いつかの明日へ、【ヒーロー】は助け合いでしょ 作:しょくんだよ
コロナになってしまいました…
めっちゃしんどかったですぅ泣
高評価、感想本当にありがとうございますうう!!!!
死穢八斎會から娘の奪還、及び組の制圧。サー・ナイトアイ事務所で行われた会議は終了となり、手元にはサイドキックのバブルガールから渡された資料が残っていた。
簡単にまとめると、死穢八斎會の本拠地を炙り出し、その拠点に娘のエリが確実に居るかどうかの確認、そして侵入回路、人数の確保、その為の偵察任務が今回の依頼だ。
一通りの内容を頭に入れた伊達は後頭部を掻きながら息を吐く。
因みに今は、伊達を始め鴻上ファウンデーションの
「内容は理解したけどよ…惨い話だよな」
「カザリが絡んでるとなれば、伊達さんが呼ばれるのも当然です」
「そうだけどよ…。あ、後藤ちゃんプロの皆さんに渡した?」
伊達が尋ねると後藤は「えぇ」と頷く。そっかそっかと頷きながら、伊達は火野と耳郎へと振り返り、申し訳なさそうに言った。
「火野、耳郎ちゃん、それに後藤ちゃんもわりィな。本当は呼ぶのを渋ったんだが、実力も申し分無いくらいお前等は、市民の役に立ってる存在だからよ。今回の作戦に参加させてもらった訳なんだが……大丈夫か?」
ヒーローの活動とは言え、胸くそが悪い内容を聞かされた会議。まだ学生の身分だからまだ早かったかと心配していた伊達だが、先に後藤が口を開いた。
「俺は大丈夫です。娘さんがそんな状況下に置かれているのは黙ってられません。それに死穢八斎會の目的はこのまま見過ごせば日本どころか、何れ世界にも渡ってしまう可能性もあります。少しでも役に立てるなら、俺は全力で協力します」
強い眼差しを伊達に向け応える。それに続いて火野も応えたが、少し焦っている様子で言った。
「俺も当然行きます!早くエリちゃんを見つけないと…!早速カンドロイドでーー」
「待て。映司、その短直な性格どォにかならないのか?闇雲に探した所で勘付かれるのが堕ちだ」
「でも、こうしてる間に!」
「ハッ!そのオーバーホールって奴の〝個性〟でエリって娘はバラバラにされていようが再生してんだろ?」
焦る火野に、アンクは現実的に突き刺す様な言葉を言い放つ。流石に言葉を選ばなければと思ったのか、ウヴァ以外のその場の者はアンクを凝視し、言われた本人の火野は普段表に出す事はない怒りの表情でアンクの服を強引に掴んだ。
「お前、アンク!!」
「チッ、冷静になれ馬鹿がッ、まだそいつの『命』は消えていないだろ!」
「ッ!」
火野はハッとする。胸ぐらを掴んでいた火野の手は徐々に緩まって、次第に手を離し、火野はその場で俯向くと耳郎はアンクの発言が気に食わなかったのか一言文句を言い放った。
「アンク、だからって言っていい事と悪い事があるだろ」
「知った事か。相手がガキだろうが人質だろうが、人間として生きてるんだ。少なくとも
自分勝手な物言いにその場にいた耳郎、後藤、伊達は何も言い返せない程驚愕した表情でアンクを見遣り、伊達は呆れた様に小さく溜息を吐く。そんな中、火野はその言葉に反応して俯きながらも大きく目を見開いていた。グリードとして生まれたアンクは人間としての命は持っておらず、誰かに憑依しなければ五感さえも無い状態。アンクにとって即ち生きている意味が無いと言える。
エリちゃんがどんな状況下に置かれていようが、まだ人間として生きているのなら、どれだけ生き地獄だろうがアンクにとってはまだ羨ましいと思えるのだろう。
「……ごめんアンク。ちょっと取り乱してた…」
「フン、お前はもっと落ち着いて行動しろ。見てるこっちがヒヤヒヤすんだよ」
「うん…わかった」
「ちょっと火野、アンタが謝る必要ないーー」
言われるがままになっている火野に耳郎は詰め寄ろうとするが、突然肩に手を置かれて止められる。バッと耳郎は振り返ると、ウヴァが真剣な顔でこちらを睨んでいた。その表情に気圧され、耳郎は出そうとした言葉が喉で止まり、無言となる。
「伊達さん、俺は緑谷君達と合流します。相澤先生も来てますし…」
「ん?おぉそっか…そうだな、まァ積もる話もあるだろうし。了解、俺は他のヒーローさん方と打ち合わせあるから、お前らも気を付けて帰れよ」
「俺も一緒に行きます。伊達さんだけでは打ち合わせ不安ですので」
「サラッと言うね後藤ちゃん…」
毒舌を吐かれ、伊達は苦笑いしながらも後藤と共にその場を後にした。火野も軽く見送った後、緑谷達が居るであろう一階へと足を運ぶ。アンクも無言でその後をついて行き、耳郎は残ったウヴァに声を掛けた。
「ウヴァ、何で止めたの」
「アンクに肩入れするのは釈然としないが…、奴の言う事も間違ってはない」
「はァ?だからって…今回の保護対象は子供だし、あんな言い方は許せないだろ」
理解出来ない耳郎はウヴァに当たる様に言い放つが、ウヴァは「ム…」と顔を曇らせながら口を開いた。
「…一応言っておくが、俺達グリードは人間と違って感覚が鈍っている。見る景色も聴くことも、味もだ。俺もアンクも映司に憑依しているのはその感覚を満たそうとしているからだ。アンクは恐らく、エリと言う娘が人間の感覚を持っているからまだマシだと思ってるんじゃないのか?」
「………」
グリードは五感が鈍いのは、以前火野から聞いた事ある耳郎は、そのウヴァの言葉に何とも言えない表情で遠ざかる火野とアンクの背を見つめていたのだった。
☆★☆★☆★☆★
チーン…とエレベーターの音が鳴り、扉が開かれる。一階へと降りた火野、耳郎、アンクにウヴァは、エレベーターから足を運び、フロアへと歩き出す。すると、その一階にあるテーブルに、先に降りた緑谷達雄英生が、深刻な表情を空気に澱ませていた。
「あ…火野、耳郎」
「アンクちゃんとウヴァちゃんも出てるのね」
切島、蛙吹が声を掛けて来るが、火野と耳郎は俯いたままの緑谷と通形の顔色を見て掛ける言葉を一瞬失っていた。
「緑谷君、通形先輩…あの…何かあったんですか?」
皆の気の沈み具合を見るからに、あの会議の後の件もあるだろうが、それよりも緑谷と通形はあの場でエリの事を強く救出しようと決意していた。と同時に落胆していた時の事を思い出した火野は思わず声を掛ける。麗日、蛙吹、切島は既に聞いたのかお互いに顔を見合わせバツが悪そうに顔を曇らせていた。
すると、緑谷は「火野君、耳郎さん」と口を開いた。
「アンク君もウヴァ君も、少し話を聞いてくれるかな……」
「もちろん」
「…うん」
その問いに断る理由も無く、火野と耳郎は頷いた。
緑谷の話してくれた内容は、火野と耳郎にとってはかなり衝撃的だった。パトロールの最中に偶然にもエリと遭遇したらしく、それに加えてオーバーホールとも接触していた。緑谷は震えるエリを救けようとしたが、オーバーホールの放つ殺気に通形は冷静にその場をやり過ごそうとし、それによってエリは自ら戻ってしまったの事だった。
「………」
「……」
火野はギュッと膝の上で手を握り締め沈黙し、耳郎もなんて声を掛けて良いか分からず、開いた口が塞がらずに黙っていた。悔しいと思うだろうが、先程会議で言っていた様に、1番悔しいのは緑谷と通形だ。普段の明るさなんてモノは微塵もない。来る途中まで笑顔を絶やさずにいた通形も同じ事で、同期の天喰もどう声を掛けたら良いのか戸惑っていた。
すると、火野達が降りたエレベーターからチーンと到着する音が聞こえる。
「…通夜でもしてんのか」
「ケロ、先生!」
「あ、学外ではイレイザーヘッドで通せ」
降りてきた相澤が、どんよりと曇っていた空気の生徒達へと近寄り、「いやァしかし…」と口を開いた。
「今日は君たちのインターン中止を提言する予定だったんだがなァ……」
「「「!!」」」
「ええ!?今更何で!!」
「連合が関わってくる可能性があると聞かされたろ。話は変わってくる。ただなァ……緑谷。おまえはまだ俺の信頼を取り戻せていないんだよ。ケンカしたしな」
相澤の中止、その一言で1年の6人は固まる中、緑谷は『嫌だ』と言わんばかりな形相で相澤を見つめている中、アンクが相澤に問いかけた。
「〝だった〟って事は、同行しても良いって事か、相澤?」
「あぁ…そうだ」
相澤は首を掻きながら応え、緑谷の前へ「よいしょっと」と腰を下ろすと、固まっている緑谷に視線を合わせて声を掛けた。
「残念な事にここで止めたらお前はまた飛び出してしまうと、俺は確信してしまった」
信頼。その言葉に3年生達はピンと来ておらず、火野も拉致された身の上詳しい事情は把握していない。だが、切島、耳郎、緑谷はその信頼を壊してしまった。麗日も蛙吹も止めてなかったメンバーの一員なので、同罪に変わりない。だからこそ、今相澤が言いたいのは行動でその信頼を取り戻して欲しい。そう言いたいのだろう。
「俺が見ておく。するなら正規の活躍をしよう、緑谷。わかったか、問題児」
トン、と相澤はぶっきらぼうな結び方をした緑谷のネクタイに拳を乗せる。今にも泣きそうな顔を歪ませる緑谷だが、その内心は強く覚悟を決めた瞳をしていた。
「お前もだぞ、ウヴァ」
「ム、俺か?」
「一度は連合に肩入れした身だろ。改心するなら結果で行動を示せ。いいな?」
「フン……わかった」
〝個性〟と言えど独断で行動出来るグリードのウヴァに相澤はジト目でウヴァを見つめる。生意気な態度をとるウヴァだがそれを承諾し、側に居た火野は少し嬉しい気持ちとなっていた。
「……ミリオ。顔を上げてくれ」
「ねえ、私知ってるの。ねえ通形。後悔して落ち込んでてもね、仕方ないんだよ!知ってた!?」
「……ああ!」
天喰は優しく声を掛け、波動はいつもながらの無邪気な励ましをする。同じクラスメイトの2人に背中を押され、指で鼻をこすりながら通形は強く頷いた。
「気休めを言う。掴み損ねたその手は、エリちゃんにとって、必ずしも絶望だったとは限らない。前向いていこう」
「…ハイっ!!」
「緑谷君」
相澤の言葉に感化されたのか、火野は椅子から立ち上がる。その場に居る者達の視線が集まる中、火野は両手を目一杯横へと広げた。
「自分の手が届く限り、エリちゃんを必ず救けよう。俺は、こんくらいしか手が届かないけど」
「火野君……」
「…ハハッ、そうだね!火野君の言う通りだね!でも、俺はもっと届くぜ!こんっっくらいっ!」
通形は立ち上がると、両手、片足を左右に力の限り広げる。片足だけで立っている為、徐々に足がプルプルと震え出す中、波動はそのポーズを見て口を開いた。
「知ってるそのポーズ!ヨガでする立ち方だよね!戦士のポーズ3!」
「ミリオ……足は掴めないよ…」
「俺は掴めるね!巻き取るように!」
「多分無理があると思う…」
通形の言動に、天喰はツッコミを入れる。重々しかった空気は徐々に解れ、次第に静かな笑みへと変わっていく。すると、切島がバンッ!と机を叩いて椅子から立ち上がる。
「俺…イレイザーヘッドに一生ついていきます!」
「一生はやめてくれ」
「すいァっせん!!」
「切島君声デカイ…!」
意気込みを入れる1年生。だが相澤はそのやる気を落とす様に言った。
「……とは言ってもだ。プロと同等か、それ以上の実力を持つビッグ3はともかく、お前たちの役割は薄いと思う。火野を除いてな」
「え…?」
自分を除く?そう言いたげな表情を浮かべる火野に相澤は続けてその意図を告げる。
「今回はアンクやウヴァと同じグリードのカザリも介入しているなら、少なからずヤミーも出てくるだろう。お前の〝個性〟は打って付けだ。だが、だからと言って勘違いはするな。実力はあろうと、その他の経験は緑谷達と同じだ。火野、アンク、ウヴァ、そこんとこ肝に命じて置くように」
「…はいっ!!」
「フン、足手まといがいなければ問題ない」
「あ?お前が言うことか?」
「ム!?」
火野は強く頷き、ウヴァも自身気に了承するが、解せなかったアンクはボソッと呟く。ウヴァが反応する中、相澤は切島達の方へと見遣り、口を開いた。
「蛙吹、耳郎、麗日、切島。お前たちは自分の意思でここにいるわけでもない。どうしたい」
「先…っ、イレイザーヘッド!あんな話聞かされてもう、やめときましょとはいきません…!!」
「
「イレイザーヘッド、ウチも同じです!意地でも協力しますよ…!」
「会議に参加させている以上、ヒーローたちは一年生の実力を認めていると…思う。現に俺なんかよりも、1年の方がよっぽど輝かしい」
「天喰君、隙あらばだねえ」
「俺らの力が少しでもその子の為ンなるなら、やるぜ!イレイザーヘッド!」
1年生達の覚悟を見定めた相澤はゆっくりと頷き喋る。
「…意思確認をしたかった。分かってるならいい。今回はあくまでエリちゃんという子の保護が目的。それ以上は踏み込まない。一番の懸念である
「「「「「了解です!」」」」」
エリの救出を目的とし、各々の気持ちは一致団結となる。
しかし、アンクだけは相澤の言葉に反した様子で、無言で腕組みをしていたのだった。
☆★☆★☆★☆
エリちゃんの居場所が特定できるまでの間、火野達は待機となった。
またインターンに関しては一切の口外を禁止された。
今日のヒーロー基礎学は切り立った絶壁、救助ヘリなどが使えない場所の救助を想定した登攀訓練。セメントスが作ったコンクリの壁を命綱一本で登って行くが、インターン生徒達はエリの救助を目標にと言わんばかりに徐々に速度を上げて登って行った。
「なんか、インターン組の動き…いつもよりキレッキレじゃねーか?」
「外で何か掴みやがったんだ…! コラ、オイ!何掴んだんだ言え!!」
「わりー言えねー!」
4人1組で順番に登っているのだが、現在は緑谷、麗日、蛙吹、切島と、全員インターン組を見ていたクラスメイト達に声を掛けられる。が、一切の口出しを禁じられた為その訳は言えぬまま、授業の時間が過ぎて行く。来るべき日が来るその日まで、各々は少しでも体力を付けようと必死に頑張っていた。
「耳郎」
「ハイっ」
ふと、相澤から呼ばれた耳郎は先生の元へと駆け寄る。
「お前宛に荷物が届いている。寮に持って行ったから確認しとけ」
「?…わかりました」
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「あー疲れた…!流石に腹減ったわ」
「火野やっぱスゲーな、あんな絶壁を最も簡単に登りやがる」
「え、そうかな…。ありがとう」
午前の授業が終わり、授業の感想をわいわいと喋りながらA組は食堂へと向かっていた。火野は定食をカウンターから受け取り席へ着くと、隣に緑谷、飯田、轟、峰田と面々が席へと座って各々が頼んだ食事を食べ始めている。だが、ずっと橋が止まって俯いている緑谷に、火野は食べるのを一旦止めて声を掛けた。
「緑谷君?」
「へっ!?あ、ウうん!!」
「食わねえのか?」
「食うよ!食う、クー!」
轟も尋ねると、慌てた様子で急いで箸を手に取りカツ丼を頬張り始める。やはりエリの事が気掛かりなのだろう。心配そうな表情を浮かべる火野だが、飯田達もそれは同じだった。
「……大丈夫か?」
「インターン入ってから浮かねえ顔が続いてる」
「そう……かな!?」
どう見ても大丈夫とは言えない表情のまま反応する緑谷。現に口に食べ物を含ませながら表情は固まったままだ。見兼ねた飯田はビシッと手を下げて告げた。
「『本当にどうしようもなくなったら言ってくれ、友達だろ』。いつかの愚かな俺に君がかけてくれた言葉さ!」
その言葉を聞いた瞬間、緑谷の身体が一瞬ピクリと反応する。
「職場体験前の………」
「うっ……うう……」
「緑谷君!?」
「え!?オイ!?わー!?」
まさかの泣き始めてしまい、火野は思わず立ち上がり両手を差し伸ばそうとオロオロしてしまう。飯田も余計な事を言ってしまったかと焦っている中、緑谷は啜り泣きしながら返事をした。
「ごめん…!!大丈夫、なんでもない……。ヒーローは…泣かない……!」
「いや……ヒーローも笑えない時はあるし、泣く時ゃ泣くだろ…多分」
飯田の思いやりに溜め込んでいた辛い気持ちが爆発したのだろう。だが緑谷は涙腺に涙を溜めながらも拭い、カツ丼を頬張る。その表情の奥底には決意を改めた様なのを感じ取れたのか、火野は安堵しながら席に座り、自身の食べていたハンバーグ定食のメインであるハンバーグを緑谷に差し出した。
「緑谷君、ハンバーグ食べる?美味しいよコレ」
「ソバ…半玉やろうか?」
「ビーフシチューもやろう」
「ありがとう…」
轟と飯田も続いて自分の食事を分けようとする。かなりの量になってしまっているが、その優しさを断れまいと緑谷は全部貰おうとする。蕎麦だけでは味気ないのか、轟は続けて「ネギいるか?ワサビいるか?」と緑谷にちまちまと分けていたのだった。
No.129 GO!!
更に向こうへ!Plus Ultra!!