いつかの明日へ、【ヒーロー】は助け合いでしょ   作:しょくんだよ

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加勢と仲間と真意


いやぁ、だいぶ遅れてしまい申し訳ございません。
盆に入ってから色々と忙しかったもので…泣



No.75 到達と真意

 

飯田達が食い止めている間、緑谷達は通路を駆け抜けていた。すると、サーバールームから大きな衝撃音が耳に入ってくる。

 

「!?」

 

思わず振り返って立ち止まる緑谷。だが後から走ってきた麗日が声を上げた。

 

「デク君止まっちゃダメだ!ここでウチらまで捕まったら、飯田君達が残った意味がなくなる!」

 

その声に緑谷は「う、うん!」と頷き、再び駆け出す。

 

「(皆んな、どうか無事で…!)」

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

その頃、サーバールームでは警備マシンの圧倒的な数に苦戦していた。先程まで警備マシンを蹴散らしていた飯田のマフラーが掠れた音を立て始める。

 

「エンスト!?」

 

限界を超えてしまい、エンジンが止まってしまうと飯田は悔しそうに顔を顰める。その停止を察したかのように警備マシンは一斉に飯田に襲いかかった。

 

「うああああっ!!」

 

「飯田!」

 

警備マシンに押し潰される飯田に気付いた耳郎が、なんとかしようとトリモチ弾を撃ち込む。しかし、多数相手には連続で撃たなければ意味がない。

 

「ヤオモモ、弾を!…ヤオモモ!?」

 

振り返った耳郎は目を見開く。八百万は息切れを起こして今にも倒れそうになっていた。

 

「創造の…限界が……」

 

連続で創造をし続け、脂質をエネルギーに変えていたその体がついに底を尽きていたのだ。ふらつく八百万を慌てて抱き抱える耳郎。そして、もぎもぎを投げすぎた峰田も頭から流血を起こして今にも倒れそうになっていた。

 

「オ、オイラも、頭皮の限界だ……」

 

警備マシン達は峰田達にワイヤーを伸ばし、拘束した。

 

 

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★☆

 

 

 

「ハハッ、ガキが調子に乗るからだ。逃げた3人は?」

 

管理室から愉快そうに笑うソキル。だが直ぐに真顔になり、この場にいない緑谷達の事を眼鏡の男に聞く。

 

「今探してる」

 

「チッ、イライラさせやがる……!」

 

冷静に答える眼鏡の男にソキルは爪を噛みながらその苛立ちを募らせていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★☆

 

 

サーバールームを出た後、180階まで駆け上がっていた緑谷達はメリッサの案内で、ある扉の前まで来た。緑谷はその扉を破壊すると、途端に風が吹き込んでくる。緑谷はメリッサの後を続くように駆け出し、周囲を見渡しながら驚いていた。

 

「こ、ここは……」

 

「風力発電システムよ」

 

タワーの空洞部分に作られた風力発電エリア。

壁はなく、むき出しになっているフロアで夜のI・アイランドの街並みを見下ろすように中央エレベーターが通っている柱があり、その周りに囲むように並んでいる大きなプロペラが海からくる潮風で回転し動いていた。

 

「どうしてここに…?」

 

「タワーの中を登れば警備マシンが待ち構えているはず。だからここから一気に上層部へ向かうの。あの非常口まで行ければ…!」

 

緑谷の問いにメリッサは答える。およそ20階分の高さはあるような発電エリアの天井に小さな非常口の扉が見える。

 

「あんなところまで…!?」

 

「お茶子さんの触れたものを無重力にする〝個性〟なら、それができる…!」

 

「……うん、任せて!メリッサさん、デク君に捕まってて!」

 

メリッサの言葉に麗日は強く頷く。「はいっ!」と後ろからメリッサは緑谷に捕まると麗日は「いくよ」と2人の体に肉球で触れる。すると、2人の体は無重力状態となり、麗日はメリッサの腰を持つと力一杯真上へと放り投げるように押し出した。同時に緑谷も深く踏み込んでいた足を蹴り出し、勢いよくジャンプする。

 

「いっけー!」

 

ふわふわとエレベーターに沿って上昇していく緑谷達を見て麗日は「…よし!」と両手をいつでも合わせれるようにスタンバイする。2人が非常口についたら〝個性〟を解除するためだ。

だがその時、少し離れた所で音がする。麗日は振り返るとそこにはぞろぞろと入ってきた警備マシン達だった。

 

「そんな…!」

 

上昇する中、緑谷とメリッサはそれに気づいて叫ぶ。

 

「麗日さん!」

 

「〝個性〟を解除して逃げて!」

 

だが麗日は逃げる事なく警備マシンと向き合った。

 

「できひん!そんな事したら、皆を助けられなくなる!!」

 

「お茶子さん!」

 

多数の警備マシン相手に生身で戦おうと麗日は身構える。〝個性〟を使わずして立ち向かおうとする麗日の姿に緑谷の胸が締め付けられる。しかし、ここで立ち止まるわけにはいかない。麗日の想いを、他の皆んなの想いを託されて今は最上階に向かっているのだから。

 

「(早く…!早く…!早く……!!)」

 

緑谷の焦りが募る中、麗日に迫る警備マシン達が一斉に飛びかかろうとしていた。だがその時、横から飛び出してきた爆豪が不敵な笑みを浮かべながら警備マシンを爆破した。驚く麗日と緑谷、そしてメリッサ。

 

「かっちゃん!!」

 

だがその後に波のように迫り来る警備マシン。すると、今度は氷結が生成され、警備マシンは飲み込まれていく。

 

「轟君に切島君!!」

 

続いて駆けつけてきたのは氷結攻撃を繰り出す轟と切島だった。驚いている麗日をかばうように前に立ち、口を動かした。

 

「怪我はねぇか、麗日」

 

「うん、平気!デク君達が今最上階に向かってる!」

 

「ああ見えてた。ここでこいつらを足止めするぞ!」

 

そう言いながら轟は再び足元から氷結を繰り出し、迫る警備マシンを凍らせる。

 

「俺に命令すんじゃねぇ!!」

 

爆豪も呼応するように吠え、警備マシンを次々と爆破し、破壊していく。その後ろで硬化した切島が警備マシンを薙ぎ倒しながら笑った。

 

「でもコンビネーションはいいんだな!」

 

切島の言葉に「誰が!」と言いながら爆豪は警備マシンを破壊していく。頼もしい仲間達が集まり、緑谷とメリッサはホッとする。

 

「ありがとう、みん…なぁあああ!!?」

 

「きゃああっ!」

 

突如、突風が巻き起こり、無重力状態の緑谷とメリッサはタワーの外へと吹き飛ばされそうになる。

 

「デク君、メリッサさん!!」

 

どんどん離されていく2人に気付いた麗日は叫ぶと同時に轟は正装の上着を脱ぎ捨てて駆け出すと、交戦していた爆豪へと叫んだ。

 

「爆豪!プロペラを緑谷に向けろ!」

 

「だから命令すんじゃねぇ!」

 

そう言い返しながらも爆豪は直ぐに爆破でプロペラの向きを変える。背面を破壊されたプロペラが上を向いたのを確認した轟は下あたりへと移動し、左腕から炎を放つ。温められた空気が、勢いよく舞い上がり彼らはグングン上昇する。

 

「ぐうううう!?」

 

唇が捲れるほどの直撃に、飛ばされていた緑谷達は気流によって戻ってきた。

 

「熱風!」

 

麗日は顔を輝かせる。切島も戦いながら轟の機転に「すげえ!」と素直に感心していた。

 

「轟君、ありがとう…!」

 

「っ!デク君!壁にぶつかる!」

 

メリッサの言葉に緑谷はハッとする。熱風の勢いで加速し続けて、いつの間にか発電エリアの天井に迫っていた。

 

「くっ!しっかり捕まってて!」

 

「はい!」とメリッサは腕にギュッと力を入れる。確認した緑谷は力を溜め込み、迫る非常口に向かって放った。

 

「〝ワン・フォー・オール、フルカウル!デトロイト・SMAAASH!!〟」

 

突き出す拳の衝撃で非常口の扉は破壊される。その行方を注視していた麗日は緑谷達が非常口の中へと入ったのを確認して指を合わせた。

 

「タワーに入った!解除!」

 

非常口を超え、最上階へと続く階段で浮いた緑谷達の無重力が解かれ、2人は落下した。

 

「うわあああ!」

 

「きゃあああ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★☆

 

 

管理室の眼鏡の男から、警備マシンの追手を潜り抜けた緑谷達の報告を聞いたウォルフラムは、僅かに顔を顰めた。

 

「ソキル達を向かわせろ」

 

『はい!』

 

「俺が行くまで制御ルームは死守しろ」

 

指示を出したウォルフラムはレセプション会場を出て行く。その後ろを見ながら、オールマイトは身体中から少しずつ噴き出す蒸気を必死に抑えていた。

 

「(堪えろ…!堪えるんだ…!オールマイト…!彼らならばやってくれる…!必ず…!!)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★☆

 

 

 

「セイヤーー!!」

 

「ハッ!!」

 

サーバールームでは、警備マシン達に拘束されなす術がないままでいた飯田達だったが、無事に合流したアンク、そしてオーズとバースにより、大量に湧き出ていた警備マシンは全て薙ぎ倒され動きが止まる。山積みとなった警備マシンを背に変身を解いた火野と後藤は拘束された飯田達を解放していた。

 

「皆んな、怪我はない?」

 

「あぁ、ありがとう火野君」

 

「た、助かった〜…」

 

差し伸ばした手を掴み起き上がりながら飯田がお礼を言い、峰田は流血した頭を手で押さえていた。その後ろでは「ウェ〜イ…」と上鳴が親指を立てている。後藤も同じように八百万と耳郎を解放していると2人は「ありがとう」と言って八百万は口を動かした。

 

「御三方もご無事でしたのね…」

 

「いや、運が良かっただけだ」

 

八百万の言葉に後藤は怪我をしている皆を見渡しながらそう答える。学生の身分とは言え(ヴィラン)と渡り合えた時点で命を懸けていた状態だ。全員ヒーローを目指している者として勝てたと言えてもおかしくはないだろう。すると、アンクが鼻を鳴らしてサーバールームの天井を見遣る。

 

「流石にヤミーの気配はないか…。もうこのタワーに用はないな」

 

「そうはいかない…。緑谷君達の後を追わないと」

 

火野はそう言って歩き出そうとすると千鳥足となってフラついていた。それを見た耳郎は駆け寄る。

 

「火野、大丈夫?」

 

「ちょっと無茶しすぎたけど、大丈夫。…まだ動けるよっ」

 

「無理は良くないぞ火野君」

 

笑顔を見せる火野だが、その額からは汗が滲み出ていた。それを見逃さなかった飯田はそう言うと火野は首を振って口を開く。

 

「でも、緑達君達が必死で頑張って最上階に向かっている…。早く合流してタワーのシステムを戻さないと…」

 

「で、でもよ、オイラ達も頑張ったぜ…?少し休憩してからでも…」

 

「なら、峰田君達は少し休んでて…。俺は先に行ってるから…」

 

座り込む峰田に火野はそう言ってその重い足を一歩、また一歩と運ぶ。足止め要員として離れていた身だが、最上階へと目指す緑谷達は今も必死に向かっているはず。なら尚更ここで立ち止まっているわけには行かない。火野は持てる気を緩まず、上の階へと通じる階段へ行こうとすると、耳郎が峰田に向かって口を動かした。

 

「ウチはまだ動けるから、火野の言う通り怪我人は休んでなよ。後でまた合流しようっ」

 

「俺もだ、緑谷君達の助力に向かわねば!」

 

「わ、私もまだ、助力くらいなら出来ますわ…!」

 

耳郎に続いて飯田、八百万が立ち上がる。先へ行こうとする火野達を見ておどおどとしていると後藤は息を吐いた。

 

「全く、ヒーロー科の連中は命知らずが多いな…」

 

「お、お前はいかねぇのか…?」

 

行かない素振りを見せるような物言いに峰田は後藤に声を掛けると、後藤はバースバスターにセルメダルを装填して口を開いた。

 

「ここまで来てそうも言ってられないだろ。タワーのシステムを解除して人質となっているヒーロー達を解放するまでは協力すると言ったからな」

 

後藤は峰田にそう言い残して歩き出す。その言葉と後ろ姿を見て峰田は涙目を浮かべていると上鳴が峰田の肩に手を置く。

 

「ウェーイ…!」

 

「上鳴…!」

 

サムズアップをする上鳴。その言葉はどこか「やってやろうぜ」と言わんばかりな表情をしており、峰田は泣きながら笑みを浮かべた。

 

「…へっ、お前そんな面してやがんのに妙にかっこよく見えるじゃねえかよ…!わかったよ…!オイラだって、ハーレムが待ってんだ…!ここで泣き言言ってたら、男が廃るもんな!」

 

峰田はズズッと鼻水を啜る。覚悟を決めた峰田は上鳴と共に火野達の後をついて行く。その火野達の背中を見ていたアンクは前世の記憶を思い返していた。

 

「…全く、どこにいても変わらないなお前は…」

 

自身を犠牲にしても救けようとするその意志は変わらない。それこそが火野映司だ。

 

「………本当に、無茶する男だなぁ」

 

そしてその支えとならんと、アンクは息を吐いて、その足を前に出して火野達の後をついて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★☆

 

 

一方、緑谷達はソキルを筆頭の手下達が立ちはだかっていたがワン・フォー・オールで蹴散らし、最上階である200階の通路へと到達する。目当ての階へと2人だけでたどり着いたので、それだけ危険も大きいだろう。2人は周囲の様子を窺いながら誰もいない事を確認して駆け出す。

 

「メリッサさん、制御ルームの場所はっ?」

 

「中央エレベーターの前よ!」

 

一気に角まで走り、周囲を警戒する。すると入り口が解放されていた。

 

「誰かいる…!」

 

その中の人影に気付き、緑谷達は(ヴィラン)かと身を潜める。恐る恐る見遣るとその人影にメリッサはハッとした。

 

「パパ……?」

 

「本当だ……!」

 

その人影は、保管室で懸命にパネルを操作しているデヴィットだった。

 

「どうして最上階に…?」

 

レセプション会場に居るとばかりに思っていたメリッサは困惑していると、緑谷は口を動かした。

 

(ヴィラン)に連れて来られて、何かされている…?」

 

「っ!救けないと…!」

 

心配に顔が歪めるメリッサに緑谷は「はい!」と頷き、慎重に近づいていった。

 

 

 

 

 

 

☆★☆★☆

 

 

ブロックのようなボックスが壁全体に敷き詰められて天井まで続いてる保管室で、(ヴィラン)達に連れて来られてからデヴィットはずっとプロテクトの解除に勤しんでいた。すると、強張ってた顔がパッと明るくなる。

 

「コードを解除できた、1147ブロックへ!」

 

デヴィットに言われたサムは「は、はい!」と、急いで短い階段を上り、そのボックスが到着される場所へと向かう。「開くぞ」とデヴィットは言うと壁が起動し、目当てのボックスがサムの元へと壁を通して運ばれていく。そして出てきたボックスをサムが取り出し、それを開くと中にはアタッシュケースが入っていた。

 

「やりましたね、博士!」

 

アタッシュケースを開けて、サムは興奮した様子でデヴィットへと向ける。

 

「……!!」

 

その中に入っていた物を見てデヴィットは、安心と喜びの顔を見せて息を吐く。

 

「全て揃ってますっ!」

 

その中身とはデータの入ったケースと、小さめの丸い形のようなものにフックがついている装置だった。何かを決心した表情を浮かべ、それを拳へと伝わったのか強く拳を握るデヴィットは口を動かした。

 

「ああ…、ついに取り戻した。この装置と研究データだけは、誰にも渡さない。渡すものか…!」

 

「プラン通りですね。(ヴィラン)達も上手くやってるみたいです」

 

「ありがとう。彼等を手配してくれた君のお陰だ、サム」

 

サムの声に我に返ったデヴィットが、急いでケースの元へと駆け寄ったその時、小さな強張った声が聞こえた。

 

「……パパ…………?」

 

驚いて振り返ったデヴィットとサム。そこには信じられない顔をしたメリッサと緑谷だった。1番遭遇したくなかった人物だったのかデヴィットは息を飲む。

 

「メ………メリッサ…………!?」

 

「お嬢さん、どうしてここに!?」

 

サムの質問に答える余地もなくメリッサは今にも崩れ落ちそうな足を一歩、また一歩とデヴィットに近づいて行く。

 

「〝手配した〟って…何…?」

 

「………」

 

「もしかしてこの事件……パパが仕組んだの…?」

 

「………」

 

メリッサの質問に、デヴィットは喉に何か詰まったかのように言葉を出さず、何も答えられない。

 

「その装置を手に入れるために…?そうなの、パパ!?」

 

会話の意味が混乱する頭の裏で、それが事実だと告げられていた。必死に問い掛けるメリッサにデヴィットはギュッと目を閉じた。愛娘の非難を受ける為なのだろう。

 

「…………そうだ」

 

デヴィットの言葉にメリッサは口を動かす。

 

「なんで……どうして!?」

 

信じられない発言に食い下がるメリッサ。すると、サムが代わりに口を開いた。

 

「博士は奪われたものを取り返しただけです!機械的に〝個性〟を増幅させる、この画期的な発明を…!」

 

ケースを見せながらなんとか説得しようとするサムに、メリッサと緑谷は疑問を抱く。

 

「っ!?〝個性〟の増幅……!?」

 

「ええ、まだ試作段階ですが、この装置を使えば薬品などとは違い人体に影響を与えず〝個性〟を増幅させる事が出来ます。しかし、この発明と研究データはスポンサーによって没収、研究そのものも凍結させられた。これが世界に公表されれば、超人社会の構造が激変する。それを恐れた各国政府が、圧力を掛けてきたのです。だから博士は、私が考えに承諾してくれて今日この日、(ヴィラン)が暴れている隙にこの装置を取り戻そうと…!」

 

「そんな………嘘でしょ、パパ…」

 

サムの説明にメリッサの声が震える。全て、この騒動全てがデヴィット達が仕組んだ事を聞かされた今も、メリッサは信じられなかった。

 

「嘘だと言って……!」

 

「嘘ではない」

 

遮るように言うデヴィットにメリッサはそれでも口を開く。

 

「こんなのおかしいわ…!」

 

「メリッサさん…」

 

悲しみと怒りが籠ったその声に緑谷の顔は曇っていた。そして、彼女は必死に叫ぶ。

 

「私の知っているパパは、絶対そんな事しない!なのに……どうして!…どうして!?」

 

心が傷付いていく娘を目の当たりにしたデヴィットは、苦し気に顔を歪ませ躊躇していた声を振り絞った。

 

「……オールマイトの為だ……」

 

その名前を聞いて緑谷はハッとする。

 

「お前達は知らないだろうが、彼の〝個性〟は消えかかっている…」

 

「!!」

 

デヴィットの発言にかなり目を見開き、驚愕する緑谷だが、デヴィットはそれに気付く事なく、立ち尽くすメリッサを見遣る。

 

「だが、私の装置があれば、元に戻せる!いや、それ以上の能力を彼に与える事ができる。No.1ヒーローが……平和の象徴が……再び光を取り戻す事ができる!また多くの人達を、救ける事が出来るんだ!!」

 

平和の為、世界の為、そして出会ったあの日から憧れてた親友の為に力を尽くしたい。デヴィットの原動力はそれが全てだった。

 

「(僕が、ワン・フォー・オールを受け継いだから…………オールマイトの力が失われている事を憂いて、博士は…)」

 

譲渡してもらいその力が無くなってきているオールマイトにデヴィットはなんとかしようと必死になっている。そんな彼を見ていた緑谷は体の奥が冷えた感覚に襲われる。デヴィットはサムの元へと駆け寄り、ケースを奪うとメリッサ達に向かって口を動かした。

 

「頼む!オールマイトにこの装置を渡させてくれ!もう作り直してる時間は無いんだ!その後でなら、私はどんな罰でも受ける覚悟もーーー」

「命懸けだった……!!」

 

デヴィットの言葉を遮り、俯いてたメリッサがバッと顔を上げる。怒りを隠そうとせず、先程、ソキルに切られ、包帯代わりにしていたハンカチを乱暴に引き剥がし、痛々しい傷口をデヴィットに向け叫んだ。

 

「捕われた人達を救けようと!デク君、エイジ君にアンク君!クラスメイトの皆が、ここに来るまでどんな目に遭ったと思ってるの!?」

 

皆んな自分の限界を超え、戦闘では役立てないメリッサをここまで運んでくれた。その事を思うとメリッサは悔しく、情けなかった。激高するメリッサにデヴィットは困惑する。

 

「…ど…どういう事だ…!?(ヴィラン)は偽物、全ては芝居のはず…!?」

 

デヴィットはサムへと振り返る。サムは顔を徐ろに逸らすと入り口から高圧的な声が聞こえてきた。

 

「もちろん芝居をしてたぜ。偽物(ヴィラン)という芝居をな」

 

眼鏡の男を連れて現れるウォルフラムに緑谷はハッとする。

 

「あいつは!!」

 

レセプション会場にいた鉄の仮面男だと直ぐに認識した緑谷はワン・フォー・オールの力を全身に行き渡らせる。だが、その前にウォルフラムの鉄製の扉に触れていた手が光った。直後、メキメキと外れたかと思うや否や、まるで生き物のように高速で襲い掛かる。鉄に絡めとられながら壁にぶつけられ、緑谷は全身を鉄で壁に張り付けられた。

 

「デク君!」

 

メリッサは慌てて駆け寄る。

 

「!!(……金属を操る〝個性〟か…!?)」

 

口元も覆われて緑谷は声も出せない。

 

「少し大人しくしていろ。サム、装置は?」

 

外そうともがく緑谷にウォルフラムはそう言いながらサムを見遣る。するとサムは慌てた様子でデヴィットからケースを乱暴に奪い取り、小走りで「こ、ここに…」とウォルフラムへと駆け寄る。

 

「サム……?」

 

何が起きたのか分からず、唖然とするデヴィット。だがその顔は徐々に驚愕した。

 

「まさか…、最初から、装置を(ヴィラン)に渡すつもりで………」

 

その声にサムはピクリと反応し、振り返る。

 

「だ、騙したのは、貴方ですよ。長年貴方に仕えてきたというのに、あっさりと研究は凍結、手に入れる筈だった栄誉、名声………全て、無くなってしまった……せめてお金くらい貰わないと、割が合いません……!」

 

責める声でケースを大事そうに抱きしめながらサムは弱々しく叫ぶ。その目には涙が浮かんでいた。心血注いだ研究を奪われた事で追い詰められたのはデヴィットだけではなかったのだ。

 

「……!」

 

長年の仲間の裏切りにデヴィットは言葉を失う。否、何も言えなかった。この計画を立てさせてしまったのは自分のせいなのだ。自分がこの計画に乗らなければ今回の事は何も起こらなかった。自分を裏切ったのは、自分の弱さなのだ。

 

「約束の謝礼だ」

 

そう声が掛かり、サムは振り返る。だがそこに向けられていたのはウォルフラムの左手に持つ拳銃の銃口だった。そして、挨拶みたく気軽に放たれた銃弾はサムの肩に命中する。

 

「う、わぁ!!」

 

「!!」

 

肩は貫かれ血がドバッと飛び散り、倒れ込むサム。デヴィットは驚愕し、緑谷を救出しようとしていたメリッサも「サムさん!」と思わず口元を両手で押さえる。

 

「な、何故…!?約束が違う!」

 

激痛と恐怖に混乱するサムに向い、ウォルフラムは白を切るような物言いで銃口を向けて口を開いた。

 

「約束?忘れたなぁ。謝礼はコレだよ」

 

そして、躊躇せずにもう用済みとなったサムに向けた銃のトリガーを引く。銃声の音が響く中、ケースに血が飛び散った。

 

「!!」

 

目の前の光景に緑谷は目を疑った。サムを庇い、デヴィットは身代わりとなって弾を食らったのだ。父が目の前で撃たれたのを目視したメリッサは全身の毛が逆立つように短い悲鳴を上げる。

 

「……!!」

 

「博士…どうして…!?」

 

肩の少し下部からどんどん血が溢れてくる。呆然とするサムにデヴィットは口を動かした。

 

「に、逃げろ……!」

 

「パパぁ!!」

 

「来るな!!」

 

駆け寄って来たメリッサに向かってデヴィットは叫ぶ。だがその目の前でウォルフラムがメリッサを容赦なく殴り飛ばした。

 

「あぁっ!!」

 

「メリッサ!」

 

床に転がるメリッサにデヴィットは悲痛な声を上げる。緑谷は鉄の拘束から抜け出そうと必死にもがいていたその前で、ウォルフラムが横たわるデヴィットの背中を踏みつけ、その足に力を込めながら口を動かした。

 

「がはっ…!」

 

「今更ヒーロー気取りか?無駄だ。どんな理由があろうと、あんたは悪事に手を染めた。俺達が偽物だろうが本物だろうが、あんたが犯した罪は消えない。俺達と同類さ。あんたはもう科学者でいる事も、研究を続ける事も出来やしない。(ヴィラン)の闇に落ちていく一方さ。フハハハハ!!」

 

世界の為、親友の為。自分で崩してしまった夢の重たさと犠牲にデヴィットは圧し潰される。そんな父親を見ていたメリッサは目の前で壊れていく様が目に入り、涙を止められなかった。

 

「今のあんたに出来る事は、俺の下でその装置を量産する事ぐらいだ」

 

全てがどうでもよくなったように脱力したデヴィットを、ウォルフラムは愉快そうに襟首を掴み持ち上げると、銃のグリップを後ろ首に向かって殴り、気絶させる。そして眼鏡の男に「おい、連れて行け」と指示をする。

 

「返して…!」

 

ウォルフラムが振り返ると、床を這いずりながらメリッサは叫んだ。

 

「パパを返して…!!」

 

怒りか恐怖なのか震えるメリッサを見てウォルフラムは下衆な顔を浮かべ、メリッサへと銃口を向ける。

 

「そうだなぁ、博士の未練は……断ち切っておかないとなぁ」

 

「や゛め゛ろ゛ぉおお!!!」

 

ウォルフラムがトリガーを引こうとした瞬間、緑谷は渾身の力を出して拘束を無理矢理外しながら吠えた。直後、壁を踏み台として跳ぶとウォルフラムへと「SMAAASH!!」と突っ込んでいく。

弾丸の如く向かってくる緑谷にウォルフラムは床の鉄板に触れると、鉄板は防壁となって聳え立ち、緑谷の拳が鉄板にめり込んだ。すると、緑谷はバッとメリッサを見遣る。

 

「(メリッサさん!博士は救けます!だから皆んなを!)」

 

「…!!」

 

その想いを強く受け止めたメリッサは涙を振り切りもたつく足を懸命に動かせて入り口へと駆け出す。

 

「追え!逃すな!」

 

「はい!」

 

それに気付いたウォルフラムは眼鏡の男に指示を出して眼鏡の男は慌ててメリッサの後を追う。

緑谷はフォローに回ろうとその眼鏡の男を追おうとするが、ウォルフラムはそうはさせまいと鉄板の壁を目の前に作り出す。緑谷は壁へと避けようと動いた瞬間、ウォルフラムは触れていた数本の鉄パイプを緑谷に向けて飛ばした。

 

「がっ!?」

 

「よく飛び回る小蝿だ、大人しくしてろ!」

 

手足に巻きつくように鉄パイプは絡みつき、縛られた緑谷は落下して床に叩きつけられる。「やれ!」とウォルフラムは眼鏡の男に指示を出す。眼鏡の男は懸命に走るメリッサの後ろ姿に銃口を向ける。

 

「メリッサさん!!」

 

緑谷は早く、早くと必死に拘束を外そうとする。

そして、眼鏡の男がトリガーを引こうとしたその瞬間だった。

 

 

「ハァッ!!」

 

「ぐあっ!?」

 

眼鏡の男は何かに蹴飛ばされた衝撃が顔に走り、宙へと飛ばされると、ウォルフラムの付近へと転がる。何事だとウォルフラムはその場を振り向くと、そこには背中から美しい赤い翼を羽ばたかせていた火野の体に憑依したアンクが立っていた。それを見ていた緑谷は目を見開いて喜びの声を上げる。

 

「火野君!アンク君!」

 

「フン!やっとボスの面を見る事が出来たなぁ」

 

今この現状、これ以上の頼もしい助っ人がいるのだろうか。緑谷は火野の中からアンクが出て来て2人になったのを見ながらそう実感していた。火野は「あの男殺してないよな?」とアンクに言うと「知るか」と単調に返すアンクに火野は息を吐きながら、拘束されている緑谷に声をかける。

 

「ごめん、待たせたね緑谷君!」

 

「火野君…!いや、本当にベストタイミングだよ…!」

 

「ハッ、どーでもいいだろ再会の挨拶なんざ。狙いはヤツだ」

 

2人の再会を水指すようにアンクは割入る。だが悠長に会話をしている暇はないのは火野も分かっている。オーズドライバーを腰に宛い装着させて、不快そうにこちらを睨み付けるウォルフラムへと火野とアンクは身構えていたのだった。

 




No.76 2人の英雄

更に向こうへ!Plus Ultra!!
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