いつかの明日へ、【ヒーロー】は助け合いでしょ   作:しょくんだよ

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準備と決意と行動開始

ひょひょひょ高評価ーーーー!!
高評価はありがとうございますううう!!これからも頑張りますですーー!!本当ありがとうございます!!


No.89 決行の夜

 

A組の生徒達が病室から出て行った後、緑谷は健診の為、整形外科の別室へと連れて行かれた。両腕に付けられたギブスを取ると、担当医は緑谷のカルテを見ながら口を開いた。

 

「君が寝込んでいる間、リカバリーガールにかなり強めの治癒を施してもらったから、動かせるとは思うが…、その()を見れば分かると思うけどグチャグチャだったよ。この短期間で何度も大怪我をしてると思うけど、君ね、ぶっちゃけ今回は比にならん程重いよ」

 

ギブスをとった緑谷は両腕を見ながら目を見開き、同時に担当医の言葉に驚く。自由に動かせてはいるが、生々しい傷跡が残っており、若干骨格も変わっていた。その比にならないと聞いた緑谷は恐る恐る質問をする。

 

「比にならん…っていうのは…?」

 

「君の今までのカルテ、特別に借りたんだけど、毎度内側から爆竹が爆発したような壊れ方してんのね」

 

担当医がそう言っていると、看護師が緑谷の両腕に包帯を巻き直し始める。「どうも…」と緑谷は小声で会釈をすると、担当医は続けて説明をし始めた。

 

「で、今回は特に酷いのよ。人の体って普段は80%程度のパワーしか出せないようリミッター掛かってんのね。でも危機的状況に陥った時、リミッターを外して100%出せちゃう事あるのよ。『火事場の馬鹿力』ってやつ。リミッターがあるって事は、それ体の負荷が耐えられないからってことよね?今回の君は恐らくその〝馬鹿力〟の状態でパワーが噴出………しかも長時間続いた」

 

担当医の言葉に緑谷は俯く。ワン・フォー・オールの力を受け継いだ緑谷はオールマイトが言っていたように、受け継がれたと言えど、器が儘ならなければ負荷に耐え切れず、四肢が爆散してしまう力。そのパワーを抑えようと5%のフルカウルを習得したのだが、目の前で襲われそうになった洸太の為に100%を何度も使ってしまった。緑谷は申し訳なさそうに腕を摩ると、担当医は続けて口を動かす。

 

「骨、筋肉がボロボロなのがマズイが…何より靭帯ね。靭帯は関節を保持するとこ…、そこが酷く劣化している。つまりね、あと…どうだろう、二、三度が…同じような怪我が続けば、腕の使えない生活になると思っといて」

 

それを聞いた瞬間、緑谷は愕然とした。今まではリカバリーガールに治してもらい続けて来たが、今回は今までの積み重なったダメージが耐え切れなくなって靭帯に影響が出てしまっている。治して貰えると、心のどこかで思っていたその感情が今ぶち壊された気分になってしまう緑谷。

 

「元に戻すには、リハビリあるのみ。痛くてもガンガン使ってって、後のことは地元…雄英の方に任せることになっているから…。ここで今日は退院ね。リカバリーさん呆れてたよ……。きっと沢山怒られてきたんだろね」

 

体育祭を期に、もう金輪際、こんな怪我は治癒出来ないと言われたのにも関わらず、やってしまった事を思い出す緑谷。申し訳なさそうに途方に暮れていると担当医は胸ポケットから1枚の手紙を取り出す。

 

「ただ、君に救けられた人間はいる。病は気から…あんま思い悩まず前向きにね……」

 

広げられた手紙、そこにはひらがなで感謝の文が書かれていた。宛先は、(ヴィラン)から救け出した洸太からだ。緑谷は受け取り、その文を読むと、グッと歯に力を入れていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

☆★☆★☆

 

退院と言われた緑谷は、母親が持って来てくれた私服に着替え、病室のベッドの布団を綺麗に畳んでいた。すると、扉からノックの音が聞こえ、「はい?」と緑谷は返事をする。ドアが開かれると、そこには耳郎が立っていた。

 

「耳郎さん!?」

 

「……おっす、緑谷………具合どう?」

 

「僕は大丈夫だけど、耳郎さんの方こそ大丈夫なの!?」

 

バツが悪そうに返事をする耳郎に、緑谷は慌てて駆け寄る。

 

「何とかね……葉隠はまだ意識戻ってないんだけど………それより、話があるんだ」

 

(ヴィラン)のガスの影響で昏睡状態になっていた耳郎と葉隠。「良かった…」と呟く緑谷に、耳郎は真剣な目付きで、その話を持ち掛けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★☆

 

 

一方その頃、鴻上ファウンデーションに訪れたアンクは、会長室のソファーに腰掛け、用意されていたセルメダルをその腕に呑み込むように入れていた。それを見ていた鴻上が口を開く。

 

「アンク君、我が社にとってセルメダルは大変貴重な代物でね。あまり使い過ぎるのもよろしくないのだが…」

 

「ハッ、俺達に協力がどうとか言ってなかったか?コレも協力の一環だと思っとけ」

 

「ふむ……。では、前借りと言う形で、そのセルメダルは提供しよう」

 

「あ…!?……チッ、相変わらず器の狭い野郎だなぁ」

 

保須の一件で大量に出現したヤミーを倒し、そのセルメダルは全て鴻上ファウンデーションが研究材料として回収していた為、かなりの量が保管されているが、それ以来はヤミーの目撃情報は全く無いので、それからは収穫をしていないのだ。バースの実験がてらに消費している為、鴻上の表情を見る限り使うのは少々嫌がられている。

文句を垂れ流しながら、アンクはある程度セルメダルを補充し終えると、本題の話を持ち掛けた。

 

「で、さっきの話だが……」

 

「火野さんの中にアンクさんと同じグリードが生まれたのはびっくりですね……」

 

「………」

 

鴻上の隣に立っていた里中が、林間合宿の事情を聞いて驚いていた。普段は冷静な素振りを振る舞っているが、火野のオーズの力に加えてグリードが増えるとなるとある意味オーズの力の代償のような捉え方として認識出来る。ふと、鴻上は無言で里中の言葉を聞いていたと思いきや、突然静かに笑い出し、バッと椅子から立ち上がった。

 

「ンンン素晴らしい!!!アンクというグリードが生まれながらも新しいグリードが誕生した!!昆虫をモチーフとしたウヴァ!!新たなる命の誕生だよ!!ハッピーバースデイイイァッ!!!!」

 

相変わらずのテンションの鴻上に、バンッ!と机を叩いて立ち上がり、アンクは激昂した。

 

「祝ってる場合か!!そのせいで映司が攫われたんだぞ!おまけにコアメダルも殆ど持ってかれてこっちはドン底に堕とされたような最悪の気分なんだよ!」

 

「そんなに怒らなくても…」

 

「黙れ女狐!」

 

「…会長、アンクさんが消費したセルメダルの利子を20%追加しといてください」

 

それを見た里中が、若干ほくそ笑むようにボソッと呟くと、聞こえていたのか吠えるアンク。だが、スンとした里中が会長に嫌味を言うように言伝を伝えると、アンクは「ンなっ!?」と声を漏らしていたが、話が逸れている事にハッとし、アンクは鴻上に声を掛ける。

 

「……おい、さっさと(ヴィラン)連合らを探して映司を連れ戻すぞ。お前らのこのサポートアイテムとかいう会社なら、そういう捜索とかも出来る道具があるんじゃないのか?」

 

「生憎ですが、人を探すようなアイテムは我が社で作られていません。それに、個人の会社で勝手に行動すれば、それこそ問題になりますので」

 

「フン、お得意の〝個性〟を使えば良いだろ」

 

鴻上の〝個性〟『権限』は、発したその宣言通りの世界の基準として認識されるが、そのリスクは私生活でテンションが常時ハイになる事。発令した権限の内容が大きければ大きい程、下手をすれば命に関わってしまう〝個性〟だ。簡単に言うアンクに里中は「無茶を言わないでください」とキレ気味に言う。すると、会長室の扉が勢いよく開かれる。そこに立っているのは伊達明だった。

 

「会長〜…ってアレ!?アンコじゃん!何でここにいんの?」

 

「アンクだ!…クソ、まァちょうどいい、伊達。映司を探すの手伝え」

 

相変わらずの呼び名にいい加減呆れてしまうアンクだが、バースの力が使える伊達に要件を上から目線で言うと、伊達は「あ〜」と口を開いた。

 

「良いよっ」

 

「…?やけに素直だな?」

 

「ちょっと伊達さん、個人での捜索は上部の人に怒られますーー」

 

「まぁまぁまぁ、里中ちゃん。俺がそんな単純な男に見える?」

 

「見えます」

 

「はい即答〜…相変わらず酷いねぇ……」

 

さらっと了承する伊達にあっけからんとなったアンク。里中の毒舌に落ち込みながらも、伊達は了承した理由を応えた。

 

「ちょうど今、その()に関しての依頼が来たのよ、警察の人から。……火野の奴、(ヴィラン)に攫われちまったんだろ?」

 

「ほぉ!伊達君、詳しく聞かせたまえ」

 

伊達の報告に、興味深そうにニヤリと笑う鴻上は要件を聞こうとそう言ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

そして、その夜。

場所は変わり、緑谷達が入院していた病院の外で爆豪達を救出するべく、集まった轟と切島。約束の時刻となった時間に、切島がボソッと呟いた。

 

「八百万……考えさせてくれっつってくれた……。どうだろうな……」

 

「まァ、いくら逸っても結局あいつ次第……」

 

発信機を取り付けた八百万がついて来てくれれば、もう一つ発信機のデバイスを創って、爆豪達がいる場所を特定出来る。今回の轟達の作戦に同行してもらえないかと八百万にも頼んではいるものの、それに参加してしまえば、もし学校や警察側にバレた時には今の人生が大きく変わってしまうかもしれない。それでも友を救けようと切島や轟は覚悟は決めていたが、結局の所、その感情で動くのは本人次第だ。互いはしばらく無言で待っていると、病院の自動ドアが開かれる。切島は「お、来た」と気付くが、その出てきたメンバーを見て、轟と切島は目を見開いた。

 

「緑谷……、っ!?」

 

「え、耳郎!?」

 

「………っす」

 

八百万とその後ろに緑谷。そして、昏睡状態だった筈の耳郎が私服に着替えて立っていた。驚愕する2人に耳郎は挨拶をすると、切島が直ぐに口を開いた。

 

「えっ!?何で耳郎が…!?お前意識戻った!?よ、良かったな!」

 

「う、うん…」

 

「耳郎、お前がここに居るって事は……そうなんだな?」

 

驚く切島に対して、この場にいるという事は、そういうことだと理解した轟が聞くと、耳郎はコクリと頷く。

 

少し時間は遡り、病室で緑谷と会った耳郎は、彼にこう話していた。

 

 

『意識が戻った時、隣の部屋がヤオモモの病室だったんだけど…ウチの〝個性〟で聴いた…。ヤオモモと轟、切島の会話…全部………ウチも行く』

 

『耳郎さん……でもーー』

 

『行っちゃいけない事はわかってる。でも話を聞いた以上、ウチもジッとなんかしてらんないよ…!だから…お願い、緑谷…!』

 

 

真剣な眼差しで訴えてくる耳郎に、緑谷は何も言えなかった。自分も今からその過ちを犯しに向かうからだ。説得力のかけらも無い。緑谷はそのまま了承し、今現在、ここに連れて来ていたという訳だ。轟の言葉に頷いた耳郎は、今の意思を伝えようと口を開く。

 

「ウチ、透と直ぐに意識無くなってたけど…まさか(ヴィラン)が襲撃して来たなんて思ってなかった…っ。ウチが倒れている間、クラスの皆は必死に戦ってたんだよね……っ…!知らない間に…何も出来なかった自分に…悔しいんだよ…!必死に火野が戦っている間に…ウチは…何も…!!」

 

「耳郎……」

 

「ウチの〝個性〟があれば、火野と爆豪を直ぐに見つけられると思う…。だから……!」

 

悔しさで涙ぐむ耳郎に、轟と切島は顔を顰める。自分の能力をアピールし、一緒に同行するとお願いしようとしたその時、切島達の背後から「待て」と声が聞こえる。振り返るとそこには、飯田が立っていた。

 

「飯田……」

 

「……何で、よりにもよって君達なんだ……!」

 

飯田のその言葉は、轟と緑谷に向けられていた。2人は黙って飯田を見つめていると、飯田は震えながらもその口を開く。

 

「俺の私的暴走を咎めてくれた……、共に特赦を受けた筈の君達2人が…っ!!!何で俺と同じ過ちを犯そうとしている!?あんまりじゃないか…!」

 

「何の話をしてるんだよ…」

 

保須の一件、ヒーロー殺しに復讐しようと感情的に動いた飯田を止めてくれた轟と緑谷が、この場所にいる。それはもう、今から爆豪達を救けに行こうと集まっていたからだ。切島の誘いの声を聞いた飯田は、止めようとここに来たのだろう。保須事件の詳細を知らない切島は聞こうと尋ねるが、無言で轟が彼の肩に手を置き、それを止めた。

 

「俺達はまだ保護下にいる。ただでさえ雄英が大変な時だぞ。君らの行動の責任は誰が取るのかわかってるのか!?」

 

「飯田君、違うんだよ。僕らだってルールを破っていいなんて…」

 

俯きながら言い続ける飯田に、緑谷は近寄りそう言うが、それは言い訳に過ぎなかった。飯田はプルプルと拳を震わせていた、その次の瞬間。

ゴチッ!と鈍い音が響く。震わせていた拳を、緑谷の頬目掛けて飯田が殴ったのだ。驚愕するメンバー、それを無視して、飯田は感情的になって緑谷を叱責する。

 

「俺だって悔しいさ!!心配さ!!当然だ!!俺は学級委員長だ!クラスメイトを心配するんだ!!爆豪君、火野君だけじゃない!!君の怪我を見て、床に伏せる兄の姿を重ねた!!君達が暴走した挙句、僕の心配はどうなってもいいって言うのか!!」

 

兄のように、これ以上、大事な仲間が傷付くのは沢山だ。無謀な真似をする彼の行動に怒り、そしてそれは悲しみへと変わり、飯田はそっと緑谷の両肩に手を置いた。

 

「僕の気持ちは……!どうでもいいって言うのか……!」

 

「飯田君……」

 

「飯田」

 

友達を悲しませる事はしたくなかった緑谷は、それでも説得しようとその口を開く。だが、それに割入るよう、轟が口を動かした。

 

「俺達だって何も正面切ってカチ込む気なんざねえよ」

 

「……!?」

 

「戦闘無しで救け出す」

 

その言葉に飯田は何を言ってるんだと言わんばかりの表情で驚愕する。すると、切島が後を説明するように言った。

 

「要は隠密活動!!それが俺ら卵の出来る…ルールにギリ触れねえ戦い方だろッ」

 

「なら、ウチの〝個性〟が必要だね」

 

戦闘せずに救う事が出来れば、処罰を降される可能性は低い。轟と考えたその意気込みを、漢らしく切島が発言すると、耳郎が耳朶のプラグを指に回しながら自身気にそう言う。

 

「………私は、轟さんを信頼しています…が!!万が一を考え私がストッパーとなれるよう…、同行するつもりで参りました」

 

「八百万君!?」

 

「八百万!」

 

「ヤオモモ…!」

 

黙っていた八百万から、まさかの同行すると聞けて飯田は驚き、切島と耳郎は嬉しくなって笑顔を見せる。緑谷もまた、八百万に便乗して口を動かした。

 

「僕も…、自分でもわからないんだ……。手が届くと言われて…、いてもたってもいられなくなって…救けたいと思っちゃうんだ」

 

かのトップヒーローは、学生時から逸話を残している。彼らの多くが話をこう結ぶ。

〝考えるよりも先に体が動いていた!〟と。

緑谷の真っ直ぐな瞳、その揺るがぬ想いに飯田は「平行線か…」と息を整えながら呟き、そして、覚悟を決めた表情で飯田は口を開いた。

 

「……ならば、ーーっ……俺も連れて行け」

 

「「「「「!?」」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

鴻上ファウンデーションにて、塚内警部からの(ヴィラン)連合掃討、及び爆豪、火野救出作戦の要請を承諾した鴻上は、伊達を向かわせようと指示を出した。伊達はセルメダルが大量に入ったミルク缶を背負い、アンクに声をかける。

 

「アンコー、準備出来たか?」

 

「…アンクだ、俺はいつでもいいぞ」

 

「お前は火野の〝個性〟だから戦闘には参加出来ない。あくまで救出のサポートだ、忘れんなよ?」

 

伊達の言葉にアンクは「フン」と鼻を鳴らしてそっぽを向く。今回の作戦にアンクも特例として参加する事になったのだが、〝個性〟手続きではアンクは火野の〝個性〟と認識されている為、アンクが戦えば、火野が〝個性〟を使用してしまう事になってしまう。無論、それを聞いて納得の行かないアンクは鴻上の権限に頼ろうとしたが、「今後私の〝個性〟を使うなら、ヤミーを倒した暁にセルメダルを60%を支払いたまえ」と要求されたのだ。前世でも似たような台詞に踏まえて狡賢いその要求に、アンクは不服そうに断っていた。よって仕方なく、()()()()()サポートに回ると了承したわけだ。

準備が整った伊達の後を追おうとアンクも一歩踏み出す。すると、里中が声を掛ける。

 

「アンクさん、真木博士からのお預かり物です」

 

「あ?」

 

差し出された黒い箱をアンクは疑問を抱きながら受け取り、さっそく中身を開ける。すると、そこにはなんとコアメダルが3枚入っていた。だが、アンクはその()()()()()()()コアメダルを見て目を見開いている。左から順番に、〝カンガルー、パンダ、ヤドカリ〟と、造形が模されたコアメダルを見て、アンクは口を開いた。

 

「何だ、このメダル…?」

 

「以前後藤さんが、I・アイランドから持ち帰った黒いコアメダルを元に、独自で開発された人造のコアメダル…らしいです。研究材料の報酬として受け取って下さいと、真木博士が」

 

「……ほぉ、感情無さそうなあの男も、偶には気の利いた事をしてくれるなぁ」

 

どうやら、I・アイランドを襲撃したテロ組織の1人、オルカがウォルフラムから譲り受けた甲殻類の黒いコアメダルを、後藤は持ち帰り、それを真木に渡したようだ。里中の言う通り、人造で造られたコアメダルを元に、新しいコアメダルを作り出す事に成功したのだろう。

アンクはニヤリと笑い、その中から3枚のコアメダルだけを取り、黒い箱はその場でポイっと投げ捨てる。それを見て里中は顔を顰めているが、アンクは無視をしてその場を後にし、伊達を追っていったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

耳郎、八百万、そして飯田も同行する事になった緑谷一行は病院を出て、駅へ向かおうと歩き出した。その道中、飯田が申し訳なさそうに緑谷に声を掛けた。

 

「暴力を振るってしまった事…陳謝する。ごめん……」

 

「本当ですわ飯田さん。()()()()()()に対し、説得力が欠けてしまいます」

 

「だっ大丈夫だよ、気にしてないから」

 

殴ったのにも関わらず、一緒に着いて行くと矛盾を言い出した飯田の行動に対して八百万が呆れていると、緑谷は両掌を差し出してフォローする。

すると、八百万の言葉に対して飯田は同行する意思を話した。

 

「俺は…君達の行動に納得いかないからこそ同行する。少しでも戦闘の可能性を匂わせれば即座に引き戻すからな…!言わば監視者…そうウォッチマン!」

 

「メンじゃねえのか?」

 

「manは単体、menは複数って意味だよ」

 

「複数…あー、成る程な!」

 

「ウォッチマン飯田…」

 

監視をする男と意味で飯田は緑谷に指を指すと、切島が疑問を口にし、耳郎がそれに応える。切島は納得していると、ボソッと轟が隣で呟いていた。

 

「私もですわ。ウォッチマン八百万ですわ」

 

「お、2人ならメンじゃねーか?」

 

「ウォッチメン飯田と八百万…」

 

すると、八百万も便乗してそう言いながらポケットから携帯端末機らしき物を取り出す。2人揃えばメンになると思った切島が言うと、轟はまたもボソッと呟く。それを聞いた耳郎は面白かったのか「ブフッ」と吹き出していた。八百万は恥ずかしくなったのか、「コホン!」と咳払いをして注目を集め、口を動かした。

 

「これはプロの仕事。側から見ればあなた方が出張る必要性は一切ありません。しかしお気持ちがよくわかるからこその妥協案という事、お忘れなきよう」

 

端末機の正体は発信機を追う為の受信デバイス。それを見た切島は「おおっ」とやる気を見せ、皆の顔に不敵な笑みを見せる。だが、八百万は思っていた。戦闘皆無の救出など現実的ではなく、この場にいる愚か者達(メンバー)が冷静になれていない事を自覚していないと承知していた。その現実という名の現場を見れば、非現実的発想に、気付く筈だと、八百万は信じて緑谷の後を追った。

 

「…結局、アンク見当たらなかったな」

 

「あぁ…まさかあいつ、1人で行ったんじゃねえか…?」

 

「えっ?轟、どういう事?」

 

ふと、ボソッと切島に声を掛ける轟。切島も何となく勘付いていたのかそう応えると、何も事情を知らない耳郎が反応する。

 

「襲撃された時、火野と逸れちまったみたいでよ。意識を失ってたB組の円場ん中に入って行動してたんだけど、途中で逸れちまったんだ…」

 

「B組の奴らもガスで意識失って病院に搬送されたけどよ、その円場の中にアンクが居なかったんだ。ほら、アンクって火野の中いたら右腕が変わってたろ?でも病室に居た円場の腕変わってなかったからよ……」

 

アンクが他人に憑依すれば、髪型も変わるし、見た目もそうだが、1番の特徴はその右腕がアンクの右腕となる。病室に昏睡状態となっていた円場の見た目は何も変わっていなかったので、あの場に居なかったと轟と切島は推測していた。それを聞いた耳郎は、目を見開くと、俯きながら口を開く。

 

「……アンクにとって火野は多分、凄い大事な存在だと思う。…アイツもきっと、ジッとしてられなかったんだよ…」

 

「…そうだな、友を大事にする気持ちは痛い程分かるぜ…!だけど1人で(ヴィラン)のとこ行くのは無謀過ぎるぞ!?」

 

「なら、早く行かないと…!こっちが早く行けば、アンクと合流出来ると思うっ。アンクって結構冷静な奴だから、無謀な事はしない筈だから」

 

耳郎の言葉に、切島は「だな!」と拳を作る。ふと、それを見ていた轟が、耳郎に声を掛けた。

 

「…耳郎、お前火野こと好きなんだな」

 

「HE?」

 

突然、あっさりと言い放ったその言葉に、理解が追いつけずキョトンとする耳郎。だが、次第にその発言が脳内に響き渡り、耳郎の顔が一気に真っ赤になった。

 

「……は?…え!?ぅえっ!?ぇええっ!?ととトととととッ!!突然何言い出すんだよ轟!?!」

 

挙動不審になって慌てて両腕をブンブンと振るい、真っ赤になる顔を隠そうとする耳郎。ポカンと見守る切島の隣で、轟は「いや…」と頬を指で掻きながら口を動かした。

 

「こんなの言うの…恥ずかしいんだけどよ…俺も火野を友達と思ってるから…心配になる気持ち…俺にも分かるぜ……」

 

「へ………?あ……あぁ〜…!そ……そうだね…!そうだよ…!うん…!(イケメンの発言怖ぇえ〜!)」

 

友達として好きだから心配してる。そう捉えていた轟の発言に、理解した耳郎は、変に勘違いしてしまったと更に顔を赤く染めていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★☆

 

 

 

死柄木らが潜む都内の闇密かに立つバー。(ヴィラン)連合が集まったその部屋に、拘束具で縛られて椅子に座っている爆豪に、死柄木は声をかけた。

 

「早速だが…ヒーロー志望の爆豪君。火野映司()と同じように、俺らの仲間にならないか?」

 

カウンターには黒霧、トガ、死柄木。部屋の隅には荼毘、スピナー、マグネ、仮面男の〝Mr.コンプレス〟。中央に立つトゥワイス、脇真音姉弟。そして、カウンター席に座って爆豪を不敵な笑みで見つめる火野映司事、ウヴァ。(ヴィラン)側に居てはいけない存在が居る中、死柄木の誘いの言葉に爆豪は脂汗を流しながら、不敵に笑いながら、こう言い放った。

 

 

「寝言は寝て死ね…!」

 







No.90 バカとプロと作戦開始

更に向こうへ!Plus Ultra!!
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