いつかの明日へ、【ヒーロー】は助け合いでしょ 作:しょくんだよ
「変身」
《 カポーン… 》
後藤はセルメダルをスロット部分に装填し、バースドライバーのグラップアクセラレーターを回すと中心のトランサーシールドが展開、カプセルが開いたような音が鳴り響く。ドームのようなエネルギー体が形成され後藤の周囲を囲むと続いてアーマーが部分部分に現れ装着されていく。後藤はバースへと姿を変えると変わった〝個性〟と思われたのか観客達からどよめく声が聞こえて来る。
『それでは!続いてのチャレンジャー行きます!ヴィラン・アタック!レディ〜…ゴー!!』
MCのお姉さんが合図を出すとフィールドの各地に
ある程度近づくと瞬時に標準に狙いを定めトリガーを引く。メダル状のエネルギー弾がロボットに命中すると破壊され、バースは次々にロボットに向けて銃弾を放ち破壊していった。
「ラストっ!ふっ!」
山岳の頂上にいるロボットに向け後藤は銃弾を放つとロボットは破壊されそこでゲームは終了となりMCのお姉さんは声を上げた。
『それまで!タイムは18秒!現在2位です!!』
「…ふぅ。威力の反動…狙いの標準に多少ズレが生じる…。俺もまだまだか…」
観客席から「おぉ〜」と声が上がるがバースは満足いかない様子で声を漏らし、スタート地点へと戻るとドライバーに装填されたセルメダルを抜き取る。すると、抜き取ったセルメダルは粒子となって消えていき、変身は解かれ、後藤は軽く息を吐いていた。
それを見ていたメリッサは麗日達に声を掛ける。
「凄い〝個性〟ね…。彼も雄英生?」
「はい。でも私達ヒーロー科とは違うサポート科の生徒なんです」
「それにアレは〝個性〟じゃなくて彼のサポートアイテム。名前はバースって言うらしいですよ」
「サポートアイテム!?〝個性〟を使わずにこの記録を出せるなんて凄い…!アーマーを形成して身体能力を上げるシステムかな…、あの武器も変わった銃弾が使われていたし、興味深いね」
麗日、耳郎が答えるとメリッサは興味がそそられるような表情となりまじまじと後藤を見つめる。
同じ境遇の立場として興奮を隠せない様子だった。
すると、後藤はチャレンジャーの出入り口へと入って行くと、そこに待機していた緑谷、火野、アンクを見つけて少し気だるそうに声をかけた。
「まさか、こんな場所にまでお前等と会うことになるなんてな」
「お疲れ様後藤君!凄い記録だね、バースもかっこよかったよ!」
「…爆豪よりも順位は低いのにその褒め方は間違いじゃないのか緑谷?まあ、一応ありがとうとは言っておく」
無愛想に言う後藤に「あぅ、ごめん」と緑谷は申し訳なさそうに謝っていると火野が次に話しかけた。
「後藤さん何でこの島に?」
「I・EXPOの招待状を会長が貰ったんだ。だが会長は急用が出来て行けなくなって、伊達さんと来る予定だったのだがヒーローとしての仕事が増え出してな。結局来ているのは俺1人だけだ」
鴻上ファウンデーションは日本のサポートアイテム専門の大企業の一つ。化学が発達しているこの島に招待状が送られるのは当然だろう。すると、アンクが鼻を鳴らして口を開いた。
「フン、学生の身分だからお前は暇を持て余してそうだな」
「なんだと?」
相変わらずの喧嘩腰のアンクに後藤は眉をピクリと動かし詰め寄ろうとするが火野が慌てて割入る。
「アンク!揉め事起こすなって言っただろ!ごめん後藤さん…」
「…ったく、相変わらずその減らず口は変わらないな。お前のアンクは…」
謝る火野に冷静になった後藤は溜め息を吐く。すると、MCのお姉さんのアナウンスが出入り口から聞こえて来る。
『さて!今回飛び入りで参加してくれたチャレンジャー!一体どんな記録を出してくれるのでしょうか!』
「あ、僕の出番か!」
「頑張ってね、緑谷君!」
反応した緑谷は慌てて出入り口に向い、火野は応援すると緑谷は「うん!」と返事をしてスタート地点へと向かう。次に出番となる火野は軽く準備運動を行なっていると後藤はそのまま通路を奥へと進んで行った。
そして、やや緊張しながら緑谷はスタート地点へと立つ。
「やると決めたからには…(ワン・フォー・オール…フルカウル…!)」
グッと腰を下ろして全身に力を溜める。すると全身に緑色の稲妻が程走りその身にワン・フォー・オールの力を巡らせた。
『ヴィラン・アタック!レディゴー!!』
MCのスタートの合図と同時に緑谷は猛スピードでフィールドの岩山を駆け上がる。瞬く間に頂上付近まで上り詰めた緑谷のスピードにメリッサは驚いていた。
そして、あっという間に的である
『これもすごい!16秒!第2位となりました!』
緑谷のパワーに見慣れていた飯田達は感心していた中、爆豪は気に入らないのかその記録と緑谷を見て不機嫌そうに舌打ちをする。そして、緑谷のパワーを初めて見る観客達は驚くばかりだ。もちろんメリッサもその中の1人だった。
だが、彼女の顔は引っかかってような顔をしてスタート地点へと降りる緑谷を見ていた。
『どんどん行きましょう!続いても飛び入りのチャレンジャー!彼もどんな記録を出してくれるのでしょうか!?』
緑谷はその場から出て行くと今度の挑戦者火野がスタート地点へと立つ。火野はオーズドライバーを腰に宛い装着するといつものように「アンク!」と名を呼び変身に必要なコアメダルを要求する。アンクは無言でタトバのコアメダル3枚を投げ渡すと火野は見事に思い切り振った片手で掴み取り、ドライバーの左右に2枚、真ん中に1枚と嵌め込む。そして右腰部分にあるオースキャナーを取り出し3枚嵌め込まれた部分へとソレをスキャンさせた。
「変身!」
タカ!
トラ!
バッタ!
タ・ト・バ!タトバタ・ト・バ!
コンボソングが鳴り響き、火野はオーズ〝タトバコンボ〟へと姿を変える。バースとは異なる変身シークエンスと音声、そしてその姿に観客達は驚愕していた。その中のメリッサも驚き、口をポカンと開く。
MCのお姉さんも驚きのあまり喋りながら合図を出した。
『先程の若い少年と同じように変身した!?これは期待出来そうです!それでは!ヴィラン・アタック!レディゴー!!』
「はぁあ…!ハァ!!」
合図と同時にオーズは脚部のバッタレッグに力を溜めると能力が解放し、文字通り蝗のような足となるとその場から勢いよく跳躍する。頭部のタカアイで
『きゃー!凄い凄い!!記録は13秒!現在トップに躍り出ました!!』
「よっと!…やったっ」
頂上に着地するオーズは小さくガッツポーズをする。観客達も興奮して歓声の声が上がる最中、メリッサは戻ってきた緑谷に興奮気味に声をかけていた。
「凄いね!デク君!デク君もだけどエイジ君、彼何者なの!?」
「はいっ、火野君の〝個性〟は『オーズ』。動物の能力を宿したコアメダルを使って全身を戦闘コスチュームみたく纏い、戦う事が出来る凄い〝個性〟なんです!」
「すっっごいっ!最近のヒーローの卵達はとても有望な子達ばかりなのね!」
自分も中々高記録を出したのにも関わらず火野を褒めて持ち上げる。緑谷からすれば他の人や友達の方が〝凄い個性〟だと評価し、感激している善良な子だ。
☆★☆
「え!?じゃあゴトウ君は鴻上ファウンデーションに所属していてバースシステムはそこで作られたって事っ?」
「はい。ですが正確には学生の身なので名を置いているだけ…。このバースは真木博士が主に設計したシステムです」
「ドクターマキは優秀な科学者なのね!それで、元となったのがこのコアメダルってメダルで、その所有者のエイジ君はオーズになれる…。益々興味深いわね。これはどうやって出来たの?」
「えと…これは俺の〝個性〟なんで詳しい事はよく分からないんです。気付いた時には手元にあったって感じで…」
「へ〜…!何度も言うようだけどこんな代物が〝個性〟だなんて驚きね……!」
ヴィラン・アタックを終えた火野と後藤は早速メリッサに質問攻めをされて淡々と答えていき、メリッサは改めて貸してもらったオーズドライバーと数枚のコアメダルを手に持ちまじまじと観察しては研究者の目となりと独り言を呟く。すると、アンクが言い訳をする火野の言葉を聞いて気に入らないのか口を挟んで来る。
「フン、下手な言い訳しやがって。そいつは錬金術師によって作られたベル」
「だーったった!!アンクも知らないもんな!」
アンクによれば前世の世界でオーズドライバーは800年前の錬金術師達によって作られた物。そしてコアメダルもまた然り。その欲望の力を入れてグリードも生み出されたらしい。が、そんな話を今したところで疑問と困惑は増すばかりなので火野は慌てて大声を出してアンクに割入る。「おい!」と怒るアンクだが気にせずに火野はアンクの前に立ち誤魔化すように苦笑いをするとメリッサは『?』マークを浮かべて首を傾げていた。
その付近で緑谷はクラスメイト達に囲まれている。
「んー、おしい!そんで火野君やっぱ凄いなあ!」
「だが君も見事だったぞ。流石だ緑谷君」
残念がる麗日と称賛する飯田に囲まれた緑谷は嬉しそうに言う。
「まさか、火野君もだけどかっちゃんの記録にここまで迫れるなんて…」
それを聞いていた爆豪は緑谷に向け声を上げる。
「だー!クソありえねー!もっかいだ!完膚なきまでの1位だ!!」
まさかの火野に負けて尚且つ緑谷と1秒差を付けられたのか爆豪の怒りは頂点に達していた。もう一度挑戦しようと足を踏み出した瞬間。
突如ガガガッ!!という何かを凄い勢いで作り上げるような大きな音がした。
『ひゃー!すごいすごい!!じゅ、14秒!凄いけど惜しくも2位です!!』
驚くMCの言葉に慌てて緑谷達が会場を見ると巨大な氷の塊が岩山を覆っていた。スタート地点にいたのは、白い息を吐き出す轟だった。
「轟君!」
「おぉ、轟君も参加してたんだ!」
驚く緑谷と火野達にメリッサは口を開いた。
「彼もクラスメイト?」
隣にいた八百万が「はい」と答える。
「皆んな凄いわね!流石ヒーローの卵!」
率直な感心に八百万は恥ずかし嬉しく「そんなこと」と顔を見合わせていると、その後ろにいた爆豪が突如、その場から爆破で飛び出し、轟の前へと現れる。
「てめぇ!この半分野郎!」
「爆豪」
怒れる爆豪に対しいつも通りあまり驚かなく冷静な轟。
「いきなり出てきて、俺すげーアピールかコラ!」
詰め寄る爆豪。だが、轟は向こうの観客席から見下ろす緑谷、火野達に気付き、顔を上げる。
「緑谷、火野。お前達も来てたのか」
「うんっ。まさか轟君もヴィラン・アタックに来てたなんて!探す手間が省けたね!」
「あぁ」
「無視すんな!」
挨拶する轟と火野。それに爆豪は割り込むとガン飛ばして口を動かした。
「大体何でてめぇがここにいんだよ!?」
「招待受けた親父の代理で」
サラリと轟は答える。プロヒーローエンデヴァーの息子の轟は当然だがその招待状が届かれていたらしく、エンデヴァーはヒーロー活動がある為不在。1人でやってきた轟は火野と後々合流する筈だったのだが、縁があるのかここで他のクラスメイト込みで合流出来ていた、ということになっている現状だ。
するとおどおどしていたMCのお姉さんが爆豪へと声を掛ける。
『あのー、次の方が待って…』
「うっせぇ!次は俺だ!!」
爆豪の態度にビビるMC。それを見て黙っていられないのか飯田はバッと飛び出しながら叫ぶ。
「皆んな!止めるんだ!雄英の恥部が世間に晒されてしまうぞ!」
「う、うん!」
「お、おう!」
「わ、わかった!」
緑谷、切島、火野も慌てて下へと飛び出し、飯田と共に爆豪を押さえに掛かる。
「だー!なんだてめェら!!放せ!燃やすぞ!」
「かっちゃん落ち着いて!」
「本当迷惑掛けるの好きだなお前っ!」
「これ以上恥を晒すのはやめたまえ!」
「誰が恥だクソメガネ!!」
「ここは悟ろうぜ爆豪っ!」
4人に取り押さえられ暴れるその騒ぎはまるで小学生のような光景で、後藤はそれを見るなり溜め息を吐き、アンクは手摺りに腰掛け見下すような表情で爆豪を見ては鼻で笑っていた。一方で女の子達はさっきメリッサに褒めてもらった時との落差に恥ずかしそうになる。その横でキョトンとしていたメリッサだが「フフ」と思わず笑みをもらした。
「「「…………」」」
更に恥ずかしそうになる3人を見てメリッサは口を動かした。
「あ、ごめんなさい。雄英高校って楽しそうだなって思って」
メリッサの言葉に八百万は少し考えて言った。
「少なくとも退屈はしてないですわね…」
「「タシカニ…」」
同意して麗日と耳郎が頷く。何せ雄英高校の生徒。毎日が刺激的で息つく暇はあまりないほど忙しい学校生活なのだから。
☆★☆★☆★☆★
『本日は18時で閉園になります。ご来園ありがとうございました』
日も暮れ始めたエキスポ会場に開閉のアナウンスが流れていた頃、閉店したカフェの入り口で上鳴と峰田が疲れたのか背を合わせ座り込んでいた。
「プレオープンでこの忙しさって事は、明日からどうなっちまうんだ一体…」
「やめろ、考えたくない!」
地獄の未来を想像して上鳴は頭を抱え込む。小遣い稼ぎ、エキスポ見学、あわよくば女の子とデート、などと考えていた2人だが現実という労働に時間を持っていかれるだけで甘くはなかった。疲れて気力を失くしていた2人に声が掛けられる。
「峰田君、上鳴君、お疲れ様!」
やってきたのは緑谷に飯田、麗日に耳郎、八百万、そしてメリッサだった。皆んなで様々なパビリオンを観てきたあとだ。ちなみに爆豪はみんなと回るのが嫌だったらしくさっさと行ってしまい、切島はそれを追いかけ、火野はこれ以上迷惑掛けられては困るとアンクを連れて2人の後を着いて行ったらしい。轟と後藤はそれぞれ来る筈の人物、エンデヴァー、鴻上の代わりに来た為顔を出さなければならないと別行動となった。
「労働よく頑張ったな!」
そう言って飯田は上鳴達の目の前にカードのようなものを差し出した。
「なにこれ?」
首を傾げる峰田に八百万が答える。
「レセプションパーティーへの招待状ですわ」
「パ、パーティー…?」
「俺らに…?」
身も心も疲れ果てていた2人にとってその誘いはまるで天国に導かれるような感覚だった。そんな2人に耳郎と麗日が言った。
「メリッサさんが用意してくれたの」
「せめて今日ぐらいはって」
「余ってたから…よかったら使って」
控えめに笑うメリッサはそう言うと、峰田と上鳴は彼女が女神のように思えて顔を見合わせる。
「上鳴ぃ…」
「峰田ぁ…」
「「俺達の労働は報われたぁ!!」」
うるうると涙目になりヒシッと抱き合い声を上げる2人。
上鳴、峰田の参加も決まったことで、委員長である飯田は一歩前に出て振り返り口を動かした。
「パーティーには、プロヒーロー達も多数参加すると聞いている!雄英の名に恥じない為にも、正装に着替え団体行動でパーティーに出席しよう!18時30分に、セントラルタワーの7番ロビーに集合!時間厳守だ!轟君や火野君達には俺からメールしておく!では、解散!!」
そう言い残し、〝個性〟のエンジンで物凄いスピードで走り去って行く飯田に緑谷は親指を立てた。
「飯田君フルスロットル!」
「じゃあまた後でね!」
「うん!」
麗日達の宿泊するホテル前で別れ緑谷も自分のホテルへ戻ろうとすると、メリッサが声をかける。
「デク君、ちょっと私に付き合ってもらえるかな?」
「え。あ、はい」
☆★☆★☆★☆
一方その頃、火野、爆豪、切島が宿泊しているホテルの部屋。火野と切島が身支度をしている最中、爆豪は広いベッドに大の字になって寝転がって言った。
「誰がパーティーなんぞ行くか。知らねー奴のスピーチ聞いて、いちいち拍手なんかしてられっか。馬鹿馬鹿しい」
メリッサに招待状を貰ったのにも関わらず、その機会をそっちのけにしようとする彼に火野は呆れていたが切島はめげなかった。
「豪華な飯が食い放題らしいぜ!」
「そもそも俺は正装なんて持ってきてねぇ」
「う〜ん、あまりがあればいいんだけどなぁ。アンク、お前の力で服作ってやる事できないの?」
そう言う爆豪に火野は赤いシーツを被せたソファーに寝転がるアンクに聞くとアンクは面倒臭そうに答えた。
「あ?それは無理な話だな。もっとも、俺が憑依すれば可能だが…」
「ケッ!誰が赤鳥野郎なんかとくっつくか気持ち悪ぃ!」
「フン!それはこっちの台詞だっ。映司ならともかくお前みたいな礼儀知らずの体に取り憑くわけないだろ。想像しただけで寒気がする!」
「あァ!?」
「もー、2人共!ホテルに来てまで喧嘩するなよ!」
会話をする度に喧嘩をされてはお目付役としてもたまったもんじゃない。火野は呆れ気味に2人を宥めると切島がニッと笑う。
「だと思って……おめーのぶんも持ってきた!」
爆豪のと自分の正装を見せて持ち上げる切島に爆豪は吠えた。
「用意周到すぎるだろ!クソ髪ぃ!」
「本当、どこから用意したのそれ?」
「ここ来る前に爆豪ん家のおばさんに話して借りてきた!」
「はぁ!?てめぇ勝手に家くるんじゃねーよ!!」
「ほぉ、よかったなぁ。お前のママにきちんと用意してもらって…な?」
「……〜〜っ!!」
まさかの自宅へ行って借りてきた事に爆豪は驚きながら怒号する。それを聞いていたアンクはソファーに寝そべりながら悪戯の笑みを浮かべ爆豪に言うと爆豪は声にならない唸り声でアンクを睨み付けていた。ともあれ、これで爆豪も行ける事となり、火野達は刻々と迫るパーティーの時刻へ向け準備を進めて行ったのだった。
☆★☆★☆★☆
『拘束しました。警備は5人、プランどおりです』
セントラルタワーの内部、警備システムを管理するコントロールルームで、警備員達が拘束されていた。拘束したのは顔に傷のある男の部下だった。
そのうちの1人がトランシーバーで連絡する。
「まだ警備システムは生きている。殺さず軟禁しておけ」
暗い地下でその報告を受けた傷の男はそう答えると『はい、これより作業に入ります』と言われて通信が切れる。
「順調だな」
傷の男は満足そうに言いながら、鉄でできた仮面をその顔につける。すると前の扉がゆっくりと上がっていく。男は優無から提供してもらったヤミーが数体と、控えている数人の部下達に言い放った。
「こちらも動くぞ」
☆★☆★☆★☆
セントラルタワー7番ロビーの自動ドアパネルに『No.E000I123J EIJI HINO』と表示されるとドアが開き、グレーのスーツに赤のネクタイと見慣れない正装に着替えた火野と後ろからアンクがロビー内へと入って行く。
「あーギリギリ…じゃないか、ごめん遅くなった!」
火野はそう言いながら辺りを確認すると来ていたのは同じく正装をした飯田と轟、後藤。正装を持ってないウエイター姿をした上鳴と峰田だった。
「まだ来てない。団体行動をなんだと思ってるんだ!」
「全く、メリッサさんに言われて同行しているのにも関わらず…A組の連中は時間も守れないのか」
「A組として恥晒し!申し訳ない!」
委員長として責任感を感じる飯田は嫌味を言う後藤に90度腰を曲げて謝罪する。すると、正装をした緑谷が入って来る。
「ごめん遅くなって!…ってアレ?他の人は?」
「まだみたい、俺もさっき来たところ」
「…火野、爆豪達と来てないのか?」
慌てて入ってきた緑谷に火野は息を整えて言うと同行する筈の爆豪と切島が見当たらないのか轟が聞く。すると火野は「あ〜」とバツが悪そうに答えた。
「爆豪君しぶっちゃっててさ。やっと行く気になったんだけど、2人は遅れて来るから先に行っててって言われたんだ。それに同じ部屋に居るとアンクと爆豪君喧嘩するし…」
「フン、喧嘩腰しになるアイツが悪い」
俺は悪くないみたいな言い方をするアンクに「お前もだろ!」と火野が怒る。すると、立て続けに自動ドアが開き、可愛らしくも大胆なドレスを着た麗日がやってきた。
「ごめん!遅刻しても〜たぁ!」
見慣れないその華やかしい可憐な姿に峰田と上鳴は「おぉ〜ほぉ!!」と興奮する。続けて八百万と後ろに隠れるように耳郎が立っている事に火野達は気付く。
「申し訳ありません…耳郎さんが……」
大人っぽくエレガントなドレスを身に包んだ八百万を見て上鳴と峰田は「OH〜〜イエス!イエス!!」とさらに興奮する。
「うう…ウチ、こういうカッコは…その、なんとゆーか……」
八百万の後ろから恥ずかしそうに出て来た耳郎は可愛らしくもシックなドレス姿だ。みんなの反応が気になる耳郎に、上鳴が親指を立てた。
「馬子にも衣装ってヤツだな!」
「女の殺し屋みてぇ」
自身の心に響かなかったのか峰田は呟く。そんな2人に耳郎は耳朶のイヤホンジャックを突き刺し、心音の爆音を流した。
「「ギャアアアア!!?」」
「黙れ」
「なんだよ!?俺褒めたじゃんかぁっ!」
「褒めてない」
突然の攻撃に怯みながらも意義を出す上鳴に耳郎は機嫌を直さない。ふと、耳郎は火野に近寄ると自身のドレスの感想を求めていた。
「あの……火野……どう思う…?やっぱ似合ってないかな…」
「ううん、そんな事ないよ!華やかしくてすごく綺麗だと思うっ」
「っ…!!そ、そうかな…!?あ、ありがとう…!火野もスゴク似合ってるよ…!」
純粋で率直な感想に耳郎は真っ赤になりながらそう言う。それを見ていた上鳴と峰田はこの差はなんだと言わんばかりな腑に落ちない表情で浴びせられた心音の余韻を節々と実感していた。
そしてその近くで麗日も照れ臭そうにしながら緑谷に近づく。
「正装なんて初めてだ…。八百万さんに借りたんだけど…」
緑谷は麗日のドレス姿にドキドキしながらも感想を言った。
「に、似合ってるよ!うん、すごく!」
「わーデク君たら!お世辞なんか言わんでいいって!」
それを聞いた麗日は頬を赤く染めながらテンションが舞い上がったのかブンブンと腕を振る。「麗日君!?」と止める飯田と驚く緑谷。
「おい、お前等流暢に服の感想言い合ってる場合か。もう時間は過ぎてるぞ」
「映司、さっさと行くぞ。デザートにアイスがあるんだろ?」
後藤が腕時計を見ながらそう言う。時刻は等に過ぎており恐らくパーティーは始まっているだろう。アンクもここでしか食べれないデザートに待ちきれないのか火野を急かすと、再び自動ドアが開く。現れたのはメリッサだった。
「「ヒョ〜!!」」
「デク君達、まだここにいたの!?もうパーティー始まってるわよ!」
「真打ち登場だぜ!!」
メガネを外し、華やかで魅力的なドレス姿のメリッサに上鳴と峰田のハートは撃ち抜かれていた。
「ヤベーよ峰田。俺どうにかなっちまうよどーしよー!」
「どーにでもなれ」
感動のあまり涙目になる上鳴に耳郎は呆れていた。
☆★☆★☆★☆
セントラルタワーのコントロールルームでは、警備員達を閉じ込めた男達の1人が、メインであるコンピューターを操作していた。モニター画面に映し出されるタワー階数の警備システムが次々と赤い警報のシグナルへと変わっていく。
その中の1人、緑色の髪色をした男はふと、リーダーである傷の男から
『あの方に俺は〝力〟を貰った。もしもの時の為にコレはお前が使え』
『……わかりました』
男はそれを腰のバッグにしまい、引き続き、モニター画面を眺めてはその口をニヤリと不吉な笑みを浮かべていたのだった。
ー パーティーゲーム ー
前回の続き!
トガ「トガです!トガヒミコ!」
荼毘「荼毘だ」
槍無「えと…脇真音…槍無…です」
死柄木「よしよし、お前等クジを引け」
黒霧「今日は親交を深める為に死柄木弔がゲームを発案したのです」
優無「皆んなで考えたんだよ!」
トガ「うわあ!楽しそうです!」
荼毘「ゲーム?…くだらねぇ」
槍無「ま、…まぁ。…せっかく…用意してくれ…たんだから…やろうよ」
黒霧「では、当たりを引いた方は1〜5の番号の方に面白い命令を出してください」
荼毘「王様ゲームかよ…」
トガ「わー私初めてです!」
槍無「僕も…」
メンバーはクジを引いていく。
黒霧「えー、では当たりの方は?」
死柄木「俺だ」
黒霧「ご命令を」
死柄木「そうだな…2番と4番は…とりあえず死ね」
トガ「わー!私死んじゃいます!」
槍無「僕も…死ぬ…」
優無「おいコラ死柄木。人様の弟に死ねとはどういう了見してんの?あぁ?」
黒霧「(脇真音優無さんキャラが…)し、死柄木弔…」
死柄木「なんだ?面白い命令っつったろ」
黒霧「いきなりトガさんと槍無さんが死んで面白いですか?」
死柄木「…まあ面白いが…困るな」
黒霧「そうでしょう?もう少し別の捉え方で面白い命令を出しましょう」
優無「次言ったら殺すからね」プンプン
死柄木「ちっ、わかったよ…」
荼毘「ブラコンだな…」
No.71 波乱のレセプションパーティー
更に向こうへ!Plus Ultra!!