いつかの明日へ、【ヒーロー】は助け合いでしょ   作:しょくんだよ

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ピンチと虚言とグリード

だいぶ更新遅れてしまいました!すいません!
そして!つ、つ、ついにお気に入り1000件超えました!初めての事に驚きまくってます!本当嬉しいです!本当!ありがとうございます!
これからも投稿頑張りますので、どうぞよろしくお願いします!


No.83 深緑の欲望と開放

 

(ヴィラン)開闢行動隊が襲いかかり、A組、B組の生徒達及び、その教師とプッシーキャッツは一部交戦を除いて肝試しを行っている森を抜けようと動き出していた。

その中、2番目に動いていた轟と爆豪も施設へ向かおうとしている最中、脅かし役の円場は有毒ガスを吸って倒れているのを発見し、轟がおぶっている。

 

「くっそ…!!」

 

有毒ガスが森を充満する中、爆豪は咳き込みながら悪態を吐く。(ヴィラン)が来ること事態想定外な上、逃げ出そうにもガスが濃くなり道手を阻んでいる。呼吸も碌に出来ない状態で頼るのは歩いて来た道のみ。苛々が募る爆豪に轟が辺りを見回しながら口を開いた。

 

「このガスも(ヴィラン)の仕業か。他の奴らが心配だが仕方ねぇ。ゴール地点を避けて施設へ向かうぞ。ここは中間地点にいたラグドールに任せよう」

 

B組と同じ脅かし役としてラグドールはゴール地点に持っていく為のお札がある中間地点に滞在しており、残された生徒達はラグドールが救けると信じて轟は爆豪に指示を出す。爆豪は「指図してんじゃね…」と不満そうに言ったその時、爆豪の目が見開き、立ち止まった。

 

「おい、俺らの前誰だった…!?」

 

爆豪は確認の為か轟に問う。轟も何事かと前方を見遣ると、そこには黒の拘束着に身を包んだ(ヴィラン)、ムーンフィッシュが道の真ん中で膝をついていた。その男は此方に振り向く事なく、何かを眺めている。

 

「綺麗だ。綺麗だよ。ダメだ、仕事だ。見惚れてた。ああ、いけない……」

 

ボソボソと呟くムーンフィッシュ。どうやら足元にあるモノを見て言っているのだろう。轟は眼を凝らしてそのモノをよく見ると、次第にその表情はみるみると恐怖に表情を歪ませていた。闇夜でも薄ら見える赤い液体。……爆豪、轟等の前のチーム…それは。

 

「常闇と…障子……!!」

 

恐らくその場に居ないということは、2人は逃げ出したと轟は冷や汗を流しながら信じていた。そこには目に映ってはいけないモノがムーンフィッシュの足元に転がっているからだ。地面にこびり付いた赤い血。そして、綺麗に斬られた右腕。

 

「綺麗な肉面………あぁもう…。誘惑するなよ………仕事しなきゃ」

 

ムーンフィッシュは爆豪達の存在に気付いたのかボソボソと呟きながらその悍ましい顔を見せるように振り返る。顔も黒の拘束着に覆われ、剥き出しなっている口からは涎が垂れていた。息遣いも荒い。そんな男を見て爆豪はこの状況にも関わらず不敵な笑みを浮かべた。

 

「交戦すんなだぁ…!?」

 

この(ヴィラン)は恐らく強い。男から放つ異常な雑鬼が、肌身でそう感じている。マンダレイの指示とは言えど、この男からはそう簡単には逃げ出せないと思った爆豪は、相澤に怒られる覚悟で、いつでも爆破が放てるよう身構えていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★☆

 

 

「てめェらのような利口的なヒーローもどきは、粛清対象だ!」

 

肝試しのスタート地点で(ヴィラン)との交戦が開始された最中、スピナーは自称ステインの意思を継いだ想いでそう叫び、刃物を繋ぎ合わせた大剣でマンダレイに向かって大きく振りかぶる。すると、スピナーの脳内からマンダレイの声が響いた。

 

『スピナー、(ヴィラン)ながらカッコいいじゃない♡好みの顔してる』

 

誘惑するような声に思わず「え?」と声を漏らして動きが止まる。

 

「何照れてんの、ウブね」

 

「!」

 

赤く頬を染めて動揺している隙に、マンダレイは懐へと潜り込み、肉球を模したグローブから爪の刃を出し、スピナーの脇腹へと斬り込んだ。

 

「でぇ!!?ぐ!?なんて…っ、不潔な手を!尻軽女めが!!」

 

姑息な真似をと激怒するスピナー。攻撃を与えたとは言え、痛がるだけで軽症なようだ。マンダレイはそのまま地面へ両手足を付けて身構える。次の瞬間、マンダレイの自身の体が急にふわっと軽くなった。

 

「!?」

 

そのまま引き寄せられるように、宙を浮く。その先には包帯で包んだ棒を待ち構えたマグネがニヤリと笑っていた。

 

「わぁ!?」

 

「おいで、飼い猫ちゃん」

 

飛んでくるマンダレイ。だが、そっちに攻撃を仕掛けようとしてる隙に、虎が詰め寄り、剛腕の腕をマグネの持つ棒へと振り下ろした。

 

「そう同じ手!させぬわ!」

 

「きゃっ」

 

虎の拳が直撃し、棒を落とすマグネ。するとマンダレイも同時に地面へと落下した。マグネの〝個性〟は物を引き付ける何かだろう。それを、解説するかのように虎が口を開いた。

 

「引石研磁。(ヴィラン)名〝マグネ〟。『磁力で相手を引き寄せる』〝個性〟。強盗致傷9件、殺人3件、殺人未遂29件」

 

「やだ、私有名じ…んっ!?」

 

多くの犯罪に手を染めたマグネはそれなりに名が知れ渡っており、虎の発言にマグネ自身も驚く。だが、口を開いた最中に虎はすかさずブローを顎に食らわそうとしたが、マグネはそれを受け止めた。

 

「何をしに来た。犯罪者」

 

「虎!!おかしいよ…!まだラグドールの応答がない!いつもならすぐ連絡を寄こすのに…!」

 

尋問する虎。するとマンダレイが耳に当てた通信機を起動させながら叫ぶ。サポート専門のラグドールが未だに連絡を、仲間の誰一人に寄こしていないのだ。不安が過るマンダレイと虎に、マグネは不気味にニヤリと笑みを浮かべていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★☆★

 

 

洸太の元へ駆け付けた緑谷。対面した(ヴィラン)、マスキュラーを目の前にして必ず救けると宣言し、身構えていた。

 

「必ず救ける…って?はぁははは…。流石ヒーロー志望者って感じだな。何処にいても現れて正義面しやがる」

 

マスキュラーは不敵にも笑う。見下すような顔で左腕の蠢く筋肉繊維を体内に戻すと、今度は右腕を筋肉繊維が覆う。空いた左腕で黒いマントを掴むと、警戒する緑谷に向かって口を開いた。

 

「緑谷ってやつだろお前?ちょうどいい…。お前は率先して殺しとけってお達しだ」

 

そう言うと、マスキュラーは自身の黒いマントを放り投げる。筋骨隆々とした肉体と同時に左腕の筋肉繊維が露わとなり、笑みを絶やすことなく吠えた。

 

「じっくり痛ぶってやるから、血を見せろや!!」

 

その瞬間、マスキュラーは飛びかかる。

 

「(来ーーーー)」

 

来る。そう思った時には、既に物凄い速度で間合いに入られていた。頭上まで来ていたマスキュラーに慌てて振り返る。だが、マスキュラーの拳の方が早く、緑谷は直撃して岩の壁へと吹き飛ばされた。

 

「あ、いけね。そうそう」

 

幸い、咄嗟に腕を交差して防御をとっており、大事には至らなかったが、それでも男の放った拳の力は強力でら諸に直撃した左腕が赤く腫れ上がって内出血を起こしていた。恐らく骨にヒビが入ったのだろう。激痛が走る中、マスキュラーは何か思い出したかのように余裕な表情で、壁に減り込んでる緑谷に詰め寄り、口を開いた。

 

「知ってたら教えてくれよ。()()ってガキは何処にいる?一応、仕事はしなくちゃあ…」

 

「!?」

 

その名前に緑谷は大きく眼を見開く。

 

「な!!」

 

「ふっ!」

 

考える暇も無く、振りかぶる筋肉繊維を纏った拳に緑谷は瞬時にワン・フォー・オールを全身に行き巡らせ、壁を蹴るよう横に跳躍して避けた。容易に岩の壁は砕かれ、土煙が舞う中、マスキュラーは続けて口を動かす。

 

「答えは〝知らない〟でいいか?いいな?よし、じゃあ…」

 

マスキュラーは土煙を腕で振るうように吹き飛ばすと、再び地面を踏み蹴り、目にも止まらぬ速度で跳躍し、避けて着地した緑谷の腹を蹴り上げた。

 

「遊ぼう!!」

 

「!!?」

 

緑谷は再び吹き飛ばされ、岩の壁に激突して地べたへと落下し倒れ込む。鈍痛が腹部に走る中、マスキュラーは流血する緑谷を見下すように、そして不敵な笑みを浮かべて口を開いた。

 

「はっはは!血だ!!いいぜこれだよ!楽しいや!あぁ何だっけ!?必ず救けるんだろ!?何で逃げるんだよ!?オッカシイぜお前!!」

 

「ぐっ…!?」 

 

相手を分析しながら立ち回るのが緑谷の戦法。だが、マスキュラーの言った爆豪と言うワードに頭の中はその目的を探るのに必死だった。冷静さを掻き乱したせいでもあるのか思うように動けなかった緑谷は一旦爆豪の事を忘れ、戦いに集中せんと全身にワン・フォー・オールの力を巡らせる。瞬時に右手に力を入れ、グッと起き上がり地面を蹴ると、マスキュラー目掛けて拳を放った。

 

「(〝SMASH〟!!)」

 

腰に力が入ってないとは言え、5%でも人並み以上の力があるので十分なダメージを与えれる。直撃した拳に衝撃が走り、先ずは一撃。そう思ったが、マスキュラーは不敵にも笑い口を開いた。

 

「なんだ?それが〝個性〟か!?」

 

「!」

 

緑谷はハッとする。突き放った拳は腹部ではなく、筋肉繊維を纏った左腕で防御されていた。

 

「いい速さだが、力が足りてねえ!」

 

「ぐぁっ!?」

 

吠えると同時に力の差を示さんばかりに左腕を振るい、緑谷は吹き飛ばされる。マスキュラーの纏った筋肉繊維は攻撃にも防御にも適していた。それを説明するかのように、または見せつけるように膨れ上がる筋肉繊維と共にマスキュラーは口を動かした。

 

「俺の〝個性〟は『筋肉増強』!!皮下に収まんねえ程の筋繊維で底上げされる速さ!力!そして防御!!何が言いてぇかって!?自慢だよ!つまり、お前は俺のーー…完全的な劣等型だ!わかるか俺の今の気持ちが!?笑えて仕方ねぇよ!必ず救ける!?どうやって!?実現不可の綺麗事をのたまってんじゃねえよ!」

 

圧倒的な戦闘型の〝個性〟。5%の力では足元も及ばない。そう見下すマスキュラー。既にボロボロの緑谷は満身創痍になりながら咳き込み、息遣いも荒くなって横たわっていた。そんな緑谷にマスキュラーは近寄り、筋繊維を纏った左腕を大きく振り上げ、トドメをさそうとしていた。

 

「自分に正直に、生きようぜ!!」

 

緑谷は意識が朦朧とする中、何か打つ手はないかと必死に考える。高らかに拳を天に掲げたその時、コツン、と小さな音が聞こえマスキュラーの動きが止まった。どうやら石を投げたらしく、緑谷、共にマスキュラーは振り返ると、そこには涙目になって震えていた洸太が口を開く。

 

「ウォーターホース……パパ…ママ…も、そんな風にいたぶって…殺したのか…!」

 

「ーーー!!」

 

洸太の言葉に緑谷は眼を見開く。

ウォーターホース、その言葉を洸太の口から聞いて緑谷は異様な空気を驚愕と共に理解した。今緑谷がこうして痛ぶられ、殴られ蹴られをされて苦しい過去が振り返したのだろう。すると、一瞬面を食らった顔をするマスキュラーが思い出したのか洸太に向かって口を開いた。

 

「ああ…?マジかよ、ヒーローの子供かよ?運命的じゃねぇの。ウォーターホース。俺の左眼を義眼にしたあの2人だ」

 

過去に殺したヒーローの子供が目の前にいる。増してや、自分の眼に傷を負わせたあのヒーロー達の息子。マスキュラーは嬉しそうに洸太へと近づくと、洸太は後退りながらも叫んだ。

 

「お前のせいで…お前みたいな奴のせいで、いつもいつもこうなるんだ!!」

 

ヒーロー社会、〝個性〟、そして信頼を受け入れずに洸太は必死に叫び、その怒りを言葉でぶつける。だが、所詮子供の癇癪だとマスキュラーは溜息を吐きながら言い返した。

 

「…………ガキはそうやってすぐ責任転嫁する。良くないぜ。俺だって別にこの眼の事恨んでねえぞ?俺は殺す(やりたい)事やって、あの2人はそれを止めたがった。お互いやりてえ事やった結果さ」

 

マスキュラーの平然とした言葉に洸太は震えながらも、何を言ってるんだこいつは?と驚愕していた。互いが互いの目的の為にやり遂げた結果。そうなったものはしょうがないと片付けようとするその神経に、ある意味悍ましさを洸太は感じていた。

 

「悪いのは出来もしねえ事をやりたがってた…、

てめェのパパとママさ!!」

 

緑谷、洸太、そしてヒーローの理屈など通じることなく、マスキュラーは悪魔に似た顔を表情に出す。自分の娯楽の為に殺す。例え子供だろうと老人だろうと無差別に殺す。それがマスキュラーの(ヴィラン)としての生き方だ。襲い掛かろうとするマスキュラーに洸太は溢れんばかりの涙を流し、自己防衛の為か両手を顔まで持ってくる。パパやママみたいに殺される……。そう思ったその時だった。

 

「…っとなったら、そう来るよな!?ボロ雑巾!」

 

「悪いの、お前だろ!!」

 

マスキュラーは感じたのか歓喜の笑みを浮かべて振り返る。そこには、ワン・フォー・オールを張り巡らせた緑谷が激昂しながら岩の壁を駆け上がって飛びかかろうとしていた。洸太は緑谷の、その言葉と行動を見て再度驚く。何故なら、こんな自分の事で怒りを露わにしてくれる人など存在しなかったからだ。世間は、可哀想に…、辛いね…などと、心許無い声しか掛けてくれなかったから。

それを今、緑谷が全身全霊で怒り、救けようとしてくれている。その姿を見て、洸太の中で何かが一瞬揺らいでいた。

 

一方で緑谷は接近しながらも必死に考えていた。

スピードは劣る。ダメージも与えられない。こいつは強い。救けに来ない。ならば、と。

 

ギチッ!

 

緑谷は折れた左腕を伸ばし、マスキュラーの筋繊維へと絡ませた。拘束具で強烈に縛られるような感覚、そして激痛。だが、それを分かってて口を開いた。

 

「これで、速さは関係ない…!」

 

「で、何だ!?力不足のその腕で殴るのか!?」

 

折れて使いものにならない腕を絡ませてスピードを封じる。近距離でなら殴れるとそう思っていたのだが、同時にそれはマスキュラーも同じ事。当然、5%など、この男には通用するはずがない。同じ戦闘型として、不敵な笑みを浮かべてマスキュラーは左腕で殴りかかろうとした。

 

「出来る出来ないじゃないんだっ…!!」

 

だが、緑谷は怒りと共に吠える。残った右腕を大きく振りかぶると、力が溜め込まれるように稲妻が迸った。

 

「ヒーローは!!」

 

どんなに危険な状況でも、それを覆す。

彼の英雄はこう言った。

 

「命を賭して綺麗事実践するお仕事だ!(〝ワン・フォー・オール100%〟!!)」

 

プロはいつだって、命懸け。ヒーローは常にピンチをぶち壊わしていくもの、と。

 

「ああああ!!!」

 

さっきまでの様子とはまるで違うその気迫と拳。

マスキュラーが一瞬困惑する中、渾身の一撃が放たれた。大爆発でも起きたかのように轟音と衝撃が巻き起こり、その一帯は土煙に包まれたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★☆★☆

 

 

「うわぁっ!!」

 

闘争のままに攻撃するポセイドンにオーズは吹き飛ばされる。序盤の戦闘とはまるで違うその荒々しい戦闘に、立つ事も儘ならないオーズは何とか防御を取るのが精一杯だった。しかもそれだけでは無い。アンクと対峙していたヴィランオーズも新しい姿、シガゼシコンボにそのアンクも苦戦を強いられていた。

 

「アっははは!どうしたのアンクー!?避けるだけじゃ倒せないよー!?」

 

偶蹄類を模したその姿。胴体のガゼルアームの手首に付けられた外骨格、〝ガゼルアントラー〟を振り回す。飛び退くように避けるアンクだが、猛牛のように迫り来るその猛攻は、止まる事なくアンクに当てんと接近して来ていた。

 

「チッ!!こんの…暴れ牛が!!」

 

アンクは悪態を吐きながらも炎の球を放つ。だがヴィランオーズはソレを容易に避けては、ガゼルアントラーで弾くなど、全く寄せ付けていない。未知の形態その上にコンボの力は絶大。アンクの攻撃も虫を叩き落とすみたく去なされていた。

このままでは埒があかないと思ったアンクは背中から翼を広げ、一旦空中へと飛翔する。

 

「あぁ、ちょっとお。飛んで逃げないでよね!」

 

「……流石に空中向きのコンボじゃないみたいだな…」

 

文句を言う辺り、空中には追ってこれないとアンクは判断し、オーズの方を見遣る。何とか急所を狙われまいとメダジャリバーでディーペストハープーンを受け止めているが、ポセイドン相手で精一杯でこちらの加勢は不可能だろう。アンクは舌打ちをしながらムカチリのコアメダルを3枚取り出し、オーズに向かって叫んだ。

 

「映司!これで敵の動きを封じーーーー」

 

そう叫んだ直後だった。真下から、()()のようなモノが急速に伸びて飛んでいたアンクの体に絡み付く。ギシギシと締め付けられ圧迫されるような痛みにアンクは断末魔を上げる。

 

「ぐあああぁっ!!?な、何だこれは!?」

 

その正体は木の蔓だ。そして、ハッとしたアンクは真下を見遣ると、地面に両手を当てたヴィランオーズが地面から蔓を生やしていたのだ。

 

「ふっふっふー!どう?これがシガゼシのコンボの特性!昔持ってた〝CSM〟の資料は角が能力かと思ってたけど、まさかこんな能力があるなんて私も想定外だったよ。オーズって本当未知数で万能な力だよねェ!実際に使ってみないと分からない事だらけだもん!」

 

「シーエスエム…!?何言ってやがる…!訳分からない事を抜かすな!」

 

勝手に気が高まり、独り言みたく説明するヴィランオーズに苛々が募り、アンクは吠える。蔓の締め付ける力が思ったよりも強力で、アンクの体からボロボロとセルメダルがこぼれ落ちた。このままではマズイとアンクは腕から炎を燃え上がらせ、拘束した蔓を燃やす。

 

「あー!燃やしたらダメだよ!」

 

燃やして脱出しようとする寸法だが、ヴィランオーズはそうはさせないと両手に力を入れる。すると、地面から更に蔓が伸び出し、アンクの体を燃えた蔓事締め付けた。

 

「ぅぐああああっっ!!」

 

「そうそう、大人しくしてなきゃねっ」

 

再度締め付けられたアンクは、その苦痛に叫ぶ。すると、力が抜けたのか手に持っていたムカチリのコアメダルをポロリと、ヴィランオーズの目の前へと落とす。ヴィランオーズは「返してもらうよ〜」と言ってソレを拾い、拘束したアンクに続けて声をかけた。

 

「さ、持ってるコアメダル全部ちょうだい。そっちの持ってるメダル私使いたくてしょうがないのよ」

 

「ぐ…!?フン!お断りだ…!逆にお前のコアメダルも、あの弟のコアメダルも全部奪ってやる…!」

 

「この状況でそんな事が言えるなんて本当欲深いねぇ。…その態度、いつまで続くかなァ?」

 

意地を張るアンクにヴィランオーズは不敵な笑みを浮かべる。すると、アンクの叫び声が聞こえたオーズはバッと振り返り、「アンク!」と心配そうに叫ぶ。

 

「余所見…するナァ!」

 

「うわっ!?」

 

アンクに目がいってしまい、隙だらけの背中にポセイドンがディーペストハープーンを振り上げる。火花が飛び散り、オーズはそのまま前のめりで倒れ込んだ。疲労とダメージが蓄積し、立ち上がる事すら出来なくなった自分に「クソ…!」と悪態を吐くオーズ。向こうもコンボを使った相手になす術が無く、アンクは拘束されたままとなっている。

 

「どうすれば…!!」

 

オーズは必死に考える。現状を打破するにはオーズもコンボで対応して応戦をするしかない。だが碌に動けない体で、尚且つアンクを救けて2人の仮面ライダーと対峙出来るのか?もし、変身が強制的に解かれたらその後はどうする?葛藤するオーズ。

すると、ふと相澤の言葉を思い出した。

 

〝何をするにも原点を意識して、それを向上させろ〟

 

「……!原…点…!」

 

その言葉を呟きながら、オーズは懸命に立ち上がる。そして、自分の中の原点を思い出しながらポセイドンと向き合う。

自分は何の為にヒーローを目指したのか。

その時、小さい頃の記憶が薄らと蘇る。それは幼少期、自宅のテレビで映っていた人。筋骨隆々とした肉体で笑顔で手を差し伸べていたNo.1ヒーロー。

 

「………俺は…!ヒーローに…!」

 

憧れたオールマイトのように、笑顔を絶やさず、どんな場所にも手が届くヒーローになりたい。自分の原点であり、目標でもある。

火野自身は自分に問い掛ける。今出来る事は何だ?体がボロボロだろうと、危険が迫る人を救けるのがヒーローの仕事。だとすれば、今救けなければならない人を守れと。

オーズは決死の覚悟を決め、メダジャリバーを構える。その姿勢を見たポセイドンは息を大きく吐きながらディーペストハープーンをオーズに向け、ジリジリと詰め寄った。

 

その時だった。

 

突然何かが、囁くような声がオーズの脳内へと響くように聴こえてくる。

 

 

〝オーズ。アンクを救いたいか…?〟

 

 

 

「…!?な、何だ…声が…!?」

 

 

〝俺と替われ。そうすればこの状況を覆せる〟

 

 

低い男性のような声が脳内を通して話しかけてくる。()()()()()()()見ず知らずの声に一瞬戸惑うオーズだが、この状況を覆す言葉に、オーズはなり振り構わず、それを了承するかのように頷き、応えた。

 

「俺は……!救けたいっ!皆んなを守りたい!」

 

 

〝よし…、その【欲望】、開放してやる〟

 

 

次の瞬間、オーズの心臓がその囁く声に応えるように、ドックン…!と鼓動を打ち鳴らす。

 

「うっ……!」

 

鼓動が痛むのかオーズは思わず声を漏らす。すると、力が抜けるように脱力に襲われ、その場で立ち尽くしてしまう。

 

「ナン…だ?」

 

様子がおかしい事にポセイドンは首を傾げる。だが、隙だらけのその姿勢に容赦はしないと言わんばかりに飛びかかり、ディーペストハープーンで斬りかかろうとしたその時だった。

 

「…ムン!!」

 

いきなり顔を上げたオーズは全身に力を入れる。すると、オーズの体から緑色の電撃が迸り、辺り一帯に電流が走る。

 

「……!!ガガガ!!?」

 

突然の電撃にポセイドンは咄嗟に防御を取るが、感電してしまいポセイドンの体はビリビリと痙攣を起こすかのように痺れ、地面へと落下した。

 

「っ!?弟君!!」

 

「何だ……!?電流だと…!?」

 

それに気付いたヴィランオーズは叫ぶ。同時に拘束されていたアンクはオーズの発した電気に驚愕していた。基本形態のタトバに電流攻撃をする事は出来ない。電流を流すオーズも様子がおかしいと見つめる中、ヴィランオーズはポセイドンを助けようとオーズに向かって駆け出した。

 

「弟君に何するんだ!」

 

「…フン。…()()()が…!」

 

こちらに向かって来るヴィランオーズを見遣り、オーズは鼻で笑うとそう言って再び電流を流す。

 

「ッッ!!ギギアアア!!?」

 

電流が直撃したヴィランオーズは痺れ、バチバチと体が発光するかのように黒煙が立ち上る。そのまま倒れ込んだヴィランオーズを見て、オーズは再び鼻で笑い、アンクが拘束されている蔓の真下へと近寄る。オーズは無言でメダジャリバーを横凪に振り払い、蔓を斬ると、アンクの拘束が解かれ、そのまま地面へと落下し、着地した。

 

「おい映司。その電撃は一体なんーーー」

 

拘束されて手首が痛むのかぐりぐりと回しながらオーズに近寄り、そう声をかけようとした直後。

 

「フン!」

 

「ぐあっ!?」

 

突然、オーズは裏拳をするみたく腕を振り払い、アンクへと攻撃を仕掛けた。諸に顔面に直撃したアンクは吹き飛ばされると同時に腰に持っていたメダルホルダーが地面へと転がる。それを見つけたオーズはニヤリと笑い、メダルホルダーを拾い上げ、中を開いた。

 

「ほぉ…、随分と沢山持ってるな、アンク…」

 

「お前……!!」

 

中身のコアメダルの数を見てオーズは少し驚いたように声を掛ける。殴られた事に苛立つアンクはオーズを睨んでいた時、オーズはメダルホルダーから2枚のコアメダルを取り出し、メダルホルダーを投げ捨てた。そして、その2枚をアンクは見た瞬間、大きく目を見開き、その思い込みが確信へと変わって口を開いた。

 

()()……!?まさか……!!何で……!!」

 

「せっかくだ。オーズの力、俺にも試させて貰おうか……()()()()()()()でな…」

 

その2枚をドライバーに装填しながらオーズは呟く。驚愕するアンクはハッとし、人格が変わったオーズに問い掛けた。

 

「貴様…!何で映司の中にいやがる!?あの時、()()()()()()()じゃないのか!?」

 

「さァな。俺にもよく分からんが、()()()()()オーズの中に居た。今は感謝しろ、アンク!あの目障りなもう1人のオーズを倒した後、お前からコアメダルも全部奪ってやる…!」

 

オーズは憎悪を現したような目付きでアンクを睨み、ドライバーに装填したコアメダルが()()の色へと発光する。そして、オースキャナーを取り出し、ドライバーへとスキャンする。読み込む音が暗闇の森へと響き渡ると、暫く余韻が残る。オーズは不敵に笑い、立ちあがろうとするヴィランオーズ、ポセイドンを見つめ、その口を開いた。

 

 

 

 

「確か…こう言うんだったな…。〝変身〟」

 

 

 

 

クワガタ!

 

カマキリ!

 

バッタ!

 

 

 

 

ガ〜タ!ガタガタ・キリッバ・ガタキリバ!

 

 

 

昆虫類のコンボソングが鳴り響き、オーズはエネルギー状の虫を模した輪をその身に纏う。その体は緑一色に覆われた姿、〝ガタキリバ〟コンボへと変わり、戦闘態勢へと入った。そして、その姿を見ていたアンクは再び目を見開きながら、オーズへと叫ぶように声を掛けたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何でここにいやがる…!〝ウヴァ〟!!」

 

 




はい!どうもしょーくんだよです!

ちょっとした小話なんですが、今回出て来たシガゼシコンボ。コレのコンボ特性がちょっとイマイチな感じがしたので、オリジナルとして『植物群生』という特性を付けました!両手を地面に当てる事で植物が生えて敵を拘束したり、鞭のように攻撃します!
シガゼシの変身音に木が倒れるような音がしたのでこれは植物関連の特性付けようと思いました←



No.84 僕のヒーローと偽りのヒーロー

更に向こうへ!Plus Ultra!!
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