いつかの明日へ、【ヒーロー】は助け合いでしょ   作:しょくんだよ

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集合と出発と出来事


第8章 〜林間合宿〜
No.77 道中の騒動


 

華やかな超人社会の裏側に蠢く悪意。何度退けられても暗闇の中に身を潜め 力を蓄え再び動き出す。それは、(ヴィラン)連合率いる死柄木弔が潜むバーにて、その話は着々と進められたのだ。

 

「さすが先生だ…。どんなに調べても分からなかった奴らの目的地をこうもたやすく見つけてくれた」

 

暇を持て余すかのようにカウンター席の上に散らばるトランプを1枚ずつ積み上げてタワーを完成させる死柄木が呟く。それを聞いた向い側に居る黒霧が口を開く。

 

「彼らを待機させていた甲斐がありましたね、死柄木弔」

 

黒霧がそう言う間に、タワーの一番上のトランプのバランスが崩れてバラバラと散らばった。死柄木は興が冷めたのか席を立ち「…まぁな」と応えると、バーの出入り口の扉がベルの鳴る音と共に少しだけ開かれる。 

 

「組み合いから連絡が来た」

 

少し開かれた扉の向こうから煙草の煙が立ち上る。闇ブローカーの義蘭の声だ。義蘭は入りもせずに扉越しで話を進め始める。

 

「明日の朝までに届けるそうだ。急ごしらえなんで見てくれは悪いが品質は保証するってよ」

 

「無理なお願いをしました…。申し訳ありません」

 

律儀に黒霧が謝ると扉が更に開かれて義蘭顔を出す。指で挟む煙草を咥えると空いた手で気にすんなと言わんばかりに軽く手を振るい、煙草を吹かしながら死柄木に向かって口を動かした。

 

「なぁ、死柄木さん。組み合いがあんたの無茶な要求をのんだ理由がわかるかい?皆あんたに期待してるのさ。(ヴィラン)連合が活気づけば闇の中で燻ってる連中が動き出す。そうなりゃ俺らみたいな者達もそのおこぼれに預かれる…ってね」

 

勢力を上げている(ヴィラン)連合が名を上げ動けばそれだけ闇の中に潜む義蘭のようなブローカー達が動きやすくなり、それに賛同する(ヴィラン)達もまた活発になる。そんな目論見を喜ばしそうに伝える義蘭に死柄木は機嫌良く返事をした。

 

「安心しろ…時期忙しさで手が回らなくなる」

 

「ははっ…そりゃ楽しみだ」

 

一旦区切り煙草を吸う義蘭。要は伝えたのか義蘭は「じゃ、まいど」と言い残してバーから出て行く。

 

「目的地に手駒。獲物が揃った……」

 

義蘭の言伝を聞き、死柄木は企みの笑みを浮かべる。計画が順調に進んでいるのが嬉しいのだろうか、徐々にその笑みは悍しい笑みへと変わっていった。

 

「なら…ゲームスタートだ……!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★☆★☆

 

 

I・アイランドの事件から帰国した1週間後、夏休みの宿題に勤しんだ火野は休みを謳歌する事はなかったが、1日だけ緑谷の誘いによりA組の男子生徒はプールの誘いを受けていた日があった。それもあっという間に過ぎ、本日。林間合宿の当日がやってきた。

 

「雄英高は一学期を終え、現在夏休み期間に入っている。だがヒーローを目指す諸君に安息の日々は訪れない。この林間合宿でさらなる高みへ、Plus Ultraを目指してもらう」

 

「「「「「はい!」」」」」

 

雄英高校前で集まったA組生徒達は相澤の説明に大きく返事をする。この合宿ではB組のヒーロー科と合同合宿の為、隣では担任のブラドキングを軸にB組生徒達も集合して説明を受けていた。

強化合宿とは言えど楽しみにする者もいれば、真剣に取り組もうと気合いを入れる者もいた。そして、まだ出発までに時間があるので雑談をする者もいた。その中の1人、麗日が緑谷に声を掛けている。

 

「デク君、ついに林間合宿の始まりだね!」

 

「う、うんー!?そうだね麗日サン!」

 

期待を胸に笑顔を見せる麗日。だが相変わらずの至近距離での会話に緑谷は徐々に顔を赤く染めらせてたじろぐ。そんな緑谷を見て麗日は疑問に口を開いた。

 

「どうしたの?」

 

「い、いやー、そのー…!?」

 

しどろもどろに返事し、大袈裟に腕を振るう緑谷。すると、麗日は期末試験の時に青山に言われた事を思い出したのか脳内に彼の声が過る。

 

『君、彼の事好きなの?』

 

「…!」

 

ボッと赤面になる麗日。緑谷の事を意識してしまったのか麗日は誤魔化そうと声を張り上げた。

 

「が、がが合宿だね!!ガッシュクガッシュク!」

 

「「ガッシュク、ガッシュク!!」」

 

意識せまいと麗日は物凄いスピードで緑谷から離れるとテンションを上げてリズムよく手拍子をし始めた。それに重なって同じく楽しみにしていた生徒の芦戸と上鳴が便乗して手拍子をする。

それを微笑ましく見ていた火野に耳郎が声を掛けた。

 

「合宿楽しみだね、火野」

 

「耳郎さん、うん。でも強化合宿だから何が起きるかわからないし、気を引き締めないと」

 

火野の言葉に「真面目だなぁ」と苦笑する。ふと、火野の荷物を見て疑問に思ったのか耳郎は口を開いた。

 

「荷物それだけ?」

 

「え?あぁ、うん。島で余分に持って行き過ぎたのを反省して今回は出来るだけ少なめにしたんだ。体操服2着とタオル…歯ブラシと…あとパンツ5枚」

 

「何でパンツだけそんなに多いの…」

 

ぽんぽんと肩下げ鞄を叩きながら言う火野に耳郎は脂汗を流す。男はいつ死ぬか分からないからせめてパンツは一張羅で履いておけ。火野の祖父の遺言らしくA組生徒達は把握はしているものの、女性にとってはとても恥ずかしい名言だと思うのだろう。

各々が雑談をしている時、ふとB組から影が忍び寄った。

 

「え?A組補習いるの?つまり赤点取った人がいるって事!?ええ!?おかしくない!?おかしくない!?A組はB組よりずっと優秀なはずなのにぃ!?あれれれれえ!?」

 

「うっわ、B組の物間…」

 

清々しい表情とは裏腹に張り上げた声には煽るような嫌味ったらしく、ぐいぐいと詰め寄るB組生徒の物間。耳郎は眉を寄せて嫌そうに顔を歪ませると、物間の背後に近寄り、後頭部に手刀を綺麗に当てて気絶させる者が現れる。同じくB組生徒で、姉御的存在である拳藤だ。

 

「ごめんな」

 

気絶している物間の首根っこを掴み連れて行く拳藤。もはやそのやり取りはB組の挨拶事項みたいな習慣となっていた。顔を引き攣らせてA組生徒達は見送っているとB組生徒の女子達が声を掛けてくる。

 

「物間怖」

 

「体育祭じゃなんやかんやあったけど、まァよろしくねA組」

 

B組の柳がボソッと呟くと柳の横にいた小森と後ろにいた角取が同意してコクリと頷いていた。その後に取蔭が愛想良くA組に挨拶をすると小大が「ん」と頷く。A組にも引けを取らないその可憐さが集結するB組女子達。そのまま気さくに挨拶をすれば男子生徒は目の保養として終わったかもしれない。だが、それを踏み壊す発言を峰田がした。

 

「よりどりみどりかよ…!!」

 

下心満載の笑みと溢れる涎を拭う仕草。更には息遣いも荒い。流石にまずいと思ったのか切島が「お前ダメだぞ、そろそろ」と真顔で注意をしていた。すると、集合場所に合宿用の大型バスが2台やってくる。確認した委員長の飯田が声を張り上げた。

 

「A組のバスはこっちだ、席順に並びたまえ!」

 

いつも以上に張り切る声が雄英高校のバス乗り場に響いた。席順と言われ、火野は耳郎と一旦別れて列に並んでいると、緑谷が声を掛けてくる。

 

「いい天気で良かったね!」

 

「うん、本当だね。寝る前にてるてる坊主作ったんだけど見事に晴れたなぁ」

 

「懐かしいな…俺も小さい頃よく作ってた」

 

2人の会話に轟が話しかけてくる。他愛のない日常会話をしながらバスに乗り込むA組生徒達。

 

「B組のバスはこっちだよー。早くしな」

 

同時にB組委員長である拳藤が声をかけると、B組生徒もぞろぞろとバスに乗り込んでいく。A組のバスは乗り込んだはいいものを、席順と言われた筈なのに全員は自由気ままだった。

 

「お茶子ちゃん、一緒に座らない?」

 

蛙吹は席を探してキョロキョロしている麗日に声を掛ける。

 

「うん!座る座る!」

 

「俺、まーどぎわ!」

 

「ちょっと誰だよ、荷物邪魔!」

 

「あ、そこ私が座ろうとしてたのにー!」

 

「ちょちょ!押さないでよ!」

 

「いだっ!?誰だ足踏んだ奴!?」

 

「静粛にー!席順と言った筈だぞ君達!!」

 

右往左往にしている車内、だが地を這うような相澤の一言が車内を静ませた。

 

「どこでもいいからさっさと座れ」

 

 

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★☆★☆

 

 

エンジンをかけたバスが僅かに振動して、それからゆっくりと走り出す。次第にスピードを上げ流れる景色に、相澤の一声で静まり返っていた車内はすぐに切れた。

 

「音楽流そうぜ!夏っぽいの!チューブだチューブ!」

 

「バッカ夏といやキャロルの夏の終りだぜ!」

 

「終わるのかよ」

 

1番前の席に並んで座った上鳴と切島がスマホを片手に話す横で、同じく並んで座っている芦戸と葉隠がしりとりをしている。

 

「しりとりの『り』!」

 

「りそな銀行!『う』!」

 

「ウン十万円!」

 

車内は、まるで小学生の遠足のようなウキウキした賑やかさが充満していた。

 

「………」

 

葉隠達の前の席、相澤はあまりの浮かれように呆れていた時、委員長の飯田が使命感を感じたのか立ち上がり叫ぶ。飯田は上鳴の後ろの席でその隣は緑谷。更に後ろの席には耳郎と八百万が座っていた。

 

「皆んな!静かにするんだ!席を立つべからず!べからずなんだ!皆んな!」

 

懸命に静かにさせようと叫ぶが、その声はウキウキとした空気にかき消されていた。隣の緑谷が気の毒そうに宥める。

 

「ま…まぁまぁ飯田君。それよりも、危ないから座った方がいいよ」

 

「ム!俺としたことが!」

 

「(………まあいいか。ワイワイ出来るのも、今のうちだけだ……)」

 

相澤は注意するのを諦め、仮眠を取るべく目を瞑った。何度注意したところで、噴火する火山のように騒ぐのは既に分かりきっている。若さが取り柄の生徒達とはこれから1週間、寝食をともにしなければならないのだ。無駄なエネルギーを消費したくない。この後に迫り来る合宿の内容を知らされてない生徒達には、今だけ、この時間を学生気分でいさせて、相澤は眠りについた。

 

「お茶子ちゃん、ポッキー食べる?」

 

火野と耳郎の列に並んで座っている蛙吹が赤く細長い箱、お菓子のポッキーを取り出し袋を開けると麗日に差し出す。

 

「食べるー!」

 

「ポッキーちょうだい」

 

「あ、私飴持ってきたの!梅雨ちゃんどうぞ!」

 

「ありがとう、頂くわ」

 

「ねえ、ポッキーちょうだいよ」

 

麗日達の会話から強請るように前席から顔を覗かせるのは青山だった。因みに葉隠達の後ろの席で隣に座っているのは轟だった。

 

「うぉ!青山君!」

 

「そんなにポッキー好きだったの?青山ちゃん」

 

驚く麗日の隣でポッキーを青山に差し出す蛙吹。青山は一本貰うと「メルシィ」と言って無駄に髪をかき上げながら口を開いた。

 

「昨日、荷物の準備で遅くなって寝坊してしまったのさ。それで朝食を食べ損ねてしまったんだよね。だからせめてポッキーをと思ってさ☆」

 

「せめてってポッキーに失礼やよ。グリコの大看板の商品なんだよ?」

 

青山の言葉に少しだけムッと顔を歪める麗日。彼女は節約生活をしている為なのか、贅沢品のお菓子をついで呼ばわりされたのがいけ好かなかったのだろう。

 

「ソーリー、レディ」

 

あまり反省していない様子でポッキーを食べ終えた青山はそう言うと、ポケットから自作なのかキラキラにデコレーションをされた手鏡をサッと取り出す。そして自分の顔を映しては色々な角度から入念に身だしなみをチェックし始めた。

 

「……眩しい」

 

隣で眠たそうにしていた轟が、日光が手鏡に反射したのか顔を歪ませる。しかし青山は「ソーリー☆」と謝って少し窓際に寄ったものの、一向に止める気配はなかった。

 

「あぁ、朝日よりもまばゆい僕☆」

 

「…ブレないな、青山君」

 

「そうね、ある意味凄いわ」

 

一連を見ていた麗日と蛙吹がそう言う。その後ろの席には爆豪と常闇が座っており、相澤と同じく和気藹々とした車内に馴染まないのか爆豪は寝ていた。隣の常闇は起きてはいるが気配を消すようにひっそりと沈黙している。一方、その列の隣には火野が座っており、窓際には障子が景色を眺めていた。火野は爆豪と常闇の異様な組み合わせが気になるのかチラチラと見ていると気付いた障子が声を掛ける。

 

「どうした、火野?」

 

「え?あぁ、あの2人が組み合わせって中々見れないからちょっと気になってて…」

 

「確かにな。…だが、それを言ったら俺達も中々ない組み合わせだと思うが?」

 

複製の〝個性〟ではなくマスクで覆った口で喋る障子に火野は「あ、確かにね」と頷く。基本的には火野は緑谷か轟とよく連んでいる事が多い。決して他の生徒達とは仲が悪いわけではなく、気が合う人がいればその人と一緒に行動する。人間誰しもがそうしている筈だ。すると、障子が鞄からゴソゴソと何かを探り緑色のお菓子の箱を取り出した。

 

「たけのこの里持ってきたんだ。道中で小腹が空くと思ってな。食べるか?」

 

「いいの?ありがとう!障子君ってこっちが好きなの?」

 

封を開けて差し出すお菓子に火野は一つ摘んで口へと入れる。食べ終えた火野の質問に障子は小さく首を振るって応えた。

 

「俺は別にどっちでもいい。たまたま目に入ったのがコレだっただけだ」

 

「そうなんだ。正直俺もどっちかって言われたら迷うんだけど、いざ買おうってなったらやっぱりその時の気分が出ちゃうよね」

 

火野の言葉に障子は「そうだな」と頷き、〝個性〟で複製させた口の中にたけのこの里を入れて食べていた。すると、気になったのか障子が火野を見るなり口を開いた。

 

「そういえば、アンクはどうした?朝から姿が見えないようだが?」

 

「今は体の中で寝てるよ。コイツこう見えて朝弱いみたいなんだ」

 

「…そう、なのか?」

 

どこか不思議そうな顔をする障子。火野は気になり、「どうしたの?」と声をかける。

 

「前に聞いたが…確かアンクは、火野の赤い鳥属性のコアメダルから生まれたんだろ?」

 

「うん」

 

「鳥なのに朝が弱いのだろうかと思ってな」

 

障子の言葉に火野は「あ〜」と半分疑問を抱きながら納得する。言われてみれば鳥のグリードのアンクは日常でも気になる行為をする事があった。やたら高い場所に居座る事が多く、火野の家でも使っていない2段ベッドの上に赤いシーツを被せてそこを寝床にしている。プライベートでも道中休憩する時は木の上で休憩している事も何度かあった。他にも、比奈が作ってくれたご飯に鶏肉が入っているとこの世の物とは思えない戦慄した顔で凝視して嫌そうに食べながら1人で怒っていたりもあった。

 

「…まぁ、鳥と言っても鶏とかそういう類いではないと思うよ?」

 

「…そうだな。すまない、野暮な事を聞いた」

 

朝に活発に行動する鶏や、夜に動く梟など、鳥は鳥でも様々な種類がいる。火野の言葉に障子が謝ると「何で謝るのさっ、全然気にしてないよ」と機嫌良く返していた。その後、軽い雑談をして2人の会話が弾んでいる最中、隣の列に並んで座っていた常闇が寝ている爆豪に声をかけていた。

 

「…爆豪。…爆豪」

 

「……んぁ?……あ?」

 

静かに呼び続ける常闇の声に爆豪は目を覚まし、呼ばれている事に気付いた。その途端、起こしてはならない獣を呼び覚ましたみたく爆豪は吠える。

 

「あぁ!?何だ鳥野郎!」

 

「ちょっと……聞きたい事がある…」

 

寝起きだというのに相変わらずの態度で吐き散らす爆豪。彼の性格は重々承知しているのか、引けを取らずに冷静な対応で常闇が話しかけていた。

 

「るせっ、話しかけんな…!眠ぃんだよこっちは…!」

 

「そう言うな。隣の席になったのも……因果だ」

 

「因果ッ?てめェ何言ってやがる…!?」

 

普段使う事があまりない言葉に爆豪は顔を歪ませる。だが、珍しく話しかけてくる常闇の目を見た爆豪は諦めたのか軽く舌打ちをする。仮眠をとっていたのに起こしてまで聞きたい事があるのだろうと思ったからだ。

 

「聞くなら早く聞け!」

 

了承を得た常闇は「感謝する」と礼を言うと、さっそく質問をした。

 

「お前、確か〝ベストジーニスト〟のところに職場体験に行ったな?……どうだった?」

 

「あぁ!!?」

 

質問…否。ベストジーニストのワードを聞いた爆豪は怒鳴り声で悪態吐く。だが負けずと常闇はそのまま口を動かした。

 

「何せNo.4ヒーローだ…。どんな様子だったか…興味はある」

 

ビルボードランキング、No.4のベストジーニストの元へ職場体験に行ったのはこのクラスで爆豪のみ。有名なプロがどんな風に活動しているのか気になったのだろう。だが、爆豪は更に苛つきが増したのか怒号する。

 

「うるせぇ!どんなじゃねぇ、思い出させんな!殺すぞ!!」

 

「思い出させるな…?何だ、合わなかったのか?」

 

「合うわけねーだろ!キザな野郎だしピッチピチなジーパンがユニフォームだし、髪型をこれまたピッチピチの七三分けにされるし!全くどんだけピッチピチにさせる気だ!あのデニム野郎!!」

 

嫌な記憶が蘇ったのか軽く愚痴みたく吐き散らす爆豪。それを聞いた常闇は自分の思っていた思想を口にする。

 

「俺は実際に会ったことはないが、テレビや新聞から推測すると、確かに彼は規律を重視する傾向がある。…フッ、そうなると、お前とは水と油だったかもしれんな…」

 

「うるせぇっ!アレと合う奴なんざ、ウチで言えば、クソ真面目しか取り柄のないクソデクか、アホみたいなお節介が取り柄の三色野郎とか、後は眼鏡野郎ぐらいなもんだっ!」

 

会話が進む度に吠える爆豪。すると、爆豪なりの呼び方をするのに反応した火野が気になってチラリと爆豪達の方へと振り返る。同時に緑谷もビクッと反応して焦るように振り返っていた。

 

「類は友を呼ぶ…か。確かに、プロヒーローの事務所に入るにしろ、相棒(サイドキック)になるにしろ、ランクが上位のヒーローでも自分と相性が良いとは限らない…。お前は、No.4ヒーローであっても、その色には染まらなかった…。寄らば大樹の陰にはならなかったということか……」

 

強大なものが安心。頼る相手を選ぶならば、力のある者が得策である。常闇が言いたいのはそう言う意味なのだろう。すると、それを聞いた爆豪が疑問を浮かべるような険しい表情となって息を吸い込む。

 

「………てめェ、……今日はやけに喋るな?」

 

「ん?そうか…?俺は別に無口でもないぞ?饒舌でもないがな」

 

爆豪が驚くのも無理はない。ここまで常闇が淡々と喋るのはクラスでも見た事がないからだ。途中から聞いていた火野と緑谷も同じく、物珍しそうな表情で驚きながらその様子を見ていた。だが、次の爆豪の発する言葉で驚きが驚愕へと変わった。

 

「ていうか……お前本当に()1()か?」

 

「「え?」」

 

「………何?」

 

予想外の発言に聞いていた緑谷と火野は思わず声を漏らす。それは常闇も同じで、先程までの友好的な感情とは異なる苛つきを覚えた目付きで反応した。

 

「やけに古くて小難しい、普通の高1は使わねえような言葉ばっかり使うだろうが?実は…、年齢誤魔化してるジジイなんじゃねえのか!?」

 

「「ジッ!?」」

 

「爺…!?フッ笑止。俺は歴とした高校生…15歳だ」

 

またしても予想外の言葉に火野と緑谷は盛大に声を漏らす。流石の常闇も思いがけない発言に一瞬愕然と顔を歪ませたが、有り得ないと自身の年齢を主張した。だが爆豪は止まることなく煽るような言い方が混じる口調で吹き出し

 

「ブふふっっ!笑止って、ジジイしか言わねえよ!?」

 

「何だ俺は単に古典的な言葉を使っているだけだ!」

 

「古典って自分をジジイだって認めてんじゃねえか!」

 

「何だと!?そこまで愚弄するなら俺のダークシャドウを食らってみるか!?」

 

「あー上等だ!!てめェの〝個性〟なんざ俺の爆破で捻り潰してやんよ!!」

 

「笑止ぃいいい!!」

 

「オラまた笑止っつったな!?やっぱてめェジジイじゃねえか!!」

 

2人は喧嘩腰となって物凄い早口で怒鳴り始める。今にも立ち上がって喧嘩が始まるのではないかという雰囲気になって周りの生徒達が何だ何だと爆豪と常闇へと振り返り始めていた。緑谷も「かっちゃん!?」とオロオロしていると、これ以上はまずいと思い火野は揺れるバスの中で立ち上がり、慌てて止めに入る。

 

「ちょちょちょちょ!?2人共落ち着いてっ!!」

 

「あぁっ!?うるせぇ三色野郎!今はこの鳥野郎に用があるんだよ!邪魔すんな!」

 

「やめろって!場と状況考えろよ!」

 

爆豪の飛び火が火野に掛かりつつも、火野の説得により何とかその場は何とか治ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

ハプニングが起きた数十分後、緊迫とした雰囲気は消え去り、再び車内は和気藹々となっていた。騒動が発生した後、これ以上2人が隣に居合わせるのは危険と判断した火野は自ら爆豪の隣に座り、常闇は障子の隣の席へと移動していた。常闇は冷静さを取り戻して今は自信の反省を兼ねて目を閉じ、ひっそりと瞑想をしていた。一方で爆豪は火野が隣に来た事に最初は文句を垂れ流していたが、今では大人しくなって再び仮眠をしていた。やっと一息出来ると火野は安堵する。

 

「大変だったな、火野」

 

ふと、後部座席から尾白が声を掛けてきた。1番後ろの席には、尾白と瀬呂。その隣には峰田と砂藤が座っている。

 

「あーうん…。一時はどうなるかと思ったよ…」

 

「ぶっちゃけ委員長よりも委員長らしい事してたな」

 

火野は爆豪を起こさないよう溜息混じりの小声で応えると、瀬呂が顔を出して気さくにそう言う。

 

「そんな事ないよ、たまたま隣の列に座ってただけだから」

 

「まぁ何はともあれナイスだったぜ火野。オイラ達後ろの席だったからよ、危うくこっちまで八つ当たりが飛んでくるんじゃねーかってヒヤヒヤしたぜ…」

 

ホッとする峰田が言うと、尾白が「そうだね」と頷いた。すると、瀬呂が話を変えて合宿の話題を持ちかけてくる。

 

「てかよ、マジで合宿楽しみなんだよな。芦戸じゃねーけど、肝試しとかよ。ワクワクすんな!ワッと驚かすの楽しそうだし」

 

「張り切ってるね、瀬呂君」

 

「ったりめーよ!合宿での醍醐味だろ!脅かし役になった時の為、色々考えてあるんだからな!」

 

上機嫌に喋る瀬呂。大方、〝個性〟のテープで木や地面などにお化けの模型を貼り付けるんだろうなと火野は予想して、「ほどほどにね」と苦笑する。

 

「わかるぜ瀬呂!ワッと後ろからおっぱい揉んだりな!」

 

「いや、それ犯罪だから」

 

瀬呂が盛り上がる会話に峰田が興奮気味で指先を嫌らしく動かしながらそう言うと、呆れ顔でツッコむ尾白。すると、峰田の隣で砂藤が可愛らしい包み紙を広げた。

 

「なぁ、お前らマシュマロ食う?バニラとチョコとメロン味だけどよ」

 

「なに!?マシュマロおっぱい!?」

 

「ブレないなぁ」

 

峰田の思考は常に性と共通しているようだ。瀬呂、尾白、火野と峰田は有り難くマシュマロを頂いている。結構な量を作ったのか包み紙の中はまだ沢山残っており、前列の障子と常闇にもあげていた。

 

「ヤオモモ、これ聴く?クラシックをアレンジしているバンドなんだ」

 

「まぁ、興味深いですわ」

 

「じゃ、一緒に聴こ」

 

障子達の前席は八百万と耳郎。音楽好きな耳郎は、クラシックが好きだと言う八百万の意見を聞いた。耳郎は気に入りそうな曲を詮索し、2人は片方ずつのイヤホンで音楽を聴く。

 

「マシュマロおっぱい美味すぎだろぉ!?」

 

「おっぱい言うな」

 

一方、砂藤から貰ったマシュマロがあまりにも美味しかったのか性混じりの発言をしながらもりもりと食べる峰田に瀬呂がツッコむ。だが、大量に食べて口の中の水分が持っていかれたのか、峰田は持ってきていたグレープジュースをがぶがぶと勢いよく飲んでいたのだった。

 





ー 大人の贈り物 ー


これは少し前の出来事。

路地裏で煙草を吹かしている義蘭。

義蘭「ふぅ……ん?誰だ、そこにいるのは」

義蘭は気配を感じて物陰に声をかける。それに応じて出てきたのは脇真音槍無だった。

義蘭「おや?お前さんは脇真音さんとこの弟さんじゃねえか。こんなところで何してる?」

槍無「…買い…物…」

義蘭「何だ?姉にお遣いでも頼まれたのか?」

槍無「自分の………ところで、えと…義蘭…さん。その口に咥えてるの…なん…ですか…?」

義蘭「ん?なにって煙草だが?」

槍無「……タバ…コ…」

義蘭「なんだ、もしかして煙草を知らねぇのか?はっ……連合にそんなピュアな奴もいるのかよ。なら記念だな。一本やるよ」

槍無「……いい…んですか…?」

義蘭「構わねーさ。悪に足を踏み入れる祝いってことにしてくれ。…あ〜、でも脇真音さんには黙っといてくれよ?怒ったら怖いのは黒霧さんに聞いてるから」

義蘭はそう言って槍無に煙草を一本差し出す。槍無は受け取り、さっそく口に咥えると義蘭がライターを取り出して火をつけた。口からモクモクと出る煙を見て義蘭は少し驚いた様子で口を開く。

義蘭「へぇ、弟さんこの煙草初めてだろ?上手いねぇ、吸い方が」

槍無「…義蘭さんが吸ってたのを見て…覚えまし…た」

義蘭「器用だねぇ…お味はどうだい?」

槍無「…………悪く…ない…」









No.78 ワイルド・ワイルド・プッシーキャッツ

更に向こうへ!Plus Ultra!!
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