いつかの明日へ、【ヒーロー】は助け合いでしょ   作:しょくんだよ

92 / 132
カウント・ザ・メダル!現在、オーズの使えるメダルは…!


タカ×1
トラ×1
クワガタ×1
カマキリ×1
バッタ×1


黒幕と暴走と提案


No.92 巨悪と無敵のコンボ

 

黒い液体から脳無が現れ、混戦に包まれた隠れ家のバー。その騒動が発生した2分前、廃倉庫に居た緑谷達は、奇襲を掛けたベストジーニストらの衝撃の爆風によって転がっていた。

 

「ど…どうなってるんだ!?」

 

「いっ、いきなりMt.レディが現れて…廃倉庫…ぶっ壊した…」

 

「いっててて………」

 

起き上がる飯田が状況を確認しようと声を掛けると、かろうじて現場を見ていた耳郎が応える。衝撃で落下した緑谷は腰を打ったのか押さえながら立ち上がると、切島が飯田の背中を、耳郎が轟の背中を借りて壁をよじ登り、顔を出した。

 

「Mt.レディにギャングオルカ…、No.4のベストジーニストまで……!」

 

「プッシーキャッツの虎もいる…。それに警察の人達も沢山…!」

 

半壊して中が剥き出しになっており、その室内には脳無を捕らえたベストジーニストらが立っていた。

視点は変わり、巨大化しているMt.レディは四つん這いになって脳無を握っていると、気持ち悪そうな表情をして口を開く。

 

「うええ〜〜〜、これ本当に生きてんのォ…?めっちゃ勢い良く突入しましたけど、こんな楽な仕事でいんですかね、ジーニストさん。オールマイトの方行くべきだったんじゃないですかね?」

 

「難易度と重要性は切り離して考えろ、新人。機動隊、すぐに移動式牢(メイデン)を!まだいるかもしれない、ありったけ頼みます」

 

文句を垂れるMt.レディに自身の服から出た繊維で捕縛しているベストジーニストが喝を入れる。今年からプロヒーローとなった彼女とは打って変わって、彼の緊張は解けることなく、警戒態勢を随時行なっていた。

 

 

 

ベストジーニスト

 

個性『ファイバーマスター』

 

繊維を自在に操作する!

人が服を着る以上彼には抗えないぞ!ちなみにデニムが最も操りやすく、スウェットがちょっぴり苦手だ!

 

 

「ラグドールよ!返事をするのだ!!」

 

一方、脳無と同時に保管されていた行方不明のラグドールを抱えた虎が必死に声を彼女に掛ける。見かけたギャングオルカがひとまず安堵した様子で口を開いた。

 

「チームメイトか!息はあるのか、良かったな」

 

「しかし…様子が……!何をされたのだ…、ラグドール!!」

 

液体に入れられ、裸体となっているラグドール。目は開いており、意識はあるみたいだが、死人のような瞳で目は上の空だった。

 

プロヒーローが来た事によって、緑谷達はここに居る事は無くなり、飯田は先陣をきって見つからないようにこの場を去ろうと声をかけた。

 

「ヒーローは俺達などよりもずっと早く動いていたんだ…!」

 

「すんげえ…」

 

「さぁ、すぐに去ろう。俺達にもうすべき事は無い!!」

 

危ない真似をしようとした緑谷達よりもヒーローの方が早く事を終息させた。その安心感に安堵した飯田は嬉しそうにそう言うと、緑谷は不安そうにベストジーニストらの方を見つめて口を開く。

 

「オールマイトの方…かっちゃんはそっちにいるのか…」

 

「……火野も、きっとそっちに…」

 

「オールマイトがいらっしゃるのなら尚更安心です!さァ早く…」

 

探していた友人は別の場所に拉致されている。オールマイトが救けてくれるならこれ程心強いものは無い。だが、緑谷と耳郎は何とも言えない表情でその場を見つめていた。

時間は差し迫っており、いつ見つかってもおかしくはない。八百万が飯田の後に続くように、立ち止まっている緑谷と耳郎に声を掛けた、その直後だった。

ベストジーニストらが居る廃倉庫内、暗闇に紛れた奥の部屋から1人の男性の声が聞こえた。

 

 

「すまない虎。前々から良い〝個性〟だと……、丁度良いから…貰う事にしたんだ」

 

 

「「!?」」

 

「止まれ!動くな!」

 

気配すら感じなかったその男性に驚く虎。ギャングオルカはバッと腕を突き出し男に命令するが、男はゆっくりとこちらに向かって歩く。

 

「連合の者か」

 

「誰かライトを…」

 

暗闇で見えない以上、警戒を緩めず身構えるギャングオルカと虎。灯りを照らそうと指示を出したその時、男性は口を開く。

 

「こんな身体になってから、ストックも随分と減ってしまってね…」

 

圧をかけられても尚、男性は歩みを止めずにこちらに向かって来る。その瞬間、ベストジーニストが服の繊維を操り、男性のスーツを縛り上げ拘束する。

 

「ちょ、ジーニストさん、もし民間人だったら…」

 

「状況を考えろ、その一瞬の迷いが現場を左右する。(ヴィラン)には何もさせるな!」

 

Mt.レディは言うが、冷静に考えればこんな場所に民間人など居る可能性は極めて低い。ベストジーニストの言う通り、判断を見誤ってしまえばこちらに被害が及ぶ事も有り得る。即座に鎮圧して執行する。その行動を取り乱さず、ベストジーニストは特殊部隊に指示を出そうとした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「せっかく弔が自分で考え、自分で導き始めたんだ。できれば邪魔はよしてほしかったな」

 

一瞬、1秒も満たないその瞬間。緑谷達は何が起きたのか分からなかった。気付けば、突如途轍もない轟音と共に、衝撃波が堀を通して響き渡り、聞こえてくるのは男性の声と建物の瓦礫が崩れるような音だけがした。この場に居た者は取り憑かれるように立ち止まる。叫び声を上げなかっただけでもマシだと言えよう。だがその脅威に緑谷達は膨大な冷や汗とかつて味わった事のない死の恐怖が襲ってきていた。

ブロック状の岩壁の向こう側に見えるのは()()()()()()()()()後の光景だった。周囲の建物は愚か、約半径数km圏内にあるすべてを消し飛ばしている。ベストジーニスト達の生死も分からないこの状況、緑谷の脳内にオールマイトの言葉が過ぎった。

〝君はいつか奴と、……巨悪と対決しなければならない…かもしれん〟と。

そして今向こうに居る男性の言っていた『弔』の言葉。ここまでキーワードが揃っていれば、思い当たる人物はもう1人しかいない。

 

「(なんだよ…嘘だろ!?オールマイト…まさかじゃああれが……()()()()()()()()()()……!!)」

 

息を荒くする緑谷が壁越しに見つめるその先、顔を覆っているパイプのような配管が取り付けられた真っ黒で不気味なマスクをし、黒のスーツを見に纏ったその巨悪の男、『オール・フォー・ワン』は「さて、行くか…」と、まるで準備運動をし終えた様子で呟いたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

「ぼえ!!!」

 

「!!?」

 

爆豪と火野ウヴァが黒い液体に呑まれ、消え去った後、その現状は伝染するかのように、他の(ヴィラン)達の口から黒い液体を吐き出す。

 

「マズい!全員持っていかれるぞ!!」

 

「クソ!どーなってんだ一体!?」

 

「おんのれッ!私も連れて行け!!」

 

グラントリノ、アンク、オールマイトは気絶している荼毘と黒霧を含め、次々に呑まれていく(ヴィラン)達を捕まえようと駆け出す。だが、黒い液体は直ぐに連合達を覆い、瞬く間に(ヴィラン)達はその場から姿を消してしまった。

 

「すみません皆様ァ!!!」

 

「お前の手落ちじゃない!俺達も干渉できなかった!恐らく黒霧の『空間に道を開く』ワープじゃなく、『対象のみを転送する』系と見た!」

 

拘束出来なかったと自分の落ち度だと謝罪するシンリンカムイにエッジショットはフォローを入れながらこの状況の出来事を推測する。

瞬間、この場に残っていた脳無達がオールマイトに目掛けて一斉に飛び掛かり、その身体に噛み付いた。

 

「オールマイト!!」

 

グラントリノは叫ぶと、オールマイトは床を蹴り、その体を捻らせ空中へと身を出すと凄まじい速度で回転する。

 

「〝Oklahoma(オクラホマ) SMASH〟!!!」

 

その勢いに耐えきれず脳無達は四方八方へと投げ出され、壁や床を突き破り吹き飛んだ。その内の一体は天高く上空へと飛ばされるのを下で脳無と交戦していた特殊部隊の1人が見て呟く。

 

「景気のいいぶっ壊しぶりだな…!!」

 

「事が事だからだ!(ヴィラン)に集中しろ!こいつら…、()()()から流れて来てるのか…!?」

 

廃倉庫に保管されていた脳無。そちら側から送り込まれたのかと警察らは動揺し、混戦となっていた。その中、塚内は応答しない無線機を握りしめ、エンデヴァー並びにバースへと声を掛ける。

 

「ジーニストらと連絡がつかない!恐らくあっちが失敗した!」

 

「こっちに脳無が来たって事は、向こうはヤバい状況なんじゃないのか!?」

 

「グダグダじゃないか全く!!!!」

 

バース・CLAWsを使用し、右腕全体に纏った中距離型支援ユニット『クレーンアーム』を装甲したバースは先端のフック『シュプリンガーハーケン』を射出し、複数の脳無達を拘束している中叫ぶと、炎を脳無に向けて放射し、呆れながら怒鳴るエンデヴァー。すると、隠れ家の壁が壊され、剥き出しの室内からオールマイトが「ゴホッ」と咳き込みながらエンデヴァーに声を掛けた。

 

「エンデヴァー!!大丈夫か!?」

 

「どこを見たらそんな疑問が出る!?流石のトップも老眼が始まったか!?行くならとっとと行くがいい!!」

 

「こっちは任せて下さいよ、オールマイト!」

 

「…あぁ、すまない…任せるね…!」

 

怒号を浴びせるエンデヴァー。だがそれが彼なりの呼び掛けでもあり、オールマイトはその姿勢に安心してこの場を任せ、オール・フォー・ワンが滞在しているであろう、廃倉庫の方へ飛び立つように向かった。すると、その後ろに居たアンクはその方向を見つめながら、神経を研ぎ澄ます。

 

「…まだ近くで気配を感じるな…、逃してたまるかっ……!!」

 

「っ!おいお前!!」

 

微かに感じるウヴァと槍無の気配。それを頼りに、アンクもオールマイトの後を追うようにその場から翼を広げて飛び立つ。それを見たグラントリノは呼び止めようと声を掛けるが、アンクは既に空を舞って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★☆

 

 

オール・フォー・ワンが何らかの衝撃波の〝個性〟で消し飛ばした廃倉庫周辺。そこに居合わせたMt.レディ、ギャングオルカ、虎とラグドール、警察の部隊達は深手を負いつつも、まともに食らわずに生存していた。それは1人のプロヒーロー、ベストジーニストがとっさの判断で救出したからこそである。その重症を負ったベストジーニストにオール・フォー・ワンは静かに拍手を行い、賞賛していた。

 

「さすがNo.4!!ベストジーニスト!!僕は全員を吹き飛ばしたつもりだったんだ!!皆の衣服を操り瞬時に端へ寄せた!判断力、技術…、並の神経じゃない!」

 

「……こいつ…!」

 

ベストジーニストの行動に敬意を表するオール・フォー・ワン。その余裕のある笑みと言動にベストジーニストは息遣いを荒くしながらも巨悪を睨む。ふと、ベストジーニストはこの作戦が始まる前の作戦会議の事が頭に過った。

連合には間違いなく連合を裏で動かす者がいる。その者の強さはオールマイトに匹敵する力を持っている。だが、そのくせ狡猾で用心深く、自分の身が危険に晒される時は決して表に出てこないと情報部から知らされていた…のだが。

 

「(話が違う……!!)」

 

逆にヒーロー側が押していたと思われるこの状況に()()進んで現れたのだ。臆するベストジーニスト。

しかし、その考えは一瞬で掻き消される。

彼はプロヒーロー、即ち一流。そんなモノを失敗の理由にーーー…

 

 

ズドッ…!

 

 

 

「……!?!」

 

そう思っていた瞬間、ベストジーニストの腹部に向けて、オール・フォー・ワンは指先を伸ばすと目視出来ない程の空気丸を飛ばした。

 

「相当な練習量と実務経験故の強さだ。君のは…要らないな。弔とは、性の合わない〝個性〟だ」

 

興味がないように吐き捨てる冷静な声。オール・フォー・ワンしかいないこの現状、緑谷達は震えが止まらず、動けずにいた。彼ら生徒とは違いヒーロー達は迅速な行動でこの場を終息させたプロ。それをかき消すように巨悪の者は立っていた。明らかに違いすぎるレベル。これが現実なのだと思い知らされる状況。本当の死の恐怖が襲い掛かり、冷や汗は止まらず、恐怖と震えが彼らを推していた。すると、その時。

 

「ぶほっ!!ぐっ…!?ゲッホッ!」

 

「ゲッホ!!くっせぇぇ…んっじゃこりゃあ!!」

 

黒い液体に呑まれ、転送された火野ウヴァと爆豪が現れる。緑谷達はその特徴ある声に直ぐに勘付くと、オール・フォー・ワンが2人を見て申し訳なさそうに口を開いた。

 

「悪いね、爆豪君。それと…火野君…じゃないか。今の君は〝ウヴァ〟君だね?」

 

「あ!!?」

 

「誰だ貴様…!?」

 

声を掛けるオール・フォー・ワンに爆豪は悪態を吐き、火野ウヴァはその人物に問い掛ける。何方も初対面の人物なのか、咳き込みながらも警戒を怠らなく巨悪を見つめる。そんな中、他の(ヴィラン)達も黒い液体から次々と現れ、何人かは、その液体が気持ち悪いのか嗚咽をしていた。

すると、オール・フォー・ワンは真っ先に死柄木に向かって声を掛ける。

 

「また失敗したね弔。でも決してめげてはいけないよ。またやり直せばいい。こうして仲間も取り返した。この子たちもね……君が『大切なコマ』だと考え判断したからだ。いくらでもやり直せ、その為に(せんせい)がいるんだよ。

全ては、君の為にある」

 

先生の文字通り、その語りには指導者の想いが込められているように見えるが、不気味さ故かその空気はねっとりとこびりつくような感覚が走る。何かへの復讐か、超人社会を壊そうとしているのか、得体の知れない男に、爆豪、火野ウヴァ、そして緑谷達は冷や汗を垂らしていた。

 

「ゲッホ…!ちょっと先生っ…!救けてくれたのはいいけどもっとマシな方法なかったのっ?くっさいんだけどマジで………」

 

「あぁ、すまないね脇真音優無。黒霧のような正確なワープゲートは生憎使()()()()()()いないんだ。多少手荒な真似をしてしまったと僕なりに反省はしているよ」

 

そんな中、文句を垂れる優無に対して礼儀正しく謝罪をするオール・フォー・ワン。すると、オール・フォー・ワンは何かに気付いたのか、上の空に顔を上げながら彼は呟いた。

 

「……やはり、来ているな………」

 

「!!」

 

その言葉に隠れていた緑谷達は目を見開く。気付かれてしまったのかと肝を冷やした次の瞬間。

上空から勢いよく飛んで来たオールマイトの拳と拳がオール・フォー・ワンに激突した。しかし、オール・フォー・ワンは予測していたのかそれを掌で受け止める。

 

「全て返してもらうぞ! オール・フォー・ワン!」

 

「また僕を殺すか、オールマイト。随分と遅かったじゃないか」

 

その刹那。地面は凹み、衝撃波が辺り一帯に迸る。その場に居た連合達、爆豪、火野ウヴァは巻き添えを食らい吹き飛ばされた。影響は緑谷達の隠れていた岩壁の堀まで抉れ、衝撃に耐えていた緑谷が「オールマイトまで…!!」と驚愕していた。

 

「バーからここまで5km余り…僕が脳無を()()、優に30秒は経過しての到着……。やはり衰えたね、オールマイト」

 

「貴様こそ何だその工業地帯のようなマスクは!?だいぶ無理してるんじゃあないか!?」

 

両者は距離を取り、互いは悪態をつきながら体勢を整えている。そんな中、あのオールマイトの攻撃を素手で受け止めた男に、爆豪は(ヴィラン)のボスだと確信していた。すると、オールマイトは軽快に足を鳴らしながら口を開く。

 

「5年前と同じ過ちは犯さん、オール・フォー・ワン。火野少年と爆豪少年を取り戻す!そして貴様は今度こそ刑務所にぶち込む!貴様の操る(ヴィラン)連合諸共!!」

 

「それは…やることが多くて大変だな、お互いに」

 

バッと駆け出すオールマイトに、オール・フォー・ワンは右腕を上げながら言うと、オールマイトはハッとする。その右腕が内側から膨張したと同時にオールマイトに向けて突き出した次の瞬間。

空気の衝撃波が放たれ、音が追いついていなく、後から轟音が鳴り響く。オールマイトは最も簡単に後方にあった建物諸共吹き飛ばされたのだ。建物のコンクリートをぶち破り、その衝撃の余波が辺りに炸裂し、土煙と暴風がその場に居た(ヴィラン)達を襲う。

 

「『空気を押し出す』+『筋骨発条(バネ)化』、『瞬発力』×4、『膂力増強』×3。この組み合わせは楽しいな…、増強系をもう少し足すか…」

 

まるで子供が実験道具を弄ぶような態度を出し、独り言を呟く男。土煙が舞う中、それを見ていた爆豪は「オールマイトォ!!!」と煙を払って身を乗り出しながら叫ぶ。

 

「心配しなくてもあの程度じゃ死なないよ。だから… ここは逃げろ弔。この子達を連れて」

 

オール・フォー・ワンは言うと、上げた右腕の指先からペキペキと骨が鳴る音がする。それと同時に、指の形が変化し、真っ黒で鋭利な指になった。

 

「黒霧、皆を逃がすんだ」

 

瞬間、5指の棘のような指は不規則に伸びると、黒霧目掛けて勢いよく突き立てられる。隣で見ていたマグネは驚いて声を荒げた。

 

「ちょ!あなた!彼やられて気絶してんのよ!?よく分かんないけど、ワープを使えるならあなたが逃がしてちょうだいよ!?」

 

異論を上げるマグネだが、オール・フォー・ワンは冷静にその理由を応えた。

 

「さっきも脇真音優無に言ったつもりなんだけどマグネ、僕のはまだ出来たてでね。転送距離はひどく短い上…彼の座標移動と違い僕のもとに持ってくるか、僕の元から送り出すかしか出来ないんだ。ついでに…送り先は人。馴染み深い人物でないと機能しない」

 

『〝個性強制発動〟!!』

 

グチグチと生々しい音が聞こえた瞬間、黒霧の頭部のモヤが一気に拡大し、彼の〝個性〟ワープゲートが作り出された。

 

「さあ行け」

 

「行けって…」

 

「先生は…」

 

優無、死柄木が言いかけた直後、瓦礫の山となっていた場所から轟音が鳴り響き、吹き飛ばされたオールマイトが戻って来る。

 

「逃がさん!!」

 

「君は他の仲間達と共に弔をサポートしなさい脇真音優無。そして、弔…常に考えろ、君達はまだまだ成長出来るんだ」

 

オール・フォー・ワンは優無と死柄木にそう言い残すと、ふわりとその身を空中へと飛び、向かって来たオールマイトの拳を受け止める。この場の者に被害が出ぬよう、オール・フォー・ワンは空中へとオールマイトを誘導し、激闘が開始された。死柄木は最強と最凶がぶつかり合うその光景を見つめていると、ハッとしたMr.コンプレスが気絶している荼毘を圧縮し、小さなガラス玉の中へ閉じ込めると同時に口を開いた。

 

「行こう死柄木!あのパイプ仮面がオールマイトを食い止めてくれてる間に!()()持ってよ」

 

その言葉に、(ヴィラン)達はゆらりと爆豪を見遣る。オール・フォー・ワンが時間を稼ぎ、ワープゲートまで開いてくれている。ならば今成すべき事は、目の前にいる逸材を()()にでも連れて行く事だ。(ヴィラン)達の意図を察した爆豪は「めんっ…ドクセー」と脂汗を垂らしつつ、誤魔化しているのか不敵に笑う。オール・フォー・ワンはオールマイトと対峙しているのを除き、そして気絶しているの2人も除いて現状は1対9。圧倒的に不利な立ち位置だ。

すると、槍無がディーペストハープーンを取り出すとこの場にいる皆に向かって口を開いた。

 

「……爆豪を連れて……脱出…しなきゃならない……でも……もうひとつ…やること…ある…」

 

「やること?」

 

ポツポツと喋る弟に優無が首を傾げる。だが次の瞬間。

 

()()()…連れていけない…!」

 

槍無はその場から飛び出すと、爆豪ではなく

なんと火野ウヴァに向かってその槍を振り翳した。

 

「っ!!?」

 

「っ!?弟君!?」

 

「ハっ!?お前何やってんの!?」

 

かろうじて咄嗟に避ける事ができた火野ウヴァ。その予想外の行動に驚愕し声を張り上げる優無とMr.コンプレス。槍無は火野ウヴァを睨みながらその理由を言った。

 

「こいつ……さっき屋上で…意識を閉じ込めていた…中の火野映司と喋っていた……その後に来た奇襲……きっと連携して通報したんだと…思う…」

 

「えっ…?」

 

「なっ!?何を言ってやがる!?俺は何も知らないぞ!!」

 

槍無の言葉に整理がつかない優無は困惑する中、火野ウヴァは焦って動揺していた。すると、(ヴィラン)達が全員火野ウヴァの方を見ているのを機に、爆豪は距離を取ろうと一歩下がろうとしたその時。

 

「おい、待て………」

 

「っ!」

 

死柄木だけがその行動に勘付き、爆豪に触れようと手を差し伸ばした。爆破で宙へと跳ぶ爆豪だが、その背後からトガとトゥワイスが捕まえようと動き出す。2人が立ち並び、舌打ちをしながら応戦する爆豪。

 

「……脇真音…そいつを連れて来たのはお前だ。()()()()かはお前に任せる……後の奴らはこっちで爆豪を押さえるぞ。先生が身を挺してアイツを止めているんだ……絶対、逃すな…!」

 

「っ……!」

 

その間死柄木は優無を背にそう伝えると、彼女は目を見開く。呆然としていたMr.コンプレス、マグネ、スピナーもハッとしトガ達の加勢へと向かう。死柄木も黙って抗う爆豪へと向い、残された優無は息を吐くと、戸惑う火野ウヴァへと振り返り口を動かした。

 

「弟君は、嘘を付く子じゃあないんだよね……。ここまで来たのに…こうも簡単に裏切るのは…グリードの中でも専売特許なのかな…ねえウヴァ……」

 

「!?ちょ、ちょっと待てっ!俺は本当に何も知らないぞ!!」

 

「五月蝿い!!」

 

弁解しようと火野ウヴァは声を荒げるが優無の怒号を浴びせる。その瞳には涙が浮かばれてあった。そのまま優無はタトバのコアメダルを取り出しオーズドライバーに嵌め込んでいく。そして待機音が鳴るオースキャナーを握り締め、優無は火野ウヴァを睨み付ける。

 

「あぁークソ!切羽詰まってて頭ん中ゴチャゴチャだよ!弟君!大馬鹿の姉の尻拭い頼むわよ!変身!!」

 

「……うん…!変…身…!」

 

髪を掻きながら優無はベルトにオースキャナーをスキャンし、槍無はポセイドンドライバーに脊椎動物のコアメダルを嵌め込み、姉弟は覚悟の目をした瞳で、叫んだ。

 

 

 

タカ!

 

トラ!

 

バッタ!

 

 

 

 

 

 

サメ!

 

クジラ!

 

オオカミウオ!

 

 

 

音声が鳴り響き、優無はヴィランオーズ、槍無はポセイドンへとその身を変え、火野ウヴァへと身構えた。

 

「な、何でだ…!?俺は…本当に何も知らない…!!」

 

「お前…もう…黙れ…!フン!!」

 

「ゥぐぁっ!?」

 

火野ウヴァの言葉を無視してポセイドンはディーペストハープーンを振り上げる。火野ウヴァの肩は斬られ、そのまま吹き飛ばされた。

 

「ッ!何だ、あの野郎元に戻ったか!?」

 

「余所見するなよ!しちゃうよね!」

 

防戦一方の爆豪が飛ばされた火野ウヴァが視界に入り、声を荒げるとトゥワイスが手首に装備されたスケールを模したモノを伸ばしながら接近する。今は人の心配をしている場合ではないこの状況、爆豪は避けながら不服そうに舌打ちをしていた。

 

「ぅぐ…クソ…!!なんでこうなるんだ…!!」

 

流血する肩を押さえながら吠える火野ウヴァ。

何れにせよ、芳しくない現状の刻は止まる事なく、2人の戦士がこちらに向かって来るよう動いていた。

すると、その時。

 

 

ドックン…!

 

 

「っ!な、何だ…!?」

 

内側から何かが蠢く感覚が体に走る。違和感を覚えたその瞬間、火野の体が紫色に発光し、人間態の本来の姿であったウヴァが跳ね飛ばされた。

 

「うぉあっ!!」

 

「っ!?」

 

「えっ?ウヴァが火野映司の体から飛ばされた…?」

 

地面に打ちつけられるウヴァを見てポセイドンとヴィランオーズは疑問を抱き、肝心の火野を見遣る。ゆらりと立ち上がる火野。俯くその表情をゆっくりと上げる。その瞳は深紫に輝いていた。

 

「!?マジで…!?」

 

「…!?まさか…!」

 

何かを察したヴィランオーズ、そしてウヴァは驚愕した顔で火野を見つめる。次の瞬間、火野の体から()()のコアメダルが3枚、飛び出すと、勝手に後ろ腰から飛び出したオーズドライバーが腰へと装着される。そしてそのまま浮遊するコアメダルはスロットへ嵌め込まれると、自動的にオースキャナーが取り出され、そのベルトへとスキャンされた。

 

「!!アレが本当ならまずい…!!!」

 

ヴィランオーズはハッとし、後ろで戦っている死柄木達へと振り返り、大声で叫んだ。

 

「皆、ここから離れて!!!」

 

「「「「!?」」」」

 

全力で声を荒げるヴィランオーズに、死柄木達は驚く。だが、時は既に遅く、ヴィランオーズの背後からその音声が響き渡った。

 

 

 

 

プテラ!

 

 

トリケラ!

 

 

ティラノ!

 

 

 

プ・ト・ティラーノ・ザウルーゥス!!

 

 

 

 

 

絶滅種、恐竜系の名が恐竜の咆哮と共に轟き、禍々しい空気に包まれる。

 

「…?寒い…?」

 

ふと、見ていたトガが急に寒気を感じたのか身震いをすると…次の瞬間、変身を遂げたオーズの足元から途轍もない冷気が地面を伝って迸った。

 

「っ!?クソ!」

 

「弟君!」

 

「う、うん!」

 

バキバキと凍っていく地面に触れまいとウヴァは跳ぶと、ヴィランオーズもポセイドンと共にその場から走って逃げる。しかし冷気は止まる事なく、死柄木達の居る方へと襲い掛かる。

 

「んだこりゃっ…!?」

 

「冷た!熱い!?」

 

「っ!触れたら駄目なやつか!?」

 

接近してくる氷結と冷気に驚きながらも距離を取る死柄木達と爆豪。約10メートル満たない場所まで広がった冷気が止まると、その中央にいたオーズが叫んだ。

 

 

 

「ゥオオオオオオオオッッッ!!!」

 

 

 

 

 

「姉さん……あれって…!?」

 

「……オーズの中で()()の形態…無敵の名を持つ存在…〝プトティラコンボ〟…!!」

 

辺りの凍らされた地面が咆哮、衝撃波と共に破壊され、その余波から身を守っていたポセイドンとヴィランオーズは冷や汗を流しながら見つめる。

紫をベースとした色に、恐竜を模した体をしたオーズ、〝プトティラコンボ〟は真っ直ぐとこちらを見つめる者達を、まるで獲物を狩るような目付きで睨んでいたのだった。

 

 





現在、オーズの使えるメダルは…!

タカ×1
トラ×1

プテラ×1
トリケラ×1
ティラノ×1



No.93 絶大と無の力と取り引き

更に向こうへ!Puls Ultra!!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。