いつかの明日へ、【ヒーロー】は助け合いでしょ   作:しょくんだよ

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ども、しょーくんだよですっ

めちゃくちゃ長くなってしまった汗
戦闘を入れるとどうしても文が増えてしまう汗

高評価、感想、お気に入り本当ありがとうございます!!!
10は本当感謝感激!!!☆


No.125 真実と過去とカンドロイド

 

雄英高校の生徒達が校外活動(インターン)の最中、その世界の影に潜む(ヴィラン)連合達。

メンバーが1人、脇真音優無が用意した誰も使われていない小さな工場、そこは連合達の隠れ家となっていた。

工場のシャッターが開き、外出していた荼毘が入る。優無は荼毘を見るなり、睨み付ける様に彼を見て口を開いた。

 

「君も呑気なもんだねェ。マグ姐が亡くなったのに外出なんてさ」

 

「クズの掃除してたんだ。少しは気晴らしになる」

 

「気晴らしって…よく言うよ。亡くなったの知らせた時、微塵も涙出さなかったじゃん」

 

「勘弁してくれ…。俺だって泣きたいぐらい悲しいさ、顔見りゃ分かんだろ?」

 

常に冷酷な顔している荼毘の顔を見て、優無は鼻で笑いながら「ハッ、分かんねェよ」と皮肉そうに呟く。

死穢八斎會の若頭、オーバーホールとの交渉でトラブルを起こし、連合の1人マグ姐が死んでしまった事によって連合内の空気は澱んでいた。リーダーである死柄木も工場内の一部屋に閉じこもって一向に姿を現さない。それは優無の弟、槍無もまた同じであの事件以来誰とも口を聞いていないのだ。

日々が経つ中、ボロボロになっているソファーに座っていたスピナーが深刻そうに口を開いた。

 

「優無、死柄木はああなっているが…これからどうするんだ?やっぱ死穢八斎會と交渉するのか?」

 

ヒーローと戦う時は宗教地味た台詞を言う彼だが、普段は普通の会話をしてくれるので話しやすいギャップもあるスピナー。ここ最近の悲惨な出来事続きでスピナー自身もどうすればいいか分からないのだろう。

 

「まあーとりあえず死柄木君の指示待ちで良いんじゃないかな」

 

「あんな引きこもり野郎の意見聞いてどうすんだよ…呑気な野郎だ」

 

「あんたには言われたくないね」

 

荼毘の言葉に優無は「いーっだ」と舌を出して威嚇する。

すると再びシャッターが開かれ、入って来たのはMr.コンプレス、トガ、トゥワイスだった。

 

「コンプレス!腕は大丈……」

 

優無は声を掛けるも、オーバーホールの〝個性〟で無くした腕が鉄で造られた義手になっているのを見て言葉を失う。だが彼は気軽に応えた。

 

「このとーり、問題無いさ。まだ慣れないけど…それより優無ちゃん、代金ありがとな。安もんの義手()にならなかっただけ御の字ってもんよ」

 

義手の手を開いて閉じてを繰り返しながらもコンプレスはお礼を言い、その素直な返事にホッと安堵しながらも「どーいたしまして」と優無はニコリと笑う。

 

「てかよ、あんな大金何処から手に入れたんだ?優無ちゃん金持ち?」

 

「そんな訳ないでしょ。まぁ、商人っぽい感じで前仕入れたから」

 

以前、外国から来た試客に大量のヤミーと引き換えに大金を手にした優無。オール・フォー・ワンやドクターに内緒で貰ったままなのは今でも内緒の話だ。

ふと、トゥワイスが申し訳なさそうに突然頭を下げる。

 

「皆んな、本当すまない!俺がドジ踏んだばかりにこんな事になって…!」

 

「全くだ。もっと相手をよく見てりゃ…」

 

「荼毘は黙って」

 

無理もない、自分のせいで仲間が1人、コンプレスの腕がなくなっ罪悪感でいっぱいいっぱいなトゥワイスはあの件以来からずっと皆に頭を下げている。

失態は失態なのだろう、荼毘が文句を言おうとするが優無はそれを止め、トゥワイスに近寄り肩に手を置いた。

 

「トゥワイス、アレはもうしょうがないよ。誰だってミスはするさ。トゥワイスは仲間を増やそうと頑張ってくれたんでしょ?そんなに自分を責めないで、元気出して」

 

「そうです、仁君は悪くない。悪いヤクザが悪いです」

 

「優無ちゃん…トガちゃんッ……!!」

 

トガも優しくトゥワイスを慰め、涙を浮かべるトゥワイス。

 

「だけどまー、やられっぱなしじゃスッキリしないわなァ…」

 

「それは同感。大事な仲間とコンプレスの腕分、お返しをしなきゃね…」

 

荼毘の言葉に優無は立ち上がりそう応える。トゥワイスを許せても、オーバーホールは許されない事をした。あの場は殺してやろうと憤怒する気持ちを抑えたが、それは今も変わらない。力強く握りしめる拳を作り、「よし」と優無は頷いた。

 

「そろそろ決断しなきゃだねぇっ。先ずは拗ねてる弟君と話してこなきゃ」

 

「なんだ、槍無の奴まだ口聞いてないのか?」

 

「立派な反抗期だよ〜。本当世話のかかる弟なんですから。それ終わったら死柄木君とも話すしてくるよ」

 

肩を竦めながら優無は軽く息を吐く。何だかんだ言っても、優無は連合にとっては纏め役みたく仲間を取りまとめている為か、仲間たちからも信頼はそれなりに得ている。

スピナーやコンプレスからも、「助かる」「頼むぜ優無ちゃん」と言われる中、トガは急に優無へと詰め寄った。

 

「トガちゃん?近いよ?」

 

「優無ちゃん、ずっと思ってたんですけど…貴方は他とは違う匂いがするのですッ」

 

「へ?匂い?」

 

「こう…他の人とは違う!感じがします」

 

「私が?」

 

勘が鋭いのかと一瞬身構える優無。それに便乗して荼毘が口を開いた。

 

「確かに、お前の〝個性〟はおかしいな…。雄英にもいただろ、お前と()()〝個性〟持ちが。親戚か何かか?」

 

「あ〜それは俺も気になってたな。触れて良いのか分からなかったから聞かなかったけど。優無ちゃんや槍無と言いヒーロー卵のオーズと言いチートにも程があるでしょ、芸達者だ」

 

コンプレスもうんうんと頷き、「恐竜凄く強かったです」と優無にとっては少しトラウマの出来事をトガは呟く。

肩を貫かれた時の痛みが少し蘇ったのか身震いをしながら、一から説明するのは少し面倒だと思ったのか優無は後頭部をポリポリと掻きながら口を開いた。

 

「あー…う〜ん…確かに親戚っちゃ近い感じもするけど…まァそうかもね。ただ言える事はあまり深く詮索してくれないとこっちも助かる、かな」

 

ハハッと優無は苦笑いを浮かべ、そのまま離れようと振り返ると、いつの間に居たのか槍無が俯きながらこちらへと近付いて来た。

 

「………姉さん、皆んな……ごめん…」

 

「あ、弟君!反抗期治った?」

 

「落ち着いた……コンプレス……腕は大丈夫…?」

 

「あぁ、ご覧の通り改造人間になったぜ」

 

申し訳なさそうに謝る槍無。コンプレスは気にしていない素振りをしながらガシャガシャと金属音が鳴る義手を横に振った。数日ぶりに会話が出来たのか優無はニコリと笑顔を見せる。その時、偶然なのか、部屋に閉じこもっていた死柄木もまた姿を現した。

 

「なんだ、全員集合してるんだな…」

 

「「「死柄木ッ!」」」

 

「あ、や〜っと出て来た死柄木君。閉じこもって何してたの?ゲーム?」

 

「黙れ、色々考えてたんだよ」

 

茶化す優無にキレ気味に応える死柄木。彼は息を吐きながら全員を見渡し口を開いた。

 

「全員居るのなら話は早い。今後の予定を伝える…」

 

「「「「「!?」」」」」

 

死柄木は言いながら、1枚の紙を取り出す。それを見た連合達は驚愕し、優無は少し睨む様に死柄木を見つめ、尋ねた。

 

「……行くの?」

 

「あぁ、お前も来い脇真音。俺のボディガードになれ」

 

「はっ。自分で守れるでしょーに……でもまぁ、行ってやりますか」

 

満更嫌でも無く、優無は応えた。死柄木の見せた紙は、死穢八斎會の名刺だったのだから。

 

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★☆

 

 

 

『ハッピーバースデー火野君ッ!!』

 

「うわ!」

「なにっ!?」

「うっ!」

 

鴻上ファウンデーションの事務所で待機していたオーズ達に、突然の鴻上の大きな声がアナウンスで鳴り響き、その場にいた耳郎やウヴァもビクッと肩を上げる。何事かと動揺しながらもオーズは耳を傾けた。

 

『今すぐ私の会長室に来たまえ!!』

 

ブツッ!と荒々しくマイクを切る音で途絶え、3人は唖然とする中、耳郎がオーズに尋ねた。

 

「なんかした?」

 

「心当たりが……と、とりあえず行ってくるよ」

 

身に覚えのない呼び出しに首を傾げながら、オーズは部屋を出て行きその場を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★☆

 

 

 

ノックをし、「失礼します」と会長室の扉を開けるオーズ。

そこには鴻上と里中、伊達に後藤、真木博士も滞在している中、もう1人の人物塚内にオーズは驚いた。

 

「塚内さんっ!」

 

「やあ……っと。どうしたんだい火野君、変身しちゃって」

 

「色々ありまして……それよりどうしたんですか、こんなに集まって?」

 

ファウンデーションの馴染みのある面子が揃って驚いている中、伊達は後頭部を掻きながら「どうしたもこうも…」と口を開いた。

 

「俺達も突然呼び出されたんだけどよ、そんな事よりも……ねぇ?」

 

「話を振らないで下さい。突然の話過ぎて俺自身も困惑してます……どういう事だ火野」

 

「何がです?」

 

()()だよ火野君!!」

 

鴻上がバンッ!と机を叩きながら椅子から立ち上がり大声で応える。それを聞いた瞬間、オーズはこの場にいる面子、塚内が何故ここにいるのか納得し、「あ…」と声を漏らす中、塚内が事情を説明した。

 

「すまない火野君。アンク君と君の話は公表しないと言ったんだけど、鴻上会長達は話に入っていたからね。一応伝えようと思ったのだが…迷惑だったかな?」

 

「いえ、大丈夫です。遅かれ早かれ話す事になってたでしょうから…じゃあ皆さんは一通り話は聞かれましたか?」

 

オーズが尋ねると、真木が納得しない様子で腕に乗せている人形を見つめながら口を開いた。

 

「えぇ、ですが納得はしていません。私は産まれてからずっとこちらの世界に居ました。ヤミーの存在、セルメダルもつい最近知ったので」

 

「俺もだわ。火野とアンコと…え〜っと前世だっけ?一緒に戦ってたなんて信じ難い話だねぇ…」

 

「何より〝個性〟が無い世界なのが有り得ない」

 

真木、伊達、後藤と信じられない顔の一点張りで言い、火野は「えっと…」と頭を掻きながらどう説明すれば良いかと考えている中、塚内が口を開いた。

 

「僕も最初は信じれなかったけど、火野君と一緒にいるアンク君やウヴァ君、それに今行方を晦ましているもう1人のグリード『カザリ』。まァ、カザリはともかく、君達の事を良く知っている様な説明をアンク君達は言っていたから。あの言い方だと本当なんじゃないかって思ってしまうくらいだよ…現に信用しているけどね」

 

「塚内さん…」

 

「まー…確かに嘘でもこんな驚愕な事言えねえよな」

 

塚内の言葉に、伊達は頭を掻きながらも無理矢理納得をしようと顔を顰める。すると、鴻上が机を勢いよく叩くと同時に立ち上がった。

 

「実に素晴らしいッ!!この場にいる我々全員、そして私も転生したと言うわけだ、ハッハッハッ!!!」

 

「会長、そんな簡単に納得して良いんですか?」

 

「面白い経験をしているではないか!記憶が無いと言うのがとても残念だがねッ」

 

意外にも…と言うよりは会長らしいと思うのが妥当だろう。鴻上は塚内の前世の話を快く受け入れる様に高笑いをする反面、残念そうに「アッ!」と顔を顰める。

その光景を見てオーズは苦笑をする中、後藤が何か思いたある節があるのか呟く。

 

「そう言えば、初めてアンクに会った時…学生気取りだの、前世譲りとか言ってたな…。火野、あの生意気な性格は昔からなのか?」

 

「えぇ…うぅん、どうだろう…」

 

前世の記憶は無い火野は考えていると、伊達は「んー…まァ」と口を開いた。

 

「何にしろとりあえず、だ。この話はまた何アンコ達からも詳しく聞こうじゃねーの。正直今は受け入れ難いって言うか…信じられねーっと言いますか…」

 

「同感ですね。私も気持ちを整理する時間が欲しいです」

 

「え?ドクターその顔で動揺してんの?」

 

「失礼ですね伊達君。私も人間です、感情の1つや2つは持っています」

 

「逆に2つしか感情無いって事?ヤダ、ちょっと可哀想…」

 

掌で口を抑え、同情する伊達。だが、徐々に外れている会話に後藤が「伊達さん」と声を掛ける。

 

「ま、まァともかくだ!この話は俺達だけの秘密…とは言っても誰も信じちゃくれねえだろうけど、他言無用だ。火野、気持ちの整理が落ち着いたらまた話聞かせてくれよ?」

 

「は、はいっ。皆さんありがとうございますッ」

 

ポジティブに返答をくれた伊達にオーズは素直に喜び、深々と頭を下げた。若干腑に落ちない面々もいるようだが、今はこれで良いだろうとオーズは思っていた。

 

 

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★☆

 

 

 

軽い雑談をして会長室を退室したオーズは、耳郎達が居る事務所へ戻るべくエレベーターで階層を降りていた。

チーンとエレベーターの音声が鳴り、ドアが開かれると、廊下の端っこにアンクが立っていた。

 

「アンク、戻ったの…ってか、ヤミーは?」

 

「タカで探してる。カザリめ、気配を消す事だけは一丁前にしてやがる」

 

声を掛けるなり、アンクは皮肉そうに応える。ネコ科だけの事はあるのか、同じグリードのアンクでさえも探すのは困難なのだろう。

 

「アンク、塚内さんがさっき来てたんだけど…この世界の伊達さん達に前世の事話したよ」

 

「あ?…フン!あいつ等の事だ。どうせ信じれないとか何とか言うに決まってる」

 

先読みした発言をするアンクにオーズは「何で分かるの?」と若干驚いた様子で応える。アンクは再び鼻をフン!と鳴らし、2人の会話がそこで途絶える。暫く沈黙が続いた状態で廊下を歩いていると、オーズは口を開いた。

 

「なァ、アンク。前々から気になってたんだけど」

 

「なんだ?」

 

「こっちの世界に来る前の事なんだけど…」

 

「あァ?来た時に言った筈だ。記憶が無いお前が居た俺達の世界…話した筈だぞ?」

 

「そうじゃなくてッ。…お前の事についてだって」

 

「どういう事だ?」

 

意味が分かっていないアンクは首を傾げ尋ねる。

 

「ウヴァやカザリは俺が持ってたコアメダルから蘇っただろ?でも、アイツ等はその()()を知らなかった。でもお前は()()()()()()()()だったよな」

 

「……」

 

「アンク、この世界に来る前に何かあったのか?っていうか…()()()()()こっちに来れたんだ?」

 

ウヴァやカザリとは違い、オーズの言う通り何かを知っててこちらにやって来たと思われるアンク。俗に言うけ『転生』や『転移』と言うワードがオーズの中に浮かんでいた。

オーズは尋ねると、アンクは真顔になりその口を開いた。

 

「……あぁ、あの時…ある『声』が聞こえてきたんだ」

 

「『声』?」

 

「お前が()()()後にな……」

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★☆★

 

 

 

 

時は遡り、火野映司達が居た本当の世界の出来事。

ゴーダを倒し、火野の命の灯火が消えた後の事だった。 

グリード達が消え、元凶となった『王』も居なくなり、混沌と化していたこの世界に平和が戻った。だが、大切な相棒を失ってしまったアンクは、心の中に空洞が出来てしまった様な感覚に犯され…1人、陽が沈む夕暮れをただずっと見つめていた。

 

「……………」

 

アンクはふと、右手に持っていた自信のコアメダルを見つめる。『絆』の力によって変異した虹色のコアメダル3枚。だがそれは、役目を終えたかの様に色褪せ、元の赤いコアメダルへと戻ってしまった。

 

「……ッ……なんでだ………映司」

 

命という欲望が欲しかったアンク。それが手に入っても、苦楽を共にした火野が居なくてはそれはなんの価値もなかった。自分自信だけ蘇って代償に火野が消えてしまっている様な感覚に襲われ、アンクは声を震わせる。

 

もう火野映司はこの世に存在しない。

 

グリードとは違い、蘇らせる事もできない。

 

人間なのだから。

 

現実を受け止め切れず、アンクはただ悔やんだ。が、その時。

 

「……ッ!?なんだ…!?」

 

突然、アンクの隣に白く光る物体らしきモノが現れる。

 

「…!チッ!!新手のグリードか!?クソ、ウンザリなんだよッ!!」

 

気持ちが沈んでしまっている状態、今1番相手にしたくない得体の知れない何かに、アンクは当たり散らす様に叫び、戦闘態勢へと入る。

が、次の瞬間。

その光は強く発光し、アンクの視界は真っ白に包まれたのだった。

 

 

 

 

 

☆★☆★

 

 

「……ッ!なんだ…何が起きた…?」

 

視界を奪われ、恐る恐る目を開けたアンク。

辺り一面、真っ白になり……否。真っ白な『空間』に立っていた。

現状が分からないアンクは警戒しながら辺りを見回すと、頭の中に響く様な『声』が聞こえてきた。

 

 

〝やあ、君がアンクだね?〟

 

 

「ッ、誰だ!?新しいグリードか!?」

 

 

〝いやいやいや、僕はそんな存在じゃ無いよ。そうだね、死者を導く者…と言った方が良いかな〟

 

「死者を導く者だと?ハッ!…で、その導き者が何の用だ、目的はなんだ?言っとくが、俺は蘇ったばかりなんでなァ。得体の知れない奴に導かれる筋合いは無いぞ」

 

胡散臭い紹介にアンクは鼻で笑いながらもその声の主に尋ねる。声の主は静かに笑いながらその問いに応えた。

 

〝まァいきなりこんな状況で説明しても信じてもらえないだろうね。提案をしに来たのさ〟

 

「提案だと?」

 

〝あぁ。……単刀直入に聞こう。火野映司君に()()()()()()()()()?〟

 

「!!」

 

その耳を疑う発言にアンクは大きく目を見開く。

 

「……会えるのか?」

 

〝勿論、君の返答次第さ〟

 

「要件はなんだ?」

 

〝話が早くて助かるよ。さっきも言ったけど、僕は死者を導く者。だから当然、映司君の魂もさっき導いたばかりなんだ〟

 

「映司をどこへやった…!?」

 

〝彼は本当に可哀想な死を遂げたよ…。せっかく君を復活させたのに再開を喜ぶ間も無く死んじゃうなんてさ〟

 

「そんな話はどうでもいい!どうやって映司に会えるかを聞いてるんだッ!」

 

〝落ち着きなよ。言っただろ?君の返答次第だって〟

 

回りくどい物言いにアンクは憤怒し、怒号するが、声の主は冷静に続けて語りかけた。

 

〝今の映司君は、ある別の世界に『転生』させたんだ。その世界の人間は少し特殊でね。君達グリードみたいに強い存在では無いが、一人一人能力を備えてる。当然、それを悪用に使う存在も出て来ている。映司君は正義感の強い人間だからね。その世界には打ってつけの存在になり得るだろう……そこでだ。アンク君、君も一緒に『転生』しないか?〟

 

「何?」

 

顔を顰めるアンクは右手の指先をこめかみに当て、口を開いた。

 

「『転生』ってのは、生まれ変わるって意味か。なんだ、俺は新しい存在にでもなるのか?」

 

〝いや、今回は特別さ。映司君も、アンクもそのままの姿で行ってもらうよ。まあ、少し身体に影響が出るかもだけどね〟

 

やけにメリットが多い持ち掛けにアンクは半信半疑に身構える。

だが今は火野に会えると言う話にその揺らぎは徐々に消えていった。

 

「…………その『転生』ってヤツをすれば、本当に映司に会えるんだろな?」

 

〝勿論さ、ただ…向こうに行ってしまえば、こっちに戻って来るのは不可能。こちらの人とは二度と会えない、それでも良いかな?〟

 

「……フッ。あぁ、良いさ。アイツがいない世界なんか生きていたって仕方がないからなァ」

 

〝交渉成立だね。さて、どうする?別れの言葉とかは……〟

 

「必要ない。さっさと連れて行け」

 

 

〝…OK。……あ、1つ言い忘れたけど、映司君はこちらに居た()()が無いからね、その他も色々と不便が生じると思うけど……。じゃあ、健闘を祈ってるよ〟

 

 

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★☆★☆

 

 

 

「……へぇ、そんな事があったんだ。え、じゃあつまり俺もその導く者?に転生してもらったって事?」

 

「まァそうなるな」

 

あっさりと衝撃的な事実を聞き、オーズも内心は驚愕していたがその話が本当ならば、アンクやウヴァ、脇真音が言っていた事も全て繋がる。

恐らく脇真音姉弟も声の主で転生させられたのだろう。

すると、オーズは「ハハッ」と笑い出す。

 

「何が可笑しい?」

 

「いや、ならその導く者って人に感謝しなきゃだなぁって思ってさ」

 

「あ?」

 

「俺は記憶が無いけど、こうしてアンクとまた会えたって事だろ?良かったじゃん」

 

「ッ!馬鹿が、お前は俺がいないと何しでかすか分からないだろうが。メダルも碌に使えない癖に調子に乗るな」

 

「おい、まだ引き摺ってるのかよっ?素直に喜べばいいのに」

 

「フン!気持ち悪いんだよ」

 

「ちょ、そんな言い方無いだろ!」

 

オーズが言うと、アンクは再び「フン!」と背を向けて歩き出す。その背を見て、アンクらしいと思ったオーズは密かに笑みを浮かべた。

 

その時、廊下の窓の外側から叩く…と言うより、つつく音が聞こえた。2人は振り返ると、そこにはタカカンドロイドが鳴きながら嘴で窓をつついていた。

 

「やっと出たか」

 

「ヤミーが出たのか?」

 

「あぁ、さっさと行くぞ」

 

言い残したアンクは背を向けて先に駆け出す。オーズも後を追いながらスマホを取り出すが、何か不備があったのかアンクに声を掛けた。

 

「アンク!」

 

「なんだ!?」

 

「へ、変身してたらスマホつつけない!連絡してくれる!?」

 

「あァ!?お前もカンドロイド持ってただろ!それで言えば済む話だこの馬鹿!」

 

肝心な時は冷静だが、変なタイミングの起点は効かない火野は前の世界から相変わらずだ。アンクの提案にオーズは「あ、そっか!」とバッタカンドロイドを取り出し、プルタブ(プルトップスターター)を開けたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★☆

 

 

「うわあっ!?」

 

「フン、美を知らぬ人間に価値は無い!」

 

工場の人間が1人、エイサイヤミーに吹き飛ばされ、水を纏ったエネルギー弾を辺りに散らし破壊する。工事現場で働く者は美など皆無だと思い、そこを狙っているのだろう。逃げ惑う人々に紛れ、アンクとオーズは一足先に到着する。

 

「皆さん、早く逃げて下さい!」

 

「映司、今度こそヤミーを倒すぞ。これ以上逃げられるのは御免だからな」

 

「言われなくてもわかってる!ハァッ!!」

 

アンクに言われながらもオーズはファイティングポーズを構えながらそのままエイサイヤミーに向けて駆け出す。

だが。

 

「フン!」

 

「がぁっ!?」

 

「勿論させないよ。オーズにアンク、次は君達のコアメダル…貰うよ」

 

「カザリ!」

 

不意を突かれ、現れたカザリの攻撃に怯んだオーズ。態勢を立て直そうとするオーズに追撃せんとカザリは両腕の鋭利な爪を使い、引き裂く様にオーズに斬撃を浴びせる。

 

「がっ!?うわあっ!」

 

「フン!!」

 

「だぁあッ!!?」

 

猛攻撃に反撃する余地も無くオーズは攻撃を食らい続け、振り上げた爪がオーズドライバーに当たり、装填されていたコアメダルが空中へと吹き飛んだ。

 

「!?クソっ!」

 

変身が解かれ、倒れ込む火野。アンクは悪態を吐きながら宙を舞うコアメダルに向けて右腕を突き出し、右腕だけの状態で一直線に浮遊する。そしてなんとか、カザリより先にコアメダル3枚をキャッチした。

 

「アンク、無駄な抵抗はやめなよ。この状況で君に勝つ算段でもあると思う?」

 

「…あ、あれ…?あの綺麗なお姉さんは…?」

 

カザリの後ろで身体を起こした火野は、ぼんやりとした表情で辺りを見回す。ヤミーの毒気が再び脳を支配したのだろう。カザリに続いてエイサイヤミーもじわじわとアンクに詰め寄る。更にその周りにはヤミーの卵から孵化したエイの幼体がフヨフヨと何十匹と数を浮遊している。

アンクは「チッ」と舌打ちをしながら、力を解放しようとしたその時。

 

 

「〝ハートビートファズ〟!!」

 

 

突如叫ぶ声と同時にアンク達が立っていた地面が大きく揺れる。次第に地面に亀裂が入り、カザリ達の立っていた場所は大きく割れ崩れた。

 

「何!?」

 

「うっ!!?これは!?」

 

「アンク!火野を守って!!」

 

「おまっ!!クソっ!」

 

生身の火野がいるのに躊躇なく攻撃を仕掛けたのは耳郎だった。怒る余裕も無く、アンクは直ぐに火野の元へと跳躍し、抱き抱えると安全な地帯へと飛び向かった。

カザリも後方へと跳躍し、エイサイヤミーは鈍臭いのか割れた地面へ足を奪われ、その場に大きく倒れ込む。

 

「全く、人間が大した力だよ。これが〝個性〟って能力かな?面倒だなァ」

 

「伊達さん!後藤さん!」

 

皮肉を言っているカザリだが、耳郎は火野とアンクが距離を取ったのを確認すると、同時に声を張り上げる。

ハッとしたカザリは声を出した方角へ目を向けると、そこにはバースに変身した2人が、胸部に装着される大きな砲塔をエイサイヤミーに向けていた。

 

「なっ!」

 

「ナイス耳郎ちゃん!後藤ちゃん!」

 

「充電完了しています!」

 

プロトバースの合図にバースは「っしゃ!」とエネルギーが一点に集まる砲塔を構える。2人のバースが構えるそれはバースCLAWsの1つ、その名も『ブレストキャノン』。

 

「「〝ブレストキャノンシュート〟!!」」

 

『『セル・バースト』』

 

叫ぶと同時に高エネルギーの2つのビームが勢いよく射出され、エイサイヤミーへと直撃する。反動が凄まじく、少し距離がある耳郎にさえも風圧が押し寄せる程だった。

 

「グ、ぐおおおああああ!!!」

 

その威力は折り紙付きで、エイサイヤミーはダメージに耐え切れずその場で爆散した。

だが、倒したと思った矢先、爆炎の中から巨大なエイの形をしたヤミー『イトマキエイヤミー』が咆哮を上げて宙を浮遊した。

 

「ーーーーーーッ!!!」

 

「おわっととと!?なんだありゃあ!?」

 

「馬鹿な、ブレストキャノンは完全に当たった筈!?」

 

倒しきれなかったと言う時点で驚きだが、何よりもその巨大さに驚愕するバース。工場内が狭いと感じたのか、イトマキエイヤミーは触覚の部分から紫色のエネルギー弾を放ち、工場の壁を破壊する。

そのまま外へと逃げてしまった。それに続いて、小さいエイヤミーの群れも次々と破壊された壁から出ていく。

 

「いけねッ!あんなデカいのが街に出たら!」

 

「応援を要請しましょう!とにかく、今は俺達だけで食い止めますよ伊達さん!」

 

「おう!わりィ耳郎ちゃん、火野達を頼んだ!」

 

そう言い残し、バースとプロトバースは工場の外へと駆け出す。残されたカザリは「フフ…」と笑みを浮かべながら、アンクと火野の方へと歩み出した。

 

「さ、邪魔者はいなくなったね。大人しくコアメダルを渡して貰おうかな」

 

「おい、()()()がいる事を忘れるな!」

 

この場にいなかった者の声が聞こえ、カザリはハッとし振り返る。そこにはウヴァが立っており、振り返ったと同時にウヴァの持っていた()に斬られ、火花が飛び散った。

 

「くっ!?ウ、ウヴァ…!?」

 

「フン!ほう…これは中々良い()だ」

 

ウヴァの持っていた物はなんとメダジャリバーだった。恐らく鴻上ファウンデーションから持ち出したのだろう。ウヴァは笑みを浮かべながら自身のセルメダルを1枚メダジャリバーに装填し、メダレバー(持ち手の部分にあるレバー)を引いて、刀身へと挿入させる。

 

「遠慮なくお前を叩き潰す!」

 

「ッ!まっ、たく!人間の力を使うなんて、君も落ちぶれたね、ウヴァ!」

 

「ほざくな、貴様もだろ!」

 

振り回すメダジャリバーを避けながらカザリは皮肉を言うが、カザリ自身も同じ事を言えないのかウヴァは怒号する。

その間、耳郎は火野とアンクの元へと駆け寄るとアンクが嫌味ったらしく口を開いた。

 

「おい耳郎、よくもさっきはやってくれたな?やるならーー」

「火野、大丈夫?」

 

「ーーッ!?」

 

アンクを無視して耳郎は火野の安否を確かめる。だが。

 

「あ、耳郎さん〜。あのお姉さんどこに居るか知らない〜?」

 

「!アンタまた…!」

 

「チッ!おい耳郎、これ使ってもう一度変身させろ」

 

アンクはそう言って3枚のコアメダルを耳郎に投げ渡す。「うわっ」と耳郎はなんとかキャッチすると、それはアンク自身の赤いコアメダル3枚だった。

 

「これ、アンタの…」

 

「状況が状況だからなァ。早いとこカタをつけなきゃ色々と面倒だ。俺はカザリを始末する、お前は映司を頼む」

 

アンクはそう言って立ち上がり、ウヴァと交戦しているカザリの方へと駆け出した。見送った耳郎はコアメダル3枚を握り、火野に声を掛ける。

 

「ほら!火野、もっかい変身するよ!」

 

「大丈夫〜、俺はいつでもあのお姉さんの見方だからぁ〜」

 

「…!もォいい加減にしてよ!」

 

フワフワとしている火野に痺れを切らしたのか、耳郎は火野の両方を掴んで叫んだ。

 

「アンタ、今皆んなが必死に戦ってるんだよ!?肝心のアンタがそんなんでどーするんだよ!今までだって誰かの笑顔を守る為に戦ってきたんだろ!?」

 

揺さぶりながら耳郎は必死に叫ぶが、それでも火野はニンマリとした表情を辞めない。

やはり変身させないと駄目なのかと思い、耳郎は火野の装着しているオーズドライバーにアンクに託されたコアメダルを1枚ずつ装填していく。

 

「ウチさ…、アンタの真っ直ぐな気持ちと、誰よりも人の為に動くその姿が、かっこよくて凄いと思ったんだよ……」

 

「えーそうなの〜?」

 

「うん……、ウチの中でアンタは誰よりも輝いてるんだよ」

 

最後の1枚を見つめながら言い、それを装填し、オースキャナーを取り出すと待機音声が流れ始める。俯いていた耳郎はフッと顔を上げ、火野に向かって口を開いた。

 

「今言うのはズルいかもだけど、ウチ………アンタの事、す、好きだから…!!」

 

「え?」

 

「ほ、ほら立って立って!」

 

顔を真っ赤にしながら耳郎は火野を立ち上がらせ、オースキャナーをドライバーに滑らせる。

キン!キン!キン!と読み込む音が響き渡る中、耳郎は呟くようにその言葉を放った。

 

「変身」

 

 

 

タカ!

 

クジャク!

 

コンドル!

 

 

 

 

タ〜ジャ〜〜ドルゥ〜〜〜!

 

 

高らかに鳴く鳥の声と同時に神々しく誕生させるような音声が鳴り響く。耳郎は直ぐに後退り距離を取ると、火野の体は紅色の炎に覆い被される様に包まれ、炎を纏わせる様な真紅の姿、〝オーズ タジャドルコンボ〟へと姿を変えた。

 

「うわっとと!?…あれ?これってタジャドル…!?姿変わってる?」

 

前に倒れ込みそうになる身体を持ち堪え、オーズは自身の身体を見つめながら戸惑う。

 

「確か俺、カザリにやられそうになって…」

 

状況が理解出来たのか、ハッとしたオーズは辺りを見回す。壁が崩壊し、エイサイヤミーの姿はどこにも無く、少し距離を置いて戦っているのはアンクとウヴァ、カザリ。そして、目の前には耳を真っ赤にしている耳郎が立っていた。

 

「耳郎さん…!?俺、また……というか……」

 

「ウ、ウチは大丈夫!ほら、早く行くよ!」

 

「あ……うん、そうだね!ありがとう!」

 

申し訳なさそうにするオーズに耳郎は笑顔で応え、オーズはお辞儀をするとカザリ達の方へと駆け出した。その背中を見送った耳郎は…。

 

両手を顔に被さるように押さえつけた。

 

 

「(こ、コクっちゃった…!!何でウチ急にあんな事言ったんだろ…!でもあんな状態の火野だから多分聞いてないはずだけど…!!ヤバいヤバい、超ハズい……!!!)う、うわぁ…!」

 

バクバクと〝個性〟を使ってもないのに自身の心音が鳴っているのが良くわかるくらい動悸が激しく聞こえる耳郎。応援に行きたいところだが、今の状態では足手纏いになるだろうと思い、耳郎はその場で深く深呼吸をしたのだった。

 

一方で、ウヴァとアンクはカザリと交戦をしている最中。メダジャリバーを振り回すウヴァに距離を取ろうとするカザリだが、そこをアンクが追撃と言わんばかりに右腕を振りかざす。

 

「おいどうした!避けてばかりだな、カザリ!?」

 

「ッ!全く!野蛮だなぁ君達は!ハッ!」

 

「!?」

 

煽るアンクにキレたのかカザリは腕から水流を飛ばす。アンクは横へ飛び退く様にそれを交わすが、ウヴァは交わせずメダジャリバーで防御を取ってそれを食らってしまう。

 

「うごっ!?ぶっ!この…!?」

 

「チッ!メズールの力か…!面倒だなァ!」

 

「面倒なのは君達の方でしょ!!」

 

態勢を崩すウヴァ。その隙にカザリはアンクに攻撃を仕掛けようとするが、その時。空中から飛来したオーズがタジャスピナーを構えてカザリに攻撃した。

 

「ハァッ!」

 

「ッ!?なにっ!?」

 

ガツン!!と重い一撃を食らったカザリ。火花と同時にセルメダルが飛び散り、カザリは大きく吹き飛ばされる。

と、その時だった。飛び散ったセルメダルの中から1枚、黄色に輝くコアメダルが飛んでいくのをアンクは見逃さなかった。

 

「ッ!」

 

アンクはその場から跳躍し、それを見事にキャッチして地面へと着地する。「ハッ」と不敵な笑みを浮かべ、奪ったトラのコアメダルを見せびらかす。

 

「遅いんだよ!が…まァ上出来だ」

 

「ごめんっ」

 

「ぐっ…オーズ…!流石に3人相手は分が悪いね。コアメダル、預けとく」

 

そう言い残し、カザリはその場から跳躍し、イトマキエイヤミーが壊した壁の外へと飛び出し姿を消した。

 

「待て…あぐっ!?」

 

追いかけようとするオーズだが、突如膝から崩れ落ちる。アンクは何かを察したのかその様子を見て口を開いた。

 

「やっぱりか。ずっと変身していたツケがまわったなァ」

 

「で、でも…壁の外にヤミーの気配が…!」

 

ヤミーの毒気を払う為にオーズになっていた火野。コンボになった今そのリスクが倍となり身体が言う事を聞かないのだろう。

それでも、オーズは向かおうとする意思があるのか、紫のメダルの力を使用したのか複眼が紫色に変化する。

 

「おい、その力を無闇に使うな!ウヴァ、バッタのメダルを映司に渡せ!」

 

「ム、…フン、いいだろう」

 

「映司。さっき奪ったコレ使え!」

 

ウヴァはバッタのメダル、アンクはトラのメダルをオーズに投げ渡す。2枚を受け取ったオーズはドライバーに装填されていたクジャクとコンドルのメダルを取り外し、渡された2枚を入れながら立ち上がる。そして、オースキャナーを取り出しそれをスキャンさせた。

 

 

タカ!

 

トラ!

 

バッタ!

 

 

 

 

 

 

久々に聞くコンボソングなのか、「これこれ」と言わんばかりにオーズは首を上下に少し揺らせながらタジャドルからタトバコンボへとその身を変えた。

 

「…ふぅ、ありがとうアンク。少しは楽になったかも」

 

亜種形態、コンボ形態とは違い、タトバコンボはコンボと言えどバランスが良く負担が少ない姿。タジャドルに比べればかなり身体の負担が減ったのか、息切れを起こしていたオーズは徐々に落ち着き、深く息を吸い込んでいた。

 

「礼を言う暇があるならとっととメダルを稼いで来い」

 

「わかった!」

 

「待て映司」

 

「え?…うわっとと!?」

 

突然ウヴァに呼び止められ、オーズは振り返ると同時にメダジャリバーを投げ渡される。

 

「これっ…」

 

「俺は疲れた。後は任せるぞ」

 

「ありがとうウヴァ!よしっ!」

 

オーズは意気込みを入れ、破壊された壁に向かって跳躍し、その場から姿を消した。アンクも気になるのか、オーズの後を追いかける様に壁を乗り越えて行く。

ふと、ウヴァは残った耳郎を見かけ、声を掛ける。

 

「おい耳女。そこで何をしている?」

 

「…!うっさい、今話しかけるな!」

 

 

BOOW!!

 

「うバァッ!!?」

 

プラグを刺され、爆音を流し込まれたウヴァ。耳郎は顔を真っ赤にし、プイッとそっぽを向いたのだった。

 

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★☆

 

 

一方、鴻上ファウンデーションの会長室にて。

バッタカンドロイドを現地に配置させ、映像をモニターで監視していた会長と里中。

 

「会長、巨大なヤミーが市街へと暴れながら進行しています。伊達さんと後藤さんが食い止めているようですが…」

 

「彼等だけでは止めるのは難しいだろう!!火野君は?」

 

「今応援に駆けつけて行ったみたいです」

 

里中の言葉に「ふむ!!」と大きく頷く鴻上は、リモコンを手に取り、チャンネルを変える。そこに映し出されたのは、山積みにされた水色のカンドロイドだった。

 

「よろしい!里中君!早速用意を!!」

 

「はい」

 

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★☆

 

 

 

「ーーーーーッ!!!」

 

 

「こっの!!デカい図体の割に動き回りやがって!」

 

咆哮を上げるイトマキエイヤミーに向けて、バースはバースバスターを構えセルメダルの銃弾を放つが、俊敏な動きで当たらず苦戦を強いられていた。

 

「くっ!このままじゃ街に甚大な被害が…!」

 

「弱気になるなよ後藤ちゃん!ネバーギブアップだぜ!」

 

小型のエイヤミーを駆除しているプロトバース。弱いが数が多く、イトマキエイヤミーの相手をする間も無い。弱音を吐くプロトバースにバースは気合いを入れようとする。

その時、背後から「伊達さーん、後藤さーん!」とオーズが走ってこちらにやってきた。

 

「火野!大丈夫なのかお前」

 

「はいっ、カザリには逃げられてしまいましたけど…」

 

「いや、戦力は多い方が良い…だが、この状況をどうするか…」

 

「とにかく食い止めましょう!」

 

オーズの加勢に頼もしいと感じる2人のバース。オーズはそう言ってメダジャリバーを構えた瞬間、何処からか現れたバッタカンドロイドがオーズの肩に飛び乗った。

 

『火野さん、里中です』

 

「え、あ、里中さんっ?」

 

『はい。近くにライドベンダーを設置してあります。セルメダルを入れて、〝タコカンドロイド〟を使用して下さい』

 

「え?」

 

通信の相手の里中から指示をもらい、オーズは辺りを見回すと、建物の隅っこに自販機モードのライドベンダーが配置されているのを発見する。オーズは駆け寄り、言われた通りセルメダルを1枚投入口に入れる。

 

「えっと…タコ…これか」

 

水色のカンドロイドを見つけ、オーズはボタンを押し込む。ガコン!と排出口に落ちた音が聞こえ、中からカンドロイドを取り出すと、プルタブ(プルトップスターター)を開けて掌に乗せた。

瞬時に変化するカンドロイドは文字通りタコの形をしたモードへと変形する。

 

『タコー!』

 

「おおっ…お?」

 

可愛らしい鳴き声を出すのも束の間、タコカンドロイドはそのまま浮遊すると、イトマキエイヤミーに向かって空中をホバリングする。

その瞬間だった。突如、別の方角から大量のタコカンドロイドが大群で飛来してきたのだ。

 

『タコー!』『タコー!』『タコー!』『タコー!』

『タコー!』『タコー!』『タコー!』『タコー!』

 

 

「うわあ、タコだ!ほら、タコタコ!!」

 

「こんな大量の数、どこから…!?」

 

「会長、凄い量作ったもんだ…」

 

見た事も無い数にオーズは興奮し、戸惑うプロトバースの横でバースは苦笑していた。

すると、駆けつけたアンクもまたその光景を見て目を見開く。そのカンドロイド達はアンクの場所をお構いなしに通過して行った。

 

「っと、フン!そう何度も同じ手は、痛って!?」

 

身軽に避けて図に乗ったのか、1体がアンクの後頭部へ直撃し、痛そうに頭を抑える。

集合していくタコカンドロイドは逆さになり一塊になって列を作っていくと、イトマキエイヤミーに向けての巨大な橋の様になっていった。

 

「うおおお、タコさんすっごぉ!!」

 

見事な出来栄えにオーズは興奮する。

すると、使用していたライドベンダーからプップッ!と音が鳴ると同時に、肩に乗っていたバッタカンドロイドから音声が入った。

 

『火野さん、ライドベンダーを使用して下さい。会長の許可は取ってあります』

 

「えぇ!?で、でも俺まだ運転が…」

 

『ぶっつけ本番です、どうぞ』

 

いきなりめちゃくちゃな事を言い出す里中。だが、イトマキエイヤミーが暴れているのを見てオーズは「やるしかないか」と呟き、セルメダルを投入して真ん中にある黒いボタンを押す。

変形したライドベンダーはバイクモードへと変わり、自動的にエンジンがかかる。オーズは跨ると、クラッチを踏んでアクセルを勢いよく蒸し、橋になっているカンドロイド達に向けて前進した。

 

「おお、ちょちょちょ!?おい火野ォ!まだ練習の最中だろ!?」

 

「ごめんなさいー!会長の許可は取ってあるみたいです!」

 

「だからって、おい!!かァ、行っちまったよ」

 

「仕方ありません、伊達さん!俺達はーー」

 

「ああそうだな、残った奴等を蹴散らしますか!」

 

タコカンドロイドに乗って走行していくオーズに溜め息を吐くバースだが、今はイトマキエイヤミーを任せて、バースはプロトバースと共にエイヤミーの群れに向けて駆け出した。

 

「映司!一気に決めろ!」

 

「わかった!」

 

「ーーーーーッ!!」

 

地上で叫ぶアンクに頷いたオーズは、形成された橋をライドベンダーで登り切り、咆哮するイトマキエイヤミーに向かってメダジャリバーを構える。持ち手の部分にある投入口にセルメダルを3枚装填し、メダレバー(持ち手の部分にあるレバー)を押し込み、剣部へと挿入されると、オースキャナーを取り出し、メダジャリバーをスキャンさせた。

 

 

 

トリプル・スキャニングチャージ!

 

 

 

「ハァア!」

 

 

音声が鳴り響くと同時にメダジャリバーは白く発光する。ライドベンダーで突撃しながらオーズはメダジャリバーを構え、横一線に大きく振りかぶった。

 

「せいやぁあああああ!!!」

 

「ーーーーッ!??」

 

ザン!!と斬撃音が響き、イトマキエイヤミーの動きが一瞬止まる。残像が残ったかの様に振った後に広がる青い一線。その上下がイトマキエイヤミーを含めた空間にズレが生じ、瞬時に戻ると同時に断末魔を上げるイトマキエイヤミーは爆発する。

爆散していく大量セルメダルの中、地上で戦っているバース達もエイヤミーの群れを殲滅させていた。

 

戦いが終わり、そのセルメダルの雨は鎮火させる様に降り注いでいったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★☆

 

 

「ーーーじゃ、よろしくぅッ」

 

事情聴取が終わり、警察の人達と別れた伊達。そこへ後藤が近寄る。

 

「終わりましたか?」

 

「おう、ヤミーの親も無事に確保されたよ。かなり反省してたみたいだからもう大丈夫だろ」

 

どうやら正気を取り戻した女性は自ら自首をしたらしく、本人自体は悪い事はしていないので刑は軽く済むとの事。事態は一件落着したところだが、後藤は軽く息を吐いた。

 

「インターン始まって早々大変でしたね」

 

「まァこればかりはどーしようもないだろ。遅れた分は取り戻さなきゃだな」

 

「当然です。帰ったら練習しますから」

 

「真面目だねぇ。今日くらいはゆっくり休んじゃいなよ」

 

「駄目です」

 

「えぇー」

 

相変わらず真面目な後藤に伊達は苦笑いをしている中、アンク、ウヴァ、耳郎、火野も警察との話を終えたのか疲れた様子を見せていた。

 

「そう言えばウヴァ、この武器どっから持ってきたんだ?」

 

「ム?あぁ、出る途中に変な女から貰った。ベイビーがどうとか言うおかしな奴だったな」

 

「発目さんか、あの人らしいな」

 

「フン、剣を持ってるのにカザリと碌に闘えなかった時点でアウトだろ」

 

「何を…!?」

 

「もォ、終わったのに歪みあうなよなー」

 

皮肉を言うアンクに突っかかろうとするウヴァ。疲れたのか火野は怠そうに止める中、耳郎がぎこちなく声を掛ける。

 

「火野…もう大丈夫…?」

 

「え…?あ、あぁ、うん。もう何ともないよ。…ごめん、迷惑かけちゃったね」

 

ヤミーを倒した事により、毒気は完全に祓われたようで安心する耳郎に謝る火野。ふと、耳郎は火野の顔を見ずに耳を赤くしながら、くるりと半回転して背中を向けた。

 

「さ、早く帰ろっか。もうこんな時間だし」

 

「う、うん。そうだね」

 

先に歩き出す耳郎。その後に続くように火野もついて行くが。

…ふと、火野の脳内にある言葉が過った。

 

 

 

『ウチ………アンタの事、す、好きだから…!!』

 

 

「……!」

 

あの時、ボーッとして記憶が曖昧だったのだが、この言葉だけは何故か覚えていた。

突然の告白。何故そうなったのかが分からず、そのまま戦闘に参加してしまった為、今も尚モヤモヤが晴れずにいた。

同時に、火野の心臓の鼓動は早く脈打っていたのだった。

 





次回!第12章 〜死穢八斎會〜

No.126 登校と話題と計画

更に向こうへ!Plus Ultra!!

アンク「なんとかトラのメダルは取り戻せたなァ。これでタトバのコンボが使える」

火野「うん、後はカザリを何とかしないと」

アンク「おい映司。まだアイツを仲間にしようと企んでやがるのか?アイツはそう簡単にはいかないぞ」

ウヴァ「同感だ。奴と一緒にいるなど、俺は嫌だぞ」

火野「でも、そう言ってウヴァも仲間になってくれただろ?だったらカザリも…」

アンク「ハッ!仲間になると?無駄な話だ」

火野「それはやってみないと分からないだろ?とにかく協力しろよな。じゃなきゃ、アイスも天体観測も無しだから」

アンク「なっ!?」

ウヴァ「ム、それは困る…!」

火野「なら、協力してくれよ?」

アンク「チッ…!そう簡単に行くと思うなよ」

火野「何か思い当たる事でも?」

アンク「大有りだ!次の話…また妙な事が起きなければ良いんだが…」
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