いつかの明日へ、【ヒーロー】は助け合いでしょ   作:しょくんだよ

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No.129 GO!!

 

深夜、火野の自室にて。

ブーッ、ブーッ、とスマホのバイブ音が鳴ってそれに反応した火野はむくりと起き上がる。半分寝惚けながらもスマホの画面を開くと。その目は一気に見開いた。

 

「……!」

 

火野は慌てて起き上がり、部屋から出ようとすると、ロフトベッドで寝ていたアンクが物音で目が覚める。

 

「……来たのか?」

 

「来たッ」

 

「そうか、いよいよだなァ」

 

言うまでもなく、理解したアンクに火野は「あぁ」と頷いて部屋を出て行く。アンクはそれを軽く見送ると、身体の向きを変えて再び寝入りした。

 

間接照明以外の照明の消えた寮内の中を、足音を忍ばせて火野はロビーへと目指していた。ヒタヒタとスリッパの音だけが聞こえる中、ロビーへと到着すると、そこには会議に参加していた緑谷、切島、麗日、蛙吹、耳郎の5人が集結していた。

 

「皆んな、揃ってるって事は…」

 

「ええ、火野ちゃん」

 

「うん、メール来た」

 

「いよいよだな…!」

 

「明日はナイトアイ事務所で早朝から事前説明…そして、決行日…!」

 

「火野君、緑谷君、切島君、梅雨ちゃん、響香ちゃん、……頑張ろうねッ」

 

「「「「うんっ!」」」」

 

「っしゃァ!!!気合い入れて行こうぜ!!エリちゃんを必ず救けるぞ!」

 

「ちょっ!?切島今夜中…!声のトーン下げて…!」

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★☆

 

 

翌日。ナイトアイ事務所でブリーフィングが行われたその日、ナイトアイの一言でその場に居たプロヒーロー達が一斉に目を見開き驚愕した。

 

「「「「本拠地に居るぅ!!?」」」」

 

「本拠地ってことは……」

 

「八斎會のトップ、組長の屋敷…」

 

「ケッ!なんだよ俺たちの調査は無駄だったわけか!」

 

「いえ、新たな情報も得られました」

 

「どうやって確信に至った!」

 

それぞれの持ち場で調査を行ったヒーロー達は直ぐに見つかったとナイトアイに言われて無駄な労働を割いてしまったのかと激昂する。問い詰められたナイトアイは机の下から女の子が好きそうな玩具を取り出し、机に置いた。

 

「八斎會の構成員が先日、近くのデパートで女児向けの玩具を購入していました」

 

「はあ?」

 

「何じゃそらァ…!」

 

「そういう趣味の人かもしれへんやろ!!世界は広いんやでナイトアイ!ちゅーか何でおまえも買うてんねん!?」

 

「いえ…そういう趣味を持つ人間ならば、確実に言わない()()を吐いていた」

 

彼の話はこうだ。

前日、ナイトアイは死穢八斎會の構成員がデパートに居ると目撃情報を得て、調査に潜り込んだらしく、構成員が女の子の玩具を買おうとしていた。だが、オタクとかならば直ぐに名前が出てくるのに構成員は()()()()()()()()()()()に商品を買おうとしていた所、〝個性〟を使って『予知』を発動させ、未来の映像にエリが映し出されていたのだ。

もっとも、悟られない為に自身も女子向けの玩具を買って、構成員に近寄り触れたからである。

 

 

サー・ナイトアイ

 

個性『予知』

 

対象人物の一部に触れ目線を合わせる事で、1時間の間その人物の取りうる行動を先に〝見る〟事ができる! 

 

 

 

「予知使うのかよ!」

 

「確信を得た時、ダメ押しで使うと先日も言ったはず」

 

「なんにせー、とにかく。コレでようやっと決まりっちゅうわけやな」

 

息巻くファットガムに続いて、センチピーダーとバブルガールは状況を次いで伝えた。

 

「奴が家にいる時間帯は張り込みによりバッチリでございます」

 

「警察との…連絡も、バッチリです!」

 

「令状も出ている。後は」

 

「はい。エリちゃんを救出し、八斎會の野暮を阻止します!!」

 

確信、証拠、準備も整い、ナイトアイの事務所はやる気に満ち溢れた。後方で聞いていた通形も「緑谷君、やるぞ!やるんだ!!」と両腕を激しく振るわせて意気込みを入れている。

エリ奪還作戦が今、決行され各々は本拠地に向かう為の準備を行ったのだった。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★☆

 

 

死穢八斎會本拠地、応接間にて。

 

 

「若、警察とヒーロー達に動きが見られやした。大勢で押し寄せているとの事です」

 

「……そうか、準備しろ」

 

「わかりやした」

 

「ミミック、手筈通りに進めておけ」

 

「へい」

 

「若、どちらへ?」

 

クロノスタシスとミミックに命令したオーバーホールは応接間から退出しようとする。クロノシスタスは尋ねると「野暮用だ」と言い残し、その場を後にした。

 

部屋から出たオーバーホールは通路の壁に寄りかかっているカザリを見つける。

 

「カザリ」

 

「気分はどう?」

 

「最悪の気分だ…。さっさと終わらせて薬を作りたい衝動に駆られている……。不愉快極まりないな、お前の〝個性〟は」

 

「まぁそう言わずにさ。おかけで強力なヤミーが産まれたんだから、好きに使って構わないよ。何なら君の欲望の手助けをしてくれる存在なんだ。逆に感謝してほしいね」

 

カザリはそう言って、奥の通路で突っ立っている白ヤミーを見遣る。指示を待っているのか、白ヤミーはじっとオーバーホールを見つめていた。

 

「………まぁいい。カザリ、お前の〝個性〟で他の駒共にも使え」

 

「へェ、良いのかい?君はまだ強靭な精神だけど、他の人間は理性を失うかもしれないよ。欲望のまま暴れる存在になると思うけど」

 

「だからこそ、使い捨ての()だ。下っ端共はどうしようと構わない。()()の足止めさえしてくれればそれで良い。…もっとも、ここにいる連中は社会の天然記念物だろうとヤクザだ。忠義はそれなりに持っている」

 

残酷な目付きで言うオーバーホールにカザリは「ふふ、わかったよ」と不吉な笑みを浮かべた。そのままカザリの横を通り過ぎるオーバーホールだが、言い忘れたのか真横で足を止め、口を開いた。

 

「大勢のクズ共がもう時期ここに来る。お前も協力してもらう、カザリ」

 

「知ってるさ。微かにだけど、僕の知人がその中に混じって来ている。()()()()の相手なら協力してあげても良いよ」

 

 

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★☆★☆

 

 

AM8:00

警察署前にて。

 

「ナイトアイが構成員のその後を〝見た〟結果、八斎會邸宅には届出のない入り組んだ地下施設が存在し、その中の一室に今回の目的である女児がかくまわれている事が確定した。構成員の男は地下への入り口から女児の部屋まで一切寄り道をせず、その為地下全体を把握することは適わなかったが、男の歩く道はそのまま目的への最短距離(ルート)であり、八斎會の広い敷地を捜索するにあたって最も有益な情報となる。しかし目指すにしても〝個性〟を駆使されれば捜索は難航する。そこで、わかる範囲だが八斎會の登録個性をリストアップしておいた。頭に入れといてくれ!」

 

刑事部長の連絡事項の後、リストアップされた資料をプロヒーローに配ってヒーロー達は目を通している。そんな中、ヒーローの1人が「こういうの直ぐに出せるって良いよな」と感心していた。

 

「隠蔽の時間を与えぬ為にも、全構成員の確認:補足等、可能な限り迅速に行いたい!」

 

内容を一括りする一方、プロヒーロー達の後方でコスチュームの調整及び装着する火野達は緊張していた。作戦に参加しているとは言えど、インターン生はインターン先のプロヒーローのサポート。やる事は限られるが、エリを救い出す為なら生徒達にとって願ってもない仕事だ。

 

「決まったら早いスね!」

 

「君、朝から元気だな…」

 

コスチュームを取り付けながらも迅速な動きに感心する切島。その元気な声を聞いてネガティブな感想を言う天喰。ふと、隣で身震いをする麗日は口を開いた。

 

「緊張してきた」

 

「探偵業のようなことから警察との協力…知らないことだらけだわ」

 

「ね!不思議だね」

 

大規模で動いているヒーローや警察達の行動に蛙吹は驚いていると慣れているのか顔色1つ変えない波動が口を挟む。すると、そんな雄英生徒達を見兼ねたリューキュウが声を掛けてきた。

 

「こういうのって学校じゃ深く教えてくれなくて、苦労したよ」

 

学校は一般知識やヒーローの育成、人との協力活動などは勿論教授してもらえるが、事細かくは習えない。要は実際に社会に出て学べという事なのだろう。そんなリューキュウの発言に「わかる」とプロヒーローが1人共感して頷いていた。

 

「プロ、皆落ち着いてんな!慣れか!」

 

「プロだからでしょ…ヤバ、ウチも緊張してきた………緑谷、どうかしたの?」

 

「グラントリノがいないよ……どうしたんだろ」

 

資料に目を通しているヒーロー達を見て切島は叫ぶと、耳郎もこの中でやっていけるのか不安になっている。ふと、キョロキョロと辺りを見回す緑谷に、ナイトアイ及び刑事部長がそれぞれ口を開いた。

 

「あの人は来れなくなったそうだ」

 

「えっ!?」

 

「塚内と泉が行ってる連合の件に大きな動きがあったみたいでな。悔しそうだったよ。だがまァ、こちらも人手は充分、支障は無い」

 

「ッ、泉さんも頑張ってるんだ…」

 

刑事部長の言葉が耳に入った火野は、親戚である泉の名が出て少し微笑みを浮かべる。彼も世の中の為に頑張っていると思うと俄然火野もやる気が出ていた。

一方で、グラントリノが不在と聞き、少し落ち込んだ表情を浮かべる緑谷に、切島が元気付けようと声を掛けた。

 

「八斎會と(ヴィラン)連合、一気に捕まったりしてな!」

 

「ッ、それだ!」

 

別件で動いているグラントリノが、もしかすれば(ヴィラン)連合を捕まえてくれるかもしれない。希望が差し込み、緑谷は今やるべき事に集中し、気合いを入れると相澤が「おい」と緑谷を呼ぶ。

 

「あいっイレイザーヘッド!?」

 

「俺はナイトアイ事務所と動く。意味分かるな?」

 

「はい…!」

 

『俺が見ておく。するなら正規の活躍をしよう』。相澤から言われた言葉を思い出し、緑谷は力強く返事をする。

 

「火野、耳郎ちゃん、アンコにウギャ」

 

「「……」」

 

伊達に呼ばれた火野と耳郎、そしてアンクとウヴァは伊達と後藤の側へと駆け寄る。だがアンクとウヴァはいつまでも間違える呼び名にツッコむのは諦めたのだろうがその眼はギロリと伊達を睨み付けていた。

ふと、後藤の()()()()()()を見た火野は少し嬉し気に声を掛け尋ねた。

 

「後藤さん、それ後藤さんのコスチューム!?」

 

「まァ、そんなとこだ」

 

黒の防弾チョッキらしきベストに、身軽に動けそうな服装を着込んだ後藤。右手首にはセルメダルを1枚収納出来るタイプのバンドが巻かれており、バースにいつでも変身出来る様なコスチュームだ。

だが、嬉しそうにするのも束の間、伊達は火野達に声を掛けた。

 

「俺等はナイトアイと一緒に中へと潜り込む。八斎會の周りに用心棒でヤミーを連れているかもしれねェ。だが、外でヤミーやグリードと出会した際はその場で応戦する事になる。警察と他のプロ達じゃ、ヤミーとの戦い方は慣れてないからな。危険だが、お前達が今奴等の倒し方を熟知してる。良いな?」

 

「「「はいっ!」」」

 

「だが、くれぐれも怪我はするなよ?ヤバくなったら直ぐ逃げろ」

 

「っす…!」

 

バースやオーズと変身して戦う事は出来ないが、ヤミーやグリードに関しては鴻上はファウンデーションで知識を叩き込まれた耳郎は、腰の両サイドにあるポーチに手を当てながら頷いた。

 

「おい」

 

ふと、火野の後ろでアンクは若干小声でウヴァに声を掛ける。「何だ?」と返事をするウヴァにアンクは言った。

 

「離れる事は無いと思うが、万が一映司と2人になった時はあの馬鹿(映司)を見とけ」

 

「は?見とけだと?」

 

()()()()()に関しては死に急ぐんだよ、アイツは」

 

小さな女の子の救出。大勢のヒーローに警察も作戦に加わるこの現場。アンクは嫌な予感がするのか、わざわざウヴァにそう告げていた。ウヴァは数秒黙り込むが、死なれては困ると思ったのか「わかった」と了承した。

 

そうしている間に、刑事部長が全員に向かって声を張り上げ指示を出した。

 

「ヒーロー、多少手荒になっても仕方ない。相手は仮にも今日まで生き延びた極道者。くれぐれも気を緩めずに各員の仕事を全うして欲しい!」

 

一括りにし、刑事部長は敬礼をした。それに続いて警察達が全員敬礼をする。今回の作戦に全力で取り組む敬意を表しているのだろう。

 

「突入開始時刻は『○八三○』とする!総員、出動!!」

 

告げられた使命。

今、警察とヒーロー達が協力し、戦いに向けての火蓋が落とされたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

本拠地、死穢八斎會事務所。

午前8時30分、決行の時間。

 

本拠地の門の前にぞろぞろと武装した警察を先頭にプロヒーロー達も後方で集まり待機していた。そんな中、伊達が壁の前へとライドベンダーを自販機モードに設置しているのを見て耳郎が尋ねる。

 

「伊達さん?何でライドベンダー持ってきてるんです?」

 

「カンドロイドが役に立つかもしんねーからな。念の為ってヤツ」

 

「バイクが自販機に…!?凄い…」

 

いざと言う時にと応える伊達。バイクモードから変形した場面を見ていた緑谷はその優れたサポートアイテムに驚愕し見惚れていた。

 

「アンク、ウヴァ。俺の中に入らないのか?」

 

「ハッ、お前から目を離さない為だ」

 

「え、どういうこと?」

 

「どうでも良いだろ。エリって子救けるんだろ?なら余計な考えはするな」

 

ヤミーやグリードと対峙する以外は、本来アンクとウヴァは火野の中に入って待機状態とする。だが今回はずっと外に出ている為火野は尋ねるが、アンクの言葉に火野は首を傾げながらウヴァを見遣る。ウヴァも無言だが、腕組みをしてこちらを見ていた。

 

「では、令状読み上げたらダーーーッ!!と!行くんで!速やかによろしくお願いします」

 

「ケッ!しつこいな、信用されてねえのか」

 

「そう意味やないやろ、意地悪やな」

 

「フン」とロックロックは皮肉そうに鼻を鳴らし、刑事部長がインターホンに指を向け押そうとしている間、ロックロックは続けて口を開いた。

 

「そもそもよぉ、ヤクザ者なんてコソコソ生きる日陰者だ。ヒーローや警察見て、案外縮こまったりしてな」

 

皮肉にそう言い、気を抜いていた直後だった。

 

 

 

DOOON!!!

 

 

「何なんですかァ」

 

「「「「!!」」」」

 

突然、門が突き破る様に破壊され、衝撃、轟音と共に門の前に立っていた警官3人が吹き飛ばされる。門と同じか、それ以上の筋骨隆々とした体格の男が拳1つで打ち破って出て来たのだ。

一瞬の出来事で、警察側もロックロックも何が起きたのか分からず驚愕していたが、直ぐにイレイザーヘッドは「助けます」と捕縛布を使い、空中へと投げ出された警察2人を捕まえて引き寄せた。外から見えないゴーグルを装着し、戦闘態勢に入ると同時に緑谷もまた、その場から跳躍して警察の1人を抱き抱え、地面へと着地する。

 

「大丈夫ですか!?」

 

「大丈…夫だ…ありがとう…」

 

安否を確認し、負傷した警察は他の警察に連れられ、安全な場所へと移動する。バッと振り返り、巨漢のペストマスクへ見遣ると次いでと言わんばかりに振り上げた拳で威嚇していた。

 

「オイオイオイ待て待て!!!勘付かれたのかよ!!」

 

「いいから皆んなで取り押さえろ!!」

 

こちらの行動が読まれていたとしか言いようのない不意の仕掛けにロックロックは怖気付く。が、このまま暴れられては被害が拡大する一方だ。火野もオーズドライバーを装着し、「アンクッ!!」とメダルを要求する。

 

「少し、元気が入ったぞーー……もぉーー朝から大人数でェ…」

 

「離れて!!」

 

「何の用ですかァ!!!」

 

〝個性〟のせいか、巨漢の男は右拳がムクムクと膨れ上がる。リューキュウは急いで警察達に距離を取らせると巨漢の男はその右拳を振り翳した。ドッ!!と拳が()()に当たる。

初めて見る者は驚愕したであろう。リューキュウは巨大な()()()()となっており、その拳を片手で受け止めていたのだ。

 

「とりあえず、ここに人員割くのは違うでしょう!彼はリューキュウ事務所が対処します!フン!」

 

「!!?」

 

「皆さんは今のうちに!」

 

ドラゴンとなったリューキュウはそのまま巨漢男の手を引っ張り、態勢を崩したその身体を押し潰す様に地面へと叩きつけ取り押さえた。

 

「リューキュウのサポートっ」

 

「はい!」

 

直ぐに援護に周るよう、波動が麗日と蛙吹に指示を出す。リューキュウのサイドキックと同時に4人はリューキュウの元へと駆け寄る中、戸惑って立ち往生していた警察及びヒーロー達が一斉に動き出した。

 

「えぇい、もう入って行け行け!!」

 

「出だし挫いたぜこりゃ…!後藤ちゃん!火野!」

 

ファットガムが合図を出し、総員は崩壊した玄関口へと突入を開始した。その人混みの中、伊達は後藤と火野に今の内に変身しろと言わんばかりに名を呼び、「「はい!」」と2人は頷く。

巨漢男が暴れたせいで渡しそびれたアンクは「映司!」と叫び、タトバのコアメダルを投げる。キャッチした火野は3枚を装填し、伊達と後藤もセルメダルをバースドライバーに装填、各々が変身シークエンスを始めた。

 

 

「「「変身っ!」」」

 

 

 

 

タカ!

 

トラ!

 

バッタ!

 

 

 

 

 

 《 カポーン… 》

 《 カポーン… 》

 

 

音声が鳴り響き、伊達と後藤は仮面ライダーバースが2人、そして火野は仮面ライダーオーズ:タトバコンボと姿を変える。

 

「っし、行くぞ!」

 

「「はい!」」

 

出鼻を挫いてしまったが、3人は遅れまいと警察達の後に続けて中へと畳み掛ける。その中、アンクとウヴァは少し先にヒーロー達と駆け出していた際、ウヴァは行動する人間等を見てボヤいた。

 

「人間ってのはつくづく面倒な生き物だ!」

 

「同感だ、だがまァ退屈はしない」

 

こういう状況だからなのか、アンクは本音を漏らし、ウヴァはそれを聞いて「フン!」と鼻を鳴らしていた。が、ウヴァも悪くはないと思ったのか不敵な笑みを浮かべる。

 

先頭では、敷地内に居る八斎會のヤクザ達が待ち構えており、刑事部長が走りながらも令状を読み上げていた。

 

「ヒーローと警察だ!違法薬物製造・販売の容疑で捜索令状が出てる!」

 

「捜索令状!?」

 

「知らんわっ!!」

 

捜索と言われても当然シラを切るヤクザの1人が右手を突き出すと、辺りに生えていた茂みが揺らぎ、針のように葉っぱが警察達に向けて飛ばされる。防弾盾を構える警察達だが、鋭利なのか容易く防弾盾に突き刺さって身動きが取れずにいた。だがプロヒーローの1人がそれを交わし、草を操る男の懐に入り込んで取り押さえる。

 

「ギャ!?」

 

「大人しくしといて!」

 

「おォい、何じゃてめェら!」

 

「勝手に上がり込んでんじゃねえぞワレぇ!!」

 

敷地内のヤクザ達がぞろぞろと出て、瞬く間に警察とヒーロー、そしてヤクザ達との混戦状態となってしまった。人混みと乱戦が繰り広げる中、オーズは周囲の状況を探ろうとその眼は紫色へと変化する。

 

「ヤミーの気配…!本拠地の中だ!」

 

「火野ッ!その眼…、あんま使うなってアンクが…!」

 

「わかってる!だけど、エリちゃんを救ける為なら…!!」

 

あれだけ言われたのにも関わらず、性懲りも無く発動させるオーズ。後ろを走っていた耳郎が心配する表情をするが、オーズは作戦の事で集中しているせいか聞く耳を持たなかった。不安そうに見つめてる耳郎だが、ヤミーが周囲にいないと分かった以上、ナイトアイ達と共に本拠地内へと進入する事が伊達からの指示。使命を全うするべく、耳郎はオーズの背中を追う様に駆け出していた。

状況が一変しようが、作戦内容は変わらない。それを己に叩き込む様に先頭で走るファットガムが叫んだ。

 

「まっすぐ最短で、目的まで!!」

 

 

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★☆

 

 

八斎會地下にて。

事態が大事になり、オーバーホールはクロノスタシスを連れて、エリの居る部屋へと移動していた。

 

「大人数が同じ方向に全速力で走ってる。つまり行きたい場所が決まってる。多分ここの事もバレてやすね、見つかったらおじゃんだ」

 

「いつかこういう事態になるとは想定していたが…。早かったな…今見つかるわけにはいかない。『俺はここにいない』『あいつらが勝手に暴れた』そういう事にしよう。その為に育てた駒だ」

 

あいつ等、とはオーバーホールが選んだ死穢八斎會の8人の実働部隊『鉄砲玉八斎衆』。治崎は側に置く人間を選定すると、マスクを着用させた。

側に置いとくというのは、汚い仕事をさせるということ。汚れた人間と同じ空気を吸いたくないから着用させる。

それは〝信頼〟ではなく、〝駒〟の証。

 

「……お前もそろそろ出向いたらどうだ?」

 

オーバーホールは振り返り、クロノスタシスよりも後方へと見遣る。そこには白ヤミーが無言で着いて来ていたが、何もしないままと言うのは不便と感じ取れてしまったのだろう。彼は言うと、白ヤミーは身体をビクビクと震わせながら喋った。

 

「コトワリ……コワス…!ソノ元凶……上ニイル!」

 

「あァそうだ、行って来い。仮にもお前は(オレ)()だそうだな?地上には()()()も大勢いる。そいつ等と共にクズを掃除しろ」

 

「ウウ…!!ウオオオオ!!」

 

オーバーホールの命令に、白ヤミーは唸り声を上げると、ノロノロと歩いていた動きとは比べものにならない速度で走り出し、その場から姿を消した。

 

「……大丈夫なんでしょうかね」

 

「知らん。暴れるなら暴れてくれた方がこっちも都合が良い。行くぞ」

 

「へい」とクロノスタシスは振り返り、オーバーホールと共にエリの元へと足を運んだ。

 

 

一方で、白ヤミーは地上に向けて全力で走っていた。すると、全身に巻かれていた包帯が取れ始める。蛹から成虫へと進化するように、その姿はガラリと変わった。

 

「ヌオオオオ!!!…さァ、理の破壊の元凶を、ツブす!!」

 

全身黒い毛で覆われ、背中にはどんな攻撃を受け付けない様な外骨格で覆われた灰色の毛、哺乳類の上半身とは違って下半身はタコの触手で覆われた脚。

2つの属性を兼ね備えた『ラーテルタコヤミー』は咆哮を上げ、警察とヒーロー達がいる地上へと全速力で向かったのだった。

 





No.130 耳郎響香:ライジング

更に向こうへ!Plus Ultra!!
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