いつかの明日へ、【ヒーロー】は助け合いでしょ   作:しょくんだよ

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No.130 耳郎響香:ライジング

 

「おぉ何様じゃ、待て待てなんじゃてめェら!?」

 

「なに土足で上がり込んでんじゃア!!」

 

「捜査だって言ってるでしょ!!」

 

「暴れないで下さい!!」

 

「道を空けて!!後先考えずに暴れると後悔するよ!!」

 

「組総出で時間稼ぎかよ…!何て破滅的な!」

 

死穢八斎會敷地内はほぼ混戦状態。組総出で押し寄せて来るのは想定外だったので、殆どのヒーローと警察は構成員達を取り押さえる方へと周っていく。

 

「おらァ!何もない言うとるやろがい!!」

 

「何もなかったら令状出さないでしょーが!ああもぉ!?」

 

「こんな数想定してなかった…!読まれてたのか!?」

 

「ちょッ!人多過ぎ…!?」

 

人混みの波に押し寄せられそうになるバース(伊達)とバース(後藤)、そして耳郎もオーズの後を追っていたが、その人混みの壁に遮られてしまい、ペースが落ちていった。オーズは振り返り、「伊達さん!皆んな!」と叫ぶが、バースは構成員の頭を取り押さえながら前方に居るオーズに叫び返した。

 

「火野ォ!アンコ達と先行っててくれ!俺達も直ぐ後を追うから…よ!」

 

向かい来る構成員を退けながら叫ぶバースに、前方からオーズが「はいっ!!」と強く頷く声が聞こえる。

一方で、オーズはそのまま走り続けると、アンクとウヴァの背後姿が見えたので2人の名を呼んだ。

 

「アンク、ウヴァ!」

 

「遅いぞ!」

 

「ごめん!」

 

「ヤミーもグリードも()にいるぞ、映司!今度こそ奴からコアメダルを奪い取るからな!」

 

「あぁ、エリちゃんもな!」

 

オーズは応え、その足を更に強く踏んで加速する。前方の方は、屋敷内へと突入したファットガムが「火急の用や、土足で失礼するで!!」と押し掛けた。それに続く様に、ナイトアイ事務所の面子、警察、ファットガムチーム、相澤、緑谷達、そしてオーズ達と準に乗り込んで行った。

 

「餓鬼が何の用じゃア!!」

 

「うわっ!?」

 

出遅れた耳郎に、構成員の1人が声を荒げながら拳を振り翳す。すると、バース(後藤)が横から蹴りを入れて構成員は「ギャっ!?」と吹き飛ばされた。

 

「大丈夫かイヤホンジャック!」

 

「う、うん!ありがとう後藤く…バース!」

 

「名呼びは後藤でいい、まだヒーロー名決めてないからな」

 

耳郎にそう応え、バース(後藤)と耳郎は前方に群がる構成員達に向けて身構える。早くオーズ達に合流しなければどんどん距離が遠退いてしまうと考えている中、プロトバースの腰に装着していたゴリラカンドロイドが激しく両腕を回し始めた。

 

『ウホッ!ウホッ!ウホッ!ウホッ!』

 

「な、なに?新しいカンドロイド?ゴリラ?」

 

「っ!?これは…!マズい、近くに()()()がいる!」

 

ヤミー出現を知らせてくれるゴリラカンドロイド。そのアラームみたいな鳴き声にバース(後藤)は警戒して「伊達さん!」と叫ぶ。

その直後だった。

 

「うおああァァ!!」

 

「オルァああ!!?」

 

「うわっ!?」

 

「何だコイツ()!?」

 

人混みから紛れて現れたのは構成員だった。だが様子がおかしく、手足、身体には夥しい包帯が巻かれており、明らかに理性を失っている様な素振りで警官やヒーロー達に攻撃を仕掛けて来た。

耳郎も警戒して身構えるが、()()がおかしい事に疑問を抱く。

 

「え、ヤミー…じゃないッ!?」

 

「いや!以前アンクから聞いた事がある。()()タイプのヤミーだ!」

 

ヤミーの種類は異なり、ウヴァが産み出す昆虫系ヤミーは宿主から分離し、宿主の欲望の対象を喰らう、あるいは欲望をヤミー自身の行動で満たす事を栄養源としている。対して今目の前にいるのはカザリが産み出したネコ系ヤミー。宿主に寄生し、禁断症状のように欲望のまま暴れまわり、その行動で欲望を満たしている怪物だ。

 

「クソ!コイツら話が通じない!?」

 

「ううおおああァア!!」

 

奇声を発する構成員達にプロヒーローは苦戦していた。そこへ、バース(伊達)が寄生された構成員の首を掴み、取り押さえながらこの場に居るヒーローと警察達に呼び掛ける。

 

「コイツらは寄生タイプの怪物・ヤミーだ!中にいる人間を引っ張り出さねえと本体は倒す事できない!…だったな後藤ちゃん!?」

 

「正解です!ヤミーは僕等が対処します!サポートを頼む、イヤホンジャック!」

 

「わ、わかった!」

 

バースバスターにセルメダルを装填し、補充しながらバース(後藤)は寄生された構成員達に向けて駆け出す。指示を受けた耳郎は返事をしながら、オーズが中へと入っていった玄関を見つめていた。

 

そして、誰もが気付いてはいなかった。死穢八斎會の建物の屋根を破壊して、ヌッとその姿を現す化け物の存在を…。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

寄生されたヤミーが表に現れる前の出来事。

 

センチピーダー、バブルガールの2人を先頭に、死穢八斎會の屋内へと侵入した警察とヒーロー達。外の方にほぼ戦力を導入したせいか、廊下の通路は構成員の1人もおらず、全員は迅速に走っている中、ファットガムが後方を振り返りながら言った。

 

「怪しい素振りどころやなかったな!」

 

「俺ァだいぶ不安になってきたぜオイ!始まったらもう進むしかねえがよ!」

 

「どこかから情報が漏れてたのだろうか……いやに一丸となってる気が……」

 

不安を隠せずロックロックがボヤくと、天喰も同調していたが、刑事部長が否定するように口を開いた。

 

「だったらもっとスマートに躱せる方法を取るだろ。意思の統一は普段から言われてるんだろう」

 

「盃を交わせば親や兄貴分に忠義を尽くす。肩身が狭い分昔ながらの結束を重視してんだろうな。この騒ぎ…そして治崎や幹部が姿を見せてない。今頃地下で隠蔽や逃走の準備中だろうな」

 

それに続いて便乗する相澤。すると、その言い分が気に食わなかったのか切島が怒号する。

 

「忠義じゃねえやそんなもん!!子分に責任押し付けて逃げ出そうなんて漢らしくねえ!!」

 

漢気を貫くその心意気にファットガムは「んん!!」と強く頷く。

 

「ここだ」

 

ふと、ナイトアイが呼び掛け、掛け軸と生花がある場所に全員が踏み止まる。ナイトアイが生花の花瓶を退かしながら口を開いた。

 

「この下に隠し通路を開く仕掛けがある。この板敷きを決まった順番に押さえると開く」

 

説明しながら、ナイトアイはその板敷きを順番に押し込むと、ガコン!と何か仕掛けが作動した音が聞こえる。すると、掛け軸の壁ごと横へと開かれて行く。

 

「忍者屋敷かっての!ですね!」

 

「見てなきゃ気付かんな、まだ姿を見せてない〝個性〟に気をつけましょう」

 

ナイトアイだからこそ、仕掛けに気付けた。ナイトアイがいなければ、恐らく地下に辿り着く事なく屋敷内をぐるぐる周っていたであろう。ゴゴゴ…と壁が動いてる中、何か気配を察知したのか、オーズはハッとする。

 

「ッ!下に誰か居ます!!」

 

「っ!バブルガール!!」

 

オーズの声に反応したセンチピーダーがバブルガールに呼び掛ける。警戒していると、完全に開かれる前に、隠し通路から3人の構成員が飛び出して来た。

 

「なァアんじゃ、てめエエエらアアア!!!」

 

「1人頼む!」

 

大声を上げながら突っ込んでくる構成員。だが、センチピーダーの〝個性〟『ムカデ』により、伸ばされた百足の手で2人を巻き取り拘束する。

 

「なァアんじゃ、こりゃアアア!?」

 

出て来た時と言い、拘束されている状態でも馬鹿みたいに大声を出すヤクザに、アンクは思わず「フッ」と吹き出しそうになっている。

一方で、もう1人は相澤が『抹消』を発動し、『個性』が発動出来ない事に怯んだ隙に、バブルガールが腕から出した泡を目元に浮遊させ、その泡は構成員の顔に当たると同時に弾けた。

 

「目がー!!!」

 

「ハイ、ごめんね!!」

 

余程染みたのか涙を流す構成員。その隙にバブルガールは組み伏せし、床へと取り押さえた。

 

「追ってこないよう大人しくさせます!先行って下さい、すぐ合流します!」

 

直ぐに対応し、戦意喪失までの行動に思わず「疾ぇ…!!」と切島は声を漏らしていた。だが見惚れている場合では無いと言わんばかりにナイトアイが「行くぞ!!」と声を上げる。

 

「もうすぐだ、急ぐぞ!!」

 

構成員達はバブルガール達に任せて、ナイトアイを先頭にゾロゾロと隠し通路に繋がる階段を降りて行く。その道中、ファットガムは追って来たオーズに向かって称賛した。

 

「兄いちゃん、アンタが噂のオーズか!?よう敵さんが居ったのわかったな、凄いで!」

 

「あ、ありがとうございます!」

 

「ん?鴻上んとこのバースはどないしたんや!?」

 

「ヤクザ達に足止めくらって、先に行けと!」

 

「フン!よく喋るな丸い男、黙って前だけ見てろッ」

 

「おまっ、アンク!?」

 

「む、口が悪いなァ!後でお尻ペンペンやで!」

 

「ペン…!?」

 

ファットガムの喋り声が癪に触ったのか、アンクは悪口を言うが、普段言い慣れてないファットガムの言葉に驚いてアンクは声を失っていた。

そうしている間に、警察とヒーロー達は階段を下ると、極道の屋敷とは裏腹にコンクリートを壁にパイプ管が天井に張り巡らされている地下へと降り立った。道順を把握しているナイトアイを先頭に走っていると、何故か足は止まる。予知で見た通路の筈なのに、その先は行き止まりだったのだ。

 

「行き止まりじゃねえか!!道合ってんだよな!?」

 

「説明しろナイトアイ!」

 

「俺、見て来ます!!」

 

困惑する中、通形は頭部に装着しているメットを外して壁の中を透過するが、戦闘演習をした時裸になるハプニングを思い出した切島が叫んだ。

 

「ルミリオン先輩まって!またマッパに…」

 

「大丈夫、ミリオのコスチュームは奴の毛髪から作られた特殊な繊維だ。発動に呼応し透過するように出来ている」

 

天喰の言葉を聞いてホッとする雄英1年生達。すると、確認した通形は壁から通り抜けていた顔を戻して口を開いた。

 

「壁で塞いであるだけです!ただ、かなり厚い壁です!」

 

「治崎の『分解』して『治す』〝個性〟ならこういう事も可能か」

 

「小細工をーーー…」

 

ロックロック、ファットガムが対処しようとするが、それよりも先に切島、緑谷、オーズが先陣を切った。

 

「来られたら困るって言ってるようなもんだ!!」

 

「うん、分厚いだけなら壊すだけ!」

 

「だな!!妨害できてるつもりならめでてーな!!」

 

3人は力を込めて、その壁に攻撃を仕掛けた。

 

「〝ワン・フォー・オールフルカウル:シュートスタイル〟!!!」

 

 

「〝烈怒頑斗裂屠(レッドガントレッド)〟!!!」

 

「(〝バッタキック〟!)セイヤァアア!!!」

 

切島は硬化で固めた拳を、緑谷はフルカウルを纏った回し蹴りを、オーズは脚部のバッタレッグでジャンプキックを、それぞれが放った。3人の破壊力は分厚い壁など発泡スチロールの様に簡単に崩れ、轟音と共に崩壊した。

 

「……ちったァやるじゃねえか…」

 

「先越されたわ」

 

ロックロックとファットガムが驚く中、道は開かれたので「進みましょうーー」と通形が言ったその直後だった。

 

コンクリートの床が大きく揺れるーーー否。

 

地下の()()()()()()()()()、歪む様に大きく揺れ始めたのだ。

 

「「「「!!!?」」」」

 

「道が!!うねって変わっていく!!」

 

「何だこれは…!?うおっ!?」

 

立っている事すら儘ならない揺れにウヴァは尻もちを着いてしまう。

 

「治崎じゃねえ…逸脱してる!考えられるとしたら……本部長『入中』!しかし!規模が大きすぎるぞ、()が入り操れるのはせいぜい冷蔵庫ほどの大きさまでとーー!」

 

「かなーーりキツめにブーストさせれば、無い話じゃァないか……」

 

「物に入り自由に操れる〝個性〟…!!『擬態』! 地下を形成するコンクリに入り込んで、生き迷宮となってるんだ…!!!」

 

「何に化けとるか注意しとったが…まさかの『地下』!こんなん相当身体に負担かかるはずやで…イレイザー!消せへんのか!!?」

 

()()が見えないとどうにもーー…」

 

死穢八斎會の1人が仕出かしているミミック。更にはブーストされた〝個性〟の力で、地下全体が大きく歪み、行手がみるみると塞がれて行く。恐らく壁の中に潜んでいるのか、相澤は『抹消』が使えない状況となっていた。

そんな中、不安と恐怖が押し寄せたのか天喰が弱音を吐く。

 

「道を作り変えられ続けたら…目的まで辿り着けない…!その間に向こうはいくらでも逃げ道を用意できる。即時にこの対応、判断…ああダメだ…もう……女の子を救い出すどころか俺達もーー!!」

 

パニックになってしまう天喰に「環!!」と通形が喝を入れ、天喰の肩に手を置き、軽く叩いた。

 

「そうはならないし、お前はサンイーターだ!!そして!!こんなのはその場凌ぎ!どれだけ道を歪めようとも、目的の方向さえわかっていれば()()行ける!」

 

「ルミリオン!」

 

「先輩!」

 

「スピード勝負!奴らもわかっているからこそ、時間稼ぎでしょう!先に向かってます!!」

 

どれだけ遮ろうと、通形の〝個性〟『透過』には関係ない。ナイトアイと緑谷に心配されつつも通形は歪む地下通路の壁に迷う事なく、透過して進んで行き、その姿を消した。

 

「天喰先輩!」

 

「!」

 

「俺もヤクザの家に乗り込むのは正直怖いです。でも、救けを求める小さな女の子を救えなかったら、後で絶対後悔する…!あまり頼りになりませんが、俺達もついてます!一緒に頑張りましょうっ!」  

 

「後悔……」

 

後押しする様に、オーズも天喰に声を掛けた。天喰は一瞬俯いたが、覚悟を決めたのか、強い眼差しを向けて顔を上げたその時。

ナイトアイ達が立っていた一面の床が大きく割れ、どデカい落とし穴となった。

 

「うわっ!?落ちるーー…!?」

 

捕まる箇所が無く、落下していくオーズ達。相澤は落下中に上を見上げるが、直ぐに開いた穴は閉ざされてしまい、完全に戻る事が出来なくなっていた。

 

「広間…?」

 

「ますます目的から遠のいたぞ、いいようにやられてるじゃねえか!!」

 

約束一層階くらいの高さから落下したので、高さはそれほどでも無く、全員は何とか着地していた。着地した衝撃で砂埃が舞う中、広間の壁際から見知らぬ声が聞こえてくる。

 

「おいおいおいおい空から国家権力が落ちて来やがった…不思議な事もあるもんだ」

 

「!?」

 

金髪のペストマスクを付けた男が物珍しそうにこちらを見る。隣にはツギハギの縫い目をした布を被った男、極悪人と言ってもおかしくない風貌をしたマスクの男・系3人が立っていた。

 

「よっぽど全面戦争したいらしいな…!さすがにそろそろプロの力見せつけーー…」

 

拳を合わせ、前に出ようとするファットガム。だが、それを天喰が手を伸ばして止めた。

 

「その〝プロの力〟は、目的の為に…!!こんな時間稼ぎ要員ーーー…俺一人で充分だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★☆★☆

 

 

「うっ…!()()()()()現れたと…思ったら、()()も…俺達も関係無しに暴れ始めた…!何なんだよ…あれは……!!?」

 

一方で、八斎會の庭にて。

満身創痍で言いながらヒーローは突如現れたラーテルタコヤミーを見遣る。警察達とプロヒーローは愚か、足止めしていたヤクザ達までもがラーテルタコヤミーが暴れて、殆どの人間が地面へと倒れていた。ヤミーに寄生された人間には攻撃をしなかった為、3人の寄生された構成員、そしてラーテルタコヤミー一体が行手を阻んでいる。

こちらの戦力は、バース(伊達)とバース(後藤)、耳郎だけとなっており、外の路上にはリューキュウ達が巨漢の男と対峙してこちらに来れる状況ではなかった。

 

バース(伊達)はバースバスターを構えながらラーテルタコヤミーの特徴を見定めていた。

 

「火野を先に行かせたのはちょっとまずかったな…!にしてもあのヤミー…色合いからして…スカンクか!」

 

「ラーテルだと思いますよ!バースバスターが効かないあの防御力、ラーテルも身を守る為に背中の皮膚は分厚いんです!あと、推測ですが下半身はタコでしょうね。だとすれば以前戦ったエイサイヤミーみたく中には人がいない筈…!」

 

「成る程ねぇ、なら大技ぶっ放してだな!」

 

バース(後藤)の考察にバース(伊達)は頷き、セルメダルをバースドライバーの投入口に入れようとする。だが、そうさせまいと寄生された構成員達がバース(伊達)に襲い掛かった。

 

「キええっ!!」

 

「うわっっと!?ちょいちょいちょい!生身の人間相手はさすがに攻撃できねェっての!」

 

「伊達さん!」

 

横に飛び避けるバース(伊達)。フォローしようとバース(後藤)はバースバスターを構えるが、生身の人間相手にバースバスターは凶器でしかない為、トリガーを引けずに「くっ!」と悪態吐く。かと言って前方に出てしまえば、後方に居る耳郎に被害が及ぶ可能性もあった。

どうすればと困惑する最中、耳郎はバース(後藤)に叫ぶ。

 

「後藤君、伊達さんの援護に行って良いよ!」

 

「なっ!?無茶だ、君1人であのヤミーに太刀打ち出来る筈がない!」

 

人間相手ならともかく、目の前にいるのは人間の形をした化け物だ。攻撃の1つや2つをまともに食らってしまえば、致命傷で済むとは思えない。大声を上げるバース(後藤)だが、彼女の表情は武者震いから来ているのか、笑っていた。

 

「だからこそ、ウチも()()()用に真木博士から貰ったんだ!」

 

「なにっ、真木博士だと!?」

 

ある人物の名を聞いてバース(後藤)は耳郎へと振り返る。耳郎は両腰にあるポーチに手を伸ばし、ロックを外すと中から()()の蒼色のカンドロイドを取り出した。プルタブ(プルトップスターター)を指先で弾いて展開させると、空中へと投げる。

その時、ふと耳郎はこのカンドロイドを貰った出来事を思い返していた。

 

 

 

 

 

 

 

☆★☆★☆

 

 

死穢八斎會に乗り込む前の前日。

寮へと帰宅し、自室に戻った耳郎は宅配で届いていた荷物を置き、カッターを取り出すと切り込みを入れて蓋を開ける。

中に入っていたのは3()()のカンドロイドと投影機能が付けられた録画パネルだった。

 

「これ…カンドロイド…?何故にウチ…?2つは…()()()、かな?もう一つは……」

 

蒼色のカンドロイドを両手に持ち、絵柄を見ながら何の生物かを考察する。そして、もう一つのカンドロイドを見ようとした瞬間、録画パネルが肘に当たって床へと落下し、その衝撃でボタンが押されて空中へと投影された。

 

だがしかし、映された映像は画面一杯に映り込んだ人形の顔だった。その不気味な顔に耳郎は驚いて声を張り上げる。

 

「うわあああア!!!?」

 

ビクッと跳ね上がる耳郎だが、それは一瞬でその人形の顔に見覚えがあったのか「あ…」と声を漏らす。すると人形の顔は距離を取り、ある人物の肩に置かれていた。ドクター真木だ。

 

『お久しぶりです、耳郎さん。まず先に、以前のインターンは申し訳ありませんでした』

 

人形が落ちない程度に頭を下げる真木。耳郎はムッとしながら「そういうのマジいらないから」と肩に乗っている人形を見ながら怒っていた。

 

『お詫びと言っては何ですが…そちらのカンドロイドをお渡しします。耳郎さん()()で制作したカンドロイド……ある()()()()()()()を参考に作業に取り掛かりました。きっとお役に立てる筈です』

 

「え、ウチ…専用…」

 

『無論索敵の機能も搭載してますが、貴方の〝個性〟の音を『溜め込み』、『凝縮』して放つ事が出来ます。その威力は…データでの推測ですがーーー………』

 

 

 

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

空中へと投げ出されたカンドロイドは缶モードからアニマルモードへと変形される。耳郎の周りを浮遊しながら泳ぎ始めるのは2機の()()()だった。

 

『シャチー!』

『シャチ!』

 

「ッ!新しいカンドロイド…!?」

 

見たことがない新規のカンドロイドにバース(後藤)は驚いている中、耳郎は両耳のプラグをシャチカンドロイドの後頭部の部分にある穴に接続させる。

 

『『シャアア!!』』

 

すると、目の色が赤く発光したシャチカンドロイドは口をガバッと大きく開ける。その口の中から銃口の様な突起物が射出されていた。

 

「(音響強化装置チューンナップ・モードシャチ!!)」

 

2機のカンドロイドは展開された口の銃口をラーテルタコヤミーに向ける。これが耳郎専用のシャチカンドロイドであり、()()()()()()()、『戦闘モード』へと変形が完了した。

 

「っし…!!こう、かな!」

 

気合いを入れる耳郎。だが、いくら言ってもシャチカンドロイドを使うのは()()()である為、手探りの感覚で耳郎は心臓の音を接続しているシャチカンドロイドに流し込む。すると、波紋の様な輪が銃口に集まっていく。

 

「何をしてもムダダ!」

 

急に、ずっと無言だったラーテルタコヤミーが言葉を発して耳郎に襲い掛かろうと走り出す。準備が整っていない為、耳郎は「うわわっ」と後退ろうとする。瞬間、バース(伊達)が寄生した構成員達を退けてラーテルタコヤミーに向かって駆け出した。

 

「後藤ちゃん!構成員(アイツら)頼むわ!」

 

「わかりました!」

 

「銃効かないなら、接近戦だな!」

 

バース(伊達)は走りながらセルメダルを取り出し、「よろしくぅ!」と一言言ってバースロット(投入口)に入れると、グラップアクセラレーター(ダイアル式ハンドルレバー)を回した。

 

 

 

《カポーン…カッター・ウィング》

 

 

音声が鳴り、背中のカプセルが展開される。巨大な翼型の纏う武装が出現した。

 

「うわっ!飛んでる!」

 

「スカンク野郎!こっちだ!」

 

バース(伊達)はその場から地面を蹴って跳躍すると、カッターウィングのジェット機から勢いよく噴射されて飛行する。それを見ていた耳郎は驚く中、ラーテルタコヤミーの横を通り抜けて一度空へと浮上し、再びラーテルタコヤミーに目掛けて飛来した。

 

「おっらァ!!」

 

「ぐオッ!!?」

 

カッターウィングの刃先がラーテルタコヤミーの肩に直撃する。文字通りブレードとなっている速度を重ねたウィングの威力が凄まじかったのか、ラーテルタコヤミーは肩を抑えながらセルメダルが零れ落ちていたのだ。

 

「おおっ!?これならダメージがあたえれるな!ならもういっちょーーーー…!」

 

斬撃が通る事にバース(伊達)は強気になるその瞬間、()()()をしてしまったせいで前方の八斎會の壁に激突し、瓦礫に埋もれてしまった。

 

「ぐあああっ!!?」

 

「何してるんですか!?」

 

コミックの様な光景に思わずバース(後藤)は声を張り上げていた。ラーテルタコヤミーもその光景に目を奪われてしまっていたが、その()は耳郎にとって好都合だった。

 

「ありがとうございます、伊達さん!」

 

「ッ!」

 

ラーテルタコヤミーは振り返ると、そこにはエネルギーが蓄えられたシャチカンドロイドをこちらに向けている耳郎の姿があった。

狙いを定めている中、耳郎は真木が言っていた言葉を思い出す。

 

 

『データでの推測ですが、バースバスターと()()の威力を発揮するでしょう。もっとも貴方の使い方次第ですが…。勿論、反動もありますので、使う際は十分お気を付けて下さい』

 

 

「反動とか、気にしてられないよね!!小さな女の子救ける為なら…いくらだって使ってやる!!

〝ハートビート・タクトスラッシュ〟!!」

 

技名を叫ぶと同時に、銃口から圧縮された()()()()が放たれる。衝撃が凄まじく、耳郎は後方へと吹き飛ばされつつも、斬撃は一直線にラーテルタコヤミーへと飛ばされる。

 

「!!!?」

 

ザンッ!!と斬撃はラーテルタコヤミーの横腹を通過し、抉り取られる様に横腹が消し飛ばされたのだった。

 





No.131 それは欲望に忠実で、がめつく

更に向こうへ!Plus Ultra!!
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