いつかの明日へ、【ヒーロー】は助け合いでしょ 作:しょくんだよ
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No.68 I・アイランド
時刻は真夜中。
ここはもう数年は使われていない廃墟の工場。
あちこちが錆びて腐食し、夜空の光で照らされ肉眼で見える埃が宙を舞う薄暗い世界が広がる空間。
おどろおどろしく何かが出てきそうな雰囲気のその廃工場。
そこへ何人か引き連れた額に大きな傷のある1人の男がその場を歩いて進む中、その廃工場の中央には2人の男女が立っていた。
やって来た人達の気配がしたのか男の子は顔を上げると女の子は待ちくたびれた顔をして連中を見遣る。
そして複数の人数の中からリーダーであろう男が2人の
「〝あの方〟から言われてここに来たのだが、お前達が例の異形の姿になる〝個性〟を持つ姉弟で間違いないな?」
「まあ半分は違うけどそうだよ………ってか。おっっそい!!どんだけ待たせんの!?先生に言われてここで待ってろって言われたけどこんな時間に2時間も待たされるってどーなのよ!アンタら女性との待ち時間もっと学んだ方がいいよ!」
「姉さん…落ち…着いて」
男の態度と待たされた苛々が混ざり合って彼女、脇真音優無は怒号を突きつける。それを見ていた弟、脇真音槍無はボソボソと止めようとそう言うと連中の1人が年齢からにして10代の見た目をしている姉弟を見るなり皮肉に口を動かした。
「…へっ。舐められたもんだな。まだ餓鬼じゃねーかよ。こんな奴等が〝日本〟で有名になってる
「あ?」
「よせ、ソキル。…部下が失礼をした。遅れた事も詫びる。…さて、本題に戻るとしよう」
ソキルと名乗る人物は姉弟を見るなり悪態を吐くと優無の目付きは変わりドスの効いた声で疑問符を返すとリーダーの男がそれを止めて謝罪し、口を開いた。
「あの方から戦力になるものを提供すると言われてここに来たわけだが、君達がその戦力になり得る者なのか?」
「いやいやぁ、まあ私達は超が付くほど戦力になるけど。もっと律儀な子達さ…」
男の問いに優無は軽く手首を振るい否定すると、突然左手を上げて指を鳴らした。廃工場で人気のない分、その音は何層にも工場内へと響き渡る。
その瞬間だった。
辺りから有象無象と様々な種の怪人、ヤミーが何十体もの数で現れる。
「キェアア!」
「シャーア!!」
「ケケケケッ!!」
「っ!?」
「な、何だこいつら!?」
「気付かなかった…!いつの間にこんな…!?」
奇声を発しながら複数のヤミーはあっという間に脇真音姉弟、集団の連中を取り囲む様に現れ、警戒していたのに気配すら感じなかった連中は驚き身を固くする。
闇の中から現れるその集団と化け物と呼ぶに相応しい身なりにより恐怖の存在感を漂わせる風格となって見える為か部下達は青冷めた表情となり冷や汗を流していた。
それを見ていた優無はニヤリと自慢する様な笑みを浮かべると満足したのか右手をゆっくりと広げる。すると、奇声を発してたヤミー達は急に大人しくなり静かになる。
「どぉ?
「…成る程。コレが戦力というわけか……」
「そゆこと。あ、勿論人として扱われないから持ってく時はお宅等のやり方で対処してね」
優無はそう言い終わると槍無が優無の裾をくいっと引っ張り口を開いた。
「姉さん…例のヤツ…」
「あ〜そうだったそうだった。もう一つ〝渡す物〟があるんだったっけ」
槍無の言葉に思い出したのか優無はそう言って奥のドラム缶の上に置いてあるアタッシュケースを取りに行き、それを持つとリーダーの男の前へと持って行く。
「…なんだこれは?」
優無から受け取った男は何も聞かされてないケースを見て不信に思ったのか早速その場でロックを外して中身を見る。すると中に入っていたのは真っ黒の色をした〝3つのメダルを入れ込む様な窪みがあるドライバー〟だった。だが、オーズドライバーとは異なり形は長方形の様なドライバーに嵌め込む箇所は左右に2枚、真ん中のやや下の部分に1枚と異様な造形となっている。
そしてその横には甲殻種の生物の絵柄の造形が施された〝黒色〟のコアメダルが3枚付属されていた。
物珍しそうに見る男に優無は説明する為に口を動かした。
「それは今回のおまけ。そのメダルを使って起動させれば身体能力を向上させて凄い力が手に入る。まあもしもの時に使いなよ。あ、役に立つ代物だからお金は勿論頂戴ね?」
「……フン。中々取引が上手い嬢さんだ。では、有り難く受け取らせてもらおう」
男はケースを閉じながらそう言うと手下に向かって顎をくいっと上げる。手下は小さく頷くと手に持っていたアタッシュケースを持って脇真音姉弟に歩み寄る。槍無は無言で優無の前に立ち、それを受け取ると中身を確認する。そこにはケース一杯に敷き詰められた大量の札束が入っていた。
「うっはあ……」
初めて大量の札束を目にしたのか優無の顔は尋常じゃない程驚愕した顔となり釘付けとなっているとリーダーの男が辺りのヤミー達を見回して確認し、口を動かした。
「用は済んだ。これで失礼する」
男はそう言ってヤミー達を引き連れてその場から立ち去り、廃工場を出て行く。完全に去ったのを気配で感じたのか槍無は金の入ったケースを閉じて優無に向かって口を開いた。
「…姉さん……。今更…だけどアレ…渡してよかっ…たの……?貴重な…コア…メダル…入ってる……」
「んー?いいよいいよ。〝実験〟がてらにドクターから頼まれた試験品なんだから。ま、使った所でそいつの命の保証はないけどね。それにアレは〝日本〟じゃ使えない。英知が結集したあの〝島〟なら使えると思うからついでに渡したんだけどね」
「島……?」
槍無は首を傾げると優無は羨ましそうに口を開いた。
「そう!I・アイランドだったかな!?凄く行ってみたいんだけど
「…でも…実験の…結果…行かないと見れ…ない…」
「ああそこら辺はドクターが把握出来るって言ってたからいんじゃない?てか!それより!この大金!うっはあ!マジで貰っちゃっていいのこれ!?テンション爆上がりなんだけど!!弟君今から買い物いかない!?あ、死柄木君達も誘ってご飯食べにいこう!お肉!焼肉食べたい!」
「姉さん…今、夜中……店やってない……。それに…僕達
大金を貰い夜中だと言うのに舞い上がる優無を見て現実を突きつける槍無だったが彼女の笑顔を見てどこか微笑みを浮かべていたのだった。
☆★☆★☆★☆★☆
人口都市〝I・アイランド〟。世界中のヒーロー関連企業が出資し、〝個性〟の研究やヒーローアイテムの発明などを行うために作られた学術研究都市。
『ただ今より、入国審査を開始します』
時は流れ、仮面ライダーオーズこと火野映司は動く歩道に乗って搭乗口を出るとシャッターが開いた。入国審査室で全身をスキャンされる。
空中に投影されたモニターにはそのパーソナルデータが映し出されていく。そこには〝派生〟で現れた相棒のグリード、アンクも記載されており、火野の〝個性〟ということで審査されていた。しばらくすると入国審査終了のアナウンスが流れる。
『入国審査が完了しました。現在、I・アイランドでは様々な研究・開発の成果を展示した博覧会、I・EXPOのプレオープン中です。招待状をお持ちであれば、ぜひお立ち寄りください』
ゲートが開き、早速I・アイランドに踏み入れた火野はその広大なエキスポ会場が目に入り「わあ…!」と感激の声を漏らす。
いくつもの面白そうなパビリオンが建てられており、そこはまさに最先端科学による夢の未来とも言える光景が広がっていて、他の人々は誰もが笑顔で心から楽しんでいた。
すると、早速火野の体の中から人型のアンクが出て来て周りを見渡すなり口を開いた。
「随分欲望の活気に溢れた場所だなぁ…」
「一般公開前のプレオープンなのにこれだけ人がいるなんてすっごいなぁ…!!〝個性〟の使用も自由だしコスチュームも可!何よりパビリオンには〝個性〟を使ったアトラクションがある!事前に調べてたけどもう情報量が多過ぎて頭が追いつかないよ!」
「ほぉ、ここではオーズになっても問題ないのか…日本もこのくらいにしてくれれば良いものを」
「それは駄目だろっ」
嫌味そうに言うアンクに火野は静かにツッコみを入れる。
科学の発展を願う研究者達が住むI・アイランドは犯罪とはほぼ無縁。よって〝個性〟を制約する必要はない為に解禁されているらしい。
感動と感激の光景に見惚れている火野に、突如割入る声が後ろから響いた。
「入国審査長過ぎんだろ!!しかも俺だけ入念にチェックされた!クソが!」
「
「うっせーぞ〝クソ髪〟ぃ!!」
怒号の嵐が巻き起こるその言葉の男、爆豪は苛々しながら宥める切島と共にやって来る。〝個性〟の規制もなく2人は堂々とコスチュームの姿で入国して来た。
火野の背後までやって来ると切島は先程の火野と同じ様に感激し、「スッゲェ」と声を漏らすとすぐに火野に声を掛けた。
「マジでありがとな火野!こんなすげー所に招待してもらえるなんて一生モンの思い出だぜ!な、爆豪!」
「ケッ!俺ァ仕方なくだ!こいつがどーしてもお礼したいって言うからよ!本当に仕方なくだ!」
「…こっちから誘った身なのになんか釈然としないなぁ」
素直で喜ぶ切島に対して爆豪はツンとした態度でそう言う。招待状が2枚余ったその使い道は見ての通り爆豪と切島を誘ったのだ。火野の誘った理由は体育祭の決勝戦、轟との闘いでコンボの反動で疲弊している時に爆豪が観客席から応援してくれた事を思い出して爆豪を誘う。最初は断っていたのだが切島も連れて行くと提案するとその態度は変わり、嫌々そうに承諾した…と言う事である。
「…フン。よりにもよって何で爆発頭なんか誘ったんだ」
「あ〝ぁ!?んだとこの赤鳥野郎!俺だって来たくて来たわけじゃねぇんだよゴラァ!」
「あ?それが誘った者に対しての口の利き方か?人間は礼儀が基本だろ。感謝の一つも言えない人間以下だったか?」
「んだとこの鳥野郎!!つくづく人の神経を逆撫でする奴だなてめェはよぉ…!今すぐここでぶちのめしてやろーか…!?」
「ほぉ。上等だ。この島は〝個性〟が規制されてないなら何しても問題ないわけだな。前々からお前は気に食わない態度をしてこっちも苛々してたんだ…!」
「そっくりそのまま返してやんよ!てめェも戦えるって聞いたから一度は殺してみたかったんだぜ!?」
徐々にヒートアップしていく2人を当然火野と切島は止めに割り込む。
「アンク!喧嘩は駄目だ!」
「おい爆豪、海外に来てまで揉め事するなよ!」
「「あ!?…あ?…チッ!」」
宥める2人にアンクと爆豪は同じタイミングで返事をし、それに気づいた両方は顔を見合わせこれまた同じタイミングで舌打ちをして互いはそっぽを向く。
「見事なシンクロ…」
「だな…。そう言えば火野。お前緑谷と待ち合わせあんだろ?」
それを見た火野はそう言うと切島は同調して火野の用事事を思い出して聞いてくる。火野は「あ、そうだった」と言いながら腕時計を見てアンクに声を掛けた。
「アンク、俺達は待ち合わせ場所に行くぞ。爆豪君達は…」
「ケッ!クソナードとなんか会ってられっか!勝手に行ってろ!」
爆豪は緑谷のワードが出た瞬間嫌そうな顔をして3人に背を向け歩き出す。切島は追いかけようとすると一旦立ち止まり火野に声を掛ける。
「わ、わりぃ火野!せっかく招待してくれたのに別行動になっちまうなっ」
「ううん、別に問題ないよ。元々そう言う方向に行くのは目に見えてたから」
予想していた火野は苦笑する。同じくI・アイランドに訪れた火野は緑谷とオールマイトとの待ち合わせがあったのだが爆豪が行かないのは想定内だった。元よりオールマイトが同行しているのは他言無用に頼まれていた為これはこれで好都合とも言える。
ズカズカと離れて行く爆豪を見て切島は慌てて火野に向かって口を動かした。
「じゃあ火野!開閉時間にまた連絡するわ!本当招待してくれてありがとな!…おい!待てよ爆豪ー!」
切島は急いで爆豪の後を追う。その後ろ姿を見ていたアンクは鼻を鳴らして声を出す。
「フン、結局別行動なら誘った意味なかっただろ」
「まあ捨てるよりかはいいだろ?それよりアンク、お前も規制掛かってないからって勝手な行動するなよ?」
「あ?知るか。売られた喧嘩は買う性分だ」
「良くない!…はぁ、先が思いやられるなぁ…。取り敢えず行くよ」
自分勝手なアンクに呆れる火野はしぶしぶ合流場所に向かうのだった。
☆★☆★☆
火野とアンクが訪れたのはエキスポ会場の先にあるI・アイランドの中央から島を見守るように聳え立つセントラルタワー。その入り口の前には火野が言ってた通り緑谷、オールマイト、そして金髪の眼鏡の少女が立っており、火野に気付いた緑谷は大きく手を振って声を上げた。
「火野君ー!」
「緑谷君!オールマイト!」
「やあ火野少年!アンク少年!日本振りだね!」
火野も手を振り駆け足で近寄ると筋骨隆々で勇ましい姿のマッスルフォームのオールマイトは画風が違うその笑顔で挨拶をすると辺りを見回し出す。
それを見ていたアンクは鼻を鳴らしながら口を開いた。
「フン、爆発頭と切島って奴はここには来てないぞ」
「お、そうか!よかった。だがあの2人には気を遣わせてしまったな」
「来たがってなかったので気にしなくて大丈夫ですよ。それより緑谷君、オールマイト。そちらの人は…?」
気に悩むオールマイトに火野はそう言ってこちらをニコニコと満面で可愛らしい笑顔をする女の子が気になったのか2人に聞くと、オールマイトは女の子の肩に手を置いて口を開いた。
「紹介しよう!彼女は私の古い友人の娘…」
「はじめまして!メリッサ・シールドです!マイトおじさまから聞いたわ!ヒノエイジ君と、〝個性〟の派生から誕生したアンク君ね?2人共よろしく!」
「あ、はいっ。よろしくお願いします」
「フン……おい、何をジロジロ見てやがる?」
メリッサが挨拶をして火野は歳上だろうと思いながら頑なに挨拶をし、アンクは彼なりの返事をするとメリッサは真剣や表情となってアンクをジロジロと見始める。
「人類初めての〝派生型〟…。貴方本当に〝個性〟なの?ちゃんと人間だし本人とは違った思想と行動している…。えっと、ヒノエイジ君。貴方の〝個性〟は…」
「あ、はい。オーズです。で、これが変身する為のベルトですね」
「わっ!凄い!ちょっと見せてもらってもいい?」
アンクを観察する様に眺めると今度は火野にへと視線を変え火野はオーズドライバーを取り出す。するとメリッサの表情は変わり物珍しそうにドライバーを見つめると火野は差し出して口を動かした。
「良いですよ」
「おい映司。貴重なベルトを簡単に渡そうとするな」
「見せるくらいなら良いだろ別に」
火野の警戒の無さにアンクは嫌そうに言うが火野は軽くあしらいドライバーをメリッサに手渡すとメリッサは向きを変えては色んな方向から眺めてその目を輝かせていた。
「すっごい…!どんな技術が組み込まれたアイテムなのコレ…!見ただけじゃ把握出来ない代物だわ…、ここに何かを入れるみたいね…しかも三箇所…」
「オッホン…。メリッサ」
すると咳払いをするオールマイトに「あ!」と我に返ったメリッサはオーズドライバーを火野に返すと恥ずかしそうに照れ笑いを浮かべる。
「ご、ごめんなさいつい夢中になって…。早く行きましょうマイトおじさま!こっちです!」
気を取り直してメリッサはこの場に居るオールマイトを筆頭として案内し、セントラルタワーへと入って行く。メリッサの後に続く皆んな。その中火野は「そう言えば」と何か思ったのか緑谷に声を掛けた。
「緑谷君はどうしてオールマイトと一緒に?」
「オールマイトの古い友人に会わせたいってメリッサさんから招待状を貰ったんだ。僕はその…付き添いみたいなものかな…」
「成る程、サプライズ的な何かかな」
苦笑する緑谷はそう言うと何となく状況を把握した火野はそう解釈していた。
☆★☆★☆★☆
そのタワーの中にある広くがらんとした研究施設の中で1人の男が携帯に保存されている写真を眺めていた。
そこに映っているのはまだルーキー時代のオールマイト。どこか寂しそうに見つめる男に助手のサムが声を掛けてくる。
「博士、デヴィット博士。こちらの片付けも終わりました」
声を掛けられたデヴィット・シールドは顔を上げる。
「そうか、ご苦労様、サム」
いつもの笑顔のサムにそう言いながら一応確認の為か隣の小さな研究室に入る。資料はしっかりとまとめられており、後から来たサムが口を開いた。
「たまにはお嬢さんとランチにでも行ってきてはいかがですか」
「今日もアカデミーに行ってるよ」
「I・EXPO中は休講では?」
「自主的に研究してるんだよ」
不思議そうに尋ねるサムにデヴィットは苦笑して答えたその時、入り口から声が掛けられた。
「だってパパの娘ですもの。似ちゃったのね」
「メリッサ」
笑いながら近づいて来たメリッサにサムが「こんにちは、お嬢さん」と挨拶する。サムを見たメリッサはニコリと笑った。
「こんにちは、サムさん。いつも研究に明け暮れるパパの面倒を見てくれてありがとうっ」
メリッサの一人前の様な挨拶に「まいったまいった」と苦笑するデヴィットにサムも笑う。
「それより、どうしてここに?」
「私ね!パパの研究が一段落したお祝いに、ある人に招待状を贈ったの!」
「ある人?」
「パパの大好きな人よ」
そう言って振り返ったメリッサにつられるようにデヴィットは入り口を見遣るとその目を見張った。
「私がぁああ!再会の感動に震えながら来たあ!!」
高身長のオールマイトは研究室が狭いのか独特なポーズと共に現れるとデヴィットは突然の登場に驚き固まっていた。サムも後ろでびっくりしている。
「トシ…オールマイト………!?」
「ほ、本物…!?」
「HAHAHAHA!わざわざ会いに来てやったぜ、デイヴ!!」
唖然とするデヴィットとサム。オールマイトはテンション高くデヴィットに駆け寄ると子供の様に持ち上げ、その場で一回転し向き合う。オールマイトの背後からメリッサがニコニコした顔を出して口を開いた。
「どう、驚いた?」
「あ、あぁ…驚いたとも……」
メリッサの企みだと理解したデヴィットはわずかな笑みを浮かべ落ち着かせるように息を吐く。
「お互いメリッサに感謝だな。しかし何年振りだ?」
「やめてくれ。お互い考えたくないだろ、年齢の事は」
「HAHAHAHA!同感だ!」
お互い笑い合うとオールマイトとデヴィットは改めて見つめ合う。
「…会えて嬉しいよ、デイヴ!」
「私もだ、オールマイト」
合わなかった時間を埋めるように、再会を分かち合うように、2人は軽く拳をコツンと合わせる。そしてオールマイトは入り口に居る緑谷と火野、アンクへと振り返った。
「アンク少年!火野少年!そして緑谷少年!紹介しよう!私の親友、デヴィット・シールド」
「知ってます!デヴィット・シールド博士!」
感動し震える緑谷はオールマイトの言葉を引き継ぎ興奮気味に語り出す。
「ノーベル〝個性〟賞を受賞した〝個性〟研究のトップランナー!オールマイトのアメリカ時代の相棒で、オールマイトのヒーローコスチュームヤングエイジ、ブロンズエイジ、シルバーエイジ、そしてゴールデンエイジ!!それら全てを制作した天才発明家!まさか本物に会えるだなんて、か、感激です!!」
「えっ!?そんなに凄い人なの!?」
大興奮の緑谷にメリッサは思わず笑みを漏らす。火野も相変わらずのオタクっぷりに驚くがその内容を聞いて目を見開きそう言う。アンクはこの時間がどうでもいいのか面倒さそうに目を逸らす。緑谷はオールマイトの活躍に欠かせない人間は、緑谷にとって憧れの存在のようなものだ。
彼の勢いに驚いてたデヴィットは好意的に笑みを浮かべ口を開いた。
「…紹介の必要は無いようだね」
「あ、すみません!何か…」
「いや、構わないよ。……君達も友達みたいだね。私はデヴィット・シールド。どうぞよろしく」
我に返った緑谷は恥ずかしそうにするとデヴィットは心優しく口を開き、火野とアンクを見遣り声を掛けた。
「あ、はい!よろしくお願いします!」
「……フン」
「おいっアンク!…すみません、こいつちょっと変わった奴なので…」
「ハハハ、構わないさ」
鼻を鳴らしてそっぽを向くアンクに火野は申し訳なさそうにデヴィットを見ると彼は笑って許してくれた。
「コホ…コホ……」
「!」
小さな咳にデヴィットはオールマイトの様子に感づく。一瞬真顔となるが直ぐに元に戻して緑谷、火野達に気軽な表情で言った。
「オールマイトとは久しぶりの再会だ。すまないが、積もる話をさせてくれないか」
「あ、はい」
「メリッサ、ミドリヤ君とヒノ君とアンク君にI・EXPOを案内してあげなさい」
「わかったわ、パパ」
「え、いいんですか?」
「未来のヒーローとご一緒できるなんて光栄よ。さ、行きましょう!」
デヴィットの指示にメリッサは笑顔で緑谷と火野、アンクに対応すると、緑谷と火野の2人は笑顔になりお礼を言った。
「はい、よろしくお願いしますっ」
「うわあ楽しみだなぁ!」
「フン、子どもか」
「子どもだもーん」
「……!」
ワクワクしていた火野にアンクは嫌味を言うとムカッと来たのかわざとらしい態度で言い返すとアンクの眉の皺がピクピクと動く。楽しそうに出て行く3人と面倒臭そうにするアンクを見送るサムにもデヴィットは声を掛けた。
「サム、君ももう休んでくれ」
☆★☆
研究室を出て行き、通路を歩いているとメリッサが声を掛ける。
「君達の事……なんて呼べばいい?ミドリヤ君?イズク君?あとヒノ君かエイジ君?」
「俺は何でも…、映司で大丈夫です」
火野は間入れずそう言うとメリッサは「わかったわ」と了承する。すると緑谷は自分で納得したのか小さく頷くと口を動かした。
「僕の事は………デクと呼んで下さいっ」
「〝デク〟?変わったニックネームね。分かったわ、デク君にエイジ君!私はメリッサでいいからね2人共。あ、アンク君は…アンク君でいいの?」
「あ?」
変わったニックネームにキョトンとするがその表情を察してメリッサは了承する。ふと、後ろを歩くアンクにもそう言うと機嫌悪そうに疑問符を出すアンクは口を開いた。
「フン!気安く呼ぶな…。ま、〝アンク様〟なら良いがな」
「おい!?どこまで自分勝手なんだお前!」
「わかったわ、アンク様!」
「メ、メリッサさん!?そこはアンク君で良いと思いますけど…!?」
☆★☆★☆★
「失礼します」
サムがドアを閉めるとすぐ、オールマイトはゴホゴホッと強く咳き込み出す。デヴィットは膝をつくオールマイトに駆け寄るとその身体からは蒸気のような煙が出始める。
「おい大丈夫か、トシ!?」
煙が消えて現れたのはトゥルーフォームのオールマイトだった。
「助かったよ……。マッスルフォームを維持する時間がさらに減っていてね……」
弱々しい姿になれ果てたオールマイトを見てデヴィットは焦るような表情をした目で見つめた。
「メールで症状は知っていたが……、まさかそこまで悪化してるとは…」
☆★☆★☆★☆★
その頃、エキスポの入場ゲートにとある一団が現れた。その一団の先頭に立つ大きな傷を負った顔の男は会場を見渡す冷めた視線には何か企みがあるように感じる目をしていた。
「会場内には問題なく入れた。さて…決行は今夜レセプションパーティーが行われる時間…。今のうちに謳歌しているといい」
男はそう言って視線を向ける。その方向にはエキスポ会場の先にあるI・アイランドの中央から聳え立つセントラルタワーだった。
ー ザ・モンスター ー
ヒーロー社会。その裏となりて市民を脅かす
そして
ピリリリリ!
黒霧「…む…死柄木弔…?こんな時間にどうしたのでしょう…?もしもし」
死柄木『なァ黒霧。次来る新しいお仲間さん達いるだろ?少しもてなす案が浮かんだんだけど聞いてくれよ』
黒霧は時計を見ると深夜の3時半だった。
黒霧「…それ、今じゃないとダメでしょうか?」
死柄木『そうだな。今がいい』
黒霧「…わかりました。お店開けますね」
死柄木『ちょっと待て。脇真音も呼んでこい』
黒霧「……申し上げ難いのですが、貴方が呼んだ方が早いのでは…?」
死柄木『あいつが寝起き悪いのは知ってるだろ。俺だと話にならん。お前がやれ黒霧』
黒霧「…分かりました」
黒霧は電話を切ると脇真音優無にかける。
優無『……なに?』
黒霧「夜分遅くに申し訳ございません。死柄木弔が新しいメンバーをもてなす案が浮かんだとの事で今からバーに来ていただけませんでしょうか…?」
優無『黒霧…私寝てるのを邪魔されたくないのは知ってるよね…?ねえ?』
黒霧「も、申し訳ありません……。お越しの際には最高のパフェを用意します。それでどうか…」
優無『……いいよ』
黒霧「ありがとうございます…。では……。
はぁ…、私も
黒霧は自分を奮い立たせ、ベッドから起き上がったのだった。
No.69 集結の1年A組
更に向こうへ!Plus Ultra!!