースに並べられているサポートアイテムらしきものを目にし、耳郎が指を指した。

 

「すっご…!アレ、テレビで見たことあるサポートアイテムだよ…!?めっちゃ高かったような…」

 

「むっふっふ〜、そうだろそうでしょ?今日は特別に好きな物一つ持って帰っていいぜ耳郎ちゃん」

 

「え、マジすか!?」

 

「伊達君。勝手な真似はしないで下さい」

 

伊達の発言に目を輝かせる耳郎だが、黙って着いて来ていた真木が声を出してそれを制す。

 

「社会見学に来た訳ではない筈ですが?」

 

「相変わらずお堅いねぇ…」

 

「見学は休憩の時にでもご覧になって下さい」

 

「へいへい、じゃあ早いとこ行こうか火野、耳郎ちゃん、アンコに……」

 

先を行く真木に伊達は渋々頷き、火野達に声をかけるが、ふとウヴァに目線を送る最中に言葉が出ず、口を開いたままになる伊達。

 

「え〜〜っと、アンコと同じグリードの……………

あ、『ウギャ』だ!」

 

「は……?ばっ!?誰だそいつは!?俺の名はウ()()だ!!」

 

「フッ」

 

「おいアンク!貴様なに笑っているんだ!」

 

変な呼び方で驚くウヴァと同時に可笑しくて吹き出すアンク。確かにウヴァと言う名前は呼びづらいのもあるのだろうが、伊達はカタカナの名称や名前を覚えるのが苦手なのもあるようだ。

 

「ま、とりあえずよろしく!」

 

「グヌヌ…!バース!次妙な呼び方をしたら許さんぞ!」

 

吠えるウヴァに伊達は「ごめんて」と苦笑しながら開発部の奥へと進んでいく。初めて伊達と出会ったテスト用の実験部屋とは違う場所の横開きのドアの前に着き、伊達は持っていたカードキーらしきものを取り出す。そして認証する場所へとそれをスキャンさせると、ロックが解除され自動で開かれた。

 

「よっ、後藤ちゃん!」

 

「お疲れ様です。……暫く振りだな火野」

 

「後藤さん!え、もしかして…後藤さんも?」

 

「一応な。学校側の形状、今日から俺も校外活動だ」

 

白いパネルが部屋一帯に重ねられただだっ広い部屋の中央辺りに居た後藤は、入って来た伊達達に気付き声を掛ける。軽く挨拶を交わしていると、耳郎の存在に気付いたのか、後藤は顔を曇らせながら口を開いた。

 

「君は…耳郎響香?何でA組の君がここに?」

 

「あ、えっとその…」

 

もじもじとする耳郎。すると伊達は真木に肘を数回当てると、真木は察したのか軽く息を吐いて口を動かした。

 

「私が今回のインターン候補生としてお呼びしました」

 

「真木博士…がですか…?他人に興味を持つなんて珍しいですね………」

 

軽く目を見開いて驚く後藤だが、この場に彼女がいるということはと、何か察したのか伊達に声を掛ける。

 

「ちょっと待って下さい。伊達さん、まさか彼女にも…」

 

「うん、そう、そおなのよぉ」

 

「そうなのって、良いんですかっ?」

 

「まぁ、なんて言うか…もう会長の〝個性〟も使っちゃったし、このお人形博士のせいでもあるからさ…しょうがない」

 

「伊達君、その呼び方は辞めて下さい。くだらない話はその辺にしておいて、早速始めましょう」

 

真木はそう催促すると、伊達は「せっかちだねぇ」と言いながらポケットからスマホを取り出す。誰かと連絡するのか耳に当てるとその口を開いた。

 

「あ、発目ちゃん?着いたんだけど、早速始めてもらっても大丈夫か?」

 

『もちろん構いません!というか早速始めましょう!!!』

 

「うわっ!?」

 

電話越しの相手はサポート科の発目みたいだが、伊達が尋ねた瞬間、火野達が居る実験部屋の天井から突然スピーカーから大声が飛び交った。その声を主は発目で、その場に居た火野達は突然の声でビクッと肩を跳ね上げる。

 

『や〜っと来ましたねオーズのお方、その他の皆さん!!』

 

「は、発目さんっ?どこから…」

 

「別室のモニタールームだ。このテストルームのあらゆる所に設置されてるカメラで俺達が何しているのかも分かるし、実施された実験のデータもそこで纏めている」

 

「ハッ、要は監視か」

 

火野の言葉に後藤はそう言うと、アンクは鼻を鳴らして天井に取り付けられている監視カメラをキョロキョロと見つめながら言う。「ハイテクだァ」と火野は呟くと、スピーカー越しから発目の声が響いた。

 

『挨拶とかはどーでもいいですのから!ササっと紹介&お見せしますね!!鴻上ファウンデーションの新作のドットベイビーを!』

 

そう言い終えた直後、テストルームの中央部の白いパネル1枚がガコッ!と何かが外れる様な音と共に両サイドへと展開し始める。

鴻上の人達である伊達等は特に驚いた様子も無くそれを見つめている中、火野や耳郎達は高揚するかのように目を見開きながらそれを見つめる。

そして、四角い穴となった床から新作であろう物体が徐々に競り上がっていき、その姿を現した。

だが、感動する筈の火野と耳郎の顔はその物体を見つめてポカンと固まっていた。

 

「これが……新作の?」

 

「こ、これって……え、()()()?」

 

この世界に存在してある『ある物』に当て嵌まる耳郎がその物体の解答をする。彼等の目の前に現れたのは黒を基調とした人間よりも大きな自動販売機だった。変わった所と言えば普通の自販機とは違い、少し近未来を装った造形となっており、お金を入れて買えそうな()らしきものも見た事無い銘柄と形が模されている。

 

『フフフフ!!凄くないですか?驚きましたか!?これがオーズのお方達をサポートするアイテム第2号!

その名も…〝ライドベンダー〟!!』

 

「第2号?」

 

『おやおや、もうお忘れですか?初代はメダジャリバーですよ』

 

「あ〜そっか、そうだった」

 

ヤミー対策として発目が作ってくれた武器のメダジャリバー。あまり使う機会が無かったのか火野は思い出した表情を浮かべて手をポンと叩いていると、ふと耳郎が口を開いた。

 

()()()…?何で自販機なのに乗るって名前なんだろ?」

 

その言葉を聞いていた火野は「確かに」とハッとする。2人の疑問を聞いていた発目は『フッフッフッフ、それはですねえ…』と直ぐにでも説明したそうな声で言っていたその時、突然アンクが無言でライドベンダーへと歩き出した。

 

「アンク?」

 

咄嗟に名を呼ぶ火野だが、アンクは構わず取り出した1枚のセルメダルをライドベンダーの投入口に入れると、真ん中にある大型の黒いボタンを迷うこと無く押した。

アンクはその場から一歩下がったその瞬間、ライドベンダーは瞬く間に変形し、完成したその形に火野と耳郎は目を見開いて驚愕した。

 

「うわわっ!?えっ、これってーーー」

 

()()()!?すっごぉい!!」

 

ブォン!とエンジン音と共にバイクへと変わったライドベンダーに火野は目を輝かせ喜んでいた。耳郎もそのあと「だからライドなんだ」と納得していると、伊達が驚いた様子でアンクに声をかける。

 

「あらァ?え、アンコ、ライドベンダーのやり方知ってたの?」

 

「馬鹿言え、俺が考案したんだぞ」

 

「えぇ、そうなの?」

 

「セルメダルを原料に乗り物として扱える代物…よく思い付いたものですねアンク君」

 

驚く伊達に続いて真木はアンクを評価すると、アンクは「発案したのはお前ら人間だろ」と小さく呟く。すると、スピーカー越しから発目が声を上げた。

 

『ちょっとちょっとちょっとアンクさん!私から説明しようと思ってたんですよー!?真木博士もあまり口出ししないで下さい!』

 

自分の口から色々と説明したかったのか発目はブーブーと文句を垂れており、耳郎達は若干苦笑を浮かべている中、アンクは「フン」と鼻を鳴らした。

 

「どォでも良いだろ。俺は乗り方も使い方も知っている。説明は映司達にでもしていろ」

 

『確かにそれは言えてますね…。分かりました!気を取り直してオーズのお方とついでにそちらのA組の人!今アンクさんがやってくれた通り、そちらのライドベンダーは自販機モードとバイクモードにもなれる超・優れ物のベイビーのご説明をさせていただきますッ!』

 

『オホン!』とわざとらしく咳払いをした発目。伊達や後藤、真木はやれやれと肩を竦めている中、火野と耳郎は目の前にあるライドベンダーに興味が引かれている中、発目の熱意のある説明が始まったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★☆★☆

 

 

火野達がインターン活動を開始している同時刻、三鷹市の街中では午前の時刻だと言うのにも関わらず道行く人々が大勢歩いている。

そんな中、小さなビルの小会社の建物の窓から人々を見下ろす様に眺めていた女性が居た。女性は小さく溜息を吐き、机に置かれている化粧水を見つめる。どうやら化粧品を扱う会社の社長なのだろう。

 

「このままじゃ…ダメだわ」

 

盛に思える街でも並に乗れなければ商品は売れない。売り上げが著しく結果が出せない彼女は現状に嫌気が刺し、再び溜息を吐いた。

 

「なるほどね」

 

「!?」

 

その時、見知らぬ男の声が聞こえた。今室内には誰もいない筈の他人の声に女性は勢いよく振り返る。そこには人間の姿をしたカザリが化粧水を手に取って立っていた。

 

「あなた…誰ッ?」

 

「人間が使うこの商品を売りたい…でも、君の欲望はそれだけじゃ無い筈だ」

 

「何を言って…!?」

 

不法侵入の挙句、語りかけるカザリに恐怖を覚えた女性は1歩2歩と後ずさる。だが瞬きをした直後、目の前に居たカザリの姿が消えていた。

 

「君の()()欲望…解放しなよ」

 

「!?」

 

瞬間、背後からカザリの声が聞こえて女性は勢いよく振り返る。距離を取ろうとしたその時、女性は何故かその場から動けなくなっていた。

カザリの手には1枚のセルメダルが握られており、それを女性に見せると、彼女の額にはメダルを入れる投入口らしき物体が現れる。カザリは彼女の意に問いかける事無く、メダルを額の投入口に投げ入れた。

 

「うっ……!?あぁ……!!?」

 

チャリン!とメダルが投入される音と共に、女性は苦しみ始める。次の瞬間、女性のお腹に大きな穴が開かれる。その中からあろう事か、包帯で巻かれた腕がぬうっと出てきたのだ。

 

「ひっ!?」

 

「怖がる事無いよ。それは()()()()。君の本当の欲望が具現化したものさ……」

 

ヌルヌルと自分のお腹から出て来る()()()に恐怖する女性だが、カザリはそう言い聞かせて悍ましい笑みを浮かべていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★☆★

 

 

 

「なるほど…、じゃあこのライドベンダーはセルメダルをエネルギーに変えて走行出来るバイクなんだ。最近の乗り物って良く出来てるなぁ〜」

 

「だね」

 

「何が良く出来てるだ!メダルがエネルギー源?巫山戯るなッ!貴重なメダルだぞ!」

 

一方、鴻上ファウンデーションでは、発目の説明を一通り聞いた火野達はライドベンダーの性能に感服していた。ガソリン要らずの乗り物に加えて色々と機能が搭載されているバイクに火野と耳郎は感心しているが、メダルをエネルギーに変えると言う発想に気に入らないのかウヴァは文句を垂れてライドベンダーを睨んでいた。それに火野は「でも」と口を挟む。

 

「街中で事件が起きた時移動が楽になるし、直ぐに駆けつけれるだろ。ガソリンも要らないってもう願ったり叶ったりでしょ」

 

『フフフフ、そうでしょうそうでしょ!?それにまだ秘密はありますからね!』

 

「秘密だと?」

 

評価してくれる火野に嬉しさを覚えたのかご機嫌な様子で発目は喋る。〝秘密〟というワードにウヴァは反応すると、真木が火野達のスタスタと前に歩き出しライドベンダーに近寄る。

 

「えぇ、ライドベンダーにはもう一つの機能があります」

 

そう言いながら、真木はライドベンダーに手を置き、ボタンらしき物を押し込むと、バイクだったライドベンダーは形を変えて再び自動販売機の形態へと変形した。

それと同時に、真木はポケットからセルメダルを1枚取り出すと、アンクと同様にライドベンダーの投入口に入れ込み、大きな黒いボタンでは無く、その上にディスプレイに並ばれたカンの形をした物に軽く目を通し、複数ある自販機に模した小さなボタンの1つを選ぶと真木はそれを押した。

 

『タカ・カン』

 

ロボットの様な音声が聞こえると、下の排出口に赤いカンが出される。それを真木は取り出すと、手の平に乗せて、プルタブを開封する。

すると、手の平に置かれたカンは一瞬にして変形し、『ピィイ!』と甲高い鳴き声を上げると共に小さな鷹を模した鳥型ロボットへと姿を変えたのだ。

 

「うわわ、鳥!?」

 

真木達の頭上を自由気ままに飛行し、耳郎が声を上げる中、真木は説明する為に口を開いた。

 

「これは〝カンドロイド〟。プルタブ(プルトップスターター)を引くことでセキュリティが解除されメカモードに変形し、メダル投入者のサポートを行う事が出来るサポートアイテムです。このタカカンドロイドは主に偵察や周囲の捜索が可能、ある程度の言語は理解してくれますので簡単な指示を出せます」

 

「へぇ〜すっごおいっ!!」

 

「ハッハッハ、だろお!他にも色々あるぞ〜?」

 

「伊達さん」

 

感動する火野に伊達は鼻を伸ばして何かを言おうとすると、軽く咳払いをした後藤が呆れた目付きで伊達を見ていた。

それに便乗したのか、壁に寄りかかって座っているアンクも伊達に声をかける。

 

「おい伊達。くだらん話をしてる暇があったらさっさと乗り方を教えてやれ」

 

「アンク!すみません伊達さんッ」

 

相変わらずの態度に火野は代わって謝ると、伊達は察したのか口を尖らせると、渋々口を開いた。

 

「そだったな。じゃあ…火野、ある程度理解した様だから早速、後藤ちゃんと一緒にライドベンダーの乗り方を教える」

 

「あ、はい!よろしくお願いします!」

 

本格的な内容に火野もハッとし、伊達にお辞儀をするが、名前を呼ばれてない耳郎に気付き、火野は再び口を開いた。

 

「伊達さん、耳郎さんは?」

 

「あ〜それはだな…、男の俺が教えるのもなんだから、発目ちゃんが説明している間に()()()の奴呼ばせてたぜ」

 

「代わり?」

 

伊達の言葉に火野と耳郎は首を傾げる。すると、それが合図かの様に入り口のドアが開かれ、1人の女性が現れる。鴻上の秘書である、里中だった。

 

「里中さんッ?」

 

「…伊達さん。私もやる事があって忙しいんですけど…」

 

「まあまあそう言うなって里中ちゃん。ライドベンダーに乗れるのは現段階で俺と里中ちゃん()()だからさ、ね?」

 

「……まァ問題はありません。会長にはボーナス上乗せと言う形で交渉してきましたので」

 

「かぁッ、相変わらずそこら辺はちゃんとしています事」

 

してやられたと伊達は額に手を置いてそう言う伊達。そしてそのまま火野達を見ながら口を開いた。

 

「よしッ!じゃあ火野、耳郎ちゃんに後藤ちゃん!改めて特例のインターン活動を始めて行くぞ。課題内容はインターン活動が終わるまで、お前らにはライドベンダーの()()運転免許を会得してもらう事。勿論ヒーローとしての活動もするし、怠らないつもりだ。いいな?」

 

「はい」

「はいっ!」

「はい!」

 

一通りの説明を終え、いよいよ始まろうとする特別インターン活動。3人は意気込みを入れて、大きく返事をするのであった。

 





No.123 練習と事件と恋愛コンボ?

更に向こうへ!Plus Ultra!!

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