いつかの明日へ、【ヒーロー】は助け合いでしょ 作:しょくんだよ
〝個性〟を鍛える訓練2日目に突入したが、その苛烈故に過酷を究めていた。限界突破をするには当然、限界まで体を追い詰めなければならない。その限界に到達した体は疲弊している状態で欲するものがある。それは休息と栄養。
そんな生徒達全員が待ちに待った夕飯。過酷な状況の中でご飯は栄養補給でもあり、同時に癒しの一時だ。だがそれを準備するのは生徒達。四肢が悲鳴を上げながらも生徒達は最後の力を振り絞り、今日の献立、肉じゃがを作っていた。
トトトトト……
「爆豪くん包丁使うのうま!意外やわ…!!」
「意外って何だコラ!包丁に上手い下手なんざねェだろ!!」
薪を運んでいた麗日が材料を器用に切っていた爆豪を見掛けて驚きながら声をかけていた。男子にしてはかなりのスピードで手際良く切っていた為だろう。それを聞いた爆豪は相変わらずの態度で吠える。余所見をしながらもそのペースは落ちることなく材料を切っているので、通りかかった上鳴も口を開いていた。
「出た!久々に才能マン」
「皆、元気すぎ…」
そんなやり取りを聞いていた補習組の切島は心身共に疲れ切った様子で呟く。体を休む為の貴重な睡眠時間を削って訓練に勤しんでいるのだから無理もない。そんな切島は隣でせっせと薪を焚べる火野を見て皮肉そうに口を開いた。
「お前も凄いよな火野…。コンボってかなり負担かかるんだろ?何処にそんな元気あるんだよ…」
「え?…うーん……まあ正直しんどいけど、皆んなでいられるこの時間が嬉しいから…かな」
「…!!お前…!色々と眩しすぎんだろ…!」
照れ臭い様子で笑顔で応える火野。その表情は疲れきった切島にとって直視出来ないくらいの明るい顔だったのか目を逸らしてそう言っていた。続けて火野は薪を焚べながら口を動かす。
「それに今日は肉じゃがでしょ?俺結構好きなんだ。だから任された仕事は頑張らないと」
「純粋無垢すぎるだろ…」
肉とじゃがいも等の野菜を醤油と砂糖で煮込んだお袋の味とも言える和食の定番料理。作り方は至ってシンプルだが、少し手間暇かけると更に味わい深くなる料理とも言える。そんな和食を心待ちに楽しみにしている火野の顔を見て切島は弱音を吐いている自分が情けないと思ったのか、両手をパンッと頬を叩いて気合いを入れた。
「よっしゃ!早いとこ作って食べようぜ!食べ終わったら肝試しもするしな!」
そう、切島の言う通り、晩御飯の後はA組、B組全員で肝試し大会をするとの事。ピクシーボブいわく、飴と鞭の行事らしい。その言葉に火野は「うん、そうだね」と笑顔で応えて薪を焚べていた。
☆★☆★
そんなこんなで、全員は肉じゃがを食べ終えていた。心身共に疲れた体にお袋の味と暖かい食べ物が体の疲れを取ってくれるみたいに皆の顔とお腹は満腹と高揚感で満たされている。皿や鍋などの後片付けを終えた時には、すっかり辺りは夜の世界となっていた。
「…さて! 腹も膨れた、皿も洗った! お次は…」
「「肝を試す時間だー!!」」
ピクシーボブの言葉に芦戸と上鳴は待ってましたと声を張り上げる。食べる、寝るのが至福の時間だった前日。今回はそれに加えて楽しむ行事がある事に、全身で喜びを現している…のだが、相澤のボソリとした言葉で、それは地に堕ちた。
「その前に大変心苦しいが、補習連中は……これから俺と補習授業だ」
「ウ、ソ、だ、ろ!!!?」
まるで天変地異が起きたかのような衝撃の言葉に、芦戸の表情は一気に落胆していた。
次の瞬間、相澤は逃させまいと補修組の芦戸、上鳴、切島、瀬呂、砂藤を捕縛布で捕まえ、連行して行く。
「すまんな。日中の訓練が思ったより疎かになってたので、こっちを削る」
「うわああ堪忍してくれえ!」
「試させてくれえ!!」
「嫌だぁ!俺達にも天国見させてくれぇえ!!」
ズルズルと引き摺られながら、断末魔を上げる5人に、残された緑谷達はどうする事も出来なく、只々、その叫び声の苦痛を耐えていた。その姿を見ていた火野は呟く。
「可哀想だな…」
「仕方ないよ、そういう運命だもん」
「土産話でもした方がいいのかもな…」
「やめとけ、後で悔やまれるぞ」
耳郎が反応すると、轟がせめてとそう言う。だが、芦戸と上鳴がそれを聞いたら文句を垂れるに違いないと隣にいた障子が轟にそう言って止めていた。すると、プッシーキャッツを筆頭にピクシーボブが手を叩いて注目を集め、肝試しの説明をし始める。
「はい!というわけで脅かす側の先攻はB組。もうスタンバってるよ。A組は2人1組で3分おきに出発。所要時間は約15分!ルートの真ん中に名前を書いたお札があるから、それを持って帰ること!」
肝試しのルールを説明している最中、常闇が小さく「闇の狂宴…」と呟く。賑やかなメンバーがいない分、A組の空気は何処か神妙になっていた。
「脅かす側は直接接触禁止で、〝個性〟を使った脅かしネタを披露してくるよ」
〝個性〟を使うとなると驚かすバリエーションは豊富になる。ふと、微風が吹き、闇夜の森が騒めき始めていた。不気味な雰囲気になっていくその森に生徒達の何人かは唾を呑んでいる。
「創意工夫でより多くの者を失禁させたクラスが勝者だ!」
「やめて下さい。汚い」
取り敢えずと言う形で虎は説明を終わらせると、怖いのが苦手な耳郎は顔を歪ませながら言う。すると、飯田がハッとした。
「なるほど!競争させる事でアイデアを推敲させその結果、〝個性〟に更なる幅が生まれるというわけか。流石雄英!!」
「なんてポジティブ思考…」
確かに飯田の言う事には一理あるのだが、状況相まってそんな思考に辿り着くのは真面目の性格故だろうと思いながら、火野は隣で呟く。
「さあ!くじ引きでパートナーを決めるよ!」
ピクシーボブは声を張り上げ、その右手には番号の書かれた紙切れが人数分握られていた。全員はさっそく、くじを引き、組み合わせが決まる。
1番目 常闇と障子
2番目 爆豪と轟
3番目 耳郎と葉隠
4番目 青山と八百万
5番目 麗日と蛙吹
6番目 尾白と峰田
7番目 火野と飯田
という様な結果となっていた。
だが、『8』のくじを持っていた緑谷がものおかしそうな表情をして、くじを見ては2人一組のメンバーを見てと、何度も確認し始める。
「2人一組…あれ?20人で5人補修だから…1、2、3、4、5、6、7、8………」
何かがおかしいと、緑谷は言葉で人数を数えて確認する。
さて、単純な計算をしよう。20人の内、5人は補修で今ここにいる生徒の数は15人。2人一組で1〜7まではパートナーが決まっている。2人の人数が7つあるということは、現時点で14人はもう穴埋め出来ているわけだ。
「………20人で5人補修だから、1、2、3、4、5、6、7、は…」
緑谷はだんだん目の焦点が合わなくなり、何かの間違いかともう一度数を数える。だが、何度も確認しても、自分のパートナーはいない。ようやく現状を確信した緑谷はハッとなった。
「ッ!1人余るゥ……!」
「く、くじ引きだから…。必ず誰かがこうなる運命だから…」
そうなってしまった運命には抗えず、現実を突きつけられた緑谷の周りは精気を失った白黒のカラーとなっていた。それを宥めようと尾白が声をかけていると、尾白の肩に手を置いた爆豪が不満そうな態度で話しかけた。
「おい尻尾…代われ…!代われっつってんだよ…!」
「青山ぁ…オイラと代わってくれよ……」
「俺は何なの…?」
轟と組むのが相当嫌なのか爆豪は近くに居た尾白にそう言う。ふと、ペアである峰田が八百万と組み合わせとなっていた青山と代わるよう頼んでいた。無論、当の本人の青山は物凄い早さで首を横に振って拒否している。何とも言えない状況に立たされた尾白は複雑な表情で肩を落としながらそう言っていた。
「…アンク、お前緑谷君と肝試し参加してあげろよ」
「(あ?フン、くだらん。俺は疲れたんだ。勝手にやってろ)」
「お前何もしてないだろ…」
落ち込む緑谷を見兼ねて、火野は体の中にいるアンクに声をかけるが、即答で断られていた。自分の興味がある事以外には、全く興味のないアンクのその性格に、火野は深く溜息を吐いていた。
一方で耳郎と組む事になった葉隠は透明な体で両手をブンブンと振っているのか、半袖の服が上下に激しく動かしながら耳郎に声をかける。
「肝試しワクワクするね響香ちゃん!」
「う、うん…。そ…そだね…」
怖いのが嫌いな耳郎はしどろもどろになりながらも応える。ふと、耳郎は後ろ姿の火野をチラチラと見ては何処か寂しげな様子で自分のくじの番号を見つめていたのだった。
☆★☆★☆★☆★
そんなこんなで、肝試しが開始された12分後。
3分毎に一組、また一組とスタート地点から出発していく生徒達。ふと、肝試しが開始された森の奥からA組生徒であろう、壮絶な叫び声が森全体に響き渡っていた。
「じゃ5組目…、ケロケロキティとウララカキティGO!」
ピクシーボブが合図を出して麗日と蛙吹がスタート地点を出発する。夜で不気味な森に加えて、何度も悲鳴が上がる声に麗日はブルブルと身震いしていた。
「怖いよ梅雨ちゃん…。めっちゃ悲鳴上がっとる…」
「響香ちゃんと透ちゃんね。手を繋ぐといいわ。大丈夫よ、私平気なの。行きましょう」
今叫んでいるのは耳郎と葉隠だとすぐに理解し、怖がる麗日を落ち着かせようと手を差し伸べた。麗日は「う、うん」とその手を握る。相当怖いのか、その手は少し汗ばんでいた。
☆★☆★☆★☆
一方、麗日と蛙吹が森に入った頃、脅かし組であるB組の骨抜が通りかかった耳郎と葉隠の驚きっぷりに、愉快そうに笑って口を開いた。
「カッカッカッ、小大!お前の脅かし、今んとこ全員ビクッてなってっぞ」
「体張るねぇ、唯」
同じチームである拳藤がサムズアップをすると小大は「ん」と頷く。彼らの脅かし方は、骨抜の〝個性〟で地面に沈ませた小大の首だけを通りかかったA組生徒達の目の前に、突然と顔を出す寸法らしく、今のところ全員がそのやり方に驚いていたようだ。骨抜は2番目である轟と爆豪の事を思い出したのか再び愉快そうに口を動かす。
「爆豪と轟、超ウケたなー。『お』て!」
普段クールな轟と才能マンの爆豪が2人揃ってビクッと体を震わせたのがツボに入ったらしく、笑っていた。その言葉には体育祭で出番を取られたA組に仕返しをしようと、皮肉そうな言動が見受けられる。すると、拳藤が何か匂うのか鼻をスンスンと動かし、骨抜と小大に話しかけた。
「てか、ちょっとさ…さっきから微妙に焦げ臭くない?」
「ん?……そう言えば、急に煙っぽいのが…」
拳藤の言葉に反応する骨抜。辺りを見渡すと、奇妙な事に桃色の煙が微かに立ち上っていた。
「爆豪達、ビビって〝個性〟ぶっ放しちまったんじゃ……」
大方爆豪が苛ついて当たり散らした爆破の煙がここまできたのだろうと、骨抜が推測していた直後、骨抜はドサリとその場に倒れ込んだ。
「骨抜!?」
急に倒れ込む骨抜に拳藤は驚く。ふと、辺りの煙が徐々に濃くなっている事に気付いた拳藤はハッとなり、「唯!」と叫んだ。
「吸っちゃダメ!」
「ん!?」
慌てて〝個性〟を使い、巨大化した手で小大を覆うように掴む拳藤。明らかに火を使った煙ではない桃色の煙。それを吸ってしまった骨抜は気絶している。となると、この煙は体を害するモノと判断した拳藤は辺り一帯に広がる煙を見て、確信した。
「この煙……
☆★☆★☆★☆
「……ん?何、この焦げ臭いの……」
一方、スタート地点でもその匂いに反応したピクシーボブが呟く。肝試しを行う森の奥には薄らと青く光っており、そこからは煙が立ち上っていた。
「黒煙……?」
「っ!まさか山火事!?」
立ち上る黒煙にマンダレイも気付く。生徒達も異変に気付き、その燃え焦げる匂いにハッとなった飯田が叫ぶ。その瞬間だった。
「きゃっ!?な、何ーーーー」
突如、ピクシーボブの体が浮き上がり、背後の森の茂みに吸い寄せられるように引っ張られた。
☆★☆★☆★
黒煙が立ち上る麓。そこには辺りの木々に手を置いて青い炎を発火させた荼毘がいた。一通りの木を燃やした荼毘は鬱蒼とした表情でその口を開く。
「さァ、始まりだ。…地に堕とせ、ヒーローと言う偽りの輝きを、断罪するは、我ら
麗日、蛙吹に忍び寄るトガ。肝試しルートをゆっくりと歩く痩身の男、〝ムーンフィッシュ〟。森の中に有毒を撒き散らすガスマスク少年、〝マスタード〟。そして、暗い茂みを進む脇真音姉弟。
鬱蒼とした森に潜んでいた闇は、不気味に笑う荼毘の狼煙と共に進撃を開始していた。
☆★☆★☆★
「飼い猫ちゃんはジャマね」
一瞬、何が起きたのか分からなかった。ついさっきまで、肝試しを楽しむ為にスタート地点にいた火野達は、引き寄せられたピクシーボブを目で追いかけようと、振り返ったその先にはもう既に、頭から血を流して彼女は倒れている。恐らく、オカマ口調で喋る長髪の男、〝マグネ〟
の持つ包帯を覆った巨大な棒で殴られたのだろう。その隣にはステインを模したトカゲ男、〝スピナー〟が堂々とした振る舞いで立っていた。その2人の姿に峰田は青ざめた表情で声を荒げた。
「何で…!万全を期した筈じゃあ……!!何で…何で
峰田の言う通り、今回の林間合宿は一部の教師、そしてプッシーキャッツしか情報を与えていないこの場所に、
「ピクシーボブ!!」
「やばい…!」
緑谷の呼び掛けに応じず、不意打ちをされたピクシーボブは完全に気を失っている。その隣のマンダレイはふと呟いた。それは
「洸太君…!!」
「っ!」
緑谷の言葉に火野はハッとした。ヒーローと馴染めない洸太は、夜に決まった場所にいる。緑谷から聞いた話だとそこは〝ひみつきち〟らしい。今、この状況で、そのひみつきちに居るのを知っているのは現時点で緑谷のみ。突然
その予感は的中しており、秘密基地にいた洸太は青い炎で燃え広がる森を見て愕然としている。そして、後ろの岩陰から、黒いマントに身を包んだ仮面男、〝マスキュラー〟が洸太を襲おうと足を踏み出していた。
☆★☆★☆★☆★☆
その5分前、相澤に連合されていた補修組の5人は抵抗をやめて渋々と歩いていた。だが喚き言はやめてないらしく、涙目になった芦戸が口を開く。
「あぅぅ……私達も肝試ししたかったぁ…」
「飴と鞭っつったじゃん飴は!?」
「サルミアッキでもいい…飴を下さい先生…」
芦戸に続いて切島と上鳴が便乗する。サルミアッキとは北欧のお菓子で世界一不味いと評価されている。…とは言っても人によるので、相澤は「サルミアッキ旨いだろ」と反論していた。
そしてついには嘆くのを諦めた5人。捕縛布を解いた相澤に着いて行くと、あっという間に補修を行うマタタビ荘の別館へと到着した相澤は扉を開け、今回行う補修について説明し始めていた。
「今回の補修では、非常時での立ち回り方を叩き込む。周りから遅れをとったっつう自覚を持たねぇと、どんどん差ァ開いてくぞ。広義の意味じゃこれも飴だ。ハッカ味の」
「ハッカは旨いですよ…」
ハッカが嫌いでそう例えたのか、相澤の言葉に切島はか細い声でそう応えた。そして、補修を行う扉を相澤が開くと、そこにはB組の担任ブラドと、席にちょこんと座っていた補修生が、A組の5人を見るなり皮肉そうに高笑いを上げた。
「あれぇ、おかしいなァ!!優秀なはずのA組から赤点が5人も!?B組は一人だけだったのに!?おっかしいなァ!!!」
「どういうメンタルしてんだお前!!」
A組に難癖でもつけてるのかと言う勢いで、厭味ったらしく煽る物間に、切島は盛大にツッコむ。地頭は良いが、勉強の頭の良さは中の下の物間は、筆記試験こそギリギリ回避出来たのだが、戦闘試験の方が赤点だったらしい。彼の〝個性〟コピーは〝個性〟を持つ人間に触れると、その人間が持っている〝個性〟を5分間使用することができる。 だが、触れてから5分するとコピーした〝個性〟は消えてしまうので、相方の〝個性〟が使えないとそれは無個性に近いも同然だ。そんな哀れな物間だが、それでも人を貶すメンタルはある意味で尊敬に値するかもしれない。高笑いする物間を見ながら切島は席に着きながら口を開く。
「昨日も全く同じ煽りしてたぞ…」
「心境を知りたい」
隣の席に座る芦戸も高笑いする物間を見つめながらそう呟いてると、相澤はブラドにこれから行う補修の話を持ちかけていた。
「ブラド、今回は演習も入れたい」
「俺も思っていたぜ。言われるまでもなくーー」
『皆!!!』
ブラドがそう言った直後、脳内にエコーのかかったような声が響く。声の主はマンダレイだ。
「マンダレイの〝テレパス〟だ」
「これ好きーー。ビクッてする」
「交信出来る訳じゃないから、ちょい困るよな」
「静かに」
複数の人数の脳内に語りかけるマンダレイの〝個性〟に生徒達は騒いでいると、声のトーンからして、何か起きたのだろうと相澤は単直に静めた。
そして、マンダレイのテレパスが再び脳内に響く。
『
「…は?何で
「っ!ブラド、ここは頼んだ。俺は生徒の保護に出る」
マンダレイのテレパスに物間は何を言っているのか頭が追いついていない様子で口を開くが、相澤は無視してブラドに指示を出し、急いで扉から出る。
「(……っ!考えたくはないな…!)」
万全を期した筈の林間合宿。誰にも情報を漏らしてはいない。それでも、こんな人知れずの森の中に
「!……マズいな」
肝試しでA組とB組の生徒達が森の中にいる。このままでは災害と怪我人が出てしまうと、顔を歪ませたその時だった。
「心配が先に立ったか、イレイザーヘッド」
「!!ーーーブラド」
黒煙に気を取られ、待ち伏せしていた荼毘の言葉に反応した相澤は〝個性〟を発動させ振り返りながら応援を呼ぼうとする。だが、荼毘の不意打ちの方が早く、構えていた左手から相澤を瞬時に呑み込む程の蒼炎が放たれた。
「邪魔はよしてくれよ、プロヒーロー。用があるのはお前らじゃない」
☆★☆★☆★☆★
「ご機嫌よろしゅう雄英高校!!我ら、
マグネと共に突然現れたスピナーは、笑みを浮かべながら自分等の存在を機嫌良く名乗る。
「
マンダレイ、虎を先頭に身構える生徒達の中、尾白が警戒しながらそう言う。合宿でいない筈の
「この子の頭、潰しちゃおうかしらどうかしら?ねえどう思う?」
「させぬわこのっ…!」
明らかに挑発してくるマグネに虎が激怒し、今にも襲おうと足を踏み出したその時、
「待て待て早まるなマグ
その言葉に両者はピタリと動きを止める。
「生殺与奪は全て、ステインの仰る主張に沿うか否か!!」
「ステイン…!
ヒーロー殺しの行動は全世界に響き渡っていた。彼の思想によって信奉者が増えても、今更おかしくはない。飯田は目を見開いて唖然としていると、スピナーは飯田を見て自身の意志を告げた。
「そして、アァ、そう!俺はそうお前、君だよ眼鏡君!保須市にてステインの終焉を招いた人物。申し遅れた、俺はスピナー。彼の夢を紡ぐ者だ」
そう言って背中に背負っていた武器を構える。包帯が解かれると、手作りなのか無数の刃物が、ベルトで繋ぎ合わさっている巨大な剣が露わになる。物騒な武器に緑谷は「わっ…」と顔を引き攣らせていた。すると、隣の虎が、そんな事はどうでもいいと言わんばかりに一歩前へと踏み出し、口を動かす。
「何でもいいがなあ、貴様ら…!そこの倒れている女…、ピクシーボブは最近婚期を気にし始めててなぁ。女の幸せ掴もうっていい歳して頑張ってたんだよ。そんな女を傷物にして、男がヘラヘラ語ってんじゃないよ!!」
倒れているピクシーボブを目の前にして、肉球を模したグローブからは鋭利な爪が飛び出させた虎は激昂する。そんな虎をお構いなしにとスピナーは刃物の剣を構えてダッと駆け出した。
「ヒーローが人並みの幸せを夢見るか!!」
スピナーと同時にマグネも駆け出す。突っ込んで来る2人の
「虎!!『指示』は出した!他の生徒達の安否はラグドールに任せよう!私らは2人でここを押さえる!!皆行って!!良い!?決して戦闘はしない事!委員長引率!」
決して
「承知しました!皆行こう!!」
飯田は了承し、その場にいる生徒らに声をかける。引き連れて離れようと動き出したその時、緑谷は振り返ってマンダレイの顔を見た。
「飯田君、皆、先に行ってて……」
「緑谷君!?何を言っている!?」
「緑谷!!」
まさか加勢するつもりなのかと飯田は緑谷の言葉に慌ててそう言う。尾白も声を上げるが彼は全く動じず、マンダレイに声をかけた。
「マンダレイ!!僕、
「!?」
緑谷の言葉に、マンダレイはハッとする。はっきりとしたその表情に偽りはなかった。
「……!ごめん!ならお願い出来る!?ただし見つけ次第直ぐに委員長達と合流すること!いいね!?」
「はいっ!!」
考える時間などどこにもない。危険を承知でマンダレイは緑谷に指示を出して託し、迫り来るスピナーとマグネを、虎と共に迎え討った。緑谷は飯田達に「ごめん!後で合流する!」と言い残し、別方向へと駆け出して行く。
「緑谷君!!」
「何だよ緑谷の奴!こんな緊急事態によぉ!!」
飯田の声はもう届かず、走り去る姿を見た峰田は声を上げてパニックになっている。そして、同時にその後ろ姿を見ていた火野は、何か決心した様子でコクリと頷き、飯田に声をかけた。
「飯田君!先に行ってて!俺も緑谷君と一緒に行動する!」
「なっ!?火野君まで!?」
「ごめん!必ず合流するから!」
緑谷の目的は洸太を連れて逃げ出すこと。その意図を読んだ火野は彼を1人にしてはいけないと感が働いたのか飯田にそう言い残して、その場を後にしたのだった。
☆★☆★☆★☆★
「緑谷君!!」
「っ!?火野君!?何で…!」
駆け出した緑谷の後ろを追いかけ、火野は声をかけると、緑谷は驚いた表情で振り返る。
「洸太君でしょ!?俺も行くよ!」
「…!ありがとう!」
着いてきたのならしょうがない。ここで断っても嫌だと断言するような表情をした火野に、緑谷は頼もしいと思えたのか、その頬は上がっていた。
ワン・フォー・オールを全身に巡らせた緑谷は脅威的なスピードで駆け抜けていた。火野に合わせて加減してくれているようだがそれでも差がひらいていく。火野は止むを得ずオーズドライバーを取り出して腰に宛い、装着したその直後。
「っ!!緑谷君止まって!!」
「!!」
前方の暗い茂みからギラリと何かが光ったのが視界に入り、火野は声を張り上げる。緑谷も気付いたようで、砂煙を上げながら勢いよく止まると、その前方から何かが物凄いスピードで飛んできた。緑谷には当たらなかったが、飛んできたモノは火野の頬をかすめる。ツー…と頬から血が流れ、火野は慌てて振り返ると、そこには異様な造形をした
「火野君!?」
「大丈夫!かすっただけ!それよりこの槍…」
見た事のない槍に火野は違和感を覚える。すると、火野の体の中から人型のアンクが姿を現し、驚きながらも感心した様子で火野に声をかけた。
「……ほぉ、こんな近くになるまで気付かなかったとは、俺も鈍ったものだなぁ」
「アンク!」
突然出てきたアンク。その言葉にまさかと火野はハッとしたその時、茂みの向こうから木の枝がパキッと折れる音が聞こえ、その場の3人は振り返った。
「ちょっとぉ、弟君!脅かす程度なら槍なんて物騒な物投げたらダメでしょ!当たったらどうするのさ!」
「……避ける……と…思った…から」
茂みから現れたのは弟を叱る優無と、その弟の槍無だった。
「脇真音…!優無!と、弟の槍無…!?」
「…まさかとは思ってたけど……」
2人の姉弟の登場に驚く緑谷。
No.82 海の化身ポセイドンと突林コンボ
更に向こうへ!Plus Ultra!!