いつかの明日へ、【ヒーロー】は助け合いでしょ   作:しょくんだよ

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決戦とヒーローと更に向こうへ!!


No.76 2人の英雄

 

「ヒーローのガキ共が…調子に乗るなぁ!!」

 

ウォルフラムの怒号と共に天井から伸びた鉄柱が襲い掛かる。火野は後ろにいるアンクへと手を伸ばして「アンク!」と叫ぶと、アンクはタトバのメダルを3枚投げ渡す。火野は受け取るが鉄柱がすぐ上まで迫って来ており、間に合わないと思った火野は避けようとする。だが、それをカバーするかのように緑谷が腕を上げて受け止めたのだ。

 

「うぐっ!」

 

「緑谷君!」

 

「大…丈夫!早く変身を!」

 

必死に受け止める緑谷だがあまりの威力に顔が歪む。火野は時間を無駄にはしまいと「わかった!」と頷き、コアメダルを3枚ドライバーへと嵌め込み、直ぐにオースキャナーでスキャンした。

 

「変身!」

 

 

タカ!

 

トラ!

 

バッタ!

 

 

 

 

 

コンボソングが鳴り響き、火野はオーズ〝タトバコンボ〟へと姿を変えると、オーズは直ぐに緑谷が受け止めている鉄柱へと向かってバッタレッグに力を溜め込み、勢いよく蹴り飛ばした。

 

「ハァア!!」

 

直撃した鉄柱は砕かれ、粉砕されると緑谷は「ありがとう!」とお礼を言って全身にワン・フォー・オールの力を巡らせて構える。ウォルフラムは不快そうに舌打ちをすると、突然タワー内の照明が復旧した。閉じられていた各フロアの壁も次々と開いていく。

 

「チッ、警備システムを戻したのか!余計な真似を!!」

 

保管室でもついた明かりにウォルフラムは苛立ち気に言うと鉄板の床に触れる。緑谷とオーズの立つサイドから鉄の壁が迫り上がると2人は背を向き合って身構えた。だが、少し離れていたアンクはハッとなる。

 

「っ!映司!上だ!」

 

アンクの呼び掛けにハッとなり緑谷とオーズは頭上を見上げると鉄柱が再び襲いかかってきていたのだ。対処に遅れた2人は間に合わず鉄柱とサイドに聳え立つ鉄の壁に挟まれてしまう。

 

「「うああああっ!!」」

 

「映司!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

「!?なんだ…!」

 

風力発電エリアで、突如停止した警備マシン達に爆豪が唖然とする。懸命に応戦していたがその数に押されて崖っぷちまで追いやられていた。止まった事を確認した麗日は同じく唖然として呟いていた。

 

「止まった…?」

 

 

 

☆★☆★☆

 

 

一方、先に行った火野とアンクを除いた飯田達は最上階へと続く階段で照明がついていくのを確認して飯田と耳郎はパッと顔を輝かせていた。

 

「緑谷君達、やってくれたか!」

 

「うん!流石火野…!」

 

「これならエレベーターも問題なく使える筈ですわ!」

 

「よし、先を急ぐぞ!」

 

八百万の言葉に後藤は頷き、次のフロアにあるエレベーターへと向かう為、一同は駆け出した。

そして島内でも、見張りのように配置されていた警備マシン達が、正常に戻り次々と撤収していた。島内放送がI・アイランド全体に響き渡る。

 

『I・アイランドの警備システムは、通常モードになりました。I・アイランドの警備システムは、通常モードになりました』

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

レセプション会場では照明がついたあと、直ぐにプロヒーロー達の拘束が解除された。

 

「何だいきなり!?」

 

「どうなって…ガッ!?」

 

当然の事に動揺する(ヴィラン)達に自由になったプロヒーロー達が襲い掛かった。

 

「くそっ!ぐぅ!」

 

逃げ出す(ヴィラン)達を、プロヒーロー達はあっという間に拘束する。軟禁されていた参加者達が、解放してくれたヒーロー達に歓声を上げた。オールマイトは体から微かに蒸気を上げながらも立ち上がり、笑顔を浮かべた。

 

「(やり遂げてくれたか、皆んな!)」

 

そして、自分の果たすべき事をする為に、急いで駆け出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★☆

 

 

気を失ったままのデヴィットを肩に担ぎ、片手でアタッシュケースを持ちながら、ウォルフラムはオーズに蹴られた顔を押さえながら歩く眼鏡の男と共に保管室を後にした。デヴィットの両手両足には金属で拘束されている。

 

「ヘリは?」

 

「到着しています」

 

「脱出するぞ」

 

「は、はい」と慌てて眼鏡の男がウォルフラムの後を着いて行った。

 

 

☆★☆

 

その間、保管室では金属の鉄柱と壁に埋もれていた緑谷とオーズをアンクが顔を歪めながらグリード化した右腕で鉄柱をどかしていく。2人の顔が見えたのを確認したアンクは手を止めて少し離れると彼らは自力で鉄屑の中から這い上がった。

 

「あ、ありがとうアンク…」

 

「フン、奴は逃げたぞ」

 

「分かって、る…」

 

オーズはそう言って緑谷に手を伸ばし、緑谷は手を掴むと引っ張って引き上げる。直ぐに後を追おうとする2人だが、2人共膝をついて倒れそうになる。それを見ていたアンクは舌打ちをすると火野に声を掛けた。

 

「ここに来るまでオーズの力を使い過ぎたな」

 

「そう…みたいだね…。でも、ここで倒れる訳には行かない…!絶対、救けるんだ…!」

 

身体能力が強化されると言えど使い過ぎは疲労も増加する為鉄柱を動かすのもやっとな素振りを見せるオーズ。いつ倒れてもおかしくない状態の筈なのに、オーズは息切れを起こしながらも何とか立ち上がる。恐らく人を救けたいと思う一心で体からアドレナリンが出ているのだろう。一方緑谷はポツポツと続いている血痕の後があった。デヴィットの血だと直ぐに分かり、緑谷は自分に喝を入れるように両手で頬を叩き、奮い立たせた。

 

「僕も、大丈夫…!行こう…!火野君…!」

 

「うん…!」

 

2人の体は既に限界を超えている。だが敵はもう目と鼻の先にいる。オールマイトが来るまでの時間稼ぎくらいは出来ると信じ、2人は重い足腰を上げて駆け出す。そして、アンクもオーズをどこか心配そうな顔をして見つめ、その後をついて行った。

 

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★☆

 

オールマイトは最上階へと通路を走っていると、後ろポケットに入れていた携帯から着信音が鳴る。相手はメリッサからだ。

 

「どうした、メリッサ!?」

 

『マイトおじさま!パパが(ヴィラン)に連れ去られて、デク君やエイジ君達があとを追って…!』

 

制御ルームに映っているのはデヴィットが連れ去る(ヴィラン)達。そして別のモニターには痛そうにしながらも必死に後を追う緑谷と火野、そしてアンクが映っていた。ふと、オールマイトは気付いた。他のモニターを見る限りヤミーの姿はどこにも映っておらず、テストルームで散らばっているセルメダルが目に入る。恐らく緑谷達が倒したのだろうと推測したオールマイトはグッと拳に力を入れる。危険を顧みず市民を守る為にどれだけ子供達が頑張ったことかと。そして、泣きそうに切羽詰まったメリッサの声に、オールマイトは体に力がこもり、蒸気が消える。

 

「大丈夫!私が行く!」

 

その顔は覚悟に満ちていた。

 

 

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★☆

 

 

屋上へリポートでは、手下のパイロットがウォルフラム達を出迎えていた。しかし、2人しかいない事にパイロットは疑問を口にする。

 

「ボス、他の連中は?」

 

「警備システムが再起動しきる前に出るぞ」

 

ウォルフラムはそれに答えず、ヘリへと歩きながら指示を出す。足手まといになる仲間は容赦なく切り捨てるのがウォルフラムのやり方なのだろう。

 

「「は、はい!」」

 

察したパイロットと眼鏡の男は慌てて操縦席へと走った時、ウォルフラムに担がれたデヴィットが意識を取り戻したのか呟く。

 

「私を……殺せ……」

 

「もう少しだけ罪を重ねよう。その後で望みを叶えてやる。出せ」

 

そう言うとウォルフラムは起動させたヘリの後部へデヴィットを乱暴に降ろし、ケースを置く。ウォルフラムも乗り込もうとしたその時、炎の球がわざと外すかのように飛んできて辺りは小さな爆発を引き起こす。

 

「何だ…?」

 

「死にたくなければヘリから降りろ、次は外さないぞ」

 

何事かとウォルフラムは振り返るとグリード化した右腕から白い煙が昇るアンクが威嚇する。その後ろには立っているのも辛そうにする緑谷とオーズが叫ぶ。

 

「待て!」

 

「博士を返せ…!」

 

やってきた緑谷達にデヴィットは目を見開いて驚く。

 

「成る程、悪事を犯したこの男を捕らえにきたのか?」

 

バカにするように笑うウォルフラムに緑谷は「違う!」と声を上げ、ワン・フォー・オールを全身に巡らせてバッと飛び出す。同時にオーズも駆け出した。

 

「僕は博士を救けに来たんだ!」

 

「そして!お前をここで捕まえる!」

 

「ガキが図に乗るな!犯罪者を救けてなんになる!?」

 

ウォルフラムがへリポートの床に手を当てると、向かって来る緑谷とオーズに鉄柱が襲う。そしてその後ろにいたアンクにもだった。

 

「ハァッ!!」

 

オーズは緑谷の前に先走ると鉄柱をトラクローで引き裂く。緑谷はその場から跳ぶと散らばった鉄柱を緑谷は踏み台として蹴り込み、ジャンプしてウォルフラムへと突っ込んでいく。

 

「僕は皆んなを救ける!博士も救ける!!」

 

「お前、何言ってんだァ!?」

 

「うるせぇ!ヒーローはそうするんだ!困ってる人を救けるんだ!!」

 

感情が昂り汚い口調を吐きながら緑谷は息もつかせぬ程の鉄柱を掻い潜り突っ込む。オーズも後に続くよう駆け出したその時、ウォルフラムはニヤリと不敵な笑みを浮かべた。

 

「どうやって!?」

 

「「!!」」

 

緑谷とオーズの目は大きく見開く。ウォルフラムは後ろのデヴィットに銃口を向けていた。鉄柱から退けたアンクは止まっている2人を見て不機嫌そうに舌打ちをすると右腕を突き出して攻撃しようとする。

 

「っ!アンク待って!」

 

「あぁ!?」

 

見境なしに攻撃しようとするアンクにハッと気付き、オーズは声を上げる。すると、弱々しくデヴィットが苦しげに叫んだ。

 

「私はいい……逃げろ…!」

 

銃を向けられてはこちらも動きようがない。増してやウォルフラムの視界に緑谷達が立っている。隙を作ろうにもどうする事も出来ない状況だ。緑谷とオーズは悔し気に身動き取れず警戒態勢に入るとふてぶてしくウォルフラムは笑った。

 

「全くヒーローってのは不自由だよなぁ!たったこれだけで身動きが取れなくなる!」

 

動けない緑谷、オーズ、そしてアンクに向かって鉄柱が襲い掛かる。もろに衝撃を食らった3人は宙に浮くとウォルフラムはすかさず、へリポートの地面、そして背後から出て来た鉄柱との間に挟まれ、押し潰された。間を置かずに再度下から飛び出た鉄柱が3人を突き上げる。

 

「ガハッ!」

 

「うわぁあ!?」

 

「うぐ!!」

 

3人は地面に落下する。緑谷は口から血を吐き出していた。

 

「どっちにしろ、利口な生き方じゃない。出せ」

 

そう吐き捨て、ウォルフラムはヘリへと乗り込む。

浮き上がり、飛び立つヘリ。緑谷は何とか立ちあがろうとするが体に力が入らないのか膝をつく。

 

「緑谷君…!?…ぐっ…!」

 

倒れそうになる緑谷に声を掛け、オーズは痛む体に耐えきれず声を漏らす。2人はとうに限界を超えていた。すると、アンクがよろけながら立ち上がると背中から紅い翼を出して目一杯広げる。

 

「あんの野郎…!!」

 

「っ!そうか…!アンク君なら…飛んで捕まえれる…!あいつは手で触れないと〝個性〟は発動出来ない筈…!」

 

「アンク!」

 

緑谷の言葉にハッとなったオーズはアンクに呼び掛けると「俺に命令するな!」と吠えてその場から飛び立った。攻撃を止められた挙句にウォルフラムに攻撃されたのが相当苛立ったのだろう。

アンクの飛行速度は素早く、あっという間にヘリの真横へと飛翔した。それを見たウォルフラムは感心そうに口を開いた。

 

「ほぉ、空を飛ぶ〝個性〟か?」

 

「いくら空に逃げようが俺には関係ない!相手が悪かったな!」

 

アンクはそう言って右腕を突き出し炎を出そうとした。が、ウォルフラムはニヤリと不敵に笑い座席の下にあった鉄パイプに触れた。

 

「じゃあその台詞そっくり返してやるよ!」

 

「!?」

 

直後、鉄パイプがヘリから飛び出してアンクに襲い掛かる。間一髪でアンクは避けるがその避けた方向に別の鉄パイプが飛んで来てアンクに直撃する。

 

「がっ!?うわぁっ!!」

 

「っ!アンクっ!!」

 

空中でもろに直撃したアンクはバランスを崩し、そのままへリポートの地面まで落下して激突する。オーズは叫び駆け寄ると、抉れた地面で苦しそうにアンクはもがいていた。すると、出入り口からメリッサが姿を現し、負傷している3人を見て「皆んな!」と慌てて駆け寄る。

 

「判断を見誤ったな。何も対策無しにヘリに乗り込むと思うか?」

 

「ぐ…アンク君…!」

 

「お前は大人しく寝ていろ」

 

起き上がるデヴィットにウォルフラムはヘリの壁に激しく叩きつけられ、デヴィットは倒れ込む。どんどん上昇していくヘリ。アンク落下した衝撃で凹んでいた場所で緑谷は悔しそうにヘリに向かって叫んだ。

 

「博士!!」

 

「…!アンク!お前のメダルを貸し…ぐっ!?」

 

「エイジ君!」

 

オーズは再びタジャドルに変身しようとメダルを催促する。が、手を伸ばした瞬間激痛が体に走り、オーズは膝をつく。メリッサが心配そうに近寄ると痛みに耐えながら上半身だけ起き上がらせたアンクがオーズの体を見て口を動かす。

 

「馬鹿…が…!お前もボロボロだろ…!」

 

「でも!博士が…!!」

 

「ちくしょう…!博士を…返せぇ!!」

 

理不尽に人を襲う(ヴィラン)への怒りと己の弱さが心をぐちゃぐちゃにする。緑谷は涙を流しながら叫んだ。

だが、その時。

 

 

「こういう時は笑え!有精卵達よ!」

 

「「「!!」」」

 

その声に、その場に居た4人は大きく目を見開く。

それは世界で一番、頼もしい声だ。

タワーの中から弾丸のように飛び出して来た何かが一気に急上昇し、ヘリの上空で止まった。(ヴィラン)達はその姿をヘリの中から唖然と見上げる。

 

「もう大丈夫!何故って!?私が来た!!」

 

筋骨隆々とした逞しい体で参上したのは我らが誇るNo.1ヒーローだった。

 

「「「オールマイト…!!」」」

 

「…フン」

 

唖然とその名を呼ぶ3人に喜びが湧いていた。アンクも鼻を鳴らしてニヤリと笑みを浮かべている。

 

「親友を返してもらうぞ!(ヴィラン)よ!」

 

オールマイトは叫ぶと、両手を振った反動でヘリに向かって急降下しながら拳を構え突進する。オールマイトの拳が貫通したヘリは爆発し、炎上しながら墜落する途中、空中で大爆発を起こした。

その爆発の中からデヴィットを抱えたオールマイトがへリポートに着地するとデヴィットを床に降ろし、肩を支えながら手足の拘束具を壊した。

 

「パパ!……パパ!」

 

駆け寄ったメリッサにデヴィットは痛みに顔を歪ませながら懸命に口を開いた。

 

「う……メリッサ…」

 

「もう大丈夫だ」

 

オールマイトの言葉にメリッサは涙を浮かべ微笑んだ。その後ろで肩を押さえながら緑谷はホッとする。

 

「よかった…」

 

「フン、No.1とあろう者が…来るのが遅いんだよ」

 

「文句言うなよ。…でも、本当によかった…」

 

もっと早く来ていれば怪我をせずに済んだと言わんばかりにアンクはそっぽを向きながら言うと、オーズはツッコみながらも安堵の息を吐く。そんな3人を優しく見守っていたオールマイトにデヴィットは改まったように口を開いた。

 

「オールマイト…私は…」

 

だが、次の瞬間。

オールマイトが勢いよく吹っ飛ばされた。墜落したヘリの炎の中から突然鉄柱が飛び出してきたのだ。

 

「オールマイト!」

 

転がるオールマイトに緑谷が叫ぶ。駆け寄る間もなく、今度は地面から破るように伸びてきた鉄のコードがデヴィットを巻きつき連れ去る。

 

「がはっ!」

 

「パパァ!!」

 

「博士!」

 

「この攻撃…!」

 

叫ぶメリッサと緑谷、オーズはウォルフラムの仕業と直ぐに認識して振り返ろうとしたが、揺れる足元から轟音と共に割れ始める。何事かと驚く3人の前で、周り、そして地面から湧き出る金属が凄まじい勢いで形を成していく。鉄パイプ、鉄板、鉄柱、ヘリの残骸、そしてデヴィットまでもが()()に取り込まれていった。

うねるパイプは筋肉組織のように蠢き、鉄は熱を持って蠕動する。まるで鉄で出来た生物みたく禍々しい形成物。その頂点にいるのはウォルフラムだった。

 

「サムめ…。オールマイトは〝個性〟が減退して往年の力は無くなったとか言ってたくせに…!」

 

何かに憑かれたような悍しい目をした仮面のないその顔にはデヴィットが開発した〝個性〟増幅装置が取り付けられていた。

 

「あいつ…!博士の……!?」

 

恐らくヘリが墜落する前にその機械をつけたのだろう。オールマイトが咳き込みながら立ち上がる。口元を押さえていた手には血が付いており、体からは限界を知らせるかのように蒸気が上がる。

 

「……!時間が…!」

 

拘束されていた間、ずっとマッスルフォームを維持していたオールマイトにはもう時間が残されていなかった。一撃で倒さんとオールマイトは「往生際が悪いな!」とウォルフラムに向かって飛び掛かった。

 

「〝テキサス・SMAAASH〟!!」

 

渾身の力で拳を叩き込むオールマイト。しかし、それを地面から突き上がっていた鉄の壁に防がれてしまった。しかも衝撃が走るだけで鉄の壁は壊れずに残っている。

 

「なに!?」

 

「!?オールマイト!」

 

「まさか時間が…!?」

 

驚くオールマイト、緑谷にオーズ。いつものオールマイトのパワーならば鉄の壁くらい容易に破壊できた筈だ。

 

「なんだそりゃ!?」

 

馬鹿にした笑みを浮かべながらウォルフラムは手を振り上げると、鉄の壁から鉄柱が伸び、直撃したオールマイトは弾き飛ばされた。勢いよくへリポートの床に叩きつけられると、衝撃でタワー上部が破損する。それと同時にウォルフラムが形作った金属の塊の根元から青い光が脈を打つように走り、広がっていく。メキメキと音を立て、ウォルフラムの元へ吸いつくように引き寄せられていった。セントラルタワーの一部がウォルフラムの一部となっていく。全ての金属を吸いあげて巨大な形成物になっていく姿に、オーズとアンクは愕然と目を見開いていた。それは緑谷も同じく、彼も見上げる事しかできない。

 

「流石デヴィット・シールドの作品。〝個性〟が活性化していくのがわかる……ハハハ、いいぞこれは!いい装置だ!」

 

自分の強大な力に満足そうに笑う間も、崩れかけた金属が更にウォルフラムにへと吸いあげて巨大化していく。瓦礫の中、オールマイトは立ち上がりながら顔を歪めた。

 

「こ、これがデイヴの…」

 

「パパが作った装置の力…」

 

メリッサが呟く。崩壊していくタワーを喰らい尽くす塔を表すような異形の金属の塊。

 

「さぁて、装置の価値を吊り上げる為にも、オールマイトをぶっ倒すデモンストレーションといこうか!」

 

宣言をしたウォルフラムは金属を操りオールマイトを攻撃する。凄まじい勢いで鉄柱が襲いかかって来るのを、オールマイトは寸前で避けながらウォルフラムへと飛び掛かろうとする。しかしウォルフラムは静かに笑い、向かって来るオールマイトを虫でも弾くかのように鉄柱を食らわせる。

増幅された〝個性〟の力にオールマイトは圧し負け、そのまま地面へと埋め込まれ続ける。うねる鉄柱に蹂躙されたへリポートが裂けて衝撃が走り、メリッサが投げ出された。

 

「きゃあああ!」

 

「メリッサさん!」

 

飛び出した緑谷がメリッサを抱えながらオールマイトを振り返る。オーズとアンクも衝撃から身を守ろうと何とか壊れていない地面へと跳んで着地する。そしてオーズはオールマイトを見遣る。鉄柱を必死に耐えるその体からは蒸気が上がり、苦しそうに咳き込む。同じく見ていたアンクは舌打ちをして口を開いた。

 

「あいつ、もう限界じゃないのか…?」

 

「オールマイト…!!」

 

「ハハハハハハッ!!」

 

オールマイトをも上回る自信の力に酔いしれたウォルフラムが続けて鉄柱で攻撃を与えた。緑谷はメリッサを抱えたまま伸びて来る鉄柱を交わす。アンクとオーズも間一髪でその鉄柱を交わしていた。出来る事なら加勢したい。だが言う事を聞かない体であの鉄の塊に挑もうとすれば返って足手まといになる。鉄柱を交わしながらオーズとアンク、そして緑谷とメリッサの視線はオールマイトに向かっていた。

 

「マイトおじさま…!」

 

「ぐっ!…がは…!」

 

息つく間もなく鉄柱が雨のように降り注ぐ。絶え間ない攻撃にオールマイトは吐血をしながらも必死に耐え続ける。ウォルフラムはさっさとトドメを刺してやろうと更に鉄柱の数を増やした。

 

「さっさと潰れちまえ!!」

 

「!やめろぉお!!」

 

「オールマイト!!」

 

オーズと緑谷が絶叫したその時、冷気が走った。勢いよくオールマイトに向かっていた鉄柱が一気に凍り、動きを止める。異変に気付いたウォルフラムは別方向から向かってくる小さな爆発音に気付く。

 

「くたばりやがれぇ!!」

 

跳んで来たのは爆豪で、掌の爆破を連続で繰り出す。ウォルフラムは舌打ちしながら腕をバッと振り下から立ち上げた鉄の壁で攻撃を防ぐ。

 

「…!!チッ!」

 

爆豪は攻撃を防がれた事と、腕に走った激痛に舌打ちをした。(ヴィラン)と警備マシンを爆破し続け、体が悲鳴を上げている。それでも爆豪は不敵な笑みを浮かべて苦戦しているオールマイトに向かって叫んだ。

 

「あんなクソだせぇラスボスに、何やられてんだよ!えぇ!?オールマイト!!」

 

「爆豪少年…!」

 

「今のうちに…(ヴィラン)を…!」

 

鉄柱を氷結させた轟が辛そうに息を吐く。左から僅かに炎を出して体温調節をしているが、それでも氷結を出せる右側は徐々に凍りついていた。

 

「轟君!皆んな!」

 

メリッサを下ろし、緑谷は頼もしい仲間の登場に顔を喜ばせる。轟の後ろには八百万を支える飯田、上鳴を支える麗日と耳郎、峰田、切島、そして事前に変身していたバース達がやってきていた。

 

「あの鉄柱、死力を尽くして止めるぞ!」

 

「おう!金属の塊は俺達が引き受けます!」

 

「八百万君!ここを頼む!」

 

「はいっ!」

 

バースバスターを構えてエネルギー弾を放ち、先制攻撃腕をするバース。後に続かんと硬化させた切島と、飯田が駆け出し、伸びてくる鉄柱を協力して力を合わせて砕いていく。爆豪も空中から爆破攻撃を続け、轟も氷結攻撃を繰り出していた。そして、集結した全員が一丸となって立ち向かうその姿勢を見たオーズは鼓舞されるかのように痛む体を無視して立ち上がる。

 

「アンク…!終わったらI・アイランドのアイスたらふく食わせてやる!全力であいつを止めるぞ!」

 

「チッ…!その言葉、絶対だぞっ!!」

 

「あぁ!ハァアア!!」

 

全身に力を溜め込み、トラクローを展開、更にバッタレッグを能力解放して、蝗の脚となった脚部で跳び立つと襲いくる鉄柱をトラクローで切り裂いて行く。アンクも背中から美しい赤の翼を広げてその後に続くように鉄柱に向かって炎の球を連続で放射させる。

皆んな、とっくに限界を超えている。それでも動くのは救けたいから。雄英生徒達の奮闘に、オールマイトは底を尽きそうだった力が再び湧き上がってくる。蒸気が消えて、筋肉を唸らせる。

 

「教え子達にこうも発破をかけられては、限界だなんだと言ってられないな!限界を超えて、更に向こうへーーー!」

 

オールマイトは向かい合っていた鉄柱を一撃で破壊し、ウォルフラムへと飛び上がった。

 

「そう、Plus Ultraだ!!」

 

凍っていた鉄柱がウォルフラムの操作によって砕かれ、再びオールマイトに襲いかかる。間入れずやってくる鉄柱を粉砕しオールマイトは突き進む。次々と粉砕して突っ込んでくるオールマイトにウォルフラムは腕を振り、同時に三方向から鉄柱で襲撃する。オールマイトはバッと腕をクロスさせ、そのまま突撃した。

 

「〝カロナイナ・SMAAASH〟!!」

 

激しい金属音と共に鉄柱が砕かれ衝撃波が広がる。爆風に耐えながらその行方を緑谷とメリッサは見つめていた。

 

「観念しろ、(ヴィラン)よ!!」

 

勢い衰えず、射抜くように突っ込むオールマイト。ウォルフラムに向かって拳を振りかぶろうとしたその時、後方の鉄柱から無数のワイヤーが伸びて、拘束されるとオールマイトの動きがピタリと止まる。

 

「この程度…!」

 

ワイヤーを引きちぎろうとするが、その前にウォルフラムの手がオールマイトの首を掴んだ。片手で締め上げようとしたその腕が、異様に膨らんでいくと、服が破かれ筋肉が盛り上がっていた。

 

「観念しろ!?そりゃお前だ、オールマイト」

 

「っ…!?」

 

異常なパワーを感じたオールマイト。その時、左脇腹に強い衝撃が走った。

 

「ぐっ!!…ぐぐ…があああああ!!」

 

的確に傷口を抉るウォルフラムの腕がオールマイトを吐血させ、絶叫させた。立ち上る蒸気を見て緑谷は救けなければと駆け出そうとした。

 

「オールマイ…ぐっ!?」

 

しかし満身創痍の体に激痛が走り、思わず蹲ってしまう。メリッサが「デク君!」と慌てて駆け寄る。オールマイトのピンチに気付いた爆豪、轟、オーズ達も、襲ってくる鉄柱に対処するのが精一杯だった。

 

「クソがぁああ!!」

 

悔しさを吐き出す爆豪。

「オールマイト!」とオーズは叫んだ瞬間、鉄柱がオーズの体を直撃し、地面へと吹っ飛ばされる。

 

「映司!クソ!こんな鉄の塊ごときに手こずるとは俺もオチたもんだ、なぁ!」

 

アンクもオルカとの戦いで本調子が出せない事に腹を立てており、その怒りをぶつけるかのように迫り来る鉄柱を必死に炎で攻撃し続けていた。

その頃、オールマイトは首を絞められ古傷を抉られ、苦しさと激痛で意識が朦朧としていた最中、気付いた事実に胸騒ぎが徐々に確信へと変わった。

 

「この力は筋肉増強…!〝個性〟の複数持ち…!ま、まさか……!」

 

ハッとするオールマイトにウォルフラムは楽しげに見下しながら口を動かした。

 

「ああ……この強奪計画を練っている時、〝彼の方〟から連絡が来た!是非とも協力したいと言った。何故かと聞いたら、彼の方はこう言ったよ!」

 

まさかとオールマイトの頭の中にあの男の声が過る。理知的で、穏やかでありながら、静かに闇を持つ醜悪な声が。

 

 

『オールマイトの親友が悪に手を染めるというなら、是が非もそれを手伝いたい。その事実を知ったオールマイトの苦痛に歪む顔が見られないのが残念だけれどね…。近々日本に来たまえ。その時には、君に素敵なプレゼントを()()で送るとしよう……』

 

 

それは、倒さなければならない宿命の相手。

 

「オール・フォー・ワン…!」

 

裏で引いていたその名前を呟き、オールマイトの顔は来るしみから怒りの顔へと変わる。ウォルフラムはその顔を見て愉快そうに見下した。

 

「ようやくニヤケ面が取れたか!」

 

「Nooooo!!!」

 

怒りのままワイヤーを引き千切ろうとするオールマイトに、正面から鉄柱が激突する。もがくオールマイトを大きな鉄の塊が左右から挟み打った。

 

「…!!」

 

愕然と見開く緑谷の目の前の光景。挟まれたオールマイトにウォルフラムは引力に引きつけられるみたく鉄の塊がオールマイトを次々と襲う。

 

「「「「オールマイト!!」」」」

 

「おじさま…!!」

 

戦う者、身を守る者、この場にいた全員がオールマイトがやられていく様を見て驚愕して叫ぶ。ウォルフラムは高々と笑い声を上げると、その腕を振り上げた。

 

「さらばだ、オールマイト!!」

 

すると地面から鋭い鉄柱が何本も伸び、オールマイトを閉じ込めている鉄の塊を貫いた。

 

「マイトおじさまぁあああ!!」

 

悲痛に叫んだメリッサ。だがその時、その塊に向かって飛び出した者がいた。オールマイトを閉じ込めた巨大な塊に臆することなく立ち向かっていく小さな体。爆豪、轟、そしてオーズこと火野はそれが緑谷だと直ぐに気付いた。

緑谷はオールマイトを救けたい一心で激痛の体を顧みず飛び上がり、ワン・フォー・オールの力を全身に漲らせ、その塊に拳を向ける。

 

「〝デトロイト・SMAAASH〟!!!」

 

渾身の力で振るった拳は鉄の塊を見事に打ち砕いた。力を出し切ってしまった緑谷は鉄の瓦礫と共に落下する。それと同時に閉じ込められていたオールマイトが飛び出した。

そして、緑谷が破壊した大量の鉄の塊の一部はウォルフラムを押し上げている鉄の塔に矢のように激突し、塔を崩していったのだ。煙が立ち上る中、ウォルフラムが忌々しそうに緑谷に向かって吐き捨てる。

 

「あのガキが…ぐっ!!」

 

更に飛んできた鉄片がウォルフラムに突き刺さる。痛みに気を取られ、益々鉄の塔が崩れていくと、中で気絶していたデヴィットが露わになった。

 

「ゴホッゴホッ…うっ!」

 

緑谷が鉄片の下敷きになる寸前に、オールマイトが飛び込み鉄片を背中で跳ね除ける。そして緑谷に向かって口を動かした。

 

「緑谷少年!そんな体で、何て無茶な…!」

 

既に緑谷の体は限界を超えていた。満身創痍な緑谷に思わずオールマイトは声を荒げる。すると、緑谷はなんとか体を起こすと、当然のように口を開いた。

 

「だって…困ってる人を救けるがヒーローだから………!」

 

ぎこちなく力強く笑うその笑顔に、オールマイトは心を少しうたれた。その頼もしい笑顔は今、自分にとってもヒーローのように見えたのだから。

 

「…HAHAHAHA、ありがとう。確かに今の私はほんの少しだけ困っている。手を貸してくれ、緑谷少年」

 

オールマイトはいつものように笑いながら手を伸ばす。緑谷はしっかりと握り、「はい!」と応えた。そのまま緑谷を引き上げると2人は揃って立ち並び、ウォルフラムを見上げた。

崩れたとはいえ、未だに金属の塊は巨大のままだ。緑谷は装着しているフルガントレットを見つめる。ここまで何発もスマッシュを打ってしまったからいつ壊れてもおかしくない。だけど、最後まで一緒に戦ってほしいと緑谷は願いを込めた。

 

「行くぞ!」

 

「はい!」

 

そして、気合いを入れて、2人はウォルフラムに向かって駆け出した。

 

「ぐっ……くたばり損ないとガキが……。ゴミの分際で往生際が悪ィんだよ!!」

 

痛みにぐったりしていたウォルフラムが湧き上がる怒りと共に叫ぶと、腕を振り上げた。小さな鉄片が無数の塊となって2人に散弾のように攻撃を仕掛ける。

 

「そりゃあ、てめぇだろがぁ!」

 

爆豪が叫びながら、散弾に向かって最大限の爆破を浴びせる。散弾が一掃されオールマイトと緑谷が駆け抜けて行く中、続いて鉄柱が降り注いできた。

 

「させねえ!」

 

轟が、緑谷達が向かう鉄柱の前に氷壁を出現させる。激突した鉄柱と氷壁がぶつかり合って打ち砕かれた。突き進んでくる緑谷とオールマイトにウォルフラムが手を振り上げる。

 

「くたばれぇ!」

 

緑谷とオールマイトの左右から一際大きな鉄柱が襲い掛かろうとする。緑谷は顔を歪ませ拳を構えたその時、別方向からオーズが跳んで来た。

 

 

 

 

 

スキャニングチャージ!!

 

 

 

音声が鳴り響くと同時に赤、黄、緑とタトバを表す色をした大きなエネルギーのリングが3つ出現し、オーズはその輪を潜るように勢いよく通化した。

 

「先へ!!セイヤァアアア!!」

 

三色の輪を潜り抜けたオーズはそのエネルギーを見に纏い、〝タトバキック〟がまず左側の鉄柱に直撃し、粉砕する。そしてその勢いを止めずに今度は右側の鉄柱にへと直撃し、破壊した。砕けた瓦礫が落ちて行く最中、オールマイトと緑谷は止まる事なく駆け抜けていく。

 

「っ!邪魔だぁああ!」

 

ウォルフラムが叫び、腕を振り上げる。オールマイト達を攻撃する鉄柱がそこかしこから伸び、八百万達がいる地面すらも巡り上げた。メリッサのいる地面も大きく揺れ、鉄片が飛んでくる。

 

「きゃあ!」

 

メリッサは吹き飛ばされ転がる。痛みを堪えながら、彼女は必死にオールマイトを目で追った。次々と仕掛けてくる鉄の攻撃に2人は臆する事なく交わし、破壊し、突き進む。そして2人は一本の鉄柱の上を全力で駆け抜ける。

 

「……っ」

 

メリッサは全力で走る2人の姿を、ジッと見つめていた。命懸けで誰かを救けようとする姿からは目が離せない。きっとそれが希望に繋がるからだ。

 

「ぐぐぐおおおおお!!!」

 

ウォルフラムが力を振り絞るように両手を高く上げる。同時に無数の鉄片が素早い速度で一つに集まっていった。

崩れた鉄片の中、体を起こした麗日が目を見開いて戦慄した。

 

「ててて……!……なに、あれ……」

 

それは、ウォルフラムの上に集まっているとてつもなく巨大な金属の塊。唖然としている間も更に鉄片は集まり大きくなっていく。だが、それに向かって上昇する鉄片を足場にして飛び渡りながらオールマイトと緑谷は突き進んで行った。2人はもろともせず、巨大な塊に向かって拳を構える。

 

目の前の危機を乗り越え、全力で人を救ける。

 

それこそがヒーロー。

 

2人の覚悟、想いの力が全身から拳へと宿る。

 

「「おおおおおおっ!!」」

 

爆豪、轟、アンクや変身が解かれた火野達は八百万達と合流し、全員で息を呑みその行方を見守る中、ウォルフラムは怒号と共に両手を振り下ろした。

 

「タワーごと潰れちまええええ!!!」

 

巨大な鉄の塊がオールマイトと緑谷に向かって落ちていく。だが2人は勢いを更に加速させ培ったその力を宿した拳として打ち込んだ。

 

 

「「〝ダブルデトロイト・SMAAASH〟!!!」」

 

「ぐっ!!?ぐ…ぐぅう…!!」

 

鉄の塊を押し返しウォルフラムへと迫っていた。なんとか押し戻そうとするが2人の力は止まる事なく突き進む。

 

「「おおおおおおっ!!」」

 

オールマイトが吐血し、緑谷のフルガントレットにはヒビが入る。それでも、2人はありったけの力で拳を押し込んでいく。

 

「ぐぐ…ぐ……ガハッ!」

 

必死で抵抗しているウォルフラムの頭に装着している個性増幅装置が、オーバーワークで異常動作を起こす。2人の圧倒的な力により耐え切れずに腕を大きく弾かれた。形成した鉄は崩れ始め、土煙が舞う瓦礫の中を2人は更にウォルフラムの元へ。

 

「行っけぇえええ!!」

 

麗日の必死の応援に耳郎と八百万も続く。

 

「「オールマイト!!」」

 

その横で座り込んでいた上鳴も必死に「ウェーイ」と声を上げた。そして呼応するかのように切島、飯田、峰田、後藤が叫ぶ。

 

「「緑谷!!」」

 

「緑谷君!!」

 

「決めろ!!」

 

「「ぶちかませぇえっ!!」」

 

「行っけぇえええ!!オールマイト!緑谷君!!」

 

爆豪、轟に続いて火野も全力で声を張り上げる。アンクも応援こそはしないがその見守る目には強い想いが込められていた。皆んなの想いを受けながら、2人は再び拳を大きく構えた。人々の平和を願うその強い想いが限界をなくし、希望という光へと紡がれる。

 

「更に!!」

 

緑谷の声にオールマイトが続く。

 

「向こうへ!!」

 

そして、2人の拳と声が一つとなり合わさる。

 

 

「「PlusUltra!!!!」」

 

 

「!!うぉおおおおおおおお!!!」

 

渾身の力。フルガントレットが壊れても尚緑谷は止まることなく拳を突き出し続ける。2人の拳は容赦なくウォルフラムを打ち砕く。凄まじい勢いと威力に増幅装置から光が漏れ爆発した。ウォルフラムを失った金属の塔が崩れていく。その崩れいく鉄片と一緒にデヴィットも落下していた。絡まるコードが彼の体の身を守っている。朦朧とする意識の中、デヴィットは微かな光を感じるような気がして僅かに目を開けた。そこに映るのは、若き日のオールマイトだった。

 

「う……」

 

瞬きをする。拳を振り上げ、飛んでいたのは緑谷だった。その姿は、若き日のオールマイトにそっくりだった。デヴィットは目に焼きつける。彼もまた、ヒーローなのだと。

 

「や、やったのか……」

 

崩れる金属のタワーを見ながら飯田が呟く。その後ろで確信へと変わった思いで峰田が拳を振り上げる。

 

「やったんだ……(ヴィラン)をやっつけたんだぁ!!」

 

その勝利に、皆んなに笑顔が戻る。沸き立つその喜びに轟も笑顔が浮かんだ。爆豪も笑みを浮かべているのに轟が気付くと「ケッ!」と爆豪はそっぽを向いた。

 

「やったな、火野」

 

「うん、後藤さん。あ、怪我は大丈夫ですか?」

 

「ふっ…お前の方が酷いだろ」

 

後藤は火野に近寄り喜びを分かち合おうとする。だが火野は後藤の体を見て心配そうに見つめていた。相変わらずのお節介者に息を吐くが、今はそれが笑いへと変わる。アンクもまた、首を傾げる火野を見て静かに笑みを浮かべていた。

いつの間にか、夜の空はすっかり白みを帯びていて夜明け直前の淡い色をした夜空となっていた。その空の下、吹っ飛んだウォルフラムが装置の影響かガリガリの姿となって鉄片にぶら下がった状態で気絶していた。

 

「ぶはっ!」

 

ふと、少し離れた瓦礫の中から顔を出した緑谷にメリッサが気づく。

 

「デク君!」

 

「っ!メリッサさん!」

 

「よかった…!」

 

メリッサは緑谷の無事に笑顔を浮かべていた。その頃、別の場所では探していたデヴィットを鉄片にもたれさせたオールマイトが「デイヴ…デイヴ…!」と心配そうに声を掛けていた。その半身はトゥルーフォームになっている。

 

「……オール、マイト…」

 

気付いたデヴィットに、オールマイトは微笑む。

 

「救けに来たぞ、デイヴ」

 

「ありがとう……」

 

その時、鉄片の山からオールマイト達に声がかけられた。

 

「パパ!」

 

「オールマイト!」

 

安堵して喜びの笑顔を見せる緑谷とメリッサ。そんな2人を見たオールマイトは口を動かした。

 

「礼なら、メリッサと緑谷少年、そして救けに来てくれた子供達に言うべきだ」

 

オールマイトの言葉にデヴィットは緑谷達に目を向ける。涙目を拭うメリッサはデヴィットの安否を確認すると、緑谷に向き合う。

 

「良かった…本当にありがとう。デク君達のお陰で、皆を救ける事ができた」

 

すると緑谷も向き合い、「メリッサさんもです」と告げた。

 

「え?」

 

「僕は、メリッサさんのフルガントレットに何度も救われました。ありがとうございますっ」

 

「デク君…」

 

何度も命懸けで助けてくれたのは緑谷なのに自分の発明した物が役に立った事にメリッサは僅かに驚いていた。同時に嬉しかった。微笑むメリッサに緑谷は掻い摘んで申し訳なさそうに口を開いた。

 

「あ、でもすみません。壊しちゃって…!」

 

「ふふっ、そんなこと…」

 

「デク君ー!メリッサさーん!」

 

笑うメリッサ。すると、分断された麗日達の声が聞こえた。2人は見下ろすと、元気よく手を振る麗日と峰田と火野。2人の姿にホッとする八百万と耳郎。やっと本調子が戻った上鳴はキョロキョロしていた。

 

「怪我はないか2人共!」

 

「やったな、緑谷!」

 

飯田と切島が安否を確認して喜びの声を上げている。その後ろでは誇らしげに後藤と轟が微笑んでいた。爆豪とアンクはお互い距離を取りつつ気のない素振りをしている。

 

「大丈夫!オールマイトも博士も無事だよ!」

 

笑顔で振り返す緑谷。メリッサは「皆んなは大丈夫!?」と声を上げると飯田と麗日が「大丈夫です!」と大きく返事をしている。緑谷とメリッサは顔を見合わせて笑顔が浮かんだ。

 

「メリッサから大体の事情は聞いたよ」

 

全身トゥルーフォームへと戻ったオールマイトは、デヴィットの怪我を応急処置しながら静かにそう言った。数秒黙ったデヴィットはゆっくりと口を開く。

 

「…………私は…君という光を失うのが、築き上げた平和が崩れていくのが怖かった」

 

「………」

 

ジッと聞いているオールマイトを、デヴィットは見つめた。

 

「だが私の考えも、あの装置も、所詮は現状維持の産物でしかない。未来が、希望が、すぐそこにあるというのに、私はそれに気付かなかった……」

 

立ちあがろうとするデヴィットをオールマイトが支える。そして2人は火野達に向かって手を振る緑谷とメリッサの後ろ姿を見上げた。

 

「メリッサが…私の跡を継ごうとしているように、ミドリヤ・イズク……彼が…君の跡を継ぐ者なんだな」

 

目に焼きつけた緑谷の姿に、デヴィットは希望が見えた。その言葉を聞いたオールマイトは口を開く。

 

「まだまだ未熟さ。しかし、彼は誰よりもヒーローとして輝ける可能性を秘めている」

 

強く確信しているオールマイトの横顔にデヴィットは穏やかに微笑んだ。

 

「私にも見えるよ、トシ……。君と同じ光が。ヒーローの輝きが……」

 

デヴィットも同じように緑谷を見上げていた。

長かった夜が、やっと沈んでいく。

太陽が目覚めて、I・アイランドに光が差し込んだ。その淡い光に照らされていた少年少女達は少しだけ、逞しく見えていたのだった。

 

 





ども、しょくんだよです。2人の英雄めっちゃくちゃ見直して書いてましたけど改めて見直してると本当カッコいいですね緑谷君とオールマイト。
思わずイヤー!ってなっちゃったなー←
さてさてさーて、次回から本編!合宿!頑張るぞー!お気に入り登録していただいた皆様!いつも読んでいただき誠にありがとうございます!
その他の方も面白ければお気に入りをしていただければ作者の喜びも超マックスになりますので、どうぞよろしくお願いします!






次回!第8章 〜林間合宿〜

No.77 道中の騒動

更に向こうへ!Plus Ultra!!


火野「それにしても、タワーで戦ったあの時感じたモノは一体何だったんだろう…?次回の話で分かるかもしれない。気を引き締めて合宿に励もっと!」

アンク「…妙だな、この合宿…胸騒ぎがする…」
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