いつかの明日へ、【ヒーロー】は助け合いでしょ 作:しょくんだよ
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A組、B組の総勢40名がプッシーキャッツの指導と共に地獄の合同訓練が行われた2日目。限界突破の〝個性〟伸ばしの訓練に死ぬ気で勤しんだその夕方の時刻、マタタビ荘の調理広場にて全員は集合していた。
「さぁ、昨日言ったね。『世話焼くのは今日まで』って!!」
「己で食う飯くらい己で作れ!!カレー!!」
ピクシーボブ、ラグドールが声を張り上げる目の前のテーブルには、大量の野菜、肉、米や調味料、そして調理器具が置かれていた。前日はプッシーキャッツの皆が作って提供してくれたが、今日からは生徒達で晩飯を作れとのこと。
「「「「イエッサ………」」」」
まだ材料や器具などを用意してくれただけ有難いのだが、既に生徒達の体は限界を超えており、今にも倒れそうな人も何人か見受けられる。精気のない表情や返事に、ラグドールは涙目になるほど高笑いをして口を開いた。
「ニャハハハハ!全員全身ブッチブチ!!だからって雑なねこまんまは作っちゃダメね!」
ラグドールはそう言うと、飯田がハッとする。
「確かに…。災害時など避難所で消耗した人々の腹と心を満たすのも、救助の一環……。さすが雄英、無駄が無い!!世界一美味いカレーを作ろう!皆!!」
「「「「オ……オオ〜………」」」」
心身共に疲れ果てている筈なのに、その真面目な性格故か、前向きに考え他の生徒らを先導するように声をかける。空腹も限界の生徒達は最後の一声を絞り出さんと声を出していた。そんな委員長に相澤は便利だなと言わんばかりに小さく頷き、感心している。
こうして、全員は残る力を振り絞り、A組B組と共同でカレーを作ることとなった。
☆★☆★
「轟ー!こっちにも火ィちょーだい!」
キャンプ道具であるキャプテンスタッグという器具でグツグツと米を沸かしていた最中、石組みかまどに炭を入れ終えた芦戸が轟に声をかける。〝個性〟を使用しても構わないと言われて、炎を扱える轟は完全に引っ張りだこだ。
「爆豪、爆発で火ィつけれね?」
ならばと常闇と炭を入れ終えた瀬呂も近くにいた爆豪に声をかける。爆破の火力でつくんじゃないかと期待した瀬呂だったが、それは大きな間違いでもあった。
「つけれるわクソが!」
轟が出来るなら俺も出来ると爆豪は不敵な笑みと共に炭に手をかざす。直後、BOM!!と爆発するが、炎と爆発では威力が違うのか炭は吹き飛び、立ち上るのは黒煙だけだった。せっかく苦労して積み入れた炭が着火せずに消し炭となってしまい、「ええっ…」と瀬呂は思わず声を漏らす。
「皆さん!人の手を煩わせてばかりでは、火の起こし方も学べませんよ」
「………」
八百万がそう言って創造で造ったチャッカマンでかまどに火をつけようとする。〝個性〟を使用して火をつける原理は轟と一緒なのか、その行動に対して耳郎は唖然としていた。すると、轟は「いや、いいよ…」と左腕の袖を捲り、かまどに炎を灯した。あっという間に燃えるかまどを見ていた芦戸と麗日は喜びの歓声を上げる。
「わー!ありがとー!!」
「燃えろー!燃やし尽くせー!」
「尽くしたらあかんよ」
はしゃぐ芦戸に微笑みながらツッコむ麗日。そんなやりとりを横に、燃えるかまどを見ながら轟もまた、微笑ましく火を眺めていた。
一方、緑谷は材料を切る係りで、まな板の上で大量の野菜を切ってはボウルに入れる作業を行っていた。合宿で皆んなと作っている事もあるのか、その顔は喜ばしそうな表情を浮かべている。ふと、先程まで隣で切っていた火野が目を離した隙に居なくなっている事に気付き、辺りをキョロキョロと見回す。
「あれ…?火野君?」
「映司なら気を失っている」
「ワッ!?あ、アンク君!?」
背後から声をかけられ、驚く緑谷。振り返ると、火野の体に憑依したアンクが立っており、腕組みをしながら呆れたように口を開く。
「映司の奴、昆虫のコンボを使って調子乗りやがって…。こうなる事を知っててやりやがったな…!」
「昆虫…、USJの時のガタキリバ!」
その言葉に緑谷はハッと思い出してそう言う。訓練の最中に相澤に言われ、1番キツいコンボを使えと言われたオーズは躊躇なくガタキリバを使用してしまった。案の定、今にもぶっ倒れそうになっていた火野は材料を切っている最中に気絶してしまい、アンクが体を借りて、ここにいる訳だ。火野の策略だと思い込んだ火野アンクは舌打ちをすると、緑谷が宥めようと声をかける。
「ま、まあまあ……火野君は倒れるまで頑張ったって事で、大目に見てあげてもいいんじゃないかな…?」
「あ?フン、コイツはこう見えて腹黒い奴だ。お前も一緒に行動するなら、せいぜい寝首をかかれないことだな」
「え?…あ、うん…気をつけるよ…(そんな態度をとるのはアンク君だけなんじゃ…)」
指を指してくる火野アンクに緑谷は苦笑していた。すると、同じ材料を切る係りの蛙吹が、手が止まっていた2人に気付いたのか声をかける。
「火野アンクちゃん、緑谷ちゃん、手が止まってるわよ。まだ材料は沢山あるんだから」
「あ、わっ、ごめん蛙吹さん!」
相変わらず名字で呼ぶ緑谷に「梅雨ちゃんと呼んで」と蛙吹は言うと、火野アンクは途中で放置している切り掛けの野菜を見るなり、顔を歪ませた。
「チッ。こんな面倒な事やってられるか」
「ダメよ火野アンクちゃん。疲れてるのは他の皆んなも同じなのよ。材料を切るだけなら出来るでしょ?」
「…おい女。その呼び方はやめろ。俺の名はアンクだ」
「…分かったわ。でも、だったら私の事も女じゃなくて梅雨ちゃんと呼んで?アンク
「ちゃんも余計だ…!………フン。俺はグリードだからな。飯なんか食わなくてもどうってことないんだよ」
「貴方はそれでいいかもしれないけど、火野ちゃんは食べないと明日保たないわよ?」
蛙吹の言う事に一理あると思ったのか火野アンクは不快そうに強く舌打ちをする。見兼ねた蛙吹は自身が切り途中だった肉を指指して口を開いた。
「なら、私が野菜を切るから、この肉を切ってちょうだい。一口サイズで切ればいいから」
「おい、まだ俺は手伝うなんて一言も…」
「お願いね」
「……!」
半ば無理矢理交換され、目の前に切り掛けの鶏肉が置かれる。アンクは火野にご飯を食べさせないといけないと思ったのか仕方なく、不満そうに包丁を手に取り、目の前の肉を見つめると、包丁を手に持ったまま目を見開いていた。
「ど、どうしたのアンク君?」
固まる火野アンクに緑谷が声をかける。
「……おい、これ何の肉だ……?」
「鶏肉よ?」
「鶏……!!?」
蛙吹の言葉によって、火野アンクに戦慄が走る。まさか、同類をこんな肉の塊で切れと言われるなんて思ってなかったのだろう。肝を冷やす火野アンクは火野の為と思ったのか、はたまた手伝いをする羽目になったのか、手に握った包丁を思い切り鶏肉に振り下ろし、ぶった切っていたのだった。
☆★☆★☆★
「「「「「いただきまーす!」」」」」
そんなこんなで、カレーは完成し、全員が腰掛けて合唱をする。辺りはすっかり暗くなっていることに気付いたが、全員は目の前に盛り付けられた食欲をそそられるスパイスの匂いの、カレーライスを目の前しては、そんな事すらどうでもよかった。
「店とかで出たら微妙かもしれねーけど、この状況も相まってうめーーー!!」
「言うな言うな野暮だな!」
空腹の胃袋を取り敢えず埋め尽くさんと生徒達はカレーライスを掻き込むように食べ始める。素人が作った味とは思えない美味しさで、切島はそう言いながら食べると隣の瀬呂も食べながらその発言を止める。また、その隣の八百万も珍しくかなりのスピードで掻き込んで食べていたのを、後ろの席の芦戸が気になって声をかける。
「ヤオモモがっつくねー!」
「ええ。私の〝個性〟は脂質を様々な原子に変換して創造するので、沢山蓄える程沢山出せるのです」
八百万は一旦手を止めてそう言うと、正面に座っていた火野アンクがちびちびと食べていたカレーライスの手を止め、「フッ」と鼻で笑う。
「お嬢様みたいなお前でも、そういう発言をするんだな」
「…?と、言いますと?」
アンクの言葉を理解していない八百万は首を傾げる。アンクなりの遠回しの言い方をしているが、他の皆んなは何を言いたいのか検討がついているのかピタリとスプーンの手を止めていた。そして、これ以上の発言は禁止だぞと言わんばかりに八百万を除いた皆は、油汗を流しがら火野アンクを見つめている。のだが、それは瀬呂の一言によって壊された。
「うんこのことだろ」
瞬間、八百万は勢いよく席を立ち上がり、少し離れた所で蹲ってしまう。禁句を発言した瀬呂と、その発端を発言した火野アンクに耳郎が鉄槌を下した。
「お前ら謝れ!!」
「すいませぇん!」
「だっ!?おい、何すんだ!」
「うるさい!まだ火野の方がデリカシーあるよ!」
ぎゃあぎゃあと騒ぐA組達。でもそれは、側から見れば何処か楽しそうにも見えた。だがそんな光景を気に食わないと思ったのか、遠くから見ていた洸太は睨み付けるような目線で見つめたあとくるりと振り返り、悪態を吐く。
「何が〝個性〟だ…。本当…下らん…!!」
そう言って洸太はその場から立ち去る。ふと、おかわりを装って席に戻ろうとしていた緑谷が後ろ姿の洸太を、心配そうに見ていた。
☆★☆★☆★☆
カレーを食べ終えた後、後片付けを行い、A組、B組はマタタビ別荘へと戻った。生徒達はすぐに露天風呂に入り、湯気が立ち上る体で寝室の大部屋へと戻ると、直ぐに布団へと寝転がり寝る人もいれば、ワイワイと雑談する生徒もいた。そんな中、マタタビ荘に戻る際に意識を取り戻した火野は、アンクと交代してもらい、温まった体を涼ませようと、大部屋を出て長い廊下を歩く。ふと、光が差し込む部屋が見え、中を覗くとそこは立派な広縁だった。中へと入ると、さっそく置かれている椅子へと腰掛けた。窓の外には、月の光が微かに照らされた森の風景が広がっていた。ひんやりとした空間と相まってか、火野は夜の景色に夢中になっていた。
「あれ、火野君」
ふと、声をかけて広縁へと来たのは火野と同じ寝巻き姿の緑谷だった。緑谷は窓際の景色が目に映ったのか「わぁ」と思わず声を漏らしていた。
「昨日は疲れてすぐ寝ちゃったけど、この部屋、こんな景色が見られたんだ…」
「俺も今さっき知ったよ。昨日は本当疲れ果てて、皆んなすぐ寝ちゃったもんね」
昨日は訳もわからず、森へと放り投げ出された挙句に5時間以上、土の魔獣と戦いながら森を駆け抜けたので直ぐに疲労がやってきたのだろう。しかし、今日の方が体力的にしんどい筈なのにまだ眠気はこない。耐性でもついたのだろうかと火野は首を少しだけ傾げていると、緑谷が声をかけた。
「…さっきね、洸太君と少しだけ会話してきたんだ」
「……どうだった?」
顔を曇らせながらそう言う緑谷に、察した火野は野暮な事を聞かずに問い掛ける。
「火野君って、ヒーローの『ウォーターホース』知ってるかな?」
「あぁ、うん、勿論。川や海で溺れた人達を救ってた水を操れる〝個性〟のヒーローだよね。その人達がどうかし……!」
火野がそう応えていた時、脳内にそのヒーローの事件が過る。ウォーターホースは夫婦であり、両方とも、
「……洸太君、〝個性〟超人社会そのものを嫌悪してるみたいなんだ…。その事件のせいなのか、ひけらかすヒーローや
「……そうなんだ……。まだあんなに小さいのに…辛い事があったのか…」
緑谷の言葉に火野はあの睨む目付きの洸太の顔が頭を過り、痛切に感じていた。その時、緑谷が「…僕ね」と口を開く。
「オールマイト…、それに火野君と出会うまでは〝無個性〟だったんだけど、本当にヒーローに憧れててさ…。でも、〝個性〟がないとヒーローは目指せなくて…、かなり絶望的な環境の中で立たされてた…。それでも、〝個性〟が出るんじゃないかと練習せていたんだ」
「緑谷君…。練習ってどんな?」
緑谷の語りに火野は何も聞かずにその話を聞こうと質問する。緑谷は苦笑しながらもポツポツと喋った。
「お母さん譲りを期待して物を引き寄せる練習をしたり…、お父さん譲りを期待して火を吹こうとしたり、……あと、爆発しないかと頑張って見たりとか……」
「爆発って…、爆豪君じゃないか」
「う、うん……。かっちゃんは、その、性格は…あんなのだけど、一応、僕の…幼少期からの憧れだから…」
側から見ても一方的に緑谷に対して癇癪を起こす爆豪。そんな彼を今でも尚、その背中を追いかけようとせん眼差しで、窓際の夜空を眺めながら緑谷はそう応える。
「洸太君に言ったんだ。〝個性〟に対して色々な考えがあって一概には言えないけど、そこまで否定してると、君が辛くなるだけだ…って」
「………」
取り留めないその励ましは恐らく今の洸太には通用しないのではないか?と一瞬考えていた火野だが、小さく首を振って、口を動かした。
「…多分、そう簡単に過去は断ち切れない。しかもあんなに小さな子供だともっと厳しいかも…」
「………やっぱり、そう、だよね…」
「でも…」
「?」
火野の言葉を重く受け止めた緑谷は顔を俯かせようとするが、その一言で顔は面を上げる。
「俺の爺ちゃんの言葉なんだけど、『人生は何が起こるか分からない。その時を無駄にせず、悔いのない生き方をしろ』って。今は世界を拒絶してるかもしれないけど、緑谷君のその〝きっかけ〟で、洸太君のどこかで何か変わってるかもしれない…」
「火野君…」
「きっと大丈夫っ。もし俺達が洸太君を動かせなかったとしても、人々を救けるヒーローの背中を見たら、洸太君も立ち上がれるかもしれないからさ」
人はきっかけが有ればその人生は大きく変わる。その変わる事を信じて火野は強く想いを緑谷に伝えた。緑谷は次第に笑みが溢れ、笑いながら口を動かす。
「…火野君のお爺さん、凄く立派な人だったんだね」
「うん、本当凄い人だったよ。だから俺も負けないように、いつもパンツは一杯持ってるんだっ」
「パンツ…?プッ、アハハ…!」
突然の拍子抜けな発言に緑谷は思わず笑ってしまう。火野も便乗して笑みが溢れ、ふと、窓を開けて星空を眺める。都会とは違う濃度の高い闇が広がる中、その星空は輝いて見えていた。
ゴオオ………
その時、一陣の強風が吹き荒ぶ。
まるで威嚇するように通り過ぎたそれに、火野は少しだけ頭の中をざわりと攫われたような気がした。思わず眉を顰めて窓の外を見るが、そこには闇が広がるだけだった。
☆★☆★☆★☆
闇夜の強風が吹き荒ぶその世界。その風は一際高い岩場へと誘われ、そこに居た者達を通り過ぎる。
「疼く…疼くぞ……。早く行こうぜ…!」
ローブを纏い、仮面を付けた大柄の男が、腕をゴキゴキと鳴らし、山の麓に見えるマタタビ荘を見つめながらそう言う。
「まだ尚早。それに、〝派手な事はしなくていい〟って言わなかった?」
大男とは一回り小さな小柄。中学生の制服を身に纏って、自身の顔を隠す為、はたまた守る為か、ヘルメット付きガスマスクを被る少年が割挟む。
「ああ、急にボス面始めやがってな」
大男とガスマスク少年の前に立つ、
「虚に塗れた英雄達が、地に堕ちる。その耀かしい未来の為のな」
荼毘は闇夜の中心に光を灯すマタタビ荘を見下ろしながらそう言う。その隣には注射器のような機械を背中に備え、まるで悪魔の歯を剥き出しにした、不気味なマスクを装着したトガが立っていた。トガはそのマスクを気に入らないのか文句を言う。
「ていうかこれ、嫌。可愛くないです」
「裏のデザイナー・開発者が設計したんでしょ。見た目はともかく理には適ってる筈だよ」
「そんな事聞いてないです。可愛くないって話です」
闇ブローカーからの手配で支給されたサポートアイテム。恐らくここに集まっている何人かはその支給品を身に付けているのだろう。ガスマスクの男が穏便に言うが、それでも見た目が気に入らないトガは文句を垂れる。すると、荼毘達の後ろから続々と他の
「おまたーーーー」
サングラスをして長髪の男性。その手にはぐるぐると包帯で巻かれた巨大な棒のような物を持っていた。
「仕事……仕事………」
口を除く全身を黒の拘束着に包んだ痩身の男。その言動は何かに囚われたような発言をしている。
「……」
トカゲの見た目に紫で染め上げた髪、その体には無数のナイフを所持する男性は、まるでステインを模した格好をしていた。
そして、その後ろを
「6…7…8……9人じゃん。後3人は?」
「まだだ」
「あっそう」
「それより、何でお前までここに居る?お前は気色悪ぃ男と一緒の立ち位置じゃねえのか?」
荼毘は優無に嫌悪するような目付きで質問する。優無はその態度が気に入らないのか、ムッとしながら応えた。
「あんた達の監視役よ。連合に入るなら、死柄木君に認められるような行為を示すのが懸命だと思うけどね?」
「……嘘くせぇな。他にもあんだろ?」
何かを悟ったのか荼毘は睨みつけるように優無に問う。優無は軽く息を吐いて隣に居る槍無を見ながら口を開いた。
「ま、半分はそうだけど、半分は弟君の初仕事のサポートさ」
「…相変わらずのシスコンか。…まァ事情はどうでもいい。加わるなら、お前もそれなりの働きをしろよ」
「…ちょっと、私アンタらより立ち場は上なんだけど?」
「この作戦は俺が黒霧に任されてんだ。だから俺が指揮を取る」
「あ?」
上から目線の言葉に優無の表情が変わる。2人の間にビリビリと不穏な空気が漂う。それは殺意を剥き出しにしているからだ。それを見ていたサングラスの男は「あらあら…」と何処か楽しそうに2人を見ていた。
その瞬間、トガが優無を後ろから抱きついてくる。
「優無ちゃん!今日もカアイイですね!」
「わっ!?ちょ、いきなり抱き付かないでよ!」
「連合の仲間になるんです!優無ちゃんも私の事をヒミコちゃんって呼んで!呼んでほしいです!」
「わかったわかった!わかったからヒミコちゃん離れてっ」
無邪気なトガに優無は名前を呼んで満足したトガを引き剥がす。殺意を向けていた荼毘はその光景を見て冷静になったのか呆れた様子でそっぽを向いた。すると、大男が指をゴキゴキと鳴らして口を動かした。
「どうでもいいから早くやらせろ。ワクワクが止まんねぇよ」
「黙ってろイカレ野郎共。まだだ…決行は…そのイカレ姉を含めて13人来てからだ」
「イカレは余計だイカレ焼き男」
「……」
大男に荼毘はそう言って制す。イカレ姉の言葉に反応した優無は子供みたいな言い返し方をして、隣の槍無は困ったような目を向けていた。荼毘はそれを無視して再び一歩前へと踏み出し、再びマタタビ荘を見下ろしては口を開く。
「威勢だけのチンピラをいくら集めた所でリスクが増えるだけだ。やるなら経験豊富な少数精鋭。まずは思い知らせろ…。てめェらの平穏は俺達の掌の上だという事を」
「偉そうに…死柄木君の事言えないじゃん」
「姉さん…」
光り輝く星空の下で、闇は密かにその深さを広め始める。その星だけが、忍び寄る悪意を知っていた。
☆★☆★☆★☆
林間合宿3日目。絶好の太陽の陽光眩しい空の中だが、時刻は昼に差し掛かり、昨日に続いての〝個性〟伸ばしの訓練が行われている。A組、B組の合同訓練が行われている中、火野もまた、少し離れた場所でオーズ、〝ムカチリコンボ〟へと変身し、ピクシーボブの土魔獣と交戦していた。
「一気に決める!」
数体の魔獣を前にしてオーズはオースキャナーを取り出すと、待機音が鳴っていると同時にドライバーへとスキャンした。
スキャニングチャージ!
音声が鳴り響くと頭部、胴体、脚部のそれぞれの力が解き放たれ、能力解放状態となる。ハチショルダーの背中から羽が展開されるとオーズは虫の羽ばたき音と共に空中へと舞い上がった。すると、魔獣達の頭上にはムカチリを模した3つの色をしたエネルギー状のリングが形成される。
「せいやああああああ!!」
声を張り上げ、オーズはリングを通過しながら急降下する。必殺技、〝ヒートアリキック〟が魔獣を貫く。その爆発で他の魔獣達も巻き込まれ、断末魔を上げながら魔獣達は爆散した。
「っと…!ハァ…ハァ……!」
着地したオーズは辺りに魔獣が動いているかを確認し、全部倒したのを認識すると反動の疲労が襲って息切れをし始める。少し離れた所でメダルホルダーを手にしたアンクがオーズに声をかけた。
「シャウタにサゴーゾ、そしてムカチリ…、流石に3回もコンボを使ってへばってきたか?」
早朝から訓練は行われ、昼の休憩をはさんでも3回のコンボを連続使用した火野はかなりの反動が体に来ていた。アンクは情けの表情でオーズを見つめる。すると、訓練広場から相澤が近づいて来た。
「何だ、もう限界か火野?」
「い…いえ、まだ頑張れます…!」
「意気込みと体調が合ってないぞ」
相澤の言葉にオーズは疲弊していた体の姿勢を直すが、フラリとよろけていたので相澤は軽く溜息を吐く。
「…向こうの奴らにも言ったが、誰もいないからとはいって、気を抜くなよ。何をするにも原点を意識して、それを向上させろ。何の為に汗掻き、何の為にグチグチ言われるか、火野。常に頭に置け」
「…原点……」
オーズは胸に手を置いて呟く。近寄って来たアンクは鼻を鳴らして相澤に声をかけた。
「フン、基準か。…さしずめ、比喩的に物事の根源を成すって意味か。……人間ってのは本当に回りくどい生き物だな」
「その回りくどいやり方で人は大きく変わるんだ。……もっとも、それがなければヒーローは務まらん」
「!」
相澤の言葉にオーズはハッとする。昨日、緑谷に言った自分の言葉、〝きっかけ〟を思い返す。それを思い出したオーズは顔を両手でパンッと強く叩いた。
「よおっし!アンク!コンボのメダル!プルスウルトラだ!!」
「あぁ?何だ、お前疲労で頭でもイカれたのか?」
気合いを入れて声を上げるオーズにアンクは引いた表情でそう言った。それを見ていた相澤は相変わらず無愛想な目をしていたが、その口は僅かに上がっていたのだった。
ひょひょー!ギーツ始まったー!
玩具もつい手を出してしまった…。まあ音声少なめで原点に戻った感じがたまりませんね!でも最近のベルトに慣れてしまった感もありますけど汗
さて、楽しく地獄な合宿をしていた映司達に不穏な影が忍び寄る!どうなるのか!
No.81 闇夜の狼煙
更に向こうへ!Plus Ultra!!